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サービス用移動ロボットのための走行制御システムの開発

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Academic year: 2021

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サービス用移動ロボットのための走行制御システムの開発

吉富秀樹*1、秋山貴樹*2、加藤 圭*3、道廣慎二*4

Development of Motion Control System     for Wheel−type Service Robot

Hideki YOSHITOMI 1, Takaki AKIYAMA*2, Kei一.KATO 3, Shinji MITIHIRO 4

 This paper describes a motion control system of self−contained mobile robot for service use in office building. ln this development, trajectory tracking and obstacle avoidance are assigned to the robot as the fundamental and essential tasks. As the trajectory trackmg algorithm, fuzzy reasoning is used, and the obstacle avoidance system is constructed wnh ultrasonic sensor, infrared sensor and bumper switeh. This control systein is operated by decentralized microcomputer system using hierarchical control architecture.

Numerical simulation was performed to analyze the controllability of this system, arid the simulation resuks gave血poftana informa重ion餅㎜ember曲歪p fu競io豊s。f the fuzzy ru}e・TNIe experiments w。r。 alsoαぜried out to verify the simulation results using a se}f−contained mobile robot. The experimentai resuits show shat the proposed system is effective for motion control of the service robot.

1.まえがき

 近年、ロボヅトは様々な分野で注目されており、工場内 における産業用ロボヅトのみならず、我々の身近で日常的 な作業を行うサービス用ロボヅトに対しても関心が高まっ ている。例えば、高齢化社会に対癒するための介護支援ロ ポヅト(1)、人間に代わって掃除をする清掃ロボヅト(2)(3)、

農作業を代行する農業用ロボヅト(4)など多くの分野で研究 が行われている。このようなロボヅトは一般的に移動機能 を有しており、自律的な走行制御技術が必要である。

 移動ロボヅトの走行制御技術については、従来から種々 の面から研究が行われている。簡便な方法としては、車輪 に付けたロータリエンコーダなどの内界センサでUボヅト の位置を測定するというデッドレコニングの手法が用いら れるが、車輪のスリップなどのため精度の面で問題が残さ れている(5)。また、環境地図情報を予めロボットにインプヅ

トしておき、ランドマークなどの外界情報から自己位置を 認識する方法(6)もあるが、大量の画像情報を実時間内に処 理するためには高速で高級なコンピュータが必要でありコ ストが高くなる。

 我々はまず、学校やオフィスビルなどにおいて、廊下を 清掃したり書類を搬送するなどの比較的単純な作業をロボヅ

トに代行させることを目的として、超音波センサなどの外 界センサや低コストの8ビヅトマイコンを利用して、壁か ら一定距離離れた目標経路に沿って走行し、経路上に存在 する障害物に対して所定の対応動作を実現するという走行 制御技術の研究開発に着手した。

 本研究開発の中核をなす経路追従制御のアルゴリズムは、

複雑な演算やメモリ容量が少なくてすみ、マイコンの負荷 を軽減できるファジィ推論法(7)を用いた。システム面では、

主要なタスク毎に専用のマイコンを設置し、分散処理を行 うことによって高速化を図り、8ビヅトのマイコンながら

リアルタイム処理が行えるようにした。また、分散処理さ れた各種動作命令は互いに衝突しないよう優先順位を付け、

命令処理システムを階層的制御構造にしている。この制御 システムを実験用移動ロボヅトに実装し走行実験を行った ところ所定の動作を実現できたので、以下に本研究開発で 得られた成果ならびに知見について報告する。

*1機械X学科

串2機械工学科平成9年度卒業 3機械工学科平成9年度卒業 餌機械工学科平成9年度卒業  平成!0年8月31日受理

現在,(株)サノヤス・ヒシノ明昌 現在,豊橋技術科学大学 現在,日本電信電話(株)

2.サービス用移動ロボットの概要

 まず、本論文で述べているサービス用移動ロボヅトの概 要を説明する。ロボヅトの基本的な構成を図1に示す。走 行は車輪で行うが、駆動輪を左右に一輪つつ配置し、それ ぞれ独立したモータで回し、左右の車輪の回転速度を変え ることによって曲がることができる。

