Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, November, 2007
* 非会員・筑波大学大学院システム情報工学研究科 (Graduate School of Systems and Information Engineering, University of Tsukuba)
耐震性能を考慮した東京都区部における住宅戸数の推移
Transition of number of housing in Tokyo in consideration for Seismic performance
鬼塚英城
*・村尾修**
Terukuni ONIZUKA*・Osamu MURAO**
Today, one of the most important problems related to disaster management is how to promote improvement of seismic performance of old housing. This paper presents the change of the number of housing and the density of housing in the 23 special wards of Tokyo from 1978 to 2003 with regards to structure and construction generation. In order to analyze the dataset, the housing is classified into 4 types (wooden housing built before 1980, wooden housing built after 1981, non-wooden housing built before 1980, and non-wooden housing built after 1981). Then, it clarifies how urban vulnerability in Tokyo from the viewpoint of housing seismic performance changed in the three decades after 1978.
Keywords: 耐震性能,構造分類,建築年代,住宅戸数,住宅戸数密度
Seismic performance, Structure, Generation, Number of Housing, Density of Housing 1. はじめに 1995 年に発生した阪神・淡路大震災では,大量の建物倒壊が発 生し,それに伴い多くの犠牲者が発生した.震災による直接死約 5,500 名のうち,約 9 割が建物倒壊による窒息死や圧死が原因で あったとされ1),その大部分が建築基準法改正(1981 年)以前の 旧耐震設計基準で建てられた木造住宅であった2).このような事 態を受け,旧耐震設計基準で建てられた木造住宅の耐震診断や耐 震補強を促すため,1995 年12 月に建築物の耐震改修の促進に関 する法律(以下,耐震改修促進法)が施行された.しかし努力義 務に留まる内容であったために成果は上がらず,耐震改修促進法 は2006 年 1 月に改正施行された(以下,改正耐震改修促進法). 改正耐震改修促進法では住宅及び特定建築物の耐震化率(1)を 2015 年までに 90%とするという具体的な耐震化の目標が設定さ れており,地方公共団体に対して耐震改修促進計画を策定するこ とを促している.これを受け東京都では,2007 年 3 月に東京都 耐震改修促進計画を策定した.この計画によると,平成17 年度 末時点での東京都の住宅総数の推計値は約558 万戸,うち耐震性 能を満たしていると見込まれる住宅は約425 万戸であり耐震化 率は76.3%であるが,木造住宅だけに限れば耐震化率は約65.3% と低くなっている.今後どのようにしてこれらの住宅の耐震化を 進めていくのかが都の重要な課題の一つとなっている. 住宅の耐震化を計画的に進めていくには,これまでにどの地 域で住宅の耐震性能にどの程度変化があったのか,またそれによ る地域の危険性の軽減効果がどの程度だったのかを示す指標が 必要となる.ここでいう住宅の耐震性能の変化とは老朽化した木 造住宅の建て替えや再開発による住宅の非木造化といったこと である.これまでに順調に耐震化が進み危険性が軽減している地 域であれば,特別な施策を講じなくとも今後も危険性の軽減が見 込まれる.一方で,これまでに耐震化が進んでおらず危険性が軽 減していない地域であれば,整備事業や耐震診断・耐震改修の助 成制度などの耐震化を促す施策を重点的に展開する必要がある. 建物の耐震性能に基づく地域の危険性を示す指標の一つに建 物倒壊危険度がある3).建物倒壊危険度とは,地震動に起因する 建物被害の発生による危険性を地域間で相対評価する指標であ る.調査を重ねるごとに算定方法に改良が加えられているため, 各回の危険度測定調査結果から同じ基準での時系列変化を追う ことは難しく,また対象としている建物が課税される全ての建物 となっているため,住宅のみに関する危険性を把握することは困 難である.よって建物倒壊危険度では住宅の耐震性能の変化が地 域の危険性をどの程度軽減させたのかを把握することは難しい. そのような中で五十嵐ら4)は東京都木造住宅密集地域整備事業 が実施されている41 の地区を対象とし,事業による地域の危険 性の減少効果を4 つの客観的評価指標を用いて評価しているが, 道路や公園等の整備を除いた住宅の耐震性能の変化のみによる 地域の危険性の軽減効果については求めていない. 危険度測定とは異なる方法を用いてこれまでの住宅の耐震性 能の変化による地域の危険性の軽減効果を把握することで,各地 域において今後どの程度住宅の耐震化を進める必要があるのか が明らかとなり,合理的に住宅の耐震化を進めていくことが可能 となる.住宅の耐震性能の変化による地域の危険性の軽減効果を 明らかにするには住宅の耐震性能の変化を把握することが必要 不可欠である.そこで本研究では東京都区部を対象とし,これま でに各区においてどの程度住宅の耐震性能に変化があったのか 把握するために,住宅の耐震性能に着目して住宅を構造分類及び 建築年代によって4 つに分類し,それぞれの住宅戸数及び住宅戸 数密度(2)(以下,戸数密度)の推移を見ることを目的とする.本 研究により,今後住宅の耐震性能の変化による地域の危険性の軽 減効果を明らかにすることが可能となる.
Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, November, 2007 2. 研究の対象と方法 本研究の対象地域は東京都区部とする.住宅戸数及び戸数密度 に関しては,データのもととなる住宅土地統計調査の実施年であ る1978,1983,1988,1993,1998,2003 年の6 時点25 年間を対 象期間としてその推移を追うこととした. 2-1. 使用したデータ 本研究で用いたデータは,住宅戸数に関しては住宅土地統計調 査(ここでは住宅の種類・構造・建築の時期別住宅数の集計表を 使用),世帯数と区面積に関しては全国市町村要覧のものをそれ ぞれ利用した.各データの集計時点は表1 の通りである. 2-2. 研究の方法 本研究では住宅の耐震性能に着目して住宅戸数・戸数密度の推 移を見るために,兵庫県南部地震による灘区の建物の被害状況を 考慮し5),住宅土地統計調査データを構造分類及び建築年代によ って4 つに分類して(表-2),推移を追い考察することとした. なお,建築年代に関しては住宅土地統計調査のデータ区分が5 年ごとであるために1981 年ではなく 1980 年で分けることとし, 建築年代が不詳のものはここでは除くこととした.また構造分類 に関して,木造住宅・防火木造住宅は構造上同じものとして扱え ると考え,共に木造住宅として扱うこととした. 4 つの分類の中では,建築年代が 1980 年以前の木造住宅が最 も耐震性能が低く,建築年代が1981 年以降の非木造住宅が最も 耐震性能が高い. 表-1 使用したデータ 使用データ 出典 住宅戸数 住宅土地統計調査(総務省統計局) 各10 月1 日時点 世帯数 区面積 全国市町村要覧(市町村自治研究会) 各10 月1 日時点 表-2 構造分類及び建築年代によるデータの分類 建築年代/構造分類 木造 非木造 1980 年以前 ① 木造 ~1980 ② 非木造 ~1980 1981 年以降 ③ 木造 1981~ ④ 非木造 1981~ 特別区部 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 千戸(千世帯) 木造 ~1980 非木造 ~1980 木造 1981~ 非木造 1981~ 世帯数 図-1 区部全体における住宅戸数の推移 3. 住宅戸数の推移 3-1. 区部全体における住宅戸数・住宅構造構成比の推移 住宅土地統計調査における区部全体のデータを構造分類及び 建築年代によって4 つに分類し,それらの住宅戸数の推移をグラ フにしたものを図-1 に示す.なお,住宅戸数と世帯数の増減傾 向の関係性を見るために世帯数の推移についても折れ線グラフ で示している.このグラフから,区部全体において建築年代が 1980 年以前の木造住宅・非木造住宅がこれまでにどの程度減少 してきたのか,建築年代が1981 年以降のものがどの程度増加し てきたのかが分かる. 住宅総数では1978年時点で約280万戸あった住宅が2003年に は約330 万戸と,25 年間で 2 割ほど増加している.一方で世帯 数は1978 年時点で約330 万世帯だったものが2003 年には約400 万世帯と25 年間で 2 割ほど増加しており,住宅総数と同じよう な増加傾向にある.構造分類別に見ると,木造住宅は1978 年か ら2003 年までの25 年間で4 割程度減少している一方で,非木造 住宅は1978 年から 2003 年までの 25 年間で 2.6 倍に増加してい る.建築年代別に見ていくと,建築年代が1980 年以前の木造住 宅は1978 年から 2003 年までの間に 200 万戸から 60 万戸にまで 減少している.建築年代が1980 年以前の非木造住宅は1978 年か ら2003 年までの間に25%程度減少しており,木造と比較してそ の減少率は緩やかである.一方で,建築年代が1981 年以降のも のは,木造と非木造を合わせて2003 年時点で約200 万戸となっ ており,大幅に増加している. 次に,各時点における区部全体の住宅構造構成比をグラフにし たものを図-2 に示す.構造分類に着目して見ていくと,1978 年 時点では木造住宅が全体の72%を占めていたものが1993 年には 48%,2003 年には 36%と減少しており,区部全体において住宅 の非木造化が進んでいることが確認できる.