替 文
株主構成が 自主的情報 開示 に 与 える影響
● - 中国国有上場企業 に関す る実証研 究 -
李 遠 勤/徐 宗 宇/石 川 勝/李 新 建
要 旨
本稿は・ ロジステ ィックモデルを用いて,中国における国有上場企業 の株主構成が当該企業の自主的情報開示に与える影響 を実証分析 した ち のである・探酬証券取引所 に上場 している国有上場企業の
A株 に関す る
2004年度のデー タをもとに・大株主の上位持 ち株分散度,機 関投資 家の持ち株比率, トップマネジメン トの持ち株比率 を株主構成の特徴 を 表す指標 とし,証券取引所による上場企業の情報開示の評価を自主的情 報開示の指標 とした・実証分析の結果,大株主の上位持ち株分散度.機 関投資家の持ち株比率及びコン トロール変数 としての企業規模が国有上 場企業の自主的情報開示の程度に正の影響 を与えていることが明 らか と なった・これ らの結果に基づいて・中国国有上場企業の情報開示 を改善 するための提案を行い・更に本研究の限界 を踏 まえて今後の研究方向を 考察 した.
1 序
自主的情報開示 とは制度的な情報開示以外 に, 自主的に自社の情報 を開示
論文 ■株主構成が 自主的情報 開示 に与 える影響
97た.株主構成はコーポ レー ト ・ガバナ ンスの基本的要素 として. 自主的情報 開示に影響 を与えることが数多 くの研究で指摘 されている
2). しか し,これ らの先行研究は主に中国以外の企業を対象 として行われた ものであ り.政府 の持ち株比率は存在 しないか,あるいは非常に低いケースである.一方,中 国の研究者は主に株主構成 とコーポ レー ト ・ガバナンスの有効性,ない し企 業業溝 との関連性 に注 目した研究 に重点 を置いてきたが,国有上場企業の株 主構成が 自主的情報開示に与える影響に関する研究はこれ まで行われてこな かった.本稿では.この点に焦点 を当てることを目的 としている.
国有上場企業の場合.株主構成が高度に集中 してお り,大株主 としての政 府による干渉 とインサ イダー としての経営陣による支配 とい うコーポ レー
I.ガバナ ンス上の問題があると従来か ら指摘 されて きた
3㌧ 一般に,株式 会社 におけるエージェンシー問題 として,株主 と経営陣 との間で利益の相反 が生 じると理解 されているが,大株主に株式所有が過度に集中することによ
り生 じる零細株主 との間の利益不一致の問題 も存在する
4㌧ 大株主 と零細株 主 との間の利害関係は
2つの相反する側面を持つ.大株主は法的な権利や資 金力を背景に して,企業の経営陣を監視 し,影響力 を効果的に行使で きる.
それは零細株主の利害に一致する場合がある一方で. 自らの利益を優先する ために企業財産 を侵食 し,零細株主の利益 を犠牲 にするおそれもある.中国 国有上場企業の年報に基づけば
,2001年
~ 2004年の
5年間,筆頭抹主の持 ち株比率 はやや低下傾向にあるが,依然 として平均
40%以上の高水準 を維 持 している. このように中国国有上場企業における株主構成の集中度は極め て高いことか ら,これが企業の情報開示行動へ どのような影響 を与えている か という問題 を分析することは資本市場の発展のために重要な研究であろう と思われる.
中国は資本市場の効率性 を改善することを目指 して.上場企業の株式分散 する上場企業の行動 を指す 1
1・H ea nlyadPalepu(20 01 )は,外部市場環境 化 を促進するための改革 を進めている.上場企業における情報開示の促進 と
IJ・・ ..革 「L
に関係する
6つの自主的情報開示の動機 を検討 し. 自主的な情報開示行動 と 経営の透明性の確保が強 く求められつつある.それゆえ.本研究は中国国有
LI コーポ レー ト ガバナ ンスとの関連性に焦点を当てた研究の必要性 を強調 し 上場企業の改革にとって,重要な意義を持つ ものと考えられる.
