静岡県 における人 日高齢化問題の地域性
―
‑1975〜
1985年 における市町村別の国勢調査結果の分析か ら一一The Aging Society by Region in shizuOka Prefecture
一―By National Censuses in 1975,1980,1985‑小
川
裕
子 ・ イヽ
森
麻知子 す
Hiroko OGAWA and Machiko KoMoRI
(平成元年10月H日受理)
1。 緒
言
我が国の人 口高齢化の進展は,後発ではあ った ものの,今日のそのス ピー ドと最終的な到達 点 (西暦2020年頃には65歳以上の人口の総人 口に占める割合が22〜23%に達す る)において,
全世界に類のないもの といわれている。そ して, このような人口構造の変化に加えて,第一次 産業人口の一層の減少や情報化 による産業構造の変化,核家族化や女性の職場進 出による家 族・ 家庭生活の変化は,高齢者の生活問題を社会問題化 した。今や,年金,医療,福祉,住宅,
教育等々,高齢者の生活を支える諸施策の充実が 目指 されていることは周知の通 りである。
ところで,我が国の人口高齢化の進展には地域間の格差が大 きく,前述 したよ うな社会問題 としての課題 も一様ではない。たとえば,1985年の国勢調査によれば,全国平均では65歳以上 の人口の総人 口に占める割合は
10.3%で
ある。 しか し, この値を都道府県別にみると,島根,高知,鹿児島の3県では14%を超え,逆に最 も低いのは埼玉県で7.2%にす ぎない。 さらに,市 町村別にみると,最高は山口県東和町で
35。 2%,最
低 は千葉県浦安市の4.1%と
大 きな開 きがあ るのである。そ こで,本研究では,地元静岡県の市町村別 にみた人 口高齢化の問題状況 について,以下 に 述べ る3点か ら検討 し 県下の地域的特徴を明 らかにす ることを目的とする。
人口高齢化の問題状況を検討するため,本研究では,まず,各市町村の総人 口と年齢3区分
(年少人口,生産年齢人 口,高齢人 口)構成比の2点に注 目した。坂寄俊雄 は,全国の区市町 村の高齢化を検討 した結果,「人口高齢化は高齢人口の増加 とともに年少人 口,生産年齢人 口 の減少が同時進行 してお り,そして人 口総数を減少 させている (傍点筆者)」 1)と述べている。
これまでの自治体等の作成 した資料では,人口高齢化 は高齢人 口の比率によってのみ示 され る ことが多か った
2)。
本稿では,この点を改めて,年齢3区分各々の構成比 と,総人 口を資料 と する。総人口はまた,高齢者の 日常生活 に大 きな影響を及ぼす地域・市町村の活力を示す総合*静
岡大学大学院教育学研究科
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的な指標 ともいえるため,取りあげた。
そ して,第
3に
注 目したのは,高齢者を含む世帯の家族形態についてである。 これは,単身世帯,夫婦のみ世帯,その他の世帯 (三世代世帯等)に3分して,各々の構成比をみることに
。 す る。家族形態 は,それ 自体で高齢者の日常生活を示す ものである。特に,近年の『在宅福祉』
施策 は,我が国ではまだ,家族形態によってその利用が制限されている。さらに,筆者の これ
までの研究 によれば,高齢者を含む世帯の住宅事情を決定する第 1の 要因 として家族形態があ
t
が っていることか ら3),家
族形態をみることが高齢者の生活実態を知 る上で有効であるといえ よう。
さて,本研究では,以上3点について,いずれ も1975年,1980年,1985年の国勢調査結果を
.
