• 検索結果がありません。

ブ ッシ ュ対 ゴア連邦最 高裁 判決 とその含意

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ブ ッシ ュ対 ゴア連邦最 高裁 判決 とその含意"

Copied!
24
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ブ ッシ ュ対 ゴア連邦最 高裁 判決 とその含意

猪 股 弘 貴

は じ め に

今 日,法 と政 治 が 密 接 な 関係 に あ る こ と を否 定 す る者 は い な い で あ ろ う。 法 は そ の す べ て で は な い に して も,多 くが 政 治 プ ロ セ ス の 中 か ら生 まれ る こ との 一 事 か ら して も,容 易 に こ の こ と を理 解 す る こ とが で き る の で あ る。 と りわ け 憲 法 は,政 治 を規 律 す る こ とを 主 な狙 い と して い る こ とか ら,政 治 とは密 接 不 可 分 な 関係 に あ る。た だ し,現 代 ア メ リカ 憲 法 学 に お い て 一 派 を形 成 して い る, 批 判 的 法 学 研 究(CriticalLegalStudies)の 論 者 の よ う に1),憲 法 は政 治 で あ り, 政 治 そ の もの が 憲 法 で あ る と考 え るべ きで は ない 。 また,例 え ば,ア メ リ カ合 衆 国 にお い て,影 響 力 を持 つ 法 理 論 家 の一 人 で あ る,シ カ ゴ大 学 の フ ィ ッ シ ュ 教 授 の よ う に,憲 法 典 に お け る法 文 の 存 在 を ほ とん ど無 意 味 ・無 価 値 とす る考 え 方 も2),支 持 す る こ と は で き な い3)。 憲 法 解 釈 は,憲 法 制 定 者 が 原 理 化 した もの と し て の 条 文 を基 に,裁 判 所,と りわ け 最 高 裁 判 所 の 先 例 に 照 ら して判 断 さ れ な けれ ば な ら な い もの で あ る こ と は,既 に 論 じた こ とが あ る の で,こ こで

1)SeeMTusHNET,RED,WHITE,ANDBLuE(1988);DuNcANKENNEDy,ACRITIQuE

OFADJuDICATIoN[伽desiecle](1997).邦 語 文 献 と し て,デ ヴ ィ ッ ド ・ ケ ア リ ス 編(松 浦 好 治 ・松 井 茂 記 編 訳)『 政 治 と し て の 法 批 判 的 法 学 入 門 』(風 行 社,1991年)。

2)S.Fish,Introduction'Going1)owntheAnti‑FormalistRoad,inDolNGWHAT CoMEsNATuRALLY(1989).

3)こ の 点 に つ い て,例 え ば,野 坂 泰 司 「解 釈 ・理 論 ・実 践S.フ ィ ッ シ ュ と 二 つ の 論 争 を め ぐ っ て 一 」 小 林 直 樹 先 生 古 稀 祝 賀 『憲 法 学 の 展 開 』(有 斐 閣, 1991年)81頁 以 下 参 照 。

〔129〕

(2)

は繰 り返 さ な い4)。

とこ ろ で,憲 法 と政 治 との 関 係,憲 法 解 釈 の 最 終 的 判 断権 者 で あ る 最 高 裁 判 所 と政 治 との 関 わ りを考 察 す る上 で,見 逃 し得 な い 事 件 が ア メ リ カ合 衆 国 で 発 生 し,こ の 事 件 お よ びそ れ に つ い て の 連 邦 最 高 裁 判 決 を検 討 して お く こ と は, わ が 国 に お い て憲 法 理 論 を構 築 す る上 で,大 い に 参 考 に な る と思 わ れ る 。 す な わ ち,2000年 の ア メ リ カ大 統 領 選 挙 と,そ の最 終 的 勝 利 者 を決 定 付 け た と言 え

る,Bushv.Gore事 件 連 邦 最 高 裁 判 決 で あ る5)。

2000年 秋 の ア メ リ カ大 統 領 選 挙 は,ブ ッ シ ュ,ゴ ア両 候 補 の 稀 に見 る 大 接 戦 で あ り,そ れ が そ の後,フ ロ リ ダ州 に お い て どち らが 勝 利 した の か,す な わ ち 大 統 領 選 挙 の 勝 利 を 決 定 す る こ と に な る,フ ロ リダ 州 にお け る25人 の大 統 領 選 挙 人 を どち らが 獲i得 した の か に つ い て,裁 判 所 を も巻 き込 ん だ,憲 法 の 危 機 (ConstitutionalCrisis)と も称 され る 事 態 を 招 い た こ とは,わ が 国 で も マ ス コ ミ を通 じて 大 き く取 り上 げ られ,話 題 とな っ た こ とは,周 知 の 通 りで あ る6)。

私 事 に わ た るが,こ の 時 期,文 部 省(当 時)長 期 在 外研 究 員 と して カ リ フ ォ ル ニ ア大 学 バ ー ク レー校 に滞 在 し,日 米 比 較 憲 法 の研 究 中 で あ っ た 筆 者 に は, こ の事 件 お よび 同 判 決 は,忘 れ る こ との で き な い,印 象 深 い 出 来 事 と して 今 で

も記 憶 に新 しい 。

4)猪 股 弘 貴 『憲 法 論 の 再 構 築 』(信 山 社,2000年)。

5)Bushv.Gore,531U.S.98(2000).た だ し,実 際 に参 照 し た の は,筆 者 が 滞 米 中 に CNNの ホ ー ム ペ ー ジ の サ イ トか ら入 手 した も の で あ る 。 未 だ 当 該 判 例 を 掲 載 し

て い る 公 式 判 例 集 を 参 照 で き な い こ とか ら,EJ.DIoNNEJR.&WILLIAMKRIsToL

EDs.,BusHvGoRE,THECouRTCAsEsANDTHECoMMENTARY(2001)か ら引 用 し て い る 。

6)松 井 茂 記 『ブ ッ シ ュ 対 ゴ ア』(日 本 評 論 社,2001年),木 南 敦 ・久 保 文 明 ・高橋 和 之 ・ダ ニ エ ル.H.フ ッ ト 「選 挙 戦 を通 して 観 た ア メ リ カ 大 統 領 制 の 特 徴 」 ジ ュ リ ス ト1196号44頁 以 下,寺 尾 美 子 「2000年 ア メ リ カ大 統 領 選 と連 邦 最 高 裁 」 ジ ュ リス ト1196号73頁 以 下,楡 井 英 夫 「ア メ リ カ 大 統 領 選 挙 裁 判 一35日 間 の 裁 判 の 軌 跡(上)・(下)」 ジ ュ リ ス ト1201号94頁 以 下 ・1203号114頁 以 下,右 崎 正 博 「2000 年 ア メ リ カ 大 統 領 選 挙 管 見(上)・(下)」 法 律 時 報73巻3号96頁 以 下 ・73巻4号50 頁 以 下,安 部 圭 介 「『連 邦 裁 判 所 の 役 割 』再 考=大 統 領 選 挙 と レー ン ク イ ス ト ・コ ー

ト」 ア メ リ カ 法2001‑2号295頁 以 下,前 田 智 彦 「ア メ リ カ 国 民 の 司 法 観 と2000

年 大 統 領 選 挙 」 ア メ リ カ 法2001‑2号326頁 以 下 参 照 。

(3)

ブ ッシ ュ対 ゴア連邦 最 高裁判 決 とそ の含意

131

2000年11月7日 か ら8日 の未 明 に か け て,ア メ リ カ三 大 ネ ッ トワ ー ク を は じ め,CNN,FOXニ ュ ー ス は,一 度 は ブ ッ シ ュ 共 和 党 候 補 の 勝 利 を 報 じ,次 期 大 統 領 と して 報 道 した の で あ った 。 しか し,翌 朝,テ レビ の ス イ ッチ を 入 れ た 時 に は,フ ロ リ ダ 州 の25票 分 の 選 挙 人 が ブ ッシ ュ候 補 か ら除 か れ,画 面 が ま る で 時 計 の針 を逆 に した か の よ う に な っ て い た の で あ る。 迂 闊 に も,す ぐ に は そ の 意 味 が 理 解 で きず,筆 者 は授 業 に 出席 す る た め に 急 い で ア パ ー トを 出 た の で あ っ た が,そ の 後 サ ン フ ラ ン シス コ ・ベ イ エ リア周 辺 で 非 常 に 人 気 の高 い ニ ュ ー ス 番 組 に,そ の後 しば しば登 場 す る こ と に な る,カ リフ ォル ニ ア州 立 ヘ ー ス テ ィ ング ・ロ ー ス ク ー ル(HastingsCollegeoftheLaw)の 教 授 で,バ ー ク レー校 ロ ー ス ク ー ル で も憲 法 を教 え て い た ア マ ー(VikamAmar)教 授 の授 業 は休 講 で あ っ た 。 こ れ が,ア メ リ カ合 衆 国 の36日 間 に わ た る大 混 乱 の 始 ま りで あ る こ と を知 っ た の は,親 し く して も ら っ て い た 学 生 の解 説 に よ っ て で あ っ た。

