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中華人民共和国における腐敗と反腐敗 -

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博士学位論文

中華人民共和国における腐敗と反腐敗

連続と変容の視点

2020

6

立教大学大学院法学研究科 馬 嘉嘉

(2)

目次

序章 中華人民共和国における腐敗と反腐敗研究の現状と課題

1節 中国の腐敗に関する研究

1 改革開放以前の腐敗をカバーしている研究 2 改革開放後の腐敗に関する研究

2節 中国の腐敗研究をめぐる課題—先行研究の再検討 3節 中国の反腐敗に関する先行研究及び問題点 4節 本稿の研究課題と研究方法

1 研究課題 2 研究方法

5節 本稿の利用資料及び研究の制限 1 利用資料

2 研究の制限 6節 腐敗とは何か

1 腐敗の定義に関する5つのアプローチ 2 本稿が利用する腐敗の定義

7節 本稿の構成と各章の概要

第Ⅰ部 中国の腐敗と反腐敗における連続性

1章 改革開放前の中国における腐敗の深刻さ―黒竜江省王守信横領事件をめぐる 検証

はじめに

1節 王守信事件を生み出した制度的要因 1 王守信横領事件の概況

2 腐敗の発生を促進する制度的要因 3 小括:腐敗の発生を促進する制度的要因

2節 王守信事件の摘発プロセスと『人妖之間』を巡る攻防 1 王守信横領事件はいかにして摘発されたのか

2 『人妖之間』をめぐる攻防

3 小括:改革開放以前の反腐敗の制度化のレベルの低さ おわりに

(3)

2章 改革開放後「官商」の興起―党政機関・幹部およびその家族のビジネス関与 39 はじめに

1 1980年代の党政機関・幹部のビジネス関与

1 1980年代の党政機関・幹部のビジネス関与の概況

2 ビジネスブーム・公司ブーム中での腐敗現象の典型例 2節 党政機関・幹部のビジネス関与をもたらした要因

1 党政機関・在任幹部のビジネス関与 2 幹部の若年化と機構改革

3節 政府の対応:公司整理 1 1985年上海での公司整理 2 1989年「康華」公司への整理

3 公司整理の効果の不十分とその原因 4 政策の反復と「官商」の規模

4節 「官商」の別形態:幹部家族のビジネス関与 1 幹部の配偶者・子どものビジネス関与

2 幹部家族のビジネス関与のケース

3 なぜ幹部家族のビジネス関与が禁じられないのか おわりに

3章 「制度設計」を重視した反腐敗キャンペーン1998年の反密輸反腐敗キャンペ ーンを中心に

はじめに

1 90年代の密輸と税関腐敗

1 建国以来密輸の変容と90年代密輸の規模 2 90年代における密輸と腐敗の関係

2節 密輸がもたらした影響及び反密輸反腐敗キャンペーンの直接な効果 1 関税に対する影響

2 国有企業の生産に対する影響

3 1998年の反密輸反腐敗キャンペーンにおける制度の整備 1 1998年の反密輸反腐敗キャンペーン

2 反密輸反腐敗における制度の整備 おわりに

第Ⅱ部 改革開放前後の中国における腐敗と反腐敗の変容性

(4)

4章 改革開放前後の中国における腐敗-なぜ中高級レベル幹部の腐敗が増加した のか

はじめに

1節 改革開放前後の経済腐敗の変容 1 改革開放以前の腐敗の状況

2 改革開放以前の異なるレベル幹部の腐敗の特徴 3 データから見た改革開放以降の腐敗状況 4 まとめ

2節 なぜ中高級レベル幹部による腐敗は増加したのか 1 毛沢東時代の腐敗:政治的成層と幹部階層化の影響 2 改革開放以降:経済的成層が支配的に

おわりに

5章 改革開放前後の中国における反腐敗—制度化と濫用の可能性 115 はじめに

1節 改革開放前の政治闘争と反腐敗 1 関連概念の整理

2 改革開放前の政治闘争の方式

3 改革開放以前の反腐敗:政治運動の付属物 4 まとめ

2節 改革開放以降:路線闘争の衰退と反腐敗の制度化 1 改革開放後路線闘争の衰退

2 改革開放後反腐敗の制度化—反腐敗機関の完備をめぐって 3節 濫用されかねない反腐敗——「晋江偽造薬案」を例として

1 晋江偽造薬事件の発生と中紀委の調査 2 福建省の対応と公式の調査結果 3 経済犯罪の背後の権力の攻防

4 脱イデオロギーの下で濫用されかねない反腐敗 おわりに

終章 中国の腐敗と反腐敗—連続と変容の間

1節 本稿の結論及びそのさらなる含意 1 本稿の結論

(5)

2 本稿の結論がもつさらなる含意

2節 中国の腐敗・反腐敗研究への展望——さらなる研究にむけて 付録

参考文献

(6)

要約

中国の腐敗と反腐敗は、時代の変化に伴って変容をなしているが、その連続性が看過されや すいものである。例えば、改革開放後に腐敗が深刻となったとの主張(改革開放前後の「断絶」)

