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男と女の話

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(1)

男と女の話

著者 江口 一久

雑誌名 国立民族学博物館調査報告

45

ページ 460‑521

発行年 2003‑12‑26

URL http://doi.org/10.15021/00001818

(2)

男と女の話

(3)

肪ムーサと娘ω

 お話︑お話︒

 娘たちがたくさんいた︒湿たちは自分たちのコーラン学校で勉強

している︒

 さて︑↓人の学生がいて︑その名前をムーサという︒ムーサはそ

の地方の王さまの子どもだった︒

 さて︑王さまたちはそのコーラン学校の娘たちのうち一人をムー

サにやることにした︒

 さて︑ある日︑ムーサはその娘がだれかしりたくなった︒

 さて︑娘たちはたちあがり︑川にでかけていった︒

 さて︑娘たちは川で水浴びをしている︒娘たちは着物をすっかり

ぬいでしまった︒娘たちは水浴びをしている︒去たちが着物をぬい

だとき︑ムーサはやってきて︑娘たちの着物をみんなとってしまっ

た︒ さて︑娘たちは水浴びをおえた︒

 さて︑娘たちは川岸にあがった︒

 さて︑娘たちの着物がなかった︒娘たちは水のなかにもどってい

った︒ さて︑一人の娘が水からでてきて︑いった︒

  ﹁なんなの︑ムーサよ︑なんなの︑ムーサよ︑    イスラム教師の子どものムーサよ︑   重臣の子どものムーサよ︑   ムーサよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂ムーサは娘のスラックスをとり︑なげてやった︒娘はそれをとり︑はき︑でていった︒もう一人の娘がやってきて︑いう︒  ﹁なんなの︑ムーサよ︑なんなの︑ムーサよ︑   イスラム教師の子どものムーサよ︑   重臣の子どものムーサよ︑   ムーサよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂ムーサはその娘にもスラックスをなげてやった︒もう一人の娘がやってきて︑いう︒  ﹁なんなの︑ムーサよ︑なんなの︑ムーサよ︑   イスラム教師の子どものムーサよ︑   重臣の子どものムーサよ︑   ムーサよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂ムーサはその娘にもスラックスをなげてやった︒ さて︑娘がもう一人水のなかにのこっている︒この娘はムーサのよめさんになる娘だった︒ さて︑娘はムーサにいった︒︵娘ははずかしいので︑ムーサをその名前でよばない︒︶

  ﹁なんなの︑だれそれよ︑なんなの︑だれそれよ︑ 6①4

(4)

   コーラン学校の学生のだれそれよ︑

   イスラム教師の子どものだれそれよ︑

   重臣の子どものだれそれよ︑

   だれそれよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂

ムーサは娘に︑﹁ぼくの名前をよんでくれないとだめだ︒ぼくの名

前をよんでくれないと︑おまえの着物をかえしてやらない﹂といっ

た︒娘はいう︒

  ﹁なんなの︑だれそれよ︑なんなの︑だれそれよ︑

   コーラン学校の学生のだれそれよ︑

   イスラム教師の子どものだれそれよ︑

   重臣の子どものだれそれよ︑

   だれそれよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂

娘はムーサの名前をよぼうとしなかった︒ムーサは娘に︑﹁おまえ

がぼくの名前をよんでくれないと︑おまえはきょう川にのみこまれ

てしまうだろう﹂といった︒川の水が︑娘の膝のところまでやって

きた︒娘はいう︒

  ﹁なんなの︑だれそれよ︑なんなの︑だれそれよ︑

   コーラン学校の学生のだれそれよ︑

   イスラム教師の子どものだれそれよ︑

   重臣の子どものだれそれよ︑

   だれそれよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂ 娘はムーサの名前をよぼうとしなかった︒川の水が娘の腹のところまでやってきた︒娘はいう︒  ﹁なんなの︑だれそれよ︑なんなの︑だれそれよ︑   コーラン学校の学生のだれそれよ︑   イスラム教師の子どものだれそれよ︑   重臣の子どものだれそれよ︑   だれそれよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂川の水はお腹のところまでやってきた︒娘はいう︒  ﹁なんなの︑だれそれよ︑なんなの︑だれそれよ︑   コーラン学校の学生のだれそれよ︑   イスラム教師の子どものだれそれよ︑   重臣の子どものだれそれよ︑   だれそれよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂川の水は娘の首のところまでやってきた︒娘はいう︒  ﹁なんなの︑だれそれよ︑なんなの︑だれそれよ︑   コーラン学校の学生のだれそれよ︑   イスラム教師の子どものだれそれよ︑   重臣の子どものだれそれよ︑   だれそれよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂水はロのところまでやってきた︒娘はいう︒

  ﹁むむむむ︑むむむむ︑むむむむ︑むむむむ︑614

(5)

   む一むむむむむむむむむむむむむむむむむ︑

   むむむむむむむむむむむむむむむむむ︑

   むむむむむむむむむむむむむむ︑

   むむむむむ︑むむむむむむむむむむむむむむむむむ﹂

とうとう︑娘は水にのみこまれてしまったとさ︒

 お話はみじかく︑わたしの命はながい︒

 ︵一九八三年一月二七日︑語り手 ハディージャ・ブーバ︑

  ンデレにて︶

螂ムーサと三三 ガウ

 ちいさなお話︑ちいさなお話︒

 ムーサとたくさんの学校の生徒がいた︒

 さて︑学校の生徒の一人は︑ムーサとだけ結婚する︑ムーサの名

前をよばないという︒

 さて︑コーラン学校の先生は生徒たちをみんなあつめた︒生徒た

ちは川にいく︒先生が生徒たちをあつめると︑生徒たちは川にでか

けていった︒ムーサはすべての生徒たちの下着をとってしまった︒

ムーサは生徒たちが歌をうたわないと︑股隠しをかえさないといっ

た︒ さて︑生徒はみんなやってきて︑いう︒   ﹁なんなの︑ムーサよ︑なんなの︑ムーサよ︑   学校の生徒よ︑ムーサよ︑   イスラム教師の子どもよ︑ムーサよ︑   重臣の子どものムーサよ︑   ムーサよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂ムーサは股隠しをなげてやる︒もう一人がやってきて︑  ﹁なんなの︑ムーサよ︑なんなの︑ムーサよ︑   学校の生徒よ︑ムーサよ︑   イスラム教師の子どもよ︑ムーサよ︑   重臣の子どものムーサよ︑   ムーサよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂ムーサは股隠しをなげてやる︒もう一人がやってきて︑  ﹁なんなの︑ムーサよ︑なんなの︑ムーサよ︑   学校の生徒よ︑ムーサよ︑   イスラム教師の子どもよ︑ムーサよ︑   重臣の子どものムーサよ︑   ムーサよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂ムーサは股隠しをなげてやる︒ さて︑ムーサがすきだという娘がやってきて︑いう︒  ﹁なんなの︑だれそれよ︑なんなの︑だれそれよ︑   学校の生徒よ︑だれそれよ︑ いう︒いう︒ 624