 位置計測システムとしては、ロボヅトの左側面に2組の 超音波センサを設置し、これによって壁までの距離とロボヅ

トの向き(以下、姿勢角と言う)を知ることができる。ま た、環境認識システムとして、前方に超音波センサと赤外

(2)

津山高専紀要第40号 (1998)

鶯;

左前超婁弩サー 前面胡音盛センリー 赤外線センサー

側面用マイコン 前面用マイコン

左前紹膨サー

メイン }イコン

左モーター 右モーター

図1 サービス用移動ロボットの基本構成 線センサを備え、走行経路上の障害物を検知する。赤外線 センサは、人間を識別するためのものである。さらに、最 前部にはバンパースイヅチを備え、万が一の衝突を検知す る。分散処理システムは、側面の超音波センサからデータ を取得しファジィ推論を行う側面用マイコン、前方の超音 波センサと赤外線センサからの情報を処理する前面用マイ コン、およびこれらのマイコンからの情報を管理統合し、

左右の車輪のモータの回転を直接制御するメインマイコン から構成されている。

3.超音波センサの特性実験

3.1 超音波センサ

 本研究開発で用いた超音波センサの距離測定原理図を図 2に示す。超音波センサの測定原理は、超音波を発射して から反射波が戻ってくるまでの時間(以下、反射時間と言

う)を計測することによって距離を測定する。すなわち、

反射時間をT、反射角をθとすると距離Lは次式で求められ

る。

  L=cTcose/2 (1)

 但し、cは超音波の伝播速度であり、気温tの空気中では

コントロール

回路 パルス

送信回路

受借回路

反射碕岡=T

送信素子

〔コ v     e

   eq

カウンター回路

皿『

受償素子

基準パルス 発信回路

図2 超音波センサの距離測定原理図(8)

物体

次式で与えられる。

  c=33L5 + O.607 t (2)

なお、今回使用した超音波センサは、超音波が送信されて から受信されるまでの間、基準パルスをカウントすること によって距離を求めている。すなわち、基準パルスの周期 を超音波が1cmを往復するに要する時間に設定すれば(こ のことは、気温20℃では基準パルス周波数17.2kHzに相当す る)、カウント数そのものがcm単位での距離を示すことに

なる。

3.2 壁に対する超音波センサの向きの影響

 このロボットは、左側面の2個の超音波センサで壁から の距離を測るが、この超音波センサはロボットに固定され ているため、ロボヅトの姿勢が変化すると壁に対するセン サの向きが変わる。特に、超音波センサの向きが壁の正面 から大きく外れると、壁からの反射波が帰って来なくなり 測定できなくなる。そこで、超音波センサが壁に対して斜 めになったときの影響を実験的に調べた。

 実験では、図3に示すように超音波センサを左右に広い 壁に正対させ、懸からセンサ基準位置までを設定値Yoとし、

これを一定に保持したまま角度θを左右に10。聞隔で変化 させて測定値を読み取った。なお、センサの基準位置は発 振素子と受信素子の申間点とした。図3の実験結果に示す ように、測定可能範囲はθ=+35。〜一40。であり、これを 越えると測定できなくなることがわかった。したがって、

ロボヅトの姿勢角は±35。以内に抑えることとした。

 なお、斜めになると指示値は大きくなると思われたが、

実際にはθ=±35。付近でも設定値Yoより1〜1.5cm程度大 きい値を示すだけであった。このことは、超音波センサの 測定メカニズムが最初に反射してくる波をとらえるように なっているため、センサに近い壁の正面部分に当たった反 射波が測定値として現れるためと考えられる。したがって、

θが±350以内であれば斜めになっても指示値の誤差は1〜

1.Scm程度である。

       Yo

   110 r  10cm

   100P一一〇一eFe−e−e−tKhertlre−e−e−c uaO一 一20CM

      A30cm    90

 t.. i 1 1 十40cm

  g so FAA AHNAA tr rArfrAAAXYL一一 xsocrn    70 P−AM)D−O−O−O−O−oo−OO−O−e−CLSLmA e 60crn

塁,。       …一   >   1 1 I A80cm

 で50       ロ90。m

  ee  B 40 ww oloocm

  盟

  Φ 30       壁   日

   20一 XLe/ ly.

