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バ ラ ンス・ス コアカ ー ド研 究 の方 向性

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(1)

バ ラ ンス・ス コアカ ー ド研 究 の方 向性

導 入 , 業 績 評 価 , コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンの 側 面 か ら ‑

は じ め に

バ ランス ・スコアカー ド

( Ba lanc e dSc or e c ar d:

以下

BSC)

が提唱 されて以来 およそ

1

0年 の歳月 が流 れた

。BSC

は今や,世界 中でその有効性が喧伝 され,多 くの実務 家 や研究者 の関心 を集 めて い る。近年 わが国 において も

BSC

を導入す る企業が見受 け られ始 めた0

BSC

につ いて は数 々の成功事例が紹介 されてい る。 しか し

,BSC

を導入 した ことによ って業績 が 向上 した と して も

,BSC

によ って もた らされた成果であ ると特 定 す る ことはで きない。経 済状況 や 規制緩和のよ うな外的 な要因, あ るいは, もともと所有す るコ ンピテ ンスのよ うな内的な要因 などさ まざまな要因 によ って影響 を受 けるか らで あ る。 逆 に

,BSC

導入後 に業績が悪化 した場 合で も, そ の原因が

BSC

の導入プ ロセスや運営 の仕方 にあるのか, それ とも

BSC

の システム自体 にあ るのか を 判別す ることは難 しい。

BSC

導入 によ る成果 を測定 す ることが困難であ る以上

,BSC

導入 によ る長 期的 な成功 を考え る場

,BSC

の システムに欠陥が ないか ど うか検証す る必要 があ る

.BSC

に対 して これ まで何 の批判 も な されて こなか ったわ けではない

。BSC

の根幹 となるコ ンセプ トを揺 るがせ るよ うな批判 もあ る。

これ らの批判 を討究 し, 今後検討すべ き課題 を導 き出す ことは

,BSC

の理論 的な妥 当性 を追及す る のに貢献す るであろ う。

以上のよ うな観点 か ら,本稿 で は

,BSC

研究 において さ らに論及 すべ き課題 が明確 にな るよ う,

BSC

の システムにつ いて考察 す ることが E]的 とな る。 この 目的 を達成 す るために, まず, 第‑節 で は,戦略的 マ ネ ジメ ン ト・システムと しての

BSC

を三つ の側面 (多面 的業績測定 システム.予算 ・ 計画 との統合, コ ミュニケー シ ョン) に分 けて概説す る。 次 に,第二 節 にて

,BSC

に対 して これ ま でな されて きた批判的見解 を レビューす る。 その際 に

,BSC

に対す る批判が

BSC

の どの よ うな側面 において何 を問題 と してなされてい るのかを明示す る。 そ して,第三節 において,第二節で の議論 を もとに,新 たにどのよ うな研究が求 め られ るのかを明 らか にす る

1.戦時的マネ ジメ ン ト・システム と しての

B S C

BSC

は, イ ノベー シ ョン ・アク シ ョン リサーチ

)

( Kapl an,1 9 9 8 )

のサ イクルに従 って発展 して

(1)

イノベーション・アクションリサーチとは,研究者自らが実務へ理論を導入 し実践に移すことに深 く介入 しながら.理論モデル自体の進化を目指す方法論である。

(2)

い る。 当初, 多面 的 な業 績 測定 シス テ ムを意 味 して い た

BSC

は, 戦 略 的 マ ネ ジメ ン ト ・システ ム‑

と変 貌 した(2)。 この発 展 に伴 って, 議論 の焦点 は,何 を測 定 す るのか とい う問題 か ら指標 を どのよ う に利 用 す るのか とい う問題 へ移 る ことに な った

( Kapl an

&

Nort on,2 001 b,p.1 58)

下 図 は戦 略 的 マ ネ ジメ ン ト ・シス テ ムの

BSCの実 行 プ ロセ スを示 して い る。 本節 で は,BSCの コ

ンセプ トを下 図 に示 す三 つ の側面 (多面 的業績 測定 システム,予算 ・計 画 との統 合, コ ミュニ ケー シ ョ ン) に分 け, それ ぞれ につ いて概 観 す るO あわせ て, それ らの側面 をっ な ぐ鍵 とな るコ ンセプ トを示 す。

戦 略 的 マネ ジメ ン ト ・システ ム と して の

BSCの実 行 プ ロセ ス

ト 1

多面 的業 績 測定 システム

BSC

は, 財 務 的指標 の 問題 点 (3)を克服 すべ く, 四つ の視 点 (4)を介 して財 務 的指 標 と非 財務 的指標 を併 用 す る業 績 測 定 シス テ ム と して 開発 され た。 BSCの そ もそ もの基 本 的 性 格 は, 財務 的指 標 と非 財 務 的指 標 を休系 的 に ま とめ たマ ネ ジメ ン ト ・レポー トで あ った。 マ ネ ジメ ン ト ・レポー トに非 財務 的指標 を含 め る こ とに よ って, マ ネー ジ ャーが意 思 決定 を行 う際 に業 績 を多面 的 に評 価 で きるよ うに 図 ったので あ る

(2) BSCの発展過程 は,河合 ( 2 0 0

1),長谷川

( 2 0 0

1),乙政

( 2 0 0 2 )

,挽

( 2 0 02 )によって考察されているo (3) I t t ne r&Lar c ke r( 1 9 9 8 b,p. 2 7 )

において,次のような財務的指標の問題点が挙げ られている。① 将来志

向ではな く過去志向である,② 将来の業績を説明するための予測能力に欠けている,③ 短期的な行動を促進 する.④ 問題 に対 して根本的な原因を指摘 したり,解決に要す る情報を提供 した りしないので,管理の ソー ルには向かない.⑤ 重要な ビジネスの変化を早期に把握できない.⑥ 統合 ・集約 されすぎているため管理行 動の指針にならない,⑦ 企業内において職能横断的なプロセスではな く職能を反映する.⑧ 知的資本のよう な無形資産を定量化するには不向きである。

(4)

四つの視点 は,① 財務の視点

( Fi nanc i alPe r s pe c t i v e )

,② 顧客の視点

( Cus t ome rPe r s pe c t i v e)

,③ 社 内 ビンネス ・プロセスの視点

( I nt e r nalBus l ne S SPr oc e s sPe r s pe c t l V e )

,④ 学習 と成長の視点

( Le ar nl ng andGr owt hPe r s pe c t i v e )か らなる。 ただ し,開発当初の BSC( Kapl an

&Nor

t on,1 9 92 )

では,③ の社内

ビジネス ・プロセスの視点が社内 ビジネスの視点

( I nt e r nalBus i ne s sPe r s pe c t l V e )

,④ の学習と成長の視点 が革新 と学習の視点

( I nnova t l OnandLe ar nl ngPe r s pe c t i v e )となっている 。BSCの発展過程で,革新と学

習の視点で捉えていたイノベーションに関する指標が, ヒシネス ・プロセスの一部として取 り入れ られるよ

うになったのである (長谷川,2

0 0

1

)

0

(3)

バ ラ ンス・ス コア カー ド研究 の方 向性

31

そ の後

,BSC

は. 多面 的 業績 測定 システ ム と して の側 面 を 中核 と して, 戦 略 を実 行 お よび管 理 す るた め の戦 略 的 マ ネ ジメ ン ト ・シス テ ムへ と発展 して い くこ と に な る

