ロッキード事件最高裁判決を契機として
伊藤博路
目 次 得ない3」と判示したのである。
一 問題の所在 このように最高裁は,嘱託尋問調書の伝聞性を 1 問題意識 問題とする以前に嘱託尋問調書の証拠能力を否定 2 事実経過 する。もっとも,この判決には,大野裁判官によ ニ アメリカ法における証人対質権 る次のような補足意見が付されている。
1 概要 すなわち,「手続の公正と証人に対する被告人 2 連邦最高裁判例の動向 の審問権を尊重すべき刑事裁判の本質的機能を考 3 理論的分析 えるとき,本件嘱託証人尋問調書の証拠としての 三 アメリカ法の検討と試論 許容性は,以下の2点において否定されるべきで 四 結語 ある4」。1つは,法廷意見と同様に,刑事免責を
与えて得たことが「公正の観念に反する5」とい 一 問題の所在 う点。そして2点目として,「被告人の反対尋問
1 問題意識 権及び対審権の保障という面からも問題があると 平成7年2月22日,ロッキード裁判丸紅ルート いわざるを得ない6」と指摘したうえで次のよう についての最高裁判決1が下された。本事件の主 に述べている。
役である元首相を欠いた裁判は,事件発覚から19 「本件嘱託証人尋問調書は,… 被疑者及び 年を経てようやく最終結論に到達した。 弁護人の立会いなしに,すなわち,その審問を受 ロッキード裁判は,事件の重大性,特異性から けることなしに… 行われている。また,本件 様々の法律問題を投げかけてきたが,その最大の において,証人とされたコーチャン,クラッター 争点とされたのは,いわゆる嘱託尋問調書の証拠 はいずれも,もともと来日の意思を有せず,我が 能力であった。そして,これまで刑事訴訟法321 国の裁判所に証人として出廷する意思のないこと 条1項3号の適用により同調書の証拠能力を認め を明示していた。… 前記両証人について,我 てきた下級審の判断を,今回最高裁は明確に否定 が国の法廷において,被告人及び弁護人がこれに した。大法廷は,「共犯等の関係にある者のうち 対質して反対尋問する機会がないことは,嘱託し の一部の者に対して刑事免責を付与することによっ た当時からあらかじめ明らかであったのである。
て自己負罪拒否特権を失わせて供述を強制し,そ もっとも,嘱託証人尋問に際しては,証人の依頼 の供述を他の者の有罪を立証する証拠とする制 した弁護士である代理人が在廷していたが,これ 度2」について,「我が国の刑訴法は,この制度に は証人の法的利益擁護のためであって,場合によっ 関する規定を置いていないのであるから,結局, ては共犯者たる証人と利害が対立することのある この制度を採用していないものというべきであり, 被告人の法的利益を擁護するためのものではない 刑事免責を付与して得られた供述を事実認定の証 から,これをもって反対尋問権の保障に資するも 拠とすることは,許容されないものといわざるを のであるとは到底いえない。このように,当初か
ら我が国の法廷における被告人,弁護人の審問の あると解するのが従来の通説であった。証人審問 機会を一切否定する結果となることが予測されて 権および伝聞法則は,反対尋問権の保障を中心に いたにもかかわらず,その嘱託証人尋問手続によっ 考慮する点では共通するが,証人審問権は被告人 て得られた供述を我が国の裁判所が証拠として事 にのみ認められる権利であるため,伝聞証拠が有 実認定の用に供することは,伝聞証拠禁止の例外 罪の方向のものである場合には,証人審問権の観 規定である刑訴法321条1項各号に該当するか否 点から厳格に合憲性を検討する必要がある。しか か以前の問題であり,公共の福祉の維持と個人の し,伝聞例外に該当するか否かを一切考慮せず,
基本的人権の保障とを全うしつつ事案の真相を明 同項の直接的な適用により証拠能力を否定すべき らかにすべきことを定めている刑訴法1条の精神 場合があるかどうかといった問題意識は,これま に反するものといわなければならない7」。 で希薄であったように思われる。
しかし,このような2点目の見解の問題点は, そこで,本稿では,本件嘱託尋問調書の問題を,
従来の判例によればおよそ問題とはならないはず 被告人の証人審問権との関係を中心に検討する。
のものである。まず,本件嘱託尋問調書が伝聞証 その際,わが国の憲法が保障する証人審問権に大 拠であることはいうまでもないが,伝聞であるな きな影響を与えたアメリカ法を参考にする。
らば,大野裁判官のいうように,憲法37条2項の アメリカ合衆国憲法修正6条には,「総ての刑 被告人の証人審問権の問題が生じる。これは,ロッ 事訴追の場合に,・… 被告人は,自己に不利 キード裁判でも被告人側が争った論点の1つであっ な証人に対質する… 権利を有する。」との規 た。従来の判例によれば,被告人側の反対尋問を 定が盛り込まれている9。これは一般に証人対質 経ない公判廷外供述,すなわち被告人の証人審問 権条項といわれるものであるが,わが国の規定す 権を侵害していると考えられる伝聞証拠であって る証人審問権と類似しており,わが国の憲法の制 も,伝統的に合理的と考えられる伝聞例外に該当 定過程にも大きな影響を与えたと考えられている。
