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北海道遺産「PMF」を活用した小学校社会科の単元 構成の開発 : 第6学年の学習内容として

著者 菊地 達夫

雑誌名 北翔大学教育文化学部研究紀要 

号 5

ページ 25‑32

発行年 2020

URL http://doi.org/10.24794/00002971

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北翔大学教育文化学部研究紀要 第5号 2020

北海道遺産「PMF」を活用した 小学校社会科の単元構成の開発

―第6学年の学習内容として―

Development of Unit Composition of Elementary School Social Studies Utilizing Hokkaido Heritage “PMF”

菊 地 達 夫

K

IKUCHI

Tatsuo

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北翔大学教育文化学部研究紀要第5号 Bulletin of Hokusho University

School of education and culture department No.5

令和2年1月 2020 January

Ⅰ はじめに

 平成29年告示小学校学習指導要領は,令和2年度より,完全実施となる。現在,小学校は,

移行期間であり,学習内容の改訂に応じて授業開発等の思考錯誤が続いている。

 社会科では,社会的事象を理解する過程で,社会的な見方・考え方を重視した。学習内容 は,「地理的環境と人々の生活」,「歴史と人々の生活」,「現代社会の仕組みや働きと人々の生 活」に整理(中心的内容)し区分した。各単元は,中心的内容として,地理的内容,歴史的内 容,公民的内容いずれかに当てはまることになった。他方,区分が明確となった分,他の内容 との関係性がみえにくくなった。よって,学習内容の関連付けとして,どのような教材を用い るべきか,どのように児童の思考を揺さぶるべきか,授業開発研究の増加が期待される。

 本稿では,第6学年の国際協力・国際交流の内容に着目する。その理由として,グローバル 化が叫ばれて久しいものの,世界の地域認識に関する学習内容はますます重要性が高まってい る。

 ところで,小学校社会科における国際協力・国際交流に関する単元構成・授業開発研究,実 践には,以下のようなものがある。

 田渕(2016)は,第4学年「県の様子」として,姫路市の国際姉妹都市との関係性について 思考・判断させる授業開発を行った。具体的には,姫路市と他都市との国籍別外国人数を比較 し,総数や外国数に着目させた。その結果,「なぜ,姫路市は,多くの外国人が住んでいるのか」

という学習課題を設定し,国際姉妹都市との国際交流の関係性が影響していることに気付かせ ようとした。田本(2017)は,第6学年の「国際協力・国際交流」として,「自衛隊が,様々 な国で貢献していること」に気付かせる内容の授業開発を行った。また,その過程では,自衛 隊の新たな任務である「駆けつけ警護」について議論することも盛り込んだ。佐藤(2019)は,

世界の地誌学習を中学年から導入し,第5学年の学習内容で深める提案をしている。また,学

北海道遺産「PMF」を活用した 小学校社会科の単元構成の開発

―第6学年の学習内容として―

Development of Unit Composition of Elementary School Social Studies Utilizing Hokkaido Heritage “PMF”

菊 地 達 夫

K

IKUCHI

Tatsuo

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菊地:北海道遺産「PMF」を活用した小学校社会科の単元構成の開発

習内容として,外国の生活・文化を取り上げることが有効であると指摘している。

 他方,国際交流そのものを教材とする研究は,少ない。その原因の一つとして,昭和52年版 小学校学習指導要領以降,「世界の諸地域学習」が無くなったことが大きい。現行課程では,中・

高学年の社会科において,部分的に世界を扱う内容はあるものの,大幅に縮小した。こうした 背景が,国際協力・国際交流に関する授業開発研究の少なさに影響していると考えられる。

 本稿では,北海道遺産「PMF」を活用した小学校社会科の単元構成の開発を行う。北海道 遺産である「PMF」とは,音楽を介した国際交流活動である。教材活用として,第6学年の「グ ローバル化する世界と日本の役割」の場面で取り上げる。以下では,学習方法の視点や単元構 成の考え方を示し,単元構成の具体として,関係する学習指導要領の内容,教材の概要,単元 構成の内容,開発意義の順で述べる。最後に本稿の成果を整理する。

Ⅱ 学習方法の視点と単元構成の考え方 1 学習方法の視点

 本稿では,学習方法の視点として,中心的内容(公民的内容)から,他の内容へ,どのよう に関連付けを行うか,具体例を示すことを重視した。

 1つは,地理的内容との関連付けである。PMFは,若手音楽家を育てる国際音楽教育祭で ある。約30年の歴史を有するが,その間,どの地域の出身者が多いのか,また,経年的変化に おいて,地域の偏在はあるのか,調べ地図化(分布図)を行う。結果,その過程において,地 理的な見方・考え方を発揮できる。