   10       超音波センサ

   o

6

一50 一40 一30 一20 一10 O 10 20 30 40 50    directional angle e ( )

図3 超音波センサの壁に対する向きの影響 3.3 超音波センサの指向性

 前記3.2節で示した特性は超音波センサ自体の指向性にも

(3)

200

0 5 i

0 0 1

︵暮︶卜8器ρ暑

一e一・sensor1

¥s帥sor2

潜出物体

ix

  Y

l・

超音波センサ

①Q口

se

o

−50 一40 一30 一20 一10 O 10 20 30 40 50     shift length X (cm)

    図4 超音波センサの指向性

Y

麺  

Position

依存するものと考えられる。そこで、超音波センサの指向 性について実験した。実験は、図4に示すように検出物体 として大きさ4⑪5mm×515mmの平板を、超音波センサの正 面から左右へ移動させ、超音波センサが検知できなくなる 限界点を求めた。図4の実験結果によると、検出可能範囲 は、角度に換算して左右とも15。〜160となっており一般 的なものである。

3。4 壁の段差に対する超音波センサの反応

 廊下を壁伝いに走行する場合を考えると、壁には柱など の段差が存在する。この段差に対する超音波センサの反応 を調べた。実験は、図5に示すように壁の段差から超音波 センサまでの距離Y⑪を一定に保ったまま、右方から段差に 近付けて行き、指示値の変化を読み取った。実験結果を図

5に示す。図からわかるように、超音波センサは段差のエヅ ジにくる前から段差を感知している。これは、壁から離れ るほど早めに感知する傾向であり、壁の段差からの距離が roOcmの位置(上中で◇マーク)では、段差のエヅジの約 35cm前から指示値に変化が現れている。

  140 r一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一 Yo

      AIOcm

  12e 一一一一一一一一一一一.一一eocF一一a e 20cm

      O30cm

塞1・・      否19::

      A60cm

 $ 80

      ×80cm  写      olOOcm  8 6Q

 8      壁

 器      x)㎝

 霞40      Yo   20

      超音波センサ    o   −IO O 10 20 30 40 50

        distance X [cm]

   図5 壁の段差に対する超音波センサの指示値

4.走行制御アルゴリズム

4..1 移動ロボットの運動学的解析

図6 ロボヅトの運動の解析モデル

 左右独立の車輪の速度を変えて操舵するタイプの移動ロ ボヅトの運動を予断する。解析モデルを図6に示す。壁に 垂直な方向にX軸をとり、壁に平衡にY軸をとる。ロボヅト はX−y平面上を走行するとする。時刻tにおける右車輪速度 をVr(り・左車輪速度をVL(t)、左右の車輪間距離をB・ロボヅ

トの姿勢角をθ①、ロボットの旋回角速度をω①、旋園の 曲率半径をρ(t)とする。また、ロボット中心の位置座標は 左右の車輪の中間位置としP(X(り,Y①)とする。

 ロボヅト中心の速度Vm①は以下となる。

Vm(t):=

Vr(り+VL(り

2

また、曲率半径は次式よ.り求められる。

(3)

    B(Vr(り十VL(り)

 p(t) :in (4)

    2(Vr(り 一 VL(り)

微小時間△t間にロボヅトが△θだけ旋回したとすると、

 ρ(り・△θ=Vm(t)・△t       (5)

が成り立つ。式(5)に、式(3)、式(4)を代入して整理すると 次の式が求まる。

 de(宣)       Vr(り一VL(t)

    ==w(t) =:一 (6)

 dt Bこれらの式から、ロボットの座tw P(X(り,Y(t))および姿勢角 度θ(t)は以下のような関係となる。

X(り=Xo一∫Vm(り・sinθ(り・dt

Y(t)= Yo+ S Vm(t) ・ cos e(t) ・ dt e (t): eo十 s to (t)・dt ・

4。2 0N−OFF制御による走行制御

(7)

(8)

(9)