用 い,経年的にみた ものを資料 としている。1975年以後の時期に しば った理由は,戦後我が国 が高度経済成長を続けていた間著 しか った人口移動が,1970年代前半のオイルショック以後落 ち着 き始めたということと,ちょうどこの頃か ら人口高齢化の問題が各地で社会問題化 し,政
策課題に上 り始めたという事情による。なお,静岡県の市町村名は1975年か ら1985年までの間 で変更されていない。
最後 に,全国の都道府県の中での静岡県の位置をみるな らば,近年の高齢人口比率が,1975 年7.9%,1980年9.1%,1985年
10.3%と
,全国平均値 と全 く合致 して推移 している唯一の県で ある。 このような県において市町村の動向をみることは,全国の市町村の傾向をつかむ上でひ とつの 目安 となろう。2.研
究 の 方 法本研究では,静岡県の人 口高齢化の問題状況について市町村別にみることによって,県下の 地域的特徴を明 らかにす るため,次の
5つ
の資料を作成 した。まず第
1は
,県下の主要な交通網である(図 1)。 国道1号
線,同150号線,東名高速道路,JR東
海道本線,同身延線,同御殿場線,その他私鉄を地図上に示 した。交通網 は,産業発展 の重要な要件であるばか りでな く,地域住民の 日常生活の利便性にも直接影響を与えるもので ある。第
2に
は,1985年の国勢調査による市町村別の総人口を示 した (図2)。また,第
3に
は,市町村別 にみた近年の総人口の増減率を,1970〜75年,1975〜80年,1980〜85年の3期間にわたって,同様 に国勢調査結果か ら示 した (図3)。
第
4に
は,同様に市町村別に,年齢3区
分 ごとの構成比を,1975年,1980年,1985年の国勢 調査結果か ら示 した (図4)。
最後 に第
5に
は,同様 に市町村別に,高齢者を含む世帯の家族形態について,単身世帯,夫婦のみ世帯,その他の世帯に3分し,その構成比について,1975年,1980年,1985年の国勢調 査結果か ら示 した (図5)。
,
以上の資料を もとに,静岡県下の市町村別 にみた人 口高齢化の問題状況について検討 し
(3 .
〜5),最後 に,県下の地域分けを行 う。
3.総
人 口 の 増 減は じめに,市町村別の総人 口やその近年の増減率をみることか ら,高齢者の日常生活を取 り 巻 く背景 と しての市町村の活力について検討す る。図
1に
示 した静岡県の主要交通網 について図
1
静岡県の市町村区分 と主要交通網 静岡県における人口高齢化問題の地域性は,本項での考察の際に参考 とす る。
まず図
2に
は,1985年の市町村別の総人口を示 した。静岡県下では,近年テクノポ リス建設 の進め られている浜松市の総人口が約51万人 と最 も多い。県庁所在地である静岡市は浜松市に 次いで高 く,約47万人を有 しているも静岡県下では特にこれ ら2市に人口の集中がみ られるも のの, この後に,清水市,富士市,沼津市が20万人台で続いている。また,郡部で人 口の多い 町は,東部の函南町,長泉町,清水町と,相良町,吉田町,榛原町の榛南地区,そして菊川町,豊田町といった県の中核都市に隣接 し,かつ主要な交通網の通 るところであることがわかる。
逆に交通網にかか らない町村である西伊豆,川根,北遠地域では,総人 口は特に少ない。
図
3に
は,1970〜75年,1975〜80年,1980〜85年の3期
間にわたる総人口の増減率を,市町 村 ごとに示 している。県平均では,1970〜75年の増加率が最 も高 く,1975年以後増加率 は低下 して人口移動 は沈静化の方向にある。浜松,静岡,清水,富士,沼津 といった総人 口の多い都 市では,これとほぼ同様の傾向がみ られる。ごれに対 して,東部では沼津市,中部では静岡市,西部では浜松市 に隣接す る市町村では,
1970年か ら1980年の10年間に総人回の著 しい増加がみ られる。清水町大長泉町,伊豆長岡町,
藤枝市,焼津市,豊田町,浜北市,舞阪市,雄踏町等がそれに該当する。 さらに, これ らの周 辺の市町村では,1975年以後になって人口増加率がいっそ う上昇す る場合 もみ られ,中核都市 のベ ッ ドタウンは現在 もなお広が っていることがわかる。岡部町,吉田町,細江町,湖西市,
可美村等が これに該当する。
また,遠州灘沿岸地域では,1980〜85年の間にも増加率が上昇 しているものの,1985年の総 人口は決 して多 くはない。 この地域 は,昔か ら農業を営んでいたが,近年,浜松方面か ら工場 の移転,進出が 目ざま しく,第2次産業就業者の増加 も著 しい。そのため,1975年以後 も団地
几 例
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国道 1号 織