99 98
現代経 営経済研 究 第
2巷第
1号
本稿の内容は
6つの部分から構成 されている.第
1節の序論では,本研究 の意義 を示 し.第
2節で関連する先行研究のサーベイを行 う.第
3節では研 究仮説 を提示する.第
4節では,仮説の検証方法,サ ンプルの選別及び各変 数の測定について述べ る.第
5節では,統計分析のモデルを構築 し,分析結 果を検討する.最後に第
6節で,本研究の結論,政第-の提言及び今後の研 究方向を提示する.
2 先行研究
多 くの先行研究では,主に下記の
4つの株主構成上の要素を中心 に, 自主 的情報開示の程度に及ぼす影響 を検討 している.① インサイダー株主
5J.② 機関投 資家,③株式集中度,及び,④政府の持ち株比率である.
2.1
インサイダー株主の影響
ChauandGray (2002)
は,香港の上場企業のデータをもとに研究 した結 果.殆 どの香港の上場企業では,創業者一族の株主が企業の経営に携わって お り.彼 らの持 ち株比率は情報開示の程度 と有意な負の相関関係を持つこと を示 している.
Wang ( 6200)は
,Stadan rd&Poo`rS500企業をサ ンプルと して,創業者一族の持 ち株比率6 )と企業利益 に関する情報 開示 との関連性 を研究 している.そこでは,取締役 ・トップマネジメン トのポス トを同族株 主が占めている状況をダミー変数化 し
7),情報開示に与える影響 を分析 した その結果,経営陣に同族株主が含 まれていることが情報開示の程度に正の影 響を及ぼす ことが明 らかにされている. また,同族株主の持 ち株比率 と企業 利益 に関する情報開示 との間には.非線形的な関係があることも示 されてい
る.
Len nugadH row z( 4it 200)
は,香港証券取引所の上場企業のデー タをも とに,常勤取締役 と非常勤取締役それぞれの持ち株比率が管轄部門の 自主的 情報開示に与える影響 を分析 している.その結果,常勤取締役の持ち株比率 が
25%以上の場合.情報開示の程度 と有意な負の相 関関係 を持つ ことを明
論文 :株主構成が 自主的情報開示 に与 える影響
らかにした. この負の相関関係は,企業の業削 ミ 悪い場合,更に強 くなるこ とも示 されている.一九 常勤取締役の持 ち株比率が低いサ ンプルにおいて は,非常勤取締役の持ち株比率が情報開示の程度 と有意な正の相関関係にあ ることも示 した.
EngandMak (2003)は, シンガポール証券取引所の上場 企業の株主構成及び取締役会構成が 自主的情報開示に与える影響 について実 証研究 を行っている.株主構成の指標 は・経営陣の持 ち株比率・大株主 8 ) の持ち株比率,政府株の有無及び政府の持 ち株比率 とし・取締役会構成の指 標 は外部取締役の比率 とした・分析の結果,経営陣の持 ち抹比率 と自主的情 報開示 との間に,有意な負の相関関係が存在することが明 らかにされている・
2.2
機関投資家の影響
Hel taye al
.
(1999)の研究では,機関投資家の持 ち株比率 と自主的情報 開示の程度 との間に有意な正の相関関係が示 されている
・BusheeandNoe(2 )000
の研究において も.同様 の結果が確認 された
・Mahj nkiaadP oattn (2004)はチェコ企業のデー タをもとに分析 した結果・機関投資家の持 ち株 比率が低い場合,情報開示 と有意な正の相関関係が見 られる一九 持 ち株比 率が高い場合
(16%より大 きい)には・横関投 資家の持分比率が高いほど, 情報開示の レベルが低 くなることが示 されている・
2.3
株式集中度の影響
EngandMak (2003)
は†持 ち株比率が
5%以上の大株主の持 ち株比率の 合計 を株式集中度の評価指標 とし・ シンガポール証券取引所の上場企業の デー タをもとにした研究では,株式集中度 と情報開示の程度 との間に有意な 相関関係が見 られないとしている・
王
(2003)による中国の上場企業 に関する研究では・株式集中度 と自主的 情報開示 との間に有意な負の相関関係が確認 された・劉 と杜
(2003)は財務 報告の中で発覚 した不正記録の有無を情報開示の質の指標 とし・ この情報開 示 の指 標 と株 式 集 中 度 とは有 意 な負 の相 関 関係 を もつ こ とを示 した・
.義.
