ラ レタイとテモライタイの意味 と用法 に関する考察
熊 井 浩 子
【 要 旨】
本稿 で は Xガ Y二 (Zヲ )Vラ レタイの意 味 と機能 を Xガ Y二 (Zヲ )Vテ モ ライ タイ と
の対比 によって明 らかに した。用例 の比較 では、 ラレタイが共起す る動詞 に大 きな制約が あ り、 Vの 対象 が Xま たは Xと 同一視 で きるZで あ る場合 に用 い られ るの に対 し、 テモ ラ イ タイで用 い られ る動詞 にはそのよ うな制約 はな く、 Xが Vで 表 され る事態 に直接 関わ ら ない場合 に も用 いることがで きるとい う大 きな違 いがあることがわか った。 また、互換性 で は、以上 のよ うな差違 PXや Yが コ ン トロール出来 る事態か どうかや働 きか け性、 イ ン ヴォルヴメ ン トの程度 などの違 いか ら、言 い換 えがで きる場合 とで きない場合があ ること もわか った。 さ らに、見 ラ レタイ と見 テモ ライ タイの比較 によ り、前者 は一方的 に視線 を 向 け られ ることやなん らかの評価 を望 む場合 に多 く用 い られ、後者 は自己の作品などを見 ることを Yに 働 きか ける行為要求 の機能 を持 って用 い られ る場合が多 い ことが確認 され、
ラレタイ とテモ ライ タイの上 の考察が裏付 け られた。 また、 テモ ライ タイの形 で用 い られ るとテモ ラウの用法 に変化 や拡張が生 じる場合があ ることも明 らか にな った。
【キー ワー ド】 ラレタイ テモ ライ タイ 合意 働 きか け 1.は じめ に
「母 が アパ ー トに来 た Jと い う同 じ事態 につ いて述べ る場合、 テモ ラウを用 いた (1)b はそれが話 し手 に とって好 ま しい状況 であ ることを表すのに対 し、受身 を用 いた (1)aは 話 し手 にとって迷惑 な状況であることを表す よ うに、受動態 はときに不利益 の意味を もつ。
しか し、 (2)aObの よ うに、両者 に利益・ 不利益 の対立 が見 られない場合 もあ り、受身 とい う形式 それ 自体 が無条件 に迷惑 あ るいは不利益 を表すわ けで はない。 これ に対 しテモ ラウは、一部 の用法 (1)を 除 いて、話 し手 が その事態 の実現 を望 み、 それを利益 と受 け止 めていることを表 しているとされ る。
(1)a.母 にアパ ー トに来 られた。 /b.母 にアパ ー トに来 て もらった。
(2)a.先 生 に作文 をほめ られた。 /b.先 生 に作文 を ほめて もらった。
一方、希望・ 願望 を表す「 たい」 は平叙文で は通常話 し手がその事態 の実現 を望 んでい る場合 に用 い られ る。だ とす るな らば、例 えば話 し手が「先生が私 (=話 し手 )を ほめる」
とい うことを望 んで いるのであれば、受身 を用 いた (3)aよ りはテモ ラウを用 いた (3)bの 方 が好 まれそ うであ るが、実際 には aの よ うな「受身 +タ イ (以 下、 ラレタイ )」 の用例
も決 して少 な くない。 これ は一体 ど うしてであろ うか。
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(3)a.先 生にほめられたい。/b。 先生にほめてもらいたい。
ラレタイの用法 につ いて は熊井 (2006)の 論考 があ るが、本稿 で は、 テモ ラウとの対比 とい う観点か ら考察 を深 め、 ラレタイの特徴 を明 らか に してい く。 なお本稿 で は今後受身 や受益 の主体 を X、 Vの 主語 を Yと し、 Xガ Y二 (Zヲ )Vラ レル OXガ Y二 (Zヲ )Vテ モ
ラウの形 で表す ことにす る。
2.受 身の意味 と用法
ラレタイの意味や用法 を考 えて行 く上 で、受身 とい う文法形式 が もともとどのよ うな意 味 を表 しているのか、 また、 あ る種 の受身が迷惑性 を帯 びるのはなぜか とい う点 に触 れ る 必要 がある。例 えば「 雨 に降 られて困 った」 のよ うないわゆ る迷惑受身 に典型的に見 られ るよ うに、 もともと事態 に直接関わ りのない、 それ故、事態 自体 を客観 的 に描 いた能動文 には含 まれない第二者が加 わ ることによ って はた迷惑 の意味が生ず るなど、 ある種 の受身 が迷惑 の意 味をおび ることは間違 いない。 しか し、迷惑受身 に限 らず、 (4)aの よ うな直 接受身であ って も、能動文 (4)bに はないマイナスの意味が生 ず ることもあ る。
(4)a。 わた しはバ イ ト先で部長 に見 られた。 /b.部 長 はバ イ ト先 で私 を見 た。
久野 (1983)は イ ンヴォル ヴメ ン トとい う概念 を用 い、受動文 の主語が埋 め込み文 によっ て表 され る行為・ 心理状態 にイ ンヴォル ヴ している度合 いが高 いほどその受身文 は中立受 身 と して解釈 されやす く、 その度合 いが低 いほど迷惑受身 と しての解釈 が強 くな ると説明 す る。 さ らに、柴谷 はこのイ ンヴォル ヴメ ン トの概念 の精密化 が必要 であると し、身体部 分 の中心・ 周辺 とい う区別及 び作用 のイ ンパ ク トとい う観点 か ら、 イ ンヴォル ヴメ ン トに 替 わ る関連性及 び意味補給 による説 明を試 みている。
例 えば (5)aに は能動文 が表す以上 の迷惑 の意 味 はないが、 (5)bは 能動文 にはない迷惑 の意味が含 まれ る。 この aと bの 迷惑性 の違 いはイ ンヴォル ヴメ ン トや関連性 とい う観点 か ら説明で きる。 bの 「 もむ」 に比べれば aの 「刺す」 の ほうが動作 のイ ンパ ク トが強 く、
「私」 が動作 によ り強 くイ ンヴォル ヴされて い ると言 え る。 しか し、 cの 場合 はど うだ ろ うか。 cに は bの よ うな迷惑 の意味 は感 じられない。 bと cに はどのよ うな違 いが あるの だ ろ うか。
(5)a。 私 は駅のホームで突然肩を刺 された。 /b◆ 私 は駅 のホームで突然肩 をもまれた。
c。 私 は駅 のホームで突然肩 をたたかれた。
山内 は Xガ Y二 Zヲ Vラ レルの場合 に、「 Zヲ 」 を省 略 して も文 の意 味が変化 しないか ど うか によ って Xが その行為 を直接 的 に受 けてい るか ど うかを調 べ るテス トを行 ってい る。
山内 自身 は言及 していないが、 Xが その行為 を直接受 けるとい うことは Xが 動作 にイ ンヴォ
ル ヴされ る程度が高 いとい うことになるであろ う。 aは 「 Zヲ Jを 取 って も意 味 は変 らな
