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格差社会と大学

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Academic year: 2021

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アカデメイア

格差社会と大学

経済学研究科長 角 隆 司

近年、「格差社会」の問題に関する議論の高 まりがみられる。かつてわが国では1980年代前 半頃まで国民の90%が中流意識を持ちまさに総 中流社会であった。しかし、バブル景気の時期 には次第に資産格差が顕著になり始め、さらに その崩壊後は所得格差拡大が著しく進んだ。企 業は生き残りのために正規雇用の削減と非正規 雇用の増加を始めとした厳しいリストラを展開 するとともに、人事制度の変革や成果主義賃金 の導入などによるいわゆる日本的経営や雇用慣 行の崩壊、さらにニートやフリーターにみられ る若年層の労働意識や就業形態の変化は将来の 経済格差拡大と固定化をますます増幅させ、わ が国の経済発展に重要な影響を及ぼすことが懸 念される。

OECDの報告書(2006年7月)は、わが国の ジニ係数が短期間のうちに上昇し所得や資産分 布の不平等が近年急速に拡大していることの証 左を示すが、このような所得格差や資産格差な どの経済格差の拡大のみならず、さらに雇用・

賃金・世代間・地域・都市間・情報・消費等の 格差が拡大すると同時にその固定化が進行して いる。つまり、社会の多くの側面で二極化現象 が顕在化していると言える。

この格差社会は自由競争の原理あるいは競争 社会にもとづく帰結と言える。しかし、今日、い うまでもなく自然法的世界観、自由放任主義思 想のA.Smith、あるいは最適者生存の社会的ダー ウィニズムを説くH.Spencerの時代に戻ろうと するのではなく、民主主義の時代にマッチした 新しい社会の構築を目指していかねばならない。

一方、わが国の大学問題の現状を考察すると き、国立大学の独立行政法人への移行に見られ るようにまさに完全に競争社会の中に位置づけ られており、国立、私立を問わず各大学は今日 までさまざまな改革を推し進め生き残りのため に懸命に努力を続けてきた。このような努力を 怠ったりあるいは十分な成果を出せない大学は 淘汰されていく運命にあり、すでにそのような 兆候が各大学で表面化していることは周知の事 実である。つまり今日わが国の大学は生き残る かあるいは衰退するかの瀬戸際に位置している と言える。

平成12年頃からそれまでの大学教員の研究至 上主義に対する批判として、文科省(当時文部 省)は大学設置基準を改正し学生への「教育能 力」をいっそう重視する方針をとってきた。言 うまでもなく一般に教育活動は、国民の福祉向 上、社会の発展に貢献する優れた人材の育成を 行う重要な一役割を担っている。しかし、大学 における教育活動は単なる知識や情報の提供に とどまることなく、卓越した研究成果とその応 用開発による社会的貢献が根底に存在しなけれ ばならない。即ち、大学における教育活動は常 に新しい最先端の研究成果に裏付けられたもの であるべきであると言えよう。今後も学内にお ける研究基盤の整備、研究体制の充実を一層推 進するとともに、学術研究高度化推進の各事業 やプロジェクトを積極的に獲得することによっ て、わが国における学術研究の拠点としての評 価を確立することが重要であり、そこに大学の 将来性と発展性が存在すると考えられる。

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