経営と経済第71巻第2号1991年9月
中間主義的ローレンツ曲線基準と社会的厚生関数による接近
吉田建夫
第 1節 問 題
所得分配の不平等に関する様々な問題を巡ってこの20年来活発な議論が行 われ,著しい進歩を見ることができたことは周知の通りである。そのひとつ にローレンツ曲線基準と社会的厚生関数との聞の同値性に関する成果がある [Atkinson (1970), Dasgupta, Sen and Starrett (1973), Shorrocks (1983) , 綿貫(1977)J。社会的厚生関数,w, は所得分布ベクトル,Y,の数値関数と
して定義されており ,Wが満たすべき性質として ,WはyについてS凹か っ非減少的であるとする性質のみが課せられているとしよう。比較の対象と される二つの所得分布についての順序付けがこの意味での許され得る社会的 厚生関数族に所属するすべての Wの間で一致するための必要十分条件は,
対象となる所得分布について描かれた二本の「一般化された」ローレンツ曲 線が互いに交差しないことである。なお「一般化された」ローレンツ曲線と は通常の「相対的」ローレンツ曲線に平均所得を乗じて定義される曲線を指
している。
しかしながら, i一般化された」ローレンツ曲線には一点の問題が残され ている [Sho汀ocks(1983,pp.10‑12)J。それは,総所得の異なる所得分布 を比較する場合には「一般化された」ローレンツ曲線基準が平等主義的であ るとは言い難い性質を持っていることである。このことは,経済成長の成果 が社会の最高所得者にのみ帰属するケースを考えてみれば容易に理解されよ う。経済成長がたとえ社会の最高所得者の所得を更に増加させるような結果 しか生まなかったとしても,それによって社会の他の構成員の所得が「絶対 額」で減少しない限りは「一般化された」ローレンツ曲線基準の意味では事 態は確実に改善されたと判断されるのである。このような性質は W の単調 性に対応しており,平等主義的視点に立つならば W に関して単調性とは異 なる性質を仮定することが望まれるであろう。
*)久我清教授(大阪大学)から有益な助言,コメントをいただいたことに対し深く感謝の 意を表したい。
102 経 営 と 経 済
本稿の課題はローレンツ曲線基準と社会的厚生関数の同値性に関する議論 にPfingstenの提唱に係わる「中間主義的視点に基づく不平等概念」を導入す ることにある。まず最初にこの新しい不平等概念に依処してμ‑intermediate scale improvementと我々が名付ける性質を定義する。この性質は, i中間主 義的」な意味で不平等が不変に保たれるような形での経済成長は W を増加 させるとする考え方に基づいて定義される。そして ,Wの非減少性に代わ るべき性質としてこの性質を Wが満たすと仮定する。更に準備として中間 主義的視点に立つ不平等概念を表現するローレンツ曲線概念を導入する。こ のローレンツ曲線は従来から用いられてきた「相対的」ローレンツ曲線と「絶 対的」ローレンツ曲線 (Moyes(1987))の凸結合として表現することができ,
パラメータ μを選ぶことによって「相対的」並びに「絶対的Jローレンツ 曲線をそれぞれ両極端に含むパラメトリックな曲線として定義される。以上 の準備のもとで, i中間主義的」ローレンツ曲線基準と社会的厚生関数の間 にどのような同値関係が成立するのかを明らかIこすることを本稿の目的とす る。
第2節 記 号 と 基 本 概 念
2.1 社会的厚生関数の公平性と効率性に係わる性質
本稿の議論を進めるために必要な記号の約束と基本概念の説明から始める こととしたい。通常の約束に従って実数全体の集合をRという記号を用い て表すことにしよう。 RnはRの n重のカルテシアン積を意味しており,
更にRfはRnの非負象限を ,Rf+はRnの正象限を表すものとする。本稿 では n人から構成される経済社会を想定し,所得分布をベクトルY=0'1, Y2,…, Yn) eRムで表すとする。 m0')はyεRムの算術平均を表すとする。
異なった状態にある所得分布は社会的厚生関数 W:Rム →Rによって順序付 けられるとする。 Wは以下に述べる二つの条件を満たすと仮定しよう。
(A. 1) (5凹性)
すべてのyeRムとすべての nXnの重確率行列 Qに対して
日T(Qy) ミ~W(y)
