九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
LEVEL SET METHODの高速化および医療画像への応用 に関する研究
由井, 俊太郎
https://doi.org/10.15017/1441253
出版情報：Kyushu University, 2013, 博士（工学）, 課程博士 バージョン：
権利関係：Fulltext available.
氏 名 ：由 井 俊 太 郎
論文題名 ：LEVEL SET METHODの高速化および医療画像への応用に関する研究
区 分 ：甲
論 文 内 容 の 要 旨
カ メ ラ やCT、MRな ど か ら 得 ら れ る 画 像 情 報 や 、 レ ー ザ レ ン ジ フ ァ イ ン ダや ス テ レ オ カ メ ラ か ら 得 ら れ る 距 離 画 像 情報 か ら 、 ユ ー ザ が 注 目 す る 領 域 を 自 動 的 に 抽出 す る セ グ メ ン テ ー シ ョ ン 手 法 の 一 つ に、Snakesに 代 表 さ れる 動 的 輪 郭 モ デ ル が あ る。従 来 の 動 的 輪 郭 モ デ ル は、
対 象 領 域 の 分 離 、 結 合 な ど位 相 変 化 へ の 対 応 が 困 難 で あ る こ と が 問 題 であ っ た が 、 位 相 変 化 に 対 応 可 能 な 動 的 輪 郭 モ デル と し て 、Osher、Sethianら に よ りLevel Set Methodが 提 案 さ れ 、 医 療 画 像 処 理 や カ メ ラ 画 像内 の 移 動 体 検 出 、 追 跡 な ど で 利 用 さ れ て い る。 し か し 、Level Set Methodの 実 現 に は 多 く の 計 算 量 が 必 要 で あ り 、実 応 用 に は 計 算 量 の 削 減 に よ る 高 速 化 が 課 題 で あ っ た。さ ら に 、医 療 画 像 に お い て 腫 瘍 領域 の 自 動 抽 出 にLevel Set Methodを 適 用 し た 場 合 、 輪 郭 の 変 形 を 制 御 す る 従 来の 成 長 速 度 の 定 式 化 で は 対 象 領 域 の 抽 出 精 度が 低 い た め 、Level Set Methodの 医 療 画 像 分 野 へ の 実 応 用 に は 抽 出 精 度 向 上 が 課 題 で あ っ た 。
本 論 文 で は 、Level Set Methodの 高 速 化 手 法 と し て 、Level Set Methodの 計 算 に 不 可 欠 な 最 近 傍 曲 面 探 索 を 高 速 に 実 現す るFast Narrow Bandと 、 そ の 応 用 例 と し てCT画 像 を 用 い た 肝 癌 に 対 す る 病 変 候 補 位 置 の 自動 検 出 手 法 を 提 案 し て い る 。
Fast Narrow Bandは 、Level Set Methodの 計 算 に お い て 最 近 傍 曲 面 を 探 索 する 際 、 曲 面 か ら の 距 離 情 報 を 備 え た 距 離 マッ プ を 利 用 し 、 探 索 が 必 要 な 曲 面 点 を 限 定 する 。 こ れ に よ り 効 率 的 な 最 近 傍 曲 面 点 の 探 索 処理 を 実 現 し 、 曲 面 形 状 進 化 を 大 幅 に 高 速 化 して い る 。 ま た 、FNB を 用 い た 曲 面 形 状 進 化 は 、処 理 が 高 速 で あ る に も か か わ ら ず 、 従 来 手 法で あ るNarrow Band に 対 し て 原 理 上 、 精 度 の 低下 が な い こ と を 指 摘 し て い る 。
本 論 文 は ５ 章 か ら 構 成 さ れる 。第 １ 章 は 序 論 で あ る 。第 ２ 章 で は 、Level Set MethodとLevel Set Methodを 用 い た 動 的 輪 郭 モ デ ル に 関 す る 関 連 研 究 に つ い て 述 べ て い る 。第 ３ 章 では 、Level Set Methodの 高 速 化 手 法 と し てFNBを 提 案 し て い る。ま た 距 離 画 像 を 用 い た3次元 物 体 幾 何 モ デ リ ン グ に 適 用 し 、 解 像 度を 変 化 さ せ な が ら 曲 面 形 状 進 化 を す る こ と で、 よ り 高 速 な 曲 面 再 構 成 を 実 現 す る 手 法 を 提 案し て い る 。 複 数 物 体 か ら な る シ ー ン や 複 雑 な位 相 を 有 す る 物 体 の 距 離 画 像 に 提 案 手 法 を 適 用し 、 実 験 に よ り 提 案 手 法 の 性 能 を 確 認 し て いる 。 第 ４ 章 で は 、 医 療 画 像 分 野 へ の 応 用 と し て 、CT画 像 に 対 す る 肝 癌 の 自 動 検 出 手 法 を 提 案し て い る 。提 案 手 法 は 動 脈 相 を 用 い た 腫 瘍 の 自動 検 出 法 で あ り 、 低 コ ン ト ラ ス ト 画 像 や 雑 音に 対 し て も 頑 健 に 腫 瘍 を 検 出 す る 新 た な 成 長 速度 の 設 定 法 を 示 し て い る 。 提 案 手 法 は 、 様 々な 形 状 、 サ イ ズ の 腫
瘍 が 検 出 可 能 で あ り 、 ま た腫 瘍 個 数 の 事 前 知 識 が 不 要 で あ る 。 提 案 手 法の 有 効 性 を 確 認 す る た め 、実 際 の 患 者 の 匿 名 化CT画 像 に 提 案 手 法 を 適 用 し て 肝 臓 腫 瘍 の 検 出実 験 を 行 い 、従 来 の Level Set Methodに 比 べ て 検 出 精 度 が 向 上 す る こ と を 確 認 し て い る。第 ５ 章 で は 、結 論 と し て 本 論 文 で 得 ら れ た 結 果 を 統括 し 、 今 後 の 課 題 を 述 べ て い る 。