 壁に沿って走行する制御方法として最も単純な方法は、

目標経路から右にずれたら左にハンドルを切り、逆に左に ずれたら右にハンドルを切るという方法であろう。そこで、

これをON−OFF制御と称し、以下で述べるファジィ推論によ

(4)

津山高専紀要第40号 (1998)

る走行制御と比較する。ON−OFF制御の方法は簡単であり、

サンプリング周期△tごとに壁までの距離を測り、目標経路 から片方にずれておればロボヅトの姿勢角θを△θだけ反 対側に修正するというものである。したがって、図6のよ うに目標経路からの偏差をδとすれば、符号に注意して、

 Ae=十a 610 (lo)

 A e=一a 6 一く.o (11)

   但し、aは修正角度の大きさを表す数値

となる。

    pi

        Fuzzy Lo +A 6 1 contloller

AV Mobile Robot

e

五]x

4.3 ファジィ推論による走行制御

 ファジィ制御規則は、目標経路からの偏差δ(t)と姿勢角 θ(t)から決まるmポットの状態に対して、左右の車輪の修 正速度△V(t)を決定するもので、図7のような4つの規則 を適用している。この制御規則の構造は菅野(7)の提案した ものと同様であるが、ファジィ変数は本ロボヅト用にチュー ニングしてある。前件部である目標経路からの偏差δ(t)の ファジィ変数は2つで、.ラベルはNEGATIVE、 POSITIVEと してある。まだ、姿勢角θ(t)についてはファジィ変数は、

LEFT、 MIDDLE、 RIGHTの3つとした。後件部となる左右 車輪の修正速度△V(t)については、左側を加速するL−ACC

と、右側を加速するR−ACCの2つとした。

NEGATIVE MIDDIIE       レACC

Ri:6is [))r : eisA Av」ts

一20cm o 2e cm 4s  o 4s  . s cnys O s cnvs

  POSITIVE MIDDLE R−ACc

R2: 6is di eisA Avisdi

R3:

R4:

一20 cm o 20 en) .4se o       RIGHT・

4s  一5cmis O S crnls

       R−ACC

・仁:\…∠コ

一450 O 4S  一5ctn/s   [EFT

O Scrnls        1.ACC eis44sO O 450 .5cfnXs O 5 crTVsп@Avits

図7 ファジィ制御規則

 これら4つの制御規則について以下に概要を説明する。

制御規則の符号は図6のモデルに基づいており、例えば、

ルール1の制御規則は、

 Rl: lf 6=NEGATIVE and e=MIDDLE then AV=L−ACC と記述できるが、これは「ロボットが目標線の左側にあっ て、向きが正面なら、目標線に近づくよう左の車輪速度を 上げ、右の車輪速度を下げろ」ということを意味する。以 下同様に、ルール2からルール4までの制御規則は以下の

ように記述される。

 R2: lf 6=POSITIVE and e=MIDDLE then AV=R−ACC  R3: lf e=RI6HT then AV=R−ACC

 R4: lf e=LEFT then A V=L−ACC

 サンプリング毎に計測されるδとθをファジィ制御器の 入力δ0、θ0とすれば、4っの規則における適合度μ1、

図8 ファジィ制御のブロック線図 μ2、μ3、μ4は、それぞれのメンバーシップ関数から    pt 1 = NEGATIVE(60) A MIDDLE(eO)

   Xt2 = POSITIVE(60) A MIDDLE(eO)

   Lt3 = RIGHT(eO)

   /t4 = LEFT(eO)

と求まる。

 次に、制御則の媛件部は    IL 1 = L−AqC(AVI)

   Lt 2 = R−ACC(A V2)

   LL 3 = R−ACC(AV3)

   ,CL4 = L−ACC(AV4)

と表される。後件部では適合度μから修i正速度△Vを求める ことになるから、それぞれ逆関数で表現すれば、

   AVI = L−Acc 1(,cLl)

   Av2 = R−Accrl(pa 2) ,    Av3 = R−Acc 1(,ct 3)

   AV4 = L−Acc−i(,a4)