が成立する。
(A. 1)は,Wがyに関して対称的であり,かっ Dalton( 1920)の提唱 に係わる所得移転原理 (theprinciple of transfers)を満たすことと同値であ る。いま仮に,任意に二構成員がピックアップされ,他の構成員の所得はす べて一定に保った上で,相対的な富者から相対的な貧者に対して(両者の経 済的地位が逆転しない範囲で)所得移転が行われたとしよう。平等主義的見 地に立てば,このような所得移転は社会が実現する経済的厚生水準を改善せ しめると考えるのが自然であろう。このように考えることを Daltonの所得 移転原理と呼ぶ。このような意味において (A. 1)は「公平性」に係わる 条件であるとみなすことができる。
Wが満たすべき第二の条件を提出するためには若干の準備が必要である。
さて,平均所得が異なる所得分布を W によって順序付けることが可能とな るためには ,Wが満たすべき性質として「効率性」に係わる条件を付け加 え,許され得る W のクラスを更に限定しなければならない。「効率性」に 係わる条件としてもっとも常識的な仮定は Wがyの非減少関数であると想 定することである。しかしながら wがyの非減少関数であるとする想定に は次に述べるような意味において平等主義とは相容れない側面がある。いま 仮に他の構成員の所得は一定としたままで社会の最高所得者の所得のみが追 加されたとしよう。このような場合,ごく自然な判断として,所得分配はよ り不平等化されたとみなされるであろう。ところが ,Wがyの非減少関数 であるならば,社会における最高額所得者の所得がどれだけ増加したとして も,それによって他の構成員の所得が減少しない限りは,確実に W は改善 に向かったと判定される。即ち,人々の所得が増加するという意味において 効率性が改善されさえすれば,その結果として不平等がどのように悪化した としても,社会的厚生水準は改善されたと判断されるのである。このことは
「効率性」に係わる条件として非減少性とは異なる条件を W に課すべきで あることを示唆している。
104 経 営 と 経 済
公平と効率との間に生じるこのような不調和を避けるひとつの考え方は,
不平等が悪化することなく人々の所得が上昇した場合に社会的厚生は改善さ れると想定することであろう。問題は人々の所得がどのように変化した場合 に所得不平等は不変に保たれると考えれば良いのであろうかということであ る。この問題に関しては Dalton(1920)の古典的論文以来,次の二つの代表 的見解が存在する。ひとつは
「社会の全構成員の所得が同一比率で変化したときには不平等度は 不変に保たれる。」
とする性質であり,いまひとつは
「社会の全構成員の所得が同一金額だけ変化したときには不平等度 は不変に保たれる。」
とする性質である。前者の考え方は Kolm(1976)によって rightists'view と呼ばれており,後者の考え方は leftists'viewと呼ばれている。しかしな がらこの二つの性質のうち何れがより妥当な判断であるのかについて論者の 意見は決して明快にはなり得ない。むしろ Da1tonが示唆するように多くの 論者の見解は
「社会の全構成員の所得が同一比率で成長した場合には不平等は悪 化するが,全構成員に同一金額の所得が追加された時には不平等は 改善される。」
という意味で rightists'viewとleftists'viewのどこか中間にあると考える のが適切であろう。本稿ではこのような問題意識に基づく不平等概念として 近年Pfingsten(I986a,b)及びBossertand Pfingsten (1990)により提唱され た「中間的視点による不平等概念J(intermediate concept of inequality)
に依拠することにしたい。この概念によれば,人々の所得変化が rightists' viewとleftists'viewの凸結合であるような場合には所得不平等は不変に保 たれるとされる。そしてこの二つの性質の結合比率はパラメータ μで表現 されており,その極端なケースとして rightists'viewとleftists'viewがそ の両端に含まれている。中間主義的な不平等概念は次のように定義される。
[中間主義的不平等概念]
