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学校の組織的な取組を促す第三者評価に関する研究

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(1)

学校の組織的な取組を促す第三者評価に関する研究

−学校の教育力の向上とアカウンタビリティに関わ って−

著者 松井 秀史

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 19

ページ 27‑36

発行年 2010‑03‑31

その他のタイトル A Research on the Third‑Party Evaluation that urges Systematic Management in Public Schools 

− Focused upon the improvement of educational

power of public schools and accountability −

URL http://hdl.handle.net/10105/2998

(2)

1.研究の背景および本研究の位置と目的

近年、学校裁量の範囲が拡大され、各学校における 自主的・自律的な取組が進められるにつれ、学校が自 らの取組を検証・評価するとともに説明責任(アカウ ンタビリティ)を果たし、それに対する客観的な評価 を受けることによって、教育の質を確保・維持するこ とが重要な課題となっている。

学校評価に関わる近年の状況を振り返ってみると、

1998年中教審答申(「今後の地方教育行政の在り方に ついて」)、2000年教育課程審議会答申(「児童生徒の 学習と教育課程の実施状況の評価の在り方について」) などにおいて、一貫して「開かれた学校づくり」と

「経営責任の明確化」の観点から学校評価とその結果 の公表について提言が行われ、それに伴い学校現場に おいて徐々にその取組が進められてきたが、全国的な 実態を見れば必ずしもスムーズに進められたとは言い 難い状況であった。

そのため、2002年4月に小学校及び中学校設置基準

(改正)が施行され、学校の自己評価の実施とその結

果の公表が努力義務となり、それを契機に公立学校で 学校自己評価の取組がより一層進められることとなっ た。文部科学省によれば、同年度間における全公立学 校の自己評価の実施率は88.4%となっている。

しかし、その内実は評価への取組が不十分であった り、2002年度に自己評価の結果を公表している学校が 自己評価実施校の41.5パーセント(全国都道府県教育 長協議会)というように、評価結果の公表が進まず、

その後、2005年中教審答申(「新しい時代の義務教育 を創造する」)で、さらに学校評価を充実していくた めには、学校・地方自治体の参考となる大綱的な学校 評価のガイドラインを策定するとともに、努力義務と されている自己評価とその結果の公表が全ての学校に おいて行われるよう義務化することが必要という提言 が行われる状況であった。

それを受ける形で、2006年に文部科学省により、

「義務教育諸学校における学校評価ガイドライン」が 策定され、これにそって全国的にそれぞれの地域の実 情を踏まえたガイドラインが策定され、学校評価の取 組が大きく進むこととなった(八尾坂 2006参照)。

−学校の教育力の向上とアカウンタビリティに関わって−

松井秀史

(奈良教育大学大学院教育学研究科教職開発専攻)

A Research on the Third-Party Evaluation that urges Systematic Management in Public Schools 

− Focused upon the improvement of educational power of public schools and accountability −

Hidefumi MATSUI

(School of Professional Development in Education, Nara University of Education)

要旨:近年、学校裁量の範囲が拡大され、各学校において自主的・自律的な取組が進められるにつれ、それぞれの 学校が自らの取組を検証・評価し、説明責任(アカウンタビリティ)を果たすことが重要な課題となっている。そ れに伴い、より高度な専門的見地から学校の取組を評価し、改善に向け適切な助言を与えることを通して教育の質 を保証する「第三者評価」の在り方について議論の高まりがある。

本研究では、奈良県教育委員会が2008年度に文部科学省から「都道府県等が主体となって行う学校の第三者評価に 関する調査研究事業」を受託し、自らが進める学校アドバイザリー制度の第三者評価としての機能、役割を検証す るに当たり、検討委員として関わった経緯をもとにアドバイザリー制度について分析を加え、今後の第三者評価の 在り方について考察した。

キーワード:学校第三者評価 third-party school evaluation 、説明責任(アカウンタビリティ)accountability、

学校アドバイザリー制度 school advisory system

(3)

さらに、2007年には学校教育法、及びその施行規則 が改正され、自己評価及びその結果の公表が義務化さ れるとともに設置者に報告することが義務づけられ た。

このような動きの中で、どのようにして効果的な学 校評価システムを構築し、一体的に推進していくかに ついての考察も行われ(木岡2007,福本2007)、2008 年1月には「義務教育諸学校における学校評価ガイド ライン」が改訂された。新しい「学校評価ガイドライ ン」(以下、「ガイドライン」と略す)では、学校評価 の実施手法が「自己評価」、「学校関係者評価」、「第三 者評価」の三つの形態に整理され、これら三つの形態 のうち、学校が主体的に取り組むべき「自己評価」と それを基に保護者などが行う「学校関係者評価」の二 つについて、評価項目や実施の手順等が詳細に示され た。

しかし、「自己評価」及び「学校関係者評価」の二 つの評価を踏まえ、より高度な専門的見地から学校の 取組を客観的に評価し、教育の質を保証するとされて いる「第三者評価」については「今後さらに検討を深 めること」とし、ガイドラインの中では、その手法、

評価基準等について明確な指針は示されなかった(西 川 2008)。

そのため、学校評価に関わって、「自己評価」「学校 関係者評価」「第三者評価」の三者の関係をどのよう に有機的に結び付けていくことが効果的かというよう な学校評価を進めていく際の課題や、それを効果的に 進めている千葉市や京都市の取組事例などが『総合教 育技術』 63(9)に特集されたり、小松(2009)が指摘 するように、新教育課程に向けて新しい学校評価をど のように位置づけ考えていくかという「次なる課題に、

