1 課 題
本論文で問題にするのは,マスメディアの世論 調査はどのくらい信用できるのかという問題であ る。
マスメディアの世論調査は信頼できないのでは ないかとの懸念は,広く存在する。たとえば2015 年に実施された 2 つの調査に,NHK の 2015 年 5 月調査と,中央調査社の2015年 11月調査がある。
1つ目の NHK 調査は,問 8で,世論調査に関す る7小問を,回答カテゴリー5値で問うている(原・
中野:2016:51
―52 頁,図 5 参照)
1)。
そのうち特に世論調査の信頼性にかかわると思 われる 2 小問の結果は,次のようになる
2)。
(1)「世論調査は人々の意見を公平に反映してい る」は,肯定 38%・中間 41%・否定 20% で,
「否定」に「どちらともいえない」を加えて「懐 疑的」な人と呼ぶことにすれば,(100%-38%
=)62% である。
(2) 「世論調査の結果はマスメディアに操作されて いる」は,肯定 29%・中間 41%・否定 29% で,
「懐疑的」な人は,(100%-29%=)71% である。
「どちらともいえない」を懐疑派に入れた多めの 推定になるが,メディアの世論調査は公平でな
目 次1 課 題
2 指標・仮説・データ・方法 3 分 析
4 結 論
いかもしれない,メディアが結果を操作してい る可能性がある,と疑いの目を持っている人々 が 6~7 割に達することになる
3)。
2つ目の中央調査社調査は,「世論調査に対する 関心と信頼・貢献度評価に関する調査」 (中間回答 がない4値の選択肢で,他に DK (わからない)が ある)である(穴澤:2018)
4)。
特に世論調査の信頼性にかかわると思われる質 問を2つ紹介する。 「世論調査や市場調査などのア ンケート調査によって,国民全体の考え方を正し くとらえることができると思いますか」との趣旨 の問いに,肯定 46%・否定 38%・DK16% であっ た(穴澤:図 3)。また「結果は信用できると思い ますか 」 との趣旨の問いに, 肯定 59%・ 否定 29%・ DK 12%であった(穴澤:図 5)。世論調査 に懐疑的な割合は,3~4 割(DK を懐疑派に含め れば 4~5 割)ということになる
5)。
これら 2 つの調査は,調査法・質問文・中間回 答選択肢の有無など,いろいろと異なり,安易な 比較はできない。しかし,2 つの調査から,ある 程度の割合で,世論調査の信頼性に疑いの目を持 つ人々が存在することは指摘できる。
世論調査の信頼性に懐疑的であるのは,一般の 人々のみではない。より世論調査に近い立場の人々 の間でも,メディアの世論調査にはバイアスがあ るのではないか,それはメディアのイデオロギー 位置が関係しているのではないか,などの言説が,
根強く存在する。
内閣支持率や政党支持率について,以前からし
「相対」内閣支持率とマスメディア世論調査の信頼性
―
2 回の政権党交代を挟む 2009~2013 年の分析
―宮 野 勝
ばしば耳にする指摘に,「メディアによって絶対的 な数値それ自体は大きく異なるが,各社上下の動 きは,ほぼ同等である」といったものがある。こ の指摘自体はデータを眺めた上での記述的言明で あり,事実である。ただし,内閣支持率や政党支 持率について公表される数値が「メディアによっ て大きく異なる」ことをもって,「世論調査やメ ディアにバイアスがあるのではないか」と指摘し たり,「そのバイアスは,メディアが保守的か革新 的かということと関係するのではないか」という 懸念につなげたりする例も,しばしば目にする。
たとえば,岩本(2015)は,安倍政権成立直後 の 2013 年の内閣支持率をとりあげ,「こうしてみ ると,明らかに朝日新聞は読売新聞より10ポイン ト前後低い数字です。また,NHK や毎日新聞など は,だいたいこの間の数字になっています。確か に調査主体によるバイアスはありそうですね。」
(151頁)と「バイアス」の存在可能性を指摘して いる
6)。
「バイアス」という言明が,単に「メディア間で 数値が系統的に違う」=「系統的な非標本誤差が 働いている」という意味であるなら,「系統的にメ ディア間で標本誤差以上に数値が異なる」と言っ ているだけである。しかし,さらに踏み込んで,
数値が系統的に異なる理由を,その新聞の主張に 賛同する人がその新聞の回答者に多いから(岩本:
2015:152頁においても紹介されている)など,新 聞社のイデオロギー位置が意図的にか非意図的に か影響しているのではないかなどの言説も存在す る
7)。
他方,マスメディアの世論調査は信用できると いう意見もある
8)。
これらに対し,宮野(2009)では,データの加 工の仕方を変えると,メディア世論調査の信頼性 が見えてくると主張した。宮野(2009)の自民党 支持率・内閣支持率についての結論を少し言い換 えると次のようになる。
① 絶対的な数値が大きく異なる 1 つの理由は,
質問の仕方などに微妙な差異があるために DK/
NA (わからない / 無回答)などの率が大きく異 なるためである。
② DK/NA (以下、「DK/NA など」=「支持・不 支持」以外の回答を,「DK/NA」と略称する)
を外して「相対」支持率という形で加工すると,
報道機関の間でのばらつきが小さい指標を作成 でき,メディア間での差は見かけより小さくな る。
③ メディアの世論調査は,見かけ以上に類似し た結果を内蔵しており,メディア間の測定の安 定性という意味で世論調査は充分に「信頼性」
がある。
④ 指標としてより安定的な「相対」支持率につ いては,メディア間にイデオロギーによる高低 という特徴は見られず,イデオロギー説に否定 的な結論が得られた。
⑤ 「絶対」支持率のみでなく,「相対」支持率も 併用すべきである。
ただし,宮野(2009)で使用したデータは2008 年(と2009年の冒頭)のみで,期間が限られてい たし,また対象が自民党政権のみであり,それら の点で一般性には欠けていた。
その後,日本では,2009 年から 2012 年にかけ て,2回の政党レベルでの政権交代が起きた。2009 年 9 月に自民党政権から民主党政権へ,そして 2012 年 12 月に民主党政権から自民党政権へ,で ある。宮野(2009)では未検討の課題も多くあり,
これらの政権交代の時期のデータを用いることで,
本論文では次のような点を検討したい。
第 1に,宮野(2009)で用いた2008年 1月から 2009年 2月までのデータの範囲を超えても同じよ うな結果が得られるかどうか,時系列での安定性 を調べたい
9)。
第 2 に,内閣支持率に限定し,同月比較,同日 比較など,様々な角度からより詳細に,「絶対」内 閣支持率と「相対」内閣支持率を検討したい。
第 3 に,政権政党と各マスメディアの立ち位置
との関係は世論調査結果に影響を及ぼすかという 問題を調べたい。保守的と言われるメディアは,
革新的と言われるメディアよりも,自民党政権時 には高めの内閣支持率を出し,民主党政権時には 低めの内閣支持率を出しただろうか。
第 4 に,同一の政権党内で内閣が交代するとき に,世論調査結果のメディア間での相違は,影響 を受けるだろうか,という点も検討したい。政権 政党は代わらずに首相が代わるとき,メディアの 調査結果は影響を受けるだろうか。
第 5 に,以上の検討を通じて,マスメディアの 世論調査の信頼性・安定性と,メディア世論調査 のイデオロギーバイアスの有無について,改めて 考察したい。
2 指標・仮説・データ・方法
2
―1 指標:「相対」内閣支持率と「絶対」内閣 支持率
検討に先立ち,本論文で使用する 2 つの指標,
「絶対」内閣支持率と,「相対」内閣支持率を紹介 する
10)。宮野(2009)でも指摘したが,「絶対」・
「相対」という言葉は,指示内容が曖昧になりがち なため避けたい表現である。しかし,指示内容を 正確に表現しようとすると記憶しにくくなるため,
