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調査論に関する参考資料 ⑺

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資   料

調査論に関する参考資料 ⑺

芳   賀    寛

は じ め に

1  封建制下の統計生産の形態 2  過渡的統計生産の形態 3  資本制的統計生産の形態 4  統計生産の社会的歴史的性格 5  補   遺

は じ め に

既述のとおり,2000年代までに筆者は,社会科 学における統計利用および政府統計制度をめぐる 論議の一端も検討し,発表する複数の機会を持つ ことができた.しかし個々のテーマを慌しく散漫 に扱っていたというのが実態で,それらを統一的 に顧みるまでには至らなかった.そこで2000年代 までに行った自身の作業も反省する一環で,社会 観察過程および観察方法に係って重要な調査論,

社会統計情報の生産をめぐる社会科学としての統 計学(以下,社会統計学)での論議を顧みる作業 を,2010年代前半から現在まで次のとおり継続し ている.

第 1 段階では,社会統計学の創設メンバーの一 人でもある木村太郎(以下,木村)の研究1)につ

いて,( 1 )社会調査および統計調査の目的,対 象,方法,( 2 )社会調査としての一部調査,統 計生産のための一部調査,典型調査,( 3 )静態 観察と動態観察,統計調査論の課題と内容,を振 り返った2).続く第 2 段階では,木村の調査論が 特に構成的統計を軸に形成される独自の統計学体 系に基づくことに留意して,( 4 )統計,統計生 産過程,統計利用過程,補助科学としての社会統 計学,( 5 )統計対象と統計方法,統計と社会集 団,( 6 )統計学における集団論,観察単位集団 とその諸属性,静態集団と動態集団,に関連する その見解を纏めた3).さらに,これら第 1 段階と 第 2 段階での作業も踏まえて,( 7 )木村の調査 論と統計学体系論の全体において重要であると考 えられる,社会統計学の概念規定に係る基本問題 を中心に敷衍し,多面的に検討した4).そこで

1) 木村太郎(1977)「統計の歴史的性格と統計 学の体系化に関する研究」(北海道大学博士学 位論文),同(1977)『統計・統計方法・統計 学』産業統計研究社,同(1992)『改訂 統

計・統計方法・統計学』産業統計研究社.

2) 芳賀寛(2013)「調査論に関する参考資料」

『経済学論纂』53-3・4 ,同(2014a)「調査論 に関する参考資料(2)」『経済学論纂』54-5・

6 ,同(2014b)「調査論に関する参考資料

(3)」『経済学論纂』55-2.

3) 芳賀(2016a)「調査論に関する参考資料

(4)」『経済学論纂』56-5・6 .,同(2016b)

「調査論に関する参考資料(5)」『経済学論纂』

57-1・2 .同(2017)「調査論に関する参考資 料(6)」『青山経済論集』69-3.

4) 芳賀(2018a)「社会統計学に関する参考資

(2)

は,21世紀前半時点から20世紀の社会統計学全般 の特徴を私なりに今後改めて省察する上での起点 のひとつとすることも意図して,統計=社会総体 説に沿って提示された木村の社会統計学体系につ いて,社会統計情報をめぐる今日的な課題とも関 連させつつ,私なりの現時点における暫定的な評 釈も行った.

本資料は,筆者が統計研究参考資料として纏め てきた上記の作業に繫がる側面を有する.以下で は,木村の著書5)の第Ⅱ部第 1 章に準拠して,統 計生産の歴史的形態に関連する諸問題が論じられ る箇所に筆者による見出しを新たに挿入しながら 叙述内容を整理,確認するとともに,若干の注釈 も追加する6).今回は,従来の統計調査論から独 自の統計生産論への展望が暗示される木村の論考 に焦点を当て,その調査論と統計学体系論が形成 される背景を確認することも兼ねた統計研究参考 資料としたい.

1  封建制下の統計生産の形態

A 封建制下の数量的記録

(119頁)封建制下の各種の数字的諸記録は,

今日の統計とは著しく異なる.これらの諸記録の どこまでを今日の統計と同じ意味で統計と呼び得 るかは,大いに迷うところである.少なくともそ れは集団を反映する数字とみなし得るものではな い.さらにその多くは国家というよりは地方,小 地域に関する記載であり,またその内容は極めて 雑多な事象を不統一な形で含む.“封建制下の統 計”7)の特徴は,その非集団性,地域的狭小性,

記載内容の雑多性にあるのであって,そのこと自 体一般的な意味において非統計的な性格を持って いることは確かである.

しかしこれらの数字的諸記録は,たとえ狭小な 地域の範囲についてのものにせよ,地域における 社会的諸事象を数量的に総括的に捕捉し,表示し ているものであって,その限りにおいて,これを 統計とみなすべきである.しかもこれら “封建制 下の統計” の非集団性,地域的狭小性,内容の雑 多性は,何れも封建社会の構造的特質から規定さ れる必然的な性格に他ならない.

B 封建的土地所有と封建制下の統計生産

(119頁)“封建制下の統計” 生産は,封建的財 産形態であるところの封建的土地所有によって基 本的に制約されている.“封建制下の統計” が統 計たることの意味も,封建的土地所有の構造を無 視しては理解し得ない.

(119-120頁)封建制下の諸財産は,封建的土 地所有と都市における組合的共同所有としてのみ 存在する.したがって “封建制下の統計” 生産 も,この封建的土地所有と組合的共同所有を基礎 とし,対象とすることによってのみ成立し得る が,組合的共同所有についての問題は以下の行論 料 」『 北 海 学 園 大 学 経 済 論 集 』 65- 4 , 同

(2018b)「社会科学としての統計学における概 念規定をめぐって」『2018社会情報学会大会報 告論文』.

5) 木村(1992).

6) 第Ⅱ部全体のテーマは「諸統計論―諸統計 の歴史的性格についての考察―」,第Ⅱ部第 1 章のテーマは「統計生産の歴史的形態につい て」で,第 1 章は〔Ⅰ〕はじめに―統計生産 の歴史性―,〔Ⅱ〕封建制下の統計生産形態,

〔Ⅲ〕過渡的統計生産形態,〔Ⅳ〕資本制的統 計生産形態,から構成される.本資料では,

これらの順序を一部入れ替え,さらに〔Ⅰ〕

~〔Ⅳ〕の表題を若干変えて,それらの論点 を整理,説明する.

7) 原著では二重引用符(“ ”)を挿入しない封 建制下の統計で記述されるが,ここでは,木 村が通常想定する統計とは異なる封建制下の 各種の数量的記録という意味で “封建制下の統 計” と記す.以下も同様である.

(3)

においては省略する.ただし組合的共同所有もま た土地所有を基礎とするものとされているから,

封建的土地所有における問題との本質的な差異は ないものと考えてよい.

(120頁)封建的土地所有が,上からの所有と しての領主的土地所有と下からの所有としての村 落共同体的所有との二重的な土地所有であること は知られているところである.したがってこの領 主的支配の単位8)としての領主的土地所有は,

“封建制下の統計” 生産の一応の地域的範囲であ るとともに,村落共同体的所有―これまた土地 所有である―は,その底辺的な基礎である.つ まりここでの統計生産は,その総体としても組成 単位としても,土地所有を対象とせざるを得ない のであって,このことは,“封建制下の統計” が 土地台帳を原基的な形態とし,属地主義的な性格 を持つことの基本的な原因である.また土地所有 の相互に封建的な性格は,一切の諸財産および住 民をも含めて,土地所有の上にのみ財産としての 意味を持たせるのであって,土地所有を超越した 財産,人口といった意識は,ここでは到底成立し 得なかった.

