• 検索結果がありません。

序文・監訳者序文(pdf)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "序文・監訳者序文(pdf)"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

cognitive.tex

2012/10/28(17:46) [[1626]1]

序  文

『MIT認知科学大事典(The MIT Encyclopedia of the Cognitive Science, MITECS)』は

構想から出版までに4年の歳月を要した。事典の顧問編集者によって書かれた六つの概論に続い て,471の小項目が配置され,そのほとんどに参考文献や関連文献が付いている。『MITECS』 の対象は学生のほかに,認知科学に関連する心理学,神経科学,言語学,哲学,人類学,社会科 学などの分野,そしてより広くは進化生物学,教育,コンピュータ科学,人工知能,行動生物学 の諸分野の研究者である。 完成した本自体が説明になっているとは思うが,本書の目的と開発過程について少し説明して おきたい。本書を企画した最大の動機は,伝統的に了解されている認知科学の諸領域の一部と オーバーラップするかたちの素晴らしい著作は数多く存在するものの,過去25年にわたる認知 科学研究の概念,方法論,研究結果や展開の全領域を適切に表現した単一の書籍がないという点 である。 もう一つは,認知科学の諸分野がその焦点や指向において異なっており,しかもそれらが時間 とともに変化してきたし,今後も変化するであろうという点である。『MITECS』はこの広範囲 の視点を表現することを目的としており,認知科学の歴史と未来をも表すものである。 最後に,著者との議論や編集の結果として,認知科学の諸分野間の関連を明らかにし,一分野 の読者が他の関連分野に関するより広い直観を得ることができることを望んだ。『MITECS』は 認知科学に関する項目の五十音順リスト以上のものを表現している。現時点での分野の全体像と その構造,トピックスや方法論の違いを越えたアイデアの相互結合の様子,異なる方法論をもっ た著者たちの間で類似のトピックスに対するアプローチが収束・発散する様子,などが見てとれ る。事典全体を眺めることによって,互いに関連する概念が形成する豊かな多次元の地形を旅す ることができる。分類は完全なものであることはまれである。特に科学においては。概念や類形 は互いに関連しており,分類は理論的あるいは経験的に複雑なパターンに埋め込まれていること が多い。このような過程の豊かさと複雑さを通して,『MITECS』は心に関する多くの疑問に対 する認知科学的アプローチの価値の大きさを見せてくれる。 上記の三つの動機はプロジェクトの初期構造に反映された。『MITECS』の核心は471の記事 そのものであり,それらは認知科学の基礎を構成する六つの領域に割り当てられた。一人あるい は二人の顧問編集者がそれぞれの領域の記事をチェックし,また概論記事を担当した。各領域と 顧問編集者は以下のとおりである。 哲学:Robert A. Wilson 心理学:Keith J. Holyoak

神経科学:Thomas D. AlbrightおよびHelen J. Neville 計算知能学:Michael I. JordanおよびStuart Russell 言語学:Gennaro Chierchia

文化,認知,進化:Dan SperberおよびLawrence Hischfeld

これらの編集者は項目と著者の選定ならびに記事の査読プロセスを助けてくれた。記事は全体 としてそれぞれの分野で見られるべき多様性を保っているし,それぞれの学際的視点から認知に

(2)

cognitive.tex 2012/10/28(17:46) [[1626]2] x 序  文 ついて考える場合に,過去・現在・未来にわたって価値あるものになっていると思う。 それぞれの概論は二つの大きな目標をもっている。一つは『MITECS』全体から各項目への ロードマップを示すこと。各項目がどの分野に属するかは一意には決まらないこと,そして何よ りも全巻を貫く学際的視点から,概論には他の関連分野の項目への言及が含まれている。二つめ は該当分野の方法論の性質を認知科学的視点から概観すること。それぞれの記事は該当分野の独 立した概観になっている。われわれは編集者に対し中立的であることを求めず,彼らの独自の視 点を表明して良いことを明示しておいた。その結果,それぞれ活気に満ちた記事が出来上がった。 世界の最高権威の多くを著者として迎えることができたのは幸いである。著者たちにはその領 域を代表すると同時に,学部生や大学院生にも理解できる記述を求めた。一つの記事に,その分 野のエキスパートと,『MITECS』に採り上げられた他分野から一人,合計二人の査読者を充て た。ほとんどの査読者が同時に著者でもある。さらにそれぞれの記事は編集者の一人が必ず目を 通した。われわれのどちらか,あるいは査読者にとって完璧でないと思われた記事は顧問編集者 に確認した。このような短い記事(ほとんどが1,000∼1,500語)を複数レベルで査読すること は無用に思えるかもしれないが,逆に簡潔な記述だからこその選択性がこの査読プロセスをより 意味あるものにした。ちなみに,「こんなに短くなくて良いのであればもっと早く書けたのに」と いう遅筆の言い訳をした著者が何人かいた。 読者にとって最も重要なのは記事の内容であることはもちろんだが,記事の簡潔さゆえに参考 文献や関連する書物の案内も価値の一部となっている。さらに,関連する記事への参照(印を つけた太字で示されている)や,各項目の最後に→で示した短い参照項目リストが用意されてい る。相互参照の最終責任は編集者の一人(RAW)にあるが,その候補を示してくれた各著者に 感謝する。 多くの研究者が『MITECS』を頻繁にあるいは毎日の道具として使うことを期待しており,そ の想定で参考文献,関連文献,相互参照をデザインした。電子版ユーザは関連する文献リストや 相互分類情報を将来の検索のために自分のデータベースにダウンロードすることができる。われ われ自身,『MITECS』の記事のドラフト段階ですでに自分たちの研究遂行のためのこうした使 用に大きく依存してしまっていることに驚いている。 謝辞には長い人名リストが必要である。まずは著者自身。彼らの記事自体と他の記事の査読を 通して多くのことをわれわれが学んだし,読者が最初の借りをつくるのも彼らである。顧問編集 者の専門知識抜きには広範囲の項目選定はできなかったであろうし,著者を割り当て,依頼する こともできなかったであろう。彼らがわれわれの気まぐれや夢想に3年以上にわたって意欲的に 付き合い,各章の紹介記事を書いてくれなければ,『MITECS』は完成にこぎつけられなかった

