セキュリティ・情報化推進部
第16回 「宇宙環境シンポジウム」
講演論文集
Proceedings of the 16
thSpacecraft Environment Symposium
2019 年 11 月 12 日、 13 日 東京都市大学 横浜キャンパス
宇宙航空研究開発機構
研究開発部門 第一研究ユニット
Japan Aerospace Exploration Agency
Aerospace Research and Development Directorate Unit 1
(C)JAXA/NASA
榎海星,松本悠希,三宅弘晃,田中康寛
電子線照射したフッ素系絶縁材料における空間電荷蓄積特性 ……… 7 久保亘平,遠藤和樹,榎海星,三宅弘晃,田中康寛
真空環境における高分子材料の二次電子放出係数 ……… 11 永田浩二郎,小森あかね,三宅弘晃,田中康寛
宇宙機用高分子絶縁材料におけるキャリア移動度測定方法の考案 ……… 17 武田岳大,朝倉直紀,三宅弘晃,田中康寛
極軌道における軌道上サービスミッションの帯電対策 ……… 21 奥村哲平,岡本博之,趙孟佑
準天頂衛星みちびき初号機の表面帯電解析の時間発展の解析 ……… 29 前田紘孝,中村雅夫,古賀清一,松本晴久
宇宙用太陽電池におけるポッケルス効果を用いた表面電位測定システムの検討 … 35 古瀬清郁,豊田和弘,趙孟佑
帯放電に起因した伝搬ノイズの評価 ……… 39 矢島雄三,木之田博,福田康博,松田涼太
日本の国際宇宙探査シナリオ ……… 45 佐々木宏
太陽フレアAI予報Deep Flare Netの運用化 ……… 61 西塚直人,久保勇樹,杉浦孔明,田光江,石井守
社会インフラを護る宇宙天気インタプリタ ……… 65 玉置晋,石田彩貴,野澤恵
衛星帯電評価に用いる高解像度磁気圏リアルタイムシミュレータ ……… 73 久保田康文,中溝葵,坂口歌織,田光江,久保勇樹,長妻努,田中高史
1/6
フッ素系絶縁材料の陽子線照射中における電荷蓄積特性
榎 海星* 松本 悠希 三宅 弘晃 田中 康寛(東京都市大学)
Charge Accumulation Characteristics on Fluorinated Polymer Irradiated by Proton Kaisei Enoki*, Yuki Matsumoto, Hiroaki Miyake , Yasuhiro Tanaka (Tokyo City University)
It has been reported that the MLI and OSR of spacecraft and the insulation layer of the wire harness are charged by high-energy charged particles such as electrons and protons, resulting in operational abnormalities due to electrostatic discharge. In this study, we measured space charge distribution during proton beam irradiation in order to understand the charge accumulation characteristics of space insulating materials by proton beam irradiation. As a result, positive charge accumulation was observed in the sample, and different charge accumulation tendencies were obtained in the proton passage region and the unreachable region. This elephant is thought to be caused by radiation-induced conduction with different origin in each region and the increase in conductivity, and was examined from the accumulated charge amount and distribution.
キーワード:陽子線,空間電荷分布,PEA法,外部回路電流,ETFE,RIC (Proton, Space charge distribution, PEA method, External circuit current, ETFE, RIC)
1. はじめに
宇宙機の多層断熱材 (multi layer insulator : MLI) や太 陽光反射材(optical solar reflector : OSR),ワイヤーハーネ スの被覆材には絶縁材料が使用されている。宇宙機は電子,
陽子といった高エネルギー荷電粒子,プラズマなどが存在 する環境で運用されている。この環境下に前述の絶縁材料 が曝されると荷電粒子が材料内部に侵入・帯電し,それを 起因とした静電放電による運用異常が報告されている(1)。
近年,低中軌道で運用される地球観測衛星や測衛星が増 加傾向にある。これらの衛星は高エネルギー陽子が多く存 在する環境下で運用される。そのため,宇宙線による絶縁 材料への帯電特性を調査する必要がある(2)。
また,宇宙環境では太陽風プラズマ,電子,陽子といっ た様々な荷電粒子が存在する。そのため,実環境下での絶 縁材料への帯電計測が必須となる。
本研究は,ワイヤーハーネスの被覆材として使用されて いる,ETFE (ethylene-tetrafluoroethylene)に注目し,パ ルス静電応力 (pulsed electroacoustic : PEA)法を用いて,
陽子線照射中の空間電荷分布測定を行った。また速報の結 果だが,陽子線照射後経過時間における高電圧印加時の試 料の外部回路電流の測定を行った。結果より,電荷蓄積傾 向には試料内の導電率の変化が大きく関係していると考え られたので,以下に報告する。また,実環境下での空間電 荷分布の測定に向け,現状の測定装置の問題点を挙げ,解 決策の検証を行ったので合わせて報告する。
2. 測定原理
〈2・1〉 PEA法の原理 図1にPEA法の原理図を示 す。電圧,接地電極の間に試料を挿入し,パルス電圧(vp = 200 V, tp = 5 ns)を加えることにより,空間電荷の蓄積した 各位置で電荷密度に比例したパルス静電応力が瞬間的に発 生する。試料に蓄積している電荷が微小変位し,圧力波が 発生する。圧力波が伝搬し,圧電素子に到達したとき電圧 信号に変換される。このとき,圧電素子に到達する圧力波 は試料内の位置(深さ方向) によって到達時間が異なるた め,空間電荷の分布は出力信号の経時変化として測定され ることになり,空間電荷の蓄積している位置が分かる。得 ら れ た 電 圧 信 号 は ,Mini-Circuits 社 製 広 帯 域 増 幅 器
図1 PEA法の原理図
Fig.1 Schematic diagram of space charge measurement system for irradiation.