係数με[0,1]の値が任意にひとつ与えられているとする。 x,yER!; +は二 つの所得分布であるとする。ある αERが存在して ,xとyの間に
y=x+α[μ'X+ (1一μ)eJ
が成立する時,そしてその時に限ってyとxは係数μに関して不平等度が 同一であると定義される。なお ,e= ( 1 ,…, 1) は全構成員がそれぞれー 単位の所得を稼得している均等分配ベクトルを表している。
この定義における係数 μは価値判断を表現するパラメータであって, μ = 1の時にはrightists'viewに一致し, μ=0の時にはleftists'viewに一致す る。そしてOくμくlの値に応じて様々な中間主義的色彩が表現されている。
このような中間主義的不平等概念の意味で不平等が不変に保たれるような 所得の増加は社会的厚生を改善させると想定すれば,Wの「効率性」に係 わる条件として我々はμ‑intermediatescale improvementと名付ける次の性質 を提出することができる。
(A. 2) (μ‑intermediate scale improvement) すべてのYER!;+とすべてのαεR+に対して
W[y+α(μy+( 1 ‑μ)e) ]ミW(Y) が成立する。
(A. 2)は, μに関して中間主義的な意味で不平等が一定のままで全構成 員の所得が増加する時には(即ち α孟Oである時には) Wは改善されると
106 経 営 と 経 済
考えることを意味している。本稿では任意に与えられた係数 με[0,1]に関 して (A. 1)及び (A. 2)を共に満たすような社会的厚生関数の集合を
r (μ)という記号を用いて表すとする,即ち,
r (μ) ={W:Rム→RIW は (A. 1)及び (A. 2)を共に満たす.}
としておこうo
2.2 r中間主義的」ローレンツ曲線
更に準備として「中間主義的」不平等概念に対応するローレンツ曲線概念 として Pfingsten( 1 9S6b)の提唱に係わる「中間主義的」ローレンツ曲線を ここで導入しておこう。 yの各要素を所得の昇順に並びかえて作られるベク トルをタという記号を用いて表すとする。即ち,タはyのpermutationで あって ,Y1豆タ2亘…豆九が成立するように作られているとする。任意に与 えられたパラメータ値 με[0,1]に対して,関数 F/(y, k / n;μ)を
エ[長‑m(y)J
F/(y, k / n;μ)= 日 k=1,… , n (1) [μm(y)+(l一μ)Jn
と定義しよう。(1)式のように定義される関数F/が中間主義的ローレンツ曲 線関数である。所得分布yが所得分布 xに対して「中間主義的」ローレン ツ曲線基準の意味で優越することをyLμx という記号を用いて表すとすれ ば"y Lpx は
y Lp X牛二}F/(y, k / n;μ)ミF/(x,k /η;μ)
(すべての k=1.・ n‑1に対して) によって定義される。ここで仁今という記号は同値関係を表すものとする。
即ち,与えられた με[0,1Jのもとで,所得分布yについて描かれた「中間 主義的」ローレンツ曲線が所得分布 x について描かれた「中間主義的」ロー レンツ曲線を決して下回らない時,そしてその時に限って ,yはxに対して いに関する)I中間主義的」ローレンツ曲線基準の意味で優越すると言わ れる。
本節の以下の部分において,我々は(1)式のように定義された「中間主義 的」ローレンツ曲線の幾つかの表現について Pfingsten(1 9S6b)よりも一歩
進んで考察を深めておこう。まず最初に「中間主義的」ローレンツ曲線は「相 対的」ローレンツ曲線と「絶対的」ローレンツ曲線との加重平均の形をとっ て表現することができる。(1)式の Ff関数を書き改めると直ちに
Z[jii‑m(y)]
Ff(y, k / n;μ)=‑‑‑'引
[
μ.m (y) + ( 1一μ)J・n
=ω・[FR (y, k / n) ‑k / nJ + ( 1一ω). FA (y, k / n), k = 1 ,…, n (2)
が成立する。ここで FR関数は通常の「相対的」ローレンツ曲線であって,
L.Yi F R (y, k / n) = ...'ニムー‑
(y)・ k= 1, n
と定義される。 FRがrightists'viewに対応していることは言うまでもない。