 2つは,歴史的内容との関連付けである。PMFの活動について,設立から現在まで調べ年 表化し,段階的な発展の構造化を行う。結果,その過程において歴史的な見方・考え方を発揮 できる。

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2 単元構成の考え方

 本節では,単元構成の考え方について示す。単元は,4時間構成とし,中心的内容(公民的 内容)を導入部(1時間)に,関連内容(地理的・歴史的内容)を展開部(2時間)及び終末 部(1時間)に位置付けた。見方・考え方は,導入部において事象の役割・価値,展開部にお いて事象の設立・変容,分布の広がり・変化,終末部において事象の持続的発展・可能性に重 点を置いた。評価では,導入部において知識・技能,思考力・判断力・表現力,展開部におい て知識・技能,終末部において学びに向かう力に重点を置いた。

 すでに述べたように,今回の事象とは,国際交流活動(PMF)である。

Ⅲ 単元構成の具体 1 単元構成に関係する学習指導要領の内容

 すでに述べたように,単元構成に関係する学習指導要領は,第6学年「グローバル化する世 界と日本の役割」の内容である。知識に関する内容では,「~文化などを通して他国と交流し,

異なる文化や習慣を尊重し合うことが大切であることを理解すること」が関係する。技能に関 する内容では,「地図帳や地球儀,各種の資料で調べ,まとめること」が関係する。

 思考力・判断力・表現力等に関する内容では,「~日本の文化や習慣との違いを捉え,国際 交流の果たす役割を捉え,表現すること」が関係する。

 「グローバル化する世界と日本の役割」の場合,「現代社会の仕組みや働きと人々の生活」(公 民的内容)のうち,国際交流が中心軸で,「我が国の国際協力」は政治,「外国の人々の生活の 様子」は「地理的環境と人々の生活」(地理的内容)の世界に関連する。

表1 単元構成の考え方(4時間構成)

   見方・考え方の視点 学習内容の重点 評価の重点 導入(1時間) 事象の役割・価値 中心的内容(公民的内容) 知識・思考 展開(2時間) 事象に関する設立・変容 関連内容(歴史的内容)

設立~現在 知識

事象の分布の広がり・変化 関連内容(地理的内容)

分布の偏在・変容 終末(1時間) 事象の持続的発展・可能性 関連内容(歴史的内容)

現在~未来 学び

注)知識=知識・技能 思考=思考力・判断力・表現力等 学び=学びに向かう力・人間性等

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菊地:北海道遺産「PMF」を活用した小学校社会科の単元構成の開発

2 単元構成を貫く教材の概要

 本節では,単元構成を貫く教材であるPMFの概要について述べる。PMFとは,パシフィッ ク・ミュージック・フェスティバルの略称である。北海道遺産には,第3回選定分(2018年)

として選ばれたものである。北海道遺産協議会によれば,選定理由として以下の内容を挙げて いる。

 PMFは,近代開拓期から札幌を背景に形成されてきた都市文化を物語るストーリーの一つ として位置付けることができる。具体的には,世界的指揮者レナード・バーンスタインでの提 唱で創立され,世界のアーティストを札幌に集め,音楽を世界水準に高めることを目的とし,

多くの地域住民によって支えられ活動してきた28年間の活動実績と未来の音楽家を応援し育て 続けている仕組みについて高い評価を得た。また,道内各地の北海道遺産でのコンサート活動 といった既存の遺産との連携による広がりなどといったシェアリングヘリテージも期待されて いる。

 北海道遺産の目的(主旨)は,有形・無形の様々な遺産を,多様な人々がシェア(共有)す る仕組み(シェアリングヘリテージ)をつくることで,北海道の「宝物」を次世代に継承する ことを挙げている。なお,シェアリングヘリテージとは,特定の個人や団体,地域によって所 有・管理されている文化遺産を,観光や教育,企業活動などを通じて多様な人々とシェア(共 有)することで,新たな価値を創造することである。とりわけ,地域を物語るストーリーを明 らかにすることでシェアを促進することができ,持続可能な遺産の保全・継承および地域の持 続性や更なる発展を図ることが期待されている。

 第3回の応募には,64件あり,そのうち15件を選定した。結果,第1・2回分と合わせ67件 の北海道遺産が分布する。第3回選定の視点では,①【過去】北海道にとっての価値(ストー

