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生 ‐ 一      こ ハ 磁    刀触弗」

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(1)

(平15年10月 1日受理)

I。 は じめに

1.問題意識

めま ぐるしく変化する社会を生 き抜 く力を子供 自らが主体的に培 い、社会の成員 として立派に自立 する道を歩んでいくために、教師の果たすべき役割は極めて大 きい。子供 と同 じく教師 も教育の専門 家 として自立 し、意味ある教育実践を主体的に実現 してい くことが今求め られている。 しか し、複雑 で不確実な出来事が多様 に生起する教育実践現場 において、教師は、 どのように自立 を達成 していけ ばよいのか。 そこに本論文の問題意識がある。 そこで、教育専門家 としての自立を実現する実践力 を 探 り、 その力量形成 はどのように図 られ るのかを追究 していく実践的研究 に取 り組んだ。

2.主体的自立性 を実現する教師の力量 とその形成の理論的考察

今述べたよ うに、教育実践の文脈は、複雑性、不確実性、一回性 といった特色を もつ。 この実践 の 出来事を生み出す根幹は、く教え手―学 び手〉あるいは 〈学 び手―学 び手〉の2者間における、主 には コ ミュニケー ション行為を媒介に した相互構成的な営みである。 もちろん、 これは、学級 。学年・ 教 師集団・ 家庭・ 地域・ 教育行政機関等、様々な集団枠組みの中に内包 された営みであ り、主体的 自立 性を実現する教師の力量 も、 これ ら関係性の中で把握 されなければな らない。 この視点を踏 まえて考 えると、教師の主体的 自立性は、これ ら多様な集団枠組みの中で、互 いに く主一主〉、同時に く客一客〉

となる関係性を意味す るものと言 うことができる。そ こか ら、教師の主体的自立性を実現す る実践力 として焦点化 されてきたのが く間主体的対話的実践力〉であった。

では、その力量形成 は、 どのように図 られ るのであろうか。

反省的実践家 (reflective practitioner)と いう新たな専門家像を提起 した ドナル ド・ ショー ンは、

専門家 とクライア ン トの関係か ら、専門家の専門的力量形成 について、次のよ うに述べている0。

……専門家は通常、熟達者の役割を演 じることが期待 されているのに対 して、ここでは折 にふ

教師の間主体的対話的実践力の形成に関する研究

=小学校教師のエスノグラフィー分析を通 して一

A study of forming teacher's competence in practicing inter - subjectivity and dialogue

山 根 生・ 0

Norio YAMANE ald

山 崎 準 Junji YAMAZAKI

*2003年3月 静岡大学大学院教育学研究科 (教育学専修)終了、現・静岡市立清水有度第一小学校

(2)

れて彼の不確実性を露にすることを期待 される。…… ここでは彼の「実践の中の知」を公 に反 省 し、 自らを クライアントと向き合 うことので きる存在にすることが期待 され る。

新 しい能力へ と接近するとき、専門家は、な じんできた満足のある部分をあきらめ、新 しい能 力 に自分を開 いている。……専門家の前 に開かれる新 しい満足は、そのほとん どが発見による ものである。 クライアントに対する専門家の助言の意味の発見であり、彼の「実践の中の知」の 発見であ り、そ して彼 自身の発見である。

実践家が自分 自身の実践の研究者 となるとき、彼は自己教育の継続的な過程 に関与 している。

……実践家が「実践の中の研究者 (researcher― in―practice)」 として働 くときには、実践 それ 自体が更新の源である。不確実性 によって生 じた誤 りを認識することは、 自己防衛の機会では な く、む しろ発見の源 となるのである。       

クライア ン トとの反省的な対話関係に基づ く実践の中で、生 じていく誤 りの状況を反省的 に認識 し なが ら、新たな発見を積み重ねてい くとき、専門家 としての力量 は形成 されてい くと言 うのである。

ここで言う 〈誤 りの認識〉とは、「 クライアントとの反省的な対話をとお して、自らの専門的熟練の限 界を見出0」 そ うとすることであり、それ こそが更新の源になるということである。 また、この反省的 実践を く公 に〉行 うと述べ るショー ンの指摘 も重要である。 クライエ ン トだけでな く同僚等 も含め自

らの く実践の中の知〉を く公 に〉 してい くことが専門的な力量形成 には肝要だ という指摘である。

この クライエ ントとの対話的関係における 〈誤 りの認識〉 と く新たな発見〉を教職 にあてはめて考 えてみる。 これに関 して ショー ンは、マサチューセ ッツエ科大学 における教師 プロジェク トを例 に挙 げている ゝ

ランパー トらの教師 プロジェク トでは、指示を受 けなが らブロックを並べた子供の過 ちの表れの原 因につ いて話 し合 った。始 めは、その子が指示 に従えないことについて話 していた。 しか し、 ビデオ を見直す中で、状況 に対す る自分たちの見方を修正する。 その子 は、指示をきちん と聞いていたので ある。指示を聞 けなか ったのではな く、 その指示ではブロックを操作することが不可能だ ったのであ る。 このような経験を しなが ら、 そのプロジェク トの何人かの教師たちにとって、最 も満足のゆ く経 験 は、「 いつ も口外 しないで秘匿に してお くことを期待 されている混乱を経験 し、うち明けることを自 分 自身 に認めて、『子 どもに理を与え (give kid a reason)』 、 自分 自身を生徒の役割 においてみる経 」だ った という。

この ことか ら、教師においては、 まずなにより、子供 との反省的な関係における実践の中の省察が 意味を もつ ということが示 される。 また、同僚に対 して も 〈公に〉行為の中の知を公開 し省察 し合 い、

子 どもに理を与える〉ことができたとき、その経験が専門的力量形成にとって、最 も満足のゆ く経験 になるということである。 さらに、子供を取 り巻 く状況 との対話 も、 この く子 どもに理を与える〉反 省的実践を中核 としなが ら、同時 に進め られていくことによって、子供 に対す る適切な対応を生み出 す ことになるといえるだろう。