0 Kapl an & Nor t on( 1 996a)

は, 戦 略 的 マ ネ ジメ ン ト ・シス テム と しての

BSC

を利 用 す る こ とで, 四 つ の マ ネ ジメ ン ト ・プ ロセ (5)が導入 で きる ことを明 らか に したO

四 つ の マ ネ ジメ ン ト・プ ロセ ス とは,① ビ ジ ョンを わか りや す い言 葉 に置 き換 え る (

t r ans l at i ng t hevi s i on)

, ② コ ミュニ ケ ー シ ョ ン と リン ケ ー ジ

( c ommuni c at i ngandl i nk n ge)

, ③ 経 営 計 画

( bus i ne s spl anni ng)

,④ フ ィー ドバ ック と学 習

( f e e dbac kandl e an i ng)

, を指 す。 「多面 的業 績 測 定 システ ム」 は, この うち.① の 「ビジ ョンをわか りやす い言 葉 に置 き換 え る」 と ④ の 「フ ィー ド バ ックと学 習」 に対 応 して い る

「ビジ ョンをわか りやす い言 葉 に置 き換 え る」 プ ロセ スで は. トップ ・グル ー プが ビジ ョンや戦 略 を組 織成 員 に理解 しや す い オペ レー シ ョナル な業績 指 標 (非 財 務 的 指標

)

(6)に置 き換 え る。 この プ ロ セスを通 じて, ビジ ョンや戦 略 をあ い まいに理 解 して い る ことが 多か った トップ ・グル ープの あ いだ で, 戦 略 目標 や それ を達 成 す るの に必 要 な行動 とは何 か とい うこ とにつ いて明快 な コ ンセ ンサ スが得

られ る。 この プ ロセ スで は,戦 略 マ ップ

( St r at e gyMap

)(7)が 大 きな役 割 を果 たす。

「フ ィー ドバ ック、と学習」 プ ロセ スで は,戦 略 の有効性 が検討 され るO このプ ロセ スにお いて, トッ プ ・マ ネ ジメ ン トは従 来 あ ま り意 思決 定 に利 用 す る ことが なか ったオ ペ レー シ ョナ ルな業績指 標 に注 目す る

。BSC

が もた らす この よ うな フ ィー ド ック情 報 を もとに, 月次 あ るい は

4

半 期 ごとの会 議 において,戦略 の基 礎 とな る仮 説 が検証 され, 評価 され,修正 され る。 この 「フ ィー ドバ ック と学 習」

のプ ロセ スは,① の 「ビジ ョ ンをわか りやす い言 葉 に置 き換 え る」 プ ロセ ス に還 元 され る。 こ こで, 必要 に応 じて戦 略 の仮 説 に関 す る最新 情 報 や次 期 に必 要 なパ フォーマ ンス ・ドライバー

( pe r f or manc e dr i ve r s

) (8)が再度 検 討 され る。

BSC

の 「多面 的業 績 測定 システ ム」 の側面 で は,上 記 二 つ の プ ロセ ス を通 じて, トップ ・マ ネ ジ メ ン トのあ いだで 自社 の事 業 の理 論

(

9

)( Dr uc ke r,1 99 4)

が理 解 され,恒常 的 に検 証 され る ことにな る。

(5) Ka pl a n & Nor t o n( 2 0 0 0 b)

では.四つのマネジメント・プロセスをベースにして,戦略志向組織

( St r at e gy‑

Fo c us e dOr ga ni z at i o n)

になるための五つの原則が唱えられているO

(6)

非財務的指標は,財務的指標 とは異 なり,会計的な手続 きを経ないため,一般的に誰にも理解が容易であ る。なお.非財務的指標の長所と短所については,乙政

( 2 0 0

1)を参照されたいo

(7) 戦略マップとは,戦略を記述するためのテンプレ‑ トであるD

Kapl a n & Nor t on( 2 0 0 0 b)

によれば,戦略に は補足的な戦略的テーマが設定されている。補足的な戦略的テーマとは.(丑特権の構築

( Bul l dt hef r a nc hl S e‑

新製品 ・サービスの開発 と新 しい市場や顧客セグメントへの浸透による価値創造),② 顧客価値の増進

( Ⅰ nc r e a s e c us t o me rv al ue

一現在の顧客 との関係の強化),③ 卓越 したオペ レー ションの達成

( Ac hi e v eo p e r a t i ona l e xc e l l e nc e

‑顧客に現在の製品 ・サービスを効率的かつ タイム リーに提供するための価値創造),④ 良 き企業 市民 とIi:

( Beago o dc or po r at ec l t l Z e n

一外的利害関係者 ・規制団体 との関係の管理)を指すD四つの戦 略テーマの うち,最 も重視するテーマを決定す ると.戦略マップに基づいて.各視点でどのような要因を重 視 しなければならないか,また,どのような要因を見落 としていたかをチェックすることができる。

(8) 成果指標 (経営活動の結果を事後的に示す指標)向上の原動力 となる指標を指す

(9)

事業の理論

( at he o r yo ft hebus i n e s s )

は,① 組織を取 り巻 く環境に関する前軌 ② 組織の特定の使命 に関する前提,③ 組織の使命を達成するために必要な中核 となる頼みに関す る前提, という三つの前提か ら 横坑される

( Dr uc ke r ,1 9 9 4 ,p. 9 9 )

O

(4)

卜 2 予算 ・計画 との統 合

「予算 ・計 画 との統 合」 は,上述 ③ の 「経営計画」 に対応 して い る。 この プ ロセスにおいて

,BSC

と計 画 や予算 が統 合 され るD具体的 には, まず各視点 に記載 され る指標 に対 して意欲的 な ターゲ ッ ト が設定 され る。 そ うす ることで トップ は組織 を変革 す る ことが必須で あ る ことを従業 員に伝達 す る

次 に, 設定 され た ターゲ ッ トを達成 す るための手 段 と して

TQM ( To t alQua l i t yManage me nt )

リエ ンジニア リング

( r e e ngi ne e r i ng)

のよ うな戦 略的実施項 目

( s t r at e gi ci ni t i at i v e s )

を決定す る。

同時 に, それ らの実施項 目に必要 とされ る財務 的 ・人 的資源が明確 に され る。 さ らに, 各視点 の指標 に関 して特定 の短期 的 ターゲ ッ ト

( ml l e s t one )

が確立 され, この短期 的 ターゲ ッ ト達成 に向 けて当 該年度 の資源配分 と予算 が計上 され る。

3

トップダ ウ ン ・コ ミュニケー シ ョン

上 図 に あ る 「コ ミュニ ケー シ ョン」 は,上述 ② の 「コ ミュニケー シ ョンと リンケー ジ」 に照応 し て い る。 戦 略 を具体 的 に記述 した

BSC

を組 織 全体 に普 及 せ しめ る ことで. 全成 員を戦 略 に向 けて統 合す るプ ロセスであ るO 全成員 を戦 略 に向 けて統合す るため に用 い られ る コ ミュニケー シ ョンの方法 は, 大 き く分 けて三 つ あ る

。 i .

いろいろな コ ミュニ ケー シ ョン ・メデ ィアの利 用 お よびに教育 プ ロ グラムの実施, ii.個人 目標 や チー ム 目標 の開発

. i i i .