こ の 事 件 は,大 きな 政 治 事 件(ア メ リカ合 衆 国大 統 領 が 有 す る 影 響 力 か ら, そ れ は 国 際 的 な 政 治 事 件)で あ る こ と は もち ろ ん で あ るが,ア メ リ カ合 衆 国 憲 法,さ らに は 連 邦 選 挙 法,フ ロ リ ダ州 憲 法,同 州 選 挙 法 を争 点 と した,裁 判 闘 争 と して そ の後 展 開 さ れ た の で あ る。 当 時,合 わせ て30以 上 の 訴 訟 が 提 起 され た と言 わ れ て い る。 そ して,最 終 的 に は,合 衆 国連 邦 最 高 裁 判 所 にお い て 決 着 が 付 け られ,同 時 に政 治 的 に も解 決 さ れ た の で あ っ た 。

わ が 国 とア メ リ カ合 衆 国 とで は 政 治 制 度 が 異 な り,選 挙 の 方 法,裁 判 所 の 役 割 に つ い て も大 き な相 違 が あ る と はい え,こ の 事 件,特 に連 邦 最 高 裁 判 所 判 決 を紹 介 ・検 討 して お く こ と は,わ が 国 に お い て も大 い に意 味 の あ る こ と と考 え る。 まず,連 邦 最 高 裁 判 決 に至 る まで の経 過 を 中心 に,時 系 列 的 に こ の事 件 を 振 り返 って み る こ と に し よ う7)。

7)SeeTHENEwYoRKTIMEs,36DAYs,THECoMPLETECHRoNlcLEoFTHE2000

PREslDENTIALELEcTloNCRIslsiii‑x(2001);THEWAsHINGToNPosT,DEADLocK:

THEINslDESToRYoFAMERIcA'sCLosEsTELEcTloN(2001);JoELAcHENBAcH,IT LooKsLIKEAPREsIDENT(2001);JAMEsW.CEAsER&ANDREwE.BuscH,THE PERFEcTTIE(2001);JAKETAppER,DowN&DIRTY(2001).

(4)

2000年11月7日

9日

14日

18日 21日

26日

1事 件 の経 過

ア メ リカ大 統 領 選 挙 の 投 票 日。 フ ロ リダ 州 にお け る 選 挙 人 (25名)を ブ ッ シ ュ,ゴ ア,ど ち らの 候 補 が 獲 得 す る か が, 今 回 の 大 統 領 選 挙 の 勝 敗 を 決 す る鍵 とな る 。こ の 時 点 で の,

フ ロ リダ 州 で の ブ ッ シ ュ候 補 の リ ー ドは1784票 で あ る と公 表 され た 。

フ ロ リ ダ 州 で の 両 候 補 の 得 票 差 が0.5%以 内 で あ る こ と か ら,機 械 に よ る再 集 計 が,州 法 に 則 り実 施 さ れ る8)。 これ に よ り票 差 は327票 に ま で縮 小 さ れ た 。

ゴ ア候 補 は,ヴ ォ ル シア,パ ー ム ・ビー チ,プ ロ ワー ド, マ イ ア ミ ・デ ー ドの4つ の カ ウ ンテ ィ に お い て,異 議 を 申 し立 て(protest),手 作 業 に よ る再 集 計 を要 求 し9),そ れ らが 完 了 す る まで,フ ロ リ ダ州 州務 長 官 が 票 の 確 定 を し な い よ う に求 め た 。

各 カ ウ ン テ ィが 州 務 長 官 に 票 の 集 計 結 果 を 提 出 す る最 終 日。

票 の 総 計 に,海 外 か らの不 在 者 投 票 を付 加 す る 最 終 日。

ゴ ア候 補 に よる 異 議 申 し立 て 訴 訟 に お い て,フ ロ リダ 州 最 高 裁(7名 の最 高 裁 判 事 の う ち,6名 は民 主 党 員 か らの 任 命 で あ り,1名 は 民 主,共 和 両 党 妥 協 に よ る任 命)は,11 月14日 の 集 計 締 切 日 を11月26日 に延 期 す る判 決 を下 す(ハ

リス1判 決)10)。

フ ロ リ ダ州 のハ リス 州 務 長 官 は,フ ロ リ ダ州 に お け る投 票 の勝 利 者 と して ブ ッ シ ュ ・テ キサ ス 州 知 事(当 時)を 決 定

8)Fla.Stat.§102.141(4)(2000).

9)Fla.Stat.§102.166(2000).

10)PalmBeachCountyCanvassingBd.v.Harris,772So.2d1220(Fla2000).

(5)

27日

12月4日

8日

ブ ッシュ対 ゴア連 邦最 高裁 判 決 とその含 意

133

す る。 票 差 は537票 で あ る。

ゴ ア 副 大 統 領 は,レ オ ン ・カ ウ ンテ イ巡 回 区 裁 判 所(フ リ ダ 州 の 州 都 タ ラハ シ に所 在 す る)に,州 務 長 官 の 票 の確 定 に 対 して 不 服 を 申 し立 て(contest>,上 記4つ の カ ウ ン

テ ィ に お け る手 作 業 に よる 再 集 計 を 求 め た11)。

ア メ リ カ合 衆 国 連 邦 最 高 裁 は,全 員 一 致 で,11月21日 の フ ロ リダ 州 最 高 裁 判 決,す な わ ち票 の確 定 を延 期 させ,手 作 業 に よ る読 み 直 し を認 め た 判 断 の根 拠 が 不 明確 で あ る と

して,こ れ を差 し戻 す 判 決 を下 す(ブ ッ シ ュ1判 決)12)。

レオ ン ・カ ウ ン テ ィ 巡 回 区 裁 判 所 の ザ ウ ル ス 判 事 は,4 つ の カ ウ ンテ ィで の 手 作 業 に よ る再 集 計 を求 め る ゴ ア候 補 か らの 不 服 申 し立 て を,票 の 集 計 が 正 し くな され て い た な らば,選 挙 の結 果 が 異 な っ て い た で あ ろ う 「合 理 的 可 能 性 」 を立 証 して い な い と して,棄 却 した13)。

フ ロ リ ダ州 最 高 裁 は,4対3で,レ オ ン ・カ ウ ン テ ィ巡 回 区裁 判 所 判 決 を破 棄 し,機 械 に よ る再 集 計 に よ って は無 効 と さ れ て い る 票(undervotes)を,フ ロ リ ダ 州 全 体 に わ た り,手 作 業 に よ っ て再 集 計 す る よ う に命 令 を下 した(ハ リスll判 決)14)。 こ の裁 定 に よ っ て,そ の 日の う ち に 票 差 は154票 に まで 迫 り,こ の ま ま手 作 業 に よ る再 集 計 を続 行 す る こ と に よ り,ゴ ア候 補 の 逆 転 勝 利 も あ り得 る との予 想

も出 され た の で あ っ た 。

11)Fla.Stat.§102.168(2000).

12)Bushv.PalmBeachCountyCanvassingBd.531U.S.70(2000).こ の 審 理 で は, テ レ ビ カ メ ラ が 連 邦 最 高 裁 の 法 廷 に 入 る こ と こ そ 認 め ら れ な か っ た が,即 時 録 音 さ れ,全 米 に 流 さ れ た 。 ゴ ァ 候 補 側 の 法 廷 代 理 人 を 勤 め た の は,わ が 国 で も 高 名 な ハ ー バ ー ド大 学 の ト ラ イ ブ 教 授 で あ る 。

13)Gorev.Harris,2000WL1790621(Fla。Cir.CtDec.4,2000).

14)Gorev.Harris,772So.2d1243(Fla.2000).

(6)

9日

11日

12日

13日

18日 2001年1月6日

連 邦 最 高 裁 は,フ ロ リダ 州 最 高 裁 が命 じた手 作 業 に よ る再 集 計 を,5対4で,差 し止 め る命 令 を下 した15)。

フ ロ リダ 州 最 高 裁 は,指 定 され た期 日 に遅 れ た と して,州 務 長 官 が,パ ー ム ・ビ ー チ お よ び ヴ ォル シ ア各 カ ウ ン テ ィ

か ら の集 計 報 告 を拒 絶 した の は,州 務 長 官 の 裁 量 権 の 範 囲 内 で あ る と して認 め た,レ オ ン ・カ ウ ンテ ィ巡 回 区 裁 判 所 判 決 を,破 棄 した。 この 判 決 は,12月4日 の 連 邦 最 高 裁 判

決 に応 え て の も の で あ る。

州 に よ る大 統 領 選 挙 人 を任 命 す る につ い て の セ ー フ ・ハ ー バ ー の 最 終 日で あ る。 連 邦 最 高 裁 は,5対4で,フ ロ リ ダ 州 最 高 裁 の12月8日 判 決 を破 棄 した(ブ ッ シ ュll判 決)16)。

フ ロ リ ダ 州 議 会 は,共 和 党 ブ ッ シ ュ候 補 側 の 大 統 領 選 挙 人 を任 命 す る 。

ゴ ア 副 大 統 領 は,ブ ッシ ュ知 事 を2000年 ア メ リ カ大 統 領 選 挙 の 当 選 者 と して 容 認 す る 演 説 を す る17)。

大 統 領 選 挙 人 団(electoralcollege)に よ る投 票 日。

上 院 議 員 お よ び 下 院 議 員 は,連 邦 議 会 に集 会 し,大 統 領 選 挙 人 の投 票 を集 計 し,ブ ッ シ ュ ・テ キ サ ス 州 知 事(当 時)

を,2000年 大 統 領 選 挙 の勝 利 者 と し,次 期 大 統 領 で あ る こ との 宣 言 を行 っ た 。

15)Bushv.Gore,531US.1046(20000).こ の 命 令 に は,ス カ リ ア 連 邦 最 高 裁 判 事 の 同 意 意 見 が 付 され て お り,同 命 令 は ス カ リ ア 判 事 の イ ニ シ ア チ ブ で な され た も の と の 理 解 が 一 般 で あ る 。 保 守 派 の 裁 判 官 で あ る ス カ リ ア 判 事 が イ ニ シ ア チ ブ を 取 っ た こ と は,リ ベ ラ ル 派 の 警 戒 心 を 強 め る 結 果 と な っ た の で あ る 。

16)Bushv.Gore,531U.S.98(2000).