―
国遣16闘
●●●●●●‐●― ● 東名高速道路
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森麻知子
や住宅地の開発が進行 しているようである。福田町,浅羽町,大須賀町,大東町,4ヽ笠町,浜
岡町等が該当す る。
以上の地域に対 して,人口が減少 している地域 は,北遠,川根,伊豆地域である。北遠,川
根地域では,1970〜75年の減少率が最 も高 く,その後 は減少率が小 さくなってお り,過疎化の 進展は鈍化 して きているようである。 しか しなが ら,伊豆地域では,北遠,川根地区に比べ る
と値 こそ小 さいものの,1975年以後徐々に減少率が高 くなって きている。
4.年
齢 3区分 構 成 比 の 変 化図
4に
は,年齢3区分の構成比について,1975年 ,1980年,1985年の変化を表 してし'ヽる。年少人口 (0〜14歳)は,県平均では減少傾向がみ られるが, 3でみた総人口の増加の続 い ている地域では,24.0%程度を維持 している市町村 も多い。静岡市,浜松市,清水市,富士市, 沼津市 といった県の中核都市や,観光都市の熱海市,伊東市では,年少人口の減少の度合が著 しい。また,総人口の減少 している伊豆,川根,北遠地域では,年少人口の割合 は
20。
0%を割 る程まで低下 している。生産年齢人口(15〜 64歳)の割合の高いところは,工業の発達している県東部の沼津市を申 心とする周辺の市や町,そして,観光産業の発達している熱海市等であり,69。 0%前後を占め ている。この背景には,東部地域は経済的に首都圏と密接な関係にあって次々に新しい産業が 進出 して くること,また:都心の地価高騰によって交通の便のよいこの地域 に首都圏か らの人 口流入があることが考え られる。また,商業地である静岡市,浜松市にも生産年齢人口の集中 がみ られ る。
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図2 1985年 市町村別総人 口
静岡県における人口高齢化問題の地域性
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図
4
年 齢3区分 構 成 比 の推 移 (1975年,1‐980年,1985年)
静岡県における人口高齢化問題の地域性 95
イヽ
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森
麻知子
高齢人口 (65歳以上)の割合は,県平均では前述 したように1975年以後全国平均 とまった く 同 じ値で推移 して きている。県平均 と同様な傾向にある市町村は,静岡市,浜松市 と県東部地 域の市町村である。
高齢人口比率の低い地域は,富士山麓の御殿場市,裾野市 と沼津市に隣接する長泉町,清水 町,そして浜松市に隣接する豊田町等である。 これは
,以
上の市や町には,企業の進出に伴な うベ ッ ドタウン開発め際に,同世代の核家族ばか りが同時期 に多数入居 したためである。 この ような地域では,将来一定の時期に急速 に高齢化す ることが予測 される。また,1975年以後 も総人口が増加 している県中部の志太・ 榛原地区や,遠州灘沿岸地域にお いては,すでに1975年時点で高齢人 口比率が11〜
12%と
比較的高か ったが,この値 は1985年に なって もほとんど上昇 していない。 これは,1975〜85年の人口増が若い世代に偏 っていたこと を示 している。最後に,高齢人口の割合が著 しく高いのは,県下で最高の値を示す竜山村 (1985年で21.4%) や南伊豆町 (同21.1%)を含む伊豆,北遠,川根地域である。 これ らの地域には,年少人口と 生産年齢人口が流出 し,高齢者が取 り残 され るとい う典型的な過疎地における高齢化現象がみ られ る。また,熱海市では, シルバー産業による老人マ ンションや有料老人ホームの建設が相 次 ぎ,1988年現在で市内に14ヶ所を有す る程である。 この ことは,熱海市の高齢人 口比率の増 加に直接影響 している。そ して,これ らの施設にはほとんどの場合に首都圏の高齢者が入居 し ていると予測 され,静岡県が他県の高齢者の受 け皿 とな っていることは問題を手む ものといえ よう。
5.高
齢 者 を 含 む 世 帯 の 家 族 形 態図
5に
は,高齢者を含む世帯を,単身世帯,夫婦のみ世帯,そして高齢者以外の同居人がい るその他の世帯の3つ
に分類 して,それ らが高齢者を含む普通世帯全体の中に占める割合の変 化の様子を示 している。なお,1985年の夫婦のみ世帯数については,国勢調査において普通世 帯 と準世帯 (下宿,間借 り等)を合わせた一般世帯の集計のみ行われていたため,やむを得ず 一般世帯についての比率を用いた。静岡県全体の平均では,単身世帯,夫婦のみ世帯の割合 は着実に増えてはいるものの,全国 平均に比べ るとそれ らの値 はかな り低い。1985年で,単身世帯の割合は全国