表2 関係する学習指導要領の内容

(3)グローバル化する世界と日本の役割について,学習の問題を追究・解決する活動を通して,次 の事項を身に付けることができるよう指導する。

ア 次のような知識及び技能を身に付けること。

(ア)我が国と経済や文化などの面でつながりが深い国の人々の生活は,多様であることを理解す るとともに,スポーツや文化などを通して他国と交流し,異なる文化や習慣を尊重し合うこ とが大切であることを理解すること。

(イ)我が国は,平和的な世界の実現のために国際連合の一員として重要な役割を果たしたり,諸 外国の発展のために援助や協力を行ったりしていることを理解すること。

(ウ)地図帳や地球儀,各種の資料で調べ,まとめること。

イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。

(ア)外国人の人々の生活の様子などに着目して,日本の文化や習慣との違いを捉え,国際交流の 果たす役割を捉え,表現すること。

(イ)地球規模で発生している課題の解決に向けた連携・協力などに着目して,国際連合の働きや 我が国の国際協力の様子を捉え,国際社会において我が国が果たしている役割を考え,表現 すること。

資料)平成29年告示小学校学習指導要領解説社会編。

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リー),②【現在】地域の思い入れ(担い手),③【未来】持続可能性(アクションプラン)を 重視している。

3 単元構成の内容

 単元構成の内容として,授業を通じて獲得する知識とそれに対する問い(発問)の関係性を 示した。続いて,それをもとに授業展開(教員・児童の動き)を構造化した。

 単元目標は,「国際交流活動としてのPMFの役割・価値(北海道遺産)について,思考・理 解することができ,その歴史,地域的特色,持続的発展について資料を活用して思考・判断・

表現ができる」こととした。

 導入部では,公民的内容として,PMFの国際交流活動の役割・価値について思考・理解さ せる。具体的には,PMFの概要を説明し,音楽を通じた国際交流活動であることを触れる。

その上で,PMFの国際交流活動としての役割・価値について予想させる。続いて,資料(PMF 組織委員会)を用いて,国際交流活動の役割・価値を調べさせ,発表共有を行い,それらにつ いて知識定着を図る。役割としては,「世界のアーティストを札幌に集め,音楽を世界水準に 高めることに貢献してきたこと」,価値としては,「アカデミー生は世界各地で活躍し,北海道

(札幌)から世界に発信する文化事業として成長できたこと」が挙げられる。

 展開部では,第1時として歴史的内容を取り上げ,PMFの設立と段階的な発展過程を思考・

判断させる。具体的には,PMFの活動場所は,当初,中国(北京)であったことに触れる。

その後,「なぜ,中国・北京から日本・札幌」となったのか,疑問を投げかける。政治・歴史 資料をみて,歴史的事実(1989年中国天安門事件/民主化弾圧)の影響に気付かせる。続いて,

PMFの歴史/年表(PMF組織委員会資料)をみて,第1期の任意団体(1991年),第2期の文 部科学省(文化庁)認可財団法人(2002年),第3期の内閣府所管の公益財団法人(2010年)と いった組織変化を経て発展してきたことを確認する。その上で,どのように活動内容を広げて きたのか,思考・判断させる。

 第2時として地理的内容を取り上げ,PMFの参加者(アカデミー生)の出身地や推移につ いて思考・判断させる。まず,資料(PMF組織委員会資料)をみて,これまで世界77ヵ国・

表3 パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)の概要

パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)

~豊かな風土に根ざした世界につながる教育音楽祭~

 パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)は,20世紀を代表する音楽家,レナード・

バーンスタインが1990年に創設した国際教育音楽祭。毎年夏の1カ月間,世界中から厳しいオーディ ションで選ばれた若手音楽家(アカデミー生)が札幌に集い,欧米トップオーケストラで活躍する 首席奏者等の指導を受ける。その成果は,札幌を中心に道内各地の演奏会で披露され,北海道の夏 の風物詩として定着。これまで参加したアカデミー生は総数3,500名を超え世界各地で活躍中。北海 道から世界に発信する文化事業として成長している。

資料)北海道遺産協議会資料。

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菊地:北海道遺産「PMF」を活用した小学校社会科の単元構成の開発

