Lemniscate
のGalois
理論について,Cox
とHyde
の論説によるOn the Galois theory of the lemniscate, after an article by Cox and Hyde
数学専攻 田代卓真
Takuma TASHIRO
はじめに
本論文は,
David Cox, Trevor Hyde, The Galois theory for the lemniscates, Journal of Number
Theory 135 (2014)
に基づく総合報告である.論文は7節からなるが,第5節以降でCox-Hyde
の論説を基にしてレムニスケート曲線の等分多項式を論述した.一方,その前段階として,第1節で は第2節以降で必要な
Galois
理論の事項を,第2節では円分多項式と円分体について,第3節ではChebyshev
多項式について,第4節ではGauss
の整数環について基本事項をまとめた.第5節からが本論であり,第5節ではレムニスケート函数について,第6節ではレムニスケート函数の等分多項 式について,第7節では
lemnatonic polynomial
について論述した.1. Galois
理論記号
1.1. K/k
を代数的拡大とする.体K
の自己同型でk
の元を動かさないものを,K
のk
上の自 己同型といいAut k (K)
と書く.体K
のk
自己同型の全体をGal(K/k)
で表す.Gal(K/k)
は写像 の合成に関して群となる.定義
1.2. K
を体とし,G
をk
の自己同型群Aut k (K)
の部分群とする.このとき,G
のすべての元 で固定されるK
の元全体の集合をK G
と書き表す.すなわちK G = { x ∈ K ;
すべてのσ ∈ G
についてσ(x) = x
が成り立つ}
であり,K G
はG
の固定体という.命題
1.3.
固定体K G
はK
の部分体である.定理
1.4. (Galois
理論の基本定理) K/k
を体の有限Galois
拡大とする.このとき,対応L 7→
Gal(K/L)
はK/k
の部分拡大とGal(K/k)
の部分群の一対一対応を与える.逆対応はH 7→ K H
に よって与えられる.さらに,L/k
がGalois
拡大⇔ Gal(K/L)
がGal(K/k)
の正規部分群.このと き,Gal(L/k)
は剰余群Gal(K/k)/Gal(K/L)
に同型.2.
円分多項式と円分体定義
2.1. (
円分多項式) n
を正の整数とし,ζ = e 2πi/n = cos 2π
n + i sin 2π
n
とする.Φ n (t) = ∏
1≤k≤n
(k, n)=1
(t − ζ k )
と定義する.したがって,
deg Φ n (t) = φ(n)
.1
定理
2.2. n
を正の整数とする.このとき,t n − 1 = ∏
d | n
Φ d (t)
が成り立つ.
定理
2.3. n
を正の整数とする.このとき,円分多項式Φ n (t)
はQ [t]
において既約である.Q (ζ n )
はn
次円分体という.円分多項式や円分体の「円分」という名称は,1, ζ, ζ 2 , . . . , ζ n − 1
がGauss
平面において正n
角形の頂点をなすことに由来している.定理
2.4. n
を整数≥ 3
とし,ζ = e 2πi/n
とおく.このとき,対応σ 7→ i(σ)
は群の同型i : Gal( Q (ζ )/ Q ) → ∼ ( Z /n Z ) ×
を与える.3. Chebyshev
多項式定理
3.1. (
第一種Chebyshev
多項式) n
を整数≥ 0
とする.このとき,T n (cos θ) = cos nθ
が成立 するようなT n (t) ∈ Z [t]
が唯一つ存在する.さらに,各n ≥ 2
に対してT n (t) = 2tT n − 1 (t) − T n − 2 (t)
が成立する.命題
3.2. n
を正の整数とする.このとき,T n (t) = 2 n − 1
∏ n k=1
(
t − cos 2k − 1 2n π
)
が成り立つ.
系
3.3. n
を正の奇数とする.このとき,T n (t) = 2 n − 1
n ∏ − 1 k=0
(
t − sin 2kπ n
)
が成り立つ.
4. Gauss
の整数環定義
4.1. C
の部分環Z [ √
− 1] = { a + b √
− 1 ; a, b ∈ Z}
をGauss
の整数環という.α ¯ = a − bi
をα
の複素共役という.共役との積をノルムといいNr = α α ¯
と書き表す.Gauss
の整数に対して整除の定理が成立するので,Z[ √
−1]
のイデアルはすべて(α)
の形をしてい ること,Z [ √
− 1]
において素因数分解の定理が成立することが従う.定理
4.2. p
を素数とする.Gauss
素数には以下の3
つがある.(1) π = 1 + i.