17)12月13日 夜,民 主 党 ゴ ア 候 補 は 「 連 邦 最 高 裁 判 決 に は 断 固 と して 反 対 で あ る が,

私 は そ れ を 受 け 入 れ る」 との 終 結 演 説 に よ っ て,こ の 憲 法 の 危 機 は 終 焉 し た の で

あ る。

(7)

ブ ッシュ対 ゴア連邦最 高 裁判 決 とそ の含意

ヱ35

2ブ ッシ ュ対 ゴア 連 邦 最 高裁 判 決 の紹 介

こ こで は,2000年 の ア メ リ カ大 統 領 選 挙 の 勝 利 者 を 決 定 す る に つ き,極 め て 重 要 な 意 味 を持 った,ブ ッ シ ュ対 ゴ ア 判 決(ブ ッ シ ュII判 決)を,詳 細 に検 討 す る 。この こ とは,法 理 と して,本 判 決 の持 つ 意 味 が 重 要 で あ る とい う よ り も, こ の 判 決 に各 最 高 裁 判 事 が ど の よ うに 関 わ り,ま た どの よ う な意 見 を述 べ た の か が,今 後 の ア メ リ カ連 邦 最 高 裁 の行 方 を 占 う上 で,大 変 有 用 で あ る と考 え る

か ら で あ る 。

(1)パ ー ・ キ ュ ア リ ア ム(PerCuriam)18)

1

こ こ で の 問 題 は,以 下 の 二 点 で あ る 。

フ ロ リ ダ州 最 高 裁 は,大 統 領 選 挙 に対 す る不 服 申 し立 て を解 決 す る につ き,新 た な 基 準 を設 定 し,こ れ に よっ て合 衆 国 憲 法2条1節2項19)を

18)PerCuriamと い うの は,「 裁 判 所 の 名 に お い て」 と い う ラ テ ン語 で あ る 。 こ れ に 対 して,以 下 に検 討 す る よ う に,6種 類 の 意 見 が 付 され て い る が,こ れ ら の 意 見 の 中 に,ケ ネ デ ィ お よ び オ ッ コ ン ナ ー 各 最 高 裁 判 事 の 名 前 が 見 ら れ な い こ とか ら, こ の 両 者 あ る い は い ず れ か の 判 事 が,こ の 無 記 名 の 判 決 文 を 書 い た と 言 わ れ て い る 。

19)ア メ リ カ 合 衆 国 憲 法2条1節2項 は,次 の よ う に 規 定 し て い る 。

「各 州 は ,そ の 立 法 部 の 定 め る方 法 に よ っ て,そ の 州 か ら選 出 で き る 連 邦 上 院 議 員 お よ び 連 邦 下 院 議 員 の 総 数 と 同 数 の 選 挙 人 を 任 命 す る 。 た だ し,連 邦 上 院 議 員,連 邦 下 院 議 員,ま た は 合 衆 国 か ら信 託 ま た は 報 酬 を受 け る 公 職 に あ る者 を, 選 挙 人 に任 命 して は な ら な い 。」飛 田 茂 雄 『ア メ リ カ 合 衆 国 憲 法 を 英 文 で 読 む 』(中 公 新 書,1998年)103頁 参 照 。

な お,ア メ リ カ 合 衆 国 憲 法 修 正12条 は,次 の よ う に 規 定 し て い る 。

「 選 挙 人 は ,そ れ ぞ れ の 州 で 集 ま っ て,大 統 領 お よ び 副 大 統 領 に な る べ き者 を

選 ぶ た め,無 記 名 で 投 票 す る 。 … … 選 挙 人 は 無 記 名 の投 票 用 紙 に,大 統 領 と し て

選 出 した い 者 の 氏 名 を記 入 し,そ れ と は 別 の 無 記 名 投 票 用 紙 に,副 大 統 領 と し て

選 出 した い 者 の 氏 名 を記 入 す る 。 さ ら に 選 挙 人 団 は,大 統 領 候 補 と し て投 票 され

た す べ て の 者 の 氏 名 と 各 人 の 得 票 数,お よ び 副 大 統 領 候 補 と して 投 票 さ れ た す べ

て の 者 の 氏 名 と各 人 の 得 票 数 の 双 方 を,そ れ ぞ れ 別 の リス トに ま とめ,そ の い ず

れ に も署 名 し,確 証 し た う え,封 印 し,連 邦 上 院 議 長 に 宛 て て,合 衆 国 政 府 の 所

在 地 に 送 付 し な け れ ば な ら な い 。 一 上 院 議 長 は,上 院 議 員 お よ び 下 院 議 員 の

(8)

害 し,ま た3U.S.C.§520)に 違 反 し た の か 。

② 基 準 の 存 在 し な い 手 作 業 に よ る 再 集 計 は,平 等 保 護 お よ び デ ュ ー ・プ ロ

セ ス 条 項 に 違 反 しな い の か。

平 等 保 護 の 問 題 に 関 して,わ れ わ れ は 平 等 保 護 条 項 違 反 が あ る も の と認 め る。

皿A

合 衆 国全 体 で,2%も の 票 が 無 効 と な っ て い る。今 回 の 事 件 で も,パ ンチ カ ー ド式 の 投 票 機 械 で は,投 票 者 に よっ て,完 全 に穴 が 開 け られ て い な い,数 多 く の不 幸 な票 が 存 在 した の で あ る 。 立 法 機 関 に よ り国全 体 で,投 票 方 法 お よび 機 械 の 改 善 が な され る必 要 が あ る 。

皿B

投 票権 は議 員定数 に不 均衡が存在 しない ように保護 され るが,平 等保護 は投 票 の 取 り扱 わ れ 方 に も適 用 さ れ る 。 ゴ ア候 補 側 は,投 票 権 を保 護 す る た め に, 再 集 計 が 必 要 で あ る と主 張 す る 。 問 題 な の は,再 集 計 手 続 が,恣 意 的 な,異 っ た 取 扱 を 許 す も の とな っ て は な ら ない こ とで あ る 。 この 点,フ ロ リ ダ州 最 高 裁 は,ぶ ら下 が り票(hangingchad)や え くぼ票(dimplechad)21)の 中 か ら,

列 席 の も とで,す べ て の 認 証 文 書 を 開 封 し て,得 票 数 を計 算 す る 。 大 統 領 候 補 と し て 最 も多 数 の 票 を得 た 者 は,も しそ の 得 票 数 が 任 命 さ れ た 選 挙 人 の 総 数 の 半 数 を超 え て い る と き は,大 統 領 と な る 。 … … 副 大 統 領 候 補 と して 最 も多 数 の 票 を得 た者 は,も しそ の 得 票 数 が 任 命 さ れ た 選 挙 人 の 総 数 の 半 数 を 超 え て い る と き は,副 大 統 領 と な る 。」 飛 田 ・上 掲 ・190‑1頁 参 照 。

20)3U.S.C.§5す な わ ち,セ ー フ ・ハ ー バ ー は,次 の よ う に規 定 して い る。

「選 挙 人 の 任 命 前 に 制 定 され た 法 に よ っ て ,裁 判 そ の 他 の 方 法 な い しは 手 続 に 従 っ て,州 の 選 挙 人 の す べ て あ る い は 幾 人 か の 任 命 に 関 す る不 服 の 申 し立 て,あ

る い は 異 議 の 申 し立 て に つ い て,州 が 最 終 的 な 決 定 を 下 し,こ の 決 定 が,選 挙 人 が 集 会 す る た め に 定 め ら れ た 日の,少 な く と も6日 前 に な さ れ た な ら ば,当 該 州 に よ っ て任 命 さ れ た 選 挙 人 の 確 定 に 関 す る 限 り,上 記 の 期 日 に 存 在 す る 法 に 従 っ て な され,選 挙 人 の 集 会 に 関 す る 上 記 の 期 日に 先 立 つ6日 前 に な さ れ た こ の 決 定 は 最 終 的 な もの で あ り,憲 法 に 規 定 さ れ,以 下 に 規 定 さ れ た 選 挙 人 の 投 票 に お い て 決 定 的 な もの と な る 。」

2000年 の 大 統 領 選 挙 で は,3U.S.C.§7に よ り,12月18日 が 大 統 領 選 挙 人 に よ る 投 票 日で あ り,従 っ て そ の6日 前 で あ る,12月12日 が セ ー フ ・ハ ー バ ー の 最 終 日 と な る 。