(6)

   イスラム教師の子どもよ︑だれそれよ︑

   重臣の子どものだれそれよ︑

   だれそれよ︑わたしの面隠しをかえしておくれ﹂

ムーサはかえさなかった︒

 さて︑川の水は娘の膝までやってくる︒

 さて︑娘はいう︒

  ﹁なんなの︑だれそれよ︑なんなの︑だれそれよ︑

   学校の生徒よ︑だれそれよ︑

   イスラム教師の子どもよ︑だれそれよ︑

   重臣の子どものだれそれよ︑

   だれそれよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂

川の水は娘の太股までやってきた︑娘はいう︒

  ﹁なんなの︑だれそれよ︑なんなの︑だれそれよ︑

   学校の生徒よ︑だれそれよ︑

   イスラム教師の子どもよ︑だれそれよ︑

   重臣の子どものだれそれよ︑

   だれそれよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂

だれそれはかえそうとしなかった︒水は娘のお腹までやってきた︒

娘はいう︒

  ﹁なんなの︑だれそれよ︑なんなの︑だれそれよ︑

   学校の生徒よ︑だれそれよ︑    イスラム教師の子どもよ︑だれそれよ︑   重臣の子どものだれそれよ︑   だれそれよ︑わたしの面隠しをかえしておくれ﹂だれそれはかえそうとしなかった︒水は娘の首までやってきた︒ さて︑水は娘のロまでやってくる︒娘の学校の先生が娘に︑﹁ムーサとよびなさい﹂という︒娘はいう︒  ﹁なんなの︑ムーサよ︑なんなの︑ムーサよ︑   学校の生徒よ︑ムーサよ︑   イスラム教師の子どもよ︑ムーサよ︑   重臣の子どものムーサよ︑   ムーサよ︑わたしの股隠しをかえしておくれ﹂ムーサは股隠しをなげた︒ さて︑水はなくなってしまった︒娘が川からでてきたとさ︒ お話はみじかく︑わたしの命はながい︒お話はおしまい︒ニワトリの糞の蒸し焼きができた︒ひょっとしたら︑ウサギはやせて︑わたしはふとる︒草の茎はうずまる︒わたしはそとにでる︒ ︵一九八三年一月二五日︑語り手 バッジャ・デッボ・マンガ︑  ガウンデレにて︶

634

(7)

盟ムーサと娘圖

 ちいさなお話︑ちいさなお話︒

 見たちはタブサ︵カッシア・ミモソイデス︶の葉っぱをつみにい

く︒娘たちは川をわたる︒一人は川をわたれた︒一人は川をわたれ

なかった︒川をわたれない娘がいう︒

  ﹁なんなの︑ムーサよ︑なんなの︑ムーサよ︑

   後生だから︑コーラン学校のこども︑ムーサよ︑ムーサよ︒

   わたしの股隠しをかえしておくれ﹂

男の子はその娘を向こう岸までわたした︒もう一人の娘がいった︒

  ﹁なんなの︑ムーサよ︑なんなの︑ムーサよ︑

   後生だから︑コーラン学校のこども︑ムーサよ︑ムーサよ︒

   わたしの股隠しをかえしておくれ﹂

男の子はその娘を向こう岸までわたした︒もう一人の娘がいった︒

  ﹁なんなの︑だれそれよ︑なんなの︑だれそれよ︑

   後生だから︑コーラン学校のこども︑だれそれよ︑だれそれ

    よ︒

   わたしの羽隠しをかえしておくれ﹂

男の子は︑﹁﹃なんなの︑ムーサよ﹄といわないと︑わたさない﹂と

いった︒娘はいった︒

  ﹁なんなの︑だれそれよ︑なんなの︑だれそれよ︑    後生だから︑コーラン学校のこども︑だれそれよ︑だれそれ    よ︒   わたしの弓隠しをかえしておくれ﹂

︵男の子は娘をわたした︒︶娘たちはあるいていき︑葉っぱをつん

で︑家にかえってきた︒一人の娘は雄ヒツジを手にいれた︒娘はそ

の雄ヒツジをつれてきて︑杭にしばっておいた︒娘は雄ヒツジにモ

ロコシをやったといった︒娘は︑﹁わたしが雄ヒツジなら︑ついて

いないモロコシをたべない﹂といった︒娘はモロコシをついた︒娘

は︑﹁わたしが雄ヒツジなら︑ゴミをとりのぞいてないモロコシを

たべない﹂といった︒娘はついたモロコシからゴミをとった︒娘

は︑﹁わたしが雄ヒツジなら︑あらっていないモロコシをたべない﹂

といった︒娘はモロコシをあらった︒娘は︑﹁わたしが雄ヒツジな

ら︑粉にしていないモロコシをたべない﹂といった︒娘はモロコシ

を粉にした︒娘は︑﹁わたしが雄ヒツジなら︑ふるいにかけていな

い粉をたべない﹂といった︒娘は粉をふるいにかけた︒娘は︑﹁わ

たしが雄ヒツジなら︑たいていないモロコシの粉をたべない﹂とい

った︒娘はモロコシの粉をたいた︒娘はまたしても︑﹁わたしが雄

ヒツジなら︑︑おかずがなければたべない﹂といった︒娘はおかずを

つくった︒娘はまたしても︑﹁わたしが雄ヒツジなら︑手をあらう

水がないならたべない﹂といった︒娘は︑﹁わたしが雄ヒツジなら︑

おかずを一人でたべない﹂といった︒娘がやってきた︒娘たちは食 644

(8)