LOO
現代程営経済研究 第
2巻第 1号
Makia n ao 2hjadPttn(004)
によるチェコの企業 に対す る実証研究では,外 部株主 9 )の持 ち株比率が内部株主 よ り大 きい場合,株式集 中度
10 〕と情報開 示 とは正の相関関係 をもつ ことが示 されている.
ChauandGray(2002)
は,香港及び シンガポール証券取引所の上場企業 の株主構成 と自主的情報開示 との相 関関係 を分析 している.そこでは,取締 役及び支配抹主の持 ち株比率 をもとに推定 した外部株主の持 ち株比率を上場 企業の株式分散度 と見 な し,上場企業の 自主的情報開示が株式分散度 と有意 な正の相関関係 を持つ ことを示 した.
2.4
政府の持 ち株比率の影響
EngandMak(2003)
は, シンガポール証券取引所の上場企業のデー タを 用いて分析 し.政府の持 ち株比率 と情報開示 との間に,有意 な正の相関関係
hj dP n ( 4
があ ることを示 した.一方
,Makiaan atto 200)は,チ ェコの企 業のデー タに基づいて,政府の持 ち株比率 1 1 )は企業の情報 開示に有意 な影 響 を与 えていない ことを示 した. しか し. これ らの研究 においては政府 は支 配的な大株主ではない.政牌が支配的大株主である中国の上場企業に関 して, 政府の持 ち株比率の情報開示に及ぼす影響 を扱った研究は これまで存在 しな
い .
以上の先行文献のサーベイに基づ き,本研究では中国国有上場企業におけ る大株主の持 ち株比率,機関投資家の持 ち株比率及び トップマネジメ ン トの 持 ち株比率 に焦点 を当て.それぞれの 自主的情報開示の程度 に与 える影響 を 実証的に分析する.
3
研 究仮説
前述 の ように,大株 主 と零細株 主の間には,利害対 立 とい うエー ジェ ン シー問題が存在するとされている.大株主は経営陣を監視す る動機 と能力が ある一方,零細株 主の利益 を侵害す る可能性 もあ る
12).大株 主は経営陣 を 支配することがで きれば,内部情報にアクセスするルー トを持つ ようになる
論文 =株主構成が El 主的情報 開示 に与 える影響
JOJため.対外的な情報開示 を控える動機を持つか もしれない・大株主による上 場企業への強力なコン トロールが可能な場合・大株 主の持 ち株比率が高 くな ればなるほ ど,上場企業の 自主的情報開示の レベ ルが低 くな り
13〕・株式集 中度 と自主的情報 開示 との間には,負の相関関係が存在す る可能性が示唆 さ れる
14).株式集中度の高い企業では,複数の大株主の間で相互牽制や相互監視の メ ヵニズムが形成 されることにより,筆頭株主が企業利益 を侵害する可能性 を 低下 させ ることがで きれば,それは同時 に零細株主の利益 を保護することに もなる.中国の ような投資家保護が不完全な市場環境では・複数の大株主に 株式保有 を分散 させ ることによって,いずれの大株主 も単独で企業の意思決 定 を支配で きな くな り,潜在的な企業利益への侵害行為 を抑制することが可 能 となる
15)同済大学 と上海証券取引所の研究
(2002)では・第
2位か ら第
5位 までの 株主の持 ち株比率の合計 と筆頭株主の持 ち株比率 との割合 を 「 上位持 ち株分 散度」 と定義 し, この上位持 ち抹分散度が
1・18以下又は
3・09以上の場合・
企業業績 と負の相関関係が存在す ることが示 されている・一方で・上位持 ち 株分散度が
1.8 301- .9の範囲にある場 合・企業業績 とは正の相関関係が 見 られた.同研究 に よる と
.2001年度の中国上場 企業の非流通株の割合 は 平均
60.5%であ り
,5位 までの大株 主が非流通株 であれば・理想 的 な筆頭 株主の持 ち分比率は
15%~28%の範囲 になることが上記の分析 か ら導かれ る としている. この範囲以外では,企業業績 と上位持 ち株分散度 とは負の相 関を持つため.企業には株式の分散 を進め ようとす るインセ ンテ ィブが働か ない可能性が考え られる.それは上記の考察か らも・エー ジェンシー問題 を 引 き起 こし,情報開示行動にもマイナスの影響 を及 ぼすであろう・実際には・
同年度の筆頭株主の持 ち株比率 は平均
44・26%であ り・ この範囲を遥かに超 えていた.