目標達 成度 と報酬 システ ム との リンケ‑ ジ, で あ る。 また,従業員へ の教育 を強化 す るために,実績 に関す るフ ィー ドバ ック情報 が社内 イ ン トラ ネ ッ トな どを通 じて従業 員 に提供 され る(10)O この プ ロセ スにお いて,戦略 マ ップは,従業員 に戦 略の 意図 と実践方法 を伝 え る地 図 と しての役割 を果 たす

( Kapl a n & Nor t o n,2 0 0 0 a) a

Ka pl an & No r t on

は, この プ ロセスを 「トップ ダウ ン ・デ ィ レク シ ョンで はな く トップ ダウ ン ・ コ ミュニ ケー シ ョンであ る

」( Ka pl a n & Nor t on,2 0 0 0 b,p,1 2 )

と して い る

1 ‑4 B S

Cの鍵 となる コ ンセプ ト

上記 の四つ の マ ネ ジメ ン ト・プ ロセスを可能 にす る上で,鍵 となるコ ンセプ トは 「因果関係」 であ

.Kapl an

&

Nor t o n

,

「戦略 は因果 関係 に関す る一種 の仮説 で あ る

」( Ka pl an

&

Nor t on,1 9 9 6 b

.

p. 3 0 )

とす る。 そ して, 四つ の視点 は戦略 を記述 す るため に利用 されて い る。

Kapl a r l & Nor t o n

,

「適切 に構築 され た ス コアカー ドは,一連 の因果 関係 によ って ビジネス ・ユ

ニ ッ トの戦 略 のス トー リーを伝 え るであろう

」( Ka pl an & Nor t o n,1 9 9 6 b,p.1 4 9 )

と述 べて い る。 四つ の視点 相互 間 に因果関係 を想定 すれば,戦略 は一 つのス トー リーとして表現 で きる。例 えは,従業員 の スキルの向 上によ って作業 の改善 を果 た し,定刻配送 を実現 す る (学習 と成長 の視点‑社内 ビジネス ・ プ ロセ スの視点 )。 その ことによ って顧客 ロイヤ リテ ィが 高 ま り (社内 ビジネス ・プ ロセ スの視点‑戟 客 の視点),結 果 と して売上 が増大 す る (顧客 の視点‑ 財務 の視点) とい うよ うに戦略が表現 され る。

( 1 0 )

オープンプ ソクマネシメントは.恒常的に財務データを従業員に公開することで情報を共有 し.会社が 利益をあげることに全従業員を集中させる経営手法である。決まった方法があるわけではないが,その原 は,① 従業員に経営数値を公開 して,さらにその読み方を教える,② 従業員に経常数値を改善するために行 動する機会を与える,③ 改善によって会社が得た利益を従業員に分け与える.である

( Ca s e .1 9 9 5 ) 。BS C

はオープンブック ・マネシメントの原則を満た しているといえるであろう

(5)

バ ランス・スコアカー ド研究 の方 向性

3 3

この ように戦略 をス トー リーと して表明す ることで. 四つの マネ ジメ ン ト・プ ロセスが実現可能 と なる。 すなわち.戟略 にス トー リーを持 たせ よ うとす ると, ス トー リー化す る過程で トップ ・マネ ジ メン トの問で戦略 を達成 す るための具体的 な方法 が共有 され (ビジョンをわか りやす い言葉 に置 き換 え る), ス トー リーを持 たせ ると従業員 は戦略をよ り良 く理解す るLlll(コ ミュニケー ションと リンケー ジ)C さらに,戦 略のス トー リー化のおか げで実施 項 目の優先順位が明確 にな り, 資源配分が容 易 に なる (経営計画)。 また, ス トー リーの元 にな って いる因果関係 の仮説 を検証す ることで, 時 と して 戦略を修正す ることも可能 にな る (フ ィー ドバ ックと学習)0

2 .B S

Cに対す る批判

BSC

は,世界中でその有効性が喧伝 され,多 くの実務家や研究者 の関心 を集 めてい る。 それで も,

BSC

に対す る批判 が何 もな されて こなか ったわ けで も,現時点 において根絶 したわ けで もない。理 論面 ・研究面での批判 も実践面 での批判 もあ る。 本節 で は

,BSC

に対 してどの よ うな批判が な され ているのかを考察す る。 その際 に,導入 に関す る批判,業績評価 に関す る批判, コ ミュニケー シ ョン に関す る批判の三つに分 けて検討す る。 業績評価 に関す る批判 とコ ミュニケー ションに関す る批判 は それぞれ.前節 で提示 した 「多面的業績測定 システム」 と 「トップダウ ン ・コ ミュニケー シ ョン」 に 照応 している。

2‑1

導入 に関す る批判

導入 に関す る批判 は,実践面 での批判 であ り,導入 に費や され る時間 とコス トにつ いてなされて い

。Ahn( 2 0 0

1)は

,ABBI ndus t r i eAG

社 の

BSC

導入 プ ロ ジェク トに準教授 と して参加 し, そ こ での

BSC

導 入の困難 さを報 告 して いる。 それ は,指標 の選択,指標 問の因果関係の設定, 短期 的 な クーケ ッ トの設定 は

Kapl an & Nor t on( 1 9 9 6 b)

の示す以上 に困難 を伴 う作業で あ り, 予想外 に多大 な時間を費やす ということで ある(12)

また, スウェーデ ンの コ ンサル タン トで あ る

01 vee tal .( 1 99 9 )

によれば,財務 の視点以外 の三つ の視点 において ほ,業績評価指標 に関す る情報 の多 くが,既存の管理 システムか らは入手 しが たい と され る。既存の管理 システムか ら入手 で きない情報 を得 よ うと して新 たに業績指標 を設定す るよ うな 場合, データを得 るために手作業で集計 した り,情報 システムに新 たな投資 を強 い られ た りす る結 果 となる。 したが って,意思決定 のために絶 えず新 しい情報 を分析 し. それ に伴 う追加 コス トと便益 な い し効用 を比較 しなければな らない事態 が生 じる

( 01 v ee ta

l

. ,1 9 9 9

,訳書

,p.2 5 0)

o

BSC

の導入には多 くの時間 とコス トがかか るのは事実 であ る

。Towe r sPe r r i n

社の

6 0

社 を対 象 と したサーベイによると,回答者 の

2 5%

BSC

を実行 ・運営 す るのに過大 な時間や費用 を必要 とす る と い う大 きな問題 を経験 して い る。 そ して

,4 4%

が スコアカー ド・アプローチを支援す るために多方面 に

( ll ) Sh a we ta l( 1 9 9 8 )

は.高校生の学習プロセスにおいてス ト‑1)‑形式の学習が,学習 ・記憶という点で最 も効果的であるという結果が出ていることを紹介 した上で

,3 M

の経営陣が組織成員に向かって戦略をス トー 1)‑として語 ったことが大きな利点をもたらした事実を指摘 しているD

(12) ただし,この導入プロシェクトに戦略マ ノブは利用されていないO

(6)

わ た る情 報 システムを開発 す るとい う問題 に遭遇 して い るので あ る (

I t t ne r & La r c ke r ,1 9 9 8 b, p. 2 2 3 )

0

Mo o r a je ta

l.