この ショー ンの指摘か ら、〈間主体的対話的実践力〉の力量形成 に、立 ち戻 って考えてみる。 ショー ンが提起する状況や クライエントと反省的に対話 し問題解決にあたる反省的実践家 という専門家像か ら考えてい くと、く間主体的対話的実践力〉は、教職 における専門的力量の中核 に値するという認識が 成 り立 って くる。 また、く間主体的対話的実践力〉には、社会的な関係 との対話力 も考慮 に入れ る広 い 意味合 いがある中で、 ショー ンが提起する専門家の専門性か ら考えてい くと、 その力量形成 の焦点化 すべ き中核 は、 クライ エ ン トであ る子供 の学 びの意味 を反省的 に理 解 す る こと (=give kid a

(3)

reason)だとい うことが明 らかにな って くる。動的に生成 され る子供の学 びを中核 に しなが ら、く び一教え〉活動を取 り巻 く状況 (コ ンテキス ト、道具の表現・表象、身体動作、空間や道具の配置、文 化的 0社 会的文脈等)を合わせて反省的に省察 し、理解・解明 してい く (=gi宙 ng kid a reason)実 践的認識活動が求めている力量形成の中心的活動 になるということである。 また、く行為 (実)の の省察〉だけでな く、 自らの く行為 (実)の中の知〉を同僚 に対 して もひ らき、互 いに交流 し、 ま た吟味 し合 う事例研究、すなわち 〈行為 (実)につ いての省察 (reflection―on―action、 reflection

on―practice)〉 も含む反省的実践が重要な活動になると言えるのである ゝ

.〈間主体的対話的実践力〉の形成の具体を探 る研究の方法

本論文で焦点化する実践力の具体は、教師一人ひとりの暗黙知・ 身体知を含む固有性あるものだ と 言えることか ら、本研究では、ある一人の教師の力量発達の変容・ 成長 を追 う事例研究 とい う形を と った。〈語 りの様式〉における言動や行為か ら、教師が反省的実践 により、どのような意味の感受・付 与・ 認識を し、経験の再構成を行 うのかを追究する質的研究 として、取組みを進めたのである。

本研究を行 うにあた り、研究調査校 としてS県内のF小学校 に協力を頂 いた。調査期間は、平成 14 年 4月 よ り翌年 3月 まで の 12ヶ 月間で あ った。F小学校教師 の中か ら、A教諭 に く研究参加者 (participants)0〉 となっていただき、研究内容及び方法についてのオ リエ ンテー ションを行 い、本研 究 に対する理解を得てか ら、研究実践 に取 り組んだ。

研究実践は、二重の取組みの もと行 った。

一つは、く子供 に理を与える〉授業実践後の省察活動を中心 に、教育実践を参与観察法 (=現地参加 観察法0)により追 った フィール ドワークである。授業実践後の省察活動では、授業時の ビデオ記録 を連続再生 しなが ら、子供の表れについて、授業時及 び授業後 に見取 った ことを自由に話 して もらう

行為 (実)の後の省察〉に主眼を置 くVTR再生法を取 り入れた。VTR再生法では、授業実践時か らの時間の経過 により、記憶の忘却や思考・判断の再構成化などのバイアスが入 るという難点がある。

しか し、教育現場では、主 として自己の行 った授業 に基づ き授業研究が行われ るため、授業実施後で きるだけ早 く省察活動を行 うことに留意 しつつその方法を採用 し、その省察活動の会話記録及 びその 省察活動後 に自由記述 して もらった記録を蓄積 した。 また、この省察活動は、基本的に2ヶ月に1度 の ペースで行 った。 さらに、学級経営案や学級だより、学級経営に対する各教師の願いを聞 き取 ったイ ンタビューな ども収集 した。加えて、放課後の時間な どを利用 して子供の表れについて話 し合 うな ど して、イベ ン トサ ンプ リングした。

この フィール ドワークの実施 にあたっては、基本的に箕浦康子の く仮説生成法によるエスノグラフ ィー作成〉 の手法を参照することに した0。 仮説の枠組みに基づ き検証す る仮説実証法 と違 い、仮説 生成法では、実践力発達 の様子を事実 に従 い柔軟 に追 うことがで きると考えたか らである。ただ し、

箕浦が述べ る仮説生成法の手順 とは、幾分違 いがあることも補足 しておきたい。

仮説生成法では、全体観察等 による リサーチクエスチ ョンの設定、 リサーチクエスチ ョンに基づ く 観察ユニ ッ ト作 り、観察ユニ ットを注視する焦点観察、観察ユニ ッ トにおける事象を捉える分析 カテ ゴ リーの抽出 (理論的サ ンプ リング)、 分析 カテゴリーに基づ き事象を捉える選択的観察、エスノグラ フィー作成 という手順を基本的に踏む。 しか し、先 に述べた研究 テーマ (=リ サーチクエスチ ョン)及 び、授業を中心 に した く間主体的対話的実践力〉変容・ 発達への注 目というユニ ッ トがすでにで きて いる本研究では、そのユニ ッ トでの焦点観察か ら始めるフィール ドワー クとな った。

また、この仮説生成法の補助的取組みとして、研究の開始時 と終了時に、く教師の仕事〉というキー

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ワー ドで、概念地図を書 いていただき、教職概念の変容を追 うことに した。別惣淳二 は、教育実習時 に実習生が概念地図を作成 し、事前 0事後 とでマ ップを比較 してその違 いを語 ることは、学習者の自 己評価 ツール及 び、指導者の評価 ツールとして有効性があることを示唆 している(1°。 もちろん、 この 手法は、教員養成課程の実習活動だけでな く、現職教師の場合 に も援用で きるもの といえるだろ う。