Proton Sample
Backing material
ElectrodeAl
Pulsed voltage generator Amplifier
evaporation layerAl +
+ + + + +
+ -
- - - HV DC
electrode Al with hole DSO
Piezo-electric material PC
-
-
- RM
RDC
CC
Proton Sample
Backing material
ElectrodeAl
Pulsed voltage generator Amplifier
Al evaporation layer 㻗
㻗 㻗 㻗 㻗 㻗
㻗 㻙
㻙 㻙 㻙 HV DC
Al electrode with hole DSO
Piezo-electric material PC
㻙
㻙
㻙 RM
RDC
CC
フッ素系絶縁材料の陽子線照射中における電荷蓄積特性
榎海星*,松本悠希,三宅弘晃,田中康寛(東京都市大学)
Charge Accumulation Characteristics on Fluorinated Polymer Irradiated by Proton
ENOKI Kaisei*, MATSUMOTO Yuki, MIYAKE Hiroaki, TANAKA Yasuhiro (Tokyo City University)
ZKL-1R5+で増幅し,デジタルオシロスコープ(National Instruments社製PXle-5160)で計測する。また,測定結果 は電圧信号波形であるため,電荷量に校正し空間電荷分布 を得ている(3)。陽子線照射中用の空間電荷分布測定装置には 試料に直接陽子線を照射するため,照射孔が設けられてい る 。
〈2・2〉 外部回路電流測定原理 図2に外部回路電流測 定装置図を示す。高電圧電極,接地電極の間に試料を挿入 し,高電圧を印加した際に試料の外部回路電流を微小電流 計(ADCMT社製8252 DIGITAL ELECTROMETER)を用 いて測定を行った。また,測定電極はリング状のガード電 極を有した構造となっている為、試料沿面を流れた電流は ガード電極で吸収されるため、試料内を通過してきた正味 の電流量が計測可能である。
3. 陽子線照射中リアルタイム帯電計測
〈3・1〉 照射試料及び測定条件 測定試料として,公 称厚さ100 mのETFEを用いた。試料の照射面側にはパ ルス電圧を印加するため,アルミ蒸着が施されている。
陽子線照射は量研機構高崎量子応用研究所の 3 MV タン デム加速器を使用した。陽子線の照射条件は,加速エネル ギー2 MeV,照射電流密度30 nA/cm2とし照射時間は30分 とした。この照射フルエンスはMEOで約7年分に相当す る量である。空間電荷分布の測定は陽子線照射前から照射 中・後と連続的に10秒間隔で行った。尚、陽子線のETFE 内計算飛程は78 mとなる(4)。
〈3・2〉 測定結果及び考察 図 3に陽子線照射中,後 の ETFE 内の空間電荷分布測定結果を示す。 同図(a)に空 間電荷分布の経時変化を示すカラーチャートを示す。図中 右側から照射をし,図中縦の点線は,照射陽子の計算飛程 を示している。ここで,計算飛程より右側を陽子通過領域,
左側を陽子未到達領域とする。(b)に陽子線照射中の空間電 荷分布波形を照射開始直後から照射終了 10 分後まで,10 分ごとに示す。図中の実線,一点鎖線の波形はそれぞれ,
照射中及び照射後の結果を示す。(c)に陽子線照射中の電界 分布を照射開始直後から照射終了10 分後まで,10 分ごと
H+ beam
Penetration depth 78m
(Al) (Al)
0 50 100
-20 -10 0 10 20
Position z [m]
Charge Density (z) [C/m3 ]
10 s 30 min 10 min 40 min 20 min
(c) 電界分布波形 0 101
30 40
20 10 50 60
-10 Charge Density (z) [C/m3] 10
H+ beam
Penetration depth 78 m
Position z [m]
Timet [mim]
0 0 30 40
20 10 50 60
Charge Density (z) [C/m3]
Position z [m]
Timet [mim]
(a) 空間電荷分布の経時変化を示すカラーチャート
(Al) (Al)
H+ beam
Penetration depth 78m
0 50 100
-20 -10 0 10 20
Position z [m]
Electric Field E(z) [kV/mm]
10 s 30 min 10 min 40 min 20 min
(b) 空間電荷分布測定
0 10 20 30 40 50 60 0
0.1 0.2 0.3 0.4
Time t [min]
Amount of chargeQ [mC/m2 ] Irradiation Relaxation
(d) 蓄積正電荷量の経時変化
図3 陽子線照射中の空間電荷分布測定結果 Fig.3 Charge distribution under proton beam irradiation and relaxation
図2 外部回路電流測定システム
Fig.2 External circuit current measurement system HV DC RDC
Main
electrobe GND electrobe electrobeGND PTFE PTFE
Sample
Semiconductive layer
HV electrode
Surface current
A
2/6 ZKL-1R5+で増幅し,デジタルオシロスコープ(National
Instruments社製PXle-5160)で計測する。また,測定結果 は電圧信号波形であるため,電荷量に校正し空間電荷分布 を得ている(3)。陽子線照射中用の空間電荷分布測定装置には 試料に直接陽子線を照射するため,照射孔が設けられてい る 。