21)chadと い うの は,パ ン チ カ ー ド式 投 票 用 紙 に お い て,候 補 者 の 名 前 に続 い て,

(9)

ブ ッシュ対 ゴ ア連邦 最高 裁判 決 とそ の含意

ヱ37

投 票 者 の 意 図 を見 分 け るべ き で あ る と命 じた 。 しか し,こ の 命 令 は 基 本 的 権 利22)を 守 る た め に 必 要 な,非 恣 意 的 取 扱 の 要 求 を満 た す もの で は な い 。 投 票 者 の 意 図 を考 慮 す る こ とは,抽 象 的 な命 題 と して は異 論 の な い もの で あ るが, 平 等 な適 用 を保 障 す る た め の 特 定 され た,基 準 が 必 要 と され る の で あ る。

基 準 の 欠 如 は,以 下 の よ う な事 態 を招 く。 す な わ ち,異 議 を 申 し立 て られ た 投 票 を,票 と して 受 け入 れ るの か拒 絶 す る の か,カ ウ ンテ ィ ご とに 異 な る だ け で は な く,同 じ カ ウ ンテ ィの 中 で も再 集 計 チ ー ム ご とに 異 な る結 果 を生 ず る。

フ ロ リ ダ州 最 高 裁 に よ っ て 加 え る こ とが 認 め られ た票 の 中 に は,再 集 計 が 途 中 で 中 止 さ れ た,マ イ ア ミー デ ー ド ・カ ウ ンテ ィか ら寄 せ られ た集 計 半 ば の票 も含 まれ て い た 。 こ の こ とは,フ ロ リ ダ州 最 高 裁 判 決 は,票 の 再 集 計 が 完 結 す る こ と を保 障 す る も の で は な い こ と を意 味 す る 。 さ らに,こ の 命 令 は,誰 が 再 集 計 を す る の か に つ い て も述 べ て い な い 。 ま た,再 集 計 に つ い て監 視 を認 め る カ ウ ンテ ィ も あ れ ば,再 集 計 に対 す る異 議 を 申 し立 て る こ と を禁 止 す る 所 も出 て くる で あ ろ う。

地 方 団体 が 選 挙 を実 施 す る につ き,異 な る シ ス テ ム を採 用 す る こ とが で きる こ とを 問 題 に して い る の で は ない 。 わ れ わ れ が 直 面 して い るの は,統 一 性 を確 保 す る権 能 を有 す る州 の裁 判 所 は,最 低 限 の手 続 的 保 障 を した 上 で,州 全 体 で の 再 集 計 を命 令 した の か とい う こ とで あ る。 裁 判 所 が 州 全 体 に わ た る救 済 を命

ミ シ ン 目 を入 れ られ て い る,通 常 長 方 形 の 部 分 で あ り,投 票 人 は投 票 の 記 録 とす る た め に 穴 を 空 け る 部 分 の こ と で あ る 。hangingchadと 言 わ れ る の は 一 つ の コー ナ ー に の み 付 着 し て,穴 が 貫 通 し て い な い も の を 指 し,dimplechadと い うの は,膨 らみ,ほ ぞ 穴 が 付 け ら れ,印 が 残 さ れ て い る が,四 つ の コ ー ナ ー す べ て に 付 着 し て い る チ ャ ドの こ と で あ る 。SeeRAPosNER,BREAKINGTHEDEAD‑

LOCKxv(2001).

22)周 知 の よ う に,基 本 的 権 利(fundamentalright)は,平 等 保 護 を め ぐっ て,1960

年 代 か ら ア メ リ カ 合 衆 国 で 盛 ん に議 論 に な っ て きた 概 念 で,こ こ で 軽 々 に扱 え る

問 題 で は な い 。 い ず れ に せ よ,裁 判 所 が,修 正14条 の 平 等 保 護 に お い て,基 本 的

権 利 を 持 ち 出 す こ と は,厳 格 な 審 査,違 憲 とい う 結 論 に導 く,い わ ば 前 置 的 概 念

で あ る と 言 っ て よ い 。例 え ば,松 井 茂 記 『ア メ リ カ憲 法 入 門[第4版]』(有 斐 閣,

1999年)296頁 以 下 参 照 。 し か し,保 守 派 の 裁 判 官 が,ウ ォ ー レ ン ・コ ー トに お

い て 盛 ん に 使 用 さ れ た,こ の 権 利 概 念 を 持 ち 出 した こ と 自 体,違 和 感 を 感 じ させ

る も の が あ る 。

(10)

令 す る につ い て は,平 等 な 取 扱 と基 本 的 な公 正 さ の要 請 とい う,初 歩 的 な保 障 が 存 在 し な け れ ば な らな い 。 フ ロ リ ダ州 最 高 裁 判 決 に は,こ の よ う な手 続 の 保 障 が 含 まれ て い な い 。 例 え ば,フ ロ リ ダ州 最 高 裁 長 官 が そ の 反 対 意見 の 中 で 注 意 を 促 し て い る に も か か わ ら ず,お よ そ110,000に お よ ぶ オ ー バ ー ボ ー ト

(overvotes)の 票 の 問 題 に は何 らの注 意 も 向 け られ て い な い の で あ る23)。

平 等 保 護 や デ ュ ー ・プ ロセ ス の 要 請 に応 え て,再 集 計 を行 う た め に は,さ な る検 討 が 必 要 で あ っ た の で あ る 。 す な わ ち,適 法 な票 を決 定 す る基 準,そ を実 行 す る手 続,争 い が 生 じた場 合 の 適 正 な 審 査 で あ る 。

フ ロ リ ダ 州 最 高 裁 は,3U.S.C.§5に 規 定 さ れ て い る よ う に,州 の 大 統 領 選 挙 人 が 「連 邦 の 選 挙 プ ロ セ ス に完 全 に組 み込 まれ る」 こ と を,州 立 法 府 は 意 図 して い る,と 述 べ て い る 。 翻 っ て,こ の 連 邦 法 は,最 終 的 な選 挙 人 の 選 定 の た め に準 備 さ れ る,い か な る争 訟 あ る い は不 服 申 し立 て も,12月12日 まで に 完 了 す る こ と を要 求 して い る の で あ る 。 ま さ に本 日が そ の 日 にあ た り,そ して 州 最 高 裁 の 命 令 は,憲 法 上 の保 障 に最 低 限 適 う再 集 計 手 続 を 設 定 す る こ とが 不 可 能 な の で あ る。12月12日 に 問 に合 う よ う な形 で の,い か な る再 集 計 も違 憲 とな る が 故 に,再 集 計 を命 じて い る フ ロ リ ダ州 最 高 裁 の 判 断 を破 棄 す る 。

フ ロ リ ダ州 最 高 裁 判 所 に よ っ て命 じ られ た再 集 計 に,憲 法 上 の 問 題 が 存 在 す る こ と につ い て,連 邦 最 高 裁 の7名 の 裁 判 官 が 一 致 して い る。 唯 一 不 一 致 が 存 在 す る の は,救 済 に関 して で あ る 。 フ ロ リダ 州 最 高 裁 は3U.S.C.§5の セ ー フ ・ ハ ー バ ー(safeharbor)の 利 益 を受 け る こ と を フ ロ リ ダ 州 議 会 は 意 図 し て い る と述 べ て い る の で,ブ ラ イ ァ ー 裁 判 官 が 提 案 して い る 救 済 は,フ ロ リダ 州 選 挙 法 に違 反 す る 。

当 法 廷 の 裁 判 官 ほ ど,司 法権 に課せ られ た非常 に重要 な限界 を意 識 して い る者 は他 に は存 在 し な い し,大 統 領 の 選 出 を,立 法 部 を通 じて 人 民 に,そ して 政 治 の 世 界 に委 ね て い る,合 衆 国 憲 法 の 企 図 を 称 賛 す る 立 場 に立 つ 者 は

23)フ ロ リ ダ州 最 高 裁 がundervoteの み を 問 題 に し,overvoteを 取 り上 げ 問 題 視 し

な か っ た こ と が,そ の 判 決 に説 得 力 を失 わ せ る一 つ の 原 因 と な っ て い る の は 確 か

で あ る 。

(11)

ブ ッシュ対 ゴア連 邦最 高裁 判決 とそ の含 意

ヱ39

い な い 。 だ が しか し,異 を 唱 え合 っ て い る 当事 者 が 裁 判 の プ ロ セ ス に 訴 え て い る と き,司 法 制 度 が 直 面 して い る 連 邦 上,憲 法 上 の争 点 を解 決 す る の は, 未 だ 求 め られ た こ と の な い,わ れ わ れ の 責 務 な の で あ る24)。

(2)レ ー ン ク ィス ト連 邦 最 高裁 長 官 の 同 意 意 見

(ス カ リア 最 高裁 判 事,ト ー マ ス最 高 裁 判 事 が 賛 同)

パ ー ・キ ュ ア リア ム の 意 見 に 加 わ る が,フ ロ リ ダ州 最 高 裁 判 決 を棄 却 す る, さ ら な る 理 由 が 存 在 す る と信 じ るの で,別 に意 見 を 述 べ る こ と にす る。