C “封建制下の統計” 生産基礎としての土地 台帳

(120頁)封建的支配の単位は,封建的土地所 有に裏づけられた領主制である.領主制は “封建 制下の統計” 生産にとって一応の地域的範囲を成 す.封建制の初期には,この領主的支配の全地域 にわたる “封建制下の統計” が,土地台帳の形式 をもってしばしば生産されている.

12世紀英国のウィリアム征服王によって遂行さ

れた王国土地台帳の作成は,この種の大規模な土 地台帳の典型的なものである.そこには全領地の 土地所有者の名の下に,荘園,耕地面積,住民 数,家畜に至るあらゆる土地に付属した財産が記 載されている9)

(121頁)封建制下の土地台帳は,今日みられ る土地台帳,すなわち近代的私的土地所有の登記 簿としての土地台帳とは,その機能,様式におい て著しく異なったものであることを知らねばなら ない.それは何よりも封建領主の封建地代収取の ための資料として,また彼らの財産目録として作 成されるものであるから,支配地域内における耕 地,その良否,森林,水車,農産物,工産物,地 代,賃料,住民と戸数,そしてその身分等,彼ら の収取の基礎となるあらゆる資料の記載を含む.

ウィリアム征服王の土地台帳は,この種の土地台 帳の最も典型的なものといえよう.

(120-121頁)このような大規模な土地台帳 は,封建制の初期にみられるのみであって,後期 になると領主制がさらに諸種の諸領地に分割さ れ,“封建制下の統計” 生産の地域的範囲も自ず から狭小になって行く.それはまた,封建的土地 所有の上に立つ領主制自体の構造的な特質による ところであったといわなければならないが,それ とともに土地台帳も当然,小規模のものへと移行 して行く.

(121頁)土地台帳は,封建制が後期に進むに つれて小規模になるとともに,記載事項も次第に 整理され,住民については宗門帳あるいは戸籍簿 に,農作物については収穫帳等に分化して行き,

土地台帳そのものも土地所有の保証的な機能を加 えて,近代的な土地台帳へと純化して行く.にも 拘らず,封建制下の土地台帳の封建的収取のため 8) この箇所以降の木村の叙述で使われる単位

は,統計調査の観察対象としての単位(個 人・世帯,事業所・企業・組織体)と同質で はない場合が多いが,以下では特に注記しな い.

9) John,V.(1884)Geschichte der Statistik, ErsterTeil,VerlagvonFerdinandEnke,足 利末男訳(1956)『統計学史』有斐閣.

(4)

の資料としての意味は,最後までその本質として 残存する.封建制下の土地台帳が土地所有者と面 積の単なる記載に留まらず,農作物の種類,上・

中・下田等の豊度,平均収量等,封建地代の生産 性についての記載を必ず含むものであったことが 立証している.この時期の土地台帳が,なお単な る登記簿としてではなく,“封建制下の統計” と して,また少なくとも “封建制下の統計” の生産 基礎として作成されていたことを示すものであ る.

D “封建制下の統計” 生産方法の変遷

(121-122頁)“封建制下の統計” 記録たる土地 台帳は,いかなる方法によって作成されたのであ ろうか.その方法,測量基準は極めて不統一かつ 任意なものであったにせよ,封建的な支配権力を 背景に,土地については検地,地押調査,収穫高 については坪刈,検見等の実測的な方法によっ て,強制的かつ他律的な形で行われた.ただし封 建的支配は,基本的には土地所有を通じての支配 であるから,それは末端においても個人を単位と しては追求されず,あくまで村落共同体を対象と して対地的な観察によって行われたのであった.

(122頁)“封建制下の統計” の原基的な形態 は,いままで述べてきたように土地台帳であっ た.この土地台帳は,土地所有を単位として,土 地,住民,家畜等,あらゆる雑多な封建的諸財産 を記載内容に含む点において,まさに “封建制下 の統計” の原基的な形態を成すものといえる.

しかし,この土地台帳そのものが統計たり得る のは,一般的には領主的支配地域を単位としてそ ういい得るのであって,ますます細分化して行く 全ての土地台帳についていい得るものではない.

事実,それは封建制の後期に至るほど細分化され るとともに,記載内容も次第に分化して行き,統 計そのものというよりは,むしろ統計の生産基礎 として利用されることになる.このような意味に

おいて,古典的な封建制初期の土地台帳は,一応そ れ自体統計であるとしても,実は統計と統計の生 産基礎との未分化の形態を示すものといえよう.

封建制の後期になると,領主的支配地域を対象 とする戸口統計,住民統計,収穫統計,あるいは 家畜統計等が生産されるが,これら統計の生産基 礎は,形の上では近代的なものであるが,方法的 にはあくまでも土地所有を基礎とするものであっ て,その属地主義的な基本性格には変わりはな い.

封建的領主制の統一支配機構として,封建的中 央集権が確立されても,この統計生産形態に基本 的な変わりはない.ただし,支配領主を通じて統 計報告を求める方法がとられ,地誌統計の形をと ることになる.地誌統計は,相互に封建的な諸領 主制を統一する必然的な統計表示方式といわなけ ればならない10)

E 封建制下の人口統計の生産

(122-123頁)封建制の支配者達は,その収取 基礎としての土地には大きな関心を示したが,人 口その他の社会現象については,さほど関心を示 さなかった.それは人間労働が土地に従属したも のとしてしか考えられなかった封建制社会固有の 意識形態によるものである.そのことは,奴隷制 国家において大規模な人口調査が行われ,戸籍簿 が整備されていたのと比べて極めて対照的であ る.

(123頁)しかし,封建制社会に人口統計の生 産が全くなかったというわけではない.少なくと もわが国には,1591(天正19)年に豊臣秀吉が全

10) 大塚久雄,高橋幸八郎,松田智雄編(1960)

『西洋経済史講座:封建制から資本主義への移 行 第 1 (封建制の経済的基礎)』岩波書店,

上原専禄(1950)『独逸中世の社会と経済』弘 文堂,伊藤栄(1961)『西洋封建社會発達史』

弘文堂.

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国的に行った戸口調査(人掃令),1721(享保 6 ) 年に徳川吉宗によって創始され,1846(弘化 3 ) 年まで125年間,17回の全国人口統計記録が歴史 的資料として存在するし,全国的ではない領地内 の人口統計であれば,諸藩で実施した事例も決し て少なくはない.

この種の人口統計の生産が行われた直接的な動 機は,中央集権下諸藩の兵力,賦役負担力,財力 等の状勢把握にあったと思われる.だが,その生 産過程は,ここでも領主制,封建的土地所有に よって基礎づけられ,制約されざるを得ない.

封建制下の人間は,諸侯,武士等の特権身分を 除外すれば,生産物や森林や池,家畜とともに,

基本的には土地の付属物としてしかみなされてい ない.封建制初期の土地台帳が,住民数を物産高 や家畜数と並んで記載していることが,そのこと を端的に物語っている.