次に建築年代に着目 して見ていくと,建築年代が1980 年以前のものが1983 年時点で は92%を占めていたが,1993 年には58%,2003 年時点では47% にまで減少しており,区部全体において建築年代が1980 年以前 のものの占める割合が減少していることが確認できる.しかし, それは木造住宅による影響が大きく,新耐震設計基準以前の非木 造の建て替えをどのように進めていくかは今後の課題となりそ うである. 特別区部 72.3 60.6 45.9 33.6 24.6 17.1 27.7 31.6 28.0 24.4 22.2 19.1 0.0 2.9 9.8 14.4 18.0 19.1 0.0 4.9 16.3 27.5 35.2 44.6 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 図-2 区部全体における住宅構造構成比の推移
Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, November, 2007 3-2. 各区における住宅戸数及び増減率の推移 ここでは各区における住宅戸数の推移の特徴を把握するため に,各区の住宅戸数及び増減率の推移を見ていくこととする.な お増減率については,1983 年時点での住宅戸数を 1 とし,その 他の時点についてはその時点の住宅戸数を1983 年時点の住宅戸 数で除したものと定義した.(1978 年を基準としなかったのは, その時点では建築年代が1981 年以降の住宅が存在しないためで ある.)増減率の指標を用いることで,各区の住宅戸数の増減傾 向を相対比較することができる. 1) 建築年代が1980 年以前の木造住宅 各区の住宅戸数の推移を図-3 に示す.どの区においても建築 年代が1980 年以前の木造住宅が減少していることが確認できる が,1978年から2003年までの25年間で世田谷区では約16万戸, 大田区では約13 万戸,杉並区では約12 万戸減少しており,他の 区と比較して減少幅が大きい.一方で千代田区では約5 千戸,中 央区では約1 万戸の減少となっており,減少幅は小さい. 次に建築年代が1980 年以前の木造住宅の増減率を図-4 に示す. 住宅戸数では区によって減少幅に差が見られたが,増減率で見る と差はそれほどないといえる.千代田区,港区は住宅戸数の減少 幅は小さかったものの,増減率では1983 年から2003 年にかけて 0.2 まで減少しており,他の区と比較しても低い値となっている. 一方で荒川区,足立区,葛飾区は2003 年時点で 0.4 を上回って おり,これらの区では建築年代が1980 年以前の木造住宅が他の 区と比較して減少していないといえる. 木造 ~1980 0 25 50 75 100 125 150 175 200 225 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 千戸 千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区 図-3 建築年代が1980 年以前の木造住宅戸数の推移 木造 ~1980 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1.2 1.3 1.4 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区 図-4 建築年代が1980 年以前の木造住宅の増減率の推移 2) 建築年代が1981 年以降の木造住宅 各区の住宅戸数の推移を図-5 に示す.どの区においても建築 年代が1981 年以降の木造住宅が増加していることが確認できる が,1978 年から 2003 年までの 25 年間で世田谷区と練馬区では 約7.5 万戸,杉並区と江戸川区では約6 万戸増加しており,他の 区と比較して増加幅が大きい.一方で千代田区,中央区,港区, 台東区では増加幅は5 千戸以下であり,増加幅は小さい. 次に建築年代が1981年以降の木造住宅の増減率を図-6に示す. 葛飾区では2003年時点の増減率が11と他の区と比較すると大き く伸びており,台東区と品川区も2003 年時点で 9 と大きな値と なっている.一方で北区,千代田区,中央区は2003 年時点で 5 となっており,これらの区では建築年代が1981 年以降の木造住 宅が他の区と比較してそれほど増加していないといえる. 