体育授業における教授学的研究*
バスケットボールを教材として
庭 木 守 彦 * * ・ 吉 永 順 一 * * * ・ 坂 下 玲 子 * * TeachingandLearningofPhysicalEducation
CenteringonBasketball
MorihikoNIwAKI,JunichiYosHINAGAandReikoSAKAsHITA
(ReceivedOctober2,1989)
Thepresentstudyaimsatexamininghow,atbasketballgames,theelementary schoolhighergraderscanfindandsolvetheleamingtasksforthemselvesand,
especially,atexaminingtheteachingprocessthatwillleadthemtodiscoverand pursuethe,primespace'、
Theresultsofthisstudysuggestthat:
1.BymakingtheringbiggerandgettingthepupilstonotemovementproCesses
(record),theirtaskrecognitionandpursuitdesirewillbeprovokedandtheirqualita・
tiveinterestsinthegamewillbeheightened、
2.Bypresenting movementmodel,intunewiththelearners,recognitionlevel,
technique・structurerecognition,self・recognition,leamingtaskselection,andsolu‐
tiondeviceselectionwillberealizedwithinashortertimeandthemeaningandvalue oflearningwillalsobegrasped、
3.Byclarifyinghis/herinstructingactivities,suchasindicatingtheproblemsituation, suggestingasolutiondevice,confirmingthesolutionmeans,organizingactivities,
andevaluatingproblemsolution,theinstructorcaneffectivelyteachtheleamers howtoleam、
4.Theteaching.learningprocessesofthistypewillnecessitateabiggerunitconstruc‐
tion.
は じ め に
小学校上学年のポール運動のねらいは,「簡単な集 団技能を生かしたゲームができる').」ようにすると されている.授業の実際ではボール操作能力の向上,
味方・相手方との関係など,複雑に変化するケーム 事態に対応するスキルが必要となる2).
現実的なボール運動の多くの授業では,個々の技 術を別々に学習し,次いで応用技術としての部分練 習,ゲームに進むという授業過程が多い.その結果,
ゲームの内容は学習者が習得した個人的技能に左右 され,ゲームの様相は変化に対応する事態に乏しく,
*本研究は、1989年2月17日熊本大学教育学部附属 小学校小等教育研究発表会にて発表した。
**保健体育科
***附属小学校
ポールへの対応のみに意をそそぐことになりやすい.
本研究では,小学校上学年を対象にバスケットボ ールを通して,ゲームの中から「最重要空間」を発 見し,それを生かしてより多くのシュートチャンス をつくらせるための,教授一学習過程(発問・教具・
評価)はどうあるべきか.その具体的内容や方法を 検討することにある.
方 法
この授業実践は,バスケットボールを教材として
「ゲームの中からシュート空間を発見し,そこを生か してより多くのシュートチャンスを作るにはどうす ればよいか」を教授目標に,小学校6年生を対象と して15単位時間の取り扱いで計画された.
1.対象
1)指導者:男子教員(経験19年)
2)学習者:小学6年生(男女各20名)
− 4 5 −
庭 木 守 彦 ・ 吉 永 順 一 ・ 坂 下 玲 子
表 − 1 単 元 の 指 導 計 画
2.日時・授業時数.場所
1)日時:1989年2月1日〜3月11日 2)授業時数:15時間(45分×15回)
3)場所:小学校体育館(コート2面)
3.単元の指導計画
バスケットボールの意味(面白み)や価値(技術 認識)3)に学習者自ら係わらせるために,学習過程を
1
大きく三段階4)に分け,各段階で次の点に留意した.
(表l)
1)課題設定の段階
子どもの実態に応じた運動モデル5)を選択させ,
今もっている技能段階でバスケットボールの楽しさ に触れさせる.その過程で,コート内にシュートす るのに有効な空間(シュート空間6))とチャンスをう
− 4 6 −
段 階 学 習 活 動 発 問 ・ 課 題 . 教 材 ・ 教 具 時間
課題設定
1学習のねらいや進め方を知る.