( 1 9 9 9 )

,BSC

に関 して ,更 な る研 究 に よ って解 決 され るべ き主要 な問題 は

,BSC

の費 用 ‑便益 で あ る とい う。 戦 略 マ ップ (13)や

DTP

ワー ク シー ト(14)の開発 あ るい は

BSC

の作 成 を支 援 す る ソ フ トウ ェア115)の発売 に よ って

BSC

構築 プ ロセ ス は大 幅 に短縮 され る と考 え られ る ちのの, 依然 と して

BSC

の導 入 コス トが

,BSC

に よ る組 織 業績 の改善 を上 回 る こと もあ り うる。

しか し

,BSC

を導 入 ・実 践 す る上 で の コ ス トや ベ ネ フ ィ ッ トを正 確 に見積 もる こ とは極 め て困 難 で あ る

。Mo o r a je ta l .( 1 9 9 9 )

が指 摘 す るよ うに

,BSC

の導 入 を検討 す るに あた って, マネー ジャ‑

BSC

の長 所 や短 所 を概 観 す るケー ス ・ス タデ ィや文献 を読 む こ とに よ って

BSC

の是非 を判 断せ ざ るを得 な いのが現状 で あ ろ う

( Mo o r a je ta 1 . ,1 9 9 9 ,p. 4 8 9 )

0

したが って

,BSC

の導 入 を検 討 す る実 務 家 に と って重 要 に な るの は

,Ma Cuun( 1 9 9 8 )

BSC

成功 させ るための十 戒(16)に付 け加 え た一 つ の戒律 で あ る。 つ ま り

,

「達 成 したい ことが わか らないな

,BSC

の実 行 を始 め るな」 で あ るO 何 を 目的 に

BSC

を導 入 す るのか が 明確 で な けれ ば, それ こそ 時 間 と費 用 が無 駄 に費 や され る ことに な る0

2‑2

業 績 評価 に関す る批 判

BSC

は主 に事 業 単 位 に対 して構 築 され るが, 事 業 単 位 の業 績 測 定 に は, 二 つ の機 能 が あ る と考 え られ る(L7)。 一 つ は, 事業 単位 管理 者 の業 績 評 価 で あ る。 これ は, 事業単 位管 理 者 の業務 へ の動 機 付 け を促進 す る こ とを 目的 と し, 人事 考課 に用 い られ る。 も う一 つ は,事 業 単位 その もの の業績評 価 で あ り,事 業 単位 の収 益 性評 価 で あ る。 こ こで は,事 前 に設定 した 目標 と実 績 の比較 を通 じて.現 行 の問 題 点 ・改 善 点 の発 見 や次 期 の経 営計 画 策 定 の ための基 礎 資 料 作成 が な され る。 以 下 で は

,BSC

の も

( 1 3 )

典型的な

BS C

構築プロセスには

1 6

週間かかる

( Ka p l a n & No r t o n, 1 9 9 6 b ,

p

p t 3 0 8 ‑ 3 1 0 )

とされていたか, 戦略マ ップを利用することで,半減できるとしている

( Ka p l a n

&

No r t o n , 2 0 0 0 , p . 3 5 7 )

( 1 4 ) DTP

ワークシー トは,わが国で提案 された 「ネオ ・バ ランス ト・スコアカー ト経営」を具体化 した手法で ある (伊藤 ・小林

,2 0 0

1)。提唱の背景には,単に米国発の

BS C

を模倣す るだけでは米国企業に対する競争 優位を再構築で きないという信念がある

cDTP

ワークシ‑ トでは

,BS C

の四つの視点の関係を階層的に比 較検討 し,戦略 目標や業績評価指標 (成果指標およびパ フォーマンス ・ドライバー)の妥当性を多元的に評 価できるように工夫 されている。なお

,DTP( De s i g nToPe r f o r ma n c e )

とは, フィー ドフォワー ドの形で 戦略の達成を目指すへ く,事前に業績を作 りこむことを意味 しているO

( 1 5 )

伊藤 ・小酒井

( 2 0 0 1 )

は,代表的なパ ッケージ ・ソフ トである

Co r Vu

社のソフ トウェアと

ABCTe c h n O ‑ l o g i e s

社のソフ トウェアを比較検討 し,それぞれの機能上の特徴を明 らかに している。

( 1 6 ) BS C

を戒功させるための十戒は次の通 りである

( Ma Cu u n,1 9 9 8 , p . 3 5 )

0① スコアカー ドを戦略的目標へ の実行手段 として利用せよ,② スコアカー トが実行される前に戦略的目標が設定 されていることを確保せよ,

⑨ トップレベルのスコアカー ドへの支援 と関連するラインマネーシャーの関与を確保せよ,④ 新 しいスコア カー ドを導入す る前にパイロットテス トを実行せよ,⑤ スコアカー ドを実行する前に各事業単位に対 して,

実施前調査」 を実行せよ,⑥ スコアカー ドをより強い トソプ ・ダウンコン トロールを得 るために利用する な,⑦ プロジェク トを標準化 しようとするな,⑧ スコアカー ドを利用する際の トレーニングやコミュニケー ションの必要性 を過小視するな,⑨ 複雑 に考えるな, あるいは完空 きを求めるな,⑩管理業務の増大やスコ アカー トによる期間報告のコス トを過小視するな。

( 17

) 代表的な事業単位である事業部の業績測定には業績評価機能 と収益性機能がある (

,1 9 8 3 )

O

(7)

バ ランス・ス コアカー ド研究 の方 向性

3 5

つ 「多面的業績測定 システム」 と しての側面 に対す る批判 を事業単位 の業績測定 の二つの機能 か ら検 討す る。

2‑2‑1

事業単位管理者 の業績評価 に関す る批判

事業単位管理者 の業績評 価 に関す る批判 は

,Li pe & Sal t e r i o( 2 0 0 0,2 0 02 )

によ って トップの情報 処理能力 とい う観点か ら試み られてい る(18)0

Li pe & Sal t e r i o( 2 0 0 0)

は,実験室実験 の結果 か ら, 複数 の管理者 を評価 す る際 には事業単位 に固 有の指標 は軽視 され,事業 単位問で共通 の指標 (たいて いは財務的指標)が重視 され ることを示 して いる。 それは, トップの認知上 の限界 も手伝 って,共通 の指標 によ って比較 を行 う方 が容易 なためで ある。共通 の指標が重視 され ることは,事業単位 の管理者 を共通 の指標 の達成 に集中 させ, その結果 事業単位 に固有 の事業戦略の実行が損 なわれ る可能性 のあることを意味 している。

さらに

,Li pe & Sal t e r i o( 2 0 02 )

で は

,BSC

のカテ ゴ リー (四つの視点) が認知限界を克服 す るの に役立 っているか ど うかを調査す るために,二つの実験室実験が行 われてい る。方法 と して, まず二 つの状況が作 り出 されて い る。一 つ は

,BSC

の単一 の視点 に属 す るい くつかの指標 が Ej標 を上回 っ ている (あるいは下回 って い る)状況であ る。二つ 目は,四つの視点 それぞれ において 目標 を上回 っ ている (あるいは下回 って い る) 指標が あ る状況 で あ る。 そ して, その それぞれの状 況 にお いて,

BSC

の カテ ゴ リーを用 いた報 告 フォーマ ッ トを もっ評価者 とカテ ゴ リーの ない報告 フ ォーマ ッ トを もっ評価者の判断 (二人の事業単位管理者 の評価) を比較 して い る。 その結果,業績結果のパ ター ン に応 じて

,BSC

の報告 フォーマ ッ トは,評価者 の判 断 に影響 を与 え うることを記 している.