そこで、本研究 において も、仮説生成法の補助的取組みとして、概念地図法を取 り入れ ることに した。

一方、 この フィール ドワークの内側では、同時に もう一つの取組みが進んでいった。 それは、授業 改善 に向けたアクションリサーチである。

子供 に理 を与える〉反省的実践は、現場での現実の教育実践その ものである。当然、く子供 に理を 与える〉取組 みは、それだけで完結するのではな く、その省察活動か ら授業 における問題が名づけ ら れ再構成 され (=naming and refleming)、 授業改善への取組みが進行することになる。 このアクショ ンリサーチ研究を研究参加者 と共 に進めていったのが二つ目の取組みである。つま り、 フィール ド ワークの面か ら言えば、 アクションリサーチ研究 自体を対象化 した フィール ドヮークを行 うという方 法だ ったとい うことができる。

したが って、 フ ィール ドヮーカー と しての立場 は、研究参加者 の実践活動への く完全 な参与者 (complete participation)(11)〉 をめざす試みを進めたということができるだろう。

資料間主体的対話的実践力形成過程 を探 る実践的研究の進め方及び経過

フィール ドヮーク及びエスノグラフィー作成 アクションリサーチ研究 4

オ リエ ンテーション(研究目的及び計画説明)

第 1回概念地図作成

学級作 りの願い等の聞き取 り

・窓口教科決定

・窓口単元決定

・ アクションリサー チの 日常的実践 (問題→解決への 方策0計画→実践

→反省)

5 ・第 1回授業研省察活動記録 (VTR)収

・ イベ ント記録収集・ 日々の経営の記録等の収集

・授業研1(21日実施)

・省察活動(21日 実施)

6 イベ ン ト記録収集・ 日々の経営の記録等の収集 7 0第2回授業研省察活動記録 (VTR)収

,イベン ト記録収集・ 日々の経営の記録等の収集

・ 授業研2(3日実施)

・ 省察活動(6日実施) 8

・授業研に基づき、実践力の変容について参加者 との共 同分析

・ エスノグラフィー作成

1学期の成果 と2学期の教育 実践の課題

9 ・イベ ン ト記録0日

々の学級経営の記録等の収集

・分 析 カ テ ゴ リーに基づ く 選 択 的 な 注 視。

・ アクションリサー チの 日常的実践 (問題→解決への 方策0計画→実践

→反省)

10

3回授業研省察活動記録 (VTR)        .

イベ ン ト記録収集

日々の学級経営の記録等の収集

・ 授業研3(2日実施)

・ 省察活動(2日実施)

・ イベ ン ト記録

0日々の学級経営の記録等の収集 12

2回概念地図作成

実践力の変容に関する共同探究 エスノグラフィー作成

・ イベ ン ト記録

0日々の学級経営の記録等の収集 2 ・イベント記録

・ 日々の学級経営の記録等の収集 3

・第4回授業研省察活動記録 (VTR)

→仮説生成

・ エスノグラフィー作成

・ 授業研4(10日実施)

・ 省察活動 (28日 実施)

(5)

.A教諭のエスノグラフ ィー及び分析

1.授業後 の省察活動 を中心 にしたA教諭のエスノグラフィーとその分析

(1)子供の学びと自己との間に際立つ差異 と、共有できる学びを生み出そうと努めるA教諭の姿 (第 1回 目調査段階)

5月 21日 に第 1回 目の調査を行い、授業研及び事後研を実施 した。事後研は、VTR再生法を用 い、

授業時 に、子供の表れに対 して どのような ことを考えていたのか、すなわち、子供 にどんな理を与え ていたのかを中心 に発話す るよ うお願 い した。私 は、基本的 に聞 き手 とな り、質問等 は極力抑えた。

ただ し、内面 の思考 (省)が発話 につなが らない場合 も考え られるため、沈黙が続 く場合 には、適 宜 どんな ことを考えているか促す質問を時にす ることもあった。事後研 は、二人のみで行 った。事後 研の全体を後方 よリビデオで撮 り、その記録を収集 し、エスノグラフィーの資料 とした。

また、授業記録の ビデオが終了 した後 もビデオを回 し続 けた。 これは、 ビデオによる省察活動が終 了 した後の現在、 どういう考えを もっているかを記録するためである。 この時は、聞 き手である私 も

A教諭の省察 に対 して、意見を述べ、疑問点は質問 した。 この時の意見交流の中で、A教諭 自身の省察 を見取 った私 の認識の誤 りや不備を指摘 していただ くと共 に、具体的な子供の表れの理解や教師の取

り組み方 について、互 いに研修を深めることができた。

このような過程を経て行 った授業後の省察活動 において、A教諭が子供の学 びの中に入 り込み、授 業で生起 している出来事・ 状況に没入 して、間主体的対話的実践ヘアプローチ してい く過程が観察 さ れた。すなわち、子供の学 びの展開 と教師の描 く展開 との間に生 まれる差異 に対 して、教師が共有で きる学 びを生み出そ うと努 めるところに立 ち止 まりが起 こるという出来事が観察 されたのである。

この出来事 は、く差異か ら共有のベク トルを相互の学びに導 き出す〉 ところに、〈間主体的対話的実 践〉実現の大 きな難関があ り、教師にとって自己の く間主体的対話的実践力〉伸長の一つのハー ドル とな っていることを物語 る典型例だ と考え られた。実際に、く子供の学びとの間に生 まれる差異〉に関 わ って、授業展開時や生徒指導時等 においてA教諭の立 ち止 まりが観察 されることが頻繁 にあった。A

教諭 自身 も、 その点 について次のように語 っている。

○指導書 とか読 めば、一般的 にどうすればいいか とい う流れは、だいたい自分 な りにつか め るんだ けど、難 しいのは、 どう自分たちの クラスに合 った授業 に して行 くか とい うと ころ……。 自分の組 には、 自分の組 の流れがあって、一時間一時間の授業で も、思 った ことと違 ういろいろな表れがあって……。で も、最近 は、突拍子 もないのを楽 しむよ う に して いる。 ああ、 そ うい う考 え もあるのか って。ただ、研究授業なんかで、 そ うい う の出て くると、やばいな って感 じだけど……。

