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兵庫県立大学の地域志向教育プログラムの展開

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1

兵庫県立大学の地域志向教育プログラムの展開

-「地(知)の拠点整備事業」の平成 28 年度評価を中心に-

地域創造機構 李 素 婷

はじめに

平 成 25 年 度 に 採 択 さ れ た 兵 庫 県 立 大 学 の 地 ( 知 ) の 拠 点 整 備 事 業 (Center of Community:大学 COC 事業/以下 COC 事業)「地(知)の五国豊穣イニシアティブ」は、平 成 29 年度で最終年度を迎えた。本学の COC 事業は、兵庫県が抱えている地域の課題を 6つに集約し、その課題解決のために兵庫県と県下 11 の連携自治体と協働で6つのプ ロジェクトフィールドを展開するとともに、その取組みの成果を活かした地域志向教 育プログラムを開発し、進めてきた。補助金終了後の平成 30 年度からは、同じく文部 科学省の補助金事業である大学間連携共同教育推進事業「コミュニティ・プランナー 育成のための実践的教育課程の構築」との統合を通じて、兵庫県立大学の特色のある 地域創生人材育成プログラムを展開していく予定である。そのためには、それぞれの 教育プログラムの成果と課題を明らかにすることが必要であるが、本稿では、まず、筆 者が担当している COC 事業の地域志向教育プログラムを取り上げ、平成 28 年度に文部 科学省によって行われた事業評価を中心、その評価基準、結果、高く評価された点、今 後の課題を分析・整理することで、COC 事業終了後の地域志向教育プログラムの継続的 実施及び改善につなげる。

1.COC 事業とは

COC 事業とは、大学等が自治体と連携し、全学的に地域を志向した教育・研究・社会貢 献を進める大学を支援することで、課題解決に資する様々な人材や情報・技術が集まる、

地域コミュニティの中核的存在としての大学の機能強化を図ることを目的とする事業の ことである。

1

2005 年以来進められてきた文部科学省の大学改革の一環として 2004 年か ら 2012 年まで実施された各種 GP(Good Practice:教育 GP、特色 GP,現代 GP)事業の終了 後スタートした。COC 事業が GP 事業と異なる点は、GP 事業が大学の一部の学部・学科、

もしくはゼミ・研究室単位で地域の連携した取り組みも補助金の対象にしていたのに対し て、COC 事業は、大学の地域との連携を大学の教育・研究・社会貢献の全領域において、

全学を挙げて進める取組みのみを対象とし、さらに、それを可能とする基盤づくりとして、

大学内の教育カリキュラムの改革を同時に進めることを義務付けていることである。

1 文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/coc/1337841.htm 1

(2)

2

2.COC 事業に関する先行研究

全国で展開されてきた COC 事業の取組みについての研究としては、全国の COC 事業 採択大学を対象としたアンケート調査の結果にもとづいてその実施実態を定量的に分 析したもの

2

や、個別の大学単位でその大学の COC 事業の取組みの全体像や特色ある事 例を紹介したもの

3

、社会人の学び直しを通じて地域のリーダーを育成する教育プログ ラムに関するもの

4

などがある。しかし、COC 事業は大学が地域課題解決に取り組む事 業というイメージが強いため、その地域課題解決の成果と課題に焦点を当てたものが 多く、その現場を学部の学生が地域で学ぶための教育の場として活用した教育プログ ラムの開発とその実施状況についての検討は十分とは言えない。

3.平成 28 年度評価_COC 事業の現状

1)平成 28 年度評価の位置づけと評価結果

平成 28 年度には、COC 事業が始まって以来初めて文部科学省によって全国の COC 事 業採択大学を対象とした事業推進状況の評価が行われた(以下「平成 28 年度評価」)。

文部科学省は、平成 27 年に「地(知)の拠点大学による地方創生事業(以下 COC+事業)」

をスタートさせているが、COC+事業は、大学が地方公共団体や企業等と協働して学生 にとって魅力ある就職先の創出をするとともに、その地域が求める人材を育成するた めに必要なカリキュラムの改革を断行する大学の取り組みを支援することで地方創生 の中心となる「ひと」の地方への集積を目的とする。