2自分たちの力に合った運動モデ ルを選択する.
3総当り戦のケームをする.
4 ゲ ー ム の 記 録 か ら , ゲ ー ム の 質 を分析し,学習課題を設定する.
●誰もがシュートできそうで面白い と 思 う ゲ ー ム の モ デ ル は ど れ で す カュ●
●パスのつながり率は高いのに,シ ユート数が少ない原因を,コート 空間の使い方から考えてみましよ
う.
●どの領域からどの領域へのパスが 得点となっているか.
●学習計画表
● ノ ー ド リ グ リ ッ ド パ ス ケ ッ ト ボ ー ル
●台形パスケットポ
−ノレ
● オ ー プ ン コ ー ト の バ ス ケ ッ ト ボ ー ル
●パスの心電図
●ゾーンの心電図
5
自力解決
1学習計画をたて,課題解決の見 通しをもつ.
●学習課題の選択
●対戦相手の選択
●運動モデルの選択
2シュート空間を生かした作戦を 工夫して対抗戦のゲームをする.
3ペアグループで情報を交換し,
パスのつなぎ方のポイントをまと める
●2人で3人:分の動きをするには,
パスを出した後,「いつ」「どこへ」
rどのように」動いたらよいでし よう
●シュート空間にきりこみ,相手に 守られた時,とるべき方法を2つ あげなさい,●
●ゲームの質がよいか悪いかどこを みたらわかりますか.
● チ ー ム ノ ー ト
●作戦板
●体育ノート
● ゼ ッ ケ ン
● ビ デ オ
●ケーム記録
●得点板
●学習計画表
●テープレコーダー
●学習資料
● ボ ー ル
5
響き合い
lシュート空間の条件とシュート
・空間を生かした攻め方について話 し合う.
2守りの位置関係で,攻め方をい くつかの練習モデルに類型化する.
3類型化された練習モデルをチー ムの特徴に応じて変化させながら 作戦を工夫する.
4 バ ス ケ ッ ト ボ ー ル の ル ー ル や 技 術史を知る.
●チームの作戦のなかで,シュート がうてない状態を,うてる状態に 変えた攻め方があります.それは どれですか.また,それは,2人 の動きが他のせめ方とどこがちが うからですか.
。●練習モデル
●学習資料
5
祭司 一 喜鵡鮪維汽誠郵が鉾鮪椛雪翠滞 各時間の
ね ら い
課 題 設 定 の 段 階 オ リ エ ン
テ ー シ ョ ン
運 動 モ デ ルの選択
リーグ戦をしながらゲームの記 録などから問題点を発見し,共 通の課題を設定する.
自 力 解 . 決 の 段 階
共通の課題を解決するための動きづくりをしながら,
ルールやモデルを選択して対抗戦を楽しむ.
響 き 合 い の 段 階
自力解決の段階で工夫した攻め方をみんなで使える ようにして,さらにゲームの質を高めてたのしむ.
