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著者 近藤 隆司

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(1)

が、保証人との関係では、再生計画により減免を受 けた部分を含め、保証債務全体について債務承認と して時効中断の効力が生ずるとされた事例(東京高 判平成29年6月22日判時2383号22頁)

著者 近藤 隆司

雑誌名 明治学院大学法律科学研究所年報 = Annual Report of Institute for Legal Research

巻 35

ページ 83‑89

発行年 2019‑07‑31

URL http://hdl.handle.net/10723/00003704

(2)

保証債務全体について債務承認として時効中断の効力が生ずるとされた事例

主たる債務者である再生債務者が再生計画認可決定 確定後に再生計画に従い再生債務の弁済をしたこと が、保証人との関係では、再生計画により減免を受 けた部分を含め、保証債務全体について債務承認と して時効中断の効力が生ずるとされた事例

(東京高判平成29年 6 月22日判時2383号22頁)

近 藤 隆 司 第1 事実の概要

A株式会社(後の再生債務者)は、平成 4 年11月から平成13年 5 月までの間に、 B 銀行から順 次金員を借り入れ(計 8 口で 2 億1370万円)、そしてその都度、X信用保証協会(原告・被控訴人)

が、Aの委託によりAとの間に締結した信用保証委託契約に基づいて、Aの借入債務につき信用 保証をした。さらに、計 8 口のうち 5 口についてはY1およびY2(被告・控訴人)が、 3 口につ いてはY1が、 B 銀行に対し、Aの借入債務につき連帯保証をするとともに、Xに対し、Aの信 用保証委託契約上の債務につき連帯保証をした。

Aは、平成13年 7 月 7 日、 B 銀行に対する約定の分割弁済を怠ったために期限の利益を失い、

同月17日、千葉地裁で再生手続開始決定を受けた。Xは、同年 9 月28日、 B 銀行に対し、Aの借 入債務の残元金および利息の全額(計 8 口で 1 億3849万円余)を代位弁済した。これにより、X は、Aに対し、求償金債権を有するとともに、Y1およびY2に対し、求償金の連帯保証債務履行 請求権を有することとなった。

Aの再生手続について、平成14年 2 月に再生計画認可の決定がされ、同年 3 月 9 日に確定した。

Xの求償金債権は、再生債権として、85%免除となった(計 8 口で 1 億3826万円余から2074万円 余となった)。その後、Aは、Xに対し、再生計画に従い、平成18年 7 月から遅滞しつつも平成 28年 9 月28日までに、免除後の再生債権の全額を弁済した。

ところで、Xは、平成28年 7 月29日、Y1およびY2に対する求償金の連帯保証債務履行請求権 に基づいて、計 8 口のうち 5 口についてはY1およびY2を被告として、連帯して求償金の残元金 および遅延損害金(3990万円余+9178万円余= 1 億3168万円余)等の支払を求め、 3 口について はY1を被告として、求償金の残元金および遅延損害金(7666万円余+ 1 億7620万円余= 2 億5281 万円余)等の支払を求め、訴えを提起した。これに対し、Yらは、再生計画認可決定の確定日か ら10年を経過しているので時効消滅したとして、時効を援用した(抗弁)。これに対し、Xは、

Aが再生計画に従い免除後の再生債権について分割弁済をしていた事実に基づき、この事実は、

再生計画により免除された部分の再生債権についても債務の承認として消滅時効の中断事由とな

(3)

457条 1 項)と主張し(再抗弁)、この点が争いとなった。

第2 原判決(千葉地判平成29年1月25日判時2383号24頁)の要旨

請求認容(Yら控訴)。

「確かに、AのXに対する……弁済は、再生計画により免除されなかった部分に対応するもの であり、本訴においてXがYらに請求するのは、再生計画における免除部分に対応するものであ る。しかし、再生計画による免除によって、債務の当該部分が消滅するものではなく、当該部分 が民事再生手続の関係で権利行使が制限されるにすぎず、その限りにおいて再生計画認可による 変更の前後を通じて債務に同一性があると解するのが相当であるから、再生計画により免除され なかった部分に対する弁済は、再生計画による免除部分を含めた債務全体の承認となるというべ きである。そして、このような場合に、民法457条 1 項の適用を否定する理由はないというべき である。」