封建的社会体制の下部構造としての農奴制の維 持存続が,やがて封建的権力の重大な課題になる につれ,農民の土地への緊縛を目的とした農民の 捕捉が必要となってくる.そして封建的身分制 度,宗教的支配体制の一環として,わが国におけ る人別帳,宗門改め,ヨーロッパにおける教区 簿,身分帳のような一連の戸籍簿を,土地台帳か ら独立した形で作成するに至らしめる11)

(123-124頁)にも拘らず封建制下の人口統計 生産も,基本的には属地主義的性格を持っている のであって,たとえ戸籍簿,宗門帳に基づいて統 計が生産されたとしても,それはあくまで土地に 付属した住民として数えられたに過ぎない.しか もここでは,住民が人格を持った近代的統計調査

における被調査者として数えられるのではなく て,地域の持つ単なる属性の一つとして数えられ ているに過ぎない.このような意味で封建制下の 人口統計は,属地主義的であるばかりでなく,む しろ一種の対地的調査としての性格を持つもので あった.そこでは,被調査者としての人間的主体 性は全く無視され,統計生産過程は調査者たる封 建的支配者によって一方的に統制されるだけであ る.すなわち “封建制下の統計” 生産は,統計生 産とはいえても,調査者と被調査者,人対人の関 係の上に成立する近代的な統計調査とは全く異 なったものだったのである.

2  過渡的統計生産の形態

A 封建的土地所有の解体過程と統計生産基礎 としての土地台帳

(124頁)封建的土地所有の解体過程は,とり もなおさず農民的土地保有,そして私的土地所有 の成立過程である.同時にそれはまた農民の土地 からの解放と都市への人口集中の過程でもあっ た.

このような封建制の解体過程において,封建制 下の “属地主義的統計生産基礎” も必然的に解体 せざるを得なくなる.事実,ヨーロッパにおいて は,この時期に当たる15~16世紀には土地台帳等 の諸記録は殆ど消滅し,たとえ存在したとしても 有名無実なものになってしまった.

しかし一方において封建的領主制の上に成立し ていた中央集権たる王制は,ますますその収取基 礎を直接,新しい土地所有の上に置かざるを得な くなり,絶対王制の財政基盤としての土地所有お よび人民の統計的捕捉の必要に迫られるのであっ て,絶対王制期に新しい土地台帳の作成が再び活 発化するのはそのためである.ただし封建的土地 所有が解体し,土地所有も激しく変動する中で,

封建的土地所有そのものを前提とする土地台帳 11) 山主政幸(1958)『日本社会と家族法 戸籍

法をとおして』日本評論新社,大石慎三郎

(1959)「江戸時代における戸籍について そ の成立と性格の検討」福島正夫編『戸籍制度 と「家」制度 「家」制度の研究』東京大学出 版会.

(6)

は,もはや少なくとも統計生産のための基礎とは 成り得なかった.

B 封建的土地所有の解体期における統計生産

(124頁)封建的土地所有の解体期=農民的土 地保有の成立期において,主として絶対主義王制 の財政的要請に基づいて登場する統計生産方法が 推算である.

(124-125頁)17世紀末から18世紀にかけて隆 盛をみた推算は,一般的には,社会的事実の数量 的把握という統計生産的な側面と,社会現象にお ける規則性の観察という統計利用的な側面を持っ ており,統計学史の上ではむしろ後の側面の方が 重視されてきた.しかしその端緒は,17世紀末の ヨーロッパにおいて都市などの行政的必要から自 然発生的に行われていた推算であって,これらは 戸口調査から人口数を,土地台帳から土地の担税 力を推定するという,むしろ統計生産技術として のそれであったといえよう12)

(125頁)しかしこの推算が,統計の生産と利 用との両面において全面的な開花を遂げるのは,

何といってもペティ,グラントの諸業績の影響に よるものであった.もちろん “政治算術” の名に 集約されるペティ,グラントの業績は,単なる統 計の生産と利用というような社会の数量的観察の 側面にのみ矮小視すべきものではなく,彼らの功 績の大部分は,これらの観察を通じて定立される 彼らの社会科学的認識そのものにあったことはい うまでもない.にも拘らず,彼らが創始した推算 の技術的側面と,社会経済の数量的観察への関心 は,ヨーロッパの各国に大きな影響を与え,諸種 の推算を盛んならしめた.フランスにおける ヴォーバンの土地面積,税負担力,人口の推算,

英国におけるハレーの人口推算,ダヴィナントの 人口,国富の推定等は,この種の統計生産として の推算の顕著な事例に属する13)

C 統計生産技術としての推算

(125-126頁)統計生産の技術としての推算と は,社会経済現象について経験的に獲得された部 分的なあるいは個別的な知識や数値に “通常の 値” としての一般性を与え,これら諸種の “通常 の値” を組み合わせ演繹して,総体的な数量的認 識に到達しようとするものである.したがって

“通常の値” がしばしば大胆な仮説的なもので あったとしても,そこには萌芽的な大数法則の思 想とそれを背景にした平均,比率の概念が成立し ているのであって,これらの概念,方法が,当時 開花期にあった自然科学の諸方法から導入された ものであることはいうまでもない.したがってま たこれらの統計生産は,主として市民出身の科学 者達の個人的な作業として行われ,政府の行政的 な事業として行われたものではなかった.そこか ら推算が統計生産において果たした役割も,とか く軽視されることになるのであるが,にも拘らず 推算の結果たる統計が,当時,諸種の政治的,行 政的要請に応えるものであったことは疑いな い14)

(126頁)とはいえ推算は何れにしても,統計 の社会的生産基礎とその観察組織が崩壊し,欠如

12) Westergaard,H.(1932)Contribution to the History of Statistics,P.S.King&Son,森谷 喜一郎訳(1943)『統計學史』栗田書店.

13) 松川七郎(1967)『ウィリアム・ペティ そ の政治算術=解剖の生成に関する一研究』岩 波書店,特に補論 1 「統計学史研究における 5 つの時期 政治算術・国状学を中心とし て」,補論 3 「三つのグラント研究によせて」.

14) 木村は,「推算の過渡期的性格,特に統計生 産基礎を欠如した段階における統計生産方法 としての性格は,現代の推計にも共通してい る.この点については,機会を改めて論考し たい」と述べている.木村(1992)133頁.

(7)

しているという事情の下に登場するものであるか ら,その結果も当然,地域や内容において細密さ を期待し得るものではなく,またその信頼性,正 確性においても極めて不十分なものであった.し たがって資本主義国家が,その統治機構を整え,

その下に組織的な統計生産が行われるようになる と,これに席を譲ることとなる.

D 表式調査をめぐって

(126頁)資本主義国家の統治機構の成立とと もに,まず組織的な統計生産方法として登場する のが表式調査である.表式調査とは,形式的にい えば,調査票の過程を省略し,一定の地域を単位 として,直接集計表形式への記入を要求する調査 法である.また,その限りにおいて,集団観察法 たる統計調査法の未開段階を成す不十分な幼稚な 生産方法とされている15)

集団観察法たる統計調査法を完成された統計調 査法であるとし,その観点から表式調査を問題と すれば,もちろんこの評価は正しい.しかし,そ れはあくまで調査する主体の側からの評価であっ て,今日のような統計調査法が,当時の調査客体 たる社会構造の中にそのまま受け入れられるかど うかは,極めて問題とされるところであろう.