12.0%に
対 して静 岡県は7.6%,夫婦のみ世帯の割合は全国19.1%に
対 して静岡県は12.1%と
い う状況である。しか しなが ら,図
5に
示すよ うに,高齢者を含む世帯の家族形態には市町村 ごとに大 きな差 がある。 まず,県内で も伊豆地域では単身世帯,夫婦のみ世帯の割合が高い。特 に,熱海市, 伊東市ではこれ らの割合が目立 って高 く, 4でも述べた老人マ ンション,有料老人ホームの存 在が関わっていると思われる。 これと同様の現象が,有料老人ホームのある細江町で もみ られる。
他方,伊豆地域 と同様に高齢化の進む北遠,川根地域では,単身世帯の割合は1985年現在で 決 して高い値ではない。 これは,産業の面で,観光業 と漁業が中心である伊豆地域に比べ,林
業や茶業の盛んなこれ らの地域では,家族全員で産業を支えることが必要である点が関わって いると思われ る。ただ し,北遠,川根地域 において も,夫婦のみ世帯の増加 は目立 ってお り, やがて単身世帯 も増えてい くことが予想 され る。
逆に,高齢者の単身世帯,夫婦のみ世帯の割合が極端に小 さい市町村は,静岡市 と浜松市の
静岡県における人口高齢化問題の地域性
間にある志太・ 榛原地域や遠州灘沿岸地域に多い。 これ らの地域は, 3, 4でみて きたように,
静岡市のベ ッ ドタウン化 と近年の工業化に伴 って人口の流入の多いことがわか っているが,や
はり,現在 までの時点では第
1次
産業が依然 として盛んであ り,家業を継いで両親 と同居 して いる世帯が主流のようである。そ して, これ らの地域に見 られ る住宅規模の大 きさや大学進学 率の低さに示 され る地元指向等 も背景 にあると思われる。6.結
語以上のように,静岡県下の高齢化の動向には市町村 ごとに様々な特徴がみ られることがわか った。 この結果に基づいて静岡県下を地域分けするな らば,次の
4つ
にまとめ られよう。まず第
1は
,総人口が多 く,その増減率 も安定 しているが,高齢人口の割合や高齢者のみの 単身,及び夫婦世帯の割合が確実に増えつつある地域である。 これには,静岡市,浜
松市をは じめとする県下の申核都市 とその周辺市町村が該当する。 これ らの地域には,県内の人 口が集 申 してお り,高齢者を対象 とした福祉施設は比較的進んでいるようにみえるが,実際には,例えばそれが市の中心部に偏 るなど一部の市民が利用できるにす ぎないことも少な くない。特に 静岡市のように面積の広い市町村で この傾向は顕著であり,そのような場合には市内の実態を
さらにきめ細か く把握 して対応 してい くことが必要である。
第
2に
は,総人 口の急増に伴なって相対的に高齢人口の割合が低い地域である。県内東部の 市町村が このような状態にある。交通至便の地であるため,首都圏か ら次々と新 しい産業が進 出 して来て,若い世代が流入 した。ただ し,こ うして流入 した世代が高齢になって もこの地域 に居住 し続 けるとすれば,将来の高齢化問題は一定の時期に集中 して生 じるためより厳 しいも のとなろう。 また,
もう一つの問題 として,すでに熱海市,伊東市で明 らかなように,この地 域 には高齢者のみか ら成る単身,及び夫婦世帯の割合が比較的高いことがある。 この問題は, 今後 さらに,「老後 は静岡でJとい う言葉に表われているように,首都圏か ら高齢になって流 入 して くる人々の増加を予想 させ,深刻である。第
3は
,総人口は少ないが,最近 になって人 口増加率が上昇 しつつあ り,従来か ら高か った 高齢人 口の比率は大 きな変化 はみ られず,そして,高齢者のみの世帯の割合が極端に低いとい う地域である。農林水産業が産業の中心であったところに,近年工場の進出の著 しい志太・ 榛 原地区,遠州灘沿岸地域が該当す る。 これ らの地域では,住宅規模が大 きく,高齢者の子 どもとの同居率 も高いことか ら,高齢者問題が顕在化 し難い。 しか し
,
これか ら急増が予想 されて いる寝たきりや痴果症の高齢者に対す る福祉施策を進める際に,「家族の含み資産」を理 由に 対策が遅れて しまう恐れがあるといえる。 また,第1次
産業を中心 とする従来か ら居住 し続け ている世帯 と,第2次産業に従事する新 しく流入 して来た世帯の関係 も考慮 されねばな らず, 様々な問題が潜在 していると考え られ る。第4は,総人口が少ない上に人口減少率 も高 く,過疎化による急速な人 口高齢化の問題が顕 著に表われている地域であ り
,