第3 本判決の要旨

控訴棄却(確定)。

「主たる債務者について生じた事由による時効の中断が保証人に対してもその効力を生ずるこ とを規定した民法457条 1 項は、主たる債務が時効によって消滅する前に保証債務が時効によっ て消滅することを防ぐための規定であり、もっぱら主たる債務の履行を担保することを目的とす るものと解される。そして主たる債務者について再生手続が開始され、再生計画認可の決定が確 定した場合には、再生債務者との関係で、再生債権者の権利が再生計画の定めに従い権利の変更 を受ける(民事再生法179条 1 項)が、再生計画は、再生債権者が再生債務者の保証人に対して 有する権利に影響を及ぼさないとされている(同法177条 2 項)。

Yらが主張するように主たる債務者について再生手続が開始され、再生計画認可の決定が確定 した場合において、民法457条 1 項の適用上、主たる債務者である再生債務者が再生計画の遂行 として分割弁済をしても、再生計画により減免を受けた部分の債務については、保証人との関係 において債務承認の効力が生じないとすると、再生計画が再生債務者の保証人に対して影響を及 ぼすのと同様の結果をもたらすことになるから、再生債権者の保証人に対する権利を保護した民 事再生法177条 2 項及び主たる債務の履行を担保することを目的とする民法457条 1 項の各規定の 趣旨に実質的に反するというべきである。

したがって、主たる債務者である再生債務者が再生計画の遂行として分割弁済をしたときは、

再生債務者の保証人との関係では、再生計画による権利変更の影響がないものとして、すなわち 再生手続が開始されていない通常の主たる債務の一部弁済がなされた場合と同視すべきであり、

保証債務全体についての債務の承認として時効中断(民法147条 3 号)の効力が生ずるものと解 するのが相当である。

(4)

保証債務全体について債務承認として時効中断の効力が生ずるとされた事例 なお、Yらの主張する再生債務者につき再生計画の定めにより免除を受けた部分の債務が、会 計処理上も免除益として計上されることを踏まえ、絶対的に消滅したと解するべきか否か、仮に 自然債務として存続する場合に免除前の債務との同一性があるか否かは、もっぱら主たる債務者 との関係で免除部分の法的性質をどのように解するかという問題であって、前記の民事再生法 177条 2 項の規定の趣旨に照らせば、その法的性質自体は再生債務者の保証人との関係では何ら 影響がないというべきであるから、上記判断を左右するものではない。」

第4 検討

1.本判決の意義

主たる債務者である再生債務者が、再生計画認可決定確定後に、再生計画に従い「免除後の 再生債権」(再生計画により免除されなかった部分の再生債権)を弁済した場合、この弁済は、

債務の承認として、再生債権について時効中断の効力が生じ(民147条 3 号)、再生債務者の保 証人に対してもその効力が及ぶことになるが(民457条 1 項)、保証人の保証債務のうち時効中 断の効力が生ずるのは、免除後の再生債権に対応する部分(額)に限られるのであろうか。そ れとも、「免除部分の再生債権」(再生計画により免除された部分の再生債権)に対応する部分

(額)を含む保証債務全体に及ぶのであろうか。

本判決は、原判決と同様(ただし、理由づけは異なる)、時効中断の効力は、免除部分の再 生債権に対応する部分を含む保証債務全体に及ぶ、と判示したものである。先例はなく、直接 言及した学説も見あたらず、理論的にも実務的にも重要な意義を有する。

2.再生債務者の保証人に対する保証債務履行請求権(保証債権)の効力

債権者は、主たる債務者について再生手続開始決定がされたときは、再生債務者に対する債 権は再生債権となるから(民再84条 1 項)、再生手続に参加して(民再86条 1 項)、その後、再 生計画に従い弁済を受ける(民再85条 1 項)、ということになるが、再生債務者の保証人に対 する保証債権については、そのような制約はない。