すれば証拠能力が肯定され,被告人の証人審問権 ところで,アメリカでは,被告人の証人対質権に の侵害は否定されることになる。そこで,伝聞法 ついては,この条項の解釈の問題として活発な論 則を形骸化しないために,有罪の方向の証拠の場 議がなされてきた。先に述べたようなわが国の憲 合には,反対尋問権の保障の観点から,伝聞例外 法の立法経緯に鑑みれば,証人審問権の問題を考 の要件が厳しく検討されるべきである,というの える際に,母法国アメリカの論議は,大いに参考 が通説的な理解である。すなわち,証人審問権の となろう。このようにして,アメリカ法を参考に 問題は,あくまで伝聞法則の枠組みの中の一要素 しながら,本件嘱託尋問調書を素材とし,証人審 として考慮するのである。しかし,大野裁判官は, 問権について比較法的考察を加えることが本稿の 本件嘱託尋問調書について,被告人側の反対尋問 課題である。ただし,この点をおし進めていくと,
の機会を否定する方法で得られた点を重視し, 証人審問権と伝聞法則の関係という重大なテーマ
「刑訴法321条1項各号に該当するか否か以前の問 に到達するが,この問題について本稿で十分な検 題である8」として証拠能力を否定すべきである 討を行うことは紙面の都合上不可能であるため,
と述べている。この見解によれば,被告人の証人 今回は言及しないことを予めお断りしておかなけ 審問権の保障を規定する憲法37条2項前段の直接 ればならない。
的な適用により,伝聞例外に該当するか否かを検 以下では,まず,問題の前提として,本嘱託尋 討するまでもなく,証拠能力を否定する場合があ 問調書の作成の経緯について概観する。
ることを認めることになる。同項は,実質的に被
告人の反対尋問権を保障したものであり,これを 2 事実経過
具体化したものが刑訴法320条1項の伝聞法則で 昭和51年5月22日,東京地検は,任意の取調べ
に応じないコーチャン,クラッターらに対し,刑 合衆国憲法修正6条に規定される被告人の証人 訴法226条による証人尋問を東京地裁の裁判官に 対質権は,反対尋問権を中心とするものである。
請求した。ところが,刑訴法には,外国の裁判所 連邦最高裁は,これまで被告人側の反対尋問権を に証拠調べの請求が嘱託できるという規定が置か 重視し13,かつこの権利をしばしば強調してきた れていない。そこで,同地裁裁判官は「外国裁判 のである14。また,最高裁は,反対尋問が効果的 所ノ嘱託二因ル共助法」(明治38年公布施行)な になされることにより,証人の証言に含まれてい どをも根拠とし,アメリカの管轄司法機関に対し る種々の問題点が明らかとなること15,時には,
て合衆国法典28編1781条以下に基づく尋問(嘱託 証人対質権条項は,被告人が自己に有利な証拠を 尋問)を依頼した。その際同裁判官は,検察側 提出する際においても考慮されること16を判示し の希望を容れ,被疑者・弁護人の立会いを禁じた てきた。
うえで証人尋問してほしいとの旨をアメリカ側に 証人対質権についての問題は,有罪の方向で伝 伝えている。 聞が用いられる場合に生じる。これは,証人対質
この嘱託を受けたキャリフォーニア州中央地区 権が,被告人に固有の権利であることによる当然 連邦地方裁判所所長は,退任判事であるケネス・ の帰結である。そして,そのように伝聞が用いら チャントリーを執行官に指名し,コーチャンらの れるのであれば,被告人が自己に不利な証人と対 嘱託尋問を行わせようとした。しかし,コーチャ 面しかつ反対尋問を行う権利を侵害する危険があ ンらが日本で刑事訴追を受ける虞があることを理 る。修正6条の「証人に対質する」という文言が,
由として証言を拒否したため,連邦地裁所長ファー 公判廷で証言する証人以外の者にも適用されると ガソンは,日本側に「日本国領土内において起訴 考えるならば,そのような伝聞供述が事実認定に されることがない旨を明確にした日本国最高裁判 用いられることによる証人対質権の侵害は明らか 所のオーダー又はルール」1°の提出を要求してき であろう。たとえその文言が狭く解され,公判廷 た。そこで,起訴便宜主義を定める刑訴法248条 で証言する者のみを意味するとしても,その者が を基盤とした東京地検検事正,検事総長,最高裁 伝聞供述について証言することを認めるならば,
作成の計4通の「不起訴宣明書」が生まれること 反対尋問権が侵害されることになる。なぜなら,
となったのである11。 公判廷で証言する者に,他者の供述内容について 以上,嘱託尋問調書が作成されるまでの事実経 反対尋問しても,証人の供述に含まれる伝聞供述 緯について概観した。このようにして生まれた嘱 の真実性や正確性を,確かめることはできないか 託尋問調書を,証人審問権との関係から比較法的 らである。そして,同一の証人による以前の供述 な分析を行うため,以下で,まず,アメリカ法の でさえも,反対尋問は「即時になされる」ことが 議論を見てみることにしよう。 大切であると考えられるので,伝聞供述について
と同様の考慮が必要であることになる。
ニ アメリカ法における証人対質権 これらの問題点は,証人対質権と伝聞法則につ ここでは,まず,合衆国憲法修正6条に規定の いての最も基礎的な問題点を生じさせるものであ 置かれている証人対質権に関するアメリカの議論 る。すなわち,証人対質権条項は,被告人に,伝 の概要について触れ,次に,この点についての連 聞を証拠から排除する権利を与えるのかというも 邦最高裁判例の動向を概観する。その後に,証人 のである17。
対質権の理論的分析を行う。なお,以下の記述は, 2 連邦最高裁判例の動向
ミューラーとカークバトリックのまとめに依ると 現在,証人対質権に関する連邦最高裁判例から ころが大きいことを,前以てお断りしておく12。 は,5つの主要な問題点を抽出できる。それらの