一方で,
柿 (2005)は
2的2年度の中国上場企業 における上位持 ち株分散
度が低い水準にあったことを明 らかにす ると共に,全業界 を対象に した分析
102
現代軽 骨経済研 究 第
2巻 第
1号
では上位持 ち株分散度 と企業業績 との問に有意な正の相関関係は存在 しない が,業界ごとの分析 では殆どの業界において高い上位持 ち株分散度が企業莱 績の向上に寄与することを示 した.
以上の考察,及び先行研究の成果に基づ き,以下の仮説
1を設定する.企 業業績の改善をもた らす高い上位持 ち株分散度は企業のコーポ レー ト・ガバ ナンスの状況を適正化することによって,大株主 ( 又は大株主 と経営陣) と 零細株主の間のエージェンシー問題 を緩和 し,上場企業による情報開示を促 進する傾向があると想定することがで きるであろう
16)仮説
1:上位持ち株分散度が高ければ.国有上場企業の 自主的情報開示の 程度は高い.
機関投資家は.資本市場での株式取引又は企業の意思決定への直接参加 を 通 じて,他の大株主の行動 を監視 し,牽制することがで きる.専門的能力を 有する機関投資家は, コーポレー ト・ガバナ ンスのシステムを通 じて,情報 開示の改善を促す ことも可能である. この関係は,諸外 国の企業を対象 とし た実証研究において も示唆 されている1 7 ) .従 って,以下の仮説 を設定する.
仮説
2:機関投 資家の持 ち株比率が高ければ,国有上場企業の自主的情報 開示の程度は高い.
トップマネジメン トによる自社株の所有は経営陣が企業業績 に貢献 しよう とす る強いインセ ンテ ィブ とな りうる 1 8 ) .その場合, トノブマネジメン ト は企業利益を改善するために他の株主への情報開示の質を向上 させ ようと努 力す ることが期待で きる
19). しか し, トップマネジメン トの 自社株の持 ち 株比率が一定 レベルを超 えると,企業利益 を侵害することによって得 られる 個人の利益が大 きくな り,それは トップマネジメントを機会主義的な行動 に 導 く経済的動機 となる可能性がある.その場合,情報開示に対する意欲 も低
論文 抹主構成 が 自主的情報開示 に与 え る影響
103下す るであろ う 甜) . しか し・現在・中国上場企業の トップマネジメン トの 持ち株比率は非常 に低いため・彼 らの持ち株比率の上昇は企業利益に一致す
る行動を促す ものと考えられる・そこで以下の仮説 を設定する・
仮説
3:中国国有企業の現状では. トップマネジメン トが保有す る自社株 の持ち株比率が高 まれば.自主的情報開示の程度 も高まる・
4 研 究方法
探酬証券取引所 に上場 している下記の 4 つの条件 を満たす 1 88 社の A 採 国有企業
21 )をサ ンプルとする・①非金融保険企巣 ②
1997年
12月
31日以 前 に上場 し
22、 ,③
2004年
12月
31日まで に経営状 況が安定 してお り,④ データが完全である. これら 188社の札 1 1 3 社 ( 60%)が製造業である・
本研究はロジスティック回帰分析 を用いて,株主構成の自主的情報開示に 対する影響 を分析する・深酬証券取引所は上場 している各企業に関 して・そ の情報開示の状況を評価 してお り・その評価指標をもって自主的情報開示の 指標 とす る
23)・2001年
5月
10日に公布 された 「 馴 価 券取引所 における上 場企業の情報開示 に対す る評価方法」に基づいて・深別証券取引所 は
2001年 5月 1 1日現在で上場期間が 6ケ月以上の企業 に関する情報開示の状況 を 毎年評価 している.評価は・上場企業の取締役会秘書室 による情報開示内容 をもとに,証券取引所への協力状況及び政府横関か ら受けた賞罰をも配慮 し た上で行われる.適時性,正確性,完全性及び合法性の
4つの評価基準 に基 っいて,対象企業の情報開示の状況 を 「 優秀
⊥「良好」
,「 合札 l ・「 不合格」
の
4ランクで評価する.評価の結果は毎年の年頭に発表される・本研究では・
評価 結 果が 「 優 秀」又 は 「良好」で あ る企業 の 自主的情 報 開示の程 度 杏
r
l」.「 合格」又は 「 不合格」は
「0」 とする.