5

COC 事業及び COC+事業の評価 及びフォローアップの全体像は図1の通りである。

2 野澤一博「大学の地域連携の活動領域と課題」『産学連携学-産学連携学会誌-』第 13 巻 第 1 号 2016 年 12 月 pp.1-8

3 吉用武史・赤池慎吾・大崎 優・岡村健志・梶 英樹・石塚悟史「地(知)の拠点化に向けた高知 大学の地域連携の取り組み」『産学連携学-産学連携学会誌-』第 13 巻 第 1 号 2016 年 12 月 pp.15-23

4 白神晃子・林 靖人・松浦俊介・新 雄太・福島万紀「地域のリーダー人材育成に向けたカリキ ュラム開発および実施クオカの検証-信州大学地域戦略プロフェッショナル・ゼミの実践-『地 域活性研究』7 2016pp.39-48

5 文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/coc/1362179.htm 図1 COC/COC+評価及びフォローアップの全体像

2

(3)

3

このような位置づけの上で、平成 28 年度評価は、COC+に選定された各事業が COC 事 業の取組内容を包含していることから、COC 事業も併せて評価することにより COC+を 効果的に実施していく上で参考とすることを目的として実施された。

6

評価対象事業 数は、平成 25 年及び平成 26 年に採択された COC 事業の全 76 件であり、専門委員によ る書面評価(平成 28 年 8 月 15 日~9 月 5 日)、面接評価(同年 9 月 27 日~29 日)、現地 調査(同年 11 月 22 日/必要とされた場合のみ)の 3 段階で実施された。

7

平成 27 年 2 月 6 日に決定した評価の結果は図 2 の通りである。S 評価を受けた大学は、全体の 7.9%

の7つの大学であり、そのうち国立大学が4つ、公立大学が2つ、私立大学が 1 つで あった。

8

平成 28 年度評価の結果は、平成 29 年度の予算の傾斜配分の基準とされた。

2)重点評価項目

平成

28

年度評価の書面評価は、評価対象の各項目の内容を

S

A

B

C

D

の5段 階で評価し、それに各評価項目の重要性に鑑み、項目毎に

1.0

5.0

までの係数をかけ て重み付けをする方式で、

100

点を満点とした。各評価項目及び係数は図

3

の通りで ある。

6 『地(知)の拠点大学による地方創生推進事業 平成 28 年度評価 評価結果報告』独立行政法人日 本学術振興会 地(知)の拠点大学による地方創生推進事業委員会 平成 29 年 3 月 p.3

7 同上 p.21

8 S:計画を超えた取り組み/A:計画通りの取り組み/B:一部で計画と同等又はそれ以上の取り組み も見られるものの(中略)助言等を参考し、一層の努力が必要/C:取組みに遅れが見られるなど、

総じて計画を下回る取組み(中略)事業計画の抜本的な見直しが必要 独立行政法人日本学術振興会 前掲書 p.205

図 2 COC 事業_平成 28 年度評価の結果

表1 平成 28 年度評価の評価項目

3

(4)

4

係数が大きいのは、1.達成目標の進捗状況、

5

.実施体制・事業の継続発展、

3

.教 育カリキュラム改革を含む事業目標達成のための各種取組であり、加点がもらえる評 価項目としては、

COC+

の目標に対する平成

27

年度中、平成

28

年度移行の取り組み が上げられる。さらに、各項目に含まれる内容を簡単にまとめると以下の通りである。

.

達成目標の進捗状況:地域志向科目

(

シラバスにおいて地域に関する学修を行う ことを明示している授業科目

)

数及び同科目による人材育成は、当初掲げた目標の 達成に向けて進捗しているか

.

留意事項への対応状況:採択時に付された留意事項への対応は進捗しているか

Ⅲ.教育カリキュラム改革を含む事業目標達成のための各種取組 ・地域志向科目を履修する教育カリキュラムの改革の進捗状況

・取組による成果

(

学生の能力向上・学修行動の変化の有無、その測定方法・指標

)

と その客観的なデータに基づいた分析結果の事業の改善への反映

Ⅳ.自治体等の連携・評価:ステークホルダーの支援の実施、外部評価等の実施と反映

.