代替の適切な表現がみつかるまで便宜的に採用し ている。
2
―1
―1 「絶対」内閣支持率
宮野(2009)では,通常報告されている内閣支 持率のことを,「絶対」内閣支持率と呼んだ。すな わち, 「絶対」内閣支持率とは,「調査の有効回答 者数を分母とする内閣支持率」のことである。
一般に,指標には限界があり(たとえば,GDP にもあり,福祉指標などの代替提案にもある),通 常使われている「絶対内閣支持率」にも限界があ る。
第 1 に,不支持率の上下が反映されない点であ る。たとえば,支持率 40%・不支持率 30% のとき も,支持率 40%・不支持率 50% のときも,「絶対」
内閣支持率では,単に 40% である。
第 2 に,「絶対」内閣支持率では,DK/NA 率の 高低が反映されない。そのため,調査方法や質問 文のワーディングによって DK/NA 率が高めにな るメディアと低めになるメディアとが存在する場 合には,絶対内閣支持率の差が恒常的・系統的に なりやすい。また,同一のメディアであっても,
DK/NA 率が高い時期と低い時期とが存在すれば,
比較が難しくなる。
2
―1
―2 「相対」内閣支持率
これに対し,宮野(2009)では,「相対」内閣支 持率という概念を提案した。すなわち「相対」内 閣支持率とは,「内閣に対する「支持」・「不支持」
を明らかにした回答者中の内閣支持者の割合」で あり,分母を「支持+不支持」にする点が,「絶 対」内閣支持率と異なっている。
「相対」内閣支持率は,「絶対」内閣支持率の先 の2つの難点を避けるために考えた。 「相対」内閣 支持率では,第 1 に,不支持率の多寡が影響する し,第 2 に,DK/NA は除いて計算されるために メディア間・調査間での DK/NA 率の相違による 影響を緩和する。その限りで,「絶対」内閣支持率 の 2 つの限界を回避できる。また,宮野(2009)
の分析では,2008年のデータでは,実際にメディ ア間の差も,「平均的に」は「相対」内閣支持率の 方が小さく,メディアの世論調査の信頼性を認め やすくなった。
ただし「相対」内閣支持率に限界もある。大き な点は,「絶対」内閣支持率よりも値が大きくなっ てしまう点である。この点は,報道としては問題 になりうるが,メディア間の比較に際しては問題 にならない。このため本論文では,しばしば 「絶 対」内閣支持率と「相対」内閣支持率を対比する が,主として「相対」内閣支持率を用いて論じる。
2
―2 仮 説
本論文の主要な問いに部分的に答えるために 2
仮説を提示する。仮説 1は,「相対支持率」と「絶
対支持率」の比較と,「相対」支持率の安定性に関 連する。仮説 2 は,メディア間の差とメディアの イデオロギー位置との関係である。
仮説 1: 「相対支持率」は「絶対支持率」より,
平均的にメディア間の差が小さい。
仮説 1は,2008年には成立していたが,果たし て2008年を超えたより広い期間でも,また自民党 以外の政権でも,成り立つだろうか。相対支持率 は,より一般的に安定的なのだろうか。
仮説 2: 「相対支持率」のメディア間の差は,
メディアのイデオロギー位置と関連 しない。
仮説 2 では,メディアの世論調査がメディアの イデオロギー位置に左右されているか否かを問う。
判断基準として,「相対支持率」の,メディア間の 順位と,差の大きさを考えている。
仮説 2 をより具体化して,政権党による異同に 関する仮説 3 と仮説 4 を考える。メディアによっ て,より保守的であるとか革新的であるなどと指 摘されるが,世論調査はそれに対応するのだろう か。対応しないという仮説を,自民党内閣下の仮 説 3 と民主党内閣下の仮説 4 とに二分する。ただ し,イデオロギー位置と対応するという対立仮説 を,仮説 3ʼ,仮説 4ʼとして立てておく。
仮説 3:自民党内閣の「相対支持率」は,“革 新的”と言われるメディアでも,“保 守的”と言われるメディアでも異な らない。
仮説 4:民主党内閣の「相対支持率」は,“革 新的”と言われるメディアでも,“保 守的”と言われるメディアでも異な
らない。
仮説 3ʼ:自民党内閣の「相対支持率」は,“革 新的”と言われるメディアで低く,
“保守的”と言われるメディアで高い。
仮説 4ʼ:民主党内閣の「相対支持率」は,“革 新的”と言われるメディアで高く,
“保守的”と言われるメディアで低い。
より具体的なイデオロギーの傾向としては,朝 日新聞は革新よりで,読売新聞は保守よりとみら れているだろう。宮野(2009)では,2008年度の 相対内閣支持率や相対自民党支持率の調査結果を 用い,「メディア間の差は,ランダムな誤差の範囲 を出ない」と推測した。そして「革新的と言われ る朝日と,保守的と言われる読売・日経とで,系 統的な差はない」と結論付けた
11)。
今回,次の 3 点で,データを変えて成立するか 否かを調べる。第 1に,対象期間を変更している,
第 2 に,期間を長くし,より詳細な分析を可能に している,第 3 に,対象期間中に 2 回の政権党交 代を挟み,異なる政権党の下での調査を比較する。
2
―3 デ ー タ
2009 年 9 月から 2012 年 12 月までの 3 年 4 か月 の間に,4回の内閣総理大臣の交代があり,5名が 総理の座についている。今回のデータ分析の対象 は,この 3 年 4 か月を含む,2009 年 1 月から 2013 年 12 月の 5 年間とした。
2009~2013年という期間は,調査方法は各社と も固定電話であり,内閣支持率の質問が各調査の 冒頭に置かれていたなどの点で,比較をしやすい 時期でもある。もちろんメディア各社で調査方法 やワーディングについて相違はあるだろうが,著 しく異なる結果を生むような相違であったか否か は,結果の類似度をもって確認することとしたい。
対象とするのは,(あいうえお順で,)朝日新聞,
NHK,日経新聞,毎日新聞,読売新聞,という 5 つのマスメディアの世論調査である(以下,朝日,
NHK,日経,毎日,読売という略称を用いる)
12)。 これらのうち,日経は,いわゆる「2 度聞き」を 採用し,内閣支持率としてそちらが使われている が,本論文では日経について,1 度目の回答を用 いる。
2
―4 分 析 方 法
分析全体を「分析 1」から「分析 5」の5つに分 ける。各分析において,各メディアの内閣支持率 やその平均値を比較する。第 1 に,5 つのメディ アの内閣支持率あるいはその平均値の「レンジ(=
範囲=最大値-最小値)」の大小を比較する。第 2 に,5社の中での内閣支持率の「高低・その順位・
差の大きさ」などを比較する。
「分析 1」として,この5年間全体をひとまとめ にして概観する。全体としての内閣支持率の変動 を示し,かつメディアごとの平均値を比較する。
「分析 2」として,政権党(自民党,民主党)別 に分析する。仮説にも記したように,政権党によっ て各メディアとのイデオロギー距離が異なり,そ れによって世論調査結果が異なるか否かを検討す るためである。
「分析 3」として,個別内閣に分けて分析する。
この期間の自民党内閣(麻生内閣,第 2 次安倍内 閣)と民主党内閣(鳩山内閣,菅内閣,野田内閣)
を,個別の内閣に分けて分析する。同じ政権党内 閣でも,個別に大きく異なる可能性もないわけで はない。政権党全体で成立したことが,個別内閣 に分けても成立するか否かを調べる。
この期間は政権党の交代だけではなく,同一政 党内で内閣が頻繁に交代している。その直接的な 原因は,交代直後の高い内閣支持率が数か月で急 降下することが頻発したためである。このような 時期の比較は難しい。各メディアの調査頻度が異 なり,内閣支持率が高い時期に多く調査をしたメ ディアの平均値は高く出るし,低い時期に多く調
査をしたメディアの平均値は低く出るためである。
「分析 4」では,この問題に対処するため,各メ ディアの調査回数の相違をならすことを考えてみ る。方法の 1 つとして,複数回の調査がある月 は,月平均を使うことを考える。ただし後述する ように,月平均にも限界がある。