学習のながれ
5050
112
25
。
05053344
バ ス ケ ッ トボール の歴史を 聞く
ア ン ケ ー 卜 に つ い て 何ができ て何がで き な い の 力苫 チ ー ム づ く り を す る
学 習 の 見 通 し を も
つ
運 動 モ デ ルを経験 し,ゲー ムの記録 か ら ね ら い①のケ ー ム を 選 択する
記録のと り方,見 方を知る
リーグ戦 の 計 画 を 立てる
準 備 運 動
<リーグ戦>
前半ケーム{A(4分)B(4分)
(4対4のオープンコート)
作 戦 タ イ ム
<相手チームを変えて>
後半ケーム{A(4分)B(4分)
(4対4のオープンコート)
反 省
課題設定
酉
空間を確認
※自力解決の段階は教師の助言のもとにグループで学 習計画を立てる
ぶ 、 ノ 妾 ヘ ノ 腫 夕 一 M し 〃 咳 〃 ● F 『 ー 〃
ムの実態に応じて上の運動 モデルから選択する
準備運動
↓ 事例提示
↓. 解決の方法の 発表
↓ 集団思考
↓ 動きの原則お
よび新たな課 題 の 確 認
↓ ハ ー フ コ ー ト を使っての練 習ゲーム
チ ー ム を 再 編 成して,クラ スマッチに臨 む
︵クラスマッチ︶または学級内パスヶット大会
準備物 ポ ー ル ス ト ッ プ ウ ォ ッ チ 小 黒 板 ゲ ー ム の 記 録 一 体 育 ノ ー ト 作 戦 板 笛 ゼ ッ ケ ン チ ー ム ノ ー ト 筆 記 用 具
認識内容 ●運動モ
デ ル の 特徴
● ポ ー ル 操作
●得点のための有効な空間(重 要 空 間 )
●ゴールと守りの位置関係
●ワンマンプレーの存在
●重要空間を生かしたコンビネーションプレー(パス の出し方,受け方)
●ゴール下の動き
●ゾーンディフェンス
●パックパスによる攻めなおし(フロアパランス)
●重要空間を生かしたコンビネーションプレー(パス コース)
●守りの位置関係による攻め方のパターン
●シュート空間から補助空間へパスを出しての攻
め直し
この段階では,作戦がより有効に働くように対戦 チームを固定した対抗戦8)の形式がとられた.
3)響き合いの段階
自力解決段階での学習をもとに,シュート空間の 条件について話し合い,動き方がいくつかに類型化 力〕がうための空間(補助空間)があることを発見さ
せた.
2)自力解決の段階
次の3つの課題からチームに合った作戦を工夫さ
せた7).
●補助空間からシュート空間へのつなぎ
●シュート空間でのリバウンドプレー
表 3 運 動 モ デ ル の 開 発
− 4 8 −
庭 木 守 彦 ・ 吉 永 順 一 ・ 坂 下 玲 子
運 動 モ デ ル の 例 子 ど も の 意 識
オープンコート
P 3 対 3 q
(長所)ボールにふれるチャンスが多い.だれでも シュートできるチャンスがある.自由に動 ける
(問題点)疲れる.ポジションがつくりにくい.一度 抜かれると攻め込まれる.動きがわからな いとパスがつながらない.
オープンコート
p 4 対 4 q
(長所)攻めも守りもできる.ポジションがつくれ る.だれにもシュートチャンスがある.自 由に動ける.
(問題点)ボールに固まる.シュートのうまい人中心 になる.ロングパスがすばやくできない.
台形パスケットボール(4対4)
… ア ア ア ア Z
P ○ q
(長所)ラインマンをうまく使えば,相手コートま で楽に運べる.動きの基本をためしやすい.
(問題点)2対1では守ってもパスをだしにくい.ボ 一ルの動きがゴール前に集中し,コート中 央をあまり使わない.
台形バスケットボール(5対5)
︒︒ q
』△
b△
(長所)同じ人数なので張り合う.マークができる.
(問題点)パスが通りにくい.コートの角の部分が使 いにくい.マークが強くなり,攻め切れな
い●
台形バスケットボール(6対6)
1
〃 〃 " 〃 〃 〃 〃 〃 ダ ダ 〃 〃 〃 〃 〃 〃 グ グ グ 〃 〃 〃 ″ " ジ グ ン重 篭 ヨ
(長所)三角パスができる.コート中央の動きがで てくる
(問題点)人数が多過ぎ,ラインを気にして,動きが 伸び伸びしない.
グリッドバスケットボール
一﹂ 年 ● Q P ● G P ● ■ ● 辱 e ● ● ● ' 6 ● ●
、 、 も。
●
■一 )。...:.
●■
ザ ● ●
。 。 ● C e
↓一
4
(長所)作戦がたてやすい.ポジションを意識して やれる.コート中央を使える.基本を学べ
る●
(問題点)フリーマンの判断がかぎである.コート中 央にあつまりすぎる.