FA関数はleftists'viewに対応するローレンツ曲線としてMoyes(1987)が 提唱している「絶対的」ローレンツ曲線関数であって,
ω,h/n;hSIBz‑一 的)J十 k= 1, n
と定義されている。係数 ωは μm(y) ω=ω(m (y), μ ) = r P μm(y)+(l‑μ)
と定義されている。 μ=1の時には ω 1,μ=0の時には ω=0の値をそ れぞれ取る。 ωはμの定義域において μの減少関数である。
上述の(2)式から読み取れるように, r中間主義的」ローレンツ曲線は,
(a)r相対的」ローレンツ曲線 FRと完全平等線 k/nとの差,と(b)絶対的ロー レンツ曲線, とをそれぞれ ωと 1‑ω の比率で加重して描かれる曲線であ る。
1 )特に μ=1,即ちrightists'viewの場合には, ω=1となるから ,F[ は F[(y, k /n; 1) =FR(y, k /n)‑k /n
となる。このようにμ=1の場合には ,‑F[はローレンツ曲線図表における完全平等 線k/nと「相対的」ローレンツ曲線FRとの距離に一致する。他方, μ=0,即ち lif‑ tists' viewの場合には, ω=0となるから ,F[は
F[(y, k /η; 0) =FA(y, k /n)
となる。即ち丹は Moyes(1987)の提唱に係わる「絶対的」ローレンツ曲線に一致する。
108 中間主義的ローレンツ曲線基準と社会的厚生関数による接近
次に, μ=0の場合を除けば,所得のオリジンをゼロから 一 (1 ‑μ)/μ
にシフトさせて定義される次のような所得分布ベクトル zに基づく「相対 的」ローレンツ曲線を導入することによって, r中間主義的」ローレンツ曲 線を別の角度から叙述することができることを述べておこう。所得分布ベク
トルzを
Z=y‑[一 (1‑μ)/μJ e
と定めると ,Zについての「相対的」ローレンツ曲線関数は
エ[μryi+( 1 ‑μ)J
FR(z, k / η)=~引 k= 1 , ・・・,n
l( V'‑IJ ,,,I , ,,I [μm(y)+(1‑μ)J n と定義される。この関数は更に FR(y, k / n)を用いて
FR(z, k / n) =ωFR(y, k /η) + ( 1一ω)(k / n) (k= 1 ,… , n) (3) と変形される。ここで FA と FRとの間に
FA(y, k /η) = m(y)[FR(y, k / n) ‑k / nJ
が成立していることに注意したうえで, (2)及 び(3)式を用いてF/(y, k / n;μ) を書き改めると ,F/ は
F/, (y k / n;μ)
=ω [F R (y, k / n) ‑k / n J + ( 1 ‑ω) FA (y, k / n)
=[ω+ (1 ‑ω) m (y) J [F R (y, k / n) ‑k / n J
=(ω/μ)[FR, (y k / n) ‑k / nJ
= [FR(z, k / n) ‑k / nJ/.μ (4) と表すことができる。このように oくμ豆1の場合には, r中間主義的」
ローレンツ曲線は ,z について描かれた「相対的」ローレンツ曲線と完全平 等線 k/nとの差,F R (z, k / n) ‑k / n,を1/μ 倍して描かれる曲線である と叙述することもできる。ここで ,zについて描かれた「相対的」ローレン
2) (4)式の導出にあたって,次式を用いている。
(y) ( 1ーμ)m(y) ω+ ( 1一ω)m (y)= μ~-
m(y) + 1ーμ μm(y)+ 1 ‑μ 一 μm(y 一ω
μm(y)+ 1ーμ μ μ .
ツ曲線FR(z,k / n)は(3)式に示されるように ,yについて描かれた「相対的」
ローレンツ曲線と完全平等線 (45度線)とをそれぞれ ωと1‑ω で加重平 均して描かれる曲線となっている。
最後に, r全構成員の所得が同一比率で成長した時には所得不平等は悪化 するが,全構成員に同一金額の所得が追加された時には不平等は良化する」
という意味での折衷的性質を「中間主義的」ローレンツ曲線が保有している ことを確認して本節を締め括りたい。価値判断を表す係数 με[0,1]の値が 任意にひとつ与えられているとする。このもとで,任意の所得分布 YERム に対して
yLμ..<Y (すべての..<~ 1に対して) (5)
及び