いが、 bと cは 「 Zヲ 」 を取 ると意味が変 るない しは文 と して不 自然 とな る。 このテス ト
の結果か ら (6)bと cに おいて は、それぞれ「 もむ」 「 たた く」 とい う動作 は「肩」 に向か っ てお り、直接「私」が受 けていない ことがわか る。 これは aに 比べて b・ cに おいて「私」
が行為 に直接 イ ンヴォル ヴされてい る程度 が低 い とい うことを意味す るであろ う。
(6)a。 私 は駅のホームで肩を刺 された。/a′ 。私 は駅のホームで刺 された。
b。 私 は駅のホームで肩を もまれた。/b′ .*私 は駅のホームで もまれた。
c。 私 は駅のホームで肩をたたかれた。/c′ 。 #私 は駅のホームでたたかれた。 (2) とす ると、 b・ cと もに迷惑 の程度 が高 くな りそ うであ るが、実際 はそ うで はな く、 こ の迷 惑性 の差違 はイ ンヴ ォル ヴメ ン トや関連性 で は説 明 で きな い。 この点 に関 し熊井 (2006)は 、 あ る種 の受身 が もつ こう した迷惑性 の一 つ は、 イ ンヴォル ヴメ ン トの程度 と い う要因 に加 え、受身が、 ある事態が話 し手 の コン トロールで きない形で一方的 に降 りか か って くることを表す表現形式 であ ることか ら生 ず る ものであ ることを考察 した。即 ち、
本来 は Xの 合意 の下 に成立すべ き事象が、 Xの コ ン トロールで きない形 で降 りかか って き た と Xが 捉 え る場合 に、能動文 にはない迷惑感 が出現 す るのであ る。例 えば (6)の bec
で は、 bの 「 肩 を もむ」 とい う行為 は通常 Xが 了解 して行 われ る行為 で あ るが、 cの よ うな注意 を引 くとい う意味での「肩 をたた く」 は通常 Xの 合意 を必要 とせず に行 われ る行 為である。 それ故、受身形 に した場合、 cに は迷惑 の意味 はな く、 bに は能動文 にはない 迷惑 の意味が出て くることにな る。 そ して、 そのよ うな行為が両者合意 の上 で行 われ、 X
に とって望 ま しい事態 であ る場合 には寧 ろテモ ラウをつ けるのが普通 とな る。
(7)a。 私 は駅 のホームで肩 を もまれた。 /b。 私 は駅 のホームで肩 を もんで もらった。
逆 に、 イ ンヴォル ヴメ ン トが低 くな く、通常 Xの 合意 な しに一方 的 に成立す る事態 の場 合 には、受身 とい う形式 を とった ことだ けで迷惑 の意味が生 ず ることはない。例 えば (8) で、 aの 「英語 を教 え る」は通常 Xと Yの 合意 の下 にな され る行為 であ るが、 bの 「意外 な 事実 を教 え る」 は Xの 予期 しない状況 で成立 す る。 それを受身形 に した aに は迷惑 なニ ュ
ア ンスがあ り、 bに はそれがないの は このためであると考 え られ る。
(8)a。 私 は田中さんに英語を教え られた。 /b.私 は田中さんに意外な事実を教えられた。
3.テ モラウの意味・ 用法
高見・ 久野 (2000)は 、 日本語 で は、あ る行為 によ り人が利益 を受 けて いる場合 には、そ
の行為 とともに利益 を受 けているとい う点 も示すのが常識 とな っていると述べ、機能的分
析 によ って テモ ラウ構文及 びテク レル構文 の差違 につ いて考察 している。 そ して、 テモ ラ
ウは主語指示物が「 二」格名詞句指示物 (本 稿 の Yに あた る )に 働 きか けてあ る行為 や事
象 を引 き起 こさせ た り、 あるいはあ る行為 や事象が起 こることを望 んだ り期待 した りして
いてその事象が起 こり、 その結果、主語指示物 (本 稿 の Xに あた る )が 利益 を得 ることを
示 してお り、故 に利益 を受 ける主語指示物 は、働 きか けた り期待 をか けた「 二」格名詞句
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指示物 に感謝 して いると言 え ると述べ、 その基本的機能 を (9)の よ うに結論 づ けてい る。
一方 テク レル には、「 二」格名詞句指示物 に対 す る感謝 はな く、単 にその事象 を好都合 だ と思 っていることを表 しているにす ぎない ことが テモ ラウとの大 きな差異 であ るとす る。
(9)「 〜 に Vし て もらう」構文 の基本 的機能 :「 〜 に Vし て もらう」構文 の機能 は、 そ の主語指示物 が、埋 め込 み文 によ って表 されて い る事象 によ り、利益 を受 けてお り
,その利益 が「 二」格名詞句 の指示物 のおか げであると考えていることを示す ことであ る。 (P14)
高見・ 久野が指摘す るよ うに 日本語 においてあ る行為 によ り利益 を受 けた ことを明示す ることが常識 であ るな らば、 なぜ話 し手 Xは 自己が実現 を望 む事態 の引 き起 こ し手 に対 し て利益 を受 けた ことを表す テモ ラウを使 わず に、受身 を選択す るのであろ うか。
また、竹林 (1998)は 、 (10)の よ うな例 を挙 げ、 テモ ラウには、益 を及 ぼす ことが授益 者 の意志 によるとは限 らず、 テアゲルや テク レルで言 い換 え ることがで きない、使役的な 用法 もあるとす る。
(10)(ゲ ームを しなが ら )今 日は君 に負 けて もらうよ。 (下 線、竹林 )
(11)社 長 :山 田君 に辞 めて もらう。
しか し、 このよ うな用法 は高見・ 久野 で は説明で きない。熊井 (2002)で は先立つ動詞 の 自己制御性や受影性 の有無、受益か否かなどの観点か らさまざまなテモ ラウの用法 を考 察 し、 テモ ラウが受益表現 を無標 としなが らも、 プ ロ トタイプ的な広 が りを もった用法 で あ ることを明 らか に した。例 えば(10)(11)は 、 それぞれ a。 事態実現要求型 の①意志表 明 的用法 と②命令的用法 にあた るが、 (10)が 要求 と しての効力 はない、強 い意志 の表明であ るのに対 し、 (11)は 相手 に行為 をさせ る効力 を もち うるとい う違 いが ある。 (12)の うち、
(9)に あて はまるのは、 a.事 態実現要求型③依頼 的 と b。 事態実現期待型、 c.単 純受影 型 にす ぎない。 また、意味か ら見 て タイをつ け うるのは aか ら cの テモ ラウであ ると思 わ れ るが、 このよ うな多義性 はテモ ライ タイで用 い られた場合、 どのよ うな形 で現 れて くる のであろ うか。 この点 も考察す る必要がある。
(12)多 様 なテモ ラウの用法 (熊 井 2002よ り )
