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担当:山口隆英教授

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Academic year: 2021

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担当:山口隆英教授

(論文要旨)

公式的権限に依拠しないリーダーシップ好循環モデルの探求

-地域コミュニティを再創造する組織の生成・成長過程の事例を中心にー

兵庫県立大学 経営学研究科博士後期課程経営学専攻 2017 年度入学 BD17B803 番 床桜英二

2019 年 12 月提出

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1 1.問題意識

本研究の主たる目的は次の2点である。第 1 に、公式的な権限に依拠しないリ ーダーシップとはどのようなもので、それは組織や集団の再生・活性化に有効な のかを明らかにすることである。第2に、社会のダイナミックな環境変化に対応 して、組織あるいは集団が持続可能な成長・発展を遂げるには、リーダーシップ もまたダイナミックに変化する必要があるのではないかということを明らかにす ることである。こうした問題意識を持った背景には、筆者が、研究者として、ま た活動家として関わってきた過疎地域における地域コミュニティの再生・活性化 の活動において、3つの疑問を持つことになったからである。第1に、疲弊する 地方の地域コミュニティを再生・活性化させるには地域リーダーの存在が鍵を握 るとの指摘は先行研究においても数多くなされている。しかしながら、地域リー ダーがどのようなリーダーシップを発揮すれば、地域コミュニティの再生・活性 化に繋がるのかといった研究がほとんど見当たらないことである。第2に、会社 組織の社長が持つような公式的権限を有しない地域リーダーが、どのようなリー ダーシップを発揮すれば地域コミュニティの再生・活性化に向けてフォロワーを 力強く導くことができるのかということであり、このことについての先行研究は 現時点では確認することができなかったということである。第3に、地域コミュ ニティは、社会の環境変化に応じてダイナミックな動きを示し、それぞれのフェ ーズに応じて、有効なリーダーシップも変化させていくべきである。しかし、こ うした研究も確認できなかったことである。このように本研究は、地域コミュニ ティの再生・活性化への関心が発端となって始めた研究ではあるが、公式的な権 限に依拠せず、社会のダイナミックな環境変化に適合するリーダーシップを探究 することは、企業組織を含む、より一般的な組織あるいは集団を対象にしたリー ダーシップ研究に貢献できるとの思いが、本研究の強い動機となっている。

2.研究の構成・内容

このような問題意識から、本研究は、リーダーシップ研究の枠組みを基礎とし て、社会の環境変化に適応しダイナミックに変化する、公式的な権限に依拠しな

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いリーダーシップとはいかなるものかを解明するために、次のようなステップを 踏み考察を進めていった。

第1章では、先行研究をもとに、リーダーシップの影響力の源泉となる権限や 権力について考察し、初期のリーダーシップ論についてその特徴とともに、公式 的な権限に依拠しないリーダーシップとの関係性について明らかにした。その結 果、状況/コンティンジェンシー・アプローチにおいて、フォロワーの成熟度とい う時間軸を導入した一部理論はあるものの、組織あるいは集団の総体としてのダ イナミックスを加味したものではなく、また、それ以外の初期のリーダーシップ 論には、「変化するリーダーシップ」という特徴は見出せなかった。さらに、初期 のリーダーシップ論は、公式的な地位にあるリーダーが発揮するリーダーシップ を暗黙の前提として検討がなされているようにも思われるが断定ができない。そ こで、リーダーとフォロワーとの関係性について確認することで、公式的な権限 に依拠したものか否かを考察した。その結果、初期のリーダーシップ論における フォロワーは、リーダーの指示を受け行動する受動的な存在であり、フォロワー の積極的な関与を促し共通の目標達成に向かって努力するという、公式的な権限 に依拠しないリーダーシップとは基本的な点で相違点があることを指摘した。

第2章では、リーダーとフォロワーとの互恵的な関係性の中にリーダーシップ の源泉を見出そうとする互恵的なリーダーシップである、変革型リーダーシップ、

サーバント・リーダーシップ及びシェアド・リーダーシップについて先行研究を もとにその特徴を明らかにした。まず、変革型リーダーシップは、衰退・停滞期 にある組織あるいは集団を、リーダーとフォロワーが信頼し合って革新的再興に 導くに相応しい力強いリーダーシップと考えられる。しかし、その力強さ故に、