地域,延べ3500人以上の参加があったことを確認する。その上で,出身地の偏在(多少)につ いて資料を通じて思考・判断し,地図化させる。

 終末部では,歴史的内容を取り上げ,北海道遺産PMFの価値・可能性について思考・追究 させる。まず,PMFが北海道遺産に選定された理由について予想させる。続いて,資料(北 海道遺産協議会)を用いて,選定理由を調べさせ,発表共有を行い,それらについて知識定着 を図る。その上で,北海道遺産PMFの持続的発展について追究させる。

単元目標(説明的・概念的知識に対する問い)

 国際交流活動としてのPMFの役割・価値(北海道遺産)について,思考し理解することが でき,その歴史,地域的特色,持続的発展について資料を活用して思考・判断・表現ができる。

表4 単元構成の内容における問い(知識)の構造

具体的知識に対する問い

(学習課題/主発問) 具体的知識の素材に対する問い

(学習課題の部分/補助発問) 評価 導入

第1時 ・国際交流活動としてのPMFは,

どのような役割・価値があるの だろうか。

・国際交流活動としてのPMFの 役割は何か

・国際交流活動としてのPMFの 価値は何か

知識 思考

展開 第1時 第2時

第1時

・PMFは,どのような理由で誕生 し,その後,どのように発展し てきたのだろうか

第2時

・PMFに 参 加 し て い る 人 た ち に は,どのような地域的特色があ るのだろうか

第1時

・PMFの誕生のきっかけは,何 か

・PMFは,誕生後,どのような 発展の段階を遂げたか 第2時

・PMFの参加している人たちの 推移は,どのように変化してき たか。

・PMFの参加している人たちは,

どのような国・地域の方が多い のか

知識

(技能)

知識

(技能)

終末

第1時 ・北海道遺産であるPMFは,今後,

どのような役割を期待できるだ ろうか

・北海道遺産としてのPMFの価 値は,どのようなところにある か

・その価値を広めるには,どうし たらよいか

学び

知識=知識・技能 思考=思考力・判断力・表現力等 学び=学びに向かう力・人間性等

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表5 授業展開(教員・児童の動き)の構造

教員の動き(教員→児童) 児童の思考・知識,追究の過程 導入

展開 第1時

第2時

終末

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菊地:北海道遺産「PMF」を活用した小学校社会科の単元構成の開発

4 単元構成の開発意義

 単元構成の開発意義は,2つある。1つは,北海道遺産を活用した社会科教材としての視野・

拡大の可能性を示すことができた点である。北海道遺産をはじめとする文化遺産は,教材化と して歴史的内容が中心となりやすい。今回,中心軸を公民的内容とし,そこから歴史的内容や 地理的内容につなげることができた。そこで,歴史的な見方・考え方や地理的な見方・考え方 を加えることができた点は大きい。

 2つは,学習内容や評価の調整バランスを示すことができた点である。単元構成では,歴史 的内容2時間,公民的内容1時間,地理的内容1時間として大きな偏りが生じないようにした。

また,評価では,知識・技能,思考力・判断力・表現力等,学びに向かう力・人間性等の3観 点に変更となることを見据え,知識,思考・判断(情報選択),技能(資料活用),表現(収集 した情報の整理),学習意欲に関する場面を入れることができた。

Ⅳ おわりに  本稿の成果は,以下に示す内容である。

 今回の学習指導要領では,学校段階,教科段階の系統化をふまえた改訂となった。とりわけ,

小学校社会科の内容は,中学校社会科の各分野への接続が明確となった。他方,公民的内容,

歴史的内容,地理的内容といった横のつながりは希薄となった感がある。結果,社会科の有す る総合性が弱まった。その点の課題解決の一助となる単元構成を具体化できた。

 また,単元構成の具体化にあたり,学習方法の視点と単元構成の考え方,それをふまえて,

学習内容に関する問い(知識)の関係性,さらには授業展開(教員・児童の動き)の構造を示 すことができた。とりわけ,授業実践を行う上で,具体となる指導のイメージ化ができた点は 大きい。

 今後は,この単元構成を授業実践した上で生じる課題の抽出とその解決に向けた改善策の検 討・提示が必要となってくるであろう。

文献

佐藤浩樹(2019):『小学校社会科カリキュラムの新構想―地理を基盤とした小学校社会科カリ キュラムの提案―』学文社.

田渕博宣(2016):国際交流都市・姫路市を事例として、社会科教育12月号、pp.36-39.

田本正一(2017):正解がない市民的課題への探究、社会科教育5月号、pp.54-57.

吉水祐也編(2018):『地理が苦手な先生のための中学社会地理的分野の授業デザイン&実践 モデル』明治図書.

参照

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