となる。これらが、規則RlからR4までの推論結果となる。

全体の推論結果△Vは、規則R1からR4までの適合度μ1か らμ4による重み付き平均を用いて

AV=,tt1−AVI十,u2−AV2十IL3−AV3十,ct4・AV4

pt 1十pt 2十pt 3十pt 4

(1−2)

によって求めた。なお、サンプリング毎に出力される△Vは 零次ホールドした。

 次に、ロボット中心の速度Vmは一定速度を保持するもの としたので、ファジィ推論の結果として修正速度△Vが出力 されると、右車輪速度Vr(り、左車輪速度VL(t)はそれぞれ次 式で与えられる。

 Vr=Vm十AV (13)

 VL=Vm−AV (14)

 このファジィ制御のブロック線図を図8に示す。

5.シミュレーション

 制御性を考察するとともに、各種制御パラメータをチュー ニングするため走行制御シミュレーションを行った。シミュ

レーションのモデルは第4章で導いた運動方程式を用い、

積分方法はオイラー法によった。また、ファジィ制御と比 較するため4.2節で述べたON−OFF制御についてもシミュレー

(5)

ションした。まず、ON−OFF制御のシミュレーション結果か ら示す。

5.1 0N−OFF制御の走行シミュレーション

 目標経路を壁から50cmの位置としてON−QFF制御のシミュ レーションを行った。ON−OFF制御では、左側面の2つの超 音波センサのうち前側のセンサのみを使用した。

(a)修正角度△θの影響

 サンプリング周期△tを1秒、初期位置を壁から70cmとし て、サンプリング毎の修正角度△θを1。、50、10。と変 化させてシミュレーションを行ったときのロボットの走行 経路を図9に示す。目標経路を中心として左右に蛇行して おり、ON−OFF制御の特徴が出ている。また、△θが5。の 場合には発散する傾向を示している。

(b)サンプリング周期△tの影響

 修正角度△θを5。として、サンプリング周期△tをO.5秒、

1秒、5秒としたときのシミュレーション結果を図10に示す。

このときにも、左右に蛇行している。また、サンプリング 周期が長くなるにつれて、目標線に到達するまでの走行距 離も長くなる傾向となっている。

 以上の結果から、例えばサンプリング周期△tをO.5秒、

修正角度△θを10のように設定すれば一応走行可能である が、経路は振動的に蛇行しており、ON−OFF制御ではサービ ス用移動ロボヅトの走行制御としては十分とは言えない。

5。2 ファジィ推論による走行制御シミュレーション  目標経路をON−OFF制御と同様に壁から50cmの位置とし て、ファジィ推論による走行制御シミュレーションを行っ

た。

(a)メンバーシヅプ関数のチューニング

 シミュレーションによってメンバーシップ関数のチュー ニングを行った。チューニングの評面基準は、目標経路に 早く収束することと、ロボットの姿勢角が超音波センサの 測定可能範囲である±35。を越えないことである。ここで は、一例として図7の姿勢角θのメンバーシヅプ関数のチュー ニング結果を示す。メンバーシヅプ関数の三角形の裾野の 値θsを30。、450、90。と変化させたときのシミュレーショ

ン結果を図11に示す。目標経路には90。のときが最も早く 到達するが経路がやや振動的であるため、本研究では45。

を採用した。このようなチューニング結果として、図7の ようにメンバーシヅプ関数の形を定めた。

  90   80   70冨60 冥50  琴40 蕩30  鼠2Q   10    0

    0    2    4    6    8 10

      traVeling distance Y [m] (At=1 see)

  図9 0N−OFF制御における修正角度△θの影響

△θ=1[.]

σ ・・一…@△θ一5[.]

一一一 「θ講10[o]

ち込 5 1

u ξ  」 ︑覧 ll 3

3

覧︑ 0 0 0 0 0 0 0 0 

0

87654321

﹇§﹈×琶三の鼠 、、    /

\\ !  \

、  \!     、   ノ

_  \、    鼠:f

、       

△t=0.5[s]

…・一・ 「t;1[s]

鼈鼈黶 「t=5[s]

0 2 4traveling distanee Y [m]6 8 10  (A e == la)

図10 0N・OFF制御におけるサンプリング周期△tの影響

70   60 團・・

〉〈 40

琶30

1E

8 20A

  10

  e   O O.5 1 一 1.5 2 2.5 3

       tarveling distance Y [m]

図11 姿勢角θのメンバーシップ関数のチューニング

一θs=30[.]