より前向きに学校評価を位置づけていく」ことも大切 な視点として、具体的な取組からその手法や評価基準 の洗練化などを考えていこうとする取組がなされてき ている。

つまり、学校評価を学校改善に効果的に生かしてい くためには、評価システムによる取組の振り返りと説 明責任に加えて、より学校にとって評価を改善に生か していく積極的な取組への示唆、言い換えればアドバ イス機能をどのように評価システムの中に位置づけ、

効果的に生かしていくかが求められてきている。

このような課題にかかわって、東京都杉並区、横浜 市などいくつかの自治体は、全国から委員を集めて第 三者評価チームを構成し、アドバイス機能を大切にし ながら学校改善に向けて「自己評価」、「学校関係者評 価」、「第三者評価」を行っている。

同様に、奈良県においても、県教育委員会が2006年 度より学校アドバイザリーチームを設置し、学校とは 距離を置いた第三者の立場から、県内の公立小・中学 校、県立学校すべてを訪問して、単に学校を評価し改

善を求めるだけではなく、客観的に学校が抱える教育 活動や学校経営上の課題を把握し、支援を行うという 観点に立って、教育の質を維持・保証するための取組 を行ってきた。

さらに2008年度には、その学校アドバイザリー制度 による第三者としての評価自体について、外部の有識 者から評価を受ける取組も行い、第三者評価の方法、

手続き、効果などの検証を試みてきた。このような第 三者評価それ自体の評価を行う試みはまだ少なく、

その取組は注目に値すると考えた。

したがって、本研究では、奈良県教育委員会が2008 年度に文部科学省から「都道府県等が主体となって行 う学校の第三者評価に関する調査研究事業」を受託 し、アドバイザリーチームのこれまでの取組を検証す るに当たって、外部検討委員として選任されたことを 契機に、学校アドバイザリー制度が第三者評価として の機能を有しているか、また、効果的な学校改善の推 進及び充実に資しているかを検討する中で、自己評価、

学校関係者評価と比較して立ち遅れている第三者評価 について、実施・運営上の課題となっていることを明 らかにしながら、今後第三者評価の在り方をどのよう にすべきかという考察を加えることとした。

つまり、奈良県のアドバイザリー制度という第三者 評価を評価することを通じて、課題となっている学校 評価を学校改善に効果的に活かしていく評価機能とア ドバイス機能が効果的に結び付いた評価システムの具 体的な事例とそれを支える要素を明確化(視覚化)し、

第三者評価を実施する上で考えられる様々な課題への 適切な対応の在り方について研究することを目的とし ているのである。

研究方法としては、第三者評価の手続きに関わって 関連書類(評価項目、評価結果などの記録)の分析に 加え、第三者評価の学校訪問に同行し、評価行動その ものを記録し、分析検討する手法を用いた。さらにア ドバイザリーチームと話し合い、実際に第三者評価を 行っていく際にどのような点が難しく、どのような点 に手ごたえがあるか、それを導く具体的な方法や場面 について聞き取り調査を行った。

2.第三者評価を実施する上での課題

第三者評価については、先に述べたように、ガイド ラインでは「今後文部科学省で検討を深めること」と し、その手法や評価基準、在り方等については、今後 さらに研究を行っていくとされている。

しかし、文部科学省の「学校評価の推進に関する調 査研究協力者会議」(以下、「協力者会議」と略す)に おいては、「学校評価の在り方と今後の推進方策につ いて第一次報告(2007)」(以下、「第一次報告」と略 す)の中で、「教育再生会議の議論や文部科学省自身

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が進める試行の状況を見ながら、引き続き更に今後の 検討を深めることが必要」としながらも、第三者評価 を「学校の自己評価・学校関係者評価を補い、学校運 営の質を高めるために行う専門的・客観的な評価とし て位置付けることが適当」とし、今後の検討課題等に ついて言及している。

それによると、第三者評価の位置づけとして、一つ には「保護者等による評価では、学習指導や学校のマ ネジメント等について教職員を上回る識見は期待しに くいため、専門性を有する有識者等による専門的な評 価」と位置づけること、もう一つには「学校と直接の 関係を有しない者による客観的な評価として、学校以 外の主体が評価機関となって行う専門的・客観的な評 価」と位置づけることが適当とし、今後の第三者評価 の在り方に関する検討課題として、実施主体となる評 価機関の独立性の担保、定量的・定性的な評価手法の 在り方、評価者の資質の在り方、改善の責任の所在な どを挙げている。