(y+oe) Lμy すべての8孟Oに対して (6) が成立することが容易に確認される。なお証明は数字付録を参照されたい。
(5)は全構成員の所得が一斉に同一比率でプラス成長した時には不平等は いに関する)r中間主義的」ローレンツ曲線規準の意味において悪化する ことを意味しており, (6)は全構成員の所得に一斉に 8円が追加された時に は い に 関 す る )r中間主義的」ローレンツ曲線基準の意味において不平等 は良化することを意味している。
3) (4)式から明らかなように, 1 ~μ>0 である限りは,実証分析において「中間主義的」
ローレンツ曲線の代りにzについての「相対的」ローレンツ曲線基準を描いても論理 的には同ーの結論を得ることができる。しかしながら,選択される μ の値がOに近付 くにつれて, Zについての相対的ローレンツ曲線を描くことの実用性は著しく低下す る。
これは次のような理由に基づいている。 (3)式から, μ→0とすると, ω→Oとなるか ら, FR(z, k / n)→k/nとなる。即ち, μ→Oに伴ってzについての相対的ローレンツ 曲線は45度線に漸近する。このため,選択される μ の値がゼロに近付くにつれて, z についての相対的ローレンツ曲線による不平等比較はローレンツ曲線図表上で識別す るのがますます困難となる。「中間主義的」ローレンツ曲線F[(y, k / n;μ)ではそのよ うな困難は生じない。
110 経 営 と 経 済
第3節 社会的厚生関数と中間主義的ローレンツ曲線基準の同値性
以上において我々は社会的厚生関数族 r(μ)及び「中間主義的」ローレン ツ曲線概念の導入を終え,本稿の主要部分を述べるための準備を整えた。こ のような準備のもとで,我々は, r (μ)に所属するすべての社会的厚生関数 の間で所得分布の順序付けが矛盾しないための必要十分条件は,経済的厚生 水準の比較の対象とされる一方の所得分布が他方の所得分布に対して平均所 得の意味でも「中間主義的」ローレンツ曲線規準の意味でも優越することで ある,ということを示す次の定理を提出することができる。
[定理]
丸YER!;+であり,係数 με[0,1]が与えられているとする。次の(i)(ii)は 同値である。
(i) 任意の WErcμ)に対して W (y)孟W(x)が成立する。
(ii) m (y)孟m(x)かっyLμxが成立する。
註明
最初に(i)弓 (ii)を明らかにする。
次のような社会的厚生関数
Wk(Y) =a'm(y) + ( 1 ‑a)Ek(y) を仮定しよう。ここでEkω)は
ι yj‑m(y) Ek(y) =‑=‑.L. min[ 0, ....~:..\ '~. ": I
針 'μm(y)+l‑μ
と定義されているとする。なお ,aE[O,l], nεRはパラメータである。
(7)
(8)
最初に(7)式のWk(Y)が rCμ)に所属することを確認しておこう。このこと を確認するため(8)式に注目したい。任意のyεRムと任意の nXnの重確率 行列 Q=[qij]に対して,
1 n .L.qji yj‑m (Qy)
Ek(Qy) =ム L.min[ 0, 1引 r¥..¥ r
~lμm(Qy) + 1 ‑ μ '
Yi‑m(y) 一
一 日J} μm(y)+l‑μ 川
AU
﹁'
m n t﹄ HH v
n u a
nエ
叶
r︐
︑ .
孟土会 ︑
ι y'i‑m(y)
{ctqij)min[O会i'1'}I.I..u,.......&L v , ,μ....:'J..\'~.':J m(y)+l‑ .μ .nJ}=Ek(y)
=話
1 ) が成立するから ,Ek(y)はS凹関数である。従って, (7)式の W は(A. を満たしている。更に ,y+O(μ!y+ 1‑μ)eeRムを満たす任意の yeR!;.+と 任意の OeRに対して
Ek[y+O(μry+ ( 1一μ)eJ
Yi+O(μYi+ 1‑μ)ー [m(y)+O(μm(y)+l‑μ)J
=~L min[O
n i = 1 ' μ [m(y) +O(μm(y) + 1一μ)J+ (1 ‑μ) rkJ ι ( 1 +0μ) (yi‑m(y))
=~.L min[O
計 , (1 +0μ) (μm(y) + 1一μ) 九J=Ek(y)
2)をも満たし が成立するから, (7)式の Wは (A.
ていることが分かる。従って, (7)式の Wは f(μ)に所属している。
1 )のみならず (A.