〈2・2〉 外部回路電流測定原理 図2に外部回路電流測 定装置図を示す。高電圧電極,接地電極の間に試料を挿入 し,高電圧を印加した際に試料の外部回路電流を微小電流 計(ADCMT社製8252 DIGITAL ELECTROMETER)を用 いて測定を行った。また,測定電極はリング状のガード電 極を有した構造となっている為、試料沿面を流れた電流は ガード電極で吸収されるため、試料内を通過してきた正味 の電流量が計測可能である。
3. 陽子線照射中リアルタイム帯電計測
〈3・1〉 照射試料及び測定条件 測定試料として,公 称厚さ100 mのETFEを用いた。試料の照射面側にはパ ルス電圧を印加するため,アルミ蒸着が施されている。
陽子線照射は量研機構高崎量子応用研究所の 3 MV タン デム加速器を使用した。陽子線の照射条件は,加速エネル ギー2 MeV,照射電流密度30 nA/cm2とし照射時間は30分 とした。この照射フルエンスはMEOで約7年分に相当す る量である。空間電荷分布の測定は陽子線照射前から照射 中・後と連続的に10秒間隔で行った。尚、陽子線のETFE 内計算飛程は78 mとなる(4)。
〈3・2〉 測定結果及び考察 図 3に陽子線照射中,後 の ETFE 内の空間電荷分布測定結果を示す。 同図(a)に空 間電荷分布の経時変化を示すカラーチャートを示す。図中 右側から照射をし,図中縦の点線は,照射陽子の計算飛程 を示している。ここで,計算飛程より右側を陽子通過領域,
左側を陽子未到達領域とする。(b)に陽子線照射中の空間電 荷分布波形を照射開始直後から照射終了 10 分後まで,10 分ごとに示す。図中の実線,一点鎖線の波形はそれぞれ,
照射中及び照射後の結果を示す。(c)に陽子線照射中の電界 分布を照射開始直後から照射終了10 分後まで,10 分ごと
H+ beam
Penetration depth 78m
(Al) (Al)
0 50 100
-20 -10 0 10 20
Position z [m]
Charge Density (z) [C/m3 ]
10 s 30 min 10 min 40 min 20 min
(c) 電界分布波形 0 101
30 40
20 10 50 60
-10 Charge Density (z) [C/m3] 10
H+ beam
Penetration depth 78 m
Position z [m]
Timet [mim]
0 0 30 40
20 10 50 60
Charge Density (z) [C/m3]
Position z [m]
Timet [mim]
(a) 空間電荷分布の経時変化を示すカラーチャート
(Al) (Al)
H+ beam
Penetration depth 78m
0 50 100
-20 -10 0 10 20
Position z [m]
Electric Field E(z) [kV/mm]
10 s 30 min 10 min 40 min 20 min
(b) 空間電荷分布測定
0 10 20 30 40 50 60 0
0.1 0.2 0.3 0.4
Time t [min]
Amount of chargeQ [mC/m2 ] Irradiation Relaxation
(d) 蓄積正電荷量の経時変化
図3 陽子線照射中の空間電荷分布測定結果 Fig.3 Charge distribution under proton beam irradiation and relaxation
図2 外部回路電流測定システム
Fig.2 External circuit current measurement system HV DC RDC
Main
electrobe GND electrobe electrobeGND PTFE PTFE
Sample
Semiconductive layer
HV electrode
Surface current
A
3/6 に示す。また,(d)に試料内の蓄積正電荷量を試料厚み方向
に積分し算出した,試料内蓄積正電荷量の経時変化を示す。
同図(a),(b)より,照射開始直後,照射面から約52 mの位 置に正電荷の蓄積が観測された。また照射開始約10分後に おいて,接地側電極から陽子未到達領域に負電荷の注入が 観測された。照射終了後に関しては,計算飛程右側に正電 荷の蓄積,左側に負電荷の蓄積が観測された。
図2(d)より,試料内の蓄積正電荷量は照射開始約17分後 にその蓄積速度に変化が観測された。また,照射電流密度 は30 nA/cm2で照射を行っているため,照射された陽子が 試料にすべて蓄積されたと考えると,その蓄積量は 1秒間 で0.3 mC/m2となる。ここで照射開始直後の正電荷蓄積量 は約0.04 mC/m2となり,照射量の約10 %と蓄積量が少な いことがわかる。
蓄積正電荷量の蓄積速度の変化,陽子未到達領域への電 極からの負電荷注入に関しては,陽子線照射による放射線 誘起伝導 (radiation induced conductivity : RIC)が発生し たためであると考えられる。RIC の発生原因に分子鎖の切 断と試料の放射化が挙げられる。ETFE はエチレン(PE)と テトラフルオロエチレン(PTFE)の共重合体である。そこで,
PEとPTFEにそれぞれ陽子線照射後に、FT-IR, XPS, NMR 等の物理化学分析により構造解析を行った結果,PEでは架 橋反応,PTFEは分子鎖の切断が発生する事が確認された。
同様に ETFE においてはその両方の反応が確認されてい る。よって、照射陽子により分子鎖の切断し,フリーラジ カルが生成される為,照射陽子との結合,酸化,架橋反応 が発生しているが、今回の照射においては、分子鎖切断に よる導電率上昇がRICの発生要因となっていると考えられ る。また試料の放射化に関しては,照射終了時サーベイメ ータを用いた表面観測の結果、線の発生を確認しているた め、こちらも半減期に依存したRICの発生要因となってい ると考えられる。
