長野工業高等専門学校紀要 ・第 2 9 号 ( 1 9 9 5 ) 47
通勤者の出発時刻 と経路 を考慮 した 機関選択に関する行動分析
柳 沢 吉 保 飯 田 恭 敬 内 田 敬 ( 平成 7 年 9 月 2 7 日) Behaviour Analysis on Aodal Choice
Considering Departure Time and Route Choice Yoshiyasu YANAGISAWA Yasunori IIDA Takashi UCHIDA
Thi spa p e re xa m in e st h emo d a lc ho i c ec ha r a c t e rd u r i n gp e a k‑ p e r i o dt r a f h cc o n ge s ‑ t i o n. I tp r e s e n t s仇eu t i l i t yf u n c t i o no fr o a da n dr a i lwa yf a c i l i t i e ss e Ⅳi c e st ha tc o n s i s t s o ft r a v e lt i mea nds c h e d u l ed e l a ya two r ks t a r tt i mea ndt r a n s i tf a r e s .Toa na l y z e t r a v e l e rd e c i s i o n s ,an e s t e dl o gi tmo d e lo fd e pa r t u r et i me s , r o ut ea n dmo d ec ho i c ewa s e s t i ma t e d .I nt hi sa n al y s i s ,weu s e dt hePe r s o nTr i pDa t a,f r o m Suz a kaCi t yt ot he Na ga n oCe n t r alBu s i n e s sDi s t r i c t .
1. は じ め に
潜在的な交通需要が大 きい今 日,道路整備による交通渋滞の解消 は期待で きない. また整 備 までの期間が長期化 した り,膨大 な財源 を必要 とす ることにも問題がある.一 日に発生す る交通需要の大 きな割合を占めている通勤交通 に対 しては,時差出勤方式や公共輸送機関 の サービス向上, さらに経路誘導 などによって対応す る方向にある.すなわち, ある特定 の時 刻 と経路 に集中 していた トリップを, ピーク需要 コン トロールによって多の時刻,経路‑分 散 し渋滞を解消す ることを考 えてい る.通勤者 は,始業時刻の制約 を考慮 にいれた出発時刻 や経路,手段の選択を行 っている. そこで, ピーク需要 コン トロールによって トリップを分 散 させ る方法を考 えるにあた り,通勤者が どのよ うに して,手段 ・経路 ・出発時刻 の選択 を 行 っているかを究明す る必要がある.
出発時刻選択問題 に関す る従来の研究では, ドライバーは出発か ら始業時刻 までの実効旅 行時間 と,所要時間の変動 によ り生ず る遅刻確率 との トレー ドオフを考慮 していると仮定 し, 通勤実態調査 よ り実効旅行時間 と遅 刻確率 との関係 を実証的 に分析 してい る1 ト3 ) .ただ し, 経路や手段 も含めた同時選択行勤 まではふれていない.出発時刻や経路の同時選択行動 を ロ ジ ットモデルを用いて説明 した研究 がある 4) 15) . これ らは通勤効用関数を もとに交通行動 を
● 平成 7 年 1 月第 1 7 回土木計画学研究講演会にて発表 日 環境都市工学科 講師
日暮 京都大学工学部 教授
HH 京都大学工学部 講師
モデル化 し,シ ミュレーシ ョンによって行動特性を分析 している. このモデル化の概念を基 本 とし,通勤実態調査を用いて,出発時刻 と経路選択行動を実証的に分析 した研究がある6 ) . そ こでは ,NL モデルを用いて出発時刻,経路 の選択 ツリー構造を仮定 し,モデルのパ ラメ ータを推定す ることによって,選択行動パ ターンを明 らかにしている.ただ し,手段選択 ま で考慮にいれた通勤行動特性までは分析 していない.
本研究は ,NL モデルを用いて道路 と鉄道に対する交通行動の出発時刻,経路,手段選択 のモデル化を行 う.そして通勤実態調査結果を用いて,モデルの′ iラメータを推定 し,通勤 行動特性を明 らかにする.
2. 通勤行動モデル 2‑1 マイカー利用者の効用関数
ドライバーは,時刻 t s に出発 してか ら始業時刻 t 。までに費やす旅行時間損失 と,所要時 間の変動により生ず る遅刻ペナルテ ィーを考慮 して,出発時刻や経路の選択行動を行 ってい ると考 えられる 1 ) 3) .旅行時間損失 と遅刻ペナルテ ィーは トレー ドオフの関係にあるので, 所要時間の変動が確率分布 に従 うとし,効用関数は( 1 ) 式のように表す ことができる.