「分析 5」として,さらに月平均の問題をも回避 するため,「同日」調査間で比較する。メディアの 世論調査は週末が多いため,メディア間で同日調 査になることは少なくはない。調査終了日が 1 日 だけ異なる場合も存在し,ここでは1日違いは「ほ ぼ同日調査」として「同日調査」とひとまとめに して扱うことにする(1 日違いを「同日」には含 めない場合の分析も,若干試みたが,試みた限り では大差なく,本論文では省略する)。
3 分 析
3
―1 分析 1:2009~2013年の内閣支持率の推移 と平均値
3
―1
―1 2009~2013 年の「相対」内閣支持率の推 移
表 1 に,2009 年 1 月から 2013 年 12 月までの内 閣と,各々の発足と解散の年月日を示す。
図 1 に,2009 年 1 月から 2013 年 12 月までの 5 年間の 5 社(朝日・NHK・日経・毎日・読売)の
「相対」内閣支持率のグラフを示す。図 1より,こ の期間の内閣支持率の上下の概略を視認できる。
特に 3 つの民主党内閣に関しては,発足当初の高 い支持率と,直後の急激な下落が特徴的である。
表 1 2009~2013 年の内閣
政党 発足 解散
麻生太郎内閣 自民 2008/09/24 2009/09/16 鳩山由紀夫内閣 民主 2009/09/16 2010/06/08 菅直人内閣 民主 2010/06/08 2011/09/02 野田佳彦内閣 民主 2011/09/02 2012/12/26 第 2 次安倍晋三内閣 自民 2012/12/26
「相対」内閣支持率であるため,各メディアが発 表している「絶対」内閣支持率よりも数値が高い 点に,注意されたい。(「絶対」内閣支持率でもグ ラフの「概形」は変わらない。ただし,「相対」支 持率と比べると,分子は等しく分母が大きくなる ので,すべての数値が低めになる。)
表 1 で示したように,2009 年から 2013 年は 5 つの内閣が存在した。
図 1 では,左下の 1 番目のブロックが,自民党 の麻生内閣の後半であり,「相対」支持率は 10~
40%の間で上下している。
2 番目のブロックで,最高点 80% 台からほぼ直 線的に20% まで下降しているのが民主党の鳩山内 閣の「相対」支持率である。3 番目の民主党の菅 内閣の「相対」支持率は,就任時の80% 弱から参 院選に向けて一気に 40% 程度に下がり,直後に
80% 弱まで回復するが,すぐに 20% 台に下降し,
その後,20%弱~40% 弱を推移する。4 番目の民 主党の野田内閣の「相対」支持率も,就任時の約 80% から 40% 前後に下がり,その後 20% ~40%
の間にあった。
5 番目は,自民党の第 2 次安倍内閣であり,就 任直後は70% 前後,その後 80% 前後に上がり,ま た70% 前後になり,2013年の終わりころには60%
前後に落ちている。(安倍内閣は長期政権となり,
2018 年 10 月時点でも続いている。2018 年の「相 対」支持率は,1~2 月で 55~60% 前後,3~4 月 に35~45% 前後,7月には45~55% 前後と,ある 程度高い水準で推移している。)
民主党の 3 つの内閣の「相対」支持率は,就任 直後に 80% 前後あるが,短期間で 40% 以下に下 がり,交代時には20% 位,という点で,共通して
図 1 2009~2013 年の「相対」内閣支持率10 20 30 40 50 60 70 80
(%)90
2009 2010 2011 2012 2013 2014
朝日 NHK 日経 毎日 読売
いる。(この点は,2008 年 9 月発足の麻生内閣も 類似している。「相対」支持率で,2008年 10月成 立後調査の60% 前後から,2か月ほどで20% 前後 まで一気に下落していた。)2 つの自民党内閣は,
図 1 の期間においては,3 つの民主党内閣ほどに はレンジが大きくなく,それぞれ一定のレンジ内 での変化になっている。
以上は「相対」支持率であるので,表 2 に示す ように,各メディアの数値は,平均すると,「絶 対」支持率より 5.1% から 9.4% 高くなっている。
3
―1
―2 期間を通しての各メディアの内閣支持率 平均値
内閣支持率は,メディアによる差はないのかあ るのか,メディアによる差があるとしたらどのメ ディアで高いのか低いのか。これらを調べるため,
表 2 で,図 1 のメディア各社の内閣支持率を平均 値としてまとめた。 「相対」支持率だけでなく「絶 対」支持率も示したため,仮説 1 について検討で きる。
N は調査回数を示す。毎月 1回の調査であれば,
N =60になるはずであるが,メディアごとに異なっ ている。これは,何らかの理由で調査がない月が あったり,選挙前の連続調査でひと月に複数回の 調査があったりするためである。
上段が「相対」支持率で,下段が「絶対」支持 率である。 「絶対」支持率(メディアで公表される 数値,ただし日経は 1 回目質問への回答)で見る と,5メディアの平均値は,36.6% ~42.7% で,最 も高い読売と最も低い朝日との差(レンジ)は 6.1% である。これに対し「相対」支持率で見ると,
5メディアの平均値は,45.7% ~48.3% で,最も高
い毎日と最も低い朝日との差(レンジ)は(丸め 誤差もあり)2.7% である。「絶対」支持率の半分 以下で,ずっと小さくなっている。(ただし「絶 対」支持率も,読売の平均値が高いだけで残りの 4 社だけであれば平均値のレンジは 2.8% である。
もっとも「相対」支持率も,一番低い朝日を除い た残りの 4 社だけの平均値のレンジは 1.6% にな る。)
表 2 を見る限り,2009~2013 年という 5 年間に ついて,仮説 1 は,少なくとも平均的には成立し ている。すなわち,平均的には「相対」内閣支持 率は,「絶対」内閣支持率よりもメディア間の差が 小さく,より安定的な数値を示している。
ただし,「絶対」は読売が高めで「相対」は毎日 が高い。読売の「相対」内閣支持率が NHK・日 経・毎日と± 1% の相違でほぼ等しいのに,「絶対」
内閣支持率が 3~5% 高く出ている。その理由は,
読売の「絶対」内閣支持率と「相対」内閣支持率 の差が 5.1% と最小であり,これは平均すると読 売の不支持率が高いからである。 (別の見方をすれ ば,読売は,DK/NA などの支持・不支持以外の カテゴリーの割合が低いからである。)
単純化して考える。 S 社と T 社で,「絶対」は T 社が5% 高く,「相対」は等しかったとする。S 社 の調査支持率を A1% とし,調査不支持率を B1%
とする。T 社の調査支持率 A2=(A1+5)%,調査 不支持率を B2% とすると,仮定より,S 社の相対 支持率=A1÷(A1+B1)は,T 社の相対支持率=
(A1+5)÷(A1+5+B2)と等しい。これから B1と B2の関係を B2について解くと, B2=B1+5×B1/
A1となる。B2は,B1より,必ず(5×B1/A1)だ け高いことになる。支持と不支持が拮抗している とき,仮に A1=B1 とすると,B2 は B1 より 5 高 くなる。支持が高く不支持の2倍,つまり A1=B1×
2 のとき,B2 は B1 より 2.5 高く,逆に支持が低 く不支持の 2 分の 1,つまり A1=B1÷2 のとき,
B2 は B1 より 10 高くなる。
表 2 2009~2013 年の内閣支持率(平均値)
2009―2013 NHK 朝日 日経 毎日 読売 レンジ 平均値 相対内閣支持率 46.7% 45.7% 47.0%48.3% 47.8% 2.7% 47.1%
絶対内閣支持率 39.4% 36.6% 37.6% 39.2% 42.7% 6.1% 39.1%
差 7.4% 9.1% 9.4% 9.1% 5.1% ―3.4% 8.0%