図1
向・地域に着目させ分析させることにより,シュー トや得点場面には成功確率の高い空間があることを 発見させた.ゲームの質を客観化するために,パス の心電図,ゾーン心電図を記録させた.(図1,図2)
さらに,パスのつながり率,攻撃率,シュート成功 率を求め,記録の整理がなされた'0).
パスのつながり率='琴2諾総数 攻撃率=シ弓毒器蓋禦菱数
シユート成功率=シ峯干器柴鵠数
3)守りの原則をおさえることにより,行動の基 準の中心がボールから相手・味方の位置関係やゴー された.さらに,パターンをもとにチームの個々人
の特徴を生かした作戦を工夫させてゲームの楽しさ を深めさせた.
4.学習計画
指導者が助言してグループ内異質,グループ間等 質の4つのグループをつくり,表2の計画にそって 学習が進められた.
5.課題追求の具体的方策
1)シュートの喜びに触れさせるため,リングを 60cmに拡大し,場の工夫として表3の運動モデルを 例示した.課題設定段階では学級共通のモデルを選 択し9),自力解決の段階ではチーム差に応じてモデ ルを選択したり修正したりして学習された.(表3)
2)ゲームの記録により,得点場面でのパスの方
図 2 ゾ ー ン 心 電 図
l l
− 4 9 −
評価
頑(飼子を整えたチャンスをねらっているか)
扇(中への切り込み、攻げさはどうか)
雨『(ねばり強く、7漸・‑をとっているか)
両:(失敗のあとたて直しているか)
|、可舜
。 。 ゴ ー
。
〃〃、:
$q
一 パ ス ー ド リ ブ ル
× ミ ス
⑧ シ ュ ー ト
◎ シ ユ ー ト イ ン
パ ス の 心 電 図
前半 AB
ー
×::、:/W:)
AB のpA.B
︾一A︾B
o■︾.︾︑︑︑︑︑急
■ 二 = ● 。 ● ● 凸
IA − A − − A − A − × A 1 ・ A A A A A
B
B B B
b o O ■ 。 ● , ■ ■ ■ ? 。
B B : B B B B B
■ 凸 ■ ■ ① 。 い ●
A A A A A A A A A A A
‑BぞきB−B−xBBBBBBBB
A A A A A A A A A A A B B B B B B B B B B B
後半 A‑碁A二A−X−A−.AとXAiA
■ ■ ■ . ① ● ● ●
B B B B B B B − B/謎、
A A A A A − A 2 L A − A − A − A − B − B − B − B S
ー、
● P ● 缶 。 ● ① 合 ● ●
B B B B B B A − A
、×
B BI
S A−.
B 謎三●早●$巳cOC:。 ABBBBSO‑A‑AA1
AB
●
;:‑:、農。::聯̲:so:̲:興潔亀
パス数 ミス数シュート 数
シュート
− − b
AA 8 19 4 3 0 1 0 1
一 →
AB 3 5 1 2 0 3 0 3 BB 5 14 1 0 1 5 1 4
− →
BA 1 1 1 0 0 0 0 0 A − B 0 1 0 0 0 1 0 0
2月15日(3)班記録チーム(3)班アナウンサー(なし)ケーム記録者名(井上)
. 名 前 ゼッケン番号 型目チーム
ヂー、
伽 3
ー ず
班 前半 後半
( ) 対 ( ) ボーナス点
( ) 対 ( ) ボーナス点
相手チーム
一 、
1
〜 該
班 (記号)
触 パ
ドリ巽繊鐘
ケーム反省記録
●凸■
アシスト数 触球数 狗功鋤﹃獣胆単 跡Iの鍋l砲 '咽X心臥しクュ︑vつい
'た ト目 低位
シュート回数 シユ
| 卜 月旦
前半 瀬口 忍
吉永 緒方 日永田
3 6 11 7
、 八 ′ / ; / × . ・ ノ&Y1二・.巳一●‐ / 八 〃ツ 1 − . . . . − . 、 1 〆1,M ・'///jOsダ/ /wL・' (,.:s× S◎)ムダ
