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特 集

自動車販売 ʼ18. 11 2 (前号からつづく) 元留学生︵日本の自動車整備専門学校︶   技能実習生に関しての紹介をしてきた が、 外 国 人 整 備 人 材 は も っ と 幅 が 広 い。 国内の自動車整備士養成学校を卒業した 外国人も当てはまる。前述した2つ目の 方法というのがこれだ。   日本で学ぶ留学生の数は年々増加して いる。大学、短大、高専などがあるがと りわけ専門学校は伸び率が高い。中でも 工業系の専門学校による留学生受け入れ 率が高い。留学生は直近の 10年で倍増し ている。   資格を求めて専門学校へ行く。特に急 増しているのがベトナム人で全体の4割 ほどを占めている。   自動車整備士専門学校への日本人入学 者数はこの 10年ほどで半減。少子化の中 で今後減少はさらに加速することになる だろう。   特に整備会社での人材確保は容易では ない。日本の新卒者の大半はディーラー に就職してしまうため「毎年学校に求人 募集を出しているが、 全く採用できない」 (整備会社の経営者) 。そのため学校は外 国人にも門戸を開き始めた。一般的には、 日本の日本語学校に留学して1年ほど日 本語を勉強した後、自動車整備士専門学 校へ入学する。   全国自動車大学校・整備専門学校協会 ( J A M C A ) が 行 っ た ア ン ケ ー ト 調 査 によれば、7割の学校が留学生を受け入 れている。自動車整備士専門学校に通う 若いベトナム人留学生は「ベトナムの整 備学校を出て整備の会社で働いていたけ れど、日本の自動車整備の技術は高いの で、 もっと勉強したくて日本に来ました」 と語る。   さらに「日本の整備士資格に魅力を感 じている学生」が全体の半分近くを占め た。今後、日本で整備エンジニアを目指 す留学生は増える可能性が高い。 新しい外国人整備人材雇用の必要性   自動車整備業界は、技能実習生、およ び留学生だけでない、新しい外国人雇用 の仕組みを求めている。なぜ新しい仕組 みが必要とされるのか。   理由の1つは、人材不足という業界の 課題が大きくなればなるほど、人材に求 める要求レベルとのズレが表面化、さら

外国人整備人材の可能性

∼外国人整備人材はクルマ屋を救えるのか?∼

(後編)

㈱アセアンカービジネスキャリア 代表 

川崎大輔

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3 自動車販売 ’18. 11 特集 外国人整備人材の可能性 には人材争奪戦が激化しているためだ。   技能実習制度は日本で働ける年数が限 定されている。そのため整備会社の経営 者は整備技術や日本語能力が身についた タイミングで帰国をしてしまうことを理 由に活用を躊躇している。言語の壁とい った課題も表面化している。   整 備 会 社 の 経 営 者 は、 「 も っ と 色 々 と 教えていきたいが、言葉の理解やコミュ ニケーションの面でまだ不安が残る」 (整 備会社の経営者)と話す。   ま た、 「 技 能 実 習 で は 安 い 人 件 費 と 思 っている方が多いが、実際には日本人の 高卒を採用するのと同等水準になる。そ のため人件費の安い人材ではないことを 理 解 し た 上 で 採 用 を 進 め て い る 」( 管 理 団体の責任者)という。   さらに、実習生の逃亡や過重労働とい った問題が表面化する中で、多くの企業 は、技能実習生の活用に様子見の段階に あるのが現状だ。   一方、留学生に関して、中小の整備会 社 経 営 者 は、 「 留 学 生 の 採 用 は 中 小 で は 難しい状況だ」と口を揃えて言う。整備 専門学校の留学生向けに奨学金制度を設 けて卒業後の就職を促したり、組織力を 生かして特定グループのみへ紹介したり と、それなりの資金やネットワークのあ る企業同士で留学生の取り合いが加速し ている。   このような中、現状の制度や仕組みだ けではそれぞれの会社が求める人材を雇 用することが難しい実情がある。 新しい外国人整備人材、スカイブルー   スカイブルーとは「単なる熟練ではな く、かなり高度の専門的知識と技術の裏 付けを持ち、マネジメントもできる新し いタイプの人々(外国人) 」を意味する。   水色を意味し、組織の中でも最も重要 な役割を果たす、ホワイトカラーとブル ーカラーを繋げる人材となる。彼らは正 社員として就労するために就労ビザを取 得して入国する人々だ。マネジメントを 期待されているため、主体的に当該分野 の仕事を選んで、その仕事に就けるため の専門的な教育を受けていることが必要 となる。   私はスカイブルーの外国人と信頼関係 を築けた日本企業のみが、将来のグロー バル化に成功すると言っても過言ではな い、と考えている。自社の戦力として育 成するには長期的な視点で考える必要が ある。   技能実習生とは大きく異なり、採用人 数や受け入れ期間に制限がないことは当 然だが、最も大きな違いとして、彼らは 母国に帰国してからも日本との架け橋を 作りながら活躍できる循環型の人材スキ ームを実行していくことができる。   「 ベ ト ナ ム で は 年 間 で 1 万 人 近 く の 理 工系大学を卒業した技術者 (エンジニア) 候補がいるのではないか」とハノイにあ る大学の学部長は指摘する。   学校を卒業しても仕事があるのは3割 ほど。日本で不足している高度人材だが、 ベトナムでは専門を持っていても仕事が ない状況が続いている。年齢が若く、技 術が高く、人口も多いという利点を持っ ているのがベトナム人エンジニアの特徴 だ。   アセアン各国の自動車学部や機械工学 部の大学生、もしくは卒業生に日本語の 教育を行うことで、スカイブルー人材に 成り得る。彼らは日本で働く期間に縛り はない。   5年でも 10年でも彼らが望めば日本で 働ける。一定水準以上の整備技術を日本