N 59 69 56 65 76
これらのとき,「DK/NA など」も両社で異なる 値を示す。S 社と T 社について,支持と不支持以 外の DK/NA などを,それぞれ D1%,D2%とする と,A・B・D の間に,(A+B+D)=100という制 約がある。このため,「支持 A も不支持 B も低い」
=「D が高い」となる。前段の条件(A2=A1+5,
相対支持率は等しい)を仮定するとき, A1=B1な ら D1=D2+10,A1=B1×2 な ら D1=D2+2.5,
A1=B1÷2 なら D1=D2+15 である。
「絶対」も「相対」も朝日が低めである。2009~
2013 年は,民主党内閣の時期の方が長い(5 年間 のうち,3年 3か月ほど)という点を考えると,全 体平均で朝日が低いのは,仮説 3ʼや仮説 4ʼの観点 からは不思議である。仮説 3・4の検討を含め,さ らに詳細に分析するため,次の分析 2 では,自民 党内閣と民主党内閣とに分けて検討する。
3
―2 分析 2:政権党別の分析と比較
保守的政権(自民党内閣)と革新的政権(民主 党内閣)とでメディアの数値は異なるのか否かを 調べる。仮説 3・4を検討するために,自民党内閣 と民主党内閣とに分けて平均値を比較した表 3・
表 4 を示す。
3
―2
―1 自民党内閣
表 3 は,自民党内閣時の各メディアによる支持 率の平均値である。
仮説 3に従えば,自民党内閣の支持率は,“革新 的”と言われる朝日でも,“保守的”と言われる読 売・日経でも異ならないはずである。また対立仮 説 3ʼ,あるいはイデオロギー説にしたがえば,自 民党内閣の支持率は,革新的と言われる朝日で低 く,保守的と言われる読売・日経で高いはずであ る。
表 3は,少なくとも仮説 3ʼとは異なる傾向を示 している。 「相対」支持率で見る自民党内閣の支持 率は,日経と朝日で高く,読売・NHK・毎日で低 い。これは,イデオロギー説である仮説 3ʼを否定 するものになっている。仮説 3の成否については,
差の大きさを許容される標本誤差の範囲内と考え るか否かに依存するだろう。
3
―2
―2 民主党内閣
表 4 は,民主党内閣時の各メディアによる支持 率の平均値である。
表 4を見ると,ここでも,対立仮説 4ʼとは異な る結果になっている。すなわち,「相対」支持率で 見る民主党内閣の支持率は,毎日・読売が高く,
朝日・日経が低い。読売と朝日だけに注目すると,
イデオロギー説である(仮説 3ʼ)・仮説 4ʼと真逆 の結果(自民党政権で朝日が高く,民主党政権で 読売が高い)になっている。
この点に加え,政権党別に分けてみると,「相 対」内閣支持率の平均値のレンジは,全体の平均 値でのレンジよりも大きくなっている。なぜこの ようになっているのか,より詳細に調べたい。同 じ政党の内閣であっても首相ごとに特色がある可 能性もありうるため,分析 3 として,さらに内閣 ごとに分解してみる。
3
―3 分析 3:個別の内閣ごとの分析と比較 表 5 では,自民党を 2 つの内閣に,民主党を 3 つの内閣に分け,各メディアの「相対」内閣支持
表 3 2009~2013 年の自民党内閣の支持率(平均値)自民党内閣時 NHK 朝日 日経 毎日 読売 レンジ 平均値
相対内閣支持率 52.4% 55.4% 56.0% 51.8%52.7% 4.2% 53.7%
絶対内閣支持率 44.6% 44.6% 45.4% 42.3% 47.7% 5.4% 44.9%
差 7.8% 10.8% 10.6% 9.5% 5.0% ―1.2% 8.7%
N 21 25 20 21 25
表 4 2009~2013 年の民主党内閣の支持率(平均値)
民主党内閣時 NHK 朝日 日経 毎日 読売 レンジ 平均値
相対内閣支持率 43.6% 40.1% 42.0%46.6% 45.4% 6.4% 43.5%
絶対内閣支持率 36.4% 32.0% 33.3% 37.7% 40.3% 8.2% 35.9%
差 7.1% 8.1% 8.7% 8.9% 5.2% ―1.8% 7.6%
N 38 44 36 40 51
率と「絶対」内閣支持率を比べた。表 5を通じて,
特定の内閣になんらかの「特色のある数値」が出 ている可能性を探ることができる。逆に,政権党 によってメディアごとに差があれば,同じ政党の 内閣については,メディアごとの差に一貫性があ るとも予想される。
3
―3
―1 自民党の各内閣
自民党内閣(麻生内閣・安倍内閣)において,
麻生内閣では,平均支持率が低かったこともあり,
レンジは「絶対」3.9%,「相対」2.1% で,いずれ も表 5の5内閣の中では最も低い。安倍内閣では,
平均値が高かったためか,両者とも,レンジは麻 生内閣より大きくなっている。 「絶対」の10.6% は 5 つの内閣で最大であるが,「相対」は 3.4%と低 めである。
メディアごとに眺めよう。 「絶対」では,安倍内 閣で読売 66.6% が突出して高いが,麻生内閣では 読売 23.5% は NHK23.2% とほぼ等しい。また安倍 内閣では朝日が低いが麻生内閣では毎日・日経・
朝日が低い。
「相対」では,読売が高めで朝日が低めではある
が,麻生内閣でも安倍内閣でも突出しているわけ ではない。いずれも最低の朝日との差は,2.1%・
3.4% である。しかし,2つの自民党政権の「相対」
支持率で,いずれも読売が高く朝日が低いという この結果は,差の大きさはともかく,イデオロギー 説の仮説 3ʼに沿う結果であり,自民党政権として まとめた分析 2 の結果と真逆である。
すぐ気づくように,この結果の相違は「集計の 影響」を受けている。表 5 を見ると,支持率の平 均値が低かった 2009 年麻生内閣では読売の N が 大きく,支持率の平均値が高かった安倍内閣では 朝日の N が大きかったために表 3の結果が生じた のである。仮説 3ʼの成否の最終的な判定は,分析 5 の結果まで提示してからとする。
3
―3
―2 民主党の各内閣
表 5 で,民主党内閣について,内閣・メディア ごとに「相対」内閣支持率を比較する。鳩山内閣 では,日経が低いだけで,他の 4 社,特に NHK・
朝日・読売はほぼ等しい。菅内閣では,読売が高 く,NHK・朝日・日経が低い。野田内閣では,毎 日が高く,朝日が低い。毎日がほぼ高めであるな
表 5 2009~2013 年の各個別内閣の支持率(平均値)平均値とN NHK 朝日 日経 毎日 読売 レンジ 平均値 麻生内閣
相対内閣支持率 26.1% 24.0% 24.4% 24.2% 26.1% 2.1% 25.0%
絶対内閣支持率 23.2% 20.3% 20.4% 19.7% 23.5% 3.9% 21.4%
N 9 8 7 9 11
鳩山内閣
相対内閣支持率 54.0% 54.1% 51.7% 55.5% 54.3% 3.8% 53.9%
絶対内閣支持率 47.6% 44.8% 42.8% 48.6% 49.1% 6.3% 46.6%
N 8 9 9 10 11
菅内閣
相対内閣支持率 40.2% 39.4% 39.0% 43.9% 46.6% 7.6% 41.8%
絶対内閣支持率 33.9% 31.9% 31.4% 35.5% 41.2% 9.8% 34.8%
N 14 13 12 16 21
野田内閣
相対内閣支持率 41.2% 34.8% 38.5% 43.3% 38.9% 8.4% 39.4%
絶対内閣支持率 33.1% 26.9% 29.1% 32.3% 34.1% 7.2% 31.1%
N 16 22 15 14 19
第 2 次安倍内閣
相対内閣支持率 72.2% 70.2% 73.0% 72.4% 73.6% 3.4% 72.3%
絶対内閣支持率 60.7% 56.1% 58.8% 59.3% 66.6% 10.6% 60.3%
N 12 17 13 12 14