a.事 態実現要求型 ①意志表明的 例。今回は負 けて もらうよ。
②命令的 例。君 に北海道へいって もらう。
③依頼的 例 .山 田さんに頼んで手伝 って もらった。
b.事 態実現期待型 例 .ず っと待 っていた息子 に帰 ってきて もらってほっとした。
c.単 純受影型 例 .思 いがけない優 しい言葉をかけて もらって嬉 しか った。
d.事 態実現許容型 ①受容的 例。話 したいことがた くさんあ りそ うだ ったので、そのまま自 由に話 して もらった。
②放任的 例 .言 って も無駄だ ったので、す きなようにやって もらった。
e.事 態実現回避要求型 ①否定判断的 例。勝手 な ことを して もらってはこまる。
②反語許容的 例。あなたみたいな人 にやめて もらって もちっとも困 らない。
③反語命令的 例。やれるものな らや って もらお うじゃない。
4。 ラ レタイ とテモライタイ
4。 1 使われ る動詞 の傾 向
熊井 (2006)は 、 イ ンターネ ッ トなどの用例 を もとに、 ラ レタイ と共起す る動詞 やその 用法 を分析 し、 Yが Xの 意図 とは無関係 に行 う行為 を表す動詞、即 ち「見 る」 や「認 める」
のよ うな評価 的行為 や「愛す る」「嫌 う」 のよ うな感情 の働 きを表す動詞、 あ るいは「 い じめ る」「 遮ゝりまわす」 のよ うに XY間 にあ る種 の力関係 が想定 され、 Yが Xに 強 い影響 を 与 え ることを表す動詞 を用 い、 自分 に対 し一方的 にあ る行為 を して ほ しい、 あるいは相手 のいいな りにな りたい とい う状況で多 く使 われていることを明 らか に した。後者 の場合 に は、 自己制御性 と他動性 の高 い動詞 が多 く、 Yが 意図的・ 一方 的 に Xに 影響 を与 え ること を表す ことか ら、場合 によ って は暴力的・ 性的なニュア ンスを帯 びることに もな る。 この よ うな特徴 か ら、 Xが 直接動作 を受 けないいわゆ る迷惑 の受身 とは共起 しに くい ことも明 らか にな った。 この「直接受 けない」 とい う意味 につ いて は後 ほど考察す る。
表 1 ラ レタイ に前接する動詞 *肇 奎 難難 は語彙的被害をもつ語
この 100例 以外 に、雑誌 や イ ンターネ ッ トで 目に した用例 と して、以下 のよ うな ものが あ る。
(13)「 男性 は、高貴 な女性 のために尽 くしたい、支配 されたい とい う願望 を少 なか らず 持 っています。 (後 略 )」
(『週刊新潮 9月 10日 号』 60‑61)(下 線、筆者 )
(14)「 ス トスナ」 されたい男 たち (中 略 )芸 能界入 りの きっか けと して雑誌 に載 りたい とい う若者 や、給料 のすべてを投資す るほど服が大好 きな若者 な ど思 いはそれぞれで すが、 その根底 には目立 ちたい、仲間か ら一 目置かれたい、認 め られたい とい う願望 が共通 してい るよ うです。 (goo注 ロワー ド ピックア ップ…「 ス トスナ」 されたい男 たち 2009年 8月 24日 (月 ))(下 線、筆者 )
動 詞 頻 度
茜 つ
見 る
はさむ 。抱 く
難攀難
包 む 0認 め る くどく。 筆難 襲轟攀難
招く・好く。 難
:攀:。難轟
:・救う。 難麟 :難 0つ ぐ・菫 靭轟難
愛する 0鑢 麟許呼ぶ・思う・心洗う 0告 げる 0抱 きじめる 0轟 :轟 難
:・難難難曇難藝:0難
:難 0:難 攀攀
:・纂麟ヨ 轟鮮 :爾 麟難・騨轟攀鐵輻 灘難 0話 しかける 0可 愛がる。 難麟難
:・難轟重 轍難 0麟 :難 難 :難
:・難華 難難
:・難 :難
:・潮難 :0難 :難 0:攀
:攀 :難 ・機難
:。難 :轍 彗 轍攀攀
:。灘 攀難
:・難 1甕 難 :難 難 :0麟 藝三 難難・翻難難難難・擁難 :0難 難・癬難
:・:藝 攀
:。霧灘難難 :0:輻 難轟難・難藝轟難難
:・灘難輔
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(13)の 「 支配 す る」 は「 い じめ る」「 遮ゝりまわす」 同様、 XY間 にあ る種 の力関係 が想 定 され、 Yが Xに 強 い影響 を与 え ることを表す動詞 にあたる。一方は りの「 ス トスナ」 とは、
「 ス トリー トスナ ップ」 の略で、 「街行 く人 々の着 こな しを撮影 したスナ ップ写真 の こと」
である。 これ は撮影 ス タ ッフが、街で見 か けた人 を選んで撮影す るわ けであ るか ら、 こち らがい くら望 んで も撮 って もらえない場合 の方が多 いはずであ る。つ ま り、事態 は Xの コ ン トロールを超 えた Yの 一方 的 な行為 であ る。 もちろん撮影前 に Xの 了承 は取 るであろ う が、 この ことは「 ス トスナ」 す ることを止 め るとい う意味の コン トロールであ って、「 ス トスナ」 しよ うとす るか ど うか はあ くまで Yの 意志 で、 Xに は コ ン トロールで きないので あ る。 さ らに、 (13')の よ うに「『 ス トスナ』 して もらう」 も可能で はあるが、 そ うす ると Xが Yに 何 らかの働 きか けを した ことが含意 され、一方 的 に選 ばれ るとい うニ ュア ンスや 価値が変 って しま う。
また、「一 目置 く」「認 める」 は何 らかの評価 を表す動詞 であるが、 この評価 も、通常 X
の意志 とは無関係 に成立す る行為である。 これ らの ラレタイの替わ りにテモ ライタイを用 いた (14')も 不可能 で はないが、 Xが Yに 対 してなん らかの働 きか けを行 って いることが含 意 され、 ラレタイを用 いた (14)と はかな リニュア ンスが異 な る。
(13')#男 性 は、高貴 な女性 のために尽 くしたい、支配 して もらいたい とい う願望 を少 なか らず持 っています。
(14')#「 ス トスナ」 して もらいたい男 たち (中 略 )仲 間か ら一 目置 いて もらいたい、
認 めて もらいたい。
一方、熊井 (2006)と 同様 の方法でイ ンターネ ッ トで テモ ライ タイの用例 を検索 した と
ころ、表 2の よ うに、用 い られた動詞 で は、 100例 中「 や る」 が22件 、「 やめ る」が 15件 と
多 い ものの、 それ以外 の動詞 には、 ラ レタイ とは異 な り、特 に共通 の意味特徴 は見 られな
か った。
(15)彼 女 にあ き らめて もらいたい (海 外挙式 か国内披露宴 の どち らかをあ き らめて も らいたいです。 )† (3)