これには,山間部の北遠,川根地域 と半島部の伊豆地域が該当 す る。中で も,半島部の伊豆地域における高齢者のみの単身,夫婦世帯の占める割合の高 さは 最 も深刻な問題である。以上のように,静岡県下で も人口高齢化に伴な う諸問題は地域 ごとに様々であり,今後 は, 市町村 ごとに地域の実情に合わせた高齢者対策を進めてい く必要があることがわか る。 ここで, 県の高齢化対策の具体的事例 として 「高齢者介護ホーム事業」を取 り上げ,以上の地域性 との
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図
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高齢者を含む世帯の家族形態の推移097降 ,198眸 ,198昨
)
静岡県における人口高齢化問題の地域性
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森麻知子
関係を検討する。
高齢者介護ホーム (以下,介護ホームと略す)は,1986年か ら始め られた静岡県独 自の在宅 福祉施策の 1つ であ り,内容は,在宅で介護を うけている主に痴果性高齢者を日中施設で預か って,入浴・ 食事・ リハ ビリテーション等の様々なサー ビスを提供す ることにより,高齢者の 自立的生活の助長をはかると同時に,家庭での介護者の労苦を軽減するというものである。高 齢者が最後まで住み慣れた街で暮 らせるようにと,最近 「施設福祉」か ら「在宅福祉」への転 換が計 られつつあるが,在宅介護を続けてい くためには,それを支える様々な福祉サー ビスを 利用 してい くことが必須であ り,今後介護ホーム もそのようなサー ビスの柱の 1つ となってい
くと思われる。
さて,介護ホームは1989年10月現在18ヶ所設置され,さらに今年度中にも5ヶ 所が新設 され る予定である。その分布を見ると,やはり県の中核都市に多 く設置され,静岡市 に 4ヶ 所,浜
松市,沼津市,清水市 に 2ヶ 所ずつ,富士市,御殿場市,裾野市,焼津市,磐田市 はそれぞれ lヶ所 とな ってお り,郡部では,森町,蒲原町,伊豆長岡町にlヶ所ずつ設置 されているだけ である。
、
1988年の調査によると,職業が自営業や農業の家庭では介護ホームのように日中高齢者を預 けられるサービスは,利用 しやすいようであった。 しか しなが ら,その時点では介護ホームは 県内に10ヶ所 しか設置されてお らず,静岡市,浜松市のような大 きい都市では,設置数が少な す ぎ,サー ビスが利用対象者の数に対応 しきれていなかった。また,近所への気兼ね等で痴果 性高齢者を抱えなが らも利用できずにいる家族 も多いことがわか っている。
今回,介護ホームの増設 された状況を見ると,先ほど分類 した第 1の 地域,すなわち総人 口 が多 く高齢者の絶対数の多い中核都市を中心に数を増や していることがわかる。 また,高齢化 率の比較的低い東部地域で も介護ホームが新設 されているのは,産業の発達に伴いその市町村 の福祉予算が豊かであることと,首都圏か ら流入 した住民の福祉への意識が高いことなどが考 え られる。 しか し,第
3,第 4の
地域では今はまだ介護ホームの設置はみ られない。第3の
地 域では同居率が高いか ら高齢者を外へ預ける必要がないと考え られがちであるが,同居率が高 く,かつ第1次
産業従事者が多いか らこそ,
このような地域にも在宅介護を支えるサー ビスが 必要であるといえる。また,第4の
地域は同居率 も低 く,全般的に福祉行政が遅れてお り,今後 は痴果性または寝たきり高齢者への対策はもちろん,一人暮 らしの高齢者を援助する対策 も 同時に進め られ るべ きである。
最後に,県や国の レベルでは,市町村の施策に対す る財政的な援助 と,市町村間の調整,情
報交流を進めることが必要であろう。
誰
1)坂
寄俊雄 「人 口高齢化がよびかける変革 一区市町村の高齢化を中心に して一」新 日本 出版社『経済』1988年10月号
p.164下
段 ′.8〜 102)静
岡県高齢化社会対策推進会議『静岡県の高齢化の現状』1987年3月, p.8 なお,こ の資料においては,市町村別の集計を示 したのは高齢人口比率についてだけである。その 他は,すべて県全体の平均値である。3)小
川正光,小川
裕子「高齢者を含む世帯における住宅事情の地方類型」 日本建築学 会計画系論文報告集第403号,1989年9月
, p.115〜
123静岡県における人El高齢化問題の地域性 101
参 考 文 献
。
1)森幹郎 「老人問題Jミ ネルヴァ書房
,1988年4月2)石
川
雅子
,小川
正光 「愛知
1県における人口高齢化の地域間比較一国勢調査による検 討一」愛知教育大学家政学教室研究紀要第
20号,1989年f 3)働