ど,多少の傾向は存在するが,順位は不動ではな い。ただし,読売と朝日に注目すると,差は,鳩 山内閣 0.2%,菅内閣 7.2%,野田内閣 4.1% で,読 売が朝日より高めである。この点は,民主党政権 としてまとめた分析 2 の結論と一致しており,仮 説 4ʼと逆になっている。
民主党内閣時(鳩山内閣・菅内閣・野田内閣)
において,鳩山内閣では,レンジは「絶対」6.3%,
「相対」3.8% と,表 2 の全体平均のレンジよりも やや高めではあるが,民主党内閣の中では最も低 い。これに対し,菅内閣・野田内閣では,「相対」
のレンジが,7.6%・8.4% と跳ね上がっている。こ の大きな原因は,菅内閣の読売の高さと野田内閣 における朝日の低さ・毎日の高さにある。
実際,表 5から,「特色ある数値」すなわち特定 の内閣において「相対」支持率が 5 社の平均値と 特に離れているメディアとその時期・程度を指摘 すると,この 3 値になる。すなわち「相対」支持 率について,メディア5社の平均値からの差で,菅 内閣の読売(+4.8%),野田内閣の朝日(-4.5%),
野田内閣の毎日(+3.9%)が際立っている。
しかし,(「相対」支持率で,)読売は他の4つの 内閣では上記の差は(-0.4% ~+1.3%)にすぎ ない。朝日は(-2 . 4%~+0 . 1%),毎日は(-0 . 7
%~+2.0%)である。表 5 の 3 つの「特色ある数 値」は,偶然の変動なのか,それともなんらかの 特別な理由があるのだろうか。
この点を検討するために,分析 4・分析 5 を試 みる。実は,単純な全体の平均値には,(先の「集 計の影響」にも見られたように)少なくとも 2 つ の問題がある。
第 1 に,メディアによって月ごとの調査回数が 異なる点である。回数が異なることは,一部の時 期について,多く調査したメディアと少なく調査 したメディアがあることを意味する。すると,た とえば,支持率が高い時期の調査が多いメディア の平均値は上がり,調査が少ないメディアの平均 値は下がる,などが生じる。分析 4 では,その点
が影響している可能性を調べる。
第 2 に,同じ月でも調査日が異なりうる点であ る。2009~2013年は,図 1で示したように,内閣 支持率が急激に上下する時期であり,月初めと月 末で大きく異なることもあった。このため,調査 日が異なるデータを単純に平均すると,調査日の 違いが平均値に大きな影響を与えてしまう可能性 がある。分析 5 では,宮野(2009)でも部分的に 試みた同日調査を取り出しての分析を行う。対象 とする期間が長くなったため,同日調査のデータ も増え,特定の2つのメディアのみ取り出すなど,
より詳細に比較することが可能になっている。
3
―4 分析 4:月ごとの調査日数の多寡の調整 対象としている 2009 年 1 月から 2013 年 12 月は 60か月になるので,月に一度調査していれば,世 論調査の回数は,60回となる。しかし,表 1に示 したように,NHK は(2011 年 3 月を除いた)毎 月 1 回の調査であり 59 回となっている。日経は
(NHK より少し少ない)56回,毎日・朝日・読売 は,それぞれ 65 回・69 回・76 回と多めである。
特に,朝日・読売は,衆院選前や参院選前に連 続調査をしたことがあり,短期間に多くの調査を したことで,支持率の平均値がその時期の支持率 の影響を受けている可能性がある。そこで,連続 調査の数値をならすため,複数の調査がある月は,
それらの平均値で代替することを試みる。
3
―4
―1 月ごとの平均値を用いた比較
表 6・表 7は,複数回の調査がある月の値を,そ れらの平均値で代替した場合の「相対」内閣支持 率の表である。
表 6 では,各メディアの調査回数は,自民党内 閣で 20~21 回,民主党内閣で 36~39 回と,ほぼ 等しくなっている。 (回数が少ないメディアは,調 査していない月があることを意味している。)
レンジは,自民党内閣は表 3の4.2% から3.5%,
民主党内閣は表 4の6.4%から4.7% となっている。
データの一部を平均しており,ケース数が減って
いることもあり,いずれも低くなっている。
メディア別では,「相対」支持率の平均値は,自 民党内閣では,日経 56.0% が高く,NHK52.4% が 低かった。民主党内閣では,毎日 46.6% が高く,
日経 42.0%・朝日 42.3% が低かった。どちらでも 最高値,どちらでも最低値というメディアはなかっ た。読売と朝日を比べると,自民党内閣で 1.8%,
民主党内閣で 2.4%,読売が高かった。
表 7 では,各内閣別の平均値を示した。自民党 の麻生内閣・安倍内閣と民主党の菅内閣では,「相 対」支持率のレンジはいずれも2 % 台と小さめで,
メディア間の平均値の差は小さい。
表 5 と比べてみる。菅内閣は 7.6% から 2.2%へ と減少しているのは,表 5 の 3 つの「特色ある数 値」のうち,菅内閣における読売の数値が大きく 減ったことが大きい。鳩山内閣が 3.8%から 7.2%
に増えているのは,もともと最大値であった毎日 の数値がさらに大きくなったためと,日経が低い ままで変わらなかったためである。野田内閣が 8.4% から 5.9% に減ったのは,表 5 の 3 つの「特 色ある数値」のうち,野田内閣における朝日の数 値が上昇したためであり,5.9% と比較的高いまま
表 6 複数回調査の月は,それらの平均値で代替した場合の各政党内閣の「相対」支持率平均値 NHK 朝日 日経 毎日 読売 レンジ 平均値
自民党 内閣時
相対内閣支持率 52.4% 53.3% 56.0% 52.8% 55.1% 3.5% 53.9%
絶対内閣支持率 44.6% 43.7% 45.4% 43.1% 49.9% 6.8% 45.3%
差 7.8% 9.6% 10.6% 9.6% 5.2% ―3.3% 8.6%
N 21 21 20 20 21
民主党 内閣時
相対内閣支持率 43.6% 42.3% 42.0% 46.6% 44.7% 4.7% 43.8%
絶対内閣支持率 36.4% 33.8% 33.3% 37.7% 39.7% 6.4% 36.2%
差 7.1% 8.6% 8.7% 9.0% 5.0% ―1.7% 8.6%
N 38 38 36 36 39
表 7 複数回調査の月は,それらの平均値で代替した場合の各個別内閣の「相対」支持率平均値
NHK 朝日 日経 毎日 読売 レンジ 平均値
麻生 内閣
相対内閣支持率 26.1% 24.0% 24.4% 23.3% 24.9% 2.8% 24.5%
絶対内閣支持率 23.2% 20.3% 20.4% 18.9% 22.5% 4.3% 21.1%
N 9 8 7 8 8
鳩山 内閣
相対内閣支持率 54.0% 54.1% 51.7% 58.9% 56.6% 7.2% 55.1%
絶対内閣支持率 47.6% 44.8% 42.8% 51.6% 51.3% 8.8% 47.6%
N 8 9 9 9 9
菅 内閣
相対内閣支持率 40.2% 39.4% 39.0% 41.2% 40.7% 2.2% 40.1%
絶対内閣支持率 33.9% 31.9% 31.4% 33.4% 36.1% 4.7% 33.3%
N 14 13 12 14 15
野田 内閣
相対内閣支持率 41.2% 38.1% 38.5% 44.0% 41.6% 5.9% 40.7%
絶対内閣支持率 33.1% 29.1% 29.1% 32.7% 36.3% 7.2% 32.1%
N 16 16 15 13 15
安倍 内閣
相対内閣支持率 72.2% 71.3% 73.0% 72.4% 73.7% 2.3% 72.5%
絶対内閣支持率 60.7% 58.1% 58.8% 59.3% 66.7% 8.6% 60.7%
N 12 13 13 12 13
であるのは,毎日が高いままだったからである。
5社の数値のレンジであるので,1社の値が変動 することの影響が大きく反映されてしまう。また,
表 5 の 3 つの「特色ある数値」のうちの 2 つは,