1 概要 問題点は,最高裁が証人対質権と伝聞法則とを調
和するものであると考えている初期の判例におい 判決は,公判廷外の反対尋問が,証人対質権条項 て現れている18。初期の判例の1つにおいて,最 を充たすものであることを示唆する。現在は,検 高裁は,従来とは全く異なる考えを示し19,その 察官が,証人を法廷に出頭させるかまたは証人の 後のいくつかの判例も,特定の条件の下において 利用不能を示すかをしなければならない場合を除 憲法の観点から伝聞証拠の証拠能力を否定するに いて, (先のバーバ判決の傍論を拒絶しながら)
至るのである2°。 一般に公判廷外で反対尋問が行われた供述の証拠 また,以下に述べる問題点は,1960年代ウォー 能力を肯定してきている。また,ポインター判決 レン・コートでさかんに論じられたが,その間に, は,公判廷外での反対尋問の機会が充分なもので 証人対質権の主要な論点のほとんどが形成された あることが必要であると判示しているが,この点
ことも注目に値しよう。 の具体的要件を明らかにすることは,きわめて難 まず,証人対質権条項は,被告人に,公判廷に しく未解決の問題とされている23。
在廷しかつ証人と対面し反対尋問を行う権利を与 公判廷において遅れてなされた反対尋問が,証 える。他方,検察側には,証人保護のための手段 人対質権条項を充たすかどうかの問題は,1970年 を用いることも認めている。古い判例でさえも, のグリーン判決(California v. Green),およ この被告人の公判廷への出頭と反対尋問の重要性 びその後のいくつかの判例において現れた。その を強調している。他方,現在の判例の1つは,出 最も重要な点は,グリーン判決で争点とされた,
頭の概念の範囲を証言する際の証人の立場を考慮 公判廷での証言は,被告人を無罪にする傾向をも して広げ,このことにより,その後の判例には, つ内容のものであるのに対し,以前の公判廷外供 報復について心配している証人を保護すること, 述および予備審問における証言の供述内容は,こ
さらには,公判廷で被告人と対面することを恐れ れとは正反対に,被告人を有罪にするものである る幼い証人に間接的な証言方法によることを認め 場合に,この以前の不一致供述に証拠能力を認め たものがある。このようにして見ると,証人対質 るか否かの問題である。そして,このような点に 権にも,証人保護の観点から一定の制約があるこ ついて争われた事案において,最高裁は,以前の とが分る。 不一致供述についての公判廷において遅れてなさ 次に,最高裁は,公判廷外においてのあるいは れた反対尋問は,証人対質権条項を充たすと判示 遅れてなされた(prior or deferred)反対尋問 してきているのである盟。
によっても,証人対質権が充たされると判示して 3つ目に,公判廷外供述を証拠能力を制限した いることがある。公判廷外での反対尋問について, うえで用いる場合に,その供述に対する被告人側 ポインター判決(Pointer v. Texas)は,持兇器 の反対尋問が不可能である場合,証人対質権を侵 強盗の事案であるが,被告人に弁護士が付される 害する可能性があるという問題がある。この点が 前の予備審問における証言を,州の裁判所が証拠 問題とされた判例のうち,次の2つには,被告人 採用したことにつき証人対質権の侵害を認めた。 を巻き込む共犯者の自白が含まれていた。まず,
ブラック裁判官は,「弁護人を通じて証人を充分 ダグラス判決(Douglas v. Alabama)で1ま,検 に反対尋問する機会が被告人に与えられた」とし 察側が,被害者を猟銃で射った者として被告人を たら,結論は「かなり異なるもの」となるであろ 巻き込んでいる既に有罪が確定した共犯者の自白 うと述べた21。しかし,その3年後に,最高裁は, 調書を,その共犯者の記憶を喚起するためと称し バーバ判決(Barber v. Page)の傍論で,予備 て公判廷で事実上朗読したことにつき,最高裁は,
審問での証言は,たとえ被告人側弁護人がその時 このように自白を用いることは証人対質権を侵害 に「実際に反対尋問を行った」としても証拠採用 することになると判示した25。次に,ブルートン できないだろうと述べるに至った22。ポインター 判決(Bruton v. United States)では,併合審
理で,被告人エヴァンズによる被告人ブルートン された伝聞をどのように取り扱うのか,という問 を共同犯行者として巻き込んでいる自白に証拠能 題意識の下に提示されている。次に,このような 力を認めることは,たとえ裁判官が,陪審に,そ 判例の提示する論点を,ミューラーとカークバト の自白はブルートンに対する証拠ではないことを リックの分類に依拠しつつ,理論的に分析してみ 説示したとしても,エヴァンズが証言しなかった よう。
ためにブルートンが反対尋問できなかったことを
考慮したうえで,ブルートンの証人対質権を侵害 3 理論的分析
することになると判示した26。 ①最も狭い理論(Minimalist theory)