1

ほ とん どの 事 件 に お い て は,連 邦 主 義 へ の 礼 譲 と尊 敬 か ら,州 法 の 問 題 につ い て の州 裁 判 所 の判 決 に対 して 敬 意 を払 う こ とが 求 め られ る。 しか し,い くつ か の 例 外 的 事 件 が 存 在 す る。そ れ は,合 衆 国 憲 法 が 州 政 府 の 部 門 に義 務 を 課 し, 権 能 を与 え て い る場 合 で あ る 。 本 件 は,そ の よ うな もの の 一 つ で あ る。

フ ロ リ ダ州 最 高 裁 が 認 め た よ う に,3U.S.C.§5は,フ ロ リ ダ州 の 法 体 系 に お い て も考 慮 に入 れ られ な け れ ば な らな い も の で あ る。 従 っ て,合 衆 国 憲 法2 条 に よ っ て 州 の 立 法 府 に与 え られ て い る権 能 を尊 重 す べ きで あ る な らば,選 挙 後 の 州 裁 判 所 の 活 動 は,§5に 規 定 さ れ た セ ー フ ・ハ ー バv・の 恩 恵 を 受 け よ う とす る,立 法 府 の意 図 を妨 げ な い よ うに し な け れ ば な らな い 。

フ ロ リダ 州 最 高 裁 に よ る フ ロ リ ダ州 選 挙 法 の解 釈 は,合 衆 国 憲 法2条 に 反 す る もの で あ り,正 しい 解 釈 の範 囲 を超 え て い る。 こ う述 べ る こ と は,州 裁 判 所 を 無 視 す る こ とで は な く,合 衆 国 憲 法 に規 定 さ れ た,州 の 立 法 府 の 役 割 を 尊 重 す べ き こ と を意 味 す るの で あ る 。 州 裁 判 所 の 判 決 に 決 定 権 を与 え る とす れ ば, 合 衆 国 憲 法2条 が 規 定 す る 明確 な保 障 に つ い て,わ れ わ れ の責 務 を放 棄 す る こ

と に な る の で あ る。

州 の 立 法 府 は,投 票 結 果 に異 議 を 申 し立 て る こ と(protest)と,選 挙 結 果

24)EJDIoNNEJr.&WILLIAMKRIsToLEDs.,supranote5,atlO8.

(12)

に不 服 を 申 し立 て る こ と(contest),の 仕 組 み を設 け て い る 。 不 服 を 申 し立 て る こ と が で きる 根 拠 は,「 選 挙 結 果 を 変 え,あ る い は そ の 結 果 を 疑 わ し い もの と させ る の に 十 分 な,多 くの 不 適 法 な投 票 の 算 入,あ るい は多 くの 適 法 な投 票 の拒 絶 」 が な さ れ て い る場 合 で あ る25)。 大 統 領 選 挙 に お い て は,不 服 申立 の 期 間 は,州 に よ る 「選 挙 争 訟 の 最 終 的 決 定 」 に つ い て 結 論 を 下 す た め に, 3U.S.C.§5に 述 べ られ た 日に 終 了 し な け れ ば な ら な い 。 そ して,勝 利 を認 定 さ れ た 者 に は,そ の 有 効 性 が推 定 さ れ る。しか しな が ら,フ ロ リ ダ州 最 高 裁 は, 実 質 上,す べ て の 合 法 的 な 結 果 の認 定 を無 意 味 な も の に し,フ ロ リ ダ州 立 法 府 に よっ て 定 め られ た 諸 規 定 か ら逸 脱 して い る の で あ る 。

さ らに,フ ロ リ ダ州 最 高 裁 は,異 議 申立 の期 間 中 に到 着 した,集 計 が 遅 れ た 投 票 の 結 果 を,定 め られ た最 終 日(HarrisI判 決 に よっ て 定 め られ た最 終 日) を経 過 した に もか か わ らず,自 動 的 に 組 み 入 れ られ るべ きで あ る と して,最 終 日 ま で に 達 成 さ れ な か っ た再 集 計 を 無 視 す る こ とが で きる,州 務 長 官 の 裁 量 権 を侵 害 して い る の で あ る。

加 え て,「 合 法 的投 票(legalvote)」 に つ い て の裁 判 所 の 解 釈,そ れ に 従 っ て 不 服 申 し立 て期 間 中 に再 集 計 を命 じた 決 定 は,明 らか に 立 法 の 体 系 か ら乖 離 して い る 。 フ ロ リダ 州 法 は,適 切 に マ ー ク さ れ な か っ た票 を 集 計 す る こ と を要 求 して い る,と 合 理 的 に考 え る 余 地 は な い の で あ る 。

3U.S.C.§5の セ ー フ ・ハ ー バ ー の利 益 を得 る との 立 法 府 の 狙 い に照 ら して, フ ロ リ ダ 州 最 高 裁 に よ っ て 命 じ ら れ た,数 万 に 及 ぶ ア ン ダー ボ ー ト

(undervotes)の 票 を再 集 計 す る救 済 方 法 は,12月18日 ま で に 完 結 す る こ と は不 可 能 で あ り,12月8日 段 階 の も の と して,適 切 で あ る とは 考 え られ ない 。

パ ー ・キ ュ ア リア ム にお い て述 べ られ て い る こ と と と もに,以 上 に述 べ た理 由 に よ り,フ ロ リ ダ 州 最 高 裁 判 決 を破 棄 す る。

25)§102.168(3)(C).

(13)

ブ ッシュ対 ゴア連 邦最 高裁 判決 とその含 意

ヱ41

(3)ス テ ィ ー ブ ン ス 最 高 裁 判 事 の 反 対 意 見

(ギ ン ズバ ー グ最 高 裁 判 事,ブ ラ イア ー 最 高 裁 判 事 賛 同)

合 衆 国 憲 法 は,大 統 領 選 挙 人 を選 出 す る方 法 を決 定 す る 責 務 を,主 に,州 割 り当 て て い る(合 衆 国 憲 法2条1節2項 参 照)。 選 挙 法 を含 む,州 法 の 意 味 につ い て 争 い が 生 じた 時 に,州 の最 高 裁 判 所 の 意 見 を,最 終 的 な もの とす る の が,わ が 国 に お い て 確 立 さ れ て い る慣 行 で あ る 。 稀 に,連 邦 法 か 合 衆 国 憲 法 に お い て,州 で行 わ れ た 選 挙 に,連 邦 の 司 法 が 介 入 す る こ と を求 め て い る こ とが あ るが,今 回 の場 合 は,こ の よ う な例 で は な い 。

3U.S.C.§5は,選 挙 人 候 補 者 に つ い て 争 い が 存 在 す る 場 合 に,連 邦 議 会 が 従 うべ き規 則 に す ぎ な い。 真 の 勝 利 者 が 決 定 され る ま で,法 に適 う投 票 が どれ で あ る か を,州 が 認 定 す る こ と を禁 止 す る もの で は な い。 事 実,1960年 に,ハ ワ イ州 か ら,二 種 類 の 選 挙 人 候 補 者 名 簿 が 提 出 され た の で あ っ たが,連 邦 議 会 は,3U.S.C.§5の 最 終 日以 降 で あ る1961年1月4日 に,確 定 さ れ た 選 挙 人 名 簿 を採 用 し た の で あ る。

「い つ しか ,本 日の判 決 によって加 え られた,信 頼 に対 す る傷 を癒す時が 来 る こ と で あ ろ う。 とは い え,確 か な こ とが 一 つ だ け存 在 す る。 完 壁 な確 実 性 を も っ て,今 回 の 大 統 領 選 挙 の勝 利 者 が どち らで あ る の か を知 る こ と は不 可 能 で あ る と して も,敗 者 が 誰 で あ るか だ け は 極 め て 明 白で あ る 。 そ れ は, 法 の 支 配 の公 平 な 擁 護 者 と して の 裁 判 官 に対 す る,国 民 の 信 頼 で あ る26)。

(4)ス ー タ ー 最 高 裁 判 事 の 反 対 意 見

(ブ ラ イ ア ー 最 高 裁 判 事 賛 同 。Cを 除 外 し た 部 分 に つ い て,ス テ ィ ー ブ ン ス 最 高 裁 判 事,ギ ン ズ バ ー グ 最 高 裁 判 事 賛 同)

Bushv.PalmBeachCountyCavassingBd.(ブ ッ シ ュ1判 決)で あ れ,本 件 で あ れ,連 邦 最 高 裁 は 審 理 す べ き で は な い 。 ま た,こ の 審 理 の 期 間 中,フ ロ

26)EJ.DioNNEJr.&WILLIAMKRIsToLEDs。suPranote5,at121.