説明変数は,上位持ち株分散度・穫関投資家の持ち株比率 と トップマネジ メン トの持ち株比率 とする・それぞれの測定方法は表 1に示 されている・
先行研究では, コン トロール変数 として,企業規模・財務 レバ レッジ,売
104 現代 経営怒 涛研 究 第
2巻第
1号
表 1 ロジスティック回帰変数の測定方法
自主的情 報 開示
(DSCORE)津 別 証 券耶 l 所 の評 価草 某 を も とに , 「 嘩 秀」 又 は 「良 好」 を
「
1
」・「合格 」 また は 「不合格 」 を
rO」 とす る.
上位 持 ち株分散 度
(DR)第
213,4・5位 の大株 主持 ち株比 率 の 合計 と筆頭 株 主 の持 ち 株 比 率 との
比.
機 関投 資 家持 ち株比率
(INST)ト ( T ッ OM プ マ ネジ メ ン トの持 ち株 比 率
年 報 に公 表 され てい る十大 流通株 主 の 中で,機 関投 資 家の持 ち 株 比率
トップマ ネジ メン トの持 ち株数 と発行株 数 の比 率.
P)
企業規模
(SIZE)総 資産の 自然対 数 財 務 レバ レッジ
(LEV)負 債 と絵 資産 の比寧
業 界
(INDUS)製造 業 を
「1」.非 製 造 業 を
「o」 とす る 荏 .全てのデータは
200
4年度末の ものである
上高利益率・利益成長率・無形資産の比率・多国籍性,業界等の指標が挙げ られている・本研 究では・デー タに対す る探索的な分析 の結果,企業規模 と 売上高利益*・利益成長率及び無形資産の比率 との間に強い相関関係が見 ら れ・財務 レバ レッジと売上高利益率 との間にも強い相関関係が確認 されたた め ・ コン トロール変数は企業規模,財務 レバ レッジ及 び業界 とした.
情 報 開示 に関 す る評 価 の デー タは,探 別 証 券耶 【 所 の ホー ムペ ー ジ ( www
・szse・cn)か ら入手で きる・機関投資家の持 ち株比率のデー タは企業 の年次報告に公表 されている 「 十大流通株」の内容 を整理することによって 得 られた・ トップマネジメン トの持 ち株比率 は年次報告で公表 されている情 報か ら算定 した・上位持 ち株分散度 とコン トロール変数のデー タは 『 天軟 デー タベース』 か ら入手 した.
5
分析結果
5.1
記述統計
表
2は各変数の記述 的統計値 を示 した ものである.