@  θs−45[。]

@  θs=go[o]

 なお、後件部のメンバーシップ関数の三角形の裾野の値

△Vsは10cm/sで良好な特性を示したが、後述する実験用ロ ボヅトに採用しているステヅピングモーSの特性上の制約

(△Vs=IOcm/sでは脱調や振動が発生した)から図7のよう に5cm!sとした。したがって、駆動モータにサーボモータを 使えばメンバーシップ関数の選択幅は広がると思われる。

(b)初期位置の影響

 ロボットの初期位置Xoを壁から20cm、30cm、40cmとし てシミュレーションを行った結果を図12に示す。初期位置 が目標線から離れると当然ながら、収束距離が長くなって いる。しかし、注目されるのは、初期位置のずれが大きい 場合でも、姿勢角が大きく変化することはなく、ある限度

60 0 5

0 4 眉︒﹈× 0   0   03   2   1

口︒刷誠8Ω

o

一XO=20[cm}

黷wO=30[c皿]

XO=40[cm]

o O.5 1 1.5 2 2.5

 traveling distance Y [m]

図12 初期位置の影響

3

(6)

津山高専紀要第40号 (1998)

(c)

60 0 5

40 0 3

0 2

0 1

肩︒﹈×口︒三・︐g

o

一θ〇二20[。]

θo;30[.ユ

ニo;40[.]

o O.5 1 1.5 2 2.5

  traveling distance Y [m]

図13 初期姿勢角度の影響

3

内に収まっている。これは、メンバーシップ関数のうち姿 勢角に関する部分の効果で、姿勢角が過度に目標経路側に 切れ込むことを抑えているためである。また、ロボットの 走行経路も、前述のON・OFF制御のように振動的に蛇行す ることはなく、目標経路に滑らかに移行している。

(c)初期姿勢角度の影響

 ロボットの初期位置を壁から30cmとして、初期姿勢角θo を20。、30。、400と変化させてシミュレーションを行っ た。結果を図13に示す。この場合は位置・姿勢角とも壁側 へずれているため、動きだすとすぐに大きく姿勢を修正し 目標経路へ向かっている。また、一旦目標経路側へ向くと、

前記(b)の結果と同様に、姿勢角が過度に切れ込むことはな く、ほぼ一定の姿勢を保ちながら目標経路へ接近している。

(d)壁の段差の影響

 壁に凸状の20cmの段差がある場合のシミュレーション結 果を図14に示す。このロボヅトのように側面の2つの超音 波センサでロボットの向きを算出する方式においては、壁 の段差は問題となる。つまり、前方のセンサが先に段差を 検知すると、このセンサの指示値のみが急に小さくなり、

このことはロボヅトにとって参れば姿勢角が壁側に向いた と錯覚することになる。この結果、位置・姿勢角ともに壁 から離そうと作用し、姿勢角が壁と反対側に大きく切り込 むことになり、超音波センサの測定可能範囲から外れる恐 れが生じる。すなわち、図14の(b)に示すように、前方のセ ンサが段差を検知するY=05m付近では△V=一5cmlsという大・

きな指示値を出し、このとき姿勢角は同図(c)に示すように 一30。という過大な値となっている。Y=0.7mになると後方 センサも段差を検知できるので、姿勢角が過大となってい ることに気付き、同図(b)のように△V=2cm/sという命令を 出し姿勢を修正している。段差部の走行制御については、

今後とも改良を要すものと考えられる。

 40 30

E]20

 10Φ

  0.