特定の月の複数回の調査が全体の平均値に影響を 与えていたことも判明した。
メディア別では,鳩山内閣では,毎日 58.9% が 高く,日経 51.7% が低い。野田内閣では,毎日 44.0% が高く,朝日 38.1%・日経 38.5% が低い。イ デオロギー傾向に沿って高い,ないし低いという 系統的な傾向を示しているメディアがあるように は見えない。読売と朝日を比べると,どの内閣で も読売がわずかに高いが,麻生内閣の 0.9% ~野 田内閣の 3.5%で,差は大きくはない。
3
―4
―2 月ごとの比較の限界
先に,月平均で比べても限界があると述べた。
1 つは,月初めに調査する傾向がある社と月末 に調査する傾向がある社とがあり,内閣の交代や 支持率の上下の影響を受けるためである。たとえ ば,月初めに多く調査するメディアと月末に多く 調査するメディアとがあるとする。新内閣成立が 月初めに間に合わない場合で,かつ,新内閣の高 い支持率の下落が速い場合,月初めに多く調査す るメディアは,新内閣成立時の高支持率をとらえ そこなうかもしれない。
具体例として,2009年 9月の鳩山内閣成立時を 挙げる。NHK 月例調査は9月 6日の麻生政権末期 を捉え,相対支持率は16.9% だった。これに対し,
他の 4 メディアは,鳩山内閣成立直後の 9 月 17 日 に調査し, 相対支持率で 81.5~85.6% だ っ た。
NHK の平均値には,鳩山内閣時の9月調査(支持 率 80% 台)は組み込まれない分だけ低くなる(た だし,9 月の数値 16.9% は麻生政権の 9 月調査に なり,鳩山政権支持率の平均値には算入しない)。
他方,鳩山内閣の支持率はほぼ直線的に下落し,
月初めは高く月末が低くなる傾向があった。この ため,表 8 に示すように,2009 年 10 月調査から 2010 年 5 月までの計 8 回の平均は,月の早めに調
査することが多かった NHK と読売で高く,月の 後半に調査することが多かった朝日と月末に調査 することの多かった日経で低くなっている。 (毎日 は,月初めではないが,民主党政権時に相対内閣 支持率が高かった。理由は不明である。)
月の区切りは恣意的であり,月末調査と月初め 調査は,月をまたいでまとめた方が適切かもしれ ない。しかし,どこで線を引くのがよいのかはデー タにも依存するため,恒常的に適切と言える線の 引き方は存在しないかもしれない。また,メディ アによっては,内閣交代後の支持率が跳ね上がっ たときのデータが抜けていたり,低い時期のデー タが抜けていたりすることも起こりうる
13)。
3
―5 分析 5:同日調査 (1 日違いを含む) の分析 分析 4 で,月平均値で代替することで同月比較 が可能か否か検討したが,なお問題が多いことが 分かった。少なくとも内閣支持率が大きく変動す る時期には,調査日が異なるデータを比較するの は難しい。分析 5 では,調査日が同じ(あるいは ほぼ同じ)データを集めて比較する。同日か否か は,調査終了日で判定し,1 日違いはほぼ同日と して,同日調査に含めることにした。以下,本論 文での「同日調査」は,「同日調査(1日違いを含 む)」を指す。
同日調査は,方法が同じならば,標本誤差の範 囲内で,ほぼ同じ結果が得られるはずである。し かし,実際には,方法は等しくはない。各社の調 査方法・質問の仕方など,微妙に異なっている。
このため,たとえ同日調査であっても,たとえば
DK/NA の割合が異なってくることによって「絶
表 8 鳩山内閣:2009 年 10 月~2010 年 5 月 (2009 年 9 月調査を除きNを揃えた)
NHK 朝日 日経 毎日 読売 レンジ 平均値 相対内閣支持率 54.0% 50.4%47.7% 55.6%53.5% 7.8% 52.2%
絶対内閣支持率 47.6% 41.5% 39.5% 48.4% 48.3% 8.9% 45.1%
N 8 8 8 8 8
対」支持率には大きめの差が生じる。 「相対」支持 率は,これらの相違を吸収してくれるだろうか。
3
―5
―1 同日調査の「相対」支持率のレンジ 宮野(2009)では,DK/NA の相違を補うため に導入した「相対」支持率は,それ以外の調査方 法の相違を超えて近似した結果をもたらす可能性 を指摘した。本論文では,対象とする政権党交代 を挟む期間でも成り立つか否かを検討してきたが,
同日調査の比較結果を見てから最終判断を示す。
2009~2013 年の 5 年間で,2 社以上の同日調査 は,86 回だった。各回ごとに,各社(2 社以上)
の値のレンジを計算し,86 回分のレンジを得た。
その平均値は,「相対」内閣支持率で3.4%,「絶対」
内閣支持率で4.9% だった。宮野(2009)では,メ ディアとして NHK でなく共同を入れた5社であっ たが,同種のデータ18回分で,「相対」3.8%,「絶 対」4.9% と報告しており,ほぼ等しい
14)。
3
―5
―2 同日調査の 2 社間比較
同日調査については,2 社のみが同日の場合だ けでなく,3 社以上が同日の場合もあるが,ここ では,特定の 2 社のみに注目して比較する。その 際,朝日と読売を基準とし,差を調べる。朝日・
読売を基準とする理由は 2 つある。第 1 に,仮説 3・4を検討する目的で,朝日・読売に注目するた めである。第 2 に,表 2 で平均を見ると,朝日の 相対支持率が 5 社中で最も低かったためである。
表 9で,調査終了日が等しい(1日違いを含む)
場合について,各メディアと,「朝日」との差・
「読売」との差の,ケース数 N と支持率の差の平 均値を示した。
同日調査の回数は,メディア間で大きく異なる。
総調査回数・月のいつ頃に調査をする傾向がある か・選挙前に調査回数を増やしたかなど,様々な 要因に左右される。これらのため,表 9 に示した ように,読売は朝日と同日になった回数は 31 回 だったが,日経は朝日と同日になった回数が12回 だけであった。
表 9を見ると,「絶対」内閣支持率は,同日調査 であっても,メディア間でかなりの相違がある。
たとえば,朝日との差の平均値の最小~最大は,
日経 0.2% ~読売 6.7% であった。対象期間での同 日調査の「絶対」内閣支持率は,読売が高く,朝 日・日経が低い。
しかし,「相対」内閣支持率のメディア間の差は ずっと小さくなる。たとえば,5 社で最も低いと 思われる朝日との差の平均値の最小~最大は,日 経 0.7% ~ NHK2.9% であった。日経と朝日が近い が,読売と NHK ・日経・毎日の差も± 1% 以内に 収まっていて,きわめて近い。同日調査における
「読売と朝日」の「相対」支持率の差の平均 2 . 0%
(N=31)は, 「毎日と朝日」の2.6%(N=23)・「NHK と朝日」2.9%(N=23)よりも小さく,これらと の比較で見る限り,読売が高いというより,「平均 的に朝日が少し低い」ということになる。すなわ ち,同日調査の「相対」支持率の平均値は,あえ て言えば,NHK・毎日が高く,1% 弱下がって読 売,さらに 1% 弱下がって日経,さらに 1% 弱下 がって朝日,といった程度で,全体としてレンジ 3%(読売・日経を挟んで± 1.5%)以内で,大差 ないと言えるのではないか。
「相対」支持率は,論理的な可能性だけでなく,
結果的に見ても,調査方法などの相違を吸収し,メ ディア間の調査の同質性を示してくれるようだ。表 9を見る限り,順位でも,相互の差の大きさの点で も,仮説 3・4 が成立しているように思われる。
表 9 2019―2013 年の各メディアの同日調査における 内閣支持率の差の平均値
相対支持率 絶対支持率 N
読売-朝日 2.0% 6.7% 31
NHK-朝日 2.9% 4.1% 23
日経-朝日 0.7% 0.2% 12
毎日-朝日 2.6% 2.4% 23
NHK-読売 0.7% ―1.9% 32
日経-読売 ―0.9% ―5.8% 13 毎日-読売 0.9% ―3.2% 25