国有上場企業の上位持 ち株分散度の平均値は
0.434で,全体的に低 い . こ
のことは,徐 ら ( 20 06 )の計算結果 と一致 している.機 関投資家の持 ち株比 率 は平均
2・5%で・ トップマネジメ ン トの持 ち株比率は平均
0.03%と低水準 である・中国固有上場企業 に- ては・株式保有による経営陣 に対するイン
論 文 .株 主構 成 が 自主 的情報 開示 に与 え る影響 '
L5O表 2 記述統計
変数 自主 的情報 開示 の程 度
平均 値 最小値
0 最大値 1 標 準偏差 中央値
(I)SCORE
)
上位 持 ち株 分散 度
(DR) 0.4340
.003 2.345 0.478 0.236機 関投 資 家の持 ち株 比率
0.025 0 0323 0.053 0.002 (INST)
ト ンプマ ネ ジメ ン トの持 ち抹
0.00]30
0.005 000u 00001比 率
(TOPM)
企 業規模
(SIZE) 21.335 18807 23.761 0.939 21.403財 務 レバ レ ッジ
(LEV) 0.505 0.008 1.17 0196 0.
503# #
(INDUS)表
3 2001-2004年度の情報開示の評価結果
評価 結果
200
1年
2〔氾2年
200
3年
200
4年
優 秀
18 21 24 24良好
74 90 101 101合 格
84 68 56 56不 合格
129 7
7合 計
188 188 L88 188セ ンテ イブが弱いことが伺 える,
表
3はサ ンプル企業の
2(氾1年
~2004年度の情報開示 に対する評価結果 を 示 している. このデー タか ら,サ ンプル企業の情報開示は徐 々に改善 してい ることがわかる.
5.2
相関関係 の分析
表
4は変数 間の
Pearson相関係数 を示 している. 自主的情報 開示 の程 度
(DSCORE)は,上 位 持 ち 株 分 散 度
(DR),機 関 投 資 家 の 持 ち 株 比 率
(INST) と企業規模
(SIZE)との間 に,それぞれ有意な相 関関係 が見 られ る.上位持 ち株分散度.機関投資家の持 ち株比率, トップマネジメン トの持 ち株比率の間の相関係数が有意ではないため.多重共線性の問題がないこと が推測で きる.
5.3
ロジステ ィック回帰分析 の結果
本研究では,以下に示す
4つのロジスティックモデルを設定 した.モデル
現代 軽骨経 済研 究 第
2巷 第
1号
表 4 Pear s on相関係数マ トリクス
DSCORE DR lNST TOPM SIZE LEV INDUS DSCORE
1
DR 0.189'■ 1
1NST 0.248'● 0072
1
TOPM 0.028 0.135 -0.075
1
SIZE O・212'' -0158・ 0.3
8
5・
10.0541
LEV -0044 0・179' -0115 0.11
1
-0002ⅠNDUS -0.118 -0.15● 0・093 -0.182
'
-0.013 00381
注 ●p
● <
DO
l p,' <
00. 51
は企業規模・財務 レバ レッジ及び業界 をコン トロール変数 とし,上位持 ち 株分散度の 自主的情報 開示-の影響 を分析 している. モデル
2は同様 の コン トロール変数 を用いて,機関投 資家の持 ち株比率の影響, モデル
3は トップ マネジメ ン トの持 ち株比率の影響 を分析 している.モデル
4は,上位持 ち株 分散度,株関投 資家 の持 ち株比率, トップマネジメ ン トの持 ち株比率 の全 て の変数 を同時 に取 り入れ
. 3変数の総合的 な影響 を分析 してい る.
L"(
吉) - a・bD1R・bSZlIE・b3 LE
V .N S・bIDU'E
()1
L n ( 吉) - a・b′lIS ・b,IN T 2SZE・
bL3 ′
EV・b′4INDU
S'E ′ ( 2)
E・
bL3 ′
EV・b′4INDU
S'E ′ ( 2)
L"(
吉) -d′ ・bl -TOP
M・
b2-SIZE・b3-LEV・b4-INDUS'6 - ( 3)
L"(
吉)
- ′a+b-D′ l,R・b′ 2
′′IS ・b′N T 3T P′′OM・b′。SZ′′IE+b5′′′L +b′EV 6IDU +′′N SE′ ′′
( 4)
表
5はこれ らのモデルの分析結果 を示 している.モデ ル
1-4のカイ
2乗
の
P値が 0・05以下であ る ことか ら, この ロジステ ィック回帰 モデルが有意
な ものである と判断で きる・モデル 1では上位持 ち株分散度,モデル
2では 機 関投 資家の持 ち株比率がそれぞれ 自主的情報開示 の程度 に有意 な正の影響 を与 えていることが示 されているが,モデル
3では, トップマ ネジメン トの
論文 :株主構成が 自主的情報開示に与える影響
107表 5 ロジスティック回帰分析の結果
モ デ ル
1モ デ ル
2モデ ル
3モ デ ル
4係 数
P係 数
P値 係 数
P値 係 数
P値
定数 -299
0
00値
-.3 02二 - 5 . ー.5 009 1.0 . 2 525 .(世 976 0011 883 .4 DR 133 00.2
.