そ こで、 この時の授業後の省察の記録 に触れなが ら、 この 〈教師 と子供の学 びの差異への立 ち止 ま り〉 について、 まず詳述 してみたい。

教材 には、立原道造の「 ガラス窓の向 うで」(光村図書5年2002年)を取 り上 げた。

VTR再 (すなわち、授業開始時)と同時に省察活動 に入 った。その省察活動の様子 について抜粋 して以下 に提示する。VTR上では、子供たちの一斉音読が終わ り話 し合 いが開始 された直後 (授業開 始か らは約6分経過時)から、話合 いが終了するところ (授業開始時か らは約25分 30秒経過)までの 20分間の発話記録である。

(6)

省察活動の発話内容 (A〓A教諭、 Y=山)

資料2 5月 21日実施 A教諭との授業後の省察活動の記録 (抜)

なぜ この子を指 したか って言 うと、わ りと珍 しい子だか ら (笑)

この子 もそ うだね。

沈黙 (約1分)

この子 もいいこと言 ったなって思 ってた。やさしいって。

これ、 この発言? うん。

この子 もいいなあって思 って、板書 しちゃったっけ。

沈黙 (約40秒)

お もしろいこというねえ。雨ならす ごいことになっちゃうって。

沈黙 (約40秒)

このあたりは特に、 ふんふん って感 じ?

だか ら、それぞれが どう感 じたかを言わせて、やっば りあそこの二行をどうとらえるか、

そ こへ もって きたいなあって思 ってたか ら……。やっば、そ こが この詩の一番読みどこ ろっていうか……。 どう読むかで しょ、あそこを。

沈黙 (約40秒)

題名の所 にね、日をつけたんだよね。俺つなが って もいいなあって思 ったんだけど。

ふ うん。

これ、ち ょっと例えばって言 ったんだけど。

なんか さ、その子の生活が出て くればといいなあと思 ってさ。わた しっちだった ら、ガ ラス窓の向 こうか ら橋が見えるよとかさ……。作者は、朝が小鳥 とダンス したのが見え たけど、おれ っちは違 う、 こういうのが見えるよとかさ……。それぞれの朝が出て くる といいなあと。

沈黙 (約30秒)

この時は、はあ一って感 じだったんだ? え っ、(子供は)なんて言 ったの?

窓の外 にお天気、空が見えたって言 ったんだよ。青い空。

ああ一っ。

沈黙 (約50秒)

比喩の こと言おうとしたのかなあ。

これをさ、そうN君が この子のをこうじゃないかなって言 うんだよね。す ごくいいなあ って思 ってさ、支え合いの……。

沈黙 (約30秒)

メルヘ ンチ ックだって言いたいと思 うんだけど…違 うのかな。

ああ―。

不思議 じゃん、朝が′卜鳥 とダンスす るなんて。

沈黙 (約50秒)

それをK君は、言いたかったと思 うんだよ。朝がダンスしてるのはお もしろい。それを

N君は不思議だって言 うで しょ。つなが ってんだよ。

沈黙 (約45秒)

(今発言 している子は、)見えたことをそのまま詩に書 いたっていったよね、今。 さっき

(の)はさ、想像 して書いたって言 ったよね。そのへんがね、なんかひっかか ってたん だよ、ず っと、授業や りなが ら。後で、その後 (の子)も 想像 して書いたって言 ったんだ けど、全然見てないところで、作者見てないところで、想像 してこの詩を書いたって誤解

しているのかなって思 ったこの子 っち。

ほお―ん。

……俺の解釈だと、作者は、自分の家の中で、ガラス窓の向こうに、小鳥 と朝がダンスし ているように見えた、それを詩に表 したってなるんだけど、だか ら想像 って言われちゃ うとさ、なんか違 うところで、例えば、夜、自分の部屋の中で書いたっていうような解釈 して る子 もいるのかなあっと思 ってそこがどうしたらいいのかなあっていう迷いがあっ たね。

そ う、こいつまたなんかちょっと違 うこというよね。M君 沈黙 (約35秒)

○授業 開始 か ら約6分 音読が終了 し子供 たちの 話 し合 いが始 ま って約1 分後か ら。

○授業開始後約8分Ю 秒 後、子 ど もたちの話合 い が開始 されてか ら、約 3 分 40秒 後

○話 し合い開始後「 ガラ ス窓の向 こうに他 に も何 か見えそ う」 とい う子 ど もの発言 に「 例 えば?」

と切 り返す 自分の姿を見 て。

○途中で発言内容がわか らな くな り着席 した子の 姿を見て。

○話合 い開始後約15分 20秒後。景色は、想像か 見えていた ものかにつ い て、教師が問いかけてい るところ。

(7)

M君は、なんて言 ってるんだっけ。

M君は、見えたものを書いたん じゃないって、言 った しょ? そ うそ うそ うそ う。

想像 して書いたって言 った しょ。俺、それ違 うなって思 ってたんだよ。

このへんで ぐちゃぐちゃしてるんだよね。

この子が朝の解釈を広げて くれたよね。朝 と小鳥の……ことで息詰 まって るときに、朝 っていうのは、太陽だ、朝 日だっていうのが、そこか らこの朝の風景が広が ってる。た だ、漠然 としていた朝が、朝 日とダンス してるとか朝の空気 とダンス してるとか後か ら 誰かがいったけど。朝の解釈を広げて くれたと思 ったっけ。

沈黙 (約1分間)

自分の、あれ しょ、家か ら見えたもの言 ってるで しょ。¨…。自分の体験 と重ね合わせて、

こういうのが もっと出て くりゃいいなあって この時思 ってたよ。

ここまた、朝の解釈を広げてるね。

沈黙 (約1分20秒)

このへんは?