Li pe&Sal t e r i o( 2 0 0 0)

の研 究 に対 して

,Kapl an&Nor t on

は, 業績測定 システム と しての

BSC

に焦点 を当ててお り, マ ネ ジメ ン ト ・システ ム と しての

BSC

の役割 を試 行 して いな い と して い る

( Kapl an & Nor t on,2 0 01 a,p.1 0 2 )

。 この ことを言 い換 え ると次 の よ うに理解 で きる。 す なわ ち,戟

略的マネ ジメ ン ト・システム と しての

BSC

で は,視点間 ・指標 問 に因果関係が組み込 まれ る。 それ によ って,財務的な成果を得 るために何をすべ きか ということが ス トー リーと して表現 され, トップ ・ マネ ジメ ン トをは じめ と して従業員全員が戦略 をどのよ うに実行 す るかを十分 に理解 す ることが可能 になる。 そのため, トップが管理者の業績 を評価す る際 も特定 の指標 に関心 を示す ことはな く,事業 単位の管理者 も特定の指標 を意識 して意思決定 を行 うことはない とい うことである。

Li pe & Sal t e r i o( 2 0 02 )

の研究結果 は,目標 と実績 とのあいだに差異を もっ指標が

BSC

のカテゴ リー

それぞれにまたが って複数存在 す る状況の よ うに.状況 によ って は

,BSC

の報告 フォーマ ッ トが評価 者の情報処理軽減 に役立 って いない可能性 があ ることを示 している。 ただ し,彼 らの研究では, 自身 が研究 の限界 として認 めてい るよ うに,主観的 な業績評価(19)のみを調査 してお り

( Li pe

&

Sal t e r i o

,

( 1 8 ) L】 p e

&

Sa l t e r l O( 2 0 0 0 ,2 0 0 2 )

は,直接

BSC

を批判 しているわけではない。 しか し,実験室実験の結果が

BSC

に対する否定的な意味合いを含むため,本稿では批判として取り扱う。

( 1 9 )

ここでの主観的な評価とは,多数の指標に配分するウェイ トを評価者が主観的に選択する評価を指す。他 には,能力や努力のような定性的な要因を評価者が主観的に判断する評価がある

。Si mo ns

によれば,主観 的で貢献度をベースにした報酬制度では,考慮すべき点が二つあるとされる。それは,報酬の仕組みにおけ る主観性と結果よりも貢献度に報酬を出す際の主観性である

( S i mons ,1 9 9 5 ,p.1 1 7 )

0

(8)

2 002 ,p. 53 9)

,事前 に四つの視点 さ らには視点 内の指標 に配点 をっ けるよ うな業績評価 を検討 してい ないのである

。Kapl an & Nor t on( 2 0 00b)

に示 され る実例 で は,評価 を行 う上で業績指標 を結合す る ための ウエイ ト付 けや公式が用 い られてい る。 これ らの ウエイ ト付 けや公式が,評価者 の判断 にどの よ うに影響 を与 え るか検討す る必要があ るといえ る。

事業単位管理者 の業績評価 に関す る批判 は, トップの情報処理能力 とは直接関係 しない観点か らも な されて いる

DPf e f f e r & Sut t on( 1 9 99)

,BSC

の問題点 と して

, i .

多数 の指標 を含むので システ ムが複雑 になる こと, ii.主観 が入 るよ うな指標 が多 いため評価 が主観 的 にな ること,in.厳密 な基 準 で評価 しよ うとす ると,組織 の長期的 な成功 には欠 かせ ないが定量化 の難 しい重要 な要素 を見落 と す場合があ ること, の三点 を挙 げている。

しか し, iの システムが複雑 になるとい う問題 に関 して は,上述 したウエイ ト付 けや公式 を設定す ることが有効 であろ うo iiの評価が主観的 にな るとい う間是副こおいて も,適切 な指標 を導 出す ること で対応で きると考え られ る。非財務的指標 は,組織 にお ける定量的変数 だ けでな く,定性的変数 もモ ニ ターで きる

( Mac Ar t hur ,1 99 6)

とい う利点 を もつ。 例 えば,従業員 モ ラルのよ うな主観 的な判断 を要す る変数 を従業員離職率 とい う客観 的 に評価 で きる指標 に置 き換え ることがで きるのである(20jo iiiの定量化 が難 しい重要 な要素 を見落 とす とい う問題 につ いて は, た しか に能 力,努力,意思決定 の質 のよ うな定性的 な要因 は観察 し測定す ることが難 しい といえ る。 それで も,報酬制度 に主観的な 評価 を組 み合わせ る(21)ことで問題 の発生 を防 ぐことになろ う

。Pf e f f e r&Sut t on(1 9 99)

は, これ ら の問題点 を導 くために金融機関の事例 を紹介 しているが. これ らの問題 が発生 す る原因 には.報酬制 度 の設計 の拙 さ も関係 してい ると考え られ る。報酬 と

BSC

上 の業績評価指標 を リンクさせ る場合, 報酬制度 のデザイ ンには十分 な注意が必要 である(22)0

2‑2‑2

事業単位 の業績評価 に関す る批判

( 1

) 四つの視点 の妥 当性

BSC

提唱者 である

Kapl an & Nor t on

が 「四つの視点 は拘束服で はな く,一つのテ ンプ レー トと し て考 え られ るべ きであ る。 四つの視点 が必要 かつ十分 であ るとい う数学的理論 は何 もない

」( Kapl a n

& Nor t on,1 9 96b ,p. 34)

と述べてい ることもあ り, 四つの視点 の妥当性 に関 して疑 問が呈 され る場 合があ る。

例えば

,Chow e ta

l.

( 1 997)

01 vee ta

l.

( 1 999)

が示す事例で は,再生 と開発.人的資源のよう

Kapl an&Nor t on(1 9 96b)

の提示す る四つ の視点 に見 られ ない視点 が見受 け られ る。 ただ し, こ

( 2 0 )

ただ し

,Dha v a l e( 1 9 9 6 )

が指摘するように,定性的な変数と定量的な指標との相関関係がはっきりしない 限り利用を避けるべきである。

( 2 1 ) Ka p l a n & No r t o n

は,主観的な判断を組み合わせている企業の例を挙げて,必ず しも結果に基ついた報酬 制度がマネージャーに報酬を与える理想的な方法であるとは限 らないことを示 している

( Ka p l a n & No r t o n

,

1 9 9 6 b

,p.

2 2 0 ) 0

( 2 2) Ka p l a n

&

No r t o n

,BSC

と報酬を連動 させる際に検討すべき事項 として

5

点挙げている

( Ka pl a n

&

No r t o n,2 0 0 0 ,p p. 2 6 5‑2 6 6 )

Oそれは,① 導入のスピー ド.② 客観的指標と主観的指嵐 ③ 業績指標の数,

④ 個人業績とチーム業績,⑤ 改定の頻度,である。

(9)

バ ラ ンス・ス コアカー ド研究 の方 向性

3 7

れ らの特 有 の視点 も究極 的 には四つ の視点 に含 め る こ とが可能 で あ る

( Eps t e i n & Manz oni ,1 9 9 8 )

どのよ うな視点 を設定 す るか によ って何 を測定す るか は変 わ って くる。 それ に もかかわ らず四 つの視 点の汎用性 は依然 と して高 い とい って よい。

一方, 業績 測定 シス テムを利害 関 係者 ア プ ローチ と して捉 え る論者 は

,BSC

にサプ ライヤ ーや コ ミュニテ ィに関す る視点 が ない ことを批判 す る

(

2

3 )( At ki ns one ta 1 . ,1 9 9 7 ; Boye t t & Boye t t ,1 9 9 8 ) 0 Ni ve n( 2 0 0

