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筑波技術大学テクノレポート Vol.22 (1) Dec. 2014
文脈追従型字幕提示の評価
永盛祐介
筑波技術大学 産業技術学部 総合デザイン学科
キーワード:字幕,Eラーニング,アイトラッカー,唾液アミラーゼ濃度計測,ストレス
1.背景と目的
本研究では PC のモニタで活用する自習型 E ラーニング システムを前提とし,講義者の映像とスライドの他に,どのよ うな情報が,どのような位置に,どのような見た目で存在す れば聴覚障害学生が内容を理解し,ストレスを感じずに学 習できるかを探っているところである。本稿では通常型字幕 と文脈依存型字幕の比較実験を行った結果を報告する。
被験者に複数パターンの字幕表現を呈示し,その際の 学習効果測定のための質問紙調査に加え,ストレスは学習 の動機と関連付いているという考えに基づき,唾液中アミラー ゼ計測(ストレス計測)と注視点計測を用いて評価した。
これらによって得られた知見を元に,聴覚障害学生のため の自習型 E ラーニングシステムの最適な画面構成を設計す ることが目的である。
2.実験の方法
聴覚障害学生に特化した自習用 E ラーニングを設計す るために,通常型字幕と文脈依存型字幕の比較実験を行っ た。通常型字幕は画面下部に字幕が表示される,一般的 な字幕表示である。対して文脈依存型字幕は本研究が提 案する字幕の表示方法の一案である。これは状況に合わ せて字幕の表示位置が変化する字幕である。たとえば話 者が喋っているときは話者の顔の横に字幕を表示する。ま た,図 1 はスケッチを指導する動画の例であるが「,ここ,これ,
それ,あれ」などの指示語により注目させたい箇所がある 場合は,その箇所に字幕を表示させている。
図1 右:通所型字幕 左:文脈依存型字幕。
このような通常型字幕と文脈依存型字幕の双方を被験
者に呈示しその差異を検討した。具体的な手順は次の通 りである。
1.注視点計測装置内蔵モニタの調整(3 分)
2.唾液アミラーゼ濃度の計測(1 分)
3.Eラーニング映像 A 視聴(5 分)
4.唾液アミラーゼ濃度の計測(1 分)
5.休憩(任意時間)
6.唾液アミラーゼ濃度の計測(1 分)
7.Eラーニング映像 B 視聴(5 分)
8.唾液アミラーゼ濃度の計測(1 分)
9.アンケート回答(3 分)
E ラーニング映像 AとB は通常型字幕と文脈依存型字 幕がランダムな順番に呈示される。アンケートの内容は以下 の通りである。
●ビデオを見る際に,内容の理解に役に立った順に順位を 付けて下さい。(□音声 □字幕 □手話 □表情)
●いずれの字幕呈示方法が理解しやすかったですか?
(□通常型字幕 □文脈依存型字幕)
●いずれの字幕呈示方法がより読みやすかったですか?
(□通常型字幕 □文脈依存型字幕)
注視点計測には Tobii 社製注視点計測装置 T60 を用 い,アミラーゼ計測にはニプロ製唾液アミラーゼモニターを 使用した。
4.結果と考察
27 名の聴覚障害学生に対し,従来型字幕と文脈依存 型字幕双方を呈示し比較を行った。2 種類の字幕の映像 それぞれを見る前後の唾液アミラーゼ濃度を比較し,変化 の度合いを対応のある t 検定で比較したところ,有意差は 認められなかった。この結果はストレスには差が無いことを 示していると同時に,映像時間が短時間だったためにストレ スに差が発現しなかった可能性を示唆している。注視点の 座標データから映像閲覧時の総移動ピクセル数を求め,対 応のある t 検定で比較したところ,従来型字幕と比べて文
筑波技術大学 紀要
National University Corporation
Tsukuba University of Technology
─ 132 ─ 脈依存型字幕は,有意に注視点移動量が少なかった。(p
< 0.05)文脈依存型字幕によって適切な注視点誘導が実 現されていると考えられる。内容の理解に役に立った情報 を Spearman の順位相関係数で比較したところ,[字幕 >
手話 = 音声 > 表情]となった。(手話 VS 音声以外は p
< 0.01)字幕が最重要であることが理解できる。理解度と 読みやすさの主観評価に有意差は認められなかった。文 脈依存型字幕のメリットは感じられなかったという結果ではあ るが,逆説的に捉えると違和感を伴わず受け入れられてい
ると考えることも出来る。今後,実験デザイン改善と同時に 被験者を増やし,より詳細な検討をしていきたい。
5.関連する学会発表
永盛祐介,西岡仁也,中島瑞季.聴覚障害学生のため の自習用Eラーニングシステムの評価.第 9 回日本感性工 学会春季大会概要集(USB);2014-3-22(北海道大学).
2014.
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