このへんは、何考えてたんだろ ?… …感心 して聞いてたよね。自分がイメージわかなか ったか ら、朝 日とか空気 とかさ、出てきて、なるほどなあって感 じで聞いていたよ。

またここで、想像 って言葉が出てきた。なんかひっかか ってんだよ、自分で。

沈黙 (約1分 間)

自分の解釈 と子供たちとずれてるなって思 って、(発間に出た)。 Aさんは、想像 じゃないと。

日に見えて るものを詩に歌 ってると思 ってたか ら。想像 っていうとさ、見えてないのに、

自分で頭の中で思 い浮かべて書いて るってさ、勘違い してる子 もいるかな って、作者が どこにいたの とかさ、余計なこと聞いてるんだけど。

沈黙 (約15秒)

子供 っちは、見えてるんだよね。見えてるって言 って るんで しょ?こ この時点では。

見えて るって言 って るねえ。

わか ってないよ。

わかんな くなってる? わかんな くなってる。

結局 さ、座席表 とってさ、子供 っちのさ考えとか把握 してない しさ、浅 いか ら……。わか ってれば、 もうちょっと誰かにつ っこむこともできたか もしれないし……。

○話 し合い開始後、約 20

○太陽の方を向いて想像 した とい う発 言 を 聞 い て、想像 ?と 切 り返 して いるところを見て。

○景色は想像か どうかを 子供 たちに切 り返 して い

る。

○話 し合い終了。話 し合 い開始 か ら、約20分30 秒。授業開始か ら約 25分 30秒 後。

い 。

授業 における話合 い開始 されて約3分 40秒か らおよそ4分 40秒後にあった次の発話を取 り上 げた

○だか ら、 それぞれが どう感 じたかを言わせて、や っば りあそ この二行を どうとらえ るか、

そ こへ もって きたいなあ って思 ってたか ら……。や っば、 そこが この詩 の一番読 み どこ ろっていうか……。 どう読むかで しょ、 あそこを。

○なんか さ、 その子 の生活が出て くればといいなあと思 って さ。わた しっちだ った ら、 ガ ラス窓 の向 こうか ら橋が見え るよとか さ……。作者 は、朝が小鳥 とダンス したのが見え たけど、 おれ っちは違 う、 こうい うのが見え るよとか さ……。 それぞれの朝が出て くる といいなあと。

続 いて、数回の沈黙を挟みなが ら、次の発話がある。

○比喩の こと言お うとしたのかなあ。

○ これをき、 そ うN君が この子のを こうじゃないかなって言 うんだよね。 す ごくいいなあ

(8)

って思 ってさ、支え合いの……。

○ メルヘ ンチ ックだ って言 いたいと思 うんだけど…違 うのかな。

○不思議 じゃん、朝が小鳥 とダンスするなんて。

○それをK君は、言 いたか ったと思 うんだよ。朝が ダンス して るのはお もしろい。 それを

N君は、不思議だ って言 うで しょ。つながってんだよ。

両者の発話の変化 に注 目したい。話合い開始 3分40秒か ら4分40秒後 に発話 された内容は、A教 側か ら見た授業構成の意図、あるいは子供の発言内容 に対する期待や願 いということがで きる。恐 ら

く、その前後 においては、詩の最後の二行に関する発言がいつ どのように出て くるか という教師側の 意図や願 いか ら見 る視点での省察 に重心がかか っていたのではないだろ うか。

ところが、発言内容がわか らな くな り途中で着席 した子の姿を見たあたりか ら、急激に発話内容が 変わる。子供の発言の意図、関係性、価値を省察する内容に重心が移 っていくのである。

さらに、 その発話か ら45秒ほどの沈黙をおいて次のような発話へと重心が移動する。

(今発言 している子は、)見えたことをそのまま詩 に書 いたっていったよね、今。 さっき(の)

はさ、想像 して書 いたって言 ったよね。そのへんがね、なんかひっかか ってたんだよ、ずっと、

授業や りなが ら。後で、その後 (の)も想像 して書 いたって言 ったんだけど、全然見てない ところで、作者見てないところで、想像 して この詩を書いたって誤解 しているのかなって思 っ た この子 っち。

○俺の解釈だ と、作者 は、 自分の家 の中で、 ガラス窓の向 こうに、小鳥 と朝が ダンス して いるよ うに見えた、それを詩 に表 したってなるんだけど、だか ら想像 って言われちゃう とさ、 なんか違 うところで、例えば、夜、 自分の部屋の中で書 いた っていうよ うな解釈 して る子 もいるのかなあ っと思 ってそ こが どうした らいいのかなあ っていう迷 いがあっ たね。

○想像 して書 いたって言 った しょ。俺、それ違 うなって思 ってたんだよ。

○……感心 して聞いてたよね。 自分がイメー ジわかなか ったか ら、朝 日とか空気 とかさ、出て き て、なるほどなあって感 じで聞いていたよ。

○ 自分の解釈 と子供たちとずれてるなって思 って、(発間に出た)。 ……

○わかんな くなってる。

これは、子供の発言の意図・ 関係性・ 価値の省察をするメタ的な思考を越えた ものだと言える。子 供の学 びに耳 を傾 け、子供の学 びと同値 に並び、子供の学 びと自己の学 びを交流・ 対話 させ る形で省 察が進んでいる。

この省察の重心移動の間にある沈黙は、自己の授業構成の意図、あるいは子供の発言内容 に対す る 期待や願 いという面での省察に重心が置かれた時の沈黙 と全 く意味が違 っている。すなわちここでの 沈黙は、子供の発言を味わい鑑賞 し(appreciation)、 自ら子供の発言の中に入 っていく沈黙だ と言え るのではないだろ うか。