第4に,証人対質権条項は,検察側に,証人の この説は,証人対質権条項は,生の証言について 以前の供述を提出することに優先して,その者を のみ適用され,公判廷外供述についてはその射程 公判廷に出頭させることを要求する。この点は, 範囲から外れるとするものである。すなわち,証 バーバ判決が契機となった。この判決で最高裁は, 人対質権条項は,被告人に,証人を公判廷に出頭 予備審問での証言を証拠請求する州の検察官は, させ反対尋問を行う権利を与えたのであって,検 たとえその証人が近くの州の連邦刑務所に収容さ 察官が,公判廷で証言する証人以外の供述証拠 れていて,容易に召喚できない場合であっても, (または他の証拠)を提出すること,あるいは公 公判廷にその証人を召喚するよう努力すべきであ 判廷で証言する同一人の以前の供述を,証拠とし ると判示した。以前の証言の伝聞例外は,供述者 て自由に用いることを妨げないと解することにな が利用不能のときにのみ適用されるが,バーバ判 る。このように同条項を最も狭く解すると,修正 決は,実際に,この要件に関する憲法上の基準を 6条の「証人」という文言は,公判廷外供述者を 確立したのである27。さらに,同判決は,伝聞法 含まず,公判廷で証言する者だけを意味すること 則上の諸要件を充たすことが,証人対質権を必ず になる。かなり以前に,ウィグモアがこの説を支 しも充たすことにはならないことについても明ら 持し29,かつては何人かの最高裁裁判官がこの説 かにしたのである。 を採用したが,現在の判例では,明確にこれを拒
さいごに,証人対質権条項は,時折,通常は許 絶するに至っている3°。
容されるであろう伝聞を排除し,他方,時折,通 ②証人の召喚を重視する理論(Production 常は排除されるであろう伝聞を許容する。後者の theory) この説は,証人対質権条項は,検察 判例として,先に述べたように1970年のグリー 官に,証人の公判廷外供述の証拠提出に優先して ン判決で,最高裁は,公判廷では記憶を喪失しか 利用可能な証人を召喚することを要求する。他方,
つ回避的であるように見えるが,以前には警察官 同条項は,証人として利用不能の場合については に対し被告人を巻き込む内容の供述を行い,かつ 何もいってはいないと解するものである31。現在 被告人の予備審問でも同様の証言をした証人につ の判例は,この説を拒絶している%
き、後者の予備審問における証言を証拠採用して ③信用性を重視する理論(Reliability theo一 も、証人対質権に違反しないと判示した。そして ry) これは,証人対質権条項は,伝聞法則と 同じ年に,ダットン判決(Dutton v. Evans)で, は独立して機能するものであり,被告人に対して 最高裁は,連邦の証拠法則によれば証拠能力が否 提出された伝聞供述の信用性に憲法上の考慮を必 定されるコンスピラシーの隠蔽段階における共謀 要とすると考える説である。そして,この信用性 者の供述を州法に基づき証拠採用しても、証人対 の要件は,伝聞例外規定を適用するときに考慮さ 質権に違反するものではないと判示している器。 れるものと類似の諸情況によって充たされ,他方,
最高裁判例では,以上述べたような大きな5つ 被告人が供述者を反対尋問できるときには,信用 の論点が,証人対質権条項が被告人に不利に提出 性はあまり重要ではなくなると解する。最高裁は,
繰り返し,証人対質権条項の解釈について,こ 特権,弁護人の援助を受ける権利,不合理な捜索 の説に依拠してきているお。 および押収からの保護に関する憲法上の諸原則に
④ 中心的な証拠たることを重視する理論 基づく,違法収集証拠排除法則と同様の機能を,
(Centrality theory) 証人対質権条項は,種々 証人対質権条項がもつことになろう37。この理論 のあまり重要でない点について,あるいは増強証 は,最近の事案で問題とされた伝聞のほとんどを 拠または情況証拠として,伝聞を用いることを認 うまく排除するだろう。なぜなら,それら伝聞証 めているのであって,検察側の立証しようとして 拠のほとんどは,取調べまたは大陪審あるいは予 いる犯罪事実の核心に迫るような直接的かつ重要 備審問によって作成されたものだからである。ま な証拠は排除すると考える説である。これは,19 た,この説をもっとも強く主張する論者たちの考 72年に,K.グラアムの論文で論じられ,ある判 えの背後には,証人対質権条項は,証拠の信用性 決で強く支持された糾。また,この説は,検察官 を重視する理論に依拠する場合に正しく考慮され が,重要証拠については,もっとも強くかつもっ ないであろうという信念があるように思われる。
とも容易に分析可能な立証方法を用いるべきであ このように考える理由は,犯罪の取調べまたは訴 るということを示唆するもので,ある種の常識に 追の間に生じた伝聞の信用性を評価することは,
基づく説得力をもつ。しかし,この点をすべての 困難iであるかあるいは不可能であるためであろう 増強証拠および清況証拠に強調することは,ほと し,また公判廷における反対尋問に適切に代替す
んど意味が無いと考えられる。このような理由か るものがないということにもよるものであろう。
らか,最高裁は,そのような考慮は,証人対質権 しかし,ホワイト判決(White v. Illinois)の 条項よりもむしろハームレス・エラーについて考 同意意見で指摘されたように,この説は,取調べ 慮されるべきものであることを指摘するに至って および訴追の過程とは独立してなされた供述を用 いる。 いることについていかなる制限も課さないものと
⑤適正手続の観点からの理論(Procedura1 なり,そのような信用性のない供述に対する憲法 rights theory) 最近になって若干の研究者 上の保護は全くないことになる認。しかし,もち が,証人対質権条項は,これまで考えられてきた うん,この説も,他の説と結びついて,証人対質