次に各領域における電荷蓄積傾向について時間経過で考 察を行った。照射開始10秒後では前述した通り,1秒当た りの照射量は0.3 mC/m2であり,実験結果との乖離が見ら れる。照射直後は試料内にトラップサイトが少なく、且つ 照射陽子によるRICの為、高い導電率領域が形成され照射 開始後に電極からの電子注入等で蓄積正電荷が相殺されて いると考える。照射時間の経過と共に,分子構造の変化に より深いトラップが形成され,蓄積正電荷量の増加が観測 されたと考えられる。
照射10分後では,陽子未到達領域への負電荷の注入が観 測された。これは陽子通過領域の放射化により発生した線 が陽子未到達領域へ照射され,電荷注入障壁が低下したた めであると現時点では推測している。
照射20分後では,10分後と比較し,陽子未到達領域への 負電荷の注入量,侵入深さが増加していることがわかる。
また,照射開始17分後の蓄積正電荷量の増加傾向の変化に ついては,計算飛程付近まで負電荷が注入されているため,
飛程付近の蓄積正電荷と打ち消しあったため発生したと考 えられる。この結果を基に試料の導電率,電界等から蓄積 電荷量解析を行い,導電率の変化を同定していく。
4. 陽子線照射試料の外部回路電流測定
〈4・1〉 照射試料及び測定条件 測定試料として,公称 厚さ25 mのETFEを用いた。陽子線照射は照射エネルギ ー2 MeV,照射電流密度30 nA/cm2,照射時間30 分とした (照射2時間後測定のみ照射時間20 分)。また測定条件は印 加電界100 kV/mmに相当する直流電圧を10分間印加した。
〈4・2〉 測定結果及び考察 図4に照射終了2時間後,
1日後,30 日後,未照射試料の高電圧印加時の外部回路電 流測定結果を示す。また図5に電流密度の10分値の比較を 示す。同図より,時間経過により電流密度が減少している が,未照射試料と比較を行うと,その値は1 桁差があるこ とがわかる。このことから,導電率の変化には分子鎖の切 断による長期的な変化と陽子通過領域で発生した線による 短期的な変化があると考えられる。
図4 照射からの経過時間における外部回路電流比較 Fig.4 External circuit current comparison in elapsed time from irradiation
0 1 2 3 4 5
0 10 20 30
Curent density J(t) [A/m2]
Time t[day]
照射試料 未照射試料
Current density J(t) [A/m2 ]
図5 外部回路電流の10分値の比較
Fig.5 External circuit current density at 10 min under each applied electric field
0 2 4 6 8 10
0.01 0.1 1 10 100 1000
Time t [min]
Current densityJ(t) [A/m2 ]
2 h1 day 30 days
Non-irradiation
5. 実環境における空間電荷分布測定
〈5・1〉 現時点での問題点 宇宙環境下で測定を行う場 合,DSOの周波数帯域の低域化,使用電圧の低電圧化が必 須となる。現在使用しているDSOは帯域500 MHz,波形 の取得はサンプリング周波数1.25 GS/s で行っている。通 常,宇宙空間で使用する場合の周波数帯域は200 MHz以下 であり,低帯域での取得が必要となる。しかし,PEA法で は試料厚さの10 %以下の分解能が必要となる。厚さ125 m のポリイミドを測定対象とした場合,約5 nsの半値時間幅 が必要となる為、ある程度十分波形を再現するには1 GS/s 以上である必要となる。
〈5・2〉 低サンプリング測定 前述したように,サンプ リング周波数は1 GS/s以上であることが必要である。そこ で,低サンプリング周波数でトリガーの取得位置を変化さ せ数回に分け,1つのデータにまとめることで,高サンプリ ングの実現を考えた。測定は公称厚さ100 mのETFEを 用いた。印加直流電圧を2 kV,印加パルス電圧を200 Vと し,DSOの測定周波数は500 MHzとした。図6にサンプ リング周波数を0.3125 GS/sで4回測定を行った結果を示 す。また,図 7 に各サンプリングでの出力と周波数の比較 を示す。同図(a)に1.25 GS/sで取得した波形と0.3125 GS/s で取得し,1つのデータとしてまとめた出力波形を示す。(b) に各サンプリング周波数で取得した波形をFFTした際の周 波数成分を示す。
図6,図7より,0.3125 GS/sで波形取得を行った場合,
エイリアシングが発生していることがわかる。しかし,各 波形を合成した波形は,1.25 GS/sで波形取得した結果と大 きな変化は観測されなかった。また出力波形の周波数成分 に関しても,大きな変化は観測されなかったため,低サン プリングでの測定は可能であるといえる。
5. 結論
陽子線照射中のETFEの空間電荷分布測定を行った。そ の結果,試料内の導電率の上昇により,蓄積正電荷量の蓄 積速度の変化や陽子未到達領域への負電荷の注入が観測さ れた。また導電率の上昇は,起源の異なる2つのRCIが発 生したと考えられ,導電率の同定は今後の課題である。
宇宙環境下での測定に向けて,測定系のサンプリングに ついて検討を行った。その結果低サンプリングでの波形取 得は可能であるといえる。
謝辞
本研究の一部は科研費,原子力機構,量研施設利用共同 研究,量研機構・施設共用制度,及び東京大学の助成によ り実施された。
文 献
(1) H. C. Koons, J. E. Mazur, R. S. Selesnick, J. B. Blake, J. F.
Fennell, J. L. Roeder and P. C. Anderson, “The Impact of the Space Environment on Space Systems”, Proceedings of the 6th Spacecraft Charging Technology Conference, Air Force Research Laboratory, pp.7-11, (1998).