さらに、第三者評価の実施主体についても、そもそ もだれが実施するのが適当かどうかの検討が必要であ り、その際 、

a評価の主体となる者が、もともと学校に対して有 する権限等との関係で、公正中立な評価が可能か どうか。

s評価の信頼性・客観性を担保するため、高い独立 性を保つ仕組みが必要ではないか。

d国・都道府県・市区町村は、それぞれ第三者評価 のシステム全体においてどのような位置付けとす べきか。特に、教育委員会が実施している評価や 指導主事訪問等との関係をどう整理すべきか。

fシステムの構築・維持に要する膨大なコストをだ れが負担するのか。特に、上記と関連した役割分 担なども考慮すべきかどうか。

gだれが最終的に学校運営の改善に責任をもつの か。

等を勘案し、大学や研究機関の活用の在り方も含めて 教育行政制度全体を見通した慎重な設計が求められる としている。

これらに加えて、第三者評価の実施上の課題として、

協力者会議が2006年度に実施された文部科学省の試行 に参加した委員から見た「今後の第三者評価の在り方 についての印象」として挙げている次の4点も今後の 第三者評価の在り方についての検討を進めるうえで見 落とせない視点である。

a学校運営の改善に活かすためには、評価について 学校の納得性を高めることが重要であり、その点 で評価者の資質や客観性を高める評価指標が重要 である。

s学校の抱える課題については、教育委員会や校長 も概ね把握しているが、手をこまぬいている場合

も見られ、その点で第三者評価を行う意義がある。

dどうしても授業を中心とした評価となり、予算や 施設維持などを含めた学校のマネジメントに関す る部分が手薄になった。

f保護者等による学校関係者評価(外部評価)との 切り分けが課題。住民参加を達成するためには学 校関係者評価で可能であることから、第三者評価 は専門性を打ち出すべきである。

協力者会議の指摘するこれらの課題や、試行とは言 え実際に第三者評価を行った委員の課題認識や印象に 関わって、奈良県の学校アドバイザリー制度は、どの ように具体的な取組を行い、普遍性のある取組として の要素を備えているのだろうか。こうした観点を踏ま え、奈良県のアドバイザリー制度を検討し、第三者評 価の在り方を考察する。

3.奈良県の学校アドバイザリー制度について

まず、奈良県の学校アドバイザリー制度の概要を整 理しておきたい。

本制度は組織として、小学校教育アドバイザリーチ ーム、中学校教育アドバイザリーチーム、県立学校教 育アドバイザリーチームの3チーム(各5人で構成、

小・中学校チームについては学校訪問時に県の特別支 援教育巡回アドバイザーも同行)から成り、学校を評 価し改善を求めるだけではなく、客観的に学校が抱え る教育活動や学校経営上の課題を把握し、改善の方向 性や具体的方策を示すという観点から学校訪問を実施 している。

学校訪問の実施方法については、小学校が一校1日、

中学校が一校2日、県立学校が一校2〜3日訪問するこ とになっており、これまで小学校ではほぼ4分の3の学 校訪問を終え、2009年度中にすべて終了する予定であ る。中学校、県立学校については2008年度ですでに全 校一回目の訪問を終え、2009年度から二回目の訪問に 入っている。

アドバイザリーチームの活動の流れは次ページ図1 の通りであるが、その大きな特色は、長期的なスパン の中で、診断から改善への取組、進捗状況の確認、更 なる改善へと繋げる息の長い取組であることである。

学校訪問の趣旨説明や資料収集等のために学校と教育 委員会を事前に訪問することから始まり、学校訪問で 診断を行い、その診断結果をレポートにまとめて学 校・教育委員会に手交し、学校からレポートに対する 回答を得て、フォローアップ訪問で改善状況を確認す るまで約一年間にわたる長い取組である。

そして、約一年をかけた一度目のこのプロセスが終 わると、二度目の学校訪問が行われる。小学校では4 年ごと、中学校、県立学校では3年ごとのサイクルで 再度、上記の取組が行われることになる。

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4.学校アドバイザリー制度検討の手順・方法

学校評価は、ガイドラインに示されているように、

まず学校が自らの教育活動その他の学校運営について 目指すべき目標を設定し、その達成状況や達成に向け た取組の適切さ等について自己評価及び保護者等学校 関係者による評価を行い、その結果を公表・説明する ことにより適切に説明責任(アカウンタビリティ)を 果たすとともに、保護者、地域住民等から理解と参画 も得て、継続的な改善に取り組み、学校・家庭・地域 の連携協力による学校づくりを進めることが目的で、

第三者評価はさらに高度な専門的見地から学校の取組 の妥当性を検証し、教育の質を保証するものとされて いる。

今回、奈良県が受託した調査委託研究は、学校アド バイザリーチームの取組がそうした第三者評価の趣旨 に適うものとなっているのかについて検討することが 目的である。

検討の柱は、「アドバイザリーチームの事業が、学 校の第三者評価としての機能を有しているかどうか

(評価機能)」と「効果的な学校改善の推進、及び充実 に資しているかどうか(学校改善機能)」である。

その手順としては、検討委員がアドバイザリーチー ムの学校訪問日に同行するなど、その活動をつぶさに 観察し、具体的には概ね以下の内容について検討を加 え、検討結果を報告するという形を取ることになって おり、筆者は小学校、中学校、高等学校の異なる校種 の3校に同行した。

検討する具体的内容は次の4点にまとめられる。

q 事前訪問・チーム事前打ち合わせについて

・チームの学校訪問前に、事前訪問等で学校から収 集した基礎資料(学校要覧、経営計画、学校評価に 関する資料等)は、評価にとって有効な資料収集に なっているか。また、チームが学校訪問前に学校に 準備資料として配付するもの(学校経営問診票、学 校経営診断シート、授業診断シート等)は、評価に ついての理解を深め、効率的に評価を進めることに 繋がっているか。