一言で言えば、この現象は、く状況への没入〉ということになるだろう。 ドレイファスは、看護婦の 看護実践をエスノ分析等 しなが ら、専門家 (expart)ま での5段階モデルを提示 し、プロ (第四段階)

及 びエキスパー ト(第五段階)が実践の中に く没入〉 し、仕事を遂行 していくことを明 らかに してい

(9)

(2L A教諭 に関 して も、̀子Iの発言の意図・ 関係性 0価 値の省察を進 めるうちに、子供の学 びの中に 自らも入 り込 み くわた し一 あなた〉〈主一主〉 という関係性の中で、子供の発言 を味わい鑑賞 しつつ、

子供の見方 と対話を しなが ら、授業 の組織化・構成を図ろうとしていると言えるのではないだろ うか。

この後、A教諭の省察は、次のように続 く。

○結局 さ、座席表 とって さ、子供 っちの さ考え とか把握 してない しさ、浅 いか ら……。わ か ってれば、 もうち ょっと誰かにつ っこむ こともできたか もしれないし……。

この詩 は作者の想像ではないか という予想外の見方が子供たちの間か ら出される中で、それへの動 的対応、意味 のある授業の動的組織化が うまくできなか った自分 自身に問題意識を感 じて、 その対応 への手段 として、 さらに子供の認識を知 ることが重要だと省察 しているのである。 これは、子供の学 びへの没入が 自発的に起 こり始めたか らこそ、生 まれた省察だ と考え られる。すなわち、子供の発言 を味わい鑑賞 し、子供の学 びと自分の見方 との対話が始まり、子供の学 びへの没入 し始めた中で、逆 に子供の学 びとの距離感・ 差異を直感的 に感 じ取 り、その差異性が埋め られないまま、引き続 きの子 供の学 びへの没入 と共有化へのベ ク トルを生み出す柔軟な対応が十分にできないことを省察 している

と言える。

この ことか ら、A教諭が授業を、 まさしく 〈間主体的対話的実践〉 と認識 していることが理解で き た。 また、A教諭の省察か ら、子供の学 びの中に没入 し、差異か ら互 いに意味があると考える学 びへの 共有のベ ク トルを授業の中に生み出す ところに、く間主体的対話的実践〉の一つの難 しさがあることが わか る。

ここで さらに特筆 すべきなのは、共有のベク トルを生み出すために、A教諭が一般化 された方法論 で次の対応を図ろ うとしていない点である。〈もうちょっと誰かにつ っこむ こともできたか も……〉と いう語 りか らわかる通 り、授業の展開を、あ くまでA教諭 自身 と子供間の間主体的対話 に還元 して、次 の取 り組みを創 り出そうとしている。また、共有のベク トルを生み出せない原因を、子供の学 びに一 方的に還元 して しまっていないところも重要である。〈読む力がない〉などと、子供の学 びに原因を求 め、 自分 と子供 ときり離れたところで この事態を理解 しようとはせず、あ くまで間主体的対話に還元 しよ うとしている。 この志向性か ら、 さらなる子供理解の必要性の認識が生 まれているのであ り、子 供に理を正 しく与えつつ、動的に不確実 に進行す る授業 に没入 し、次の展開を柔軟 に組織す る実践力 を求 める衝動が、教師の内面に育 まれていると言えるのである。

(2)教室の外 との対話的関係性成立へ向けて課題意識 をもつA教諭の姿 (第2回調査段階)

A教諭が く間主体的対話的実践〉の実現を意図 し、学級の子供たちと取組みを進め、子供を知 り子供 との対話的関係性が徐々に構築 されてい く中で、今度 は、教室の外 との対話的関係性 に立 ち止 まる動 きが観察 された。7月 3日 に、矢野哲治著「海 にねむる未来」(光村図書5年 2002年)を教材 に授 業を実施 し、同 6日 その授業の事後研を行 った時の ことである。VTR再生法 に基づき、授業 ビデオを 見なが ら同時 に省察活動を行 った後の省察活動、つまり、く授業 についての省察〉を行 っていた ときに それは観察 された。

以下 に、その時の省察の記録を抜粋 して提示する。

(10)

資料3 7月 6日 実施 A教諭との授業後の省察活動の記録 (抜)

発話者 省察活動の発話内容 (A=A教諭、 Y=山) 備考 (授業展開等)

A

文章か ら離れちゃいけないなっていうのはあったね。頭の中に。環境の話に行 って、赤 潮だ、プランク トンだ っていうのがあったけど、あんまりその方向ばっかいっちゃって もまず いだろ うなって思いなが ら、聞いていた子供の話を。あんまりそっちの方向に行 っちゃうようだったら文章に返さなきゃって思 ってた。

あのへん、い くつか意見が出たけどさ、0君が整理 した じゃん。あのへんについて、Aさ 自身 どう思 ってたの ?い くつか出たところで。

ひとつひとつ全 くその通 りだなって思 って聞いてたけども、で も(座席表に)書いてある こと言 ってるだけだか ら、正直お もしろ くはないなって聞いてた。なんか こう、 自分の 言葉で、もうち ょっと文章は文章でいいんだけど、それをそのまま伝えるん じゃな くて、

なんか こう自分の言葉に置 き換えたりだとか、 もっと子供 らしい言葉で言 って もいいの になあって。

ああ。○○ って書いてあるか らこうだと言 ってるだけだと。

そ うそ うそ うそう、書いてあるか らこうだと言 ってるだけだか ら、お もしろ くはなか っ たね。確かにその通 りだと思 っていたけど。

そ ういう気持ちでいたんだね。それがお もしろ くなってきたのは?