実施体制・事業の継続発展:全学的なマネジメント体制の構築 ・学長

(

校長

)

を中心とした責任あるマネジメント体制の構築 ・役割分担の明確化や教職員の配置、各分担との十分な連携

・教職員の意識に変化が見られるなど、全学的な取組となっているか

係数の大きい1、3、5の評価項目において「地域志向科目を履修する教育カリキュ ラムの改革」 「全学的取組」の進捗状況が問われている。さらに、平成

28

年度評価の 評価結果の総括において、計画どおり順調に進捗している事例から見受けられる成果 として「地域志向科目の全学必修化」、計画の見直しが求められる点として「学長によ るリーダーシップ等の学内の実施体制や外部評価の仕組みが明確でない」 「地域志向の 教育研究での成果を人材育成へ結びつける過程が不十分である」を挙げている。

9

3)兵庫県立大学 COC 事業の概要と評価ポイント

兵庫県立大学の

COC

事業の概要は図

3

の通りである。兵庫県と県下

11

の自治体と 連携して6つのプロジェクトフィールドを設定し、県内各地域が持つ複雑な課題の解 決に当たる活動を展開することで「地域再生エンジン」としての大学の機能強化を図 ると同時に、その成果を活かし、これからの地域再生を担う人材育成プログラムを開 発することを示している。

9 独立行政法人日本学術振興会 前掲書 p.3 4

(5)

5

図 3 兵庫県立大学 COC 事業「ひょうご・地(知)の五国豊穣イニシアティブ」概要

5

(6)

6

地域再生、地域活性化を担う人材を育成するプログラムの展開の仕方は、大学によ ってまちまちであるが、評価結果の総評でも触れていた「全学必修化」は、

COC

大学 に採択されたほとんどの大学が申請時に具体的な数値目標を掲げており、共通する部 分とも言える。その基盤の上に、さらに深い学びを提供する教育プログラムとして新 学部の創設や副専攻制度の導入、各種マイスター講座など一定の単位を取得した学生、

もしくは社会人に修了証を授業する方式、ボランティア活動やサービスラーニングな ど課外活動を充実させることなどが見受けられるが、兵庫県立大学は副専攻の導入を 選択した。平成

28

年度評価における兵庫県立大学の

S

評価の具体的なコメントは次 の通りである。

【優れている点】

・学長の強力なリーダーシップがあり、ガバナンスが有効に機能していることは 評価できる。加えて、推進組織やカリキュラムも確立されており、地方公共団体 との連携も強いことから、地域社会にイノベーションを起こす学生の輩出が期待 できる。

・人材育成の視点から取組を進める姿勢が徹底されており、その推進のための地域 連携教育ユニット

10

が有効に機能していることは、他地域の事業の参考に資する

事例と思われ、高く評価できる。

【改善を要する点】

なし

3

で示しているように、兵庫県立大学

COC

事業の成果は、副専攻「五国豊穣プロ グラム」に集約されており、平成

28

年度評価においても「カリキュラムの確立」や「人 材育成の視点から取組を進める姿勢が徹底されており」などと評価されている。

4.兵庫県立大学の地域志向教育プログラム

前述のように、

COC

事業採択大学の地域志向教育は、大きく分けて全学部生を対象 に広く提供するもの

(

必修化

)

とより深い学びのためのものの二つのタイプで展開され ている。ここでは、兵庫県立大学の事例を簡単に紹介する。

10 ここでいう「地域連携教育ユニット」とは、申請時に COC 事業の推進組織として想定した COC 事 業推進本部会議のコアメンバーによる検討チームのことである。現在の「地域連携教育研究セン ター」のメンバーに、副理事長、副学長、事務局長を加えた「COC 定例会議」のメンバーのこと を指す。

6

(7)

7 1) 全学部生を対象とした地域志向教育の展開

兵庫県立大学の全学部生を対象とした地域志向教育は、以下の三つのステップで進 められた。

① 平成 27 年度_「地域に関する学修」の明確化

COC

事業開始後、最初にとりかかったのは、既存の科目のうち、 「地域」という視点 が入っている授業にはどのようなものがあるかを学生に分かるように示す作業であっ た。全学部の全ての科目のシラバスに「地域に関する学修」に該当するかどうかを記入 する欄をもうけ、平成

27

年度の授業のシラバスから導入された。その準備作業が進め られていた平成

26

年当時は、文部科学省による「地域志向科目」の明確な基準がまだ 示されていなかったため、 「地域に関する学修」に該当するかどうかの判断基準は、

COC

事業採択大学各自の学内での議論によって決められた。兵庫県立大学の場合、 「地域に 関する学修」に該当するかどうかの判断は、担当教員の裁量に任された。

②平成 28 年度_「地域入門科目」の全学必修化

平成

28

年度には、卒業のための必修科目として「地域入門科目」が設けられた。地 域入門科目は、地域に関する学修を行っている既存の科目に、平成

27

年度より試行的 に開講された新規科目である「

COC

概論」で構成された。開講科目及び受講者数は、

2

の通りである。

表 2 平成 28 年度「地域入門科目」の科目名及び履修者一覧

7

(8)