V ( 1, r , t sJt d )‑al +P( t .‑t s )+yF( t d I r, t s ) ( 1 ) t 。 ‑t s:実効旅行時間 α1:自動車固有の定数 β , γ: 不効用に関す るパ ラメータ F( ・) :経路 rを利用する ドライバーが,時刻 t s に出発 した ときに,
始業時刻 t d に遅刻 してしま う確率
2‑2 鉄道利用者の効用関数
鉄道利用の場合, イグレスとして徒歩や自転車の他に, 自動車,バスなどを選択す る可能 性がある.自動車やバスを利用 した場合,駅から会社 までの旅行時間の変動 も考慮 しなけれ ばならず,モデルが複雑 になる. ここではモデルを単純化するため, イグレスとして徒歩や 自転車 など,旅行時間の変動が無視できるほど小 さい手段 を選択 した通勤者を対象とした効 用を考 える.
・鉄道利用の場合 も時間損失の項 として,実効旅行時間が考 えられる. しかし所要時間の変 動 は自動車利用 と比較す ると無視できるはど小 さいので,勤務地の始業時刻に間に合 うよ う
な列車を選択 した場合,遅刻確率は 0として扱 う.一方,マイカー利用 と異な り,車 内混雑 と乗車料金を不効用 として考 えねばならない. これ らを考慮 して,鉄道の効用関数は( 2) 式の よ うに表す ことがで きる.
Ⅴ ( 2 , r, t sIt 。 )‑q2+β( t 。It s )+γ' 6( t a1r , t s ) +E f ( r )+qC( r , t s ) ( 2)
t 8 : 勤務地への到着時刻 f ( r ) :経路 r の乗車料金
C( ・) :時刻 t s に駅を出発す る経路 rの列車の混雑率
α2:鉄道固有の定数 E, q: 不効用 に関す るパ ラメータ 6( t alr , t s ) ‑( 1: t a>t 。 , 0: t a≦t 。
2‑3 通勤行動モデル
通勤行動のモデル化 は ( 1 ) ,( 2 ) 式の効用関数 に基づ くpジ ッ トモデルを用いて行 う4 ) ・ 5 ) .選 択 ツ リー構造 は図 ‑ 1 に示す ( a) ,( ち ) ,( C ) の 3 種類 を想定す る.
図 一 1 ( a ) の選択 ツリーは,各通勤者の利用手段が完全に分離固定 されていて,一方の手段
通勤者の出発時刻と経路を考慮した機関選択に関する行動分析 4 9 だけで出発時刻 と経路選択が決定 されている場合
に適用 され る.出発時刻 と経路の選択 プロセスは 既存の研究6 ) か ら,出発時刻 を下位 レベル とす る 方がモデル適合度がよいことがわかっているので, 本分析でも( a ) の選択 ツリーを適用す る.出発時刻
と経路 の同時選択確率は ( 3 ) 式で計算できる.
p( r , t s ) ‑p( r ) ・p( t s I r ) ( 3) 図‑ 1( b) の選択 ツリーは各手段選択肢の類似性 が比較的高 く,通勤者が目的地までの選択可能 な 各手段 の経路を一体 として同時選択を行 っている 場合に適用 され る. ここで レベル 2 の選択肢数 は,
自動車 の利用経路が R 個,鉄道 の利用経路が R' 個 ある場合 ( R+R' ) 個 となる.出発時刻 と各手 段経路の同時選択確率 は ( 4 ) 式 よ り計算できる.
p( r , t s )‑p( r ) ・ p( t , lr ) ( 4)
手
段 (自助車
OR鉄道 )/
\
経
路r ‑
1.‑. 良
/ \
出 発 時
刻t 暮 It O , ‑. T ( a) 選択ツリー A
手 段 / へ
道 路 経 絡 鉄 道 利 用
r = 1・ ・ ・ ・ ・ R r Z 1, . ・ ・ . R・
< / へ
出 発 時 刻
ただ し, ここでの rほ各手段 の経路をすべ て含む. I . .t 。 , . . . . T 図 ‑ 1 ( C ) の選択 ツリーは手段選択肢間の類似性が
低い場合に適用 される.手段 と経路の選択 レベル を分け,最上位 レベルを手段選択 とした.出発時 刻,経路,手段の同時選択確率は ( 5 ) 式で求められ
る
p( m, r , t s )‑p( m)・p( rlm) ・p( t s I m, r ) ( 5) 以上のツ リー構造を想定 して,通勤不効用パ ラ メークを推定す る.
3. 対象ネッ トワークと使用データ 3‑ 1 対象ネッ トワーク
本研究では,須坂市から長野駅周辺の中心業務 地区に向か うトリップを分析の対象 とす る.ネ ッ
t ■ tt o , ・ ・ ・ , T ( b) 選択ツリー B
機 関 n /\ ‑ 1 . ‑ , N 経 路 /\ r B l . ・ ・ 1 , 良 /\
出 発 時