(126-127頁)成立期における資本制国家は,

たとえ封建制権力を打倒し,その上に市民的な行 政機構を打ちたてたとはいうものの,農村にはな お共同体的な村落的秩序が残存していたのであっ て,多くはこれらの村落的秩序を近代的な地方自 治組織に置き換えることによって,その行政機構 を成立せしめることとなった.これら村落的秩序 は大体,富豪あるいはブルジョア的地主によって

支配されるところであり,農民も小工業もなおこ れら村落に付属する存在でしかなかったから,こ の支配組織を通じて,属地的に統計生産を行う他 はなかったし,それが何よりも適した方法たり得 たのである.

(127頁)このような統計生産機構を裏づける 地方行政組織の成立の仕方は,資本主義各国の資 本主義成立の仕方の相違に基づいて,それぞれ特 殊性を持つものである.この特殊性は,ごく大雑 把にいって,この過渡期における新国家権力の性 格,そしてそれを支える下部の社会構造によって 規定される.

表式調査は,強固に残存した封建的土地所有勢 力の主導の下にその行政機構を確立せしめたドイ ツや,分割地的小農民を土台とした村落秩序の上 に官僚的行政機構をつくり上げたフランスにおい て最も普及し,また長期にわたって継続された.

これに対して,資本主義が封建的諸関係を徹底的 に掃滅し,資本主義的農業経営の発展が古い村落 的秩序をも崩壊せしめてしまった英国において は,表式調査が成立する余地は殆どなかった.こ こでは,推算の時期から後,表式調査の時期を経 ずして,統計調査の時代が始まるのである.

表式調査は,その属地主義的な構造からして も,本来的に農村地域を対象としてのみ成立し得 るものであり,都市を対象とする場合には無力で あった.ドイツやフランスにおいても,都市の統 計生産については,推算に依らざるを得なかった のであって,都市に対する推算と農村に対する表 式調査とは,むしろ並行的な形で過渡期の統計生 産を担っていたといえよう.都市と農村とのこの ような統計生産方法の分裂は,近代的な統計調査 方法の確立によって初めて統一されることとなる.

(127-128頁)諸工業生産が家内手工業として 地域的支配の下に従属している限りでは,これを 表式調査によって属地的に捕捉することも可能で あった.物産表はこの面における表式調査結果で 15) Mayr,G.v.(1914)Statistik und Ge-

sellschaftslehre,ErsterBand:Theoretische Statistik,Tübingen,S. 96, 大橋隆憲 訳

(1943)『統計学の本質と方法』小島書店,235 頁.

(8)

ある.しかし工業生産が工場制手工業からさらに 大工業へと発展し,それが農村の支配地域の外部 から都市ブルジョアジーによって経営されるよう になると,表式調査による捕捉は全く不可能にな る.そして工場統計は,他の諸統計がなお表式調 査の段階に留まっている時期に,早くも近代的な 統計調査の対象に移行していったのである.

(128頁)ドイツやフランスにおいては,工業 や人口に関する統計が近代的な統計調査に移行し ても,農業生産や家畜,小工業等を対象として表 式調査はかなり長い期間存続していたようであ る.マイヤーは,表式調査が往昔行われた不完全 な調査であるとしながら,現在なお一部において 行われている調査であると述べている.またフラ ンスでは,表式調査はむしろ近代的な統計生産方 法とみなされていたらしく,モロー・ド・ジョネ はこの方法を称揚し,フランスの地域的行政区域 が多数の均等な小村落単位から構成されているこ とが,この近代的な統計生産方法の実施を可能に したのであって,英国においてはこのような方法 が成立し難いことを指摘している16)

E 被調査者不在の統計生産方法としての推算 と表式調査

(128頁)封建制社会から資本制社会へ移行す る過渡期において登場する推算と表式調査は,何 れも統計生産過程に被調査者が参加しない,いわ ば被調査者不在の統計生産方法である.しかし推 算は,調査者たる支配者がその地域的支配力を失 い,統計生産の社会的基礎が失われていることか ら採用を余儀なくされる統計生産の方法であるか ら,一面からいえば被調査者の,この場合におい ては新しい市民階級の権力に対する独立性を示す ものに他ならない.殊に資本主義の発展が激的に

進行し,資本家的生産や土地所有の集中度が急速 に進んでいればいるほど,被調査者としての市民 に対する直接的捕捉=調査は困難であり,また調 査に対する抵抗も大きく,近代的な統計調査の実 施は,かえって立ち遅れざるを得ない.英国にお いて当時,動態統計の生産と利用とが著しく発展 を遂げていたにも拘らず,かなり後まで推算によ る統計生産が行われた理由の一端もここにある.

(128-129頁)これに対して表式調査は,国家 権力による地域支配機構の成立を前提とする属地 主義的な統計生産方法であり,その限りにおいて 一応の統計生産基礎を持つものである.しかしこ の統計生産基礎は,なお被調査者としての人間で はなく土地であり,人間および諸財産が土地に従 属したものとして捕捉されるのであって,調査者 にとって被調査者は,単なる没人格的な存在に過 ぎない.この統計生産方法の前資本主義的性格 も,まさにこの点にあるというべきであろう.

3  資本制的統計生産の形態

A 資本制下の私的所有と政府統計の生産(統 計調査)

(129頁)封建社会から近代社会への移行は,

封建的土地所有を含む一切の共同体的所有の廃棄 と,近代的私的所有の確立とによって完成され る.古い共同体的所有の下にあった財産は,全て 国家の干渉を斥けるところの純粋な私有財産にま で発展し,その上にのみ資本の自由な発展が開始 される.

近代国家が,このような不可侵の私的所有を前 提とするものであることはいうまでもない.した がってここでは,国家が行う統計生産の一切が,

私的所有を通じてしか行い得ないのである.

私的所有の基礎は,いうまでもなく個人であ る.人間が身分制的束縛から解放され,平等な個 人としての存在を社会的に確立することによって 16) MoreaudeJonnès,A.(1847)Éléments de

Statistique,Paris,p.114.

(9)

初めて私的所有も確立する.したがって統計の生 産は,まず何よりも個人を通じてその財産を捕捉 することを建前とするのであって,かかる個人の 集団が,まず統計調査の対象たる社会集団の原基 的な形態となる.

B 政府統計調査の対象(社会集団)と統計単 位,標識

(129頁)しかし私的所有が個人と同一である のは,資本制生産がなお独立小商品生産の域に留 まっている段階においてである.資本制大工業の 発展は,法律的な人格としての個人の名におい て,生産手段の私的所有をますます集積するとと もに,一方では多くの個人が生産手段を失い,私 的所有から解放されて単なる労働力の担い手とし ての個人に転化する.個人の集団と生産手段の集 団とが分裂し,独立した社会集団を形成すること となる.