・チーム側の学校への事前の指示等が、具体的な診 断を行うために適切かつ効果的であるか。

・「チーム事前打ち合わせ」では、チームが収集し た資料を基に学校の現状と課題を分析するととも に、改善・支援の方向性について共通理解を図るな ど的確な訪問準備を行っているか。

w 学校訪問について

・ヒアリングでは事前に配付した「学校経営問診 票」、「学校経営診断シート」等をもとに、組織的・

計画的なヒアリングを行っているか。

・授業参観では「参観シート」を活用し、実践的観 ᅒ㸦  Ꮥᰧ࢓ࢺࣁ࢕ࢧ࣭ࣛࢲཱི࣭࣑⤄ࡡὮࡿ

         

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点から的確に観察を行うとともに、授業者との意見 交換では、授業者の思いや悩み等を適切に受け止め ているか。

また、授業支援を行うための改善策を具体的に提 示しているか。

・児童生徒観察では、子どもの視点から客観的に教 育活動の診断を行うために、適切な観察を行って いるか。

e 学校訪問後の処理について

・チームの事後整理及びアドバイザリーレポートに ついては、学校訪問において収集した情報を的確に 分析し、改善に向けた方向性を示すようなレポート を作成しているか。

・学校からの回答については、アドバイザリーレポ ートを学校が正しく理解し、課題の改善に取り組ん でいるかをチームが的確に把握しているか。

・診断結果や改善方策を設置者に周知するための方 策がとられているか。

r フォローアップについて

・フォローアップ訪問については、アドバイザリー レポートやそれに対する学校の回答書をもとに、学 校の改善への取組を的確に検証し、不十分な点につ いて具体的な改善方策を示しているか。

5.学校アドバイザリー制度の具体的な方法事例と運 用を支える要素の検討

第三者評価は、「その学校に直接かかわりを持たな い専門家等が、自己評価及び学校関係者評価の結果等 も資料として活用しつつ、教育活動その他の学校運営 全般について、専門的・客観的(第三者的)立場から 評価を行うもの」(ガイドライン)であるとされる。

そして、その評価が評価を受ける学校にとって改善 に向けての内発的意欲を高め、真に教育活動や学校運 営の改善に活かされるためには、自校が適切に評価さ れているという納得性の高さが欠かせない。

その納得性を担保するものが、a評価者の専門性及 びそこから生まれる信頼性や、s厳しい評価だけでは なく、改善への方向性を示唆する支援的な姿勢であり、

d評価の手法としての客観性・透明性であろう。これ らの専門性や信頼性、客観性・透明性が、それぞれ個 別にではなく、複雑に絡み合って納得性を高めるので ある。

また、学校教育を受ける側からすれば、実際に改善 の方策が速やかに立てられ、実施に移されるための工 程が明らかにされるなど、f取組の迅速性を促す工夫 やg学校が改善に取り組むに当たり所管の教育委員会 と連携を図るということも大切である。

この節では、前節で述べたそれぞれの検討項目を、

これら5つの視点で整理し、アドバイザリーチームの

活動が、納得性の高い第三者評価としての機能を備え、

その役割を果たしているかを検討する。

a評価者の専門性とそこから生まれる信頼性 アドバイザリーチームは、各チームとも5名のコア メンバー(小・中学校チームは県の特別支援教育巡回 アドバイザーが学校訪問同行)で構成されており、各 メンバーがそれぞれの校種における校長か教諭として の経験を有している。チームは県立教育研究所に置か れている。

その活動は、第3節の図1で示した通りであるが、

どの要素を取ってみても学校現場の実情に精通してい ることが求められる。その意味で自ら学校教育に携わ り、改善への意欲を持ち続け、研究・実践を積み重ね てきたチームのメンバーには、十分専門性が備わって いる。

また、これらのメンバーが、教育研究所という研究 機関に身を置き、教育における国の動向や先進的な研 究・実践についての情報等とともに県内の状況をいち 早く把握し、教育研究機関の総合的な機能の中でチー ムとしての組織的取組の在り方を臨機に協議しなが ら、質の高い診断を行うことができるという点で、評 価についての信頼性も高いと言えるであろう。

専門性に基づく活動とそれに伴う信頼性を担保する 具体的な事例として、アドバイザリーチームでは次の ようなことが挙げられる。

・学校訪問前に提出された資料などを基に効果的な ヒアリングを実施するための「事前打ち合わせ」が 行われるが、このことがチームとしての専門性をさ らに高める役割を果たしており、特に多様な専門性 や教育内容を備えた特別支援学校や高等学校につい ては、研究所の高度に専門的な研究機能を活かし、

入念な打ち合わせを行っている。

・学校訪問時における授業者との意見交換では、専 門的見地から予め示した「授業診断シート」に基づ き、授業設計に当たってのポイントを確認・理解さ せて自己評価の基準についての認識を深めさせてい る。

・学校マネジメントについても、予め校長に「学校 経営問診票」で回答を求め、校長経験者のメンバー を中心とした専門的ヒアリングを行っている。

・学校診断の結果を示すアドバイザリーレポートの 作成に当たっては、メンバー全員が自らの専門的知 見により「授業診断シート」や「学校経営診断シー ト」の評価項目にそれぞれ自らの意見・所見を記入 し、それを基に協議の上、主観を排した客観的な評 価となるよう努めている。

以上のように、メンバーが学校現場に精通した経験 を有していること、全国の動向などを研究機関におい て調査・把握していること、また、チームの評価に至 る手順から、専門性・信頼性は高いと判断した。