また、 ラ レタイで は ,用 い られた動詞 の半数以上が語彙的被害 を もつ語であ ったのに対 し、 テモ ラウは、 (16)の よ うな悪 い意味の動詞 を用 いることも可能 で はあ るが、今回の調 査 で は、 その よ うな用例 は見 られなか った。
(16)山 田 さん に失敗 して もらいたい。
以上 の ことか ら、用 い られ る動詞 にはっきりした傾 向 と制約 のあ るラ レタイに対 し、 テ モ ライ タイの ほ うは用 い られ る動詞 に特別 な傾向や制約 は見 られない ことがわか った。 こ の ことは、 Xが あ る行為 を一方的 に受 けることを望 み、 それだか らこそ意 味が あ ることを 表す ことが ラ レタイの基本的な用法であ ることを示 している。
4。 2言 い換 え可能性
次 に、 ラレタイ・ テモ ライタイが相互 に入 れ替 え可能か どうかを考 え る。 それ に先立 ち、
まず ラ レル とテモ ラウの互換性 を考 え る必要があ る。 ただ し、現在形 の言 い きりの形で文 末 で用 い られた場合 には ラレルは事態 を表 し、 テモ ラウは意志 を表す と解釈 されやすいた め、過去形で比較す ることにす る。
I.自 己制御性
自己制御性 の高 さか ら考 え ると、 自己制御性 の高 い動詞 は合意 が必要 な動詞 か ど うか、
またそれが動詞 の意味や文脈か ら Xに とってプ ラスの意味か どうか によ って適否が決 まる。
(17)の 「 英語 を教 え る」 とい う行為 は通常 Xと Yの 合意 を前提 と して成 り立 つ ので、 a 表 2 テモライ タイ に前接す る動詞
動 詞 頻 度
や る 22
や め る
見 る 聞 く 。作 る 知 る十知 ってお く
(音 楽 を )か ける 0責 任 を とる
メ ッセー ジを入れ る 。期待す る 。 CD(テ ープ )化 す る・ また ぐ 。取材 に くる 0始 める 。 学 ぶ・ 大切 にす る 0(CMに )出 る 0引 き渡す 0教 え る 0過 ごす 0民 営化 す る eな ん と か な って い る 。「 感 じ」 る 0ネ ッ トで交流す る 0覚 え る 0興 味 もつ 0話 題 にす る 。キモ に銘 じる 。調整 を進 め る 。考 え る 。載 せ る 0堪 能す る 0傍 にい る・ 見せ る 0正 義 をただ す 0メ ガネをか ける 0し つ ける・ ガ ンバル 0続 ける 0な つ く 0(電 話 を )か ける 0配 慮 す る 。手 当を三倍 にす る 0か なえ る 。対策 を講 じる 0渇 を入 れ る・ あ き らめ る
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「教 え られ た」 とす ると迷惑 の意味が出て くる。 当然 テモ ラウを用 いた bと は利害 におい て反対 の意 味 とな る。一方 (18)か ら (21)の aは どれ も Xと Yの 合意 は必要 と していない。
この うち(18)(19)は この文脈で何 らかの意味でその事態 の実現が Xに とってプ ラスであ る と考 え られ るが、 そのよ うな場合 aの ラ レル と bの テモ ラウにそれ ほど大 きな差 は感 じら れない。一方 (20)の よ うに何 らかの意味でその事態が Xに とってプ ラスであ ることが含意
されない場合、 aは 利害 においてニ ュー トラル、 bは 利益 とな り、 (21)の よ うなマイナス の事態 を表す場合 には aと bの 利害 は正反対 とな る。
(17)a。 先生 に英語 を教 え られた /b.#先 生 に英語 を教 えて もら
(18)a.懐 か しい写真 を見せ られた /b.懐 か しい写真 を見せて も (19)a.友 だちの家 に招待 された /b.友 だちの家 に招待 して もら (20)a。 駅 で肩 をたたかれた /b。 #駅 で肩 をたたいて もらった (21)a。 い じめ られた /b。 #い じめて もらった
これ に タイをつ けて み る と、 aラ レタイ につ いて は、 (17')は 不 自然 な文 とな るが、
(18')か ら (21')の よ うに、 いい意味か否 か に関わ らず、 Xの 意志 と無 関係 に Yが あ る行為 を行 うとい う意味 とな る。一方 bテ モ ライ タイは、 Yの 一方 的 な行為 とい う意味を表す ラ
レタイ とはニュア ンスは異 なるが、文 として は成立す る。
(17')a.?先 生 に英語 を教 え られたい /b.#先 生 に英語 を教 えて もらいたい (18')a。 懐 か しい写真 を見せ られたい /b.#懐 か しい写真 を見せて もらいたい (19')a.友 だちの家 に招待 されたい /b.#友 だちの家 に招待 して もらいたい (20')a。 駅 で肩 をたたかれたい /b.#駅 で肩 をたたいて もらいたい
(21')a。 い じめ られたい /b。 #い じめて もらいたい
今 回 の用例 で は、 (22')「 弄 ぶ」 の意 味 の「 あそぶ Jの よ うに、 本来 Xに よ る働 きか け が ない、 Yの 一方 的 な行為 であ る場合 には、 テモ ラウに変 え ると、「弄 ぶ」 とい うコ ン ト ロールで きず に遮ゝりか って くるとい うニュア ンスがな くな り、「 い っ しょに遊ぶ」 とい う 意 味 に受 け取 られて しま う。 (22)の よ うに タイをつ けて も同様 であ る。 同 じよ うに、「斬 りかか る」 も通常予期 せず Xに 降 りかか って くる行為 で あ るが (23')b「 斬 りかか って も らった」 とす ると、頼んでや って もらった ことが含意 され る。 (23)bの よ うにタイをつ け ると、 その一方 的 な行為 とい う意味 とテモ ラウの働 きか け性 に矛盾が生 じ、 Xで はない第 二者 が行為 の対象 であるよ うな意味 に受 け取 られやす くな る。
(22)a.あ そばれたいの † /b.#あ そんで もらいたいの
(22')a。 あそばれた/b。 #あ そんで もらった (23)a.カ マで・・・斬 りかか られたい・・・ の †
b。 #カ マで・・・ 斬 りかかって もらいたい 0・ ・ の
(23')a。 カマで・・・ 斬 りかか られた /b.#カ マで・・・斬 りかか って もらった
た
た
つ
た
つ
ヽ L ノ
つ
逆 にテモラウか らの言 い換えを考えて も、 (24)(25)の ように両者の合意が必要でない場 合 は、 (24)の ようにいい意味の事態を表す場合には両者に差 はな く、 (25)の ようにマイナ スの事態を表す場合 には利害の対立がある。一方 (24')(25')の ようにタイを付 けると、 い い意味の場合 も悪い意味の場合 もaは 働 きかけが含意 され、 bと はニュアンスが異なるが、