/ / ノ ハ / / ・ ・砂●ー、、,1s×
ノノ,、>'J・ノ/v;、、1顎,、ョ少ゆ■句凸
2 3 0 0 11 11 2 11
20 35 5 1 4 1 3 0 1 0
後半 瀬ロ 2 吉永 緒方 日永田
3 6 1 1 7
/‑−.1乳、、1 1
/I〆:、、ISXノ 1‑‑,へパス率=57.14%
/ V ●p●、 1 攻げき率=25%
/ V ; ' s × ノ a l× しおわりシュート率=33.33%
庭 木 守 彦 ・ 吉 永 順 一 ・ 坂 下 玲 子
場面1
A さ ん の ワ ン マ ン プ レーはさいていどの場所 で止めなくてはいけませ んか。次から選びなさい。
(ァ、ィ、ウ、エ)
場面2
右の場面は、ゴール前で よく見かける守りの形で す。Bさんが守るのに最 もよい場所はア、イ、ウ のどこですか。 理由もい
いなさい。 Cは④の味方
図 3 と り あ げ た 場 面
ルを含めた場の意識へと高められた.また,二つの 場面(図3)を取り上げ守りの原則を認識させ,,バ スケットボールがシュート空間の陣取りごっこであ ることを引き出そうとした.
4)意識の焦点化をはかるために,学習場面をゴ ール前局面に限定し,シュートチャンスをつくるた めの攻め方を引き出すよう,各グループでチームに 合った作戦を考えさせた.
5)一定の時間制限でのパターン練習からコンビ ネーションに必要な認識や技能をとらえさせ,課題 をもって学習された.
結果と考察 1.課題追求と具体的方策
ゲームの中からシュート空間を発見し,そこを生 かしてより多くのシュートチャンスを作らせるため の指導を追求課題として5つの具体的方策を立てた.
1)教具・場の工夫
教具(リング60cm)の工夫,及び先行研究を改善 して運動モデルを提示した.リングの拡大は当然シ ュートの成功率を高め(図4)シュートのうてる空 間を発見させることによって最重要空間へのつなぎ を自覚させることができる.運動モデルの提示から 自チームに合った例を選択して学習したことについ ては,「ケームの内容・練習の内容がよくわかる」「作 戦がたてやすい」「モデルによって練習が変わる̲I「い ろいろと発見できた」「試合に生かせた」といった感 想に要約される.このことは,シュートの確率を高 めることによりやる気を起こさせ,逆にシュートの 成功を防ぐための守りの原則を認識させ,学習者の
意識をボールへの集中や個人プレイの存在からシュ ート空間の陣取りへと変えさせたといえる.以上の ことは,発問との係わりにより,基本パターンをも とにした動き方として,「いつ,どこに,どのように」
動くか,またパスの出し方としては「コース・速さ・
高さ・タイミング」などをチームの実態に応じて認 識させ,シュートチャンスをつくる局面を拡大する 学習へと進めうることを示唆している.
2)ゲームの記録
ゲームの実態をいかに「見えやすく」するかの手 だてとして,パスのつながり率,攻撃率,シュート 成功率,ゾーン心電図といったケームの記録をとり,
その結果を考察させた.それは教師が直接的に課題 を提供するのではなく,学習者が必要感にせまられ て,自ら学習課題を引きだし,それを追求していく,
つまり学習者自身が自ら学ぶ資料を作成するためで ある.学習者の感想には,「パスのつながり」「攻め のパターン」「コート(Bゾーン)陸')の使い方」「チ ームの長所,短所がよくわかる」といった内容が述 べられており,練習方法,作戦,ワンマンプレイの 注意といった学習課題を自ら見い出し,チーム内の 話し合いの質の向上が見られた.しかし,「記録が話 し合いの時間に間に合わなかった」という反省も見 られた.