(7)

s改善への方向性を示唆する支援的な姿勢

学校評価により、教育活動やその他の学校運営が真 に改善されるためには、まず学校の内発的・自律的な 取組が必要であり、それを支援する体制が大切である。

そのために、第三者評価では、学校の実情を十分理解 し、地域の背景なども踏まえて評価し、学校の自律的 な取組を促すような信頼感の醸成が必要である。しっ かりした原則は保持しながら、基準を原理的に押しつ けるのではなく、学校に応じてどう適用していくのか に留意し、児童生徒にとってより望ましい教育活動の 充実へとつなげていくことが大切である。このことに ついては、次のような取組等を通して裏付けられよう。

・「事前訪問」において、アドバイザリーチームは 単に学校評価のみを行うのではなく、改善の方向性 や具体的方策を示し、学校を支援するという趣旨に ついて、学校及び所管する市町村教育委員会に説明 を行っている。

また、それぞれの地域の特色を把握し、尊重する 意味もあって市町村教育委員会の指導方針の提出も 求めている。

・児童生徒の実態も踏まえて診断するという考え方 から、チームは学校訪問日、早朝から校門前で登校 状況の観察や児童生徒へのあいさつを行うととも に、業間あそび、給食、下校の見送り等を行い、

中・高等学校の場合には部活動の状況も観察してい る。

・校長に対し、主に学校経営について行われる「ヒ アリング」では、チーム側から一方的に診断を行う のではなく、まず「学校経営問診票」を基に自己診 断をさせている。この問診票は、「学校教育目標・

経営方針」「教育課程」「組織運営」「学校評価」「教 職員の意識」などの様々な項目について校長が自己 診断結果を四段階の数字で記入するとともに、学校 経営上の課題や悩みも記入できることになってお り、学校経営についての校長の認識を踏まえ、悩み を聞き、参考事例などを提示しながら、ヒアリング を行う形態を取っている。

・関係職員には、教育活動全般にわたって「学校経 営診断シート」を基に「ヒアリング」が行われるが、

事前に項目を示していることもあって、担当者は内 容の整理ができており、本質的な議論が行われやす い状況の中で学校の実態把握と改善の方向性につい ての意見交換が可能になっている。

・「授業者との意見交換」では、教員の年齢構成等 の関係で、平素授業改善への指導・助言が得にくい 教員の思いを聞き、「授業診断シート」を基に適切 な助言を行っている。そうしたことから、チームの 訪問に際し、授業を見て欲しいと希望する教員が出 てきている。

・訪問日の最初と最後には訪問校の全ての教職員に

対して挨拶が行われるが、朝の挨拶ではチーム代表 者が訪問の趣旨について改めて説明を行い、終わり のまとめ・挨拶では今後共に改善に向けた取組を進 めようという話を行う中で、和やかで建設的な雰囲 気が生まれている。

・アドバイザリーレポートは、その様式を「学校経 営診断シート」と連動させて、診断の項目、診断の 観点、診断基準を示し、診断結果を文章で記入する 形となっており、「学校経営診断シート」に基づく ヒアリング内容とも一貫性を有していて、理解しや すく、学校が改善に取り組む際に活用しやすいもの となっている。

また、学校の優れている点については「工夫が見 られる」「信頼に応えている」などの表現で積極的 に評価している。

逆に改善を求めることについては「〜してくださ い」と明確に標記し、具体的に「何を」「どうする」

かまで明確に示している。

さらに、個々の診断項目に加えて別紙に全体的な まとめとして「総合診断結果」が付けられ、項目ご との診断では言い尽くせない全体的な評価が行われ るとともに、特別支援教育巡回アドバイザーのコメ ントも付けられている。

・「フォローアップ訪問」でも、学校がアドバイザ リーレポートの受領以来、約一年の間にどれだけ改 善に取り組めたかという結果だけではなく、どのよ うに取り組んできたかというプロセスに重きを置い て評価を行っている。

以上の点から、学校に改善の方向性を、具体的かつ 丁寧に示し、支援的な姿勢で進めている取組であると 判断できる。

d評価の手法としての客観性・透明性

評価の信頼性は、評価項目や評価の観点、基準など が前もってオープンにされ、地域の実情を踏まえなが らも、それらがどの学校にも等しく適用されることに よって高まるものである。

また、評価に至るまでに、学校の思いを十分に聞き、

意見交換する過程が大切であるだけでなく、評価結果 について学校が被評価者の立場で異議・意見を述べる 機会が保証されていることも大切な条件である。

アドバイザリー制度は、基本的にこうした条件を満 たすように制度設計されている。以下にその取組を挙 げる。

・校種による多̲の違いはあるが、全ての学校を一 定の共通する資料で診断するために事前に、診断の 材料として学校に、学校要覧、学校経営計画、教育 課程表、週時程表、校時表、年間行事計画、学校便 り、学校評価関係資料等の基礎資料の提出を統一し て求めている。(特色ある学校づくりについては、

学校独自の資料も提出)

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・「ヒアリング」を中心とする診断の基礎となる項 目については、事前に「学校経営問診票」や「学校 経営診断シート」、「授業診断シート」等を配付し、

診断の観点や基準を明確にし、印象評価を排除する 配慮をしている。

・「授業参観」は、チームメンバーが授業時間中、

丸ごと張り付く形と別のメンバー(複数)が全て授 業を巡回参観する二つの形を取っているが、個々の 授業を深く見ることと全教員の授業を通覧すること により、十分ではないにしても、複数の意見を基に 客観的に診断しようとしている。