また、再生計画認可決定が確定したときは、再生債務者は、再生計画の定めにより減免され た部分の再生債権について、その責任を免れる(民再178条 1 項本文[再生債権の免責])、と いうことになるが、再生債務者の保証人は、再生計画の影響を受けない(民再177条 2 項。破 253条 2 項、会更203条 2 項も同旨)。

例えば、100万円の再生債権が、再生計画で85%免除とされたら、15万円の再生債権となるが、

保証債権は100万円のままであるし、再生手続および再生計画とは無関係に、保証債権につい て履行請求ないし強制執行をすることができる。

民事再生法177条 2 項は、保証債務に附従性を認めた民法の原則(民448条)の例外を定めた ものと位置づけられている。その趣旨については、「保証人や物上保証人の責任については、

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伴い保証人や物上保証人の責任も減免されるのが原則である。しかし、保証人や物上保証人は、

主債務者が倒産した場合など主債務者による弁済がされない事態に備えて、これを担保する責 任を負うものであるから、倒産処理手続により主債務の減免の効力が生じた場合に保証人等の 責任まで減免されることとすれば、保証等の制度の趣旨に反することになる。そこで、再生手 続においては、会社更生手続[会更203条 2 項]などと同様に、再生計画が成立して主債務の 減免がされた場合であっても、保証人や物上保証人の責任には影響を及ぼさないこととされた

(民再177条 2 項)」(中西正「再生計画の権利変更と保証人の地位」井上治典先生追悼論文集『民 事紛争と手続理論の現在』〔2008〕505頁)、などと説明されている(会社更生につき、最大判 昭和45年 6 月10日民集24巻 6 号499頁も同旨)。

なお、以上のこと(および以下のこと)は、連帯保証についても同様である。

3.再生債務者の保証人に対する保証債権の時効の中断時期と再進行開始時期

⑴ 時効の中断時期

① 再生債権については、再生手続参加(具体的には再生債権の届出)により、時効は中 断する(民147条 1 号・152条。なお、民法改正後は、完成猶予[改民147条 1 項 4 号])。

② この時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずるから(民457条 1 項)、再生 債権者の再生手続参加により、再生債務者の保証人に対する保証債権についても、時効 は中断する。

③ 民法457条 1 項について、判例は、保証債務の附従性からの帰結と解している。すな わち、「民法457条 1 項は、主たる債務が時効によって消滅する前に保証債務が時効によっ て消滅することを防ぐための規定であり、もっぱら主たる債務の履行を担保することを 目的とする保証債務の附従性に基づくものであると解される」(最判昭和43年10月17日 判時540号34頁)、とされる。学説も、そう解するのが通説のようであるが(我妻栄『新 訂債権総論』〔1964〕486頁など)、最近は、政策的規定と解するのが多数説のように思 われる(於保不二雄『債権総論[新版]』〔1972〕276頁、潮見佳男『債権総論Ⅱ[第 3 版]』

〔2005〕475頁など)。

⑵ 時効の再進行開始時期と時効期間

① 再生債権につき中断した時効は、ⅰ免除後の再生債権については、再生計画認可決定 が確定して再生計画の条項が再生債権者表に記載される(民再180条 1 項)と、確定判 決と同一の効力を有する(民再180条 2 項)ことになるので、再生債権者表への記載時 に時効が再進行を始める(民157条 2 項)とも思える。しかし、その後も再生手続は継 続するので、再生手続終結決定の確定時(民再188条 1 項~ 3 項)に時効が再進行を始 めるものと解するのが相当である(三ケ月章ほか『条解会社更生法(上)』〔1973〕163 頁参照。なお、改正民法の定める時効の更新においては、このような解釈がストレート に導かれるようになる[改民147条 2 項])。ただし、例外として、再生手続終結決定の

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保証債務全体について債務承認として時効中断の効力が生ずるとされた事例 確定時に弁済期未到来のものについては、弁済期の到来が時効の再進行開始時期となる ものと解する。