3) 建築年代が1980 年以前の非木造住宅 各区の住宅戸数の推移を図-7 に示す.どの区も住宅戸数の推 移は横ばいとなっているが,これは非木造住宅が解体しづらいも のであるためにどの区も減少幅が小さくなっているものと推測 できる.江東区,板橋区,足立区では2003 年時点で 5 万戸を越 えており,他の区と比較して住宅戸数が多くなっている. 次に建築年代が1980年以前の非木造住宅の増減率を図-8に示 す.どの区も1983 年から2003 年にかけて減少していることが確 認できる.しかし,本来増加するはずのないデータであるにもか かわらず一部で増加傾向を示しており,正確な傾向を把握するこ とが困難である.これは住宅土地統計調査が全数調査ではないこ とに起因すると考えられる. 木造 1981~ 0 25 50 75 100 125 150 175 200 225 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 千戸 千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区 図-5 建築年代が1981 年以降の木造住宅戸数の推移 木造 1981~ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区 図-6 建築年代が1981 年以降の木造住宅の増減率の推移
Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, November, 2007 4) 建築年代が1981 年以降の非木造住宅 各区の住宅戸数の推移を図-9 に示す.どの区においても建築 年代が1981 年以降の非木造住宅が増加していることが確認でき るが,1978 年から2003 年までの25 年間で世田谷区では約13 万 戸,江戸川区では約12 万戸,練馬区と大田区では約10.5 万戸増 加しており,他の区と比較して増加幅が大きい.一方で千代田区 では約1 万戸,中央区では約2.5 万戸の増加となっており,増加 幅は小さい. 次に建築年代が1981 年以降の非木造住宅の増減率を図-10 に 示す.2003 年時点の増減率が練馬区では22,中央区では20,品 川区と江戸川区では17 となっており,他の区と比較して大きな 伸びを示している.他の区と比較して戸数の増加が大きくない中 央区において増減率がこれほど大きな伸びを示しているのは,戸 数としてはそれほど多くはないものの1983年から2003年までの 20 年間で非木造住宅の着工が相次いだためであると考えられる. 一方で,江東区と板橋区では2003 年時点で 7 となっており,他 の区と比較してそれほど増加していないといえる. 4. 戸数密度の推移 これまで住宅戸数の推移について見てきたが,面積の大きい 区ほど住宅は多く存在しているといえる.例えば2003 年時点で 最も面積の小さい区である台東区の面積は10.08k ㎡,最も面積 の大きい区である大田区の面積は59.46k ㎡である.このように 最大約6 倍もの面積の違いがある区を同様に扱うには戸数密度 を用いるのが望ましい.戸数密度の指標を用いることで,各区の 非木造 ~1980 0 25 50 75 100 125 150 175 200 225 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 千戸 千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区 図-7 建築年代が1980 年以前の非木造住宅戸数の推移 非木造 ~1980 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区 図-8 建築年代が1980 年以前の非木造住宅の増減率の推移 面積の相違を考慮した上で相対比較することが可能となる.戸数 密度が高い区ほど,同じ面積の地域内に住宅が多く存在している ことになるため,相対的に危険性が高い区であるといえる.ここ では,住宅の中で最も耐震性能が低い建築年代が1980 年以前の 木造住宅と最も耐震性能が高い建築年代が1981 年以降の非木造 住宅に関してのみ考察することとした. 1) 建築年代が1980 年以前の木造住宅 戸数密度の推移を図-11 に示す.