や「官」と「商」の間の結託関係は 1990 年代に出現したという見方(改革開放後の 1980 年代と 1990 年代の「断絶」)である。また、中国の反腐敗について、それは革命時代から引き継いだ「運 動型強力摘発」に留まっており、「制度設計」から反腐敗策略が制定されていないと主張されて いる。しかし実際には、習近平の提唱により設立された中国国家監察委員会のような制度構築 は、江沢民・朱鎔基の時代にすでに行われたのである。しかしこのことは、中国の腐敗と反腐敗 を検討する際に、それらの変容に注意する必要がないということではなく、中国の腐敗と反腐敗 への理解を深めるために、それらの変容も考察の視野に入れる必要があるということである。改 革開放前後の腐敗の変容、特に中高レベルの幹部による腐敗の増加に関しては、既存の「機会 増加説」と「組織的インボリューション説」ではうまく解釈できていないため、新たな解釈が求めら れる。改革開放前後の反腐敗の変容については、反腐敗の制度化が進められてきたかどうかが 重点となる。

以上のことから、本稿の具体的な研究課題は次になる。腐敗に関連する課題は 3 つある。(1)

腐敗が改革開放に伴って深刻になった現象で、改革開放以前は少なかったというような主張は 事実と合うのか。(2)1980 年代には、「官」と「商」の間の結託関係がなかったのか。(3)改革開放 前後、異なるレベルの幹部(特に中高レベル幹部)による腐敗はどう変わってきたのか。また、こ の変化はどう解釈すればいいのか。反腐敗に関連する課題は 2 つある。(1)中国の運動型反腐 敗の特徴及びそれと「制度設計」の関係である。(2)改革開放前後における反腐敗の制度化は 進められてきたのか。特に、中国の反腐敗に政治闘争という非制度的なラベルを張られてきたの はなぜか。

研究方法としては、本稿は基本的に歴史研究や文献研究との方法を利用する。その上で、腐 敗と反腐敗に関する豊富なディテールを得るために、本稿では過程追跡という方法を利用し、い くつかの事例研究も行う。また、収集された様々なデータについて、時系列が十分に長い場合、

本稿では簡単な統計分析を実行する。

本稿の序章では、腐敗と反腐敗に関する先行研究を分析し、本稿の研究課題を提起し、本稿 の構成を説明する。第 1~3 章は、本稿の第Ⅰ部とし、主に具体的な事例や腐敗現象の詳細な

(7)

分析を通して、腐敗と反腐敗の連続性に注目し、前文にあげた研究課題に答える。第 4~5 章は 第Ⅱ部とする。第Ⅱ部は、第 4~5 章を含めて、改革開放前後の腐敗と反腐敗の変容に焦点を 当てて、前述した研究課題に応答する。

第 1 章では、改革開放以前の腐敗が「少なかった」と主張する先行研究に対し、1978 年に摘発 された黒竜江省王守信横領事件を取り上げて事例研究をする。事例研究によって、改革開放前 に腐敗を引き起こす制度的要因があったことが分かる。また、第 1 章では、王守信横領事件に対 する摘発過程(反腐敗)についても分析する。この分析を通じて、筆者は地方で実施された「運 動型反腐敗」の特徴及び改革開放以前における反腐敗の制度化のレベルの低さを検証した。

第 2 章では、1980 年代から盛んに行われるようになった「官商」現象を中心に考察し、中国の

「官」と「商」の間の結託関係が 1980 年代すでに形成されつつあったことを明らかにする。これに よって、先行研究が指摘する「1980 年代は理想主義的な改革段階である」ことが不適切であると 指摘する。

第 3 章では、1990 年代末期に江沢民と朱鎔基によって開始された大規模な反密輸反腐敗キャ ンペーンを取り上げ、中国の「運動型強力摘発」における「制度設計」を考察する。この事例研究 によって、中国の反腐敗には「制度設計」のみでなく、「運動型強力摘発」と「制度設計」を同時 に進めることも可能である点を確認する。中国の反腐敗についての先行研究の見解は修正する ことが求められる。

第 4 章では、異なるレベルの幹部による腐敗の深刻さの変化を通じて、改革開放前後の中国 における腐敗の変化を分析する。本章の考察により、中高レベルの幹部の腐敗は改革開放以 降、次第に深刻化していったことと、基層レベルの幹部の腐敗は、改革開放前にすでに普遍的 に存在していたことが分かる。その背後の原因については、本稿は先行研究の不足を指摘した 上で、改革開放前後の中高レベルの幹部を取り巻く政治的及び経済的環境の変化を注目し分 析を行い、幹部たちの改革開放後の「相対的剥奪感」の存在を確認した。

第 5 章では、改革開放前後における反腐敗の変容を考察し、改革開放前後、中国の反腐敗の 制度化が進められてきたことを確認した。そして、改革開放以降、路線闘争の衰退や、思想闘争

・イデオロギー闘争の衰退により、制度化されてきた反腐敗は政治闘争の名目として利用される ようになった。

終章では、本稿の内容をまとめて結論を導く。本稿では、腐敗と反腐敗は連続性と変容性を同 時にもつ社会現象であり、既存の先行研究はこの両方の特徴にうまく対処できていないと指摘 する。最後に、筆者は中国の腐敗と反腐敗研究について展望する。腐敗研究は、ますます複雑

(8)

化してきている「官商」に重点を置いて研究を進めるべきではないかと指摘し、反腐敗研究は、

「運動型ガバナンス」の視点から反腐敗運動を考察すべきではないかと主張する。

参照

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