文 としては成立す る。
(24)a.先 生 にほめて もらった /b.先 生 にほめ られた
(24')a。 先生 にほめて もらいたい /b.#先 生 にほめ られたい
(25)a.先 生 に しか って もらった/b。 先生 に しか られた (25')a.先 生 に しか って もらいたい /b.#先 生 に しか られたい
実際の用例を見てみると、 (26)aは 2つ の解釈が可能である。一つは Xに 対 して Yが す る行為、 もう一つはXと は関係な く Yが 行 う行為である。前者 の場合、 (26)aObは ニュ
アンスは異なるが、言 い換えは可能である。なお、後者の場合 には Xが 行為の対象ではな く、 「 あなたにや られる」 は迷惑の意味 となるので、 ラレタイで表す ことはで きない。
(26)a。 あなたにや って もらいたいこと† /b.#あ なたにや られたいこと
また、両者の合意が必要 な事態の場合、 (27')の ように受身 bは Yが Xの 合意 な しにそ の行為を行 うという意味になって、迷惑の意味が生 じ、テモラウaと は利害に関 して反対 とな り、 これにタイをつけると(27)bの ように不適格な文 となる。
(27)a。 そばにいて もらいたい † /b.*そ ばにい られたい
(27')a。 そばにいて もらった/b。 そばにい られた
また、 自己制御性の低い動詞の場合 は、 まず (28)(30)の ように過程の自己制御性のある 動詞及び (29)(31)の ような非意志的動詞を考えてみると、何 らかの意味でプラスの意味を 持つ場合には (28)(29)の ようにラレルとテモラウはそれほど大 きな違いは感 じられないが、
マイナスの意味を持つ動詞の場合には (30)の ような過程の自己制御性をもつ動詞 も (31)の ように非意志的動詞の場合 も利害において正反対の意味 となる。
(28)a.愛 された /b.愛 して もらった
(29)a。 なつかれた /b.な ついて もらった
(30)a.忘 れ られた/b。 #忘 れて もらった
(31)a。 み くび られた /b.#み くびって もらった
これにタイをつけると、 (29')(31')の ように非意志的動詞の場合 にはテモライタイか ら
ラレタイに言 い換えて もそれほど意味は変 らない。例えば (32)「 なつ く」 は非意図的な行
為であるか ら、 Yは その事態をコン トロールす ることはで きず、 Xの 働 きかけは Yに 及ば
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ない。一方、 (28')(30')や (33)「 期待す る」 は過程 の自己制御性を もつ動詞であるが、 こ のようなタイプの動詞 はテモライタイでは Xに よる働 きかけが含意 されるため、文 として は成立するが、ニュアンスが変 って くる。
(28')a.愛 されたい /b。 #愛 して もらいたい (29')a.な つかれたい /b。 なついて もらいたい (30')a.忘 れ られたい /b。 #忘 れて もらいたい (31')a.み くび られたい /b.?み くびって もらいたい
(32)a。 猫 にもっとなついて もらいたい † /b.猫 にもっとなつかれたい
(33)a◆ 期待 して もらいたい † /b.#期 待 されたい
Ⅱ .イ ンヴ ォルヴメ ン ト
また、 イ ンヴォル ヴメ ン トに関 しては、 これが低 い場合 には迷惑受身 と解釈 され るため、
当然 ラ レルを用 いた (34)aと テモ ラウを用 いた (34)bは 利害 に関 し正反対 の意味を表す。
これ に タイをつ けると、 (34')a迷 惑受身 の ラレタイは不適格 な文 とな って しま う。
(34)a.母 にアパ ー トに来 られた。 /b.母 にアパ ー トに来 て もらった。
(34')a.*母 にアパ ー トに来 られたい。 /b.母 にアパ ー トに来 て もらいたい。
逆 にテモ ライ タイを ラレタイで言 い換 え られ る場合 の適否 を決定 す る大 きな要因 は、 X
が行為 の対象 とな っているか否かである。 これ も Xが 行為 に直接 イ ンヴォル ヴされている か どうか とい うことであ り、 イ ンヴォル ヴメ ン トの程度が深 く関わ ってい ることがわか る。
例 えば、 (35')(36')の テモ ラウとラ レルは利害 において反対 の意味 とな るが、文 と して は 成立 す る。 しか し、 それ にタイをつ けると (35)b(36)bの よ うに Xが 行為 の対象 でない場 合 は不適格 とな る。 ただ し、 Xが その行為 の対象 とな りうる動詞 の場合 には、 (37)bの よ うに文 と して は成立す る場合 もあるが、 Xが 行為 の対象 であ るとい う意味 に変 って くる。
(35)a.顔 文字 をやめて もらいたいんです。 † /b.*顔 文字 をやめ られたいんです。
(35')a.顔 文字 をやめて もらった。 /b.顔 文字 をやめ られた。
(36)a。 子供 に良 いメガネをか けて もらいたい。 /b.*子 供 に良 いメガネをか け られ たい。
(36')a。 子供 に良 いメガネをかけて もらった。 /† b。 子供 に良 いメガネをかけられた。
(37)a。 大人 に じっ くり見て もらいたい。 † /b.#大 人 に じっ くり見 られたい。
Ⅲ .働 きか け先が存在 しない場合
また、働 きか け先 が存在 しない場合 もテモ ラウで は言 い換 え に くい。 (38')の 「罪 か ら
救 われ る」 は救 って くれ る主体 を必 ず しも必要 と しないが、「救 って もらった」 とす ると
Yの 存在 が前提 とな るため、意味が変 って くる。 これ はタイをつ けて も同様 であ る。
(38)a◆ 「罪 か ら救 われたい」 と思 うあなたへ † /b.#「 罪か ら救 って もらいたい」 と 思 うあなたヘ
(38')a.罪 か ら救 われた /b.#罪 か ら救 って もらった
Ⅳ。 もともと対応す る能動文やテモラウが ない場合
評価 を表す 「見 ラ レル」など もテモ ラウにす ると不 自然 になる。 そ もそ も (39)c「 若 く見 る」 とい う能動文 自体が不 自然 な文 である。 同 じよ うに (40)c「 好 く」 も単独で能動文 に は用 い られ に くく、「好 いて もらう」も不 自然であ る。 タイをつ けて もその不 自然 さは変 わ らない。
(39)a。 無理 ない範囲で若 く見 られたい † /b.?無 理 ない範囲で若 く見て もらいたい
c。 *若 く見 る
(40)a.誰 か らも好かれたい !!† /b.?誰 か らも好 いて もらいたい !!