べ物をたべたとさ︒

 わたしはここにいる︒お話はあそこにある︒おいしくても︑まず

くても︑お礼をもらうほうがよい︒

 ︵一九九〇年二月一九日︑語り手 バーバージョ・アーヒージョ︒

  この話はおばからケイニ村できいたという︒ケイニ村にて︶

鵬ムーサと娘㈲

 お話︑お話︒ンジャッラ・タボーイェル︒

 子どもたちがいた︒父親の屋敷に子どもたちがたくさんいた︒

 さて︑子どもたちの父親がいた︒母親がいた︒子どもたちはたく

さんだつた︒子どもたちはたちあがった︒結婚してもよい年頃の娘

たちがたくさんいた︒男の子は父親にとって︑たった一人の息子だ

ったけれども︑たいそううつくしかった︒

 さて︑義兄弟はみんなこの男の子がすきだった︒一人の妹はこの

男の子がすきではなかった︒妹は兄さんをその名前でよぼうとしな

かった︒ さて︑女兄弟たちはその妹が男の子のよめさんだといった︒男の

子は妹があまりすきではなかった︒

 さて︑娘たちはでかけていった︒娘たちはそのへんをあるき︑あ

つまり︑でかけていく︒  さて︑娘たちはでかけていき︑水浴びをしている︒ さて︑男の子は娘たちの着物をみんなあつめて︑すわって︑みている︒ さて︑男の子は娘たちにどうしたらこの娘をなきものにすることができるかおしえてもらったので︑しっているといった︒ さて︑男の子はいって︑すわった︒ さて︑娘たちはみんなこの娘のことがわかっていた︒娘たちは︑

﹁この娘は男の子をムーサとはよばない﹂といった︒

 さて︑その日︑娘たちはたちあがり︑川にでかけていった︒娘た

ちはおおかった︒娘たちはあそんでいる︒娘たちは下着をぬいだ︒

娘たちは下着をあつめて︑おいておいた︒娘たちは水浴びをしてい

る︒ さて︑男の子はやってくると︑去たちの下着をみんなとってしま

った︒ さて︑男の子は川岸にある木にのぼった︒ムーサはすわってい

る︒娘たちは水浴びをおえると︑やってきて︑たちどまった︒娘

は︑﹁わたしの下着はどこにある﹂という︒

 さて︑娘たちは︑﹁ムーサがとったのではないか﹂といった︒ム

ーサはあちらにいる︒

 さて︑娘たちはやってきて︑たちどまった︒一人の娘がやってき

ていう︒654

(9)

  ﹁おお︑ムーサよ︑おお︑ムーサよ︒

   ムーサは︑いじわる︒ムーサよ︒

   コーラン学校の生徒ムーサよ︑

   イスラム教の先生の子どもムーサよ︑

   ムーサよ︑後生だから︑ムーサよ︑

   わたしに腰布をかえしておくれ﹂

 さて︑ムーサは娘に下着をなげかえしてやる︒ムーサはやってき

て︑下着をなげてやる︒﹈人の娘がやってきて︑いう︒︵もともと

ハウサ語の歌を語り手がフルフルデ語にしたものを訳すとつぎのよ

うになる︒︶

  ﹁ああ︑ムーサよ︑ああ︑ムーサよ︒

   わたしのコーラン学校の生徒ムーサよ︑

   おお︑ムーサよ︑わたしの学校の生徒よ︑

   ムーサよ︑後生だから︑ムーサよ︑

   わかっているなら︑ムーサよ︑

   わたしの下着をかえしておくれ﹂

 さて︑ムーサは娘に下着をなげかえしてやる︒ムーサはすべての

娘たちに下着をかえしてやった︒とうとう︑ムーサをすいている娘

がやってきた︒

 さて︑娘はムーサの名前をいうのをこばんだ︒娘はいった︒

  ﹁おお︑だれそれよ︑おお︑だれそれよ︒    わかっているなら︑だれそれよ︒   おまえさんは学校の生徒︑だれそれよ︒   どうか︑わたしの下着をかえしておくれ︒   学校にいく時間になった﹂ さて︑ムーサはいった︒  ﹁ぼくはおまえにかえさない︒   ぼくはおまえにかえさない︒   おまえがぼくのムーサという名前をいわないと︑   ぼくはおまえにかえさない﹂ さて︑娘はムーサの名前をよばなかった︒ムーサは名前をよべというが︑娘はそれをこばむ︒ さて︑川の水がましてくる︒川の水がましてこなかったが︑川の水が娘のところにやってくる︒川はここから︑あそこくらいある︒娘はいう︒  ﹁おお︑だれそれよ︑おお︑だれそれよ︒   わたしのだれそれよ︑後生だから︑だれそれよ︒   おまえさんの預言者にめんじて︑   おまえさんは学校の生徒だから︑   わたしの下着をかえしておくれ︒わたしはいってしまう﹂ムーサはいう︒

  ﹁ぼくはおまえにかえさない︒ 664

(10)

   ぼくはおまえにかえさない︒

   おまえがこういわないと︑かえさない︒

  ﹃ああ︑ムーサよ︑ああ︑ムーサよ︒

   わたしのコーラン学校の生徒ムーサよ︑

   おお︑ムーサよ︑わたしの学校の生徒よ﹄

   そういえば︑おまえにかえしてやる﹂

ムーサは娘にかえさない︒

 さて︑︑娘はそこにいる︒川の水がどんどんましてきた︒川の水が

首のところまでやってきた︒娘はずっとそこにいる︒ムーサは木の

うえにいる︒

 さて︑娘たちはみんな学校にいってしまい︑その娘だけをのこし

た︒娘はずっとないている︒すこしすると︑娘は川にしずんでしま

った︒娘は名前をいわないといった︒

 さて︑娘は川にしずんでしまった︒そうしているうちに︑川の

怪物がやってきて︑娘をつかまえて︑川にはいっていった︒川の怪

物とはカバのこと︒怪物は娘をころさなかった︒怪物は穴のなかに

はいっていき︑そこに娘をおいておいた︒ムーサは︑﹁それでよい︒

おまえがいなくなって︑安心だ﹂といった︒

 さて︑ムーサは娘の下着をもって家にかえってきた︒

 さて︑人びとは娘たちにたずねた︒

 さて︑娘たちはムーサと娘をあとにのこしたといった︒ムーサが 家にかえってくると︑家のものたちは︑﹁おまえの妹はどこにいる︒妹はどこにいる︑ムーサよ﹂という︒ さて︑ムーサは︑﹁しらない﹂といった︒ さて︑ムーサはそのままそこにいた︒みんなどこかにいってしまい︑そこでおちついている︒娘の父親はないている︒家のものたちは娘の妹をつれていった︒母親も父親とおなじだった︒父親は小屋にはいると︑ずっとないたので︑目がみえなくなった︒娘の母親はベッドのうえにふせている︒そのうちに︑体中︑出来物ができてしまった︒ さて︑娘の母親と父親はじっとしている︒母親と父親はないている︒かなしかったからだ︒そのうちに︑末っ子がおおきくなった︒末っ子は成長した︒ムーサはおちついている︒ さて︑みんなおちついている︒ さて︑家のものたちは末っ子に︑﹁ムーサに水をあげなさい﹂といった︒末っ子はムーサに水をやる︒末っ子は水をくむ︒末っ子はでていった︒ さて︑末っ子は水をくみにいった︒ さて︑娘たちはみんな水をくんで︑もどっていく︒著たちはみんな水をくんで︑もどっていく︒ さて︑末っ子はムーサの妹が水のなかにいるという︒