であろう。Tom, Gennaro, Larry, Keith, Mike, Helen, StuartそしてDanに感謝する。MIT PressのAmy Brandのリーダーシップと根気,彼女の有能なアシスタントEd SpragueとBen Brueningの技術ノウハウと重労働,そしてSandra Minkkinenの編集プロセス管理に感謝する。

Rob Wilsonは彼のクイーンズ大学時代の研究助手仲間Patricia AmbroseとPeter Piegaze, イリノイ大学におけるAaron Sklar, Keith Krueger, PeterAsaroに感謝する。彼の『MITECS

における仕事の一部はSSHRCの個人3年グラント#410-96-0497ならびにUIUC(イリノイ大 学ウルバナ・シャンペイン)キャンパス研究ボードグラントに支えられている。Frank Keilは コーネル大学の内部資金を本プロジェクトに使用した。

(3)

cognitive.tex 2012/10/28(17:46) [[1626]3]

監訳者序文

MITが編纂した認知科学の事典の日本語訳をお届けする。辞典ではなく,独立した読み物集 である。原書は1999年の出版であるが,この手の著作は前にも後にも存在しないのでいまだに 貴重な一冊である。 構想X年,制作Y年とは映画の世界でよく使われる宣伝文句であるが,このXとYは大きい ほど良いらしい。この事典の翻訳は開始から10年以上を要してしまった。こちらの数値は明ら かに小さいほど良いのだが,実際には大変長い期間を要してしまった。完成をあきらめかけてい た時期もあるのだが,出版にこぎつけることができて大変喜ばしく思っている。 ただ,今読み返してみても,古い感じは受けない。最新鋭の成果が書かれていないという点は 残念だが,技術的よりも哲学的な記述が多いためであろう,決して内容が古くなっているわけで はない。読み物として十分なクオリティを保っていると思う。 原版の構想と著作に何年を要したかは定かでないが,執筆陣が結構大御所であるところをみる と,こちらもかなりの年月を費やしたに違いない。認知科学はその発祥から現在に至るまで多分 野にまたがる学際領域としての性格を保ち続けている。哲学,心理学,言語学,生理学,計算機 科学など,多分野にわたる著述は用語の統一や相互参照がかなり大変である。翻訳も,用語の統 一という点だけでもかなりの作業を要する。最終的に統一をあきらめざるをえない場合もある。 有名なところでは計算機分野の「表現」と哲学分野の「表象」などがそれである。そのため最後 まで不統一のまま残っている用語もあるが,各項目を個別に読む事典という性格上,それほど問 題にならないと判断した。 末筆になるが,最後まであきらめずに付き合ってくれた訳者と編集者に感謝する。まあ,遅れ た原因も一部の訳者にあったりするのだが,この際それは言わないことにしよう。 2012年 初秋 

中 島 秀 之

参照

関連したドキュメント

2.1で指摘した通り、過去形の導入に当たって は「過去の出来事」における「過去」の概念は

社会,国家の秩序もそれに較べれば二錠的な問題となって来る。その破綻は

社会,国家の秩序もそれに較べれば二錠的な問題となって来る。その破綻は

大きな要因として働いていることが見えてくるように思われるので 1はじめに 大江健三郎とテクノロジー

長尾氏は『通俗三国志』の訳文について、俗語をどのように訳しているか

節の構造を取ると主張している。 ( 14b )は T-ing 構文、 ( 14e )は TP 構文である が、 T-en 構文の例はあがっていない。 ( 14a

いかなる使用の文脈においても「知る」が同じ意味論的値を持つことを認め、(2)によって

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