や っば、0君が、ぼ くは、こう思 うんだけどって言 った ところ、一つには決められないと 思 うけどっていう、それは、0君の言葉 じゃんねえ。で、おれ も聞いているうちに、や っ ぱわかんな くなってきたのよね。 どれが筆者の一番言いたいことなのかね。13、 14段 落 のとくに、14段 落のところは、眠 ってるっていうの もそうだ し、……生 きるための知恵 とか。・¨・。

生 きるための知恵がた くさんあるとか。

そ うそ う。

で、やっぱ り、ん一―、つい環境問題 と結びつけちゃってたんだけど、自分の中では、教 材解釈 として。だか ら海の中にそういう宝がいっぱいあるよ、で、まだ、眠 ってるんだよ で終わ ってるけど、だか ら、みんな海をきれいに しようとかね、環境大事だねとか、環境 これか ら、うん、守 っていこうよ、21世紀の子供たちに守 っていっては しいよってぃぅ、

そ うい うものが、矢野 さん っていう人の中には書いてないけど、あるのかなって思 って たか ら、そ ういう考え方が出て くるといいなあって思 ってた。

で もあの、違 う見方が出た ときに、広げていこうとしてるじゃない。あのへんはどうな の。協力 しろとかさ。

それ もいいと思 った、す ごく。俺の中にはなか ったか ら。全然。協力 していこうとか。

そんなんなか ったか ら。で、宝探 し、実際にそれ じゃどういう形で協力で きるのかね。

みんな海に潜 って海綿探すのかね。そういう子供 らしいのが出て くるかなって思 ったけ ど。あの一、結局や っぱ自分たちにできることは何か って考えると、ゴ ミを捨てないと かさ、守 っていこうよとか。そこらへん来たかなって。なんかこう自分の生活に、この 文章を きっかけに して 自分の生活をもう一回見つめ直す事ができるのかなって、それは それでいいなって思 ったけども

…中略…

・…¨(環境問題 について考えたいという自分の)考えが影響を及ぼ しちゃってるってい うか、環境をクローズア ップさせす ぎちゃったかなっていう考えがなきに しもあらず。

環境 に行 って良か ったかどうか。

自信がないね、それでよか ったのか。

それだ もんで広げられたのかな。ず っと授業の中で もそんな動 きもあったのかな。迷 い というかさ。

授業の中では、迷 いはなか ったけど、本当に筆者のメッ セージってなんなのかなって改 めて考えてみると、環境、書いてないわけじゃん。書いてないことを子供 っちに話 し合 いさせて しまって良か ったのかなっていう。環境のかの字 も書いてないんだよ、あの説 明文の中には。ただ、自分がそこまで考えていたか ら、それでT君がいたか ら、これお も

しろいと思 って、広げたいなってやっちゃったけど、それでよか ったのかどうか。

T君をね、ひとつのポイン トにしてたんだ。

そ うそ うそ う。あれでで もK君が変わ った し、D君も活躍できたか ら、それはそれで良か ったんだけど、 この教材の最後の授業 として、あれで良か ったかどうかやや疑間です。

自信はないです。

○授業VTRを見 なが ら 同 時 に 行 う省 察 活 動 (reflection in action) が終了 した後の、授業 に つ い て の 省 察 活 動 (reflection on action) 時か ら。

○筆者の言 いたいことは 何か とい う学習問題 で話

し合いは行われた。

○海 には、宝物が眠 って いるとい う考え方や生 き るための知恵が あるとい う考 え方、環境問題 につ いて考えてほ しいとい う 願 いがあるとい う考え方 等が出された。

OA教諭は、T君の「環境 を守 ってほ しいと言 って いる」 とい う考え方が中 心の追究問題 になるので はないか とい う見通 しを もって、本時に臨んだ。

○厳 諭 自身 も、T君の見 方 につ いて話 し合 う動 き をつ くろ うとして、子供 たちに働 きかけを した。

(11)

「海 にねむる未来」は、'3人の生物学者の研究の取組みを事例に、サメや海綿、力え トガニなどの海 の生物か ら、人類 に役立つ薬品の開発が続 けられてお り、今 も海 には、 まだ未発見の宝が眠 っている

という要 旨で構成 された説明文である。

この教材 に対 して、A教諭は、事例 として挙げ られた二人の研究者の取組みを丁寧 に読み取 ると共 に、最終段落の筆者の主張 に対する子供一人ひとりの読み (その子な りの見方・ 考え方)を交流 させ ることを意図 して、授業づ くりに取 り組んだ。 その うち、授業研究には、筆者の主張に対する一人 ひ とりの読みを交流する単元終盤のところを選んだ。

この授業 に関 して、A教諭は、海にねむるという筆者の主張を く環境保護〉の視点 まで拡張 させて捉 えたいという考えを もち、座席表作成を通 して把握 した「筆者は、環境を守 ってほ しいと言 っている」

とい うT君の見方 を、授業づ くりの柱 に据えることを意図 していた。 これは、く宝物が海 に眠 ってい る〉という筆者の言葉か らすると、かな り発展 させた読み方だ と言える。 しか し、だか らといってA教

諭 は、 そこへの発展を性急 に求めることは していない。子供の発言 に対 して、柔軟な対応を している ことが授業 についての省察の次の発話か らわかる。

○文章か ら離れちゃいけないなっていうのはあったね。頭の中に。環境の話 に行 って、赤潮だ、

プランク トンだ っていうのがあったけど、あんまりその方向ばっかいっちゃって もまずいだろ うな って思 いなが ら、聞いていた子供の話を。 あんまりそっちの方向に行 っちゃうよ うだ った ら文章 に返 さなきゃって思 ってた。

○ ひとつひとつ全 くその通 りだなって思 って聞いてたけども、で も (座席表に)書いてあること

言 って るだけだか ら、正直お もしろくはないなって聞いてた。なんか こう、 自分の言葉で、 も うち ょっと文章は文章でいいんだけど、 それをそのまま伝えるん じゃな くて、なんか こう自分 の言葉 に置 き換えた りだとか、 もっと子供 らしい言葉で言 って もいいのになあって。