このケーム記録をもとに,共通課題を「Bゾーン (リバースゾーン)陸2)を生かしての攻め方を工夫し よう」と設定し,それを解決するために,敵がいて もいないようにすること,つまりシュート空間を作 り出すことをグループで追求させた.この課題につ いては,ほとんどの学習者が自分たちの力に合った
− 5 0 −
20
%1
90
「ドリブルの有効性」「空間支配の法則性」等が示唆 された.
3)守りの原則をおさえる
実際のゲームではポール保持能力の高い子どもが 強引なプレイで攻め切れることを学習者は知ってい
2/全試合
シュート率 80
70
パスのつながり率
6
50
蝉"一ゾーンディフェンス。発生、
40
ものであったと答えており,シュート空間の重要性 を認識して学習を進めたといえる.
以上,これらのゲーム記録及びビデオ再現をもと に,学習者が問題としたこととしては「ワンマンプ レイの存在」「パスの有効性」「コート空間の認識」
、 ー ご L ー ー ご L ー
30
攻鍍率 A → B , 攻鍍率
パス、ドリブル 空間支配率
− 5 1 −
2/2後半
10
図4パスのつながり率、攻撃率、シュート率、
A→Bパス、ドリブル空間支配率の変化
自 立 解 決 一 一 ← 稗 き 合 い → 課題設定
0
月日
2/9後半 2/M全賦合 2/鴫全賦合
2/1全試合 2/皿全賦合2/8前半 2/8後半 2/9前半 2/Ⅳ全拭合 2/調全賦合 3/9全駄合 3/︑全試合2/2前半
庭 木 守 彦 ・ 吉 永 順 一 ・ 坂 下 玲 子
(bg○t 三 J l 〃 9 〆 @
(画弓こう言う牛癖鯨(割匪や諺にいん乞入…
暦l溌蕊iI墓
図5児童(Y、H)の 守りの認識の変化
る.漠然とした守り(ポールを守る)ではワンマン プレイの問題は解決できない.この段階から,本当 にみんなが協力してのプレイを考えなくてはいけな いという強い問題意識を引きだすには守りの指導が 必要である.一人のうまい子どもにポールを集めて,
力比べをするのではなく,いかにノーマークをチー ムでつくってシュートに結びつけるかが学習の課題 となる.そのためゲーム記録やビデオ再現により,
防禦の意味を認識させたい.
守りの指導後,パスのつながり率,攻撃率,シュ ート率が一時低下した.(図4)しかしこのことによ り,学習者はシュートに結びつけるにはどうしたら よいかを考え,漠然とした守りや,対人防禦的であ ったものが,Bゾーンには人間やボーニルを入れさせ ないという認識を高めた.(図5)
4)時間制限でのパターン練習
ゲーム記録やビデオ再現,グループ討論や自発学 習(参考図書の活用)等から自力解決の能力が高ま り,グループでの練習やケームの時間配分等の計画 を立て,自チームの欠点,長所を生かしたパターン 練習を取り入れた.
しかし,攻め方や守り方,またゲーム形式とルー ルは運動モデルを提示してその中から選択させた.
ゴール前局面の攻防に学習場面を限定したり,時間 制限をしてパターン練習を行うなどの方法を教授者 が指示することにより,スムーズに練習を行うと同 時に,rうそじゃま」「本気じゃま」や対戦相手の固 定チームの実態に近い運動モデルが選択された.そ の結果,「攻めや動きがスピーディーになる.」「判断 力がつく」「有効なパスがわかる.」等パターン練習 の在り方を肯定的に受けとめる意見が多い.一方「あ わててしまう」「攻め直しがうまくいかない」といつ
た否定的意見も少数見られた.