8

これにより、新入生の全員に兵庫県に関する内容を学ぶ機会を提供できるようになり、

全学必修化という目標は達成したが、受講生の規模に比べて地域入門科目群の構成科 目数が少なかったという指摘があった。例えば、西地区

(

環境人間学部、工学部、理学 部

)

の1年生場合、各科目の定員より受講希望者が多かった場合、抽選で受講者が決ま ったため、ガイダンスを受けて「

COC

概論」に興味を持ったが、受講できなかった学 生、もしくは、逆に「

COC

概論」に興味はなかったが、抽選の結果受講することにな った学生がいたという課題が残った。特に「

COC

概論」の場合、副専攻を履修するた めの必修科目であるため、地域入門科目の数を増やして学生の分散を図るとともに、

意欲のある学生がより幅広い選択肢の中から「

COC

概論」に興味を持って選択して受 講するようにする必要があった。

② 平成 29 年度_「地域課題探究科目群」の導入

平成

28

年度に必修化された「地域入門科目」は、総合教育機構を中心とした全学共 通教育改革に伴い、平成

29

年度より教養教育科目の中の「ひょうご県大科目」の「地 域課題探究科目」として再編成された。これは、前年度の課題であった「学生の分散」

にもつながった。

2) 地域志向型副専攻「五国豊穣プログラム」の展開

次に、 「

COC

概論」を受講して、地域で学ぶことに興味を持った学生のために、より 深い学びを提供する教育プログラムとして「五国豊穣プログラム」について説明する。

副専攻の単位取得マップは、図

4

の通りである。

図 4 地域志向型副専攻「五国豊穣プログラム」履修マップ 8

(9)

9

「五国豊穣プログラム」は、大きく分けてコア科目と関連科目に分けられ、合計

20

単位を取得することで、卒業時に「ひょうご学志」の称号と単位認定証明書が授与され る。コア科目群の「

COC

概論」、 「

COC

フィールドワーク基礎演習」、 「地域課題実践演 習」は新規科目であり、フィールドワークを中心とした授業を行う。関連科目は、各学 部にすでに開講されている専門科目で構成されており、コア科目を受講することで芽 生えてきた「地域」という視点を専門科目の受講時に活かせるようにすることが狙い である。

副専攻の受講対象者は、実施初年度の平成

27

年度には経済学部、経営学部、看護学 部の3つの学部であったが、平成

28

年度には環境人間学部と工学部の一部の学科が加 わって5つの学部に、平成

29

年度にはさらに工学部全学科と理学部が加わり、全学部 生へと拡大した。コア科目群の詳細については、次のところで説明する。

このような兵庫県立大学の地域志向教育プログラムの展開の結果、地域で学ぶこと への教職員及び在学生の認知度、興味も年々高くなってきており、

COC

事業を推進し てきた5年間を通じて、地域で学ぶことの意義を全学的に広げるのに一定の成果が挙 げられた。

5. 「五国豊穣プログラム」のコア科目

兵庫県立大学の地域志向型副専攻「五国豊穣プログラム」の特徴は、分散型キャンパ スの利点を活かして兵庫県内の広い範囲をカバーしている6つのプロジェクトフィー ルドの成果をもとに学部横断型カリキュラムを提供している点である。また、兵庫県 と県下

11

の自治体と連携し、各プロジェクトフィールドで行われている課題解決の現 場を教育の場として活用する際、ステークホルダーが授業に積極的にコミットメント していことも強みである。以下、この2点に焦点を当てて各コア科目の特徴を紹介す る。各科目の課題については最後にまとめて述べる。

1)「COC 概論」_現場の「生」の声を聞く

COC

概論は

1

年生を対象に前期に開講する2コマ連続の隔週講義である。各プロジ ェクトフィールドで課題解決に取り組んでいる教員とステークホルダーがそれぞれチ ームを組んでオムニバス式授業を行う。