03 11.36 001 INST 224.230
.008 2.0926 005 .1 TOPM
108.067 0.721 87.170 0776 SIE Z 06,44 00.
01 02.8 015 5 052 001 . 5 0 0 5A3
0093 LEV -0.769 0222 0094 0877 -0,338 0585 -0348 0.589 1D S N U 1,4039 032.1 -.7065 008 4 -,0052 017 3-
049 6 01.9 C上-q ae llsur 2247 .6 0(氾 X 2 9484 00 〕 α ll69 00,8 2 3 9265 0000 120 iei d 1glklhoo 2731 22 2485 1.9 2281 2704 0 9 Col&Sme
llRsquare 0l13 0.124 006 016 NagelkerkeRsquare 0156 0.172 0084 0221持 ち株比率か ら自主的情報 開示 に対 して有意な影響 を見出せ なかった.上位 持 ち株分散 度,機関投 資家の持 ち株比率及び トップマネジメ ン トの持 ち株比 率 を同時に説明変数 に したモデル
4の分析 において も,同様の結果が示 され た. コン トロール変数の内,企業規模が 自主的情報開示 に正の影響 を与 えて い ることが確認で きたが,財務 レバ レッジ及び業界 との間には有意 な影響が 見 られ なか った.
以上 よ り,仮説
1と仮説
2は支持 されたが,仮説
3は支持 され なか った.
即 ち,大株主の間で上位持 ち株分散度が高ければ,国有上場 企業の 自主的情 報開示の程度 は高 くな り,機 関投 資家の持 ち株比率が高ければ,同様 に自主 的情報 開示 の程度が高 くなることが統計的 に有意 な結果 として得 られた.
持 ち株比率が
10%以上 を大株 主 とすれ ば,サ ンプル企業 の内, この よう
な大株 主 を
2人以上有 す る企業 は
57社 あ り,30% を占め てい る
24). した
が って,中国において国有上場 企業の株式集中度 はか な り高い と言 える. 国
有上場企業 には
,「大株主が
1人 しか存在 しない」 と一般的 に言 われている
が, この ような状況 においては,上位持 ち株分散度 を高め ることによって情
報開示 を改善する ことがで きるであろ う. 同時 に,機 関投 資家の影響力 も積
極的に利用すべ きであることを分析結果 は示 している.
IO 8 現 代経 営軽 涛研 究 第
2巷 第
1号
6 結論 と課題
本研 究は探別証券取 引所 の 国有上場 企業 のデー タを もとに,株 主の構 成要 素 を大株主の上位持 ち株分散 度,機 関投 資家の持 ち株比率及 び トップマ ネジ メ ン トの持 ち株比率 の
3つ の指標 に細分化 し,それぞれの指標 が 自主 的情 報 開示 の程度 に与 え る影響 を実証分析 した. その結果, トップマ ネジメ ン トの 持 ち株比率 に関 しては有 意 な影響 が見 出 され なか ったが,大株 主の上位持 ち 株分散 度 と機 関投 資家 の持 ち株比率 は 自主的情 報 開示 に有意 な影響 を与 えて い る ことが確認 で きた. 同時 に,企業規模 も自主的情報 開示 に影響 を与 える 一要 因であ るこ とが示 され た.