 さて︑末っ子がみると︑ムーサの妹がいた︒674

(11)

 さて︑末っ子は怪物と話をした︒末っ子が︑﹁おまえさんは︑ひ

とりか﹂という︒怪物は︑﹁ムーサの妹といる﹂という︒

 さて︑果たちはでかけていった︒末っ子は水をくむ︒末っ子は

いって︑川岸で着物をあらっている︒そのうちに︑ムーサは末っ子

に水をくれといった︒末っ子はいくと︑いつものところで水をくん

で︑ムーサにもってきてやる︒

 さて︑ムーサは末っ子をくれ︑結婚するといった︒母親はベッド

にふせて︑ねているではないか︒

 さて︑末っ子は水をくみにいった︒

 さて︑ムーサは︑﹁おまえの足の裏のへんにある水をのめという

のか﹂といった︒末っ子はずっとさきまでいった︒

 さて︑ムーサは︑﹁おまえの膝のへんにある水をのめというのか﹂

といった︒末っ子はずっとさきまでいった︒

 さて︑︑末っ子はさらにふかいところにいった︒

 さて︑ムーサは︑﹁もっとふかいところにいけ﹂という︒ムーサ

は︑ここよりふかいところにいかないと︑水をのまないといった︒

末っ子は︑いわれたままさらにふかいところにいった︒

 さて︑怪物がやってきて︑末っ子をもさらっていった︒

 さて︑ムーサはどこかにいってしまった︒ムーサはどこかにい

く︒末っ子はナイフのようなカミソリをもっている︒

 さて︑怪物は末っ子をつかまえて︑つれていってしまった︒  さて︑末っ子はどこかにいってしまった︒なんの音もしない︒家のものたちは︑﹁ああ︑ああ︑ああ﹂といった︒末っ子はどこかにいってしまった︒母親はまたしても︑ねこんでしまった︒ さて︑末っ子がいくと︑姉さんがいた︒姉さんはずっといたので︑体中から根がはえてきた︒怪物は娘を水のなかにおいておいた︒姉さんはずっとそうしていた︒ さて︑妹は川のなかにいった︒妹は怪物につかまったときから︑ナイフをもっている︒娘はいくと︑姉さんをみた︒ さて︑妹は姉さんをみた︒ さて︑怪物は︑﹁わしは︑おまえとこいつをここにおいておく﹂といった︒ さて︑怪物は娘に︑﹁おまえをたべてしまおうか﹂といった︒ さて︑姉さんは怪物に︑﹁どうしたの︒妹に手をつけないで﹂といった︒ さて︑怪物は︑﹁そうか︒こいつは︑おまえの妹か︒わしはのみこんでしまう︒妹に︑わしのことをいわれないためだ﹂といった︒ さて︑怪物は娘をつかまえ︑のみこんでしまった︒のみこまれるときから︑娘はナイフをもっている︒ さて︑娘は怪物のお腹にいる︒ さて︑末っ子は︑﹁母さん︑水があかくなっていたら︑姉さんは

水からでる︒水がくろくなっていたら︑わたしと姉さんは死んでし 684

(12)

まっている﹂といつもいっていた︒

 さて︑母親はいって︑みた︒家の人たちはみんなにそういった︒

家の人たちはおちついている︒

 さて︑怪物は娘をつれていってしまった︒娘はナイフをとると︑

ひらいた︒

 さて︑娘はナイフをとった︒娘は怪物の腹のなかにいる︒娘は怪

物の腸をきっていく︒娘は怪物の腸をみんなきってしまった︒娘が

腸をきってしまうと︑怪物はそのまま水のなかにはいっていった︒

そこにはいると︑怪物はおきあがろうとしなかった︒

 さて︑怪物はそこによこになった︒よこになっても︑娘は怪物の

腹のなかにいた︒娘は怪物の腸をみんなきってしまった︒

 さて︑娘が腸をみんなきってしまうと︑怪物はドスンとよこにな

ってしまった︒

 さて︑娘は腸をきってしまった︒

 さて︑怪物はたおれた︒姉さんはおなじところにいる︒

 さて︑怪物は娘をつれていった︒

 さて︑怪物はたおれた︒怪物はたおれると︑水のなかにボトンと

よこになっている︒

 さて︑姉さんはすわった︒

 さて︑娘は怪物の腹をきりひらいた︒

 さて︑怪物の腹をきった︒家の人たちは水があかくなっているの をみた︒ さて︑娘は怪物の腹をきると︑腹からでてきた︒ さて︑娘は姉さんのところにはいっていくと︑﹁どう﹂といった︒ さて︑姉さんは︑﹁べつに﹂といった︒ さて︑娘は水からでた︒ さて︑水がひいていった︒ さて︑娘はそとにでた︒娘はすわった︒姉さんは︑怪物はいきている︑自分はここからでていけないといった︒妹は︑﹁でないの﹂という︒姉さんは︑﹁うん﹂という︒ さて︑娘は水からでた︒ さて︑娘ははしっていった︒ さて︑その日︑娘ははしっていった︒

−さて︑娘は母親たちのところにやってきた︒

 さて︑家のものたちは︑﹁なんだって︑みてみろ︒パートゥマが

かえってきた︒みてみろ︒パートゥマがかえってきた﹂といった︒

 さて︑娘は︑﹁姉さんがいる﹂といった︒母親が︑﹁姉さんがいる

の﹂といった︒娘は︑﹁うん﹂という︒母親は︑﹁なんだって﹂とい

った︒ さて︑娘がやってきて︑﹁姉さんはいる﹂といった︒

 さて︑母親は︑﹁おまえはそこでどうしていたのか﹂といった︒

娘は︑﹁怪物につかまって︑のみこまれた﹂といった︒694

(13)