ような理由で伝聞を排除するのではなく,検察側 権の保護の範囲を広げることは可能であろう。
が,公判廷外供述を収集しかつそれらを生の証言
の代わりに用いることによって被告人の有罪を立 三 アメリカ法の検討と試論
証することを防ぐためのものであると解釈すべき 以上,証人対質権に関する理論的な問題点を提 ではないか,ということを主張し始めている。こ 示した。次に,これらについて,簡単なまとめを の説は,結局のところ,同条項に何らかの影響を した後,アメリカ法および本件嘱託尋問調書に検 与えたといわれるローリ卿の裁判(Raleigh tri一 討を加える。
a1)での最大の問題点は,孤立した状態での取調
べから自白を引き出しかつそれを他の者の有罪の 1 最近の最高裁判例の立場は,③と②の両方の 立証に用いたことによる訴追権限の明白な濫用に 説を採用していると評価できる。証人対質権条項 あったことを重視していると考えられる36。 は,時折,被告人のために公判廷外供述を証拠か このアプローチの下では,証人対質権条項は, ら排除することを認め,また,時折,検察官に供 警察の取調べの実務を制限するかまたは抑制する 述者の供述書の代わりにその者を公判廷に召喚す
ことを求めるものであると考えられることになる。 ることを強制しているのである。
そして,マップ,マサイア,およびミランダ事件 これまでの判例の示してきた判断は,その結論 における著名な判決から論じ及ぶ,自己負罪拒否 だけからみれば,最も狭い①の理論による解釈と
それほど違いはないと評価される。しかし,この んとか便宜を計るべきであったとはいえる42。もっ ような結果の生ずる理由として,裁判所が,通常, とも,一般論としては,この点は,利用不能を,
証拠採用すると予想される伝聞証拠について,被 アメリカのように,証人の出頭確保の義務を証拠 告人側が憲法を根拠に争う事案がきわめて僅かで 請求を行う検察官に負わせると考えるのであれば あることが考えられることに注意しなければなら 問題とはならないし,理論的にも,裁判所にここ ない。そして,中心的な証拠たることを重視する まで厳格な責任を負わせることは適当ではないで 理論は,判例の背後にある種の沈黙を守って存在 あろう。したがって,証人対質権条項の適用範囲 しているようである。なお,適正手続の観点から を②の説のように解するのであれば,違憲性は問 の理論については,判例における明確な位置付け 題とはならないことになる。しかし,これでは証 は示されていないといえよう39・ 人が利用不能のとき,すなわち「必要性」の要件 では,これまで述べたアメリカの議論を参照し だけで伝聞証拠が証拠採用されることになる。
つつ,本件嘱託尋問調書に検討を加えることにし 「必要性」の要件だけで,証拠能力を肯定するの よう。 は,それが有罪の方向の証拠である場合,反対尋 問権の保障の観点から問題があることは明白であ 2 まず,わが国でも,先の①の説と同様に,最 る。証人の利用不能により,証人審問権の適用を 高裁は,「すべての証人に対して審問する機会を 回避できるという理論構成は採用できない。
充分に与へられ」る(憲法37条2項前段)を「裁
判所の職権により,又は訴訟当事者の請求により 4 さて,③の説の分析で見たように,アメリカ 喚問した証人につき,反対尋問の機会を充分に与 では,憲法の保障する証人対質権と証拠法上の原 えなければならない」という趣旨であると解し 則である伝聞法則とは,反対尋問権の保障を中核 た如。このように解釈すると,被告人側の立会い とする点は共通であるとしても,両者は,異なる なく作成された嘱託尋問調書であっても,公判廷 機能をもつことが示唆されている。これについて で証人が証言しない限り証人審問権の侵害は問題 の相違点は明確にされていないのであるが,一応,
とはならない。しかし,これでは,旧法下でも, 伝聞法則およびその例外と同様の判断基準が用い 反対当事者が出頭した証人に対して反対尋問を行 られているようである。これは,証人対質権条項
うことは認められていたことを考えれば,戦後, についてのアメリカでの通説的見解である。
これが,憲法上の権利として創設された意味が失 この立場からは,本件の嘱託尋問調書は,反対 われてしまうことになる41。したがって1立法経 尋問を経ていないので,伝聞例外に該当するか否 緯はどうであれ,解釈論としては,被告人に不利 かについての具体的判断が参考になる。この点,
な供述をする証人すべてに同項の適用があると解 下級審は,詳細な検討を加え,3号書面として証 冒
キべきであろう。アメリカでも,公判廷で証言す 拠採用した。これについては,反対尋問に代わる る狭義の証人に限り証人対質権条項の適用がある 程度の信用性の情況的保障が存在するといえるか とする①の説は否定されるに至ったことも,参考 という点から,厳しく特信性の存否について検討 となろう。 がなされなければならない。
例えば「丸紅ルート」の岡田決定娼では,特信 3 次に,証人の召喚の可能性すなわち証人の利 性について,「特信性ある場合とは,当該供述に 用不能との関係について考えてみる。本件におい 虚偽性の介入する余地が乏しいと認められるよう ては,コーチャンらの利用不能の結果が生じるこ な情況の存すること,すなわち,供述の信用性が とはあらかじめ予想されたことであった。ただ, 情況的に保障されていることを要するものという 裁判所が,被告人側が反対尋問を行えるようにな べきところ,かかる要件の存否については,結局,