(2) Nelson Wesley Green and J.R. Dennison,” Deep Dielectric Charging of Spacecraft Polymers by Energetic Protons”,IEEE Tran. Plasma Sci.,vol. 36, no.5, pp2482-2490, (Oct 2008).
-20 0 20 40 60 80
-80 -60 -40 -20 20 40 60 80 0
Time t [ns]
O utp ut v olta ge v
s[mV ]
1.25 GS/s 0.3125 GS/s
Anode (SC) Cathode (Al)
(a) 出力生波形の比較
(b) 周波数領域比較
-20 0 20 40 60 80
-80 -60 -40 -20 20 40 60 80 0
Time t [ns]
O utp ut v olta ge v
s[mV ]
図6 トリガー位置をずらして取得した0.3125 GS/sに おける出力波形
Fig.6 Output waveform at each sampling
図7 各サンプリングにおける出力波形 Fig.7 Output waveform at each sampling
10
610
710
810
9-80 -60 -40 -20 0
Frequency [Hz]
dB 1.25 GS/s
0.3125 GS/s
4/6
5. 実環境における空間電荷分布測定
〈5・1〉 現時点での問題点 宇宙環境下で測定を行う場 合,DSOの周波数帯域の低域化,使用電圧の低電圧化が必 須となる。現在使用しているDSOは帯域500 MHz,波形 の取得はサンプリング周波数1.25 GS/s で行っている。通 常,宇宙空間で使用する場合の周波数帯域は200 MHz以下 であり,低帯域での取得が必要となる。しかし,PEA法で は試料厚さの10 %以下の分解能が必要となる。厚さ125 m のポリイミドを測定対象とした場合,約5 nsの半値時間幅 が必要となる為、ある程度十分波形を再現するには1 GS/s 以上である必要となる。
〈5・2〉 低サンプリング測定 前述したように,サンプ リング周波数は1 GS/s以上であることが必要である。そこ で,低サンプリング周波数でトリガーの取得位置を変化さ せ数回に分け,1つのデータにまとめることで,高サンプリ ングの実現を考えた。測定は公称厚さ100 mのETFEを 用いた。印加直流電圧を2 kV,印加パルス電圧を200 Vと し,DSOの測定周波数は500 MHzとした。図6にサンプ リング周波数を0.3125 GS/sで4回測定を行った結果を示 す。また,図 7 に各サンプリングでの出力と周波数の比較 を示す。同図(a)に1.25 GS/sで取得した波形と0.3125 GS/s で取得し,1つのデータとしてまとめた出力波形を示す。(b) に各サンプリング周波数で取得した波形をFFTした際の周 波数成分を示す。
図6,図7より,0.3125 GS/sで波形取得を行った場合,
エイリアシングが発生していることがわかる。しかし,各 波形を合成した波形は,1.25 GS/sで波形取得した結果と大 きな変化は観測されなかった。また出力波形の周波数成分 に関しても,大きな変化は観測されなかったため,低サン プリングでの測定は可能であるといえる。
5. 結論
陽子線照射中のETFEの空間電荷分布測定を行った。そ の結果,試料内の導電率の上昇により,蓄積正電荷量の蓄 積速度の変化や陽子未到達領域への負電荷の注入が観測さ れた。また導電率の上昇は,起源の異なる2つのRCIが発 生したと考えられ,導電率の同定は今後の課題である。
宇宙環境下での測定に向けて,測定系のサンプリングに ついて検討を行った。その結果低サンプリングでの波形取 得は可能であるといえる。
謝辞
本研究の一部は科研費,原子力機構,量研施設利用共同 研究,量研機構・施設共用制度,及び東京大学の助成によ り実施された。
文 献
(1) H. C. Koons, J. E. Mazur, R. S. Selesnick, J. B. Blake, J. F.
Fennell, J. L. Roeder and P. C. Anderson, “The Impact of the Space Environment on Space Systems”, Proceedings of the 6th Spacecraft Charging Technology Conference, Air Force Research Laboratory, pp.7-11, (1998).
(2) Nelson Wesley Green and J.R. Dennison,” Deep Dielectric Charging of Spacecraft Polymers by Energetic Protons”,IEEE Tran. Plasma Sci.,vol. 36, no.5, pp2482-2490, (Oct 2008).
-20 0 20 40 60 80
-80 -60 -40 -20 20 40 60 80 0
Time t [ns]
O utp ut v olta ge v
s[mV ]
1.25 GS/s 0.3125 GS/s
Anode (SC) Cathode (Al)
(a) 出力生波形の比較
(b) 周波数領域比較
-20 0 20 40 60 80
-80 -60 -40 -20 20 40 60 80 0
Time t [ns]
O utp ut v olta ge v
s[mV ]
図6 トリガー位置をずらして取得した0.3125 GS/sに おける出力波形
Fig.6 Output waveform at each sampling
図7 各サンプリングにおける出力波形 Fig.7 Output waveform at each sampling
10
610
710
810
9-80 -60 -40 -20 0
Frequency [Hz]
dB 1.25 GS/s
0.3125 GS/s
5/6 (3) H. Miyake and Y. Tanaka, “Space Charge Distribution in
Polymethyl Methacrylate and Quartz Glass Irradiated by Protons”, Sensor and Materials, Vol. 29, 2017 in press, http://myukk.org/SM2017/
(4) J. F. Ziegler, J. P. Biersack and U. Littmark, "The Stopping and Range of Ions in Solids", Pergamon Press, New York, (1985).