フォロワーの創造性を抑制する危険性も内包していることから、リーダーとフォ ロワーとの十分な意思疎通のもと、効果的に活用する必要があることを指摘した。

次に、サーバント・リーダーシップは、リーダーが最初にフォロワーに尽くすこ とで、その信頼を得て、フォロワーが自らの意思で、リーダーとともにあるべき 姿の実現に向け行動することを促すリーダーシップであり、リーダーとフォロワ ーとの信頼関係を構築し、熟成させていくことで効果を発揮するリーダーシップ

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であることを明らかにした。そして、革新的再興期においては新たな視点から力 強さや迅速さを持った取組が求められることから、このフェーズにおいては、変 革型リーダーシップが有効であること、また、革新的再興期を経て一定の仕組み が構築された安定・成長期においては、サーバント・リーダーシップがより効果 を発揮できることを指摘した。さらに、シェアド・リーダーシップについては、

リーダーとフォロワーが立場を入れ替えつつ協働して活動を展開していくリーダ ーシップであり、多様な人々が構成する組織や集団の再生・活性化には、効果的 なリーダーシップである。しかし、シェアド・リーダーシップは、流動性、多様 性、自律性といった、「分化」に繋がる要素を柱としたリーダーシップであるだけ に、目標の共有化など適切な「統合」の仕組みが構築されないと、本来の特徴を 生かすことができないことを指摘した。

以上の考察をもとに、第3章では分析枠組として、「リーダーシップ好循環モデ ル」を提示した。このリーダーシップ好循環モデルは次の3つの仮説から構成さ れている。第1に、互恵的なリーダーシップのうち、変革型リーダーシップは革 新的再興期において、サーバント・リーダーシップは成長・安定期において、そ れぞれ効果を発揮すること。また、シェアド・リーダーシップは、フェーズに関 わらず有効であること。つまり、革新的再興期には、シェアド・リーダーシップ と変革型リーダーシップのハイブリッド型リーダーシップ(Ⅰ)が、また、成長・

安定期には、シェアド・リーダーシップとサーバント・リーダーシップのハイブ リッド型リーダーシップ(Ⅱ)が有効であること。第2に、成長・安定期に安住 せず、“次の”革新的再興期を目指すことで好循環を持続できること。つまり、

成長・安定期に、何らかの硬直化現象の兆候が見られたら、速やかに、シェアド・

リーダーシップと変革型リーダーシップとのハイブリッド型のリーダーシップ

(Ⅲ)に切り替えることが必要であること。

第4章では、このリーダーシップ好循環モデルによる地域コミュニティに関す る実証分析に先立ち、地域コミュニティの固有の問題や、実証分析にあたっての 重要な要素である諸事項(新しい内発的発展論、地域愛着、地域プラットフォー ム、学習・伝承システムなど)について考察を行った。これは企業や団体などの

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一般的な組織や集団とは異なる論理で動く地域コミュニティの分析に活用するに あたっては、地域コミュニティの固有の問題や分析に必要な要素を加味したリー ダーシップ好循環モデルの応用モデルを検討する必要があるからである。併せて、

実証分析において事例研究法を用いる理由や事例選択の妥当性などについても言 及した。リーダーシップ好循環モデルの応用モデルは次のとおりである(図1)。

(注)変革型リーダーシップ=TFL, サーバント・リーダーシップ=SVL, シェアド・リーダーシップ=SL

図1 リーダーシップ好循環モデルの応用モデル

(出典)筆者作成

そして、第5章から第7章にかけては、徳島県内の地域コミュニティの再生・

活性化において一定の成果を上げ、全国からも多くの視察者を受け入れている4 つ事例(伊座利集落、上勝町、神山町、美波町)を対象に、分析枠組としてのリ ーダーシップ好循環モデルの応用モデルの有効性について検証を行った(表1)。

ハイブリッド型リーダーシップ(Ⅲ)(SL×TFL)へ移行 硬直化現象を打破する地域プラットフォームへ改革 学習・伝承システムによる次代への知見・ノウハウの伝承

衰退・停滞期からの脱却

・地域リーダーたちの地域に対する強い愛着

・フォロワーとの組織・集団の共通目標や危機意識の共有

・自律・分散・協調的活動の促進 革新的再興期

成長・安定期 ハイブリッド型リーダーシップ(Ⅱ)(SL×SVL)へ移行

・成長・安定を維持する地域プラットフォームの構築

・創発的価値創造活動に伴う知見・ノウハウの蓄積

ハイブリッド型リーダーシップ(Ⅰ)(SL×TFL)の発揮

・衰退・停滞を打破する地域プラットフォームの構築

・知見・ノウハウ蓄積のための学習・伝承システムの構築

“次の”