5)ゴール前局面の攻防
運動モデルは提示したが,チームでの練習やケー ムの時間配分などは学習者の計画で行った.グルー プ毎に2対1,2対2,より実践に近づけるために 守りの人数を増したり,本当に守るポジションを限 定したり,「うそじゃま」「本気じゃま」を取り入れ たりするなど学習者の工夫が見られた.学習ノート の記述を要約すると「パスの出し方」「攻め方」「攻 め直し」「Bゾーンへの切り込み」「ゾーンディフェ ンス」「Bゾーンの守り」等シュート空間を意識した 内容が多く見られ,その課題認識や解決がはかられ たことが示唆される.
また,「早い判断」「自分で考えること」「練習の仕 方」「学習の進め方」がわかったという記述も見ら れ,バスケットボールの技術に関するだけでなく,
学習の方法についてまで認識されていることがうか がえる.ゴール前局面の練習課題学習では,「縦型の フェイント」「Bゾーンへのつなぎ」「防禦者との位 置関係」が認識されたことが示唆された.
2.学習過程について 1)課題設定の段階
リーグ戦を中心としながら,ケームの記録などに より,①パスの使い方,②ゴール前での攻め方,③ 攻め直し,④Bゾーンに入るまでの攻め方,⑤シュ
トゾ
ートするまでの動き方,⑥すばやい判断等のチーム の学習課題を学習者がみつけた.これをもとに教授 者と学習者の話し合いによって,得点のための有効 な空間や守りの学習を全体で行い,共通課題として
「Bゾーン(リバースゾーン)を生かして攻める方法 を工夫しよう」を設定した.
2)自力解決の段階
− 5 1 −
35411
1)で設定した課題を解決するために次の二点を 教授者が提示した.
①敵がいてもいないようにする.
●パスのだし方で敵がいない状態にする6
●ポールを持っていない人の判断をよくして敵が いない状態にする.
②①のことを2対1,2対2の活動で追求する.
●攻め方のパターンづくり
●攻め方を成功させるための判断と技能 教授者の助言をもとに具体的には,
●A空間からB空間へのつなぎ
●B空間からA空間へパスを出しての攻め直し
● B 空 間 で の リ パ ウ ン ド ボ ー ル
の三場面をチームで練習した.また,この段階では,
教授者の助言をもとにグループで計画をたてて学習 を進めた.チーム練習における攻め方及び守り方,
対抗戦によるゲームの形式(運動モデル)とルール は,実態に応じてチームの選択とした.時間配分の 遂行には,各チームのマネージャーがあたった.こ のような学習展開に対して,学習者は「自分たちの やりたいようにできる」「やりやすい」「時間の大切 さがわかる」「他の学習にも応用できる」と肯定的に みており,問題点としては,「もっと落ち着いてやり たい」「時間配分が遅れる」ということを挙げてい る.また,対戦相手を固定して最低2回は続けたこ とについて,「相手チームの特徴やパターンがわか り,それに応じて作戦をたてることができた」とい う記述が多かった.
自力解決学習でわかったこととして,「Bゾーンで の守り(ゾーンディフェンス)」「Bゾーンへの切り 込み」「攻め直し」「リパウンド」「パスの出し方」等 技術的なことの他に,「早い判断」「自分で考えるこ と」「計画の立て方」「練習の仕方」「学習の進め方」
といった学び方の学習についての記述も多く見られ た.
3)響き会いの段階
ゲーム記録,運動モデル,ビデオ再生によって得 た事柄を事例で提示し,シユート空間の条件や,守 りの位置関係による攻め方のパターンを考えさせ,
チームの特徴に応じた作戦を工夫させゲームを行っ た.
最後に行ったクラスマッチの結果は表4の通りで ある.学習者が見た他のクラスのゲーム運びについ て攻め方では,「ドリブルで攻める」「切り込みがな くロングシュートが多い」「リパウンドを取らない」
「ボールに集まる.」等を挙げ,守り方では「マンツ
表 4 ク ラ チ マ ッ チ の 成 績
︽必. 合組100018数試乱点
得謡噸40033総
男男男男女男女人 数4442222 4442222 22310 10221 12350 33132
A.