この発話か ら、筆者の主張を組み入れた く教師一子供一筆者 (教)〉 の三項関係で内容を考えてい く必要があること、子供 自身 も自己の内面を通 し、認識 と態度が結 びついた上での言葉で語 ることを 求 めていることが見て取れる。すなわち、子供が対象 (教)との対話、自己との対話を行いつつ、間 主体的に自己の考えを作 り上 げてい くことを求めているのであ り、また、その上で、A教諭 自身 も間主 体的に子供 との対話、対象 との対話を成立 させ、真実の追究に共に没入 したいと考えているのである。

しか も、 この没入を伴 う対話的実践 は、事実 として成立 してい く。

○や っば、O君が、ぼ くは、こう思 うんだけどって言 った ところ、一つには決め られないと思 うけ どっていう、それは、O君の言葉 じゃんねえ。で、おれ も聞いているうちに、やっぱわかんな く なってきたのよね。 どれが筆者の一番言 いたいことなのかね。13、 14段落のとくに、14段落の ところは、眠 ってるってい うの もそうだ し、……生 きるための知恵 とか……。

○で、や っば り、ん――、つい環境問題 と結 びつ けちゃってたんだけど、 自分の中では、教材解 釈 として。だか ら海の中にそうい う宝がいっぱいあるよ、で、まだ、眠 ってるんだよで終わ っ てるけど、だか ら、みんな海をきれいに しようとかね、環境大事だね とか、環境 これか ら、 う ん、守 っていこうよ、21世 紀の子供たちに守 っていってほ しいよっていう、そ ういうものが、矢 野 さん っていう人の中には書 いてないけど、あるのかなって思 ってたか ら、 そ ういう考え方が 出て くるといいなあって思 ってた。

(12)

○…… (環境問題 につ いて考 えたいとい う自分の)考えが影響を及 ぼ しちゃって るってい うか、環境をクローズアップさせすぎちゃったかな っていう考えがなきに しもあ らず。

○授業の中では、迷 いはなか ったけど、本当に筆者のメッセー ジってなんなのかなって改めて考 えてみ ると、環境、書 いてないわけじゃん。書 いてないことを子供 っちに話 し合 いさせて しま って良か ったのかな っていう。……自分がそこまで考えていたか ら、それでT君がいたか ら、

これお もしろいと思 って、広げたいなってや っちゃったけど、それでよか ったのか どうか。

子供の学 びの文脈に入 り込んでい く中で、く環境保護〉にまで筆者の主張を広げて考えようとした自 身の授業の取 り組み方 に迷 いが生 じそれを省察する発話が続 いている。 この省察は、O君の「一つに 決め られない」 という見方 を始めとした子供たちの発言及 び筆者の言葉を、 自己の見方 と対話 させ摺

り合わせ る中で、 自己の考えが相対化 され生まれてきた ものだといえる。

ここで重要なのは、 この省察が子供の学 びとの対話だけでな く、教室の外 にいる存在である筆者 も 含めた三項関係 に基づ く対話に基づき行われている点である。〈教室の外 にいる人たちは、筆者の主張 を どう読むか。筆者 自身は、何を伝えたいというのか〉 という く子供― 自己一教室の外にいる他者一 般あるいは筆者〉 という三項関係の中での省察 ということである。

間主体的対話的実践〉は、社会における文化的実践 との整合性 も求め られるものである。教室 にお ける教育実践が教室の中だけで留まる閉 じた系ではな く、教室の外に対 して も対話的 に開かれてい く ことが必要である。 このことをA教諭 は、子供理解を中核にした これまでの実践の中で、実践的知識 として習得 し、 自己の取組みの中に根づかせていると言えるだろ う。

この結果、A教諭の省察 は、くこの方法・ 内容なのか〉 という枠組みの省察 になっている。

専門家像を技術的熟達者 として考える教育実践では、省察は主 に、くこの方法・ 内容で、いかにで き たか〉 という枠組みとなる。 この枠組みでは、その方法を用 いるまでや本時における子供の学 びの文 脈を軽視 し、 その方法の選択に至 った目的、扱 う学習内容を批判的に問 うまなざ しを排除 している。

しか し、く子供 に理を与える〉中での く間主体的対話的実践〉では、A教諭の省察か らもわかるよう に、子供の学 びの文脈の中に教師 自身 も入 り込み、く=主〉関係の中で対象を共 に認識 しよ うと努め る中で、初めに立てた目的、方法、内容が相対化 していく。 しか も、その相対化 は、教室の外 (社)

とのつなが りを含めた相対化である。 さらに、 いずれかに絶対的な ものを定位するわけではな く、 自 己の中で、自己と子供 と教室の外にある対象・社会が互 いに相対化 され、真正な学 びの実現 に向けて、

実践は開かれていっているのだと言える。

逆 に、く間主体的対話的実践力〉の形成に向けては、A教諭の省察 にもある通 り、大 きな困難 を伴 う。

自己を子供や対象・ 社会 との枠組みの中で相対化 させてい くことになるか らである。迷 いや葛藤を生 じ、 自己の正 しささえ疑われることもあるか らである。

ある日、雑談の中で「K君の ことをどう思 うか。」と、A教諭 に話 しかけられた ことがあった。K君

は、ビデオによる授業の省察活動の時にも、A教諭がかな り気 にする行為が見えていた子である。K君

は、活発な子で、落 ち着 いて学習 に取 り組むことは、苦手なタイプである。事象を感覚的に捉え、思 った ことを臆せず口にする。 自分の考えに強 くこだわることは少な く、その点か ら言えば批判的に見 よ うと思えば見 られる子だ と言える。

しか し、A教諭 の言葉が意味するものは、くK君をどう理解できるか〉という自己への問いであ り、批 判的にK君を理解するのではな く、 自らの子供理解の枠組みを広げて、K君との く間主体的対話的実 践〉の構築をめざそ うとする姿勢の表れだ と言える。

参照

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