(129-130頁)統計調査が対象とする社会集団 とは,基本的には,これら 2 つの集団の何れかで ある.前者が人口の集団として,後者が企業等の 諸施設の集団として存在することはいうまでもな い.かくて統計単位とは,人口集団についていえ ば,私的所有から解放された個人や家計であり,

企業集団についていえば,それのみを通じて資本 制社会の財産を捕捉し得るところの私的所有の単 位としての企業である.統計として観察されるべ き事項は,全てこの統計単位たる個人あるいは私 的所有の属性として,すなわち量的または質的標識 として,またかかるものとしてのみ捕捉され得る.

C 政府統計調査の方法的特徴と限界

(130頁)資本制社会における基本的な統計生 産方法としての統計調査法は,資本制社会の組成 要素たる個人ならびに私的所有の集団を社会集団 として規定し,その観察方法を意識的に整理,体 系化したものに他ならない.したがって統計調査

が,一個の歴史的な統計生産形態であるととも に,資本制社会に最も適応した統計生産方法であ ることはいうまでもない.またかかる意味におい て,統計調査の本来的な形態は対人調査である.

統計調査が,私的所有という単位を通じてし か,すなわち私的所有の意思に依存してしか統計 対象を把握し得ないということは,この統計生産 方法の最大の弱点であろう.この弱点は,統計報 告を法律的に義務づけることによって,ある程度 緩和されるかもしれない.しかし,私的所有の本 質的な限界を超えることは不可能である.

D 資本の集積,集中,独占段階への移行と統 計生産方法の変化

(130-131頁)統計調査の統計生産方法として の限界は,資本の集積が進み,社会的生産力の大 部分が一握りの独占資本に集中されるほど,さら に明確な形で現れてくる.統計調査法は本来的 に,多数の私的所有の単位から成る集団を対象と する集団観察法であるから,大工業も小生産も統 計単位としては同一平等な資格を持って取り扱わ れることを建前とする.したがってその格差がな お小さいときには,社会集団を規模別に分類する ことによって,その構造を示すことができる.す なわち,大工業も小生産も同種の統計単位の集団 とみなし,それを数え上げて集団としての大きさ を確定し,また部分集団に分割して,これを社会 集団の構造として示すことが可能であり,集団観 察としての統計調査の本来的な機能もまさにこの 点にある.

(131頁)しかし,社会的生産力を圧倒的に集 積した独占的企業とその下部に従属する小生産と を同種の単位とみなし,共通の標識を適用して分 類することの意味は,今日の段階でかなり後退し てしまったことも否定し得ない.独占資本の数 は,私的所有の全集団に対する部分集団を構成す るには余りにも少なく,それが社会的に占有する

(10)

生産力は,余りにも膨大なものになってしまって いるからである.しかも独占資本に占有されてい るこの膨大な社会的生産部分も,小工業における 微小な生産過程も,ともにこの私的所有単位に共 通の属性として,単なる分類のための量的標識と してしか捕捉され得ないのである.

私的所有の分布構造を明らかにするという意味 で,このような集団観察がなお一定の重要さを 持っていることは否定できない.しかしそれは少 なくとも,社会的生産の支配的部分を占める独占 資本の生産過程を捕捉するものとしては役立ち得 ないものとなってきている.事実,国家独占資本 主義の下においては,国民経済計算,経済計画な どの作成のために生産量,在庫高,設備投資,雇 用状況等の経営的事項についての独占企業に対す る各種の特別の統計報告が頻繁に要求されてお り,工業統計生産の主要な課題は,このような独 占企業内部の経営諸要素を捕捉することに移行し つつある.ここでは,もはや単位を数え,標識に ついて分類することが問題ではなく,特に量的標 識そのものが企業の内部でいかなる様式で記録さ れているか,そしてそれをいかなる形で規則的に 統計生産に組み入れるか,ということが問題なの である.

E 統計生産方法としての報告制度

(131-132頁)独占企業内部の経営的諸要素に 関する記録は,資本制社会の下では私的所有内部 の問題である.しかしこれを統計的に把握すると すれば,報告の義務づけと記録方式の統一化が要 請されてくる.この統計生産上必然化する要請 は,現在はなお不十分にしか果たされていない.

それはただ,国民経済計算や経済計画に必要な最 小の範囲で行われているだけである.にも拘らず 高度資本主義国におけるこの種の統計生産は,独 占資本そのものの維持,発展にとってますます重 要性を持ってきているのであって,その限りにお

いて独占企業のこの種の統計生産への協力が著し く進みつつあることも明らかである.そしてそれ こそが,今日における国家独占資本主義のまさに 重要な一側面なのである.

(132頁)国家独占資本主義の下で,国民経済 計算のための,独占企業を対象とするこのような 統計資料収集活動は,形態的にいえば第 2 義統計 的なものである.この第 2 義統計的性格は,社会 主義国における農工業統計の生産形態,すなわち いわゆる “報告制度” に共通するものであって,

その意味でこの種の統計生産の発展は,報告制度 の過渡期の段階とみなし得るものであろう17).だ とすれば,この種の統計生産の発展が極めて重要 な歴史的意味を持つものであることはいうまでも ない.

現下の資本主義社会で,工業に対する集団観察 法的な統計生産方法が無意味になってしまったと いうことでは,もとよりない.私的所有の独占的 集中と分解の構造を明らかにする統計は,むしろ ますます重要である.にも拘らず,膨大な社会的 生産力がもはや私有の集団として捕捉し得る枠を はみ出してしまっているという認識こそ,今後の 統計学構築への重要な鍵であると思われる.

4  統計生産の社会的歴史的性格

A 統計生産の諸形態をめぐって

(117頁)現代における統計生産の基本的形態 は,いうまでもなく統計調査である18).統計調査 とは,統計として数量的に反映すべき社会経済過 程を,その組成要素である社会的に同種の単位か ら成る集団として捕捉し観察する大量観察のこと

17) 統計生産方法の発展段階に関するこのよう な認識は,現時点から顧みると時代的制約を 伴うものであるといえるかもしれない.

18) このことに係る問題については,本資料の 補遺で若干言及する.

(11)

であって,その方法的規定が統計調査法である.

学問的規定としての統計調査法も,現実の統計 調査実践の過程を,意識的,方法的に体系化した ものに他ならないから,それが一定の社会的,歴 史的な基礎の上に立った統計の生産方法であるこ とはいうまでもない.またこのような社会的な基 礎があればこそ,それは今日なお統計生産の基礎 的方法たる位置を占め,他のあらゆる方法は,こ の統計調査法を原型としてのみ説明される.そし てそのことは今日なお正しい.

(117-118頁)しかし一面において,大量観察 法たる統計調査法が,常に統計生産の基本的形態 であらねばならぬということもないであろう.こ のような集団観察方法である統計調査法の成立 は,統計生産の対象たる社会経済過程そのもの が,基本的には集団として存在し,現象しつつあ るという現代の生産様式と不可分ではないと考え られるからである.事実,統計生産の発展は,今 日の資本主義的な段階に至るまで,それぞれの社 会的歴史的な諸段階に応じて,諸種の形態をとっ てきたことを示している.今日の統計学は,この ような統計生産の歴史的形態を,単なる技術的な 未熟形態として取り扱うか,あるいは今日の統計 調査法の代用法としてしか説明していない.だ が,今日の統計調査法が方法としていかに精密で あろうとも,それが資本主義と異なった社会構造 の下で,そのまま適用し得ることもまたあり得な いであろう.