(14)

リダ 州 最 高 裁 に よ る命 令 を停 止 させ,再 集 計 し よ う と した フ ロ リダ 州 の 試 み を 止 め る べ きで は なか っ た 。

争 点 は,以 下 の 三 つ で あ る。 ① フ ロ リ ダ 州 に お け る選 挙 に対 す る不 服 申 し立 て につ い て 規 定 して い る州 法 に つ い て の 州 最 高 裁 判 所 の解 釈 は,3U.S.C.§5 の セ ー フ ・ハ ー バ ー 規 定 を 侵 害 す る結 果 とな る の か 。 ② 不 服 申 し立 て につ い て の規 定 の 州 最 高 裁 判 所 の解 釈 は,合 衆 国 憲 法2条1節2項 に従 い,州 の 立 法 府 が 規 定 した もの か ら逸 脱 し,州 法 を変 更 した の か 。 ③ 機 械 に よ っ て は投 票 と見 倣 さ れ な か っ た票 の 集 計 方 法 は,修 正14条 に よっ て 保 障 され た,平 等 保 護 な い

し は適 正 手 続 を侵 害 す る の か,で あ る 。 A

い か な る州 も,ど の よ う な 理 由 で あ れ,3U.S.C.§5に 従 う こ と を 求 め ら れ て は い な い の で あ る 。 こ の規 定 の 諸 条 件 が 満 た され ない 場 合 に,セ ー フ ・ハ ー バ ー の利 益 を失 う こ と に な る だ け で あ る 。

B

フ ロ リダ 州 最 高 裁 の 多 数 意 見 は,合 理 的 な解 釈 の 範 囲 内 に あ り,合 衆 国 憲 法 2条 と矛 盾 す る もの で は な い。

C

パ ー ・キ ュ ア リ ア ム の 意 見 が 認 め て い る よ う に,③ の 争 点 の み が 議 論 に 値 す る もの で あ る 。 これ は,も し州 の 手 続 が 中 断 され て い な か っ た な ら,フ ロ リ ダ 州 の 裁 判 所 に よ って 適 切 に扱 わ れ た で あ ろ う争 点 で あ る 。 ま た,も し州 レベ ル で 処 理 され な か っ た な ら,選 挙 人 団 に よ る投 票 を巡 る 論 争 にお い て,連 邦 議 会 に よっ て 検 討 され るべ き もの で あ っ た 。 とは い え,州 に よ る手 続 は 中 断 さ れ, 残 され た 時 間 は 少 な く,争 点 が わ れ わ れ の前 に提 起 さ れ て い る の で,こ の 点 に つ い て,当 法 廷 が 判 断 を加 え る の が 賢 明 で あ る と考 え る 。

投 票 者 の 基 本 的 権 利 の 表 明 が,異 な る取 扱 を受 け る こ と に な る こ と を正 当化 す る,州 の 利 益 は 存 在 しな い 。 違 い が 設 け られ る こ とは,非 常 に恣 意 的 で あ る と思 わ れ る。 様 々 な タ イ プ の投 票 を判 断 す る た め の,統 一 的 基 準 を 定 め る よ う に,本 件 を フ ロ リ ダ州 の裁 判 所 に差 し戻 す こ と を求 め る もの で あ る 。12月18日

(15)

ブ ッシ ュ対 ゴア連邦 最 高裁判 決 とそ の含 意 の,選 挙 人 の 集 会 の た め に設 定 され た 日 まで に,

る こ とを 不 可 能 と考 え る の は正 当 で は な い 。

ヱ43

フ ロ リ ダ 州 が この 要 求 に 応 じ

(5)ギ ン ズ バ ー一グ最 高 裁 判 事 の 反 対 意 見

(ス テ ィ ー ブ ン ス 最 高 裁 判 事 が 賛 同 。1の 部 分 に,ス ー タ ー 最 高 裁 判 事 お よび ブ ラ イ ア ー 最 高 裁 判 事 が 賛 同)

1

フ ロ リ ダ 州 最 高 裁 判 所 に よ る,フ ロ リダ 州 法 につ い て の合 理 的 な解 釈 を 覆 す 理 由 は存 在 し ない 。 ま た,合 衆 国 憲 法2条 は,当 法 廷 に よ る審 査 を求 め る もの で は ない 。

本 件 が 置 か れ て い る特 異 な状 況 は,事 件 を適 切 に解 決 す る た め の,当 た り前 の 原 理 を曖 昧 に す る。 す な わ ち,連 邦 の裁 判 所 は,州 法 につ い て の 州 最 高 裁 判 所 の解 釈 に従 う と い う こ とで あ る 。 こ れ は,す べ て の 者 が 同意 す る,連 邦 主 義 の 核 心 で あ る 。 当 裁 判 所 が,二 重 の 主 権 とい うわ が 国 の シ ス テ ム に 留 意 す る な

ら,フ ロ リダ 州 最 高 裁 の 判 断 を肯 定 す べ きで あ る。

再 集 計 の た め の 判 断基 準 が 完 全 無 欠 で あ る こ とが 理 想 で あ ろ う。 しか しな が ら,わ れ わ れ の 生 き て い る 世 の 中 は不 完 全 で あ り,何 千 とい う票 が 数 え られ な い ま ま に さ れ て い る の で あ る。 た と えそ れ に は 欠 陥 が 存 在 す る とは い え,フ リ ダ州 の 裁 判 所 に よ っ て採 用 さ れ た再 集 計 が,こ れ に先 立 つ 認 定 よ り,よ り公 正 で な い と か,正 確 で は な い 結 果 を生 ず る とい う意 見 に 賛 成 す る こ と はで きな

い0

12月12日 が 選 挙 結 果 を確 定 す る最 終 日 で あ る とい う法 廷 意 見 は,誤 っ て い る。

(6)ブ ラ イ ア ー最 高 裁 判 事 の 反 対 意 見

(ス テ ィ ー ブ ン ス 最 高 裁 判 事 お よ び ギ ン ズバ ー グ最 高 裁 判 事 は1‑A‑1 に関 す る部 分 を 除 い て 賛 同 。 ス ー タ ー最 高裁 判 事 は1の 部 分 全 体 に 賛 同) 法 廷 意 見 が こ の事 件 を取 り上 げ た の は 間 違 い で あ る。 差 止 め た こ と も誤 りで

(16)

あ っ た 。 この 差 止 め を無 効 に した 上 で,再 集 計 す べ し との,フ ロ リ ダ州 最 高 裁 判 所 の 決 定 を認 め るべ き で あ る 。

1‑‑A‑1

異 な る基 準 を使 用 す る こ とは,ど ち らか の 候 補 者 に 有 利 に な る 。 ま た,通 常 の 司 法 審 査 に よ っ て,差 異 を取 り除 く こ と を下 級 裁 判 所 に認 め る に は時 間 が 不 足 し て い る 。 この よ う な特 異 な状 況 にお い て は,公 正 さ につ い て の 基 本 的 な 原 理 に従 い,問 題 を解 決 す る た め の 統 一 的 な基 準 を採 用 す る よ うに 求 め る こ とで あ る。

1‑A‑2

再 集 計 を停 止 させ る との,多 数 意 見 が 主 張 す る救 済 を 正 当 化 す る こ と は で き な い 。 異 議 申 し立 て期 間 の 終 了 前 に再 集 計 され た もの で あ ろ う と なか ろ う と, プ ロ ワ ー ド,ボ ル シ ア,パ ー ム ・ビー チ,マ イ ア ミ ・デ ー ド各 カ ウ ン テ ィ を含 む,フ ロ リダ 州 にお け る す べ て の,正 式 な票 と は さ れ な か っ た票 を再 集 計 す る こ と を認 め る こ と は,こ の 遅 い 時 期 にお い て さ え も適切 な救 済 と な る。 選 挙 人 が 集 会 を持 つ こ とが 予 定 され て い る,12月18日 ま で に,再 集 計 す る時 間 が残 さ れ て い るか 否 か は,州 の 裁 判 所 が 決 定 す る 問 題 で あ る 。

1‑B

本 件 に お い て,合 衆 国 憲 法2条1節 か,あ る い は3U.S.C.§5に 照 ら して, 州 法 を審 査 す る こ とを認 め る,レ ー ン ク ィス ト最 高 裁 長 官 の 意 見 に与 す る こ と は で き な い。 さ らに,た と え こ の よ う な審 査 が 適 切 で あ る と して も,フ ロ リ ダ 州 最 高 裁 の判 決 が,連 邦 法 に違 反 す る との結 論 を支 持 す る こ とは で き な い 。

接 戦 の大 統 領 選 挙 を 決 す る に つ い て,連 邦 最 高 裁 の役 割 を最 小 限 にす る,憲 法 制 定 者 や1886年 の 連 邦 議 会 の 決 定 が 賢 明 で あ る こ とは 明 白 で あ る。 選 挙 をめ

ぐる 争 い が 連 邦 議 会 に と っ て い か に 困 難 で あ ろ う と も,政 治 的組 織 で あ る 連 邦 議 会 は,選 挙 で 選 ば れ た の で は な い 連 邦 最 高 裁 よ り,は るか に 人 民 の意 思 を正 確 に 表 明 す る こ とで あ ろ う。

か つ て,ブ ラ ン ダ イ ス 最 高 裁 判 事 は,次 の よ う に述 べ た。 「わ れ わ れ が す べ

(17)

ブ ッシュ対 ゴア連邦 最 高裁 判決 とそ の含 意 ヱ45 き最 も重 要 な こ とは何 も しな い こ とで あ る27)。」 今 す べ き こ とは,連 邦 最 高 裁 を何 も し な い ま ま に して お くこ と で あ る 。