電子線照射したフッ素系絶縁材料における空間電荷蓄積特性
久保 亘平*
,
遠藤 和樹,
榎 海星,
三宅 弘晃,
田中 康寛(東京都市大学)Space Charge Accumulation Characteristics on Fluorine-based Insulating Material of Electron beam Irradiated
Kohei Kubo*, Kazuki Endo, Hiroaki Miyake, Yasuhiro Tanaka(Tokyo City University)
Abstract
Spacecraft are covered with MLI and OSR for protecting from the hard temperature differential in space environment and keeping the temperature inside of spacecraft. As the satellite are operated in the Van-Allen belt, those insulating materials are exposed by radio-active rays, such as electron and proton. Those charged particles are injected and accumulate in the bulk of materials. And it will be origin of electric static discharge (ESD). There phenomenon may lead to the satellite operation anomaly. Therefore, it is necessary to understand charging phenomena in the bulks of materials for spacecraft based on electronic physics, for reliabilities of long-life operation. In this research, we try to understand the charging phenomena on fluorinated polymer which are used for wire harness. Space charge accumulations in the bulk of the sample irradiated by an electron under DC application were studied using the pulsed electroacoustic (PEA) method.
キーワード:宇宙機用絶縁材料,エチレン四フッ化エチレン共重合体, 空間電荷, パルス静電応力法, 電子線
(Insulating material, used for spacecraft Ethylene-tetrafluoroethylene, Space charge pulsed electroacoustic method, Electron-beam)
1.はじめに
温度変化の激しい宇宙環境下で運用されている人工衛星 などの宇宙機は,機内の温度を一定に保つため,機体表面 は多層断熱材(Mulch Layer Insulator : MLI)や太陽光反射 材(Optical Solar Reflector : OSR)などの絶縁材料で覆われ ている.しかし宇宙機は,プラズマや電子・陽子などの高 エネルギー荷電粒子で満たされたヴァン・アレン帯と呼ば れる領域でも運用されている.宇宙機表面の絶縁材料が高 エネルギー荷電粒子に曝されると,材料内部に荷電粒子が 注入されて電荷が蓄積する.荷電粒子により絶縁材料が照 射され,分子鎖切断や空孔の生成により電気特性が劣化す るとともに,電荷の蓄積にともなう材料内部の部分的な電 界強調によって,絶縁破壊の危険性が増加する.これを起 因とした宇宙機の運用異常も多く報告されており(1)(2),宇宙 機の信頼性向上の観点から宇宙機材料の帯放電現象を把握 することは必要不可欠である.現在は,絶縁材料の帯電を 計測する手法は開発され,宇宙放射線,特に電子線が照射 された宇宙機材料の帯電現象の解明に努めているが,いま だ電子物性の観点から正確に把握されたとは言い難い.こ のことから,放射線照射により生じる帯放電現象を電子物 性の観点から詳細に把握することが重要となる.そこで本
研究は,電子線照射を行った宇宙機用絶縁材料に直流電圧 を印加することによって生じる空間電荷蓄積特性を評価し ている.これまで電子線照射材料における直流課電下での 空間電荷分布を大気圧下で実施することにより,電子線照 射によって照射試料内に生成される電子正孔対の蓄積特性 の評価を行ってきた.電子線照射後に真空チャンバーから 試料を取り出し,この測定するまでに15分の時間を要する.
電子正孔対の残存量は,照射終了後から指数関数的に減少 していくと考えられるため,電子線照射による正確な材料 内の電離・励起現象を把握するには,測定までに要する時 間を圧縮することが求められる.以上より,真空チャンバ ー内で直流課電が可能な測定システムを構築し,真空下に おいて電子線照射直後の直流課電下でのフッ素系絶縁材料 における空間電荷分布測定を試みた.また電荷蓄積の原因 と考えられる電子正孔対の観測も試みた.
.パルス静電応力法3($法測定装置
Fig. 1 にパルス静電応力(Pulse electroacoustic : PEA) 法 (3)の原理を示す.測定試料を高電圧電極と接地電極で挟 み,高電圧とパルス電圧を印加する.これにより,試料内 にパルス電界が発生することで,試料内部に蓄積していた
電子線照射したフッ素系絶縁材料における空間電荷蓄積特性
久保亘平*,遠藤和樹,榎海星,三宅弘晃,田中康寛(東京都市大学)
Space Charge Accumulation Characteristics on Fluorine-based Insulating Material of Electron beam Irradiated
KUBO Kohei*, ENDO Kazuki, ENOKI Kaisei, MIYAKE Hiroaki,
TANAKA Yasuhiro (Tokyo City University)
電荷は微小変位して圧力波が発生する.この生成された圧 力波は測定試料内部から圧電素子に伝搬し,圧電素子によ って電気信号に変換される.電気信号の強度は電荷量に,
時間は分布にそれぞれ比例している.この手法の利点とし て,信号検出部が電気的にシールドされているため電気的 雑音に強いこと,試料をシールド内部に設置する必要がな いため操作性に優れていることが挙げられる.
.電子線照射装置 及び 測定システム
Fig. 2に電子線照射用真空チャンバーの概略図を示す.真
空チャンバー内を真空排気する場合には,大気圧から 10-2 Paまではロータリーポンプ,10-2 Pa以下ではターボ分子ポ ンプを用いて排気しており,真空度は約4×10-5 Paまで到 達可能となっている.実際に電子線を照射する際には,陰 極加熱電源を用いてタングステンフィラメントに電流 Ifを 流すことで加熱し熱電子放出を利用して電子を発生させ る.同時に,電子加速用高電圧V0をフィラメントに印加す ると,陰極から接地した陽極に向かって電子が照射される.