1)もまた, 組織 は コ ミュニテ ィの中 に内包 され るため, 成功 を続 け るため には コ ミュニ テ ィに貢献 し, なおかつ依存 しなけれ ばな らない と して, コ ミュニテ ィの視点 を五番 目の視点 に付加 す ることを提 唱 して い る。

BSC

の四つ の視点 に は,三 つ の主 要 な利 害関係者 が含 まれ る。 財務 の視点 は株主 (債権者 ) 杏, 顧客 の視点 は顧客 を, そ して, 学習 と成 長 の視点 は従業 員 を対 象 と して含 ん で い る

。BSC

を利害 関 係者 アプ ローチか ら捉 え るな らば, た しか にサプ ライヤーや コ ミュニテ ィに関す る視点 が欠 けて い る

といえ る。

しか し

,Kapl an & Nor t on( 2 000b)

が, 利害 関係 者 ス コアカー ド(24)よ りも戦 略的 ス コア カ ー ドを 推奨す るの は.前者 で は視点 間 に因果 関係 が想定 されず戦略 を ス トー リー と して表現 で きな いためで あ る

。BSC

は単 な る業績 測 定 システ ムで はな く, 戦 略 的 マ ネ ジメ ン ト ・システ ムで あ る0 時 に新 た な視点 を設定す るに して も. いか に戦略 を記述 す るか とい う観点 か ら考慮 す べ きで あ ろ うO

サプ ライヤーに関 して は,社 内 ビジネス ・プ ロセ スの視点 を拡 張 して捉 え る こと も可能 で あ ろ う0 また

, Kapl an & Nor t on

は, シェ ア 一 卜 ・サ ‑ ビス部 門 と事 業 単 位 の シナ ジー効 果 を生 み 出す た めに使 用 す る ス コア カ ー ドを サ プ ライヤ ーの よ うな外 部 のパ ー トナ ーに も適 用 で き る と して い る

( Kapl an

&Nor

t on,2 0 00b,p. 20 8)

。 必 ず しもサ プ ライヤーの視点 を独立 して設 定 す る必 要 はな い と いえよ うO

コ ミュニテ ィに関 して も独立 の視点 を設 ける必要 はない とい う考 え方 が成 り立 つ。 コ ミュニ テ ィは, 株主 ・債権者,組織,従業員, サ プ ライヤ ー,顧 客か ら構成 され る。 コ ミュニテ ィの中で企業 は営利 を目的 と して結社 され る。 適正 な利益 を計上 すれ ば,従業 員 の雇用 の確 保, サプ ライヤ ーへ の代価 の 支払 い,株主‑ の配 当,税 金 の納付 が可能 にな るO また,利益 を獲得す るため に顧客 の満足 を追求 す る。 この ことが コ ミュニテ ィの繁栄 につなが るといえ る。 つ ま り,企業 は自 らの活動 を通 じて コ ミュ ニテ ィに貢献 す るので あ る。 その ため, コ ミュニテ ィの視点 を ことさ らに設 けな くて も, 四つ の視点 を貫 く 「良 き企業市民 になる」 とい う戦略 テーマの もとで コ ミュニテ ィを考慮 に入れれ ば十分 で あろ うC,

( 2 3 ) At kl nS One ta l . ( 1 9 9 7 )

は,業績測定 システムは.企業が利害関係者との契約関係をモニターするために利 明するツールであるとして.利害関係者アプローチを推奨 Lている。 また

,Ne e l y & Ad a ms( 2 0 0

1)は.莱 績測定における大 きな誤 りの一つは、指標が戦略か ら派生 されるべきだとすることであるとし,最初に考慮 すへき基本的な視点は,利害関係者の視点であるとしているo

( 2 4 ) Kapl a n & No r t on

は,自分たちが推奨する

BSC

(戦略的スコアカー ト)の他に,利害関係者 スコアカー ド

( St ake ho l de rSc or e c ar d)

と重要成功要因スコアカー ド

( KPISc o r e c a r d,Ke yPe r f or manc el ndi e at or )

実務で見受 けられることを明 らかにしている

( Kap l an

&

No r t o n,2 0 0 0 b.p p.1 0 0‑1 0 4 )

。利軍関係者スコア

カー トでは,利害関係者ごとに視点が設けられ,視点のあいだに因果関係は想定されない。

(10)

( 2)

因果関係 の あ いまい さ

N¢r r e kl i t( 2 000)

, BSC

で 唱 え られ て い る因 果 関 係 の あ い ま い さを批 判 して い る。 それ は

N¢r r e kl i t( 2 00 0)

が原因 ・結果 の関係 を科学的 に捉 えて いるか らであ る。厳密 にいえば,因果関係 は, 時 間 的 ・空 間的 に近 接 して観 察 され る二 つ の独立 した事 象 にお いて,事 象Xが観 察 され るとき,必 ず, も しくはかな り高 い確率 で,事象Yが観察 され る場 合 にのみ成立 す る

( Nor r e kl i t ,2 00 0,p. 7 0 ) 0

因 果関 係 を この よ うに厳 密 に理解 す る と き

,BSC

で想 定 され る因 果関係 の概念 は厳密 な意味 での 因果関係 の枠 をはみ出 して い る。論理 的関係 の はか に手段 ・目的関係 までその中 に混在 させてい る(25)0

N¢r r ekl i t( 2 000)

は, この よ うな性 質 の異 な る複数 の関係 を一 つの カテ ゴ リーの中 に含めたままで意 思決 定 を行 うことは, 逆 機能 的 な行動 を引 き起 こ した り, 部 分最適 化 を招 いた りす る恐 れが あ る(26)

と主 張 して い る。

さ らに

,Norr e kl i t( 2 0 00)

は, 四つの視点 のあ いだ の関係 が因果 関係 で はな く相 互依存 の関係 にあ る と して い る。 例 えば,社 内 ビジネス ・プ ロセ スの視点 な らびに財務 の視点 か らす る と,研究 開発へ の投 資 を引 き出す には先立 って満足 な財務的結 果 を実現 す る ことが必要 であ るが, 満足 のい くよ うな 財務 的結果 を生 み 出す ため には研究 開発 が必 要 とな るので あ る(271

Kapl an & Nor t on(1 996 a, b;2 00 0a, b)

は, 因 果 関 係 の明 確 な る定 義 を示 して い な い。 お そ ら く

Nく けr e kl i t( 2 000)

の言 うよ うな厳密 な意 味 での因果関係 は想定 して いないので あろ うO そのため,莱 際問題 と して,明確 な因果 関係 を識別 した り,検証 した りす ることが困難 にな る こと も十分 に予想 さ れ る。

しか し, 因果 関係 の定義 が明確 で ない ことは, 直 ちに

BSC

の有用性 を完 全 に否定 す るわ けで はな いo小林

( 2 000)

が指摘す るよ うに, 因果関係 が組 み込 まれて い るが故 に,組織 メ ンバ ーに戦略 と整 合 的 な行動 を と らせ る ことがで きるので あ る。 それ は, 四つの視点 あ るいは指標 間 に因果関係が組 み 込 まれ る ことによ って戦 略が ス トー リ‑性 を もって語 られ,従業員 が よ りい っそ う戦 略 を理解 す ると 考 え るか らで あ る。

また, 戦 略 を実行 す る際 に

,BSC

を利 用す る ことに困難 が生 した と して も, 利 用者 が主体 的 に困 難 を克服 し, 不備 を補 うことが大 いにあ りうる

。BSC

はイ ンター ラクテ ィブ ・コ ン トロール ・シス テム(28)と して利 用 され るため

,

「イ ンター ラクテ ィプな コ ン トロールあ るい は組織 メ ンバ ー間の対話

( 2 5 )