 さて︑娘はいった︒﹁さて︑これも︑ムーサのおかげ︒

   わたしはここで水をくもうかといった︒

   ムーサはあちらにいけといった︒

   わたしはここで水をくむという︒

   ムーサは足のところの水はだめだという︒

   わたしはふかいところにいく︒

   ムーサは躁くらいのところまでいって︑

   そこで水をくめという︒

   わたしはふかいところにいく︒

   ムーサは膀くらいのところまでいって︑

   そこで水をくめという︒

   わたしはふかいところにいく︒

   ムーサはお腹くらいのところまでいって︑

   そこで水をくめという︒

   わたしはふかいところにいく︒

   ムーサは胸くらいのところまでいって︑

   そこで水をくめという︒

   ムーサは首くらいのところまでいけという︒

わたしはさきにすすんでいった︒すると︑怪物はわたしをつかまえ

た︒怪物はわたしをつかまえると︑わたしをのみこんでしまった︒

わたしは怪物といくと︑姉さんがいた︒いくと︑わたしをはきだし た︒すると︑わたしは姉さんをみつけた︒姉さんは︑﹃だれそれよ︑どうしてここにきたの﹄といった︒わたしは︑﹃わたしは母さんをおいておいた﹄といった︒姉さんは︑﹃そうなの﹄といった︒怪物はわたしをつかまえ︑のみこんだ︒怪物がわたしをのみこんだので︑カミソリをとり︑怪物の膀と胃と腸をみんなきってしまった︒すると︑怪物はたおれてしまった︒怪物がたおれたので︑わたしは怪物の胃をきりさいた︒わたしは怪物がうこかなくなるのをたしかめて︑胃をきりさいて︑でてきた︒わたしは︑﹃姉さん︑たちあがりなさい﹄といった︒姉さんは︑こわい︑たちあがれないといった﹂家のものたちが︑﹁姉さんはいるか﹂といった︒娘は︑﹁姉さんは︑いる﹂といった︒家のものたちが︑﹁姉さんはいるか﹂といった︒娘は︑﹁姉さんは︑いる﹂といった︒ さて︑家のものたちはでていった︒ さて︑娘は︑﹁まちがいなくいる﹂といった︒ さて︑家のものたちはたちあがった︒娘は︑﹁いって︑水があかかったら︑どうしょうもない︒さて︑水がくろかったら︑それならよい﹂といった︒家のものたちがいくと︑娘がいたところの水はあかかった︒家のものたちは︑﹁おまえの姉さんはいる﹂といった︒ さて︑娘の父親の奴隷は娘と水にはいっていった︒奴隷と娘は水にはいっていった︒

 さて︑奴隷は︑﹁いない﹂といった︒娘は︑﹁わたしははいってい 704

(14)

く︒ついておいで﹂といった︒奴隷は娘にどんどんついていった︒

とうとう︑姉さんのいるところにいく︒そこに姉さんがいた︒姉

さんはすわっていた︒怪物に一つのところにおいておかれていたの

で︑姉さんの体から根がでてきていた︒娘は︑﹁たちあがっておく

れ﹂といった︒姉さんは︑﹁たちあがれない﹂といった︒娘は︑﹁た

ちあがっておくれ﹂といった︒姉さんは︑﹁たちあがれない﹂とい

った︒ さて︑娘はカミソリをもった︒奴隷と娘は姉さんの体にはえてい

る根っこをすべてきってしまった︒家のものたちは姉さんを水から

だした︒そこに姉さんがいた︒すわっている︒

 さてY家のものたちは姉さんをはこんでいった︒家にかえってく

ると︑姉さんを母親のところにつれていった︒母親のところにつれ

ていくと︑家のものたちは︑﹁はい︑アイサトゥです﹂といった︒

 さて︑母親は︑﹁ああ﹂といった︒

 さて︑母親はお腹ではいながらゴザをひきずって︑でてきた︒母

親はゴザをたてかけた︒水のなかにいた娘も︑母親も元気になっ

た︒父親の目もみえるようになった︒自分たちの娘がかえってきた

とさ︒ ︵一九八三年一月二一日︑語り手 バッジャ・ラブラトゥ・イス

  フ︑ガウンデレにて︶ ㎜ムーサと娘㈲ 学校の生徒たちがいた︒子どもたちは水をくみにいったり︑川にいって︑着物をあらったりする︒子どもたちは川にいった︒川にいくと︑ずっと着物をあらっている︒ある娘はムーサがすきだった︒その娘はムーサがすきだった︒ さて︑娘はムーサをその名前でよばなかった︒娘はムーサの名前をロにだすのがはずかしかった︒娘はそこにいた︒ さて︑ムーサはそこにいった︒ムーサが川にいくと︑その娘がいた︒ムーサは川でその娘をみつけた︒ムーサはその河原においてあ

った娘たちの着物をとってしまった︒ムーサはその着物をもったま

ま︑木にのぼった︒

 さて︑この木のしたのよこに︑したには水があるが︑うえには︑

草がはえている沼があった︒娘が一人この木のしたにやってきて︑

いう︒  ﹁ムーサよ︑ムーサよ︑学校の生徒よ︑ムーサよ︒

   イスラム教の先生の子どもよ︑ムーサよ︒

   後生だから︑ムーサよ︑

   わたしに着物をかえしておくれ﹂

ムーサはその娘の着物をとると︑それをかえす︒べつの娘がやって

きて︑いう︒714

(15)

  ﹁なんだって︑ムーサよ︑なんだって︑ムーサよ︑なんだっ

    て︑なんだって︑なんだって︑ムーサよ︒

   学校の生徒よ︑ムーサよ︒

   イスラム教の先生の子どもよ︑ムーサよ︒

   後生だから︑ムーサよ︑

   わたしに着物をかえしておくれ﹂

娘たちはムーサにこのようにいったな︒そうすれば︑ムーサはどの

娘にも︑その娘たちの着物をかえしてやった︒

 さて︑もう一人がやってきた︒

 さて︑この娘はいう︒

  ﹁なんだって︑だれそれよ︑なんだって︑だれそれよ︑なんだ

    って︑なんだって︑なんだって︑だれそれよ︒

   学校の生徒よ︑だれそれよ︒

   イスラム教の先生の子どもよ︑だれそれよ︒

   後生だから︑だれそれよ︑

   わたしに着物をかえしておくれ﹂

ムーサがすきな娘がやってきた︒娘はこのようにいう︒ムーサは娘

が自分を自分の名前でよばないと︑着物をかえさないといった︒娘

はムーサをその名前でよぶのをこばんだ︒

 さて︑娘は沼にしずんでいく︒娘はどんどんしずんでいく︒娘は

いう︒   ﹁なんだって︑だれそれよ︑なんだって︑だれそれよ︑なんだ    って︑なんだって︑なんだって︑だれそれよ︒   学校の生徒よ︑だれそれよ︒   イスラム教の先生の子どもよ︑だれそれよ︒   後生だから︑だれそれよ︑   わたしに着物をかえしておくれ﹂ さて︑娘は太股まで水につかった︒娘はいった︒  ﹁なんだって︑だれそれよ︑なんだって︑だれそれよ︑なんだ    って︑なんだって︑なんだって︑だれそれよ︒   学校の生徒よ︑だれそれよ︒   イスラム教の先生の子どもよ︑だれそれよ︒   後生だから︑だれそれよ︑   わたしに着物をかえしておくれ﹂ さて︑娘は首まで水につかってしまった︒もうすこしで︑娘はころされてしまう︒ さて︑娘はいった︒  ﹁なんだって︑ムーサよ︑なんだって︑ムーサよ︑なんだっ    て︑なんだって︑なんだって︑ムーサよ︒   学校の生徒よ︑ムーサよ︒   イスラム教の先生の子どもよ︑ムーサよ︒