各事案毎にその供述の形式,態様,供述のなさ 定の重要証拠であることを否定しているものと理 れた事情等外部的諸情況のほか必要に応じ供述内 解できる。したがって,本件では,この説を採る 容までを含め具体的に検討して判断すべきものと と証人審問権は問題とはならないことになる。し 解するのが相当である%」と一般論を述べたう かし,この説には,何が重要証拠であるかは必ず えで,具体的検討を行い特信性を肯定する。この しも明確であるとはいえないとの批判が加えられ 判断に疑問がないわけではないが,具体的事情に るであろうし,証人審問権の適用範囲の判断基準 ついての判断の適否の問題は本稿の射程外である としては適切とはいえないであろう。
ので,これ以上言及しない。しかし,供述内容ま
でを判断の資料とすることは,3号の要求する特 6 最後に,⑤の説からアプローチしてみよう。
信情況が,2号よりも厳格な絶対的特信情況であ この説は,証人対質権条項は,捜査機関の証拠提 ることから,容易にそれを判断資料とし特信性を 出権を抑制することに意義があり,検察官あるい 肯定するようなことは許されるべきでないことに は警察官の作成した調書を有罪立証の目的のため ついては言及しておかねばなるまい。 に用いることを排除する機能をもつと解する。こ また,同決定は,絶対的特信情況が十分に充た の説の有力な論者であるバーガーは,被疑者・被 されれば,証人審問権の侵害の問題は生じないと 告人の諸権利を包括的に検討した上,証人対質権 述べている45。これは,③の理論と調和するもの 条項の由来を検察側の証拠提出権の抑制にあると であり,理論的には,伝聞例外の要件と証人審問 する47。そして,1975年連邦証拠規則の下に証拠 権の侵害を肯定する要件とは同一のものであり, 能力を肯定される大陪審における証言娼について 結論としては,特信性が肯定される限り,本件嘱 も,同条項の検察側の抑制の観点からそれの証拠 託尋問調書について証人審問権の侵害は否定され 能力を容易に肯定することに異議を唱える49。
ることになる。 このように,この説は,検察側の提出する伝聞 この説は,アメリカでも通説となっているよう 証拠を厳しい要件の下に排除するものである。本 に,伝聞例外の規定と整合性をもつ理論的にすっ 件嘱託尋問調書も,この説によれば,被告人側の きりしたものである。ただ,伝聞例外規定の適用 立会いを認めずに捜査の過程で作成されたもので の際に,特信性の判断を厳格に行わないと違憲性 あることから,証人審問権の問題が生ずる。した の問題が生じることに注意しなければならない。 がって,以下で,この理論がわが国においても解 本件嘱託尋問調書は,刑事免責を与えたうえで, 釈論として整合性を有するかにつき検討する。
被告人側の立会いがなく作成されたということか 憲法31条は, 「何人も,法律の定める手続によ ら,絶対的特信情況が認められるといえるかどう らなければ,その生命若しくは自由を奪われ,又 かの判断に際して,被告人にとって有利にも不利 は,その他の刑罰を科せられない。」と規定する にも解される場合には, 「疑わしきは被告人の利 が本条は,アメリカ合衆国憲法の「何人も,…
益に」の原則により,特信性を否定すべきである 適正な法の手続(due process of law)によら と思われる。 ずに,生命,自由または財産を奪われることはな
い」 (修正5条)および,「州は,何人からも,
5 続いて,④の説から本件調書についてアプロー 適正な手続によらずに,生命,自由または財産を チする。最高裁は,「本件嘱託証人尋問調書を除 奪ってはならない」(修正14条)とつながりがあ いても,原判決の是認する第一審判決の挙示する るであろうことは,その成立の背景や表現からみ その余の関係証拠によって,同判決の判示する本 て十分推測される5°。そして,本条は,憲法構造 件各犯罪事実を優に認定することができる例と 上刑事の領域に関する基礎的な一般的規定ともい 判示した。これは,本件嘱託尋問調書が,有罪認 うべき位置にある5 。
⑤の説は,取調べの過程で作成された調書の信 7 以上,アメリカの議論を参照し,本件嘱託尋 用性を評価する上で,取調べが密室で行われるこ 問調書を検討してきた。しかし,そもそも,将来
とからして,事実上有効な評価方法がないこと, 被告人側の反対尋問が不能となることを予想しな なおかつ,信用性の情況的保障は,対立する当事 がら被告人側の立会いを排除して作成された調書 者が取調べを行うのであるから担保されるとは考 という点が本件の重要な問題点であることに注意 えられないことから,このような調書を被告人の しなければならない。このような調書を証拠採用 有罪を立証する目的で用いることは,証人対質権 するのであれば,被告人の証人審問権の保障が不 の侵害が認められると解し,証拠から排除する。 当に狭く解される危惧を払拭できない。本件嘱託 すなわち,この理論をわが国の法に採用すると, 尋問調書は,被告人の証人審問権の観点からは,
取調べの過程で作成された調書を被告人の有罪方 証拠能力を否定されるほかないと考えられる。
向での事実認定の資料として用いる場合,憲法37 条2項前段の保障する証人審問権が侵害されるこ