2

コマの授業の前半では、主に各プロジェクトリーダーの教員が取組みの全体像に ついて講義し、具体的な活動の事例については、その活動に関わっているステークホ ルダーが登壇して直接経験を語る。学生は教員及びステークホルダー講義を聞きなが ら、予め配られた質問用紙に質問を書いて提出する。授業の後半では、学生から回収し た質問用紙をもとに、学生の質問にその場でステークホルダーが直接回答することで、

9

(10)

10

双方向性の授業を目指す。

ステークホルダーは、各プロジェクトフィールドの取組みの内容によって、連携自 治体の職員、

NPO

団体の職員、地元中小企業の社長、地域住民、学部及び大学院の学 生など多様である。ステークホルダーは、質問用紙以外に、学生が毎回の授業の最後に 意見や感想を書いて提出する小レポートも読むことで、受講生の疑問や関心事を把握 することができるが、これは、後述する「地域課題実践演習」、もしくは次年度の「

COC

概論」の講義内容を改善していくための重要な参考資料となる。

2)「COC フィールドワーク基礎演習」_フィールドワークの基礎を学ぶ

この授業は、 「

COC

概論」を受講した全学部の1年生から副専攻の履修を希望した 学生

(

定員

30

)

を対象とする。地域と人の営みを深く知るために有効な調査法である フィールドワークの意義について学び、文献資料調査、現地調査、結果分析、報告まで の一連のプロセスと地域とのコミュニケーションの手法を個人ワークとグループワー クで習得する。

副専攻生は、

2

年生から「

COC

概論」を受講して興味を持ったプロジェクトフィー ルドを二つ選び、そのプロジェクトフィールドが開講する「地域課題実践演習」を受講 して地域に入って地域課題を解決するプロセスを学ぶ。 「

COC

フィールドワーク基礎 演習」は、その準備をする授業として位置づけられている。

この科目のフィールドは、 「多自然地域の生活の持続」を課題とする多自然地域再生 系の連携自治体である養父市大屋町である。大屋町は、ひとと自然の博物館を拠点と する多自然地域再生系プロジェクトフィールドのメンバーが大屋地域局及び大屋町内 の

NPO

団体と一緒に大屋町の地域資源を活用した地域活性化方策を検討してきた蓄 積がある上に、アートによるまちづくりの拠点施設である「

BIG LABO

」など教育環 境が整っていることから、1年生の教育のフィールドに決まった。

この授業は大きく分けて事前学習と1泊

2

日の合宿型現地調査で構成される。

6

回 目までの事前学習で「

COC

概論」の講義の内容をベースに、学生自ら文献を調べたり、

地図・統計指標を用いて大屋町の情報を読み取ったりしながら、大屋町についての理 解を深めていく。また、グループごとに大屋町の既存の様々な取り組みの中から、興 味・関心を絞り、自分たちの調査を設計していく。

現地調査は、テーマを決めて4~6人のグループワークで行う。調査のテーマは

COC

概論」で外部講師を務めたステークホルダーとの話し合い、 「

COC

概論」の内 容と連動するようにする。例えば、平成

28

年度のテーマは、「アートによるまちづく り」と「近代産業遺産によるまちづくり」であった。

合宿の

1

日目は、 「

COC

概論」に関わった自治体の職員や

NPO

団体の職員の方の案

10

(11)

11

内で、 「

COC

概論」の講義や文献調査を通じて学習した大屋町の取り組みの現場を歩 く。

2

日目の午前は、まちづくりの中心的な役割を担っている地域住民の方へのインタ ビュー調査を行う。そして、

2

日目の午後、今までの調査で得られた情報を分析し、ま ち歩きやインタビュー調査に関わったステークホルダーを交えて成果を発表し、ディ スカッションを行う。

合宿を終えた後の授業では、現地での成果発表とディスカッションの結果をブラッ シュアップし、東地区と西地区のキャンパスを遠隔システムでつないでグループごと に調査報告を行う。

COC

フィールドワーク基礎演習」は、平成

29

年度で

3

年目を迎えたが、年度ご とに授業に関わったステークホルダーとの話し合いを重ねて次年度の授業内容の改善 を図ってきた。具体的には、初年度の平成

27

年度の場合、ステークホルダーから「学 生は大屋町での現地調査合宿を通じて地域の方々と交流し、活動をともにすることで

『人との出会い』や『一緒にやること』の楽しさを知ったと思う。2年目は、何か学生 自身が提案を持ってきてくれるとありがたい」というコメントがあった。その意見を 反映し、2年目の平成