  後生だから︑ムーサよ︑ 724

(16)

   わたしに着物をかえしておくれ﹂

娘はムーサにこのようにいった︒

 さて︑ムーサは娘に娘の着物をかえした︒娘に着物をかえすと︑

ムーサは家にかえってきた︒ムーサはその娘に︑﹁よろしい︒きゆ

から︑自分をきらっている人をすきになるな︒また︑人の名前をい

うのをはずかしがってはならない︒人の名前をよぶのをはずかしが

るからこのようになったのだ﹂といったとさ︒

 このお話は︑おしまい︒すなわち︑これははずかしがることにつ

いて︑かんがえさせるお話なんだ︒はずかしがってはならない︒

 ︵一九入三年一月二四日︑語り手 アーマドゥ・ルファーイ︑ガ

  ウンデレにて︒この話は︑ガウンデレで︑ハウサ族の子どもか

  らきいたという︶

謝ムーサと娘㈲

 お話︑お話︒

 三人の娘がいた︒

 さて︑娘たちは川にでかけていく︒娘たちは川にでかけていく︒

 さて︑ある男が︑自分の妹のほか結婚するものがいないといっ

た︒ さて︑妹は︑自分の兄さんとは結婚しないといった︒  さて︑︵娘たちは着物をぬいで︑川にはいっている︒︶男はやってきて︑娘たちの着物をみんなとって︑木にのぼった︒娘たちの着物はたくさんあった︒ さて︑どの娘も︑﹁ムーサよ︑わたしに着物をかえしておくれ﹂という︒ さて︑ムーサはかえさないという︒ さて︑娘は︑﹁それはわたしの着物︒かえしておくれ﹂という︒ムーサは︑﹁かえさない﹂といった︒とうとう︑ムーサの首に根っこがはえてきたとさ︒ ︵一九入三年一月二一日︑語り手 マーマール・アリ︑ガウンデ  レにて︶劉 クンボールと求婚者たち ある娘はきれいだ︒この娘はどうしょうもないほど︑きれいだった︒村中の人がこの娘がすきで︑この娘にいいよっている︒ さて︑王さまたちはウマや︑いろいろなものをもってきた︒この人たちが︑娘と結婚しようとして︑もってこないものがなかった︒娘はこの人たちをこまらせた︒娘はだれもすきでないといった︒ さて︑ある遊び人がいたが︑この人はまっくろで︑みにくかっ

た︒この若者もこの娘がすきだった︒4

(17)

 さて︑この若者はたいへんな力持ちだった︒この娘の名前はクン

ボールという︒

 さて︑若者はたちあがった︒

 さて︑娘にいいよるものたちはでかけていった︒野原にでかけて

いく︒わかるな︒王さまは娘のところに︑つぎからつぎへとウマを

つれてきて︑そこにならべておく︒

 さて︑娘はそこにいる︒一人がもってきて︑そこにならべてお

き︑娘に︑どのウマにでものるように︑どのウマにでものるように

といった︒

 さて︑若者はちいさなウマをもってきて︑ウマをたたせておく︒

若者はそのようなウマをもってきた︒娘はいくと︑若者のもってき

たウマにのった︒娘はそのウマがすきだといった︒若者は娘と結婚

した︒王さまたちはこの若者をころそうとして︑さがしている︒王

さまたちは略奪戦争をおこした︒王さまたちは若者に戦争にいくよ

うに︑そうでないと︑よめさんをころすといった︒若者のよめさん

は戦争をしているところまでいった︒若者はずっと人びととたたか

っている︒人びとはずっとたたかっている︒

 さて︑若者はそこにすわって︑いう︒

  ﹁わたしのクンボールよ︑

   なくな︒

   くろくもなく︑しろくもないわたしのクンボールよ︑    なくな︒   いまのところ︑あの人たちの投げヤリは︑わたしの手におえ    ないことはない︒   いまのところ︑あの人たちの武器は︑わたしの手におえない    ことはない﹂すなわち︑人びとは若者に傷をおわせた︒人びとは︑若者に投げヤリをなげて︑あてた︒ さて︑若者はいった︒  ﹁わたしのクンボールよ︑   なくな︒   くろくもなく︑しろくもないわたしのクンボールよ︑   なくな︒   いまのところ︑あの人たちの投げヤリは︑わたしの手におえ    ないことはない︒   いまのところ︑あの人たちの武器は︑わたしの手におえない    ことはない﹂すなわち︑若者はこのようにして︑大声をあげている︒若者は相手をどんどんきっていく︒こういうことなのだ︒よめさんはたって︑大声をあげているのだ︒ さて︑そのあと︑若者はたちあがった︒若者は家にかえってく

る︒若者はねている︒若者は血をはきだすだけだ︒若者は家にかえ 744

(18)

つた︒人びとはいくと︑若者を介抱した︒五日たった︒若者は楽に

なった︒若者の体はすこし楽になった︒若者の体が楽になり︑傷

がなおりはじめた︒王さまたちは戦争をするために人びとをあつめ

た︒べつの戦争がおこった︒人びとはまた戦争にでかけていった︒

若者がいくと︑敵がいた︒人びとは戦争をしはじめた︒人びとはた

たかっている︒若者はいう︒

  ﹁わたしのクンボールよ︑

   なくな︒

   くろくもなく︑しろくもないわたしのクンボールよ︑

   なくな︒

   いまのところ︑あの人たちの投げヤリは︑わたしの手におえ

    ないことはない︒

   いまのところ︑あの人たちの武器は︑わたしの手におえない

    ことはない﹂

そのあとで︑若者はやられた︒胸のところを短刀でさされた︒若者

はよこになった︒若者はいう︒

  ﹁わたしのクンボールよ︑

   なくな︒

   くろくもなく︑しろくもないわたしのクンボールよ︑

   なくな︒

   こんどは︑あの人たちの投げヤリは︑わたしにあつまってき     て︑わたしの手におえない︒   こんどは︑あの人たちの武器は︑わたしの手におえない﹂相手の武器は若者の手におえなかった︒ さて︑若者の口から泡がでてくる︒若者は死んでしまった︒よめさんは水にはいって︑死んでしまった︒王さまは娘と結婚できなか