とになるため証拠から排除することになろう。わ 四 結 語
が国でも最高裁が,違法収集証拠について,憲法 以上述べてきたように,被告人の証人審問権の 31条を考慮して証拠から排除される場合があるこ 観点からも本件嘱託尋問調書を否定すべきとする とを認めていること52からして,このような解釈 大野裁判官の補足意見は,被告人の人権を重視す を採用することは,不可能なことではないように る正論であると評価される。
思われる。 ただ,一般論として,嘱託尋問調書の証拠能力 しかし,わが国には検面調書のような捜査機関 は必ずしも否定されるものではなく,それが有罪 の作成した調書を実質証拠として用いることを認 の方向の証拠の場合には,証人審問権の観点から める規定がある。したがって,この理論により, 検討を加えるべきであろう。そして,嘱託尋問調 検察側の証拠請求する捜査の過程で作成された調 書の証拠能力を否定する場合に,証人審問権の侵 書の証拠能力を絶対的に否定することは無理であ 害を根拠とする際,大野裁判官の見解と同様,伝 る。しかしながら,憲法の観点から伝聞例外を厳 聞例外に該当するかどうかを問題とせずに証拠能 格に解釈運用する必要性を強調するための根拠と 力を否定すべきとして,憲法の直接的適用を認め しては正当なものであろう。比較的緩やかに321 るか,あるいは,通説のように刑訴法321条3号 条1項2号により証拠能力を肯定する実務の状況, 書面としての特信性の判断を行ううえで考慮され 客観義務を負う検察官といえども一方の当事者で るべき要素と解するかどうかは,今後,被告人固 あること,調書に対する反対尋問は困難であるこ 有の権利である証人審問権の理論的解明,および とに鑑み,現在のわが国の運用は違憲の疑いが濃 証人審問権と被告人側および検察側の双方に適用 いといえる。この説は,証拠法上の原則に縛られ がある伝聞法則との射程範囲の違いを明らかにす ることなく被告人の反対尋問権の保障の要請を全 ることが必要となろう。
うすることができ,理念的には,適正手続主義の 観点から人権保障を高めるものである。その論理 註
的帰結は,適正手続に反すると考えられる伝聞を, 1 最大判平成7・2・22判時1527号3頁。
伝聞例外規定に該当するか否かを問題とせずに, 2 同上10,11頁。
証拠から排除することを導く。 3 同上11頁。
したがって,この説によれば,本判決の大野裁 4 同上13頁。
判官の見解に与することができよう。 5 同上。
6 同上。
7 同上。 16See Chambers v. Mississippi,410 U.S.284 8 同上。 (1973).
9 以下に,合衆国憲法修正6条の全文の邦訳を掲げ 17 4Muller&Kirkpatrick, supra note 12, at ておく。 122−23.
「総ての刑事訴追の場合に,被告人は,犯罪が行 18See the two opinions in Mattox v, United われた州ないし予め法律で定められた地区の公平な States,156 U.S.237(1985), and Mattox v.
陪審員による迅速な公開の裁判を受ける権利を有す United States,146 U.S.140(1982). See also る。被告人は,嫌疑の性質と原因を告知され,自己 Snyder v. Massachusetts,291 U.S.97(1934).
に不利な証人に対質し,自己に有利な証人を強制的 19 See Kirby v. United States,174 US.47 な令状により召喚してもらい,弁護のために弁護士 (1899).
の援助を受ける権利を有する。」 20See Idaho v. Wright,497 U.S.805(1990);
10判時912号28頁。 Lee v. Illinois,476 U,S.530(1986);Bruton v.
11事実経過については,白取祐司「ロッキード裁判 United States,391 US.123(1968).
『批判』への視点」『法律時報』57巻11号(1985年) 21Pointer v. Texas,380 U.S.400(1965).
76頁を参照。 22See Barber v. Page,390 U.S.719,725(1968)
12 4Muller&Kirkpatrick, FEDERAL (dictum).
EVIDENCE(2ded.1994).なお,わが国の文献 23最も重要な問題は次のような場合に生じる。すな としては,津村政孝「証人対審権の歴史的展開一 わち,被告人側が予備審問時に証人に反対尋問を行 連邦証拠規則研究のための準備作業一」『学習院大 うことが可能であったのにしなかった場合に,検察 学法学部研究年報』19号(1984年)151頁以下が詳し 官は,その証人の公判廷への出頭が不能となったと
く分析している。 き,その者の予備審問での証言を証拠請求できるか 13反対尋問の意義として,供述者の記憶,知覚,表 というものである(4Muller&Kirkpatrick, su
現・叙述,および誠実性(declarant s memory, pra note 12, at 125 n.7)。
perception, narrative ability, and sincerity) 24 California v. Green,399 U.S.149(1970).