(118頁)現下の資本主義,殊に国家独占資本 主義の下においても,集団観察法たる統計調査法 は一部の分野において明らかに統計生産方法とし ての限界をみせてきている.社会主義国における 統計生産の基本的形態が,もはや集団観察法とし ての統計調査法ではなく報告制度であることは,

かの国の統計学書が強調するところである.

B 統計史,統計調査史研究と社会統計学

(118頁)何れにしても統計調査法は,現在,

統計生産の基本的方法であるとしても,過去,将 来においてもなお然り,というわけではないであ ろう.対象が方法を規定する.だから社会的歴史 的諸条件が変化,発展する限り,それを対象とす る統計生産方法も変化,発展せざるを得ない.こ の小論を通じて多少なりとも筋道をつけてみたい ことは,まさにそのことである.

この問題が,直接的には統計調査史の問題であ ることはいうまでもない.しかし統計調査が対象 たる社会構造に規定されつつ諸種の形態を採らざ るを得ないものとすれば,その意識的体系として の統計学も,当然またかかるものとして考察し直 さなければならない.統計調査史のこのような意 義について,蜷川虎三博士は夙に次のように述べ られている.

統計史は,統計調査の発達を問題にする.社 会の発展に伴い,大量を問題とすることが多く なるとともに,統計調査が発達し,社会の基盤 の推移に従い統計調査の方法内容も異なり,し たがって統計に関する問題の仕方にも変化を生 ずる.学問としての統計学は,これらの社会的,

経済的,歴史的な下部構造の上に建てられるの であるから,統計方法を問題するについても,

これらの事情ならびに推移が捉えられていなけ ればならぬ.この意味において,統計学の研究 上,統計史は重要な意味を持つものである19)

5  補   遺

統計生産の諸形態を比較,考察するさいに木村 は,統計調査が現代における統計生産の基本的形 19) 蜷川虎三(1934)『統計学概論』岩波書店,

310頁.

(12)

態であることを一先ず想定している.また,統計 として数量的に反映すべき社会経済過程に係っ て,その組成要素である社会的に同種の単位から 成る集団を捕捉する大量観察が統計調査であり,

学問的規定としての統計調査法はその方法的規定 であるとされる.ところで,統計調査に関する木 村の代表的な論考20)に関して,筆者は以前に紹 介,説明したことがある.その一端を再掲する と,次のとおりである21)

木村が提示した “社会統計学の体系” におけ る狭義の統計学は,統計調査(法)と統計解析

(法)とから構成される統計方法を研究対象と する.これら統計方法の規定にあたって前提と されるのは集団概念であり,観察対象である社 会経済過程が集団的存在か集団的現象すなわち 社会集団である場合,この観察対象に適用され る数量的観察方法が統計調査である.社会集団 の数量的観察方法である統計調査が,社会経済 の総体を反映する数字的資料,社会経済の部分 と全体に関する全面的な数量的認識=構成的統 計表を与えるならば,統計調査は統計生産の基 本的方法となる.ここでは,観察対象である社 会集団の全体を捕捉する悉皆大量観察=全数調 査が,統計調査の基本形態と考えられている.

社会集団の数量的観察方法としての統計調査 では,存在たる社会集団一般ではなく,数量的 観察を行う意味のある社会集団が対象となる.

統計調査による社会集団の観察の課題は,社会 的な時と場所に規定された集団の構成要素であ る単位を数え,その集団としての大きさを確定 するだけではなく,単位の持つ諸属性を通じ て,集団の構造を数量的に捕捉することであ る.ゆえに,観察するに値する社会的諸属性が

集団を構成する単位に備わっていなければ,統 計調査によって社会集団を観察する意味はな い22)

統計調査をめぐるこのような理解と併せて,統 計の生産形態の歴史性に関する考察が木村によっ て行われ,それはまた,独自の調査論,調査方法 論,統計学体系論の展開にも繫がっているとみて よいだろう23).ここで統計の生産形態の歴史性を 論じるさいに木村は,学問的規定としての統計調 査法が,現実の統計調査実践の過程を,意識的,

方法的に体系化したものに他ならないとする.統 計調査法は,一定の社会的,歴史的な基礎の上に 立った統計の生産方法であると同時に,今日なお 統計生産の基本的方法たる位置を占める.他のあ らゆる方法は,統計調査法を原型としてのみ説明 され,この点は今日なお正しいと暫時考えられて もいる.

他方で,大量観察法である統計調査法の成立 は,統計生産の対象である社会経済過程そのもの が,基本的には集団として存在し,現象するとい う現代の生産様式と密接不可分でもあること,資 本主義的な歴史段階に人類が至るまでの統計生産 が,それぞれの社会的,歴史的な諸段階に応じ て,諸種の形態をとってきたこと,ゆえに統計調 査法が常に統計生産の基本形態であるべきだとい うわけでもないこと,も指摘される.また木村 は,統計史,調査史で認められる統計調査法以外 の各種の統計生産形態を,単なる技術的な未熟形 態として取り扱うか,あるいは統計調査法の代用 法としてしか通常の統計学が説明していない点を 批判し,統計調査法が方法としていかに精密であ ろうとも,それが資本主義と異なる社会構造の下

20) 木村(1992)第Ⅰ部第 4 章および第 5 章.

21) 芳賀(2014a),同(2014b).

22) 芳賀(2014b)114頁.

23) 木村(1952)『日本統計調査年表 年表篇・

解説篇』財団法人農林統計協会.

(13)

(出所)木村太郎(1992)『改訂 統計・統計方法・統計学』産業統計研究社,67頁に基づき筆者作成.

 社会統計学の体系 社会的地域的総体としての自然的存在・現象―測量・観測技術       (国土面積,森林資源,地下資源埋蔵量,作物統計) 非集団的存在・現象―会計・経営等の記録   (日銀券発券高,独占企業の生産高等) 社会的存在・現象 集団的存在・現象  (社会集団)統計調査(法) 推   計 計算的利用 非計算的利用

集団的計算利用 (統計値集団)

数理解析的利用 (数理的解析技術) 単なる集団的計算利用 (単純・総合指数の算定等)

統計解析(法) 単なる加工計算利用 (国民所得計算,剰余価値率の計算,寄与率の算定等) 総合・比較利用―異種統計の総合・同種統計の比較利用 (総合経済指標の作製,国際間統計比較等) 単独的利用―統計・諸統計表の記述における論理的利用

(代表値・構成的統計比率)

誘導統計値 統  計  方  法 狭  義  の  統  計  学

統計の 利用過程一般 統計の 生産過程一般

構成的統計表 統     計

広   義   の   統   計   学

静態 動態直接 間接全部 一部

または代表的に反映する数量的資料 社会経済過程の特定局面を総量的か

(14)

では,そのまま適用し得ないともいう24). 例えば,“封建制下の統計” 生産は封建的土地 所有によって基本的に制約されており,“封建制 下の統計” の意味は,封建的土地所有の構造を無 視しては理解し得ない.封建的土地所有は,二重 的な土地所有すなわち上からの所有=領主的土地 所有と下からの所有=村落共同体的所有,であ る.領主的支配の単位としての領主的土地所有 は,“封建制下の統計” の一応の地域的範囲であ り,村落共同体的所有は,“封建制下の統計” 生 産の基礎である.ゆえに,“封建制下の統計” 生 産は,その総体としても組成単位としても,土地 所有を対象とせざるを得ず,ここに,“封建制下 の統計” が土地台帳を原基形態とし,属地主義的 な性格を帯びる理由がある.二重の意味での封建 的土地所有はまた,一切の財産および住民につい て,土地所有の上にのみその意味を付与するの で,土地所有を超越した財産,人口という認識は 一般的に成立せず,関連する “封建制下の統計”

生産に影響を及ぼす.