  なお、時効期間は、10年である(民174条の 2 第 1 項後段[改民169条 1 項])。

 これに対して、ⅱ再生計画により免除された部分の再生債権については、再生計画認 可決定が確定すると、再生債務者は免責される(民再178条 1 項本文)ので、この時点 で時効は観念できなくなる(時効は再進行を始めない)。

② 再生債務者の保証人に対する保証債権の時効は、民法457条 1 項により、主たる債務 である再生債権の時効中断に連動して中断するのであるから、時効の再進行開始時期に ついても、再生債権に連動するものと解するのが相当と考える(なお、改正民法457条 1 項は、時効の完成猶予に加えて更新についても対象としたので、このような解釈がス トレートに導かれるようになる)。そうすると、保証債権につき中断した時効は、ⅰ免 除後の再生債権に対応する部分については、前述①ⅰと同様に、再生手続終結決定の確 定時に時効が再進行を始めるのが原則と解される。

 これに対して、ⅱ再生計画により免除された部分の再生債権に対応する部分の保証債 権については、どうであろうか。判例は、会社更生につき、「更生計画において債務の 免除が定められた場合には、右債務は……更生計画認可決定の時に消滅したものとされ るが、この法的効果が確定するのは右決定の確定時であるから、この時点において右債 務につき債権者の更生手続における権利行使は終了するというべく、したがって、右債 務を主たる債務とする保証債務の消滅時効は、この時までは更に進行を始めないものと 解すべきである」(最判昭和53年11月20日民集32巻 8 号1551頁)と判示している。学説に、

特に異論は見あたらない。判例の理論構成を前提にするなら、再生計画認可決定の確定 時に、いったん中断した時効は再進行を始めるものと解されよう。

 なお、主たる債務である再生債権の短期消滅時効期間が10年に延長された場合(民 174条の 2 第 1 項)、保証債権の消滅時効期間(商事債権なら 5 年[商522条])も10年に 延長されるかについて、争いがある。学説には、保証人に過重な負担を強いるなどとし て、否定的な見解もあるが、最高裁は、保証債務の附従性の観点から、10年への延長を 肯定している(前掲最判昭和43年10月17日[調停調書]など)。

③ 本件におけるYらは、このような理解に立ち、「Yらは、再生計画認可決定の確定日か ら10年を経過しているので、時効を援用した(抗弁)」と思われる。また、Xもこの点 を認め、裁判所も異なる判断をしていないので、この点は共通の理解であったと思われ る。

4.再生債務者による再生債権の計画弁済と保証人に対する時効中断効の及ぶ範囲

主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、

その効力を生ずる(民457条 1 項)。主たる債務者による債務の承認(民147条 3 号)につい ても、そうである。また、債務の弁済は、債務を承認したものとされ(異論なし)、債務の

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輯2429頁)。

では、本件のように、主たる債務者である再生債務者が、再生計画認可決定確定後に、再 生計画に従い「免除後の再生債権」を弁済した場合、保証人の保証債務のうち時効中断の効 力が生ずるのは、「免除後の再生債権」に対応する部分に限られるのか、それとも、「免除部 分の再生債権」に対応する部分にも及ぶのであろうか。

① 本件のYらは、Xの再抗弁に対して、「再生計画により免除された85%の債権について、

Xは、主債務者であるAに履行請求ができなくなったのであるから、主債務者に対して、

時効の進行及びこれを前提とする中断を観念する余地はなく、附従性により保証人に時 効中断効が働くことはない」と主張して争ったが、この主張は、次の 2 つの判例(とく に第 1 の判例)を参考にしたものと思われる。

 第 1 に、最判平成11年11月 9 日民集53巻 8 号1403頁は、主債務者である個人破産者が 免責を受け、その保証人が主債務(免責された破産債権)の消滅時効を援用したケース につき、「免責決定の効力を受ける債権は、債権者において訴えをもって履行を請求し その強制的実現を図ることができなくなり、右債権については、もはや民法166条 1 項 に定める『権利ヲ行使スルコトヲ得ル時』を起算点とする消滅時効の進行を観念するこ とができないというべきであるから、破産者が免責決定を受けた場合には、右免責決定 の効力の及ぶ債務の保証人は、その債権についての消滅時効を援用することはできない」