についての弱点を調べるのに有効であることから, 25Douglas v. Alabama,380 U.S.415(1965).
供述証拠の信用性の判断にとってとりわけ効果的で 26Bruton v. United States,391 U.S.123,128 あることが指摘されている。 (Park, A Subject n.3(1968).
Matter Approach to Hearsay Reform,86 27 See Barber v. Page,390 US.719(1968).
Mich. L Rev.51,55(1987).) 28 4 Muller&Kirkpatrick, supra note 12, at 14 0hio v. Roberts,448 U.S.56(1980);Nelson v. 123−26.
0 Nei1,402 U.S.622,626−27(1971);California 29 See 5 J.Wigmore, A Treatise on the v,Green,399 US.149,158(1970);Bruton v. American System of Evidence in Trials at United States,391 U。S.123,126 (1968); Common Law§1397,(3ded.1940).
Roberts v. R旦ssell,392 U.S.293,294(1968); 30 See Dutton v. Evans,400 U.S.74(1970)(con一 Barber v. Page,390 U,S.719,725(1968); curring opinion by Harlan). But see Ohio v.
Brookhart v. Janis,384 U.S.,1,4(1966); Roberts,448 U.S.56(1980);Idaho v. Wright,
Douglas v. Alabama,380 U.S.415,418(1965); 497 U.S.805(1990).
Pointerv. Texas,380 US.400,406−07(1965). 31 See Westen, Confrontation and Compulsory 15 See Alford v. United States,282 U.S.687 Process:AUnified Theory of Evidence for
(1931);Smith v. Illinois,390 U.S.129(1968). Criminal Cases,91 Harv, L. Rev.567,596
(1978);Barber v. Page,390 U.S.719(1968). 責任供述に堕したと認めるべき徴表は見出し難く,
32See Idaho v. Wright,497 U.S.805(1990); また右全情況により実質的に高度の信用性の情況的 Ohio v. Roberts,448 U.S.56(1980)。 保障の存在が肯定される以上,その証言に関し本件 33See especially Idaho v. Wright,497 US.805 被告人側に反対尋問の機会が与えられなくても,伝
(1990);Lee v.111inois,476 U.S.530(1986); 聞証拠禁止の例外としての刑訴法321条1項3号にい Ohio v. Roberts,448 U.S.56(1980). う特信性の要件は十分充たされていると考えられる 34 K.Graham, The Right of Confrontation (従って憲法37条2項違反の問題も生じない)。」
and the Hearsay Rule:Sir Walter Raleigh (判時912号41頁)。
Loses Another One,8Crim. L. Bul1.99(1972); 46前出註(1)10頁。
Dutton v. Evans,400 U.S.74(1970). 47 Berger, supra note 36, at 567−86.
351daho v. Wright,497 US.805(1990). 48 See FED. R. EVID.801(d)(1)(A).
36 See especially Kirst, The Procedural Di− 49 Berger, supra note 36, at 610−11.
mension of Confrontation Doctrine,66 Neb. 50樋口陽一・佐藤幸治・中村睦男・浦部法穂共著 L.Rev.485(1987);Jonakait, Restoring the 『注釈・日本国憲法』上巻(1984年)699頁〔佐藤幸治〕。
Confrontation Clause to the Sixth Arnend− 51同上701頁。
ment,35 U.C.L.A. L. Rev.557(1988);Berger, 52最判昭和53・9・7刑集32巻6号1672頁。
The Deconstitutionalization of the Confron一
tation Clause:AProposal for a Prosecutori一 付 記
al Restraint Model,76 Minn, L, Rev.557(19 中田直人先生は,私が学部生のときの指導教授であ 92);Haddad, The Future of Confrontation り,私に刑事訴訟法という学問の道を示して下さった Clause Developments:What will Emerge 恩師です。学部の講義やゼミナールでの先生のお話は,
When the Supreme Court Synthesizes the 長年の弁護士としての経験に基づく,たいへん示唆に Diverse Lines of Confrontation Decisions? 富むものでした。そして,常に人権を尊重する立場か 81J. Crim. L.&C.77(1990). らお話をされていたのが印象的でした。先生の退官記 37See Miranda v. Arizona,384 U.S.436(1966); 念に際して,幸運にも,このような執筆の機会を賜わ
Massiah v. United States,377 U,S。201(1964); ることができました。先生の学恩に少しでも報いるこ Mapp v. Ohio,367 U.S.643(1961). とができれば幸いです。つたないものではありますが 38White v. Illinois,112 S.Ct.736(1992) 本稿を謹んで中田先生に捧げます。
(Thomas, joined by Scalia).
39 4Muller&Kirkpatrick, supra note 12, at
126.29.
40 最大判昭和24・5・18刑集3巻6号789頁。
41光藤景鮫『口述刑事訴訟法』中巻(1992年)199頁。
42小暮得雄「嘱託尋問調書の証拠採用」『ジュリスト』
895号(1987年)84頁。
43東京地決53・12・20判時912号24頁。
44 同上40頁。
45 「全情況に照らして証人らの証言の態様をみるに,
本件被告人側の反対尋問を予想していないために無