株 式所 有構 造 の改 革が進 むにつれ, 中国の証券市場 で は法律 に基 づ いた厳 格 な監査 が求め られ る新 た な時代 に入 って きてい る.会計監査 の主 目的 は企 業情報 の透明性 を確保す るこ とにあ る.本研究 の成果 を踏 まえて, 中国 にお ける国有企業 の改 革 に対 して以下 の よ うな提 言 を行 うこ とがで きよう.① 国 有株式 を資本市場 に流通 させ る際 に,大株 主 間の適切 な株式保有バ ラ ンス を 形成す るこ とに よって. 企業 の情報 開示 を促す こ とが重 要である.② 上場 企 業 の情 報 開示 に対 して,機 関投 資家 の積 極 的な役割 を促す こ とも重要 であ る
③ エ ー ジェ ンシー問題 を媛和す るため に誘 因両立性 を もつ合理的 なス トック オプシ ョン制度 を備 え るこ とによって, トップマ ネジメ ン トの利益 と企業利 益 を一致 させ, その上で企業情 報 の透 明性 を改善す るこ とが重要であ る.
本研 究で は,単年度 の クロスセ クシ ョンデー タに基づい て分析 したが, さ らに時系列 デー タを用 い る こ とに よって, 国有上場企業 の情 報開示行動 を動 態 的 に とらえた研 究成 果 が期待 で きる もの と思 われ る. また,本研究 で は, モ デルにおける従属 変数 の 自主 的情報 開示 の測定尺度 と して 「 優秀 」 と 「良 好」 を
「1」 と し
,「 合 格」 と 「 不 合 格」 を
「0」 と置 き換 えてお り,評 価 指標 を簡略化 してい るが,情報 開示 に関す るよ り客観的 な評価指標 の検討 に つ いては今後 の研 究課題 と したい.更 に, 国有上場 企業 と非 国有上場 企業 そ れぞれの株主構 成の特徴 を明 らか に し,情 報 開示行動 に対 す る影響 の比較研
論文 :株主構成が 自主的情報 開示 に与 える早f ' 響
109究 を行 うこ とも今後 の重 要 な研 究課題 であ る・
*
本研究の一部 は,平成 1
8年度 -1
9年度の 日本学術振興会科学研究費補助金 ( 基盤研究
(C),課題番号
18530291 ,代表者 :石川勝)の助成 を受 けて行われ た.
注
1) FASB (2001)
: 何
(2003)2) BushmanandSmith(2
0 01 )
;ChauandGray (2002):CoreL
2001 )
:Ho andWog ( 1; nn 200) E gadMan k ( 3 Mahj n200): kiaadP o 20)attn(04: 喬
(2003):王(2003)
:
程(2004):張他(
2004〕3
) 李
(2005)4) Suefr弧dViie sn ( 7 L orhy199); aP ae at t
l .
( 8 ad(199) n 1999)5)
ここでい うインサイダーとは,株主である と同時に企業内部の経営に携わ る立場にいる者を指す.
6) 1994- 2002
年の臥 創業者一族の持ち株比率は平均
12/00-7%であった・
7
) 取締役や トップマネジメ ントのポス トに同族株主が存在する場合 を
「1」とし.存在 しない場合を
「0」 としている.
8)
この研究で大株主とは.持ち株比率が 5% 以上の株主を指す・
9) ここでい う外部株主 とは企業の経営活動に携わっていない株主の ことであ る.内部株主とは企業の経営者または従業員であ りなが ら自社の株式を保有す る者である.
10)
この研究では. HI指数
(TheHerfindahlIndex)を用いて株式集中の程度 を 評価 している.HI指数 とは.上場企業の大株主の持 ち株比率の二乗の和 を指 す,
ll)
政府の持ち株比率は平均
11.86%である・
12)Mork Slie adVil
c
, hefr n smy u98:hefr n.
8)Slie adVihl( 7sry199) 13) FanandWong(2002);JungandKwon(2002)14) ChauandGray(2002)
;王(
2003) 15) B nesnadWofno (ende n lezn2000)
16)Botosan(1997):