革新的再興期

安住すれば衰退

失敗すれば衰退

衰退・停滞期 脱却

動かなければ崩壊

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5 表1 実証分析による事例別検証結果比較表

事例 フェーズ

現状(◎),移行中(〇), 模索中(△)

リーダーシップ好循環モデルとの適合性 との適合性

高い(◎),普通(〇),低い(△)

リ ー ダ ー シ ッ プ・スタイルの 革 新 的 特徴

再興期

安 定 成 長期

“次 の”

革新的 再興期

変化 する

権限 に依 拠せ

自律 分散

協調 総合 的判

伊座

概ね 支持

革新的再興期 SL×TFL 成長・安定期 SL×SVL 上勝 部分

的に 支持

革新的再興期 単独TFL 成長・安定期 SL×SVL

(*広義のSL)

神山 概ね 支持

革新的再興期 SL×TFL 成長・安定期 SL×SVL 美波 概ね

支持

革新的再興期 SL×TFL 成長・安定期 SL×SVL

(注)変革型リーダーシップ=TFL, サーバント・リーダーシップ=SVL, シェアド・リーダーシップ=SL

(出典)筆者作成

まず、伊座利集落の事例においては、地域コミュニティのシンボルである伊座 利校の人口減少に伴う廃校の可能性に対する危機意識の共有から始まり、住民全 員参加の仕組みづくり、共通の価値観・行動規範である「伊座利ウェイ」の確立 などのプロセスを踏んで、地域コミュニティの再創造活動が展開されてきた。そ して、地域愛着に溢れた複数の人々がリーダーとなり、革新的再興期にはシェア ド・リーダーシップと変革型リーダーシップを発揮し、成長・安定期にはシェア ド・リーダーシップとサーバント・リーダーシップを発揮するというリーダーシ ップ・スタイルの変化を確認することができた。ただし、現時点では、“次の”

革新的再興期に移行するためのリーダーシップ・スタイルの確かな変化は確認で きなかった。以上から、伊座利集落の再創造活動においては、リーダーシップ好

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循環モデルの有効性が「概ね支持された」との結論を得た。

次に、上勝町の事例におけるリーダーシップは、当初の革新的再興期において は、葉っぱビジネスの提唱者である横石のリーダーシップに依るところが大きく、

そのリーダーシップ・スタイルは単独の変革型リーダーシップであった。その意 味では他の事例とは異なり、シェアド・リーダーシップのスタイルとはなってい ない。その後、安定・成長期に移行するにつれて、横石自身が意識的にリーダー シップ・スタイルをサーバント・リーダーシップへと変化させるとともに、葉っ ぱビジネスを構成する3つの組織体のリーダーが得意分野で一定の役割を担う、

広義のシェアド・リーダーシップが実現している。現在、“次の”革新的再興期 に向けた取り組みも見られつつあるが、リーダーシップ・スタイルの確かな変化 を確認するにまでは至っていない。以上から、上勝町の事例における再創造活動 を対象にした、リーダーシップ好循環モデルの有効性については、「部分的に支持 された」と結論づけた。なお、上勝町の事例においてのみ、「部分的支持」とした のは、当該事例が革新的再興期には単独のリーダーによる変革型リーダーシップ によって再創造活動が展開され、安定・成長期に移行してからは広義のシェアド・

リーダーシップを基本としたサーバント・リーダーシップに移行するという、リ ーダーシップ好循環モデルの想定とは異なるプロセスを経ているためである。

そして、神山町の事例における再創造活動のリーダーシップ・スタイルは、地 元では「浮遊するリーダーシップ」と呼ばれている。これは、複数のリーダーに よるシェアド・リーダーシップである。また、そのリーダーシップは、個々のフ ォロワーに向き合い導くというよりも、フォロワーの自律・分散・協調的な活動 を促す地域プラットフォームを設計、維持、改善するリーダーシップとなってい る。革新的再興期は3期に分類できる。そのリーダーシップ・スタイルは、シェ アド・リーダーシップを基本とした変革型リーダーシップである。成長・安定期 に移行した後のリーダーシップ・スタイルは、シェアド・リーダーシップを基本 としたサーバント・リーダーシップである。現在、“次の”革新的再興期に向けた 具体的な行動に踏み出している。リーダーシップ・スタイルもシェアド・リーダ ーシップと変革型リーダーシップに変化しつつあるものの、確かな変化までは確