莇一10

§一20  −30  −40

0

∩0 99 1 0

[ロ̲暮﹈﹀ぐ喝口邸8日OO  ︸  一 一  一  一  一   876543211 0乙3 4ム  0 ρ0 70 0 0 0 0 0 0 0

0

冒︒﹈×賃︒碧鼠

o O.5 1 1.5 2 2.5

 traveling distance Y[皿]

(b)

3

O.5 1 1.5 2 2.5

  traveling distance Y [m]

(a)

3

    t両ecto琢 黷翌≠撃

o

プアジイ 推論

非常停止

O,5 1 1.5 2 2.5

  traveling distance Y [m]

図14 壁の段差の影響

左右輪 速度修正

目標経路 離脱

バンパー接触

      前進

タイムアウト

30cm後退 警告発齊

3

障害物 接近

6.リアルタイム処理技術 }時停止   障害物が人

6.1 分散処理システム

 このロボットは、車輪を回すという基本的な動作以外に、

図15に示すように、各センサの情報を獲得し対応動作を行っ たり、この情報を用いて推論するなどの機能を必要とされ

右へ

曲がる 障害物が壁

図15 ロボヅトの動作

(7)

超音波センサ 赤外線センサ

前面用マイコン

・陣害物検知

・人間識別

障害物接近

バンパースイッチ

超音波センサ 超音波センサ

側面用マイコン

・位置検知

・姿勢角計算

・フアジイ推諭

メインマイコン

・動作遺択

・モータ回転速度

・モータ回転方向

・非常停止

一モータドライバ

音声発生装置

車輸速度修正

図16 分散処理システム

ている。一方、このロボットに採用している8ビットのマ イコンは安価で信頼性が高いという特徴があるが、処理速 度においては1個のマイコンで全ての情報をリアルタイム に処理する能力はない。そこで、本研究ではこれらのマイ コンを3個設置し、タスク毎に分散処理をさせることとし

た。

 それぞれのマイコンの主要処理項目を図16に示す。前面 用マイコンは、超音波センサの情報から前方の障害物まで の距離を計測し、接近したらメインマイコンへ知らせる。

また、それが人間か物かを赤外線センサで識別する。側面 用マイコンは、側面の2個の超音波センサが互いに干渉し ないよう計測タイミングを調整するとともに、得られた距 離情報からファジィ推論によって左右のモータの速度修正 値を計算しメインマイコンへ指示を送る。一方、メインマ イコンは通常は左右のモータを回すだけの最も下層レベル の仕事をしているが、側面用マイコンや前面用マイコンか ら信号が来たときには、優先順位に従って動作する。なお、

バンパースイッチが入るとメインマイコンの処理が止り直 ちに停止する。

6.2 階層的制御構造

 分散処理システムを有効かつ能率的に機能させるため、

各タスクには優先順位を設け、階層的制御構造(9)にしてい る。階層的制御構造においては、高位の動作は低位の動作 を一時的に抑えることができ、命令の衝突を避けている。

これにより、刻々と変化する状況にリアルタイム対応する ことが可能となる。また、各タスクはそれぞれが独立した 動作であるから、お互いに影響することはなく、プログラ ム開発においても、あるタスクを修正しても、それによっ て他の階層のプログラムを修正する必要はないなどの利点 がある。また、お互いの階層間で影響がないから、新しい タスクを増やして行くことも容易となる。

 本丁ボヅトの階層構造を図17に示す。まず、直進命令は 最下層で、ファジィ制御命令、障害物回避命令、緊急停止 命令の順に上位階層となっている。したがって、直進中に

ファジィ制御命令が入れば、それを優先させその命令に従っ て車輪を動かす。緊急停止命令は全ての命令より上位にあ

り、この命令が入ればロボットは直ちに停止する。

バンパース

イッチ 緊急止

7.実験用移動ロボット

 実験用に製作した小型移動ロボヅトの外形を図18に示す。

車体は2階建て構造になっており、1階部分にモータ、ド ライバおよび電源等が置かれている。2階部分はセンサや マイコンを設置している。主要寸法は、全長380mm、全幅 300mmで、側面の2基の超音波センサ間の距離は200mmと

なっている。

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図18 ロボヅトの外形

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 このロボットのシステム構成を図19に示す。これは前記 の図1と同様の構成である。駆動用モータには、マイコン でデジタル制御し易いステッピングモータを採用している。