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自動車販売 ’18. 11 4 で身につけることが可能だ。スカイブル ーはマネジメントもできる。同じベトナ ムという国であればコミュニケーション も問題ない。日本国内で今後増えていく ベトナム人技能実習生、留学生を組織し、 まとめていくことができるという点も大 きなメリットだ。   将来は日本の受け入れ企業のベトナム 進出時の現地幹部として母国に戻ること もできるだろう。   新興国ではまだ大学を卒業できる人材 は少ない。そのため新興国で子供を大学 に通わせるという両親はそれなりの教育 水準、資産、人脈ネットワークを持つ富 裕層である可能性も高い。   つまり、日本で身につけた技術を、ベ トナムに戻り、自ら整備工場や整備教育 機関を立ち上げられる環境を既に持って いる可能性がある。それらが、日本から 帰国する技能実習生、留学生たちの出口、 つまり受け入れ場所となる。日本で学ん だ整備技術を、ベトナムに伝授していく ことができる。   将来の日本の整備業界を救うスカイブ ルー人材を雇用する方法の1つとしてイ ンターンシップがある。まだ取り組みは 始まったばかりだが、アセアンカービジ ネスキャリアでは、2018年4月にベ トナムの一流理系大学であるホーチミン 工業大学とMOUを結んだ。この大学で は、日本語教育も行われており、スカイ ブルー人材の母体としてきわめて有望だ。   今回の提携に伴い、スカイブルー人材 活用を目指している日本の自動車関連企 業 10社ほどが大学に赴き、インターンシ ップ希望の学生たちを面接した。その第 一弾が今秋に来日する予定となっている。 半 年 間 の イ ン タ ー ン シ ッ プ 受 け 入 れ 後、 学生は復学。卒業後の正規採用に繋げる。

循環型の人材スキームの重要性

  日本の自動車産業は、戦後、急速に拡 大したが、2000年頃からその伸びが 止まった。今後も、日本における人口減 少を大きな背景として、市場の縮小が避 けられないだろう。   それに対し、アセアンは単位人口あた りの自動車保有数がまだ少なく伸び代が ある。自動車産業も急速に拡大すると断 言できる。   つまり、日本の自動車産業が生き残っ ていくためには、アセアンという市場に 進出することがきわめて重要だ。   ハノイにある技能実習生送り出し機関 のベトナム人代表は、 「日本で働いた後、 本国に帰ってきたベトナム人をベトナム スカイブルー候補生の面接風景 ベトナムの大学とのMOU提携