c.*誰 もが好 く
V.Yが 非情物
今回の調査で は Yが 非情物 であ る場合 は (41)(42)(43)aの 3件 のみであ った。 (43)aは 二格 は明示 されていないが、文脈か らそのよ うに判断 され るものである。一方、 テモ ライ タイはそのよ うな例 は見 られなか った。
(41)a.ハ ンモ ックで音 に包 まれたい † (42)a。 長 い ものに巻 かれたいやつ ら†
(43)a。 ノ 己` あ らわれたい方 に †
テモ ラウを用 いた文 の適格性 につ いて高見・ 久野 (2000)は 、 テモ ラウ構文 の基本的機 能 を満 たすための語用論 的要因 と しての 2つ の階層及 び利益 の意味 に関す る階層 を (44)の よ うに数値化 して分析 し、 Yが 非情物 の場合 には利益 の意味が明示 されているか どうかな どの条件 を満 た さない とテモ ラウにな りに くい ことを明 らか に している。
(45)a・ becは 高見 0久 野が挙 げた例 であ るが、 この 3つ は人間度・ 自力度 でそれぞ れ 0点 、 2点 を獲得 し、 (45)aは 先行利益度・ 後続利益度がな く、 それぞれ ‑2点 、 ‑1
点 とな り、計 ‑1点 で不適格 とされ る。 これ に対 して (45)bは 先行利益度 は ‑2点 である が、後続利益度が 1点 で、計 1点 とな り、依然不適格 で はあるが (45)aに 比べて適格性 は 高 い とされ る。一方 (45)cは 先行利益度が 2点 、後続利益度 は ‑1点 とな り、計 3点 で、
適格 とな る。
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(44)「 〜 に Vて もらう」構文 の数値分析
「 二」格名詞句 にな りやす さの階層 (以 下、人間度。注筆者 ):
人間 >動 物 >自 然 の力 >無 生物
2 1 0 ‑1
「 〜 に Vて もらう」構文 にな りやすい事象 ((以 下、 自力度。注筆者 ):
「 二」格名詞句 無生物 や 自然 の力 など 人間や動物 な どの外的 自 らが引 き起 こす事象 の外 的要因が引 き起 こ 要因が引 き起 こす事象
す事象
2 0 ‑3
「 もらう」の先行文脈で示 され る利益 の階層 ((以 下、先行利益度。注筆者 ):
明示 >合 意 >な し
2 0 ‑2
「 もらう」 の後続文脈 で示 され る利益 の階層 (以 下、後続利益度。注筆者 ):
明示 >な し
1 ‑1
(45)a.*僕 は、雨 に降 って もらった。 ‑1[不 適格 ]
b.*雨 に降 って もらい、 こんなに木 々の緑が鮮 やか にな った。 1[不 適格]
c。 こんなに木 々の緑が鮮 やかなのは、昨夜恵 みの雨 に降 って もらったか らだ。 3
[適 格 ]
d.?僕 は、雨 に降 って もらいたい。
ただ し、 Yが 非情物 の場合 で も、 (45)dの よ うに タイを後接 させ るとその適格度 は上 が る。 これ はタイを用 いることによ って、 いわゆ る利益 を表す文脈 がな くて も、 その事態が Xの 待 ち望 む、 Xに とって利益 となる事態であ ることが含意 され るためであ ると思 われ る。
先 の (41)で も、 テモ ライ タイを用 いた (41)bも やや不 自然で はあ るが、 テモ ラウのみを 用 いた (41)cに 比 べれ ば、 い くらか その適格性 は高 いよ うに思 われ る。 また、 (42)aは
「長 い ものには巻かれよ」 とい うことわざがあ るよ うに、「長 い ものに巻かれ る」 でひ とま とま りとな り、 (42)bの よ うな能動文 は成立 しない。 同様 に (43)aも ら己ヽ あ らわれ る」 の 形 で ヲ格 を伴 わず に使 われ ることも多 いが、 この ヲ格 を補 って も、 (43)cの よ うな能動文 にはな らない。 このよ うな受身 はテモ ライ タイにはな りに くいが、 それ は、 Yが 動作 の引 き起 こし手 と しての資格 を欠 いているためであろ う。
(41)b.?ハ ンモ ックで音 に包んで もらいたい
c.*ハ ンモ ックで音 に包んで もらった
d.ハ ンモ ックで音が (私 を )包 んだ
(42)b.*長 い ものがやつ らを巻 く /c.*長 い ものに巻 いて もらいたい (43)b.心 (を )あ らわれたい /c。 (〜 が私 の )心 をあ らった
d。 *′ 己ヽ をあ らって もらいたい
Ⅵ .Yに 行為 の実現 を直接働 きか けて いない場合 (も んだね、連体修飾 etc口 )で 、 Xと Y
の合意が必要 でないもの
(46")で わか るよ うに、 このよ うな動詞 の場合、 ラ レル は利害 に関 して ニ ュー トラルで あ り、受益 を表 す テモ ラウとは異 な った意 味 を表す。 しか し、 (46)a・ (47)aは 、「 もの だ」 や「 やつ」が後接 してテモ ライ タイが言 い切 りで はな く、行為 の実現 を Yに 直接働 き か けていない。 その場合、 (46)abO(47)abの よ うに、 テモ ライ タイ とラレタイの差 は それ ほどな くな るよ うに思 われ る。
(46)a。 またいで もらいたい もんだね † /b。 またがれたい もんだね。
(46')a。 またいで もらいたい。 /b。 またがれたい。
(46")a。 またいで もらった。 /b.ま たがれた。
(47)a。 渇 を入 れて もらいたいヤ ツ来 い !† /b.渇 を入れ られたいヤッ来 い
!(47')a.渇 を入 れて もらいたい。 /b。 渇 を入 れ られたい。
一方 これ らを タイの言 い切 りの形 にす ると、 (46')0(47')の よ うに、働 きか けを合意す る aと そ うで はない bで 、 ニ ュア ンスは変 って くる。
以上 の考察か ら、 テモ ライ タイか らラ レタイの言 い換 え は、 Xが 動作 の受 け手 で はない 場合 や、 Xが 受 け手 であ って も自己制御性が高 く、合意 が必要 な行為 の場合 は不適格 にな り、 Xが 動作 の受 け手 で、動詞 の 自己制御性 が低 い動詞 の場合 で可能 とな ること、反対 に 自己制御性 が高 く合意 の必要 のない場合 には言 い換 えは可能 であるがニュア ンスが変化す ることがわか った。逆 に言 えば、 テモ ライ タイを ラレタイに変 え ると、行為 の対象が Xそ の もの とい う解釈 にな るとともに、頼んだ りして働 きか けている感 じがな くな り、 Xの 意 志 を越 えて Yが 一方 的 にその行為 をす る意味 にな るとい うことであ る。 このよ うに、 Xガ Y二 Vラ レタイは Xが Vの 表 す動詞 の行為 の対象 であ る場合 のみに成立 す るのに対 し、 X