チャンバー内真空度10-5 Paより電子の平均自由行程は25 mと求まり,チャンバーのサイズ0.25 mより十分に長い.
加速電子は残留気体分子と衝突はないと考えられるため,
加速電圧 V が電子の照射エネルギーに,I が電子電流とな る.これらのシステムを用いることで,本装置では加速エ
ネルギー100 keVまでの電子線照射が可能となっている.
Fig. 3にPEA法を用いた空間電荷分布測定装置のセンサ
部の概略図を示す.本装置は荷電粒子を試料に照射するた めに照射窓を設けており,荷電粒子を試料に直接注入でき るため照射環境下での空間電荷計測が可能となっている.
圧力波を電気信号に変換するための圧電素子は厚さ9mの ポリフッ化ビニリデン (Poly Vinylidene Fluoride: PVDF) を使用しており,位置分解能は約10 mである.Fig. 4に 測定システムの構成図を示す.今回の研究では照射終了直 後に直流高電圧を印加して電荷分布測定を行うため,高耐 圧ゲーブルを介して大気圧下の高電圧電源と真空チャンバ ー内の装置電極を接続している.このシステムの構築によ って,電子線照射終了後に15分間の待機時間を要さずに測 定を行えるようになった.
.測定試料および測定条件
測 定 試 料 は , 公 称 試 料 厚 さ 100 m の ETFE(ethylene-tetrafluoroethylene)を用いた,試料は,照 射面側にアルミニウムを電極として蒸着している.電子線 の照射は真空度を10-5 Paオーダーの条件下において,加速 エネルギー60 keV,電流密度5 nA/cm2の電子線を5分間照 射した.電子線照射後に短絡時間を0, 5, 15 分間設け,そ れらの試料に20 kV/mmに相当する直流電界を30分間印加 し,その後30分間の短絡時間を設けて測定を行った.
.(7)(における空間電荷分布蓄積および考察
Fig. 5に各測定条件下におけるETFEの空間電荷分布の
測定結果を示す.同図(A)は電子線未照射の測定結果,同図 (B-D)は電子線照射後に短絡時間を0, 5, 15分設けた後に電
Pressure Wave
Amplifer DSO v(t)
Sample
Semiconductive layer High-Voltage
Electrode(Al) Piezo-erectricTranceducer
R High
Voltage Plulse Voltage e(t) C
Grounded Electrode(Al)
z=0 z=d
s(d) r(z) s(0)
r(0) r(d)
Fig. 1 Principle of PEA method
Fig. 3 Mini PEA apparatus
Fig. 2 Schematic diagram and photo image of vacuum chamber electron with electron gun
Fig. 4 Measurement system
電荷は微小変位して圧力波が発生する.この生成された圧 力波は測定試料内部から圧電素子に伝搬し,圧電素子によ って電気信号に変換される.電気信号の強度は電荷量に,
時間は分布にそれぞれ比例している.この手法の利点とし て,信号検出部が電気的にシールドされているため電気的 雑音に強いこと,試料をシールド内部に設置する必要がな いため操作性に優れていることが挙げられる.
.電子線照射装置 及び 測定システム
Fig. 2に電子線照射用真空チャンバーの概略図を示す.真
空チャンバー内を真空排気する場合には,大気圧から 10-2 Paまではロータリーポンプ,10-2 Pa以下ではターボ分子ポ ンプを用いて排気しており,真空度は約4×10-5 Paまで到 達可能となっている.実際に電子線を照射する際には,陰 極加熱電源を用いてタングステンフィラメントに電流 Ifを 流すことで加熱し熱電子放出を利用して電子を発生させ る.同時に,電子加速用高電圧V0をフィラメントに印加す ると,陰極から接地した陽極に向かって電子が照射される.
チャンバー内真空度10-5 Paより電子の平均自由行程は25 mと求まり,チャンバーのサイズ0.25 mより十分に長い.
加速電子は残留気体分子と衝突はないと考えられるため,
加速電圧 V が電子の照射エネルギーに,I が電子電流とな る.これらのシステムを用いることで,本装置では加速エ
ネルギー100 keVまでの電子線照射が可能となっている.
Fig. 3にPEA法を用いた空間電荷分布測定装置のセンサ
部の概略図を示す.本装置は荷電粒子を試料に照射するた めに照射窓を設けており,荷電粒子を試料に直接注入でき るため照射環境下での空間電荷計測が可能となっている.
圧力波を電気信号に変換するための圧電素子は厚さ9mの ポリフッ化ビニリデン (Poly Vinylidene Fluoride: PVDF) を使用しており,位置分解能は約10 mである.Fig. 4に 測定システムの構成図を示す.今回の研究では照射終了直 後に直流高電圧を印加して電荷分布測定を行うため,高耐 圧ゲーブルを介して大気圧下の高電圧電源と真空チャンバ ー内の装置電極を接続している.このシステムの構築によ って,電子線照射終了後に15分間の待機時間を要さずに測 定を行えるようになった.
.測定試料および測定条件
測 定 試 料 は , 公 称 試 料 厚 さ 100 m の ETFE(ethylene-tetrafluoroethylene)を用いた,試料は,照 射面側にアルミニウムを電極として蒸着している.電子線 の照射は真空度を10-5 Paオーダーの条件下において,加速 エネルギー60 keV,電流密度5 nA/cm2の電子線を5分間照 射した.電子線照射後に短絡時間を0, 5, 15 分間設け,そ れらの試料に20 kV/mmに相当する直流電界を30分間印加 し,その後30分間の短絡時間を設けて測定を行った.