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認できていない。以上から、神山町の事例におけるリーダーシップ好循環モデル の有効性については、「概ね支持された」と結論づけた。

次に、美波町の事例についてリーダーシップのあり方を確認すると、行政、企 業、地域という異なる組織・集団に属する複数のリーダーが、地域コミュニティ 再創造のために連携して、公式的な権限に依拠しないシェアド・リーダーシップ を発揮している。革新的再興期は大きく2つの時期に分類されるが、そのリーダ ーシップは、シェアド・リーダーシップを基本とした変革型リーダーシップであ る。現在は、成長・安定期の時期にあたり、そのリーダーシップ・スタイルは、

シェアド・リーダーシップを基本としたサーバント・リーダーシップである。“次 の”革新的再興期に向けては模索中であり、リーダーシップ・スタイルの確かな 変化は確認できていない。以上から、美波町の事例におけるリーダーシップ好循 環モデルの有効性については、「概ね支持された」と結論づけた。

3.理論的含意

本研究の理論的な特色は、第1に、公式的な権限に依拠しないリーダーシップ の考察ということである。リーダーシップに関する理論的研究の対象は、特定の 目的達成のために組織化され、公式的な権限により統制されている企業や行政組 織が中心である。必然的にリーダーシップ研究も公式的な権限によるリーダーシ ップが前提となってくる。一方、本研究は、組織あるいは集団における、公式的 な権限によらないリーダーシップの有効性について考察を行っている。それは、

公式的な権限の有無に関わらず、換言すれば、仮に公式的な権限を持ち得たとし ても、それによらないリーダーシップのあり方を探求するものでもある。

第2の特色は、社会のダイナミックな環境変化に対応して、リーダーシップも ダイナミックに変化させていく必要があるという点である。状況に応じたリーダ ーシップの変化ということに関しては、状況/コンティンジェンシー・アプローチ があり、代表的なものに、Fiedler(1967)の LPCモデルや、House(1971)のPath-

Goal Theoryなどがある。それらの共通点として、「業績をあげる唯一無二のリー

ダー行動があるのではなく、状況に応じたリーダー行動が有効」(鈴木, 2018)と

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いう考え方があり、ある時点の状況を捉えて、タスク志向と人間関係志向の行動 の組合せでリーダーシップ・スタイルを論ずるものである。そうした意味では静 態的な分析といえる。そこには、基本的には時間軸の概念が組み込まれていない からである。その中にあって、Hersey Blanchard1977)の状況対応型リーダ ーシップ理論(Situational Leadership Theory)は、フォロワーの準備性(Readiness)

の度合い、すなわち、フォロワーの成熟度(職務に必要な能力・知識・技術の習 熟度や熟練度、態度や意欲の充実度)に注目する理論であり、時間軸を取り入れ た理論として知られている。本研究においては、Hershey Blanchard のメンバ ーの成熟度の発達過程に対応して有効なリーダーシップも変化するという考え方 を参考にしながら、個々の構成員の成熟度というよりも、組織あるいは集団の総 体としてのダイナミックスに適応したリーダーシップのあり方を探求するところ に特色がある。

これら2つの特色を軸として、組織あるいは集団の再生・活性化に資する、公 式的な権限に依拠せず、社会の環境変化に適応しダイナミックに変化するリーダ ーシップとして、新たに「リーダーシップ好循環モデル」を提示した。このリー ダーシップ好循環モデルは、リーダーとフォロワーとが水平的な関係の中で、フ ォロワーの自律、分散、協調的な活動を促すことで共通目標の実現を目指す、公 式的な権限に依拠しないリーダーシップである。そして、それは組織あるいは集 団の成長・発展に関わる全体プロセスの中で好循環をもたらす効果的なリーダー シップモデルであり、次の仮説により構成されている。第1に、停滞・衰退期の 状況にある組織あるいは集団を、革新的再興期に導くには、シェアド・リーダー シップと変革型リーダーシップのハイブリッド型リーダーシップが有効であるこ と、第2に、革新的再興期から成長・安定期に移行した後は、シェアド・リーダ ーシップとサーバント・リーダーシップのハイブリッド型リーダーシップが効果 的であること、第3に、成長・安定期に安住せず、“次の”革新的再興期を目指 すためには、シェアド・リーダーシップと変革型リーダーシップとのハイブリッ ド型のリーダーシップに切り替えること、の3点である。このように、リーダー シップ好循環モデルは、組織あるいは集団の成長・発展には、「停滞・衰退期➝革