ガ Y二 Vテ モ ライ タイは、 Xが Vの 表 す行為 に直接 関係 ない場合 に も成立 す ることも大 き な違 いであ ることがわか った。
(48)テ モ ライ タイ→ ラレタイの互換性
Xが 行為 の受 け手
│
YES→ 制 御 性 高 い
NO→ ×
YES→ 合意必要
│ NO→ ○
4。 3 働 きか け性か ら見 た特徴
ラ レタイ 100例 の うち、 Yが 聞 き手 で、 聞 き手 に直接働 きか けてい るの はわずか 7例 で
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あ った。一方 テモ ライ タイの場合 は、 100例 の うち、 Yが 聞 き手 で、 聞 き手 に直接働 きか けている例 は 37例 、 37%で あ った。 この ことか ら、 テモ ライ タイは Xの 願望 の表 明だ けで な く、聞 き手 に直接働 きか ける行為要求 の機能 を持 って用 い られ ることも多 いが、 ラレタ イは、単 な る願望 の表現 と して用 い られ、行為要求 と して用 い られ る場合 は多 くない こと がわか った。
(49)カ ウ ン トダウ ンのイベ ン トは徹底 レポー トをす る予定 なので、 期待 して もらいた い。†
(50)キ ミに飼 われたい (前 略 )†
5。 見 られたいと見 て もらいたい
ここで、 ラレタイ・ テモ ライ タイいずれに も比較的多 く用 い られていた「見 る」 の用例 を もとに両者 の違 いを考察す ることにす る。 それぞれの形式 に同 じ動詞 が どのよ うな意味 で用 い られているのか、見 る対象 は何 かを分析す ることで、両者 の違 いがよ り鮮明 にな る
と思 われ るか らであ る。
5.1 見 ラ レタイ
見 ラ レタイにつ いて は、用 い られ た見 ル200件 の うち、最 も基本 的 な用法 であ る「 目で 事物 の存在 な どを と らえ る」「視覚 に入 れ る」 とい う意 味 の例 が63件 、 31。 5%で あ った。
なお、今回の用例で は、 これ と「鑑賞す る・ 見物・ 見学す る」 の境 目があいまいなため、
両者 を ま とめて 「 視覚 に入 れ る」ことと した。 残 り137件 、 68.5%が 、 観察 し、 判 断 す る
「評価す る」 とい う意味の用例 であ った。
(51)旦 那 に もっと見 られたい † (52)10歳若 く見 られたい。 † (53)見 られたい肌 †
「視界 に入 れ る」 とい う意味での見 ルを主体別 にま とめた ものが表 3で あ る。見 ルの中 には、 Xガ Y二 Vラ レタイのよ うに、見 られ たい主体 (X)と 見 られ る対象 (X)が 一致 して い る場合 (A)が 34件 (54.0%)、 Xガ Y二 Zヲ Vラ レタイの よ うに、見 られたい主体
(X)と 見 られ る対象 (Z)が 一致 して いない ものが、29件 (46.0%)で あ った。後者 の場 合、見 られ る対象 (Z)は 主体 の身体部分 や着衣 (Bl)・ 行為 (B2)・ 作品 (B3)・
排泄物 (B4)で 、親族 (B5)や 持 ち物 (B6)は 1件 もなか った。 ただ し、 Aと Bl・
B2の 区分 は必 ず しも明確 で はな く、 直接 の対象 は Xで あ って も、文脈 か ら Xの 身体部分
や何 らかの行為 を想像 させ るもの もあ った。
表 3 見 ラ レタイ見ル対象
見 る 対 象 件 数
視覚 に 入れ る
A X 34
B Xの
1。 身体・ 着衣 10
2。 行為
3。 作品 6
4。 排泄物
5.親 族 0
6。 持 ち物 0
/Jヽ
計 63
評 価 C
1。 N/Naに 37
2. Iaく
βU3。 遮ゝうに /よ うに
4。 と して 6
5. こう 3
6。 ど う /ど のよ うに 13
7。 どの ぐらいの〜 に
8.〜 と /っ て
9.〜 で
10。
そ う
/Jヽ
計
0 0
計 200
これ に、第 2節 で述 べ た山内の「 Zヲ 」 を省 IIIし て も文 の意味が変化 しないか ど うかの テス トを してみ ると、 着衣 (Bl)・ 行為 (B2)は 論理 関係 の矛盾 は生 じず、作 品 (B
6)に つ いて も 6件 中 4件 は自分 の行為 が写 っている動画や写真 であ り、 Xと 同一視 して も問題 ない ことがわか った。 これ らは Xが 直接 の行為 の対象 であ ることを意味す る。 これ らを合 わせ ると、 Zが 省略で きる もの は29件 中26件 、 9割 にあた る。 この26件 にさきの見 られたい主体 (X)と 見 られ る対象 (X)が 一致 している場合 (A)の 34件 を合 わせ ると 60 件 とな り、視覚 に入 れ る意味 の見 ルを用 いた見 ラ レタイ63件 中60件 、 95.2%は 見 られ たい 対象が 自分 であ ることがわか る。Zを 省略す ると論理的 に矛盾 が生 ず るのは、作品 (B6)
の 6件 中 2件 の壁紙用 の「 自分が撮 った写真」 と「隠 しペー ジ」及 び排泄物 (B4)1件 、 計 3件 のみで あ ったが、 これ らも親族 (B5)や 持 ち物 (B6)に 比 べれば Xと 切 り離 し
に くく、 Xそ の もの、 あるいは Xを 具現化 した対象 と言 え るで あろ う。
また、見 ルは他動詞 で はあ るが、 イ ンヴォル ヴされ る程度が低 く、通常 (54)bの よ うに 受身文で は能動文 にない迷惑 の意味が生 じるとされ る。今回の用例 で も視覚 に入 れ る意味 での見 ラレル はタイを取 ると (54)bの よ うな能動文 にはない迷惑 の意味が出て くる。
(54)a。 女 の子 に見 られたい。 † /b。 女 の子 に見 られた。
静 岡大学 国際交流 セ ンター紀要 第 4号
c.女 の子が (僕 を )見 た④。