封建的土地所有に裏づけられた領主制は,“封 建制下の統計” 生産にとって一応の地域的範囲を 形成する.封建制の初期には,全領地の土地所有 者の名の下に,荘園,耕地面積,住民数,家畜に 至るあらゆる土地に付属した財産が土地台帳の形 式で記載されて,この領主的支配の全地域にわた る統計が生産される.封建制下の土地台帳は,近 代的私的土地所有の登記簿としての土地台帳と は,その機能,様式において著しく異なる.それ は,封建領主の封建地代収取のための資料とし て,また財産目録として作成されるので,支配地 域内における耕地(その良否),森林,水車,農

工生産物,地代,賃料,住民と戸数,その身分 等,収取の基礎となるあらゆる事項を含む.

だが,領地の分割が進み,統計生産の地域的範 囲が自ずから狭小になって行く封建制後期になる と,土地台帳は小規模になり,記載事項も次第に 整理される.住民については宗門帳あるいは戸籍 簿に,農作物については収穫帳等に分化し,土地 台帳自体も土地所有の証明的な機能を加え,近代 的な土地台帳へと純化する.ここで土地台帳を統 計とみることも可能なのは,一般的には領主的支 配地域を単位とする場合であり,細分化の進む全 ての土地台帳についていえるわけではない.封建 制後期の土地台帳における記載内容の分化を顧慮 すると,統計そのものというよりは,むしろ統計 の生産基礎として土地台帳が利用されている.こ のことに留意するならば,封建制下の土地台帳 は,統計と統計の生産基礎との未分化形態である といえる25)

このように封建制下の土地台帳は,単なる登記 簿としてではなく,封建的地代収取のための資料 としての意味を維持しつつ,それはまた統計の生 産基礎としても作成される.“封建制下の統計”

生産の基礎である土地台帳の作成方法,測量基準 は極めて不統一かつ任意なものであった.封建的 な支配権力を背景に,土地については検地,地押 調査,収穫高については坪刈,検見等の実測的方 法が,強制的かつ他律的な形で行われた.基本的 には土地所有に依拠する封建的支配の下での土地 台帳の作成であるから,“封建制下の統計” 生産 は末端においても個人を統計単位と規定するので はなく,村落共同体を対象とする対地的な観察に よって進められた.封建制後期に生産される領主

24) ここで顧慮すべきは,統計調査による統計 の生産が資本主義社会でそれなりに適合的な 形態である一方で,社会的歴史的条件によっ て統計生産にはさまざまな適合形態があり得 る点である.

25) 統計と統計の生産基礎との未分化形態とい う表現には,統計をめぐって行われる木村の 独自な説明も影響していると考えられる.こ のことについては,芳賀(2018a)46-47頁を 参照.

(15)

的支配地域を対象とする戸口統計,住民統計,収 穫統計,家畜統計等の生産も,方法的には土地所 有に依拠している.領主制の統一支配機構として 封建的中央集権体制が確立しても,属地主義的な 統計生産に基本的な変化はない.ただし,個々の 領主を通じて統計報告を求める方法が新たに採用 され,相互に封建的な諸領主制を統一して表示す る方式,地誌統計の形がとられるようになる26). 土地への強い関心を有する封建制下の領主は,

人口その他の社会現象については,人間労働の土 地への従属という封建制社会に固有の意識形態も 影響して,相対的に関心が弱いとされる.既述の とおり,封建制初期の土地台帳では,住民数を物 産高や家畜数と並んで記載していることが,その ことを端的に示す.封建制の下で人口統計の生産 が全くなかったわけではないが,特権身分を除く 封建制下の人間は,生産物,森林,池,家畜等と ともに,基本的には土地の付属物とみなされ,人 口統計の生産過程は,領主制,封建的土地所有に よって基礎づけられ,制約されている.

封建制社会の下部構造としての農奴制の存続 が,封建的権力にとって重要課題になると,農民 の土地への緊縛を目的とした農民の捕捉が必要に なる.封建的身分制度,宗教的支配体制の一環と して,日本における人別帳,宗門改め,ヨーロッ パにおける教区簿,身分帳のような一連の戸籍簿 を,土地台帳から独立した形で作成するようにな る.ただし木村によれば,封建制下の人口統計生 産も,基本的には属地主義的性格を持っている.

戸籍簿,宗門帳に基づいて統計が生産されたとし ても,それはあくまで土地に付属した住民として 数えられたに過ぎない.

ここで封建制下の人口統計生産について注意す べきことは,住民が人格を持った近代的統計調査 における被調査者として数えられるのではなく て,地域の持つ単なる属性の一つとして数えられ る点である.封建制下の人口統計生産は一種の対 地的調査としての性格を持ち,被調査者である人 間の主体性は無視,軽視され,人口統計生産過程 は調査者である封建的支配層によって一方的に統 制される27).“封建制下の統計” 生産について木 村は,調査者と被調査者,人対人の関係の上に成 立する近代的な統計調査とは全く異なったもので あるという.

“封建制下の統計” 生産の基礎である土地台帳 は,封建的土地所有の解体過程で殆ど消滅する か,存在したとしても有名無実になる.封建的土 地所有の解体過程は,農民的土地保有および私的 土地所有の成立過程であり,それはまた農民の土 地からの解放と都市への人口集中の過程でもあ る.同時に,封建的領主制の上に成立していた中 央集権的な絶対王制は,その財政基盤を新しい土 地所有に求め,土地所有および人民の統計的捕捉 に迫られ,新しい土地台帳の作成が絶対王制期に は活発に行われる.ただし,封建的土地所有が解 体し,土地所有も激しく変動する中で,封建的土 地所有そのものを前提する土地台帳は,もはや少 なくとも統計生産のための基礎とは成り得なかっ たと木村はいう.この封建的土地所有の解体期=

農民的土地保有の成立期において,絶対王制の財 政的要請から登場する統計生産方法が推算であ る.

27) ここで指摘される人口統計生産過程での調 査者と被調査者の関係性は,観察主体による 観察対象への操作の程度(自由度)も意味す る.この自由度の拡張,深化は社会観察の主 体にとって重要であるが,観察対象とされる 人間の側からは不自由の拡張,統御・拘束の 強化でもある.

26) ここでの統計報告に依拠する地誌統計は封 建制下の統計生産の一形態であるが,今日の 地理情報システム(geographicinformation system:GIS)を考える上で興味深い統計の 生産形態でもある.