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5 自動車販売 ’18. 11 特集 外国人整備人材の可能性 での日系企業に紹介していきたい」とい う。日本の企業で学んだ技術を母国の発 展に活かせるように日系企業への就労支 援などを提案している。整備業界は技術 を身につけてベトナムに帰国すれば必ず 役に立つ。   外国人整備人材は、安い労働力として 活用できるというイメージが先行してい た。しかし、外国人を安い労働者として ではなく共存できる戦力として考える必 要があるだろう。   そういう意味で、自動車整備業界のた めに経営者が考えなくてはいけないこと は、循環型人材スキームの構築だ。つま り、外国人整備人材を単なる短期的な人 材不足における労働者とみなすのではな く、長期的な視野で、同じ釜の飯を食べ、 信頼関係を築きパートナーとして外国人 整備人材を受け入れていくという考え方、 仕組みが大切だ。   単なる「人手」として考えるのではな く、彼らがいずれ母国で活躍できるよう なキャリアアップを支援すること、日本 企 業 の 海 外 進 出 の 成 功 を リ ン ク さ せ る 「 W I N ‒ W I N 」 の モ デ ル を 志 向 し て いる。これを人材先行型の海外進出ビジ ネスモデルという。   我々、アセアンカービジネスキャリア が推進する事業の全体像は、自動車業界 を主なステージとして、アセアンからの 人材受け入れ支援を行うアセアンカービ ジネスキャリアと、市場としてのアセア ンに進出する際の支援を行うコンサルテ ィング会社であるアセアンプラスコンサ ルティングの2社を両輪として「循環型 グローバルビジネスモデル」を目指した 事業を行っている。 外国人から選ばれる企業になるために   整備士不足の問題が社内で取り上げら れると、人手確保のために、外国人を受 け入れるべきか否かについて、議論され ることが多い。しかしそこには門戸を開 けば日本に来てくれる外国人がいる、と いう前提で話が進んでいないだろうか。   「 受 け 入 れ る か 否 か 」 で は な く「 優 秀 な外国人に来てもらうために魅力ある国、 選ばれる企業にどのようにすればなれる か」という議論が重要だということに気 がつかなければならない。   スイスのビジネススクールIMDによ る調査( World Talent Report 2016 )で 高度外国人材を自国のビジネス環境に惹 きつける力の国別ランキングが発表され ている。   その調査によれば日本は 61か国のうち 52位。日本側が外国人労働者を受け入れ るか否かという選択をできるわけではな いのが現状だ。   外国人が日本を選択しなくなる、その 循環型グローバルビジネスモデル

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自動車販売 ’18. 11 6 前に日本の自動車整備業界として積極的 な道筋をつけておくことが重要だ。   優秀な外国人材を確保し定着してもら う、つまり外国人に選ばれる必要がある。 では、どうすれば「選ばれる」のか。   実は、様々な調査や私がアセアンの人 たちを交流し合う中で実感したことから 明白なのは、彼らにとって企業の規模や 知名度は、最優先事項ではないというこ と。 何 よ り 気 に す る の は、 「 会 社 と 自 分 の将来」である。   つまり、会社が将来に向けてどのよう なビジョンを持っているかしっかりと伝 えること。さらに外国人整備人材として の明確なキャリアパスを提示することが 求められる。期待する役割、母国や海外 との関わり、最終的にどうなって欲しい のか説明することだ。   誤解を恐れずに例をあげれば、技術を 身につけスキルアップしても、通訳業務 を任されるのみ、というケースが少なく な い。 「 外 国 人 は 日 本 人 よ り 転 職 に 抵 抗 感がない」というイメージがあるが、彼 らは「就職した企業が母国の支店や、海 外進出した際の拠点で、マネジャー職と して働きたい」という夢を持っている。   そ の 夢 へ の 道 筋 を 提 示 で き る 企 業 が、 選ばれる。つけ加えるとすれば、外国整 備人材の採用の必要性・重要性を社内側 に浸透させておくことも重要だ。   「 優 秀 な 外 国 人 を 採 用 し て も、 受 け 入 れ側の体制が整っていないと、上手く人 材の活用はできない。入社後の育成が重 要だ」と話すのは、日本企業へ異文化マ ネジメント教育などを手がけるダイバー シティマネジメント研究所の河谷氏。   日本人は外国人が話す日本語の能力だ けで、その外国人の人格を決めつけてし まうことが多い。彼らは宝石の原石で教 育という磨きをかけないと光る宝石に変 わることはない。能力は人格の一部であ るということを忘れてはいけない。   人材が不足する日本の整備業界にとっ ては、外国人整備人材とのより良い関係 づくりを目指し、長期的な取り組みで定 着を図り、循環型のモデルを構築する可 能性をもっと真剣に考えて行く必要があ る。 のか?   欠かせない人材になりつつある外国人 を貴重な戦力と位置づけ、就労環境や給 与だけでなく、住宅などの暮らしの支援 にも力を注いで、WIN ‒ WINの関係 を築いている自動車整備会社がある。   鈴木自動車(鈴木社長、 愛知県一宮市) は、自動車業界では最も早くに外国人採 用に踏み切ったパイオニア会社だ。20 09年より技能実習制度を活用しベトナ ム人材を採用。以後、 10年間採用を続け ている。最初に採用したベトナム人リュ ウ氏の時より、採用後は鈴木社長自らベ トナムを再訪し、彼らのご両親に直接挨 拶に行っている。   「 10年 前 に 面 接 し た 際 に、 目 が キ ラ キ ラしているのが印象に残った。大事な息 子さんを預ける会社が安心できる会社だ とご両親にも知ってほしいという気持ち からご両親に挨拶に行った」 (鈴木社長) 。   1期生は既にベトナムに戻り自動車関 連企業に就職しているが、現在も交流が 続いている。さらに「採用したら、真面 目で一生懸命学ぼうとする意欲も非常に 高い。安い低賃金で彼らを雇用する経営 者は、この制度の利用を遠慮してほしい。 道具ではなく人だ。日本での父親として、 私は彼らを育成する。そして、ベトナム

