ゆとり
山形大学医学部 副学部長
山形大学医学部紀要(医学)編集委員長 木 村 理
(山形大学医学部外科学第一(消化器・乳腺甲状腺・一般外科)講座 教授)
ある新聞のコラムに「忙しいからこそ本を読み、映画をみてほしい。」「この国のかたち、
社会のありようを探るのにこんな忙しさでは思索もできない。」とある。また他のコラム ではアイススケートのメダリスト高橋大輔氏の引退問題に対し、「それにしても日本の選 手たちは勤勉すぎると思う。『休む勇気』をもってほしい。」と書かれている。
まさに同感であり、忙しすぎるのはこれらの記事の対象となった人たちやスポーツ選手 ばかりでなく、ほぼ日本人全体に言えるのではないだろうか。
私も医学部の外科の主任教授に就任して17年以上になるが、手術、外来、回診、カンファ レンス、学生教育、研究会、学会、大学院生の研究・論文指導・・・と休む間もない。
ドイツ人には、1年間に土日以外に6週間の休暇が与えられており、これは私の留学時 代の同僚の医師たち全員にあてはまることだった。もはや鉄の女サッチャーを越えたと言 われるメルケル首相も昨夏は3週間十分休養したという。
最近、医学書を読んでいて時にびっくりしたのは、ここ10年、さまざまな研究にずいぶ ん遅れをとってしまったということである。私の出身医局の外科では、ベッドフリーの時 間(患者を持たずにさまざまな研究をしいていい時間)に、医学以外の本も読みたいへん 教養もついたと思う。それらの雑学はドイツに留学したときにも役立った。もちろん自分 の研究をゆったりと思索する時間も得られ、何本かの英文論文の資源となった。
今、日本人の研究英文数は中国・韓国に抜かれつつある。大きな原因の一つは、地方国 立大学からの英文論文の数の減少であるという。どうか山形大学医学部に勤務する医師た ちにもゆったりとした時間を与え、自由な研究の思考をめぐらす時間が与えられることを 祈っている。