3
―5
―3 同日調査の読売と朝日の比較
同日調査の数も多く,かつイデオロギー的にも
「保守より
―革新より」と色分けされがちな,読売 と朝日に注目して少し詳しく眺める。両社の同日 調査 31 回の差の分布は,図 2 を参照されたい。
読売と朝日の「相対」内閣支持率の差のうち,
大きく異なっている値について検討してみる。両 社の同日調査 31 回のうち,「相対」支持率の差が 平均 2.0%から最も外れているのは,差 8.7% のと きである。これは 2012 年 10 月 2 日(読売 37.8%,
朝日 29.1%)のことであるが,その 2 日前に終了 した毎日 32.1% と比べると,読売が5%ほど高く,
朝日が 3% ほど低い。
2番目に「相対」支持率の差が平均 2.0% から外 れているのは,差
-3.3% のときである。2010年 6 月 13日(読売 68.6%,朝日 72.0%)であり,同日 の NHK 調査は,72.6% を記録しており,何らかの 理由で読売が低く出ているのかもしれない。3 番 目に平均 2.0% から外れているのは,差 6.9% のと きで,2011年 12月 11日(読売 48.8%,朝日 41.9%)
であり,同日の NHK46.8% と比べ,朝日が 5% ほ ど低く,読売が 2% ほど高い。
大きな差が生じているのは,「片方のみに大きな 誤差が生じた場合」か,「片方はプラス方向に他方 がマイナス方向に振れ,間に母集団の値を挟んで いる場合」が,考えられる。両者の差の分布は,
平均値を真ん中に,左右対称に近い形で分布して いる。ただし,今回の結果だけでは,その適否は 不明である。
「相対」支持率の差は,読売と朝日では平均して 2% あり,また NHK・毎日と朝日では3% 弱あり,
これらの分は,何らかの系統的な差である可能性 がある。
3
―5
―4 政権党別の同日調査の平均値
表 10は,自民党内閣時と民主党内閣時とで,表 9 を分けたものである。
「相対」支持率の差でみると,読売・日経と朝日 の差は, 自民党内閣時と民主党内閣時とで各 0.1%・0.4% しか異ならず,大差はない。NHK と 朝日・読売は,差はそれぞれ1.3%で,民主党内閣 時に NHK が少し高くなっている。しかし,毎日 と朝日・読売は,差は 2.7%・3.1% で,民主党内 閣時に毎日は高めに出ていた。仮説 3・4は,自民 党内閣時と民主党内閣時とを比較したものである が,読売・日経と朝日に関しては,特に「相対」
支持率では,政権党による違いはなかった。
0 1 2 3 4
(ケース)5
−5 〜 −4 −4 〜 −3 −3 〜 −2 −2 〜 −1 −1 〜 0 0 〜 1 1 〜 2 2 〜 3 3 〜 4 4 〜 5 5 〜 6 6 〜 7 7 〜 8 8 〜 9
(%)
表 10 2019~2013 年の各メディアと朝日・読売との 同日調査(1 日違いを含む)の内閣支持率の差 の政権党内閣別の平均値
2009―2013 自民党内閣 民主党内閣
相対 絶対 N 相対 絶対 N
読売-朝日 2.1% 7.6% 13 2.0% 6.1% 18 日経-朝日 0.9% 0.3% 6 0.5% 0.0% 6 毎日-朝日 1.1% 0.8% 10 3.8% 3.7% 13
NHK-朝日 2.0% 3.9% 7 3.3% 4.2% 16
NHK-読売 ―0.1% ―2.8% 12 1.2% ―1.4% 20
日経-読売 ―1.4% ―5.1% 5 ―0.5% ―6.3% 8 毎日-読売 ―1.2% ―5.9% 8 1.9% ―1.9% 17 図 2 同日調査の朝日と読売の「相対」内閣支持率の
差の分布(N=31)
4 結 論
結論を,箇条書きでまとめる。
(1) メディアの世論調査の比較について
① メディアの世論調査の比較には,十分な注 意が必要である。
② 平均値の比較に際しては,調査回数,調査 日,連続調査の有無などにも注意すべきであ る。
③ 月ごとの各メディアの数値の比較は危うい。
調査日が重要であり,同日調査の比較を推奨 する。
④ たとえ同日調査でも,調査方法の相違を吸 収する方法を考えないと,結果は大きく異な りうる。特に,対立意見や DK/NA などの割 合の差を組み込める指標の使用が望まれる。
(2) 「絶対」内閣支持率について
① 「絶対」内閣支持率は,不支持の割合や DK/
NA の割合を考慮しない指標であり,大きな 問題を持つ点を示唆しつつ使うべきである。
② たとえば,表 2 などで,読売の「相対」内 閣支持率が NHK・日経・毎日とほぼ等しいの に,読売の「絶対」内閣支持率が高く出た理 由は,読売の調査は「内閣不支持率も高い」
かつ「DK/NA 率が低い」ためであろう。
③ 「絶対」内閣支持率を公表したり比較したり する場合,「相対」内閣支持率や「絶対」内閣
「不支持」率を併用することを考えるべきであ る。
(3) 「相対」内閣支持率について
① 「相対」内閣支持率は,平均的に,「絶対」
内閣支持率よりも,メディア各社間の差が小 さく,測定の信頼性の点では優位に立つ。
② ただし,「相対」内閣支持率は,「絶対」内 閣支持率よりも高い数値を示すため,単独で
公表数値に使うことは難しいかもしれない。
③ とはいえ,「相対」内閣支持率は,「絶対」
内閣支持率の欠点を補い,マスメディアの世 論調査が信頼性を内包することを示すもので あり,1 つの異なるデータの見方として重要 である。
(4) メディア世論調査の信頼性について
① メディアの世論調査は,「相対」内閣支持率 でみる限り,同日調査であれば,相互の差は 小さい。
② メディアの世論調査は,「相対」内閣支持率 でみる限り,メディアによるイデオロギー差 の影響も認め難い。
③ 以上の2点は,内閣支持率について,メディ アの世論調査が,メディアのイデオロギーの 影響を受けているとか,メディアが操作して いる,などの場合には,きわめて起こりにく い結果である。
④ その限りで,今回の検討においては,メディ アの世論調査は,信頼できると結論する。
(5) 今後の課題
① 本論文の指摘は,内閣支持率調査に関する ものであり,世論調査のどの範囲まで同じこ とが言えるのかは明らかではない。ただし,
政党支持については,宮野(2009)で一応の 確認をした。また,イデオロギーの影響を受 けやすそうな内閣支持や政党支持で確認でき ているのであれば,その他の少なからぬ調査 テーマにおいても成り立つ可能性があると予 想する。
② 本論文は,世論調査それ自体,および世論 調査の数値に関する見解であり,各メディア による数値の解釈・見出し・記事内容まで含 めての話ではない。それらの検討は,本稿の 範囲を超える。
③ 本稿が対象としたのは,2009 年から 2013
年の 5 年間で,政権の激動期ではあったが,
この期間を超えても本論文の結論が成立する か否かの検討は,今後の課題である。
④ 世論調査とそのメディア間の比較について は,ワーディングを含めた調査方法・回収率 などとそれらの相違の影響やデータの扱い方 など,まだまだ検討すべき課題が残っている。
特に,非回答バイアスへの対応は,その必要 性の有無を含め,世論調査の信頼性にとって も大きな課題である。
補遺
―内閣不支持率と内閣支持「その 他」率
内閣支持質問における回答は,「支持」・「不支 持」・「DK/NA など(=「支持・不支持」以外の 回答)」の3種類があるが,通常は「支持」だけが 示される。しかし「支持」だけではなく,「不支 持」・「DK/NA など」の 2 種類も視野に入れると 異なる情報が見えてくる。そこで補遺として,朝 日・読売の 2 社のデータを図示する。図3は「絶 対」内閣不支持率であり,図4は「DK/NA など」
の率のグラフである。
本論文では,内閣支持質問における「不支持」
回答や,「DK/NA など」に言及はしたが,これら を明示的に検討できてはいない。これらのより詳 しい分析は,今後の課題である。