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新的再興期➝成長・安定期➝“次の”革新的再興期」といった好循環の輪を実現 することが重要であり、これを実現するリーダーシップが、「リーダーシップ好循 環モデル」であることを示したところに、本研究の理論的含意がある。

4.実践的含意

分析モデルとしての「リーダーシップ好循環モデル」は、公式的な権限に依拠 せず、社会の環境変化に適応し変化するリーダーシップという特徴を持ち、組織 や集団を構成する人々の自律・分散的で協調的な活動を促進するリーダーシップ である。その対象は、会社や団体など様々な組織あるいは集団である。本研究の 実証分析においては、地域コミュニティを取り上げ、分析を行った。これは、地 域コミュニティのリーダーには会社組織の社長のような強い公式的な権限がない ことから、公式的な権限に依拠せず、衰退・停滞期にある組織あるいは集団を力 強く再生・活性化させるリーダーシップとは何かを探求するには相応しい対象と 考えたからである。そして、実証分析の結果、取り上げた4つの事例においては、

リーダーシップ好循環モデルの応用モデルの有効性が、「概ね支持された」または

「部分的に支持された」と結論づけたところである。今後、4つの事例の継続的 分析や、他の地域コミュニティの分析を行うことで、リーダーシップ好循環モデ ルの信頼度を高め、地域コミュニティの再創造活動に貢献できる可能性が得られ たことが、本研究における実践的な含意である。

5.残された課題

残された課題は6点である。第 1 に、本研究では対象事例が成長・安定期から

“次の”革新的再興期に移行中または模索中であり、リーダーシップ好循環モデ ルの“次の”革新的再興期におけるハイブリッド型リーダーシップ(Ⅲ)の確か な変化までが確認できていない。本研究での事例はもとより、全国的な視野から 新たな事例も対象に加え、その存在を確認することでリーダーシップ好循環モデ ルの分析枠組としての信頼性を高めていく必要がある。第2に、本研究では徳島 県内の地域コミュニティの再創造活動を対象に分析を行った。一定の成果を上げ

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ているある種の逸脱事例である。リーダーシップ好循環モデルの理論の一般化と 精緻化を図っていくには、失敗事例も対象とし、リーダーシップ好循環モデルと 照らし合わせながら、その直接的な失敗要因はもとより、地域の歴史的文化的な 背景などを含めた分析を行う必要がある。第3に、リーダーシップ好循環モデル は、組織や集団の置かれたフェーズに関わらずシェアド・リーダーシップを基本 としている。これはシェアド・リーダーシップが、リーダーとフォロワーが立場 を入れ替えつつ協働して活動を展開していくリーダーシップであり、他のリーダ ーシップと効果的に組み合わせることで、多様な人々が構成する組織や集団の再 生・活性化に有効であると考えたからである。研究開発チーム・リーダーの変革 型リーダーシップがシェアド・リーダーシップに正の影響を与えるとの先行研究 もあるが、より一般化した組織や集団を対象にしたものやサーバント・リーダー シップとの関係性などについての研究は現時点では確認できていない。今後、シ ェアド・リーダーシップと、変革型リーダーシップやサーバント・リーダーシッ プとの関係性について、定量的手法も含め分析を試み、シェアド・リーダーシッ プを基本とすることの意義をより明確にしたい。第4に、シェアド・リーダーシ ップは流動性、多様性、自律性といった「分化」を柱としたリーダーシップであ ることから、目標の共有化といった「統合」とのバランスが取れないと効果を発 揮しない。「分化」を阻害しない共通目標を、誰が、どのような内容で、いかに設 定するのかを明らかにすることは、リーダーシップ好循環モデルの実践面での有 効性を高めるためには不可欠であり、その検討を行いたい。第5に、リーダーシ ップ好循環モデルを活用し、企業や団体など一般的な組織あるいは集団を対象に 実証分析を行うことで、より汎用性の高い分析モデルの構築を行っていきたい。

また、その構築にあたっては、可能な限り定量的分析を試みるなど、リーダーシ ップ好循環モデルにおけるリーダーシップ・スタイルの変化のメカニズムを総合 的に考察することで、理論的な精緻化を図っていきたい。第6に、リーダーシッ プ開発の先行研究を踏まえ、リーダーシップ好循環モデルに相応しいリーダーシ ップ開発とは何かについて研究を進める必要がある。以上の課題に真摯に取り組 むことにより、リーダーシップ論研究と実践課題解決へ貢献していきたい。

参照

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