例えば

、BSC

では 「顧客満足の向上‑顧客ロイヤルティの向上‑財務的業績の向上」という関係を原因‑

結果の関係であると捉えるが,現実には顧客の中にロイヤ リティこそ持っが注文は少量 しか しない顧客や, 低価格でカスタマイズされた製品 しか購入 しない顧客 も含まれている。 このような顧客の場合は,たとえ企 業が彼 らに満足を与えたとしても,その満足が必ず しも収益の向上にはつなが らないO ここに厳密な意味で の因果関係は存在 しないことになる。

( 2 6 ) d eHa a s & Kl e i nge l d

も同様の批判を行 っている。「妥当でない仮説は,誤 った業績指標へと導き,結果と

して逆機能的な組織行動や部分最適化へとつながる

」( deHa as & Kl e i nge l d,1 9 9 9,p. 2 4 4)

0

( 2 7 )

社内 ビジネス ・プロセスの視点ならびに顧客の視点についても,営業担当者が配送時間の短縮を実現 した り,特化 した製品を顧客に提供 したりすると,fj:るはと顧客の満足は得 られるけれども,製造プロセスが非 効率になる恐れがあるとしている。

( 2 8 )

インターラクティブ ・コントロールシステムは

,「マネージャーが部下の意思決定行動に定期的かつ個人的

に介入するために利用するフォーマルな情報 システム

」( Sl mO nS ,1 9 9 5 ,p. 9 5 )

である

。Ka pl an

&

No r t o n

(11)

バ ラ ンス・ス コアカー ド研究 の方 向性

3 9

は,相互依存関係の理解 を高 め るのに役 立っ。 因果関係 につ いて の不十 分 さが対話 によ って捕 われ る とい ってよい」 (小机

2 000,p.9)

のであ る。

ただ し,想定 され る因果関係 のあ い まい さが 直 ち に

BSC

の有効性 を否定 しな い とはいえ, 因 果関 係の妥当性 に関す る経験 的証拠 を蓄積 して い くことは重要 で あろ う。戦 略的 マ ネ ジメ ン ト・システム

と しての

BSC

において鍵 とな る コ ンセプ トは 「因果関係」 だか らで あ る。

もちろん因 果関係 に関 す る実証 研 究 が存 在 す る。 た とえ ば,

I t t ne r & Lar c ker( 1 9 9 8a),Be hn &

Ri l ey( 1 999),Bankere tal .( 2 000)

は,顧客 満 足 に関 す る非 財務 的指標 と利益 ・コス トな どの財務 的指標 との関係 を検証 して い る。 また.

Nagar&Raj an( 2 00

1)は,製 品欠陥率 や定 時配 送 の よ うな 非財務的 な指標 と将来 の売上 の関係 を調査 して い る。 これ らは,非 財務的指標 と財務 的指標 とのあ い だの因果関係 に関 して概 ね良好 な結果 を示 して い る

この よ うに,現在見 られ る研究 は, 因果関係 の妥 当性 に関 して経験 的証拠 を蓄 積す る ことに貢献 し てい るといえ る。 それで も, 四つの視点 か ら考 えれば, 部分的 な分析 で あ った り, あ るいは,特定 の 産業 を対象 に していた り, タイム ラグが考慮 されて いなか った りす る。今後 もさ らに精度 の高 い研究

を進 め ることが望 まれ る(29)0

2‑3

コ ミュニケー シ ョンに関す る批 判

Nor r e kl i t( 2 0 00)

は さ らに

BSC

を批 判 して いる。 それ は

BSC

が高度 に階層 的 に トップ ダウ ン型 の コン トロールであ るため, 今 日の ダイナ ミックな経営環境 の下 で戦 略的 マ ネ ジメ ン ト・システ ムと し て個 々の企業 に定着す ることは難 しい とい う批判 で あ る。

その根拠 は二点 あ る。第‑ は

,BSC

が トップ ダウ ン型 の コ ン トロールで あるた め,従 業員 の内的 コ ミットメント

( i nt e r nalc ommi t me nt )

で はな く外 的 コミッ トメント

( e xt e r nalc ommi t me nt )

(30

)

を促進 して しま うことであ る。 第二 は

,BSC

を利用 す ると,戦 略 の確実 な実 行が何 よ りも強調 され るため, 競合者 の行動結果 をモニ タ リング した り,技 術的 な開発 の継続 的 なモニ タ リングを した りす ることか つ いなお ざ りにされて しま うことで あ るO

外 的 な コ ミッ トメ ン トへの フォーカスが強 くな ると,従業員 は測定 の対 象 とな る指標 に設定 されて いる目標 を達成す ることばか りに注意 を集 中 して しまい,外的 な環境 に関 す る情報 を収集 す る動機 を 失 って しま う。 そのため,環境 に適 合す るのに必要 な情報 が確保 されず, ひいて は従業員 の行動 と戦 略 との整 合性 が失われ,結局, 戦 略を実現 で きない とい う事態 に陥 りかね ない。

「 BS

Cを実行に移 した事例のいくつかは診断的に しかスコアカー ドを使わなか ったために失敗 した。そして, インクーラクティプ ・システムから学習やイノベーションという便益をえることができなかった

」( Kapl a n

& No r t o n,2 0 0 0 b,p3 5 0 )

としている

DBS

Cはインターラクティフ ・コントロールシステムとして利用する 必要がある。

( 2 9 ) I t t ne r & La r c ke r( 1 9 9 8 b)

や河合

( 2 0 0 2 )

では,財務的指標 と非財務的指標の因果関係に関する先行研究 の体系的なレヒューが行われている。

( 3 0 )

外的コミットメント」 とは,従業員自らが決定する権限のない契約項目 ・職務規定の もとで自らの行動に 対するモティベーションを見出すことを意味 し,内的コ ミットメント」は,本人のやる気,自発性に基づ く 職務‑の取 り組みを指す

( Ar gyr

l

S .1 9 9 8 )

0

(12)

Kapl an & Nor t on

,BSC

を利 用 すれ ばマ ネー ジ ャーに外的 な環 境 だ けで な く競合者 の業績 を 無 視 させ るよ うな内的志 向 を生 み 出す と主張 す る論者 が い る(l])と して, それ に反論 を行 って い る

( Kapl an

&

Nor t on,2 0 0 0b,pp. 31 4131 5)

。 すなわち, マネー ジャーや従業 員が競合者 の動向や外 的 な環境 に関す る情 報 を収集す るよ う動機づ け られな くなるとい う批判 に対 して, まず,少 な くとも二 つ の方法 で競合者 の動 向や外的環境 が

BSC

の構築 に組 み込 まれている とす る。 それ は

, i .