このイ ンヴォル ヴメ ン トは当然 Aが 最 も強 く、次 いで Blか ら B4を 経 て、親族 (B5)
や持 ち物 (B6)で 弱 くな ると思 われ るが、見 ラ レタイには B506の よ うな例 はな く、
いわゆ る第二者 の受身 も見 られなか った。 これ は熊井 (2006)の 結果 とも一致す る。 Yの 見 るとい う行為 が Xに 直接 向 け られてい ると解釈 で きる場合、即 ち見 られたい ものが 自分 や 自分 と同一視で きる対象 で ある場合 に視界 に入 れ るとい う意味での見 ルを用 いた見 ラレ タイが可能 にな ることにな る。反対 にZを Xと 同一視 で きない場合 には「行為 を直接受 け ない」 とい うことを表 し、文 と して成立 しに くい。
一方評価 を表す見 ラレルで は、 い形容詞 の連用形が前接す る、〜 ク見 ラ レタイが67件、
48.9%と 最 も多 く、次 いでな形容詞 の連用形 や名詞 十前置詞 が前節す る〜 二見 ラレタイが 37件 、 27.0%、 次 いで、 その疑 問詞 の形 で あ る「 ど う」・ 「 どのよ うに」 が 13件 、 9.5%
の順 となる。
前接 す るい形容詞 で は 「若 く Jが 47件 で、 3割 を 占め、「 か っこよ く」 5件 、「 よ く」 と
「 かわい く」 が 4件 ずつ とな っている。 な形容詞 で は「 きれ いに」 が 6件 、名詞 で は「年 相応」が同 じく 6件 と最 も多 く、次 いで「大人」 4件 とな っている。 いずれ も自分 で コン
トロールす るのはむずか しい事態であ る。
評価 の場合 の 「 見 る」もイ ンヴォル ヴメ ン トは高 くないが、熊井 (2003)で 考察 したよ う に、評価 は通常 Xの 意志 とは無関係 に行 われ る Yの 非意 図的・ 自立 的 な行為 であ るため、
タイを取 った受身形 には迷惑 の意味 はない。 この場合 も見 ラ レル対象 はすべて タイの主体 と同 じ Xで あ り、視覚 に入 る場合 の見 ル同様、見 ル とい う行為が Xの コ ン トロールの及 ば ない ところで X自 身 に一方的 に降 りかか って くる場合 のみに可能 であ ることがわか った。
(55)a。 若 く見 られたい。 † /b。 若 く見 られ る。
また、見 ル主体 につ いて は、視覚 に入 る方 の見 ルは 63例 中 13件 で主体 が明記 されていた が、 その うち特定 の人物 に限定 されている例 は4件 であ った。評価 の見 ルは 137例 中、 7例 、 その うち 6例 は「誰か らも」や「異性か ら」 のよ うな不特定 の対象であ った。 このよ うに、
見 ラレタイの場合、見 ル主体 が特定 されていない場合が 180例 、 9割 にのぼ る。
以上 のよ うに、今回の調査 で は、見 ラレタイは、不特定 の主体 か らなん らかの評価 を受 けることを望 む とい う用例が圧倒的 に多 く、次 いで不特定 の主体 か ら視線 を向 け られ こと を望 む とい う例 が多か った。 これ も、 Xの 働 きか けの及 ばない Yの 一方 的 な行為 と して成 立す るある事態 の実現 を Xが 望 む とい うラレタイの性質 によるものであ ると言 え る。
5。 2 見 テモライタイ
見 テモ ライ タイにつ いて は、見 ルの意味及 び見 テモ ライ タイ主体 と見 る主体・ 対象 につ いて考察す る。同時 に恩恵 の表現であるテモ ラウにタイが後接 され ることで、 その用法が どのよ うに変化す るのかを見 てい くことにす る。
まず、動詞 の意味 につ いて は、 (56)の よ うに、 ホームペー ジや映画、記事 や作品を見 る
「鑑賞・ 見物・ 見学 す る」とい う意味の見 ルが最 も多 く、 200例 中、 159件 、 自分 や 自分 の身 体 の部分 や何 かを している姿 を見 ルが 12件 だ った。 この中 には見物す るな どの意味での見 ル と区別がむずか しい例 もあ ったが、今回 は見 る対象が広 い意味で 自分 自身である場合 は 視覚 に入 れ るとい う意 味での見 ル と した。 この見物・ 視覚 を合 わせ ると171件 とな る。 こ の うち、 自己や 自己の関係す る組織が作成 した ものや 自分が所属す る場所 を誰かに見て ほ しい とい うものが136件 、 79.5%で あ った。 また、見 る対象 が イ ンターネ ッ ト上 の掲載物 にな って いる例 は、90件 、 5割 強 と、非常 に多か った。
このほか には、 (57)の よ うに専門家 に手相 や身体、回答・ 機械 な どを見て判断・ 診断・
治療 などを して もらう意味での見 ルが 17件 、 (58)の よ うにどのよ うに受 け止 めて ほ しいか とい う判断・ 評価が 7件 であった。 さ らに、 「大 目に見 る」 2件 、 「面倒 を見 る」 1件 であ っ た。
(56)自 分 の ブログを他 の人 に見て もらいたいのですが。 † (57)手 相 を見て もらいたいんですが (後 略 )。 †
(58)女 性 と して見て もらいたい。 †
以上 の ことか ら、見 テモ ライ タイの形 で用 い られ る場合、 自分 となんか らの意味で関係 のあ る対象 を鑑賞・ 見物・ 見学 して ほ しい とい う行為要求 の機能 を もって使 われている例 が非常 に多 い ことがわか る。 これ は、 このよ うな意味でのテモ ラウが最 も働 きか けが しや す いか らであろ う。
さ らに今回の用例 を見 ると、見 る対象 は (59)aの よ うに、 自分 や 自分 の作品あるいは何 表 4 見テモライ タイの見 る対象
見 ルの意味 見 る 対 象
鑑賞・ 見 学・ 見物
DVD・ 映画 0番 組 0ビ デオ・ アーテ ィス ト etc.
0 0
イ ンター ネ ッ ト上
HP・ ブ ログ・ プ ロ フ・ サ イ ト・ ペ ー ジ・ 掲 示 板
・ フ ァイル etc.
贋 J
動画・ 写真・ 画像・ 公開 した物・ 日記 etc. 27 お知 らせ・ 広告・ 情報・ ニュース・ 記事 etc.
絵・ 衣装・ 作品 家・ 商品 etc. 18
場 所
イ ベ ン ト (ラ イ ブ・ パ ー テ ィー etc。 )
花・ 模型
″何 為
/1ヽ
計 159
視覚 に入 れ る 自 分 姿・ 顔・ 行為・ 身体部分
/Jヽ