.(7)(における空間電荷分布蓄積および考察
Fig. 5に各測定条件下におけるETFEの空間電荷分布の
測定結果を示す.同図(A)は電子線未照射の測定結果,同図 (B-D)は電子線照射後に短絡時間を0, 5, 15分設けた後に電
Pressure Wave
Amplifer DSO v(t)
Sample
Semiconductive layer High-Voltage
Electrode(Al) Piezo-erectricTranceducer
R High
Voltage Plulse Voltage e(t) C
Grounded Electrode(Al)
z=0 z=d
s(d) r(z) s(0)
r(0) r(d)
Fig. 1 Principle of PEA method
Fig. 3 Mini PEA apparatus
Fig. 2 Schematic diagram and photo image of vacuum chamber electron with electron gun
Fig. 4 Measurement system
圧印加実験を行った測定結果をそれぞれを示している.ま た,各図(a)は電子線照射後の電圧印加中および短絡中の空 間電荷分布の継時変化,(b)に電荷分布波形,(c)に電界分布 波形を示す.各図中の縦の破線は,Katz, Penfoldの実験式
(4)より算出したものであり,この照射条件での ETFEの計 算飛程は,いずれも照射表面より約31 mの位置となる.
同図(A)より,未照射試料においては電圧が印加されても 顕著な電荷の蓄積は観測されなかった.一方,電子線を照 射した試料では,図(B-D)に示すように,多量の正電荷が照 射電子の飛程(図中破線)付近から陰極に向かって蓄積する 様子が観測された.この多量の正電荷蓄積により,正電荷 蓄積と陰極間の電界が,平均電界の約 1.5 倍に増加してい る.以上より,電子線を照射したETFEに直流電界を印加 することによって,照射前後で電子線照射領域の特性が変 化したと考えられる.このような結果が得られてた原因に ついて,高エネルギー電子により試料内で多量の電離など により電子正孔対が多量に発生した,または電荷注入障壁 が低下し、陽極から多量の電荷が注入したためであると考 えられる.
次に電子線照射後の短絡時間が電荷蓄積特性に及ぼす影 響について,Table 1に電圧印加終了直後の試料内部の正電 荷蓄積量を示す.Fig.5 (B-D)およびTable 1より,同図(B) 照射後に短絡を 15 分設けたときに比べ,図(A)照射直後の ほうが電圧印加時の正電荷蓄積量が多いことがわかる.こ の原因について,電子線照射によって生成された電子正孔 対は,照射からの時間経過にともない指数関数的に減少す るという傾向から,同図(A)の照射直後は試料内部に多量の 電子正孔対が残存しており,電圧印加によって分極したこ とで正孔が内部に残存し,かつ,電子が照射面近傍に蓄積 したことで陽極からの正電荷注入を促進させたため,以上 のような結果が得られたと考えられる(5).しかし,Table 1 より,電圧印加後の正電荷蓄積量について,照射後の時間 経過にともない指数関数的に減少しているとは言い難い.
これは電子線照射試料内部に蓄積・残存する正電荷は上述 の通り,電子正孔対の正孔と陽極から注入した正電荷が混 在したものであり, 電子正孔対の量を正確に観測できてい ないためであると考えられる.
0 50 100
-50 0 50
Position z [m]
Electric Field E(z) [kV/mm]
After 10 s After 10 min After 20 min
After 30 min Just after short circuit After 60 min
0 50 100
-50 0 50
Position z [m]
Electric Field E(z) [kV/mm]
After 10 s After 10 min After 20 min
After 30 min Just after short circuit After 60 min
0 50 100
-50 0 50
Position z [m]
Electric Field E(z) [kV/mm]
After 10 s After 10 min After 20 min
After 30 min Just after short circuit After 60 min
Fig. 5 Space charge distribution in ETFE irradiated by electron under vacuum condition with 20 kV/mm
0 50 100
-50 0 50
Position z [m]
Charge density r (z)[C/m3]
After 10 s After 10 min After 20 min
After 30 min Just after shourt circuit
0 50 100
-50 0 50
Position z [m]
Charge density r (z)[C/m3]
After 10 s After 10 min After 20 min
After 30 min Just after shourt circuit
0 50 100
-50 0 50
Position z [m]
Charge density r (z)[C/m3]
After 10 s After 10 min After 20 min
After 30 min Just after shourt circuit After 60 min
(A) Non irradiation
Charge density r (z)[C/m3] 20 -20
(B) Just after irradiation (C) 5 min after irradiation (D) 15 min after irradiation (c) Electric field distribution wave form under dc stress
(b) Space charge distribution wave form under dc stress (a) Time dependence of charge behavior distribution under dc
stress
0 50 100
-50 0 50
Position z [m]
Charge density r (z)[C/m3]
After 10 s After 10 min After 20 min
After 30 min Just after shourt circuit After 60 min
0 50 100
-50 0 50
Position z [m]
Electric Field E(z) [kV/mm]
After 10 s After 10 min After 20 min
After 30 min Just after short circuit After 60 min
Position z[m]
Time t [min]
Anode
30
0 60
0 Cathode
20 10
101 Position z[m]
Time t [min]
Anode
30
0 60
0 Cathode
20 10 Position z[m] 102
Time t [min]
Anode
30
0 60
0 Cathode
20 10 Position z[m] 102
Time t [min]
Anode
30
0 60
0 Cathode
20 10
100