った︒ほかの人たちも︑娘と結婚できなかった︒王さまは戦いをお

こし︑自分の人びとをうしなった︒人をうしなったとさ︒

 ︵一九入三年一月二二日︑語り手 アーマドゥ・ルファーイ︑ガ

  ウンデレにて︒この話は︑ガウンデレの病院で︑クシリからや

  ってきたフルベ族の人からきいたという︶

盟 ダン・アベと娘

 ある娘もきれいだった︒だれも︑この娘を手にいれられなかっ

た︒娘がいる︒こういうことなのだ︒その村では︑だれそれとだれ

それが︑この娘を手にいれることができるだけなのだ︑というのは

この人たちは娘としたしかったからだ︒この人たちは娘といっしょ

にいる︒ さて︑そのうち一人が娘と結婚しようとしてやってきた︒その人

がやってくると︑娘はそのダン・アベという人に結婚してもらうと

いった︒754

(19)

 さて︑このバヤ族の娘はこの人に結婚してもらうといった︒

 さて︑娘はおちついた︒娘はでかけていく︒娘は自分の父親の畑

にいくとき︑歌をうたう︒若者の父親は市場でものをうっている人

だった︒若者の父親は市場で石ウスをうる︒

 さて︑娘はでかけるとき︑いう︒

  ﹁エネデマ︑ダン・アベよ︒

   ユカイデイよ︑ユカイダ﹂

娘の父親の名前はダン・アベという︒娘はうたう︒

  ﹁エネデマ︑ダン・アベよ︒

   ユカイデイよ︑ユカイダ︒

   エネデマ︑ダン・アベよ︒

   ユカイデイよ︑ユカイダ

   カメレ・ボネ・ワンコングバンダンダ︒

   カネディ・ワン・ゴル・フォー・ユー︒

   カイディ・カイディ︑ユラキディよ︑ユカイダ・ユ︒

   カイディ・カイディ︑ユカイディよ︑カイディ﹂

 さて︑人びとはでかけていった︒娘はでかけていった︒

 さて︑人びとは娘はダン・アベと結婚できないといった︒

 さて︑ダン・アベは腹をたてると︑たちあがり︑よその土地にい

った︒娘はそこでおちつくと︑自分は結婚しないといった︒自分は

ダン・アベだけに結婚してもらうといった︒人びとは︑﹁よろしい﹂ といった︒娘はおちついた︒そのあと︑だれも︑娘と結婚しなかった︒娘は年をとるまで︑すんでいた︒娘はどうしょうもないようになった︒娘がダン・アベをみると︑わかがえった︒ダン・アベは娘と結婚した︒二人はおちついた︒二人が結婚したあと︑ダン・アベの父親は老人になってしまったが︑わかがえって︑若者になった︒きれいな若者になった︒ダン・アベの父親はダン・アベのむごさんのうたう歌をきいた︒歌をきくと︑わかがえった︒  ﹁カメレ・ボネ・ワンコングバンダンダ︒   カネディ・ワン・ゴル・フォー・ユー︒   カイディ・・カイディ⁝﹂このようにうたうのをきくと︑ダン・アベの父親はどんどん若者になっていく︒とうとう︑若者になってしまった︒  ﹁ユカイデイよ︑ユカイダ︒   カイディ・カイディ︑ユカイディよ︑カイダ﹂ダン・アベの父親がおちついた︒その村に雨がふってくる︒その日︑雨がふった︒寒期だったのに︑雨がふり︑すべてのものの芽をださせたとさ︒ よろしい︒お話しは︑おしまい︒ ︵一九八三年一月二二日︑語り手 アーマドゥ・ルファーイ︑ガ  ウンデレにて︒この話は︑ガウンデレで︑バヤ族のテンポ・ア

  ブバカルからきいたという︒︶ 764

(20)

三女とその姑

 ある女が息子をうんだ︒息子はいって︑よめさんをもらって︑つ

れてきた︒よめさんをつれてくると︑息子はそのよめさんとよめさ

んの姑を家にのこした︒男は旅にでかけた︒よめさんは食べ物をつ

くると︑姑をよぶ︒女は姑に︑﹁マ・フルンボ・ムジナ・ラック・

フル︵ブタのようにみにくいものよ︑食べ物をたべよう︶﹂という︒

女は姑をブタのようにみにくいものとよぶのだった︒姑とは︑息子

の母親のことだ︒いつも︑このようにいうのだった︒女が姑をよん

で︑﹁マ・フルンボ︑ナ・セ・プ﹂といって︑姑といっしょにでか

ける︒これは︑﹁ブタのようにみにくいものよ︑いらっしゃい︒薪

をとりにいこう﹂という意味だ︒二人は薪をとりにでかける︒いつ

もこのようだった︒女は姑に︑﹁マ・フルンボ︑ナ・セ・プ﹂とい

って︑姑といっしょに薪をとりにいった︒女は薪を三本きると︑よ

こにしておいた︒姑も︑三本きって︑よこにしておいた︒姑は女

に︑﹁薪のうえにすわりなさい︒話がある﹂といった︒女がいって︑

自分の薪のうえにすわった︒姑は女に話をしている︒姑は息子のよ

めさんのよこをとおって︑どんどんあるいていく︒姑はどんどんお

どる︒姑がやってくると︑息子のよめさんがいる︒姑は息子のよめ

さんにいう︒

  ﹁ト・ミ・ヴォンラ・ヤー・ト・モデイモ・ウンゴンデイン・     ヴェヤ・ト︒   ト・ミ・ヴォンラ・ヤー・モディモ・ウンゴンディン・ヴェ    ヤ︑   ングングイェ・ジョンカ︑   ユルンディ・マウヌゴ︒   ン・ングヌイェ・ヴォ・スクレロ︒   リン・マウヌゴ・ンディン・ヴェヤ︵意味不明︶﹂このようにいうのだった︒姑は女に︑﹁わたしが息子をうんでないなら︑わたしはだれにブタなどとよばれるだろうか︒息子はおまえさんと結婚した︒おまえさんはわたしをブタとよぶ︒それはわるいではないか︒きょう︑おまえさんはわたしに感謝してもらわないと﹂といった︒姑はこのようにいった︒姑はうたった︒姑はさらに三度歌をうたった︒姑はやってくると︑そこで女の首をきりおとした︒姑は死体をそのままにしておいた︒姑はいくと︑かくれた︒姑はいくと︑よこになって︑小屋にいる息子の様子をみていた︒息子は女をよんだ︒母親は息子のよめさんの声をまねて︑返事をした︒息子は母親に︑﹁なんだって︑ぼくのよめさんがいないというのか﹂といった︒ さて︑息子が母親とねようとすると︑コオロギが息子に︑﹁ジャーラ・マグノ・マーガウォン・チャコ︵意味不明︶﹂という︒コオ

