• 検索結果がありません。

特集にあたって

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "特集にあたって"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

特集にあたって

著者 鄭 栄桓

雑誌名 PRIME = プライム

巻 44

ページ 53‑54

発行年 2021‑03‑31

その他のタイトル Introduction

URL http://hdl.handle.net/10723/00004149

(2)

―53―

特集:戦犯裁判と植民地問題 国際シンポジウムの記録

特集にあたって

鄭    栄 桓

(PRIME 主任)

第二次世界大戦後の戦争責任追及は、「植民地 問題」をその射程圏内におさめていたのか。極東 国際軍事裁判(1946〜48年)は、日本の政治指導 者のうち25人の被告に対し、「平和に対する罪」

及び「通例の戦争犯罪」違反の有罪判決を下した が、台湾や朝鮮の植民地支配に関連する犯罪がそ の訴因に加えられることはなかった。他方、占領 軍が各地で行った裁判(BC級戦犯裁判)におい ては朝鮮人・台湾人の捕虜監視員や通訳は日本軍 の一員として戦争責任を問われ(=通例の戦争犯 罪違反)、朝鮮人148人、台湾人168人が有罪判決 を受けた。これらの事実からは、連合国軍が日本 の植民地支配の責任を射程圏内におさめることは なく、むしろ植民地の人々をあくまで枢軸国の構 成員としてみなしてその加害責任を問うたことが わかる。

だが、日本の「十五年戦争」(1931 45年)は、

アイヌの居住地や琉球にはじまり、台湾、サハリ ン、朝鮮、そして南洋諸島にいたる植民地拡張の 延長線上に起こった侵略戦争であった。そして、

「南方」において朝鮮人の捕虜監視員が連合軍捕 虜と向かい合うに至った背景は、こうした日本植 民地主義の歴史を抜きには理解できない。

あらためて「植民地問題」という視座から第二 次大戦後の戦犯裁判を読み解き、東アジアの平和 のための条件をさぐることはできないだろうか。

本特集「戦犯裁判と植民地問題」は、こうした問 題意識に立脚して、2020年 2 月15日、16日に国際 平和研究所と韓国の聖公会大学東アジア研究所 HK+事業団と共催で開かれた一連の企画に基づ いている。

内海愛子、桜井均、林慶花各氏の講演と討論は、

2 月15日に開催した「植民地支配下の暴力の連鎖 を問い直す:「チョウ・ムンサンの遺書」再訪」

の記録である。1991年 8 月15日にNHKスペシャ ル「アジアと太平洋戦争」の第四回として放映さ れたドキュメンタリー「チョウ・ムンサンの遺書  シンガポールBC級戦犯裁判」は、日本敗戦後に アジア各地のBC級戦犯裁判で罪を問われた植民 地出身の青年たちの戦時と戦後を、趙文相という 一人の朝鮮人青年を軸に追いかけた作品である。

『朝鮮人BC級戦犯の記録』(勁草書房、1982年)

をはじめ、先駆的にこの分野の研究を切り拓いて きた内海愛子氏と、当時NHKにおいて番組制作 に直接関わった桜井均氏に、約30年が経った今あ らためてこの番組の発した問いから何をくみ取れ るかを振り返っていただいた。また、韓国・中央 大学校でコリアン・ディアスポラの比較研究を進 める林慶花氏には、この番組をさらに広く世界史 的な植民地問題へと接続するための問題提起をい ただいた。

続けて掲載する郭貴炳、孔晙桓、石田隆至各氏

(3)

―54―

特集にあたって

の論考は、翌16日に開催した国際シンポジウム「戦 後東アジア秩序と戦争責任・植民地支配責任」で の報告原稿に加筆・修正したものである。郭貴炳 氏の報告は、第二次世界大戦末期における米国 OSSの戦犯政策のなかで朝鮮問題がいかに扱われ たかについて、孔晙桓氏の報告は大戦終結直後の 朝鮮半島での戦犯逮捕と処罰問題の帰趨につい て、それぞれ米国・韓国などの一次史料を渉猟し たうえで歴史社会学的に検討した研究である。ま た、石田隆至氏の論考は、第二次世界大戦に関す る戦犯裁判のなかでは異質かつ例外的な存在とし て扱われることが多い中華人民共和国での戦犯裁 判について、東京裁判やBC級裁判との比較の視 点からその意義を検討したものである。

これらの講演と論考は、第二次世界大戦後の戦 争責任追及が「植民地問題」をその射程圏内にお さめえなかったことが、いかなる「戦後」の新た な問題を生ぜしめたか、また、この問題が欠落し た背景にいかなる事情があったのかについての新 たな知見を示してくれるだろう。なお、国際シン ポジウムでは前日に続き内海愛子氏による「戦争 裁判:裁かれた者の「記憶」と「記録」」と題し た基調講演があったほか、康誠賢(聖公会大学校)、

阿部浩己(明治学院大学)、張宏波(明治学院大学)、

李娜榮 (韓国・中央大学校)、金得中(韓国・国 史編纂委員会)、金昌禄(韓国・慶北大学校)の 各氏による報告へのコメントがなされたが、紙幅 の都合上、割愛せざるをえなかった。

近年、世界的に奴隷貿易・奴隷制や植民地主義 の責任を問い謝罪・賠償を求める動きが活発化す るなか、現代史研究や平和研究はあらためて植民 地主義が現代に及ぼす影響を深部から問い直す必 要に迫られている。本特集がこうした問いを共有 するすべての人々の一助となれば幸いである。

参照

関連したドキュメント

例えば,立証責任分配問題については,配分的正義の概念説明,立証責任分配が原・被告 間での手続負担公正配分の問題であること,配分的正義に関する

例えば,立証責任分配問題については,配分的正義の概念説明,立証責任分配が原・被告 間での手続負担公正配分の問題であること,配分的正義に関する

主食については戦後の農地解放まで大きな変化はなかったが、戦時中は農民や地主な

■実 施 日: 2014年5月~2017年3月. ■実施場所:

■実 施 日:平成 26 年8月8日~9月 18

■実 施 日: 2014年5月~2017年3月.. ■実施場所: 福島県

[r]

■実 施 日: 2014年5月~2017年3月.. ■実施場所: 福島県