フ ロ リ ダ州 で の 再 集 計 を,統 一 的 基 準 の も とで,継 続 す る こ と を認 め るべ き で あ る 。

3判 決 内容 の 整 理

以 上 が,ブ ッシ ュ対 ゴ ァ判 決 の 概 要 で あ る。 この 判 決 は 非 常 に錯 綜 して い る の で,整 理 す る と,以 下 の よ う に な る。

多 数 意 見(5名)

(オ ッ コ ンナ ー 連 邦 最 高 裁 判 事,ケ ネデ ィ連 邦 最 高 裁 判 事,レ ー ン ク イ ス ト連 邦 最 高 裁 長 官,ス カ リ ァ連 邦 最 高 裁 判 事,ト ー マ ス 連 邦 最 高 裁 判 事) (A)手 作 業 に よ る再 集 計 に は統 一 的 な 基 準 が 存 在 せ ず,恣 意 的 な もの で あ

り,合 衆 国憲 法 修 正14条 の 平 等 保 護 に反 す る 。

(B)3U.S.C.§5は 各 州 に お け る大 統 領 選 挙 人 選 出 の最 終 日 を定 め て い る。

補 足 意 見(3名)

(レ ー ン ク ィス ト連 邦 最 高 裁 長 官,ス カ リア連 邦 最 高 裁 判 事,ト ー マ ス 連 邦 最 高 裁 判 事)

上 記(A)と(B)に加 え て,さ ら に,(C)フ ロ リ ダ州 最 高 裁 が,手 作 業 に よ る再 集 計 を 認 め る裁 定 を下 した の は,誤 っ た 法 の 解 釈 に基 づ く もの で あ る 。

反 対 意 見(4名)

(ス テ イー ブ ンス 連 邦 最 高 裁 判 事,ギ ンズ バ ー グ連 邦 最 高 裁 判 事,ス ター 連 邦 最 高 裁 判 事,ブ ラ イ アー 連 邦 最 高 裁 判 事)

(a)フ ロ リ ダ州 最 高 裁 の多 数 意 見 を 支持 し,こ の よ う な 問題 に 連 邦 最 高 裁 は介 入 す べ きで は な い。

(b)手 作 業 に よ る再 集 計 を行 な う こ と 自体 に 問題 は な い。

27)Idat142‑3.

(18)

(c)3U.S.C.§5は,州 に お け る大 統 領 選 挙 人 の 選 出 の 最 終 日 で あ る と解 釈 さ れ るべ きで は な い 。

少 数 意 見(2名)

(ス ー タ ー 連 邦 最 高 裁 判 事,ブ ラ イ ア ー 連 邦 最 高 裁 判 事)

上 記(A)の問 題 を 回避 す る た め に,連 邦 最 高 裁 は統 一 的 基 準 を示 した 上 で, 事 件 を州 最 高 裁 に差 し戻 す べ きで あ る。

な お,パ ー ・キ ュ ア リア ム の 意 見 は,① と④ を組 み 立 て 直 した,7名 の 意 見 と して構 成 され て い る。

4ブ ッシ ュ対 ゴア 判 決 の 評価

選 挙 集 計 が,例 外 的 な場 合 を 除 き28),整 然 と行 わ れ る わ が 国 に お い て,こ の よ う な選 挙 結 果 を 巡 る激 しい 争 い を理 解 す る こ と に は 困難 を 感 じさせ る も の が あ る。 ア メ リ カ に お け る投 票 方 法 が,各 州 の カ ウ ン テ ィ ご と に異 な り,し か も非 常 に 旧式 なパ ンチ カー ド方 式 を採 用 して い る地 域 が か な りの 程 度 存 在 して い る こ と も,驚 きで あ る29)。 また,州 にお け る 選 挙 法 が不 完 全 な場 合 が あ り, ま さ に フ ロ リ ダ州 に お い て 見 られ た よ うに,曖 昧 で,多 様 な解 釈 が 存 在 す る余 地 を 残 して い るの で あ る。 しか し,こ れ らの 問 題 は,今 後 の予 算 上 の措 置 や, 州 法 の 改 正 に よ っ て改 め る こ とが 十 分 可 能 な も の で あ る。

これ に対 して,今 後 と も大 きな 問 題 点 と して 残 る の は,ア メ リ カ の大 統 領 選 挙 が,未 だ に 間 接 選 挙 で あ り,有 権 者 は,ま ず 選 挙 人(elector)を 選 出 し,

こ れ に よ っ て 各 州 に 選 挙 人 団(electoralcollege)が 形 成 さ れ,こ の 選 挙 人 団 が 大 統 領 を選 出 す る とい う仕 組 み を採 用 して い る こ とで あ る。 今 日,選 挙 人 団 に よ る投 票 は 形 式 的 な もの とな っ て お り,各 州 の 投 票 に よ っ て形 成 さ れ た 多 数

28)有 名 な 例 と して,鹿 児 島 県 伊 仙 町 の 選 挙 が あ る 。松 井 ・前 掲 注6・256‑7頁 参 照 。 29)驚 くべ き こ と に,全 米 の う ち の37.4%の 選 挙 区 で,パ ンチ カ ー ド式 の 投 票 方 法 が

採 用 さ れ て い る 。SeeR.A.PosNER,smpranote21at242.

(19)

ブ ッシュ対 ゴア連邦 最高 裁判 決 とそ の含意

147

意 思 に 従 う こ と に な っ て は い る が30),こ の 仕 組 み は 実 質 的 に小 さ な 州 に有 利 に 働 くの で,合 衆 国全 体 で の勝 利 者 と,選 挙 人 の投 票 結 果 との 問 に齪 齢 が 生 じ る 場 合 が あ り,今 回 ゴ ア候 補 は全 米 で は50万 票 程,ブ ッ シ ュ候 補 を リ ー ドして い た の で あ る。 しか し,こ の点 を改 め る に は合 衆 国 憲 法 の 修 正 が 必 要 と され, 現 在 有 利 な 立 場 に 置 か れ て い る小 州 の 賛 同 を得 る こ と は 困 難 な こ とが 予 想 さ

れ,こ れ を改 め る こ とは ほ とん ど不 可 能 に 近 い 。 全 米 で 最 多 得 票 数 を獲 得 した 大 統 領 候 補 者 と,大 統 領 選 挙 人 の 過 半 数 を獲 得 した大 統 領 候 補 者 と に齪 鱈 を き た す こ とは極 め て稀 で あ る とは い え,今 後 も問 題 点 と し て残 る こ と に な る31)。

さて,本 判 決 は,前 章 にお い て 一 応 の整 理 を試 み た が,ア メ リ カ合 衆 国 連 邦 最 高 裁 判 事 の 意 見 が錯 綜 して お り,そ こ か ら判 例 法 理 と して何 を読 み 取 る か 自 体,非 常 に 困 難 な 問 題 で あ る。 そ もそ も,こ れ が7対2判 決 な の か,5対4判

決 と して理 解 す べ きな の か に つ い て 争 い が あ る。

この 判 決 を,フ ロ リ ダ州 最 高 裁 判 決 が手 作 業 に よる 再 集 計 を命 ず る に つ き, 明確 な基 準 を示 して い ない が 故 に,合 衆 国 憲 法 修 正14条 違 反 の 判 決 で あ る と し た と理 解 す る こ と も可 能 で あ る 。 パ ー ・キ ュ ア リア ム の 部 分 をそ の ま ま 受 け 止 め る な らば,こ の よ う な見 方 に な るで あ ろ う。 そ うす る と,こ の 判 決 は,合 衆 国 憲 法 修 正14条 の平 等 保 護 は,連 邦 下 院議 員 の議 員 定 数 不 均 衡 を違 憲 に導 くだ け で は な く32),各 州 の 選 挙 の 再 集 計 の 際 に,統 一 的 基 準 に 従 わ な け れ ば な ら

30)大 統 領 選 挙 人 が 州 民 の 意 思 に拘 束 さ れ る と い う こ と に は,制 定 法 上 の 根 拠 が 存 在 す る も の で は な く,慣 習 上 の も の と さ れ て い る。 非 常 に稀 で は あ る が 州 の 多 数 の 意 思 を 無 視 した 投 票 が な さ れ る こ とが あ り,こ の 点 問 題 が 残 る 。

31)SeeLAwRENcED.LoNGLEY&NEALRPEIRcE,THEELEcTRALCOLLEGEPRIMER

2000(2000).こ の 点,松 井 教 授 の 著 書 で は,戦 術 上 の 問 題,す な わ 今 回 の ゴ ア 候 補 の 敗 北 を,地 元 テ ネ シ ー 州 で 選 挙 人 を 獲 得 で き なか っ た 点 等 を挙 げ,エ レ ク ト

ラ ル ・カ レ ッ ジ が 有 す る 問 題 点 を 重 視 し て い な い よ う に 読 め る(松 井 ・前 掲 注 6・226頁)。 しか し,歴 史 上,理 論 上,こ の 制 度 が 有 す る 問 題 点 は 無 視 す る こ と は で き な い 。 エ レ ク トラ ル ・カ レ ッ ジ の 問 題 点 つ い て の わ が 国 に お け る研 究 と し て,例 え ば,太 田 俊 太 郎 『ア メ リ カ 合 衆 国大 統 領 選 挙 の 研 究 』(慶 応 義 塾 大 学 出 版 会,1996年)37頁 以 下,阿 部 斉 『ア メ リ カ大 統 領 新 版 』(三 省 堂,1977年)54 頁 以 下 参 照 。

32)SeeReynoldsv.Sims,377U.S.533(1964).