28

年度には、現地の成果報告会で企画案を発表する形式に変更 した。しかし、

15

コマの授業時間では、事前学習が十分にできず、内容の薄い企画案 になってしまう課題が残った。

3

年目の平成

29

年度には、事前学習が十分できるよう に、反転授業など様々なアクティブラーニングの手法を用いた。その結果、成果発表会 に参加した自治体の職員から「すぐにでも実行してみたい」というコメントをもらう ほどの企画案に仕上げることができた。

3)「地域課題実践演習」_地域の課題解決のプロセスを現場で学ぶ

「地域課題実践演習」は、各プロジェクトフィールドの教員とステークホルダーが課 題解決に取り組んでいる現場でそのプロセスを学ぶことを目的とする。平成

28

年に準 備が整った地域資源マネジメント系、ソーシャルビジネス系、あわじ環境未来島構想 系の3つのプロジェクトフィールドで先行開講し、平成

29

年には6つの全プロジェク トフィールドで開講した。

平日は主専攻の授業がある学生が多いため、開講形式は、土日、もしくは夏休み中、

1日に

3~5

コマ分の授業を実施する集中講義となっている。受講人数は、プロジェク トフィールドによって異なるが、「

COC

フィールドワーク基礎演習」を履修した約

30

名の学生が6つのプロジェクトフィールドに分かれるため、少人数となる。

ここでは、具体的な事例として、6つのプロジェクトフィールドのうち、あわじ環境 未来島構想系の「地域課題実践演習」を紹介する。

11

(12)

12

COC

概論」で竹林の拡大防止・竹の地域資源化というテーマを取り上げたあわじ環 境未来島構想系の場合、授業の前半ではプロジェクトリーダーの教員が淡路島の地理 的特徴や課題、解決のための取り組みの全体像を紹介し、さらに専門分野を活かした 研究成果をもとに、タケの生態・特徴、分布状況、竹林管理の手法の開発などについて 講義を行った。後半では、地元の淡路島で放置竹林の整備活動を行っている地域住民 と伐採された竹を竹パウダーや竹チップなどに加工して地域資源として活用する取組 みを行っている地元中小企業の社長から直接現場の話を聞いた。「地域課題実践演習」

では、実際に竹林の中を歩きながら、タケの見分け方、竹林の拡大状況を確認した。そ して、竹林の整備活動をしている地域住民の方の指導を受けながら、竹の伐採作業を 体験した。その後は、 「

COC

概論」で紹介された竹加工工場と実際にその竹チップを利 用している温浴施設を訪ね、聞き取り調査を行った。

6.兵庫県立大学の地域志向教育プログラムの展開の成果と課題

1) 成果

①地域入門科目の必修化_教養教育科目の充実化のための議論を促進

3

大学の統合によって兵庫県立大学ができた当初から教養科目の充実化は議論され てきたが、なかなか進んでいなかった。前述のように、

COC

事業採択大学には、達成 目標の

1

つとして、地域志向科目の必修化が求められており、兵庫県立大学も平成

27

年度に教養教育科目の中に「地域入門科目」のカテゴリーを設け、既存科目と新規科目 の「

COC

概論」を開講している。そして、翌年の平成

28

年度には、「地域入門科目」

を卒業のための必修科目として指定した。その過程で長い間検討されてきた教養教育 科目の充実化のための議論を促進する効果があった。さらに、平成

29

年度からは教養 科目「ひょうご県大科目」の中に「地域課題探究科目」の枠ができ、既存の地域に関す る学修を行う科目や副専攻「五国豊穣プログラム」の関連科目、特別プログラム「コミ ュニティ・プランナー」の関連科目などが、まとめて学生に提示できるようになった。

「ひょうご県大科目」には3つの領域があり、その中から4単位を取ることが卒業 の条件となっている。前述したように、少数の地域入門科目への集中を解消するため に「地域課題探究科目」の数を増やしたことで、 「

COC

概論」の受講者は前年度より減 っており、すべての学生が「地域課題探究科目」を受講するわけではないため、 「地域 志向科目の必修化」という側面では、後退したようにも思われる。しかし、地域に関す る学修を行う科目群が兵庫県立大学の教育の特色の一つとして明確に位置づけられた 点は評価できる。

12

(13)