・「アドバイザリーレポート」は、学校が受け取り、

診断結果について、改善が必要なことがらにはその 方策を付して回答を返すことになっているが、学校 の思いが伝わっていなかったと判断した場合には、

その旨の意見も付して提出し、その後、さらなる協 議を深めることができる。

以上のように、評価手法としての客観性・透明性の 点に関して信頼性のあることが判断できる。

f取組の迅速性を促す工夫

アドバイザリー制度では、チームは学校訪問日から 10日以内に学校及び所管の教育委員会にアドバイザリ ーレポートを手交し、それを受け取った学校は、30日 以内に改善方策等をまとめ、回答書を提出することに なっている。

その後、学校は自校の学校経営、その他の教育活動 の改善に取り組み、約一年後、チームのフォローアッ プ訪問を受ける。フォローアップ訪問に伴い、その約 一週間前には、取組状況等をフォローアップシートに 記入し、提出を求められている。

フォローアップ訪問では、改善の取組のプロセスと 結果について協議が行われ、新たな提案が行われるこ とも多い。

こうした流れの中で、チームは、「何を」「何時まで に」「どういう手立てで」ということを念頭に診断、

アドバイスを行っており、学校がPDCAのマネジメ ントサイクルの視点に立って、時を失うことなく改善 に取り組むことを促すシステムとなっている。

g所管教育委員会との連携

学校改善は、基本的には学校の自主的・自律的な取 組により進められるものであるが、教育内容を含め、

特に施設・設備や人事面では設置者の支援が必要であ る。学校教育法施行規則で、評価結果を設置者に報告 することとされているのもこうしたことを踏まえての ことである。

その意味で、アドバイザリーチームが学校所管の教 育委員会と連携を図りながら活動を進めていること は、評価や評価に伴う改善を進めるうえで学校と教育 委員会が共通認識のもとに取り組むために重要なこと であり、改善に関わる主体を明らかにするということ

からも重要な視点であると言える。

6.第三者評価の在り方

以上のように、奈良県アドバイザリーチームの取組 は、評価の観点や基準が事前にオープンにされている 点で透明性があり、評価の根拠としての資料が明確に 示されている点で客観性も高い。そして、専門性を備 えた同じチームが事前に示された観点で、同じ校種の 学校すべてを診断(評価)するという点で、評価の軸 が揺れず、信頼度が高いと言える。

また、その診断(評価)結果を踏まえ、長期的なス パンの中で改善に向けての工程を明確にし、取組を促 すシステムとして機能しているという意味でも、第三 者評価として十分な機能を備えたものとなっている。

全国的に見ても部分的に第三者評価が行われている 地域はあるが、県単位という広域で公立小・中学校、

県立学校すべてを、同じ手法、同じ基準等をもって第 三者としての立場で評価を行い、その結果を学校、市 町村教育委員会、県教育委員会の三者がともに共通認 識し、改善に向けて取り組むシステムを備えていると ころはなく、アドバイザリー制度における個々の具体 的な手法と評価に至るプロセスは、第三者評価実施上 の課題の解決への道筋を考える上で、貴重な示唆を与 えてくれる。

しかし、第2節で述べたように第三者評価の課題は 多岐にわたる。今後の第三者評価の在り方を考える上 で、アドバイザリー制度は、上述したように専門性や 信頼性、客観性、透明性の確保などについて、様々な 示唆を与えてくれるが、さらに、第三者評価を実施す る上での課題として協力者会議が指摘するa第三者評 価の実施主体と国・都道府県・市区町村との関係やs システム構築に関わる膨大なコストの問題、d学校運 営の最終的な責任、f管理職や教育委員会の改善への 取組の弱さ、g組織マネジメントの評価が行われにく いこと、h評価者に求められる専門性(資質)の6点 についてどのように考え、対応していくのかを考える 必要がある。

この6点については、第三者評価を実施する上で基 本となる課題でもあり、以下、その在り方を提案して いく。

a第三者評価の実施主体と国・都道府県・市区町村 との関係

実施主体については、初等中等教育の場合、高等教 育機関と異なり、学校数から考えてみても、評価結果 に対する責任の所在という点から考えてみても、国が 第三者評価の実施主体になることには、設置者との関 係で大きな課題があり、無理があって現実的ではない。

この実施主体の問題については、教育再生会議の

「第三次報告」(2008)でも述べられているように、国

(9)

は第三者評価ガイドラインを策定し、評価については 学校の設置者である市町村、都道府県の判断により実 施していくことが最も現実的で有効な方策であると考 える。

第三者評価が「自己評価や保護者等による学校関係 者評価では不足する部分を補うもの、つまり、学校運 営の質を高めることを目的として学校の組織や成果を 検証し、評価を行うもの」であるならば、すべての学 校に対し第三者評価が行われ、その手法や基準も統一 されていることが、学校の納得性を高め、教育の改善 を促す力となるための大きな条件であろう。

その意味で、まず、実施主体に関しては、県単位と いう広域で公立小・中学校、県立学校すべてを、各校 種それぞれ同じ手法、同じ基準等をもって県が設置す る第三者としての立場を持つ機関が評価を行い、その 結果を学校、市町村教育委員会、県教育委員会の三者 がともに共通認識し、学校の教育改善に向けて取り組 むシステムが適当であると言える。