10 20 30 40 50 60 70 80(%)
2009 2010 2011 2012 2013 2014
朝日 読売 図3 「絶対」内閣不支持率 2009~2013 年(朝日新聞と読売新聞)
1) NHK放送文化研究所 2015 年 5 月実施の配布回 収法で,全国 20 歳以上の男女を,住民基本台帳か ら 12 人× 200 地点を層化 2 段無作為抽出し,有効 回答 1620人,回収率 67.5% だった。回答選択肢は,
「そう思う・ややそう思う・どちらともいえない・
あまりそう思わない・そう思わない・無回答」の5 値。
2) 5 値を,「そう思う + ややそう思う」=「そう思 う」,「どちらともいえない」,「あまりそう思わない + そう思わない」=「そう思わない」の3値にまと めた。
3) NHK2015 調査の問 7 で,「世論調査に関する以 下の意見について,あなたが「そう思う」と感じる もののすべてに〇をつけてください。」とした質問 では,懐疑的な人の多めの推定値は8割くらいにな る。つまり,「2,000人程度の調査でも,世の中の考 え方をほぼ正確にとらえることができる」と思った 人は,19.2%,「新聞社によって世論調査の結果に
違いがあるのは,新聞社が操作しているからではな い」と思った人は 23.1%であった。
4) 中央調査社の 2015 年調査は,1987 年,2004 年,
2009 年に続く 4 回目で,個別面接調査であり,全 国 20 歳以上の男女を,電子住宅地図から層化 3 段 無作為抽出法で4,000人抽出し,回収数は1,200人,
回収率は 30%だった(穴澤:2018)。
5) 中央調査社 2015 年調査で,世論調査の「結果を 信用できない」と考える人に,「信用できないと思 うのはなぜですか。」と質問したところ,最も多かっ た理由は,「一部の人を調査しただけでは,全体の 考え方が分からないから」だったという(穴澤:
2018)。
6) 鄭(2015:47 頁)は,本論文と同じ 5 つのマス メディアを選び,2013 年 1 月から 2014 年 8 月の
「内閣支持率調査結果」をグラフ表示(48頁:図 1)
し,公表されている内閣支持率がメディアによって 大きく異なるとしている。ただし,そこまでで,本 5
10 15 20 25 30(%)
2009 2010 2011 2012 2013 2014
朝日 読売 図4 内閣支持質問における「DK/NAなど」の率 2009~2013 年(朝日新聞と読売新聞)
題である「RDD法をめぐる課題の検証」に入るた めの導入に使われている。
7) 小林・竹本(2016)は,各新聞の読者に「イデオ ロギー的極性化が生じているかどうか」を検討する ために,興味深い複数の方法を用いている。すなわ ち,2001~2013 年の 13 の調査における各新聞の購 読者ごとの,①イデオロギー得点の平均値の推移,
② 4 つの争点についての争点態度の推移,③ イデ オロギーの意味を正しく理解している可能性の高い サブサンプルでの分析,を実施している。結論とし て,極性化している明確な証拠は得られなかったと いう(同:25―26 頁)。
ただし,小林・竹本(2016)では指摘されていな いが,方法①の結果である図 1a~図 1c(小林・竹 本:2016:24―25頁)から,少し異なる情報を読み 取れる。かれらが用いた調査(JES3 調査:2001~
2005 年の 4 回,JES4 調査:2007~2009 年の 4 回,
早稲田調査など 2009~2013 年の 5 回)の全 13 回の すべてで,朝日購読者平均は読売購読者平均よりイ デオロギー得点が左側である。しかも,95% 信頼 区間が重なっていないか,あるいは,重なっている か否か微妙なケースが,7~8 回ある。
つまり,朝日購読者は読売購読者よりもイデオロ ギー得点の平均値が(量的にはわずかであろうが)
革新よりである可能性がある。ただし,この結果を 逆に読み,朝日購読者と読売購読者のイデオロギー 得点の平均値はほとんど差がない,とも言える。
8) 菅原(2011)は,現状の世論調査は十分には機能 していない,もっと良いやり方があるとする。しか しRDD調査批判に対しては,「大した問題ではな い」として,「その重要な根拠は,現状のRDDで の世論調査結果による選挙結果予測が十分正確であ るということです。世論調査結果は決してデタラメ ではなく,安定的に選挙結果と関連しているわけで す。」(27 頁)としている。
9) 宮野(2009)の5社のデータには共同通信社デー タを含めていたが,今回,代わりにNHKのデータ を用いて5社データとした。この変更は,テレビ報 道のデータを含めたかったことと,データの利用し やすさなどのためである。
10) 「絶対内閣支持率」と「絶対」内閣支持率は同じ ものであり,「相対内閣支持率」と「相対」内閣支 持率も同じものである。読み手の理解しやすさを考
え,特に対比するときに,「絶対」内閣支持率と,
「相対」内閣支持率,という表現を用いる。
11) 結果の数字自体に差があるか否かという議論であ り,見出しなどの提示の仕方や解釈については問う ていない。
12) NHKはホームページのデータを用いた。日経も ホームページにデータがあり,調査日のみ日経テレ コンで調べた。毎日は「毎策」の「世論調査」を用 いた。朝日・読売は,「聞蔵Ⅱ」・「ヨミダス」の記事 検索を用いたが,個別の記事からの数値を取り出し た。このため,朝日・読売については,筆者の習熟 度不足もあり,わずかではあろうが,見落としがあ りうる。また,日経・朝日・読売については手入力 をしたため,転記ミスもありうることをお断りする。
13) さらに一例を加えると,たとえば,2012年 12月 の調査である。日経・毎日・読売は,12 月末の安 倍内閣成立直後調査で 70% 前後の支持率であるの に対し,NHKは,月初めの野田内閣の23.8% が12 月分になっている。内閣ごとや政権党ごとのデータ でも,この違いは部分的に反映される。
14) 2009 年の最初の 3 回については宮野(2009)と 重複がある。その 3 回を除いた 83 回分で計算して も「相対」で 3.4%,「絶対」で 5.0% とほぼ同じで ある。
参 考 文 献
穴澤大敬 2018 「アンケート調査に関する意識につい て 」 中央調査報 No.701(http://www.crs.or.jp/
backno/No701/7011.htm)(2018年 10月 16日閲覧)
岩本裕 2015 『世論調査とは何だろうか』岩波新書 1546
小林哲郎・竹本圭祐 2016 「新聞読者は極性化してい るか」 日本世論調査協会報『よろん』 117 巻 22―26 頁(DOI https://doi.org/10.18969/yoron.117. 0_22)
菅原 琢 2011 「世論調査は機能しているのか ? : 「民意」
解釈競争と現代日本政治の迷走」日本世論調査協 会報『よろん』 107 巻 25―33 頁(DOI https://doi.
org/ 10.18969/yoron.107.0_25)
鄭躍軍 2015 「日本における世論調査の信頼性と妥当 性の統計学的検証」『よろん』 115 巻 46―50頁(DOI https://doi.org/10.18969/yoron.115.0_46)
原美和子・中野佐知子 2016 「世論調査で探る「世論」
と「世論調査」」『放送研究と調査』 2016 年 2 月,
48―65 頁
宮野勝 2009 「『相対』政党支持率と『相対』内閣支持 率の安定性についての試論:マスコミの世論調査 の信頼性」『中央大学社会科学研究所年報』13 号
97―114頁(安野智子編 2016『民意と社会』 中央大 学出版部,第 1 章,1―23 頁に微修正のうえ収録。
「「相対」政党支持率と「相対」内閣支持率の安定 性について―マスコミの世論調査の信頼性―」)