なお、電源は12Vバヅテリーを2個と9V乾電池を搭載し、

マイコン用の5V電源はDC−DCコンバータから供給している。

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図19 ロボットのシステム構成

8.走行実験

塵=⊃一一ss モーター

図17 階層的制御の構造

8.1 0N−OFF制御による経路追従走行の実験

 実験は、サンプリング周期約0.5秒、一回当たりの修正角

(8)

津山高専紀要 第40号  (1998)

度△e=1。とし、初期位置は壁から70cmの条件で行った。

結果を図20に示す。破線が実験結果、実線が同一条件での シミュレーション結果である。実験でもシミュレーション と同様に振動的に蛇行する傾向であることがわかる。なお、

走行距離が長くなるとタイヤのスリヅプのため、実走行経 路はシミュレーションのものとはずれてくる。

ファジィ推論による 経路追従走行

超音波センサで前方の 壁を検知して右旋回

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図20 0N−OFF制御による走行実験結果 8.2 ファジィ推論による経路追従走行の実験  実験は、サンプリング周期約0.5秒、初期位置は壁から 30cmの条件で行った。実験結果を図21に示す。破線が実験 結果、実線が同一条件でのシミュレーション結果である。

実験でもシミュレーションと同様に、滑らかに目標線に収 束しており、ファジィ制御による経路追従走行めアルゴリ ズムの妥当性が実証できた。なお、ここでは示していない が、壁の段差部では5.2節(c)で述べたようにロボットの姿勢 角が大きく変化する現象が実験でも認められた。走行は可 能であったが、今後の改良課題と思われる。

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0 2

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図21 ファジィ推論による走行実験結果

3

8.3 分散処理システムと階層的制御方法の実証実験  図22に示すようた、ロボヅトを壁や人間に向けて走行さ せ、障害物に対してロボヅトが所定動作を行うことを確認 した。なお、赤外線センサとして焦電型センサを用いたた め、人間が動いていないと検知できないという問題が.あっ たが、分散処理システム自体は正常に動作しており、この システムの有効性を確認することができた。

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障害物に衝突されて

非常停止 赤外線センサで人間を検知した

ので一旦後退して警告を発声

図22 走行制御の実証実験結果の概要

9.まとめ

 本研究では、サービス用移動ロボットの自律移動をマ イコンで実現する方法として、ファジィ推論と分散処理 システム及び階層的制御手法を取り入れた走行制御シス テムを開発し、シミュレーションによって制御性を考察 するとともに実験用移動ロボヅトを製作し走行実験を行っ た。その結果、壁の段差部における走行性については改 良の余地があるものの基本的な経路追従性は良好であり、

障害物に対してもリアルタイムに所定の対応動作を実現 できることが確認でき、本剃御システムの有効性が実証 できた。

参考文献

(1)河野寿之・神田真司、高齢者・陣害者用食事搬送自動ロボヅ  トシスデム、日本ロボット学会誌、16−3、.(1998)、

 pp.317−32e

(2)青山元・ほか4名、自律走行式床面清掃ロボットの開発、

 日本ロボット学会誌、16−1、(1998)、pp.57−64

(3)津田高治・ほか5名、ゴミ収集用作業移動ロボヅト C−LABOR の開発、日本機械学会ロボティクス・メカト白  ニクス講演会 96講演論文集、(1996)、pp.1441−1444

(4)佐藤員暢・山下淳、固定経路誘導式園芸ハウス内移動ロボヅ  ト、日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会 96  講演論文集、(1996)、PP.578−581

(5)相良晃市・ほか2名、キャスター式位置・方位センサーを  用いた車輪式移動ロボットの走行制御、日本機械学会ロボ  ティクス・メカトロニクス講演会97講演論文集、(1997)、

 pp.521−522

(6)福田敏男・ほか6飾車、自律移動ロボットの視覚によるナ  ビゲーションシステム、日本機械学会論文集、63−613、

 C(1997)s 3215 3222

(7)菅野道夫、フナジィ制御、(1993)、日刊工業新聞社

(8)解音波デジタル距離計キヅト製作・技術マニュアル、

 (有)秋月電子通商

(9)J.L.ジョンズ・A.M.プリン著、熊切康雄訳、.移動ロボット、

 (1996)・㈱トヅパン

参照

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