と判示したものである。

 第 2 に、最判平成15年 3 月14日民集57巻 3 号286頁は、主債務者である会社が破産し たケースにつき、「会社が破産宣告を受けた後破産終結決定がされて会社の法人格が消 滅した場合には、これにより会社の負担していた債務も消滅するものと解すべきであり、

この場合、もはや存在しない債務について時効による消滅を観念する余地はない。この 理は、同債務について保証人のある場合においても変わらない。したがって、破産終結 決定がされて消滅した会社を主債務者とする保証人は、主債務についての消滅時効が会 社の法人格の消滅後に完成したことを主張して時効の援用をすることはできない」と判 示したものである(なお、大判大正11年 7 月 7 日民集 1 巻460頁は、主債務者の法人格 が消滅しても、保証債務は存続する、と判示している)。

 Yらは、再生債権を「免除後の再生債権」と「免除部分の再生債権」に区別し、後者 については、時効の進行・完成を観念する余地はないから、その中断も観念できない、

したがって、民法457条 1 項の適用はない、と考えたものと思われる。

② 原判決は、「再生計画認可による変更の前後を通じて債務[再生債権]に同一性がある」

ので、免除後の再生債権に対する弁済は、免除部分の再生債権を含む再生債権全体につ いて時効中断の効力が生ずる、したがって、免除部分の再生債権に対応する部分を含む 保証債務全体について民法457条 1 項の適用がある、と判示して、Yらの主張を否定し ている。

 しかし、免除部分の再生債権については、Yらが主張するように、時効の進行・完成

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保証債務全体について債務承認として時効中断の効力が生ずるとされた事例 を観念する余地はないのであるから、免除部分の再生債権の法的性質について、債務消 滅説(有力説)をとらずに自然債務説(多数説)をとり、再生計画認可による変更の前 後の同一性を導くことができるとしても、この同一性のみを根拠としては、時効の進行・

完成を認めることは難しいように思われる。また、本件は、第 1 の判例のケースとは異 なっているが、原判決の判断には、第 1 の判例との整合性にも問題があるように思われ る。

③ 本判決は、「なお書き」で、「免除前の債務[再生債権]との同一性があるか否かは、

もっぱら主たる債務者との関係で免除部分の法的性質をどのように解するかという問題 であ[る]」として、Yらの主張および原判決の判断を一蹴している。

 しかし、Yらの主張は、免除部分の再生債権については、時効の進行・完成を観念す る余地がないということをベースに、民法457条 1 項の適用はない、ということを導く ことにあるから、免除部分の再生債権の法的性質は、再生債務者との関係だけでなく、

その保証人との関係でも、無視することができないように思われる。また、本判決のこ の判断も、第 1 の判例との整合性に問題があるように思われる。

④ ところで、本判決は、「再生債権者の保証人に対する権利を保護した民事再生法177条 2 項及び主たる債務の履行を担保することを目的とする民法457条 1 項」の規定の趣旨 から、免除後の再生債権に対する弁済は、免除部分の再生債権に対応する部分を含む保 証債務全体について時効中断の効力が生ずる、という結論を、直裁的に導いている。

 確かに、これらの規定の趣旨から出発し、かつ、この趣旨に重きを置く必要がある。

しかし、これだけでは、免除部分の再生債権につき時効の進行・完成を観念する余地が ないということをベースにしたYらの主張を否定することができないように思われる。

また、本判決は、「再生計画により減免を受けた部分の債務については、保証人との関 係において債務承認の効力が生じないとすると、再生計画が再生債務者の保証人に対し て影響を及ぼすのと同様の結果をもたらすことになる」などと述べており、これは、再 生債権者による時効管理の煩のことと思われるが、破産免責のケース(とくに一部免責 のケース)でも同様であって、説得的でないように思われる。

⑤ よって、原判決にも、本判決にも、疑問が残る。今後、さらに検討したい。

以上

参照

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