このグラフと図-3 とを比較す ることで,1978 年時点において住宅戸数は世田谷区,大田区, 杉並区,練馬区,足立区で多く存在しているが,戸数密度は豊島 区と中野区で約70 戸/ha と他の区と比較して大きいことが分か る.2003年時点において,荒川区が18戸/haともっとも大きく, 次いで中野区が16 戸/ha,豊島区が 15 戸/ha となっている. 一方で千代田区は1 戸/ha,港区は2 戸/ha,中央区と江東区は 4 戸/ha となっており,他の区よりも戸数密度は小さい. 2) 建築年代が1981 年以降の非木造住宅 戸数密度の推移を図-12 に示す.このグラフと図-9 とを比較す ることで,2003 年時点において住宅戸数は世田谷区,江戸川区, 練馬区,大田区で多く存在しているが,戸数密度は文京区と新宿 区が38 戸/ha,台東区が 36 戸/ha と他の区と比較して大きい ことが分かる.一方で千代田区は9 戸/ha となっており,他の 区よりも戸数密度が小さい.また千代田区ほどではないが,大田 区と足立区は18 戸/ha,葛飾区と杉並区は 19 戸/ha となって おり,他の区よりも小さな値となっている. 非木造 1981~ 0 25 50 75 100 125 150 175 200 225 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 千戸 千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区 図-9 建築年代が1981 年以降の非木造住宅戸数の推移 非木造 1981~ 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区 図-10 建築年代が1981 年以降の非木造住宅の増減率の推移
Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, November, 2007 5. 住宅戸数と戸数密度の空間的特徴 これまで各区における住宅戸数及び戸数密度の推移を見てき たが,数値による比較分析だけでは空間的特徴を把握することは できない.今後どのエリアで住宅の耐震化を進めていくべきかを 考える上で,住宅戸数及び戸数密度の空間的特徴を把握すること は必要不可欠である.したがって,ここでは住宅戸数及び戸数密 度の空間的特徴を把握するため,2003 年時点の住宅戸数及び戸 数密度のデータを地図上に示した(図-13,図-14). まず住宅戸数(図-13)について見ていくと,都心三区である 千代田区,中央区が最も少なくなっており,ついで港区,文京区, 台東区,荒川区が少なくなっている.一方で住宅戸数が多く存在 するのは江戸川区,足立区,板橋区,練馬区,世田谷区,大田区 となっており,都心部ほど住宅戸数が少なく,都心部から離れる につれて住宅戸数が多くなっているという特徴が見てとれる. 次に戸数密度(図-14)について見ていくと,都心三区と江東 区で小さくなっている一方,中野区,豊島区,新宿区,目黒区, 文京区,荒川区で大きくなっている.住宅戸数では外側に位置す る区が最も多くなっているが,戸数密度では都心三区と外側の区 に挟まれた区が最も大きくなっているのが特徴的である. 6. 地域の危険性による区の分類 地震発生時には戸数密度が高い地域ほど人的被害が大きくな ることが考えられる.また耐震性能の低い建築年代が1980 年以 前の木造住宅が多く存在している地域ほど人的被害が大きくな ることが考えられる.この2 つの指標は前章までに用いてきた指 木造 ~1980 0 10 20 30 40 50 60 70 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 戸数密度 千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区 図-11 建築年代が1980 年以前の木造住宅の戸数密度の推移 非木造 1981~ 0 10 20 30 40 50 60 70 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 戸数密度 千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区 図-12 建築年代が1981 年以降の非木造住宅の戸数密度の推移 標である.