文部科学省も2006年度から第三者評価の試行を行っ ているが、国による第三者評価は、あまりに広域にわ たりすぎること、客観的な評価とはいえ地域の実態が 分からず適切な評価が出来るのか、また、評価が実効 性のある改善に繋がっていくのか、さらに、多くのチ ームで対応する場合、評価基準に揺れが生じないのか など多くの課題があると思われる。

実際、国の「平成18年度学校の第三者評価の試行に ついて(報告書)」(以下、「18年度試行報告書」と略 す)にあるアンケート結果を見ても、「地域や保護者 の実態、生徒の状況などが各学校によって違う中、具 体的に学校改善を進める観点からすべての項目が自校 を評価するのに適切なのかやや疑問が残る」、「努力を 要する課題についてはもう少し具体的な指導や助言が 欲しい」などの指摘がある。

sシステム構築に関わる膨大なコストの問題 実施主体については、独立した評価機関を設置する ことは理想であるが、その設置・維持に伴う膨大なコ ストや専門性から見て、新たに専門的知識を備えた人 材による完全に独立した評価機関を立ち上げることに は無理がある。

したがって、システムの構築にかかるコスト負担や 専門性を備えた人材の確保という点については、第三 者評価を県単位による教育委員会が行う業務とし、教 育行政における多岐にわたる業務のうち、優先順位の 高い施策への経費の投入と人材の配置という視点で速 やかに評価機関を作り、実施すべきである。

その中で、評価機関の独立性ということに関しては、

所管は教育委員会であるとしても、直属の行政機関で かつ指導権限のある部局ではなく、教育研究所のよう な研究機関に置くことで、教育評価としての位置を保 つことが適当である。

研究機関に置くことにより、高い専門性を有してい る研究機関の職員をその任に充てることもできる。

ただ、評価機関のメンバー全員が教員籍であること にはやはり問題がある。学校教育に精通した者がその 任に当たることは適切なことではあるが、学校評価が 求められているそもそも論から言えば、教育分野以外 の有識者をメンバーに入れ、教員とは異なる視点を加 えることが大切で、大学・民間から一人ずつでも評価 委員を入れることが必要である。

実施主体のコアとなるメンバーは固定して、外部の 有識者については大学や民間団体と連携し、身分的に は例えば嘱託として、それぞれ本来の業務に差し支え のないよう入れ替わりながら関わってもらうことが円 滑に評価を進めるうえでの工夫になるのではないかと 考える。

こうした措置により、一定の独立性の担保、及び第 三者評価本来の目的である専門的・客観的な立場から 見た評価が行われ、学校教育の質の向上が図られるこ とになる。

d学校運営の最終的な責任

さらに、学校運営の改善に最終的にだれが責任を持 つのかということについては、「地方教育行政の組織 及び運営に関する法律」(以下、「地教行法」と略す)

の趣旨にそって考えることが必要である。

県単位で第三者評価機関を設置した場合、小・中学 校については、所管の市町村教育委員会に趣旨説明を 行うとともに訪問後の結果報告も行うなど綿密な連携 を図り、管内の学校の教育状況に対する教育委員会の 認識を深めることが大切である。改善等について学校 を指導することについては「地教行法」の趣旨を踏ま え、設置者が責任を持つことを明確にすることは当然 である。

指導主事の指導と第三者評価の関係については、指 導主事の指導は、あくまで助言・指導、支援がその職 務の範囲であり、評価を行うものではないことを確認 すべきであろう。

f管理職や教育委員会の改善への取組の弱さ 管理職や教育委員会の改善への取組の弱さ或いは不 作為については、そうしたことが起こらないシステム を構築すること、謂わば、その任に当たる個人の裁量 ではなく、システム上やらざるを得ない形を作り、責 任の所在を明らかにすることである。

経営の改善にはPDCAサイクルの視点が有効であ るが、評価実施主体の活動がそのうちのC(チェック)

の部分に関わるだけでは、改善にはつながらない。チ ェックのあとのアクションがどのように行われたか、

さらに次のプランがどう作られ実行されたかなど、少 なくともPDCAサイクルの一回りに関わる長期的な 取組が必要であり、それぞれの段階を確認することよ り不作為は回避できる。

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具体的には【学校訪問→学校評価→所管の教育委員 会との連携→改善についての学校からの回答書→一年 後のフォローアップ学校訪問→所管の教育委員会との 連携】の手順が必要である。

これにはスピード感も大切で、訪問後の評価結果報 告書の送付やそれに対する学校の回答書の提出は、訪 問時のヒアリングや協議の印象が薄れないうちに実施 することが効果的であると言える。

また、所管の教育委員会に学校訪問に同行を求めた り、訪問後の評価結果報告書を送付したりすることに よって、教育委員会にその後の改善方策について当該 校と共通認識を持たせることも大切である。

教育委員会にとっては、管内に複数校がある場合、

各学校の自己評価に対する認識の違いや改善への意欲 の相違を明確に把握できるし、各学校が地域の特色を 自らの教育活動にどう生かそうとしているかも把握で き、地域全体の教育をどう進めていくのかということ を考える上でまたとない資料を得ることができること になる。

これを徹底させるためには、市町村教育委員会に対 しても、評価結果報告書を踏まえて、学校にどのよう な支援や指導を行っているかを評価チームと公式に協 議する場を設定することが望まれる。教育内容ととも に教育環境についても教育委員会が果たすべき役割が 多いことから、評価結果を生かす仕組みとして確立さ せたい。