卜
4442222女女女男女男女 01003 23344000414442222
10 14 2 卜
得 点 数
組組組123 65胆562
2 1 1
413346 202 319 580
−マン(自分の組はゾーン)が多い」「守りが浅い」
「パスカットが少ない」等を記述している.また攻め 方,守り方に差がみられたことについて,「守り方の 学習」「Bゾーンの使い方や破り方」「ドリブルより もパスでつなぐ」ことを学習し,「何度も試合」をし てきたことにより,様々な状況での判断が他のクラ スより秀れていることを理由として挙げていた.
以上,課題追求の具体的方策と,学習過程の二つ の段階について考察してきたが,学習者の個人的技 能であるボール操作能力のための時間増と,学習課 題を見い出し,それを解決させる時間の不足を補う ため単元展開の時数を大単元にすることが一考を要 すると言えよう.
結 論
本研究の目的は,小学校上学年でバスケットボー ルのケームを通して,学習者自身に学習課題を引き 出させどう解決させていくか,特に,「最重要空間」
の発見と,それを追求していく授業をつくる指導過 程の具体的内容を検討することにある.
結果は次の通りである.
1.教具の工夫(リング拡大)と運動の過程(記録)
に着目させれば,課題認識と追求意欲を引き起こ し,ケームの質への関心が高まることが示唆され
− 5 3 −
庭 木 守 彦 ・ 吉 永 順 一 ・ 坂 下 玲 子
た.
2.学習者の認識レベルに合った「運動のモデル」
を提示することは,技術構造の認識,自己認識,
学習課題や解決方法の選択を早め,学習の意味や 価値を把握させることが示唆された.
3.教授者が問題状況の指摘,解決策の示唆,解決 手段の確認と活動の組織化,問題解決の評価などゥ 指導内容を明確にすることは,学習者に学び方を 学習させる上で有効であることが示唆された.
4.この教授一学習過程を目的とするには,大単元 構成の必要が示唆された.
文 献
l)文部省:小学校指導書体育編,78,94,1978.
2)WHITING,H、T、A、箸,加藤橘夫,鷹野健次,石井喜 八訳:ポールスキル,ペースポールマガジン社,22‑26, 1973.
3)細江文利,・宇土正彦編:新しい体育の考え方.進め方,
大修館書店,52,1987.
4)井上弘:子どもの認職過程と授業過程,体育科教育,
第21巻,第10号,12‑14,1973.
5)青木真:学習評価(3)一運動に自立した人間をめざし て−,健康と体力,第19巻,第3号,42‑44,1986。
6)大貫耕一,中村敏雄編:体育の実験的実践一子どもたち が創る体育の授業−,創文企画,237‑274,1988.
7)米原俊行,水越敏行編:授業設計と展開の力丑,ぎよう
せい,206‑209,1989.
8)嘉戸修:用語解説「対抗戦型」,学校体育,第42巻,第
11号,91,1989.‐
9)寺西和子:前掲書7),149‑155.
10)星野実:データ分析・総合学習とグループ学習その 今日的課題,第25回学校体育研究同志会全国大会報告書,
31−3&1988.
11)林俊雄:主体的な体育学習をひき出す授業の構成一
「サッカー」(5年)一学校教育,第852号,広島大学附属 小学校教育研究会,30‑37,1988.
〉王
1),2)児童が把握しやすいように,斜線部をB空間(B ゾーン),その他をA空間とした.またB空間は,攻める側 からは「チャンス」であるが,守る側からは入れてはならな い「危険な場所」であり,シュートを打たれた場合,入れば 相手の得点となるが,リパウンドをとればチャンスに逆転す る.つまり,逆転する,入れ替わるという意味で「リパース ゾーン」とした。これはT君の考えをもとに学習者がみんな
でつけたものである.
麹A A 竃
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