ロギが息子に︑﹁おまえさんはおまえさんの母親とねようとしてい774

(21)

る︒よめさんはいない﹂といっているのだ︒コオロギが息子にこう

いうのだ︒コオロギは︑﹁おまえさんはおまえさんの母親とねよう

としている︒おまえさんのよめさんはいない︒おまえさんの母親は

・おまえさんのよめさんをころして︑野原にほっておいた﹂という︒

そこで︑息子は母親とわかれた︒男は自分の母親をおいだした︒母

親はその村からでていった︒男はいくと︑自分のよめさんが死んで

いるのをみつけた︒男はそこにいくと︑よめさんの死体をうずめ

た︒男は村にかえってきた︒男はべつの女と結婚したとさ︒

 このお話は︑おしまい︒

  ︵一九九三年=月一七日に︑語り手 ヨン・イム︑レイ・ブー

  バにて︒ヨン・イムは五〇歳くらい︒ガウンデレのムブム族の

  すむところで︑母方の祖母からきいたという︒︶

4 2

2 蛆虫をたべる男としなくてもよいことをする

義理の母親

 娘が母親と野原にすんでいる︒娘は母親の小屋にいる︒娘は結婚

するのをこばみ︑すんでいる︒母親はよわった︒

 さて︑ある男がある地方からでて︑やってくると︑娘に求婚し

た︒娘は︑﹁わたしは結婚しない︒わたしに母親をおいておけとい

うの﹂といった︒男は︑﹁いいや︑わたしはここにすむ﹂といった︒ 男は川岸にいる蛆虫しかたべなかった︒川岸でなにかをたべている蛆虫しかたべなかった︒男は牛肉をかう︒男は野原の動物をころす︒男は魚などをつかまえ︑よめさんにもつてきてやる︒男は︑﹁おねがいだ︒おまえがわたしの蛆虫を料理しても︑たべないように︒わたしにくれたらよい﹂といった︒そういうことで︑よめさんはいつも︑蛆虫をいためる︒娘の母親が︑﹁どうか︑おねがいだおしえておくれ︒ほかの人がたべないというおまえのむごさんの食べ物とはなにか﹂といった︒ さて︑母親はいくと︑蛆虫を一つとって︑たべた︒ さて︑むごさんは腹をたてた︒むごさんはどこかにいってしま

った︒どこかにいってしまうといった︒むごさんは︑どこかにい

ってしまうといった︒よめさんは男のあとについていき︑男に話を

し︑﹁もどっておいで︒わかるね︒婆がしたことなの︒わたしがた

べたのではない︒母さんがたべたの﹂といった︒男はもどってくる

と︑おちついた︒それからながい時間がすぎさった︒母親はまたし

ても︑男の蛆虫をたべた︒それで︑男は腹をたてて︑どこかにいっ

てしまった︒男はどこかにいってしまった︒よめさんは男のあとを

どんどんつけていった︒よめさんは男においつけなかった︒こうし

て︑よめさんもどこかにいってしまった︒母親はそこにひとりでい

たけれども︑そのうちに死んでしまったとさ︒

 この話は︑こういうこと︒ 784

(22)

52

2

︵一 續ェ三年一月二六日︑語り手レにて︶女とそのむごさん アスタ・ジョーダ︑ガウンデ

 ある女のむごさんは自分の力で︑野原でオオトカゲを手にいれ

た︒男は一生懸命になって︑野原でオオトカゲの肉を手にいれて︑

もってきて︑よめさんに料理してもらおうとした︒よめさんはオオ

トカゲの肉をいためた︒ほんとうのこと︑男はお腹がすいていた︒

 さて︑よめさんは肉をいためると︑水ガメをもち︑川に水汲みに

いった︒男がやってくると︑いためた肉が土ナベにはいって︑にえ

ている︒男は腹がへっていた︒男は寝室につかう小屋をみたが︑よ

めさんがいなかった︒モロコシの粉をひく小屋をみたが︑よめさん

がいなかった︒ヒツジ小屋をみたが︑よめさんがいなかった︒

 さて︑男はスプーンにつかうヒョウタンをとり︑いくと︑腰をお

り︑自分の帽子のなかに肉をいれている︒男は土ナベから肉をとる

と︑それを帽子のなかにいれる︒ほんとうのこと︑よめさんはずっ

とまえに水汲みからかえってきて︑葦篭のむこうにたち︑竈で男の

していることをみている︒男は肉をすくって︑帽子にいれる︒男は

それをたべようとするが︑肉はあつい︒

 さて︑よめさんが︑﹁おまえさんはなにをしているのか﹂といっ た︒ さて︑男は帽子をとり︑頭にかぶり︑おどっている︒男はいう︒  ﹁帽子が︑おまえのためにおどるようにといった︒   帽子が︑おまえのためにおどるようにといった﹂よめさんが︑﹁あなたは大丈夫なの︒どうして︑あなたはおどっているの﹂といケ︒男は︑﹁わしらの村の踊りをおどっているのだ︒帽子が︑おまえのためにおどるようにといった﹂といった︒ほんとうのこと︑肉が男を火傷させている︒男はよめさんがわらいはじめると︑よめさんに︑﹁平手打ちをくわせてやる﹂といった︒男はよめさんをなぐりはじめる︒ さて︑よめさんは︑﹁アッラーよ︑この人がわたしの土ナベから肉をとっているのをわたしがみたので︑わたしをなぐるのだな﹂と

いった︒女は裁判をする人のところにいった︒女は裁判をする人

に︑﹁きょう︑こういうことで︑わたしはわたしのむごさんをあな

﹂たにうったえにきました﹂といった︒

 さて︑裁判をする人は女に︑﹁よろしい︒おまえさんは日がくれ

てからきたので︑わたしの屋敷にいってやすんでいなさい︒あした

の朝︑わたしは使いをだす︒わたしたちはおまえさんのむごさんを

よんできて︑その話をしよう﹂といった︒

 さて︑女は裁判をする人の屋敷にいってねた︒夜があけて︑朝に

なると︑人びとが裁判をする人の屋敷のまえにあつまった︒794

参照

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