こうした取組は、これまで理念を語ることはしても、

結果の検証にはあまり熱心ではなく、教えたことと学 んだことの乖離が指摘される学校教育の体質に必ず変 化をもたらすことになるだろう。

g組織マネジメントの評価が行われにくいこと マネジメントに関わることとして、事務職員の役割 にも着目しなければならない。学校裁量の範囲の拡大 に伴い、設備備品の購入など予算について教員と意思 疎通を図りながら、優先順位を決定するなどして教育 活動を充実していくことが大切である。特に学習指導 要領の改訂に伴い、算数(数学)・理科教育、英語活 動などの充実が叫ばれており、新しい教材の購入、教 員の研修機会の保証などその業務は重要性を増してい る。

さらに、事務職員は保護者や外部からの電話の最初 の受信者であることも多く、それらの電話が不登校や いじめなどの問題にかかわることがあることも踏まえ て、教員と十分コミュニケーションを図ることが必要 である。

そのため校内での連携について事務職員にも学校訪 問時にヒアリングを行うなど評価の重要な要素として 位置づけたい。

h評価者に求められる専門性(資質)

第三者評価に関して、評価者に求められる専門性

(資質)がいかなるものかを一口で論じることは難し い。ただ、国の第三者評価の試行についての「18年度 試行報告書」では、「評価者の資質の向上」として、

「本試行を実施する上で、調査の流れ、評価基準、訪 問調査の際の学校の教職員・児童生徒との接し方や具 体的な観察手法のあり方、また調査を踏まえた評価の まとめかたなど、本来、評価者として統一的に習得し ておくべき内容は多い。また、必ずしも教育に造詣の 深い評価者ばかりではないため教育行政制度等に関す る知識の教授が必要となる場合もある。」と述べてい る点から考えれば、おおよそそのようなことに支障な く対応できることが求められる能力と考えられる。

より具体的に言えば、学校訪問時のヒアリングでは 学校経営について、学校の基礎資料に基づき校長と意 見交換を行ったり、教育活動等について質問内容を整 理し、関係教職員にヒアリングも行なわなければなら ない。その際、認識の甘さや重要な事柄について切り 込み、踏みこんだ議論など臨機に対応できる能力が求 められる。

授業についても、授業者の教材理解の深さや授業設 計、発問や板書等に至るまで高度な専門性が求められ、

学校経営については教育行政の仕組みを理解している ことも必要である。こうした能力を一朝一夕に養うこ とは不可能であろう。

そういう意味では、長年学校現場で経験を積んだ教 員や教育行政に携わってきた人材が評価に当たること が適当であり、そこに民間人が加わり、いわゆる世間 の常識、レイマンの視点から、教育の専門家に不足す る視点を補う形が現実的な対応であり、それらのメン バーが評価に当たる際に十分な議論を行うことで、実 施主体が客観性のある専門性を確保することとすべき ではないかと考える。

評価はいかに優れた能力を備えた人間であっても、

その個人的力量に頼るものではなく、チームとしての 明確な基準があり、その基準をどう適用し、判断する かについて十分な議論を積み重ね、総合的な判断を行 い、改善の方策・方向性を示唆するものでなくてはな らない。

評価者の専門性に関連して、評価項目について言え ば、それぞれの評価者の専門的見地から整理された項 目を、「地域のスタンダード」として認知を得ておく ようにすることが大切である。

さらに、こうした事柄に加えて、実際のヒアリング では校長や中枢の教員だけではなく、若手教員や養護 教諭、事務職員にも行い、評価の目を学校組織全体に くまなく及ぼすことにより、学校が組織についての認 識を新たにするような多様な手法、意外だが納得でき ると思えるような新鮮な視点を提示できるような能力 も求めたい。

(11)

7.おわりに

地方分権の流れの中で、学校はその裁量権が拡大さ れ、自主的・自律的な取組を求められている。当然な がらそれには説明責任(アカウンタビリティ)が伴い、

今後もこの流れに大きな変化はないであろう。

その説明責任(アカウンタビリティ)を果たすため、

学校は、これまで自己評価や学校関係者評価に取り組 み、その結果を公表してきた。そして今、自己評価や 学校関係者評価の不足を補い、学校運営のより一層の 改善と充実を図るため、当該学校と直接の関わりを持 たない専門家等が、専門的・客観的な立場から評価を 行う第三者評価が議論を集めている。

実施については、様々な検討すべき課題は多いが、

参考とすべき実践があり、課題についてもすでに述べ たとおり優れた実践などから一定の整理ができる。

今日の社会状況から、子どもたちのコミュニケーシ ョン力の低下による人間関係の希薄化、読解能力の低 下などに伴う学習意欲の低下など学校教育にとって看 過できない問題が深刻さを増していることに照らせ ば、学校がより専門的な立場から、大所高所にたった 客観的な評価を受け、改善点を明らかにすることを通 して、学校運営・教育活動のさらなる充実に向けた取 組に向かえるよう、第三者による学校評価の体制が全 国的に速やかに整えられることを期待したい。

参考文献

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中央教育審議会(1998)「今後の地方教育行政の在り 方について」(答申)pp.26-27. 

中央教育審議会(2005)「新しい時代の義務教育を創 造する」(答申)pp.25. 

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参照

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