(16)

17世紀末から18世紀に隆盛をみた推算は,一般 的には,社会的事実の数量的把握という統計生産 的な側面と,社会現象における規則性の観察とい う統計利用的な側面との 2 面性を持つ28).統計学 史においては後者が重視されてきたが,17世紀末 のヨーロッパで都市の行政的必要から自然発生的 に行われていた推算が,その端緒である.ここで の推算については,戸口調査から人口数を,土地 台帳から土地の担税力を推定するというように,

統計生産技術としての側面が重要である.木村に よれば,ここでの統計生産技術としての推算は,

主として科学者の個人的な作業として行われ,行 政的な事業として行われたものではなかった.そ のために推算が実際の統計生産で果たした役割が 軽視される傾向にあるが,推算の結果である統計 は行政的要請に応えるものでもあった.統計の生 産基礎と観察組織が崩壊,欠如している当時の社 会事情の下で推算は登場するので,推算の結果に 係る信頼性,正確性は十分ではなかった.ゆえに 当時の推算は,資本制の下で統治機構が整備さ れ,組織的な統計生産が新たに行われるようにな ると,これに席を譲ることになる29)

資本制の成立期には,富豪あるいはブルジョア 的地主の支配下にある共同体的な村落的秩序が残

存するので,この段階における統計生産は,村落 的秩序に係る支配組織を通じて属地的に行われる 他なかった.この統計生産を支える地方行政組織 の様相は,資本主義の成立事情の相違に基づい て,各々の国,地域において特殊性を伴うが,組 織的な統計生産方法として初めに登場するのが表 式調査である.表式調査は,一定の地域を単位と して,調査票の過程を省略し,集計表形式への直 接記入を要求する調査方法であり,統計調査法の 未開段階にある統計生産方法とされてもいる.表 式調査は,封建的土地所有勢力の主導の下に行政 機構を確立したドイツ,分割地的小農民を土台と した村落秩序の上に官僚的行政機構を確立したフ ランスにおいて最も普及,継続した30).表式調査 は,国家権力による地域支配機構の成立を前提と する属地主義的な統計生産方法であり,その限り において一応の統計生産基礎を有する.ここで被 調査者としての人間は,諸財産とともに土地に従 属したものとして捕捉され,調査者(統治者,支 配者)にとっての被調査者は,木村によれば単な る没人格的な存在に過ぎず,ここに表式調査の統 計生産方法の前資本主義的性格もあるとされる31)

封建的土地所有を含む一切の共同体的所有の廃 棄,近代的私的所有の確立は,封建社会から近代 社会への移行を規定する.共同体的所有の下に あった財産は全て,国家の干渉を斥ける不可侵の 私有財産となり,資本の自由な発展が創出され る.人間が身分制的束縛から解放され,平等な個 人としての存在が社会的に認知されることによっ て,初めて私的所有も決定的なものになる.国家 が行う統計の生産は,個人を通じてその財産を捕 捉することを前提とするようになるので,統計調 28) 推算の 2 面性に関する木村の叙述は,統計

を新たに生み出す前の段階と,この段階で既 に生み出された統計を使う(そのまま利用す る場合の他に,加工,解析する場合も含む)

段階に区分することを前提している.このよう な理解を否定するものではないが,統計を使 う段階もまた新たな別の統計を生産する段階 とみることもできる.ここでは,統計をどのよ うに規定するかが改めて問われるであろう.

29) ここでは,資本制下の統計調査に代表され る組織的な実査の確立,“過渡期” の統計生産 の一形態である推算の衰退が想定されてい る.ただし,資本制の下で組織的な推算の新 形態が創出されることにもなる.

30) 詳細については,木村(1992)127-128頁.

31) 没人格的な存在としての被調査者という表 式調査に係る指摘は,今日の統計改革,Data

Scienceにおける原情報の収集・獲得,認識,

構成・再構成の方法に係っても興味深い.

(17)

査の対象である社会集団の原基的形態は個人の集 団となる.

ただし私的所有の主体が個人であるのは,資本 制生産がなお独立小商品生産の段階においてであ る.資本制大工業の発展は,法律的な人格として の個人の名において,生産手段の私的所有を進め る.多くの個人は生産手段を失い,私的所有から 解放(排除)され,単なる労働力の担い手として の個人に転化する.ここで統計調査の対象である 社会集団は,個人の集団(人口集団)と生産手段 の集団(企業等の諸施設の集団)へと分裂し,

各々が独立した社会集団を形成する.これら 2 つ の社会集団の統計単位は,木村によれば,前者に ついては私的所有から解放された個人や家計であ り,後者については,それのみを通じて資本制社 会の財産を捕捉し得るところの私的所有の単位と しての企業である.統計として観察されるべき事 項は全て,統計単位である個人あるいは私的所有 の属性として,すなわち量的または質的標識とし て捕捉されるようになる32)

資本制社会における基本的な統計生産方法とし ての統計調査法は,資本制社会の組成要素たる個 人ならびに私的所有の集団を社会集団として規定 し,その観察方法を意識的に整理,体系化したも のに他ならない.統計調査法は,歴史的な統計生 産形態のひとつであるとともに,資本制社会に最 も適合した統計生産方法である.ここでは,統計 調査の本来的な形態が対人調査である点への留意 が必要である.調査対象である社会集団(個人な らびに私的所有の集団)の意思に依存してしか対 象を把握し得ないことに,この統計生産方法の最 大の弱点,限界があると木村は指摘する33)

上述の統計生産方法としての弱点,限界は,資 本の集積が進み,社会的生産力が独占資本に集中 される段階になると,より明確になる.統計調査 法は本来的に,多数の私的所有の単位から成る集 団を対象とする集団観察法であるので,独占的大 企業も中小企業も統計単位としては同質に扱われ る.しかし独占的大企業とその下部に従属する中 小企業とを同種の単位とみなし,共通の標識を適 用して分類する意味が,かなり後退してしまった ことも否定できない.社会的生産の支配的部分を 占める独占資本の生産過程を把握する上で,従来 の統計調査法が有効であるとは必ずしもいえない であろうと木村は評する.国家独占資本主義の下 で,工業統計生産の主要な課題は,独占企業内部 の経営諸要素を捕捉することへ移行する.政府に よる国民経済計算,経済計画作成のために,生産 量,在庫高,設備投資,雇用状況等の経営的事項 に関する各種の統計報告が独占企業に対して頻繁 に要求される.ここでは,統計単位を数え,標識 について分類することよりも,特に量的標識が企 業の内部でいかなる様式で記録されているか,そ れをいかなる形で規則的に政府統計の生産過程に 組み入れるか,ということが重視されるわけであ る34)

以上のとおり木村は,封建制から資本制の段階

32) ここでの統計単位と標識の説明で木村が用 いられる個人および私的所有とその属性につ いて筆者は,個人・世帯,事業所・企業・組 織体と各々の質的量的属性,というように理 解している.芳賀(2018a)48-50頁参照.

33) 統計調査の遂行にとって観察対象の同意,

支持が重要であり,それを前提に信頼性,正 確性,真実性を伴う政府統計の生産が可能に なるのはいうまでもない.だが,観察対象の 意思に依存せずに,あるいは意思に反するや り方で,観察主体にとっては信頼性,正確 性,真実性を伴う政府統計を生産する形態

(ただし,信頼性,正確性,真実性を伴う情報 が観察対象には得られないような政府統計の 生産形態)もあり得る.

34) これは,現在では全くといってよいほど見 受けられなくなったが,経営内部統計と経営 外部統計とに関連する問題でもある.

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