13

②地域志向教育プログラムを副専攻として導入_体系的な教育プログラムの提供

「五国豊穣プログラム」は兵庫県立大学初の副専攻である。そのため、副専攻制度を 導入するための学則の改編など、制度的面での検討はもちろん、副専攻のあり方、すで に地域に関する学修を行っている既存の科目を組み合わせて受講することや特別プロ グラムとの差別化、全学部の学生を対象にするための調整及びその過程で出された多 様な立場からの意見の収集など、内容の面でも議論が重ねられてきた。それによって、

「五国豊穣プログラム」の学部横断型のカリキュラムを確立し、教育効果を上げるた めの検討も継続的に行われるようになった。 「五国豊穣プログラム」の副専攻化のため の学内での議論は、平成

29

年度より新たに副専攻になった「グローバルリーダー教育 プログラム」及び「防災教育ユニット」の副専攻化のための議論を促す

1

つのきっか けになったと考えられる。

2) 課題

①各プロジェクトフィールドが提供する教育プログラムの差

6つのプロジェクトフィールドは、地域の課題、連携自治体の課題解決の方針、それ までの連携自治体との関係性、地域内の大学の活動拠点等の有無、関わる教員の人数 など、条件が異なっていることから、提供する教育プログラムの内容や形式、開講時期 などにも差があるのが現状である。

条件の差を具体的に挙げると、学生のコミットメントの面では、学生が地域に入っ て行う各種活用

(

体験・意見交換・調査・分析・報告、プロジェクトの企画・実施・修 正など

)

において、実施できる項目が限定的なプロジェクトフィールドもある。

活動拠点や関わる教職員数の面では、独立大学院のキャンパスを拠点とし、それま で築いてきた地域との連携の成果を活かして組織全体で対応している地域資源マネジ メント系やあわじ環境未来島構想系、付置研究所を有する産学公連携系のようにすで に地域とのつながりがあったプロジェクトフィールドもあれば、ソーシャルビジネス 系のように学部所属の教員数名で実施しており、

COC

事業の開始をきっかけに新たに 関係を築いてきたケースもある。

フィールドへのアクセスの面では、教育プログラムの差の要因の一つとして対象フ ィールドまでの距離も挙げられる。徒歩や公共交通機関を利用してすぐアクセスでき るところもあれば

(

地域防災・減災、産学公連携系

)

、車での移動が必須のところ

(

多自然 地域再生系、あわじ環境未来島構想系

)

や、公共交通機関は利用できるが、移動時間や 交通費が学生の負担になっているところ

(

あわじ、地域資源

)

もある。

③ 地域から必要とされる活動が求められる

6つのプロジェクトフィールドの教育プログラムで共通していることは「地域で学

13

(14)

14

ぶ」体制は達成できたが、地域から必要とされる活動にまでは至っていない点である。

COC

事業申請時に目指した目標はすでに達成できたが、5年の間、地域の大学・学生 の活動への期待も高くなっており、さらに授業内容を工夫する必要に迫られている。

そのためには、現在の

15

コマの正規のカリキュラム内での実施にとどまらず、課外活 動への接続など、学生が授業の内容を踏まえてさらに地域で「実践」できる機会を確保 するための議論が必要である。

【参考文献】

1) 文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/coc/1337841.htm 2) 野澤一博「大学の地域連携の活動領域と課題」『産学連携学-産学連携学会誌-』第 13 巻 第 1

号 2016 年 12 月 pp.1-8

3) 吉用武史・赤池慎吾・大崎 優・岡村健志・梶 英樹・石塚悟史「地(知)の拠点化に向けた高知 大学の地域連携の取り組み」『産学連携学-産学連携学会誌-』第 13 巻 第 1 号 2016 年 12 月 pp.15-23

4) 白神晃子・林 靖人・松浦俊介・新 雄太・福島万紀「地域のリーダー人材育成に向けたカリキ ュラム開発および実施クオカの検証-信州大学地域戦略プロフェッショナル・ゼミの実践-『地 域活性研究』7 2016pp.39-48

5) 文部科学省ホームページ http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/coc/1362179.htm 6)『地()の拠点大学による地方創生推進事業 平成28年度評価 評価結果報告』独立行政法人日

本学術振興会 地()の拠点大学による地方創生推進事業委員会 平成293

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図 3  兵庫県立大学 COC 事業「ひょうご・地(知)の五国豊穣イニシアティブ」概要

参照

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