(20)

ない こ と を求 め て い る こ とに な ろ う。 しか し,こ の 判 決 が 有 す る先 例 と して の 意 味 は,今 後 の裁 判 所,特 に最 高 裁 判 所 の 判 断 を待 つ しか な い で あ ろ う。

これ に対 し て,ス ー タ ー,ブ ラ イ ア ー 各 連 邦 最 高 裁 判 事 が,再 集 計 の た め の 明 確 な基 準 を示 した 上 で,フ ロ リ ダ州 最 高 裁 に差 し戻 す こ と を,パ ー ・キ ュ ァ リ ア ム判 決 に対 す る 反 対 意 見 と し て述 べ て い る こ と に着 目 し,手 作 業 に よ る再 集 計 を認 め た フ ロ リ ダ 州 最 高 裁 判 決 を妥 当 とす る か 否 か が 争 点 で あ る と す る と,5対4判 決 で あ る とい う こ と に な り,多 くの論 者 は そ の よ う な もの と して 理 解 して い る し,こ の よ う な理 解 が,本 判 決 が 有 す る意 味 を正 し く捉 え て い る と言 え る。 そ し て,こ の 判 決 は,レ ー ンク ィス ト,ス カ リ ア,ト ー マ ス,ケ デ ィ,オ ッ コ ン ナ ー とい う5人 の 裁 判 官 に 対 して,ス ー タ ー,ブ ラ イ ア ー,ギ ンズ バ ー グ,ス テ ィ ー ブ ンス とい う リベ ラル な裁 判 官 の 意 見 の 対 立 と して見 る こ とが で きる の で あ る 。

さて,本 判 決 は,2000年 の 大 統 領 選 挙 の 勝 利 者 を,事 実 上,最 終 的 に 決 定 し た の で あ り,従 っ て,こ の 判 決 の 評 価 を め ぐっ て は 賛 否 両 論 激 し く対 立 して い る。

例 え ば,ハ ー バ ー ド大 学 の ダ ー シ ョウ ィツ 教 授 は,連 邦 最 高 裁 は2000年 の 大 統 領 選 挙 をハ イ ジ ャ ック した と して,激 し く非 難 して い る33)。 こ れ に 対 して,

わが 国 で も そ の 名 が 広 く知 られ て い る,リ チ ャー ド ・ポ ズ ナ ー連 邦 控 訴 裁 判 所 判 事 は,そ の判 決 内 容,特 にパ ー ・キ ュ ア リア ム の判 決 内 容 に つ い て は ひ と ま ず 置 くと して,連 邦 最 高 裁 は デ ッ ドロ ック を 打 ち破 る上 で 重 要 な役 割 を果 た し た と して 高 く評 価 し て い る34)。 共 和 党 の 大 統 領 を 勝 利 に 導 い た 結 果 と な っ た こ とか ら,シ カ ゴ大 学 の エ プス テ イ ン教 授,ユ タ大 学 の マ ッ コ ー ネ ル 教 授 の よ う な 保 守 派 の 学 者 は これ を 評 価 し て い る の に対 し て35),上 に あ げ た ダー シ ョ

33)ALANM.DERsHowlTz,SuPREMEINJusTlcE:HowTHEHIGHCouRTHIJAcKED ELECTION2000(2001).

34)RIcHARDA.PosNER,suφranote21.

35)Epstein,̀̀lnsuchManne/astheLegislaterreThereofMayDirect"'TheOert‑

oo耀inBushv.GoreDefended;McConnell,Two‑and‑a‑HalfCheers/brBushv.

Gore,inCAssRSuNsTEINANDRIcHARDAEpsTEIN,THEVoTE(2001).

(21)

ブ ッシュ対 ゴア連邦 最高 裁判 決 とその 含意

149

ウ ィ ッ教 授 は じめ,イ ェ ー ル大 学 の ア ッカ ー マ ン教 授,ニ ュ ー ヨー ク大 学 の ド

ゥオ ー キ ン教 授,テ キ サ ス 大 学 の バ ル キ ン教 授 な どの リベ ラ ル 派 は,連 邦 最 高 裁 判 決,特 に5名 の多 数 意 見 を激 し く非 難 し,今 後 の 連 邦 最 高 裁 の 行 く末 を 非 常 に 憂 え る の で あ る36)。研 究 者 間 の 対 立 も,先 の 連 邦 最 高 裁 の 対 立 図 式 同 様, ほ ぼ保 守 と リベ ラ ル の対 立 と い う様 相 を呈 して い る。

と りわ け,リ ベ ラ ル 派 に と っ て気 が か りな の は,両 大 統 領 候 補 の 選 挙 争 点 の 一 つ で も あ っ た,妊 娠 中 絶 を め ぐる1973年 のRoev.Wade判 決 が 変 更 され る か 否 か で あ る37)。 とい うの は,同 種 の 事 件 が 連 邦 最 高 裁 で 問 題 とな っ た,1992 年 のCasy判 決 で は38),先 例 拘 束 性 の 原 理(ratiodesidendai)を 引 き合 い に 出す こ と に よ っ て,辛 う じて 判 例 変 更 せ ず に 済 ませ た とい う経 緯 が あ り,次 に 誰 が 最 高 裁 判 事 に 指 名 さ れ るの か は極 め て重 要 な問 題 だ か らで あ る 。

そ れ で は,結 局,こ の 判 決 は,ど の よ う に 評価 され るべ きか 。 評 価 す る につ き,重 要 と思 わ れ る点 を指 摘 して お きた い。 まず,指 摘 し な け れ ば な らな い の は,5裁 判 官 の多 数 意 見 は,従 来 の 見 解 と,不 整 合 を感 じ させ る こ とで あ る 。 す な わ ち,こ れ らの 裁 判 官 は,こ れ ま で,州 権 を 重 視 し て き た の に対 し39), 本 件 に お い て は,合 衆 国 憲 法 修 正14条 を通 して,州 の 行 為 を 違 憲 にす る とい う, こ れ ま で ウ ォ ー レ ン ・コ ー トの リベ ラル 派 が得 意 と して きた 手 法 を採 用 し,こ れ に は違 和 感 を感 じ させ ず に はお か な い と い う こ とで あ る 。 お そ ら く,3裁 官 の 同 意 意 見 に オ ッ コ ンナ ー,ケ ネ デ ィ とい う ど ち らか とい う と穏 健 な立 場 の

36)SeeJackM.Balkin,Bushv.GoreandtheBoundaryBetweenLawandPolitics, 110YALELJ.1407(2001);HowARDG工LLMAN,THEVoTEsTHATCouNTED(2001).

37)Roev.Wade,410U.S.113(1973).

38)PlannedParenthoodofSoutheasternPennsylvanniav.Casey,505US.833

(1992).邦 語 文 献 と し て,例 え ば,小 竹 聡 「ア メ リ カ 合 衆 国 に お け る 妊 娠 中 絶 を め ぐ る 議 論 の 一 断 面 」 浦 田 賢 治 編 『 立 憲 主 義 ・民 主 主 義 ・平 和 主 義 』73頁 以 下 参 照 。

39)例 え ば,連 邦 議 会 の 州 際 通 商 権 限 に 関 す る も の で あ る が,こ れ を 拡 張 的 に 解 釈 す

る 態 度 を 変 更 し,学 校 周 辺 で の 銃 の 所 持 を 禁 止 し た 連 邦 法 を 違 憲 と し たUnited

Statesv.Lopez,514U.S.549(1995)判 決 が あ る 。 さ ら に,久 保 文 明 ・草 野 厚 ・大

沢 秀 介 『 現 代 ア メ リ カ 政 治 の 変 容 』(勤 草 書 房,1999年)所 収 の 大 沢 論 文 「第6

章 最 高 裁 の 保 守 化 の 意 味 」 参 照 。

参照

関連したドキュメント

 「訂正発明の上記課題及び解決手段とその効果に照らすと、訂正発明の本

 その後、徐々に「均等範囲 (range of equivalents) 」という表現をクレーム解釈の 基準として使用する判例が現れるようになり

 米国では、審査経過が内在的証拠としてクレーム解釈の原則的参酌資料と される。このようにして利用される資料がその後均等論の検討段階で再度利 5  Festo Corp v.

距離の確保 入場時の消毒 マスク着用 定期的換気 記載台の消毒. 投票日 10 月

前項においては、最高裁平成17年6月9日決定の概要と意義を述べてき

一九四 Geschäftsführer ohne schuldhaftes Zögern, spätestens aber drei Wochen nach Eintritt der Zahlungsunfähigkeit, die Eröffnung des Insolvenzverfahrens

Dies gilt nicht von Zahlungen, die auch 2 ) Die Geschäftsführer sind der Gesellschaft zum Ersatz von Zahlungen verpflichtet, die nach Eintritt der

高裁判決評釈として、毛塚勝利「偽装請負 ・ 違法派遣と受け入れ企業の雇用責任」