この2 つの指標を用いて 23 の区をカテゴリー分類す ることで,各区の地域の危険性の特徴を把握することができる. なお,戸数密度は密集住宅市街地整備促進事業の区域選定基準で ある30 戸/ha を分類の基準とし,建築年代が 1980 年以前の木 造住宅の割合は5%ごとに分類した. カテゴリー分類の結果(図-15),7 つのカテゴリーに分類する ことができた.グラフ内の左下に位置する区ほど危険性が低く, 右上に位置する区ほど危険性が高い.荒川区は戸数密度と建築年 代が1980 年以前の木造住宅の割合が共に高くなっており,他の 区よりも危険性の高い区であるといえる.葛飾区,杉並区は戸数 密度はさほど高くないものの建築年代が1980 年以前の木造住宅 の割合は高くなっている.渋谷区,新宿区は戸数密度は高いもの の建築年代が1980 年以前の木造住宅の割合は低くなっている. 図-13 2003 年時点における各区の住宅戸数 図-14 2003 年時点における各区の戸数密度 (%) 千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 渋谷区 豊島区 荒川区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 中野区 杉並区 北区 板橋区 練馬区 足立区 葛飾区 江戸川区 5 10 15 20 25 0 30 戸数密度(戸/ha) 60 90 建築年代が1980年以 前の木造住宅の割合 図-15 地域の危険性による区の分類
Reports of the City Planning Institute of Japan, No. 6, November, 2007 7. まとめ 本稿では,東京都区部における住宅戸数及び戸数密度の推移 について報告した.本研究により,以下の点が明らかとなった. ・ 区部全体において住宅総数が1978 年から2003 年までの25 年 間で約280 万戸から約330 万戸と2 割ほど増加している ・ 1983 年から 2003 年までの 20 年間で千代田区,港区では建築 年代が1980 年以前の木造住宅が 8 割減少している一方で, 荒川区,足立区,葛飾区では6 割近く減少している ・ 1983 年から 2003 年までの 20 年間で葛飾区では建築年代が 1981 年以降の木造住宅が11 倍,台東区と品川区では9 倍にな っている一方で,北区,千代田区,中央区では5 倍になって いる ・ 1983 年から 2003 年までの 20 年間で練馬区では建築年代が 1981 年以降の木造住宅が 22 倍になっており,中央区では 20 倍,品川区と江戸川区では17 倍になっている ・ 2003 年時点における建築年代が 1980 年以前の木造住宅の戸 数密度は,荒川区が18 戸/ha ともっとも大きく,次いで中野 区が16 戸/ha,豊島区が15 戸/ha となっている ・ 2003 年時点における建築年代が 1981 年以降の非木造住宅の 戸数密度は,文京区と新宿区が38 戸/ha ともっとも大きく, 次いで台東区が36 戸/ha となっている ・ 空間的特徴として,住宅戸数では外側に位置する区が最も多 くなっているが,戸数密度では都心三区と外側の区に挟まれ た区が最も大きくなっている ・ 荒川区は戸数密度と建築年代が1980年以前の木造住宅の割合 とが共に高くなっており,他の区よりも危険性の高い区であ るといえる 今後は本稿で明らかとなったことをもとに住宅の耐震性能の 変化による地域の危険性の軽減効果を明らかにしていきたい. 補注 (1) 耐震性能を満たす住宅・建築物数(1982 年以降の建築物数+ 1981 年以前の建築物のうち耐震性を満たす建築物数)が住 宅・建築物数の総数に占める割合のことをいう. (2) 区域内の住宅の戸数を区域の面積のヘクタールの数値で除し た数値のことをいう. 参考文献 1) 警察庁(1995)「警察白書」,警察庁 2) 建設省建築研究所(1995)「平成7 年兵庫県南部地震被害調査 中間報告書」,建設省建築研究所 3) 東京都都市整備局(2002)「地震に関する地域危険度測定調査」, 東京都都市整備局 4) 五十嵐政泰,村尾修(2007)「東京都木造住宅密集地域整備促 進事業による地域の危険性減少効果」,地域安全学会論文集 No.9,pp.235-244,地域安全学会 5) 村尾修,山崎文雄(2000)「自治体の被害調査結果に基づく兵 庫県南部地震の建物被害関数」,日本建築学会構造系論文集第 527 号,pp.189-196,日本建築学会