このこ
防庁 (y) ミ~Wk(X)が成立していることが とから, (i)が成立しているならば,
分かる。
さて ,a= 0であるとし ,rkとして
k= 1,… , n を用いると
ι タ i-m (y .•i 1 ....... . : . タi‑m(y ..i 1
L [ ..~ /..¥ '~. '; / nJーミ~.L min[ 0 , ..~ /..¥ '~. ': / 7kJ~
g到 μm(y)+l‑μ IR‑J n = i~ j..I..I .. I..I..l.L V ,μm(y)+l‑μ '
rk= (れ‑m(x))/(μm(x)+ 1 ‑μ) ,
ι 主i‑m(X .,1
= WR(y)孟W毒(x)=.L. min [ 0, ‑ 一‑nJ一
割 'μm(x)+ 1一μ
ー 一
n﹁tlJ
vd '
一μ a
は 一
lm
t 一 一 +
一 川
vh
一m
‑ u ‑
F21﹄
=ぷ k= , 1 ・・・,.n
が成立する。従って
k= 1, n F[(y, k / n;μ) ~ F[(x, k / n;μ) ,
4 )導出にあたっては,重確率行列Qの各要素qij(i,j= 1 ,… , n)はす,べて非負であり,
各々の列和と行和はすべてlに等しくなっていることを用いている。
112 経 営 と 経 済
が得られる。
他方,a= 1と置くことにより,
m(y) = Wk(y)孟Wk(x)=m(x)
が得られる。以上のようにして(i)弓 (ii)が明らかにされた。
次に(ii)二今(i)を明らかにするために ,zER!; +を
Z=x+α[μx+ (1 ‑μ)eJ (9)
と定めよう。ここで α= (m(y) ‑m(x))/[μm (x) + ( 1 ‑μ)Jであるとすれ ば,m(z) = m(y)となり,かつ
F/(y, k /η;μ)ミF/(ふk/η;μ)=F/(z, k / n;μ) , となるから
タ1+タ2+・・・+タk=:.主主1+主2+…+れ,
Y1 +タ2+...+タn‑主1+主2+…+ん
k= 1, ・ ,・・ n
k= ,1 ・ ,・・ n‑1
が成立する。従って, Hardy‑Litt1ewood‑Polyaの定理(1952)[Berge (1963, pp.184‑188)及 び Dasgupta,Sen, and Starrett (1973)を参照のこと]に
より, (A. 1)を満たすすべての W:R!;+→Rに対して
W (y)ミW(z) 帥
が成立する。更に(9)式を振り返ると明らかなように ,z はZ と係数 μ に関 して「中間主義的」な意味で同等に不平等であるように作られており,かっ α孟0となっているから (A. 2)を満たすすべての W:Rム→Rに対して
W(z)ミW(x)
ω
が成立している o (l~式と (11)式を組み合わせることにより, (A. 1)と (A. 2) を満たすすべての W:Rム→Rに対して
W (y) ~ W(x)
が得られることが分かる。 Q. E. D.
以上のようにして ,p‑intermediate scale improvementでありかっS凹であ
5) z はxと(μ に関して)I中間主義的」な意味で不平等が同一になるように定義されて いるから,F/(x, k / n;μ) =F/(z, k / n;μ) (k= 1,… , n)が成立している。
るすべての社会的厚生関数の間で所得分布の順序付けが互いに矛盾しないた めの必要十分条件は ,Wの意味で比較の対象とされる一方の所得分布が他 方の所得分布に対して平均所得の意味でも中間主義的ローレンツ曲線基準の 意味でも優越することであることが明らかにされた。
第4節 結 び
社会の各構成員の所得がどのように変化した時に所得不平等は不変に保た れると考えたら良いのかという問題について従来からふたつの代表的な考え 方があった。ひとつは人々の所得の同一比率の変化は所得不平等を変化させ ないとする見解であり,いまひとつは人々の同一金額の所得変化は所得不平 等を変化させないとする見解である。 Pfingstenの提唱に係わる「中間主義 的」不平等概念はこの二つの見解を両極端に含むパラメトリックな概念であ る。本稿では「中間主義的」な不平等概念を社会的厚生関数基準とローレン ツ曲線の同値性のフレームワークに導入することを試みた。我々は「中間主 義的」不平等概念に基づいてμ‑intermediatescale improvementと名付ける概 念を導入し,そのうえで S凹性に加えて μ‑intermediatescale improvement を満たすような社会的厚生関数の関数族 r(/1)を仮定した。そして上記定理 に示されるように, r (μ)が平均所得と「中間主義的」ローレンツ曲線基準 の双方に基づく基準と同値であることを証明した。
本稿で導入された社会的厚生関数族 r(μ)は平均所得がより高くかっ所得 分配がより平等な社会ほど望ましいとみなす常識的な考え方に立脚しており,
S凹かっ非減少的な社会的厚生関数族が抱える(効率性と公平性の間に生じ る)固有の困難が回避されている。更に, r (μ)は,パラメータ με[0,1] の値を選ぶことによって,効率性に関する幅広い価値判断を表現し得るもの となっている。 μ =1の場合には, r (μ)は人々の所得が同一比率で拡大し た場合には社会的厚生水準は改善されるとする価値判断を表現している。他 方 μ=0とすれば, r (μ)は人々に同一金額の所得が追加された時には社会 的厚生水準は改善されるとする価値判断を表現している。前者の価値判断は Shorrocks ( 1983)がscaleimprovemntと名付けた性質に対応しており,後