つまり,Norm
が2
であるもの.(2) p ≡ 1 mod 4
なら,π ∈ Z[ √
−1]
が存在してNr(π) = p
となる.このとき,π, π
はZ[ √
−1]
に おける素数で(p) = (π)(π), (π) ̸ = (π)
.(3) p ≡ 3 mod 4
なら,p
はZ [ √
− 1]
における素数.2
定義
4.3. α ∈ Z[ √
−1]
とする.α ≡ 1 mod 2(1 + i)
のとき,α
は準素であるという.5. Lemniscate
函数定義
5.1.
極方程式r 2 = cos 2θ
により定義された曲線をレムニスケートlemniscate
という.s =
∫ φ(s) 0
√ dr
1 − r 4 ( − ϖ
2 ≤ s ≤ ϖ 2 )
によってs = s(ρ)
の逆函数ρ = φ(s)
が定義される.命題
5.2. (
加法定理)
任意の実数x, y
に対してφ(x + y) = φ ′ (x)φ(y) + φ(x)φ ′ (y) 1 + φ(x) 2 φ(y) 2
が成り立つ.命題
5.3.
以下が成立する.(1) φ(iz) = iφ(z) (2) φ ′ (iz) = φ ′ (z) (3) φ ′ (z) 2 = 1 − φ(z) 4
(4) (
加法公式) φ(z + w) = φ(z)φ ′ (w) + φ ′ (z)φ(w) 1 + φ(z) 2 φ(w) 2
定理
5.4. φ(z)
はL = Z (1 − i)ϖ + Z (1 + i)ϖ
を周期に持つ楕円函数で,0, ϖ
で1
位の零点を,(1 − i)ϖ/2, (1 + i)ϖ/2
で1
位の極を持つ.定理
5.5. ν ∈ Z [ √
− 1]
とする.このとき,互いに素なP ν (t), Q ν (t) ∈ Z [ √
− 1][t]
が存在してφ(νz) =
φ(z) P ν (φ(z) 4 )
Q ν (φ(z) 4 ) (ν
が奇数) φ(z) P ν (φ(z) 4 )
Q ν (φ(z) 4 ) φ ′ (z) (ν
が偶数)
が成立する.さらに,
P ν (t), Q ν (t)
は互いに素で,Q ν (0) = 1
となるように取れる.補題
5.6. ν ∈ Z [ √
− 1]
を準素元,S
をZ [ √
− 1]/(ν) − { 0 }
のZ [ √
− 1]
における完全代表系とし,λ = (1 + i)ϖ
とおく.このとき,φ(νz) = φ(z) ∏
α ∈ S
φ ( z − α
ν λ )
が成立する.系
5.7. ν ∈ Z[ √
−1]
を準素元とし,A
をν
を法とする1/4
剰余系とする.このとき,φ(νz) = φ(z) ∏
α ∈ A
φ(z) 4 − φ ( α ν λ ) 4 1 − φ(z) 4 φ ( α
ν λ ) 4
3
が成立する.
6. Lemniscate
函数の等分多項式定義
6.1. ν ∈ O
を準素元とし,λ = (1 + i)ϖ
とする.このとき,Λ ν (t) = ∏
[α] ∈ ( O /ν O )
×(
t − φ ( α ν λ ))
をν-th lemnatomic polynomial
という.補題
6.2. Λ ν (t)
を上記のとおりとする.このとき,Λ ν (t) ∈ O [t]
は次数| ( O /ν O ) × |
の主係数1
の多 項式である.命題
6.3. ν ∈ O
を準素元とし,tP ν (t 4 )
をν
等分多項式とする.このとき,tP ν (t 4 ) = ∏
γ | ν
Λ γ (t)
が成立する.
7. Lemniscate
函数のGalois
理論定理
7.1. π ∈ Z[ √
−1]
を準素な既約元とし,P π (t) = t d + a 1 t d − 1 + . . . + a d − 1 t + a d (a 1 , a 2 , . . . , a d ∈ Z [ √
− 1])
とおく.このとき,a 1 , a 2 , . . . , a d
はπ
で割り切れる.特に,a d = π
.定理
7.2. ν ∈ O
が準素ならば,Λ ν (t)
はK
上既約である.系
7.3. ν ∈ O
を準素元とし,λ = (1 + i)ϖ
とする.任意のσ ∈ Gal(K ν /K)
に対して,σ (
φ ( λ ν
)) = φ (
α λ ν
)
となる[α] ∈ (O/νO) ×
が唯一つ存在する.さらに,写像σ 7→ [α]
は同型Gal(K ν /K) → ∼ ( O /ν O ) ×
を定義する.参考文献