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7 自動車販売 ’18. 11 特集 外国人整備人材の可能性 に 店 を 一 緒 に 出 し た い と い う 夢 が あ る 」 と、ベトナムでの事業展開も計画をして いる。   2019年4月に、政府は、建設や介 護などの5分野で最長5年の就労を認め る在留資格を新設する。ついに外国人が 経済の成長戦略に位置付けられた。日本 における外国人政策の基本方針の大転換 だ。   人手不足が一段と進む中、小手先の政 策では限界にきていることが判ったため だ。   2020年の東京オリンピック・パラ リンピックを前に必要な労働力を確保す るために、外国人を活用できる筋道を早 くつけておくべきだという国の方針が根 底にある。   既に外国人を受け入れている自動車整 備 関 連 企 業 の 中 に は、 異 文 化 の 融 合 や、 彼らの教育、言葉の壁に戸惑う声も聞こ えてくるように難しい一面もある。しか し、 質 の 高 い 多 様 な 外 国 人 材 が 来 れ ば、 そこで働く日本人の能力を引き出す刺激 になる。   前述の鈴木自動車での鈴木社長の想い は社内にもきちんと共有されており、外 国人に対して面倒見の良い社風が根付い た。 「 仕 事 で も 根 性 が あ る。 彼 ら を 見 て いて日本人の従業員たちもしっかりしな いといけないと思ってくれたし、社内が 活 性 化 し て チ ー ム ワ ー ク も 良 く な っ た 」 と 語 る。 「 彼 ら が、 キ ラ キ ラ と し た 目 で 一所懸命に働くようになるかならないか は、受け入れ企業の組織や社員1人ひと りがどんな気持ちで彼らに接するかによ って大きく変わる」 (鈴木社長) 。   こうした話を聞いていると、外国人に 対して愛情を持って接しているというこ とが伝わってくる。彼らもそれに答えよ うと頑張るので、良い信頼関係を築けて いるのだろう。   外国人政策の転換は、自動車整備の業 界の中にも本格的に外国人が入ってくる ことを意味する。政府は外国人の日本で の就職に、さらなる後押しをして行く方 針だ。全てのクルマ屋が外国人の受け入 れの問題に真正面から向き合う時代がき たと言える。   アセアンカービジネスキャリアの今後 のビジョンは「アセアンとの架け橋にな る」という我々の考え方、日本の自動車 整備企業が置かれている現状と未来につ いての認識、それに基づいたビジネスス キームにご理解いただける企業様にしっ かりと寄り添って共に成長していく取り 組みを進めていきたい。   そうした企業様の数はまだまだ少ない かもしれないが、そこで積み重ねられた 事例がいずれは自動車産業、業界に変革 をもたらすことができると信じている。 〈川崎大輔プロフィール〉 1975年生まれ 経済学修士、MBA(経営学修士)、京都大学大学院経 済学研究科東アジア経済研究センター外部研究員。香 港の会社に就職後、アジア各国に10年以上駐在し帰 国。大手中古車会社にて日系自動車関連企業のアジ ア進出をサポート。  アセアンの人材ソリューション事業を行うアセア ンカービジネスキャリアも立ち上げ、「循環型グロー バルビジネスモデル」を提案。

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