最初期 の 戦 略が策定 され る とき, マネー ジャ‑は標準的 な戦略的計画作成 の方法論 に従 っている こと, ii. コアカー ド上 の多 くの指標 は競合者 との比較 の上 に立 って測定 され ること, である。 さ らに,一旦戦 略が策定 され た後 に新 しい脅威 が生 じた場合に も問題 はない とい う。 その理 由 と して, ih.戦略を全 従業員 に コ ミュニ ケー シ ョンす るのに成功 している限 り,従業員が 目とな り耳 とな って戦略に影響 を 与 える可能性のある要因の発見に努め,発見 した要因を社内イ ントラネッ トなどを利用 してマネージャー に知 らせて くれ ること, を挙 げてい る

。Kapl an&Nor t on( 2 0 00 b)

によれば

.BSC

i

とiiとiiiの 効力 によ って本来 の期待 され る機能 を果 たすのであ る

Kapl an & Nor t on

,BSC

を導入 ・実行す るにあた って

,BSC

を 「トップダウ ン ・コ ン トロール」

に利用す るので はな くて

,

「トップ ダウ ン ・コ ミュニ ケー シ ョン」 に利用せ よ とと くに強 く要請 して い る

( Kapl an&Nor t on,1 9 9 6b,p.2 5;2 0 00 b,p. 21 6) 0Ne L r r e kl i t( 2 0 00 )

の批判 と

Kapl an & Nor t on ( 2 0 0 0 b)

の反論 を比較す ると, マ ネー ジャーや従業員が競合者 の動向や外的 な環境 に関す る情報 を 自 発的 に探 索 し収集 す るか ど うか は, つ まるところ

,BSC

が 「トップ ダウ ン ・コ ン トロール」 と して 利用 され るのか, それ と も 「トップ ダウ ン ・コ ミュニケー ション」 と して利用 され るのか とい う問題 に行 きっ く。 す なわ ち

,N¢r r e kl i t( 2 0 0 0)

の主張す る通 り

,BSC

が 「トップ ダウ ン ・コ ン トロール」

と して利用 され るのであ るな らば

,Ka pl a n & Nor t on( 2 0 0O b)

の上記 iiiの主張 は成立 しない。

そ こで,乙政

( 2 0 0

1) で は

,

「コ ン トロール」 と 「コ ミュニケー シ ョン」 が ど う違 うのか, もし違 うと した ら, その違 いが マネ ジメ ン ト・システムにどのよ うに関わ るのか につ いて考察 を行 ったO そ の結果, 次の よ うなイ ンプ リケー ションを得 たO それ は

,

「コ ン トロール」 と 「コ ミュニケ‑ ション」

を言葉 の上 で明確 に区別 で きて も, 現実 に明確 な境 界線 を引 くことは難 しい。 「コ ン トロール」 と

「コ ミュニケー シ ョン」 の相違 に関 して鍵 を握 って い るのは.経営 トップ も しくは経営 トソプを支え る指導層 の リーダー シップである。進取 の気性 に富んだ リーダー シップを発揮す る人間たけが 「コ ミュ ニケー ション」を成立 させ ることがで きるとい うことである(32)0

BSC

上 で は,短期 目標 と長期 目標,財務的指標 と非財務 的指標,過去指標 と将来指標,外部業績 (営 業 利益 な ど) と内部 業 績 (新 製 品開発 な ど) のバ ラ ンスが 図 られ て い る

( Kapl an & Nor t on

,

1 99 6 b)

o Lか し, これ らのバ ラ ンスは報告 フォーマ ッ トと しての

BSC

上で凶 られてい るに過 ぎな

BSC

をマ ネ ジメ ン ト・システム と して利 用す る場合 には, 運営 にあた って 「コ ミュニケー ション」

と 「コ ン トロール」の微妙 なバ ランスが新 たに要求 され ることになる0

( 3

1

) Ka pl a n & No r t o n( 2 0 0 0 b)

の参考文献に

Nの r r e kl i t( 2 0 0 0 )

が含まれていないため特定はできないが,内容 からして

.Nの r r e kl l t( 2 0 0 0 )

も含むと考えられる。

( 3 2 )

乙政

( 2 0 0

1)では.さらに

,BS C

が有効に機能する業種を限定される可能性かあることを提示 しているo

(13)

バ ラ ンス・ス コアカー ド研究 の方 向性

4 1

3 . B S

C研究 における今後の課題

前節 では

BS C

に関す るさまざまな批判 を考察 した

。No r r e kl i t( 2 0 0 0 )

の因果関係 のあいまい さに 対す る批判 のよ うに

BS C

の根幹 となるコ ンセプ トを揺 るがす よ うな批判 も見受 け られ るが,現時点 では

BSC

の理論的妥当性 を完全 に否定す るには至 っていないO ただ し,次 のよ うな警告 的な見解 を 忘れてはな らないであろ う。

「マサチューセッツ工科大学が行った研究によると,マネジメントの流行は一般的なライフサイクルをたどる という。このサイクルは,学問的発見から始まる。そして新 しいアイディアは技法として練 り上げられ,学 術的出版というかたちで発表される。次にそれは.生産性向上やコス ト削減など,経営上のアイディアとし て広 く宣伝される。そ してコンサルタントがそのアイディアをとり上げ,普遍的な万能薬として扱 う。それ を実践 してみて,期待 していたみごとな結果が出なかったとき,すぼらしいアイディアを長続きする実践へ と転換させることがいかに難 しいかがわかる。最後には,少数の企業のみがこのアイディアの実現に腐心す ることになる

」( Cr a i ne r ,2 0 0 0

,邦訳

,p . 2 4 0 ) 0

BSC

に もこのよ うな ライフサ イクルに陥 る可能性 が全 くない訳 で はない

。BS C

につ いて更 な る研 究が求め られ る所以 である。

本節 では,前節 での

BSC

に対 す る批判 を考慮 に入 れなが ら

,BS C

の理論 的妥 当性を追及す る上 で の更なる研究課題 を模索す る。 その際 に,前節 での議論 を受 けて,導入 に関す る課題,業績評価 に関 す る課題, コ ミュニケー ションの課題 に分 けて検討す る。

3‑1

導入 に関す る課題

システム導入の側面 で は,導入 に費や され る時間 とコス トにつ いて批判 が なされていた

。BSC

導入 に多 くの時間 とコス トがかか るの は事実 であ る。 しか し

,BSC

を導入 ・実践す る上 での コス ト やベネフィッ トを正確 に見積 もることは極 めて難 しい。 それゆえ に,究明 され るべ き課題 は, いか に 時間や コス トをかけず に システムを導入す るかで あ る。

時間や コス トをか けず に効果 的な システムを導入す るには,導入 プ ロセスを解明 し,導入 を促進 す る要因や阻害す る要因 を明 らか に しなければな らない。谷

( 2 0 0 2 )

で謡われて いるよ うに,導入 プ ロ セスを解明す るには,産学連携 の もとで研究者が積極 的 に導 入プ ロセスに関与 す る ことが効果的な研 究方法 となろ う。

わが国で は, 日本会計研究学会 のプ ロジェク トと して,管理 会計 システムの導入研究が開始 されて お り (日本会計研究学会特別委員会

,2 0 0

1),今後 の成 果が期待 され る。

3 ‑2

某紙評価に関する課題

業績評価 に関す る批判 は, 二つの機能的側面 か ら検討 した。 それは,事業単位管理者 の業績評価 と 事業単位の業績評価 であ る。前者で は, トップの情報処理能力 と報酬制度 のデザイ ンにつ いての問題 がある。後者では,四つの視点の妥 当性 と因果関係のあいまいさに対 して批判 がな されている。以下, 二つの機能的側面 それぞれ につ いて今後の課題 を述べ る。

まず,事業単位管理者の業績評価で は, トップの情報処理能 力 も報酬制度 のデザ イ ンに関係す ると 考え られ るため, どのよ うに報酬制度 を設定す るかが課題 となる

。Ka p l a n & No r t o n( 2 0 0 0 b )

で は,

参照

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