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[資料] 文書提出義務に関する判例について(五)

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[資料] 文書提出義務に関する判例について(五)

その他のタイトル [Material] Die Rechtsprechung zur

Vorlegungspflicht der Urkunde im Zivilprozes (5)

著者 上野 泰男

雑誌名 關西大學法學論集

49

2‑3

ページ 367‑423

発行年 1999‑09‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00024474

(2)

8 7

文書提出義務に関する判例について田

大阪地決昭六

O ・

一・‑四判夕五五二号一九七頁

1本資料の対象

2

文 書

提 出

義 務

に 関

す る

規 定

の 変

3新民事訴訟法︵平成八年法律第一

0

4本資料の目的

二文書提出義務に関する判例の紹介とコメント

1

1 8

︹19︺ !

4 0

︹41︺ !

6 1

︹62︺ !

8 6

︹87︺ !

1 0 5

昭和五六年七月一八日︑大阪府地方労働委員会第二審問室前廊下において︑訴外 A が数人共同による暴行を受けたとの事実

~

文書提出義務に関する判例について

︵ 五 ︶

(3)

︵ 要

旨 ︶

Y は第二回口頭弁論期日において陳述された昭和五七年︱一月二九日付準備書面において︑ X が A に対する暴行事件の加害

者であるとの嫌疑が︑本件令状請求時点において存在していたとの Y

の 主

張 を

基 礎

づ け

る た

め ︑

Y 警察の司法警察員が A ︑ B

お よ び C を取り調べた事実︑および︑その供述の具体的内容について言及しているが︑﹁ Y の右主張は︑本件文書の存在に間

接的に言及し︑その内容を要約したものというぺく︑民訴法三︱二条一号にいう文書の﹃引用﹄にあたるものと解するのが相

当である﹂が︑本件供述調書の所持者である Y は本件文書を引用しておらず︑民訴三︱二条一号にいう﹁当事者﹂とは︑﹁当

る ︒

第四九巻第ニ・三合併号

につき︑加害者は X であるとの嫌疑のもとに︑大阪地検検察官の指揮を受けた y

︵ 大

阪 府

︶ 警

察 の

司 法

警 察

員 の

請 求

に よ

り ︑

大阪地裁裁判官によって捜索差押許可状が発付され︑この令状に基づいて︑ X

︵ 労

働 組

合 ︶

の 事

務 所

X の自宅において︑捜

索および差押えが行われた︒ X らは︑本件令状やこれに基づく捜索・差押えは︑ X が本件暴行現場に居合わせていなかった可

能性があることを認識しながら︑ X に対する敵意から請求され︑十分な審査を行うことなく発されたもので違法であるとして︑

Y

︵ 国

︶ お

よ び

Y ︵ 大 阪 府 ︶ に 対 し て ︑ 国 家 賠 償 請 求 訴 訟 を 提 起 し た ︒ Y らは︑本件令状の請求および発付並びにこれに基づ

<捜索差押えはいずれも適法に行われたと主張している︒

本 件 令 状 の 請 求 に 先 立 っ て ︑ Y 警察の司法警察員は︑刑事訴訟法に基づき︑本件事件の被害者である A ︑目撃者である B お

よ び

C(X

らの主張によれば︑いずれも使用者側の者︶を取調べて供述調書を作成し︑この供述調書が本件令状の請求の際︑

裁判官に提出されていた︒そこで︑ X らは︑本件令状の請求および発付並びにこれに基づく捜索差押えが違法であることを立

証するため︑前記 A ︑ B

お よ

C の本件供述調書

( A

については昭和五六年七月ニ︱日および九月四日付︑ B については昭和

五六年七月ニ︱日および八月二二日付︑ C については七月二三日付︶につき︑民訴三︱二条︵新ニニ 0

条 ︶

段に基づいて︑文書提出命令の申立てをした︒なお︑ Y ︵大阪地検検察官︶は本件各供述調書を所持していることを認めてい 関法

申立却下

二 ︱

一 号

お よ

び 三

号 後

︵ 三

六 八

(4)

文書提出義務に関する判例について田

該文書を訴訟において自ら引用した当事者を指すものであり︑共同訴訟人の一人が訴訟において文書を引用した場合における 当該文書を所持している他の共同訴訟人は︑同条項の﹃当事者﹄には含まれないものと解される︒それ故︑被告

Y が同号に

よって本件文書の提出義務を負うものということはできない﹂と判示して︑本件供述調書は引用文書に該当しないとされた︒

次に︑本件供述調書が法律関係文書に該当するかにつき︑﹁法の定める手続によらなければ捜索及び差押えを受けることは ないという法的地位は︑何人に対しても保障されている﹂から︑本件令状が発付され︑これに基づいて捜索差押えがなされた

こ と

に よ

り ︑

X ら

Y との間には右令状の発付の適法性をめぐって X らの法的地位の侵害の有無を内容とする法律関係が発

生した﹂とし︑また︑﹁民訴︱︱︱︱二条三号後段にいう﹃法律関係﹄を私法上の契約関係に限定して認めることには合理的根拠

がなく︑前示のような法律関係も︑右規定にいう﹃法律関係﹂に該当するものと解すべきである﹂とし︑本件文書︵供述調

書 ︶

は ︑

X ら

Y との間の法律関係につき作成された民訴法三︱二条三号後段の文書に該当するものといわなければならな

しかし︑証人義務同様︑文書提出義務も公法上の義務であるから︑文書の所持者が公務員である場合には︑﹁公務員の職務 上の秘密にかかる事項を内容とする同法三︱二条三号後段の文書の提出については︑証人尋問に関する同法二七二条︵新一九 一項及び二八一条︵新一九七条︶の規定が準用ないし類推適用されるものと解するのが相当である﹂とし︑本件文書は︑

﹁刑事訴訟法四七条本文にいう﹃訴訟に関する書類﹄に該当することが明らかであるところ︑右規定は公判の開廷前における

﹃訴訟に関する書類﹄の公開の禁止をその保管者に義務づけているから︑公判の開廷前においては法律上当然に右書類の内容 が公務貝の職務上の秘密に属するものとされ︑右書類の所持者は︑その限度で前記文書提出義務を免れているものというべき である﹂とし︑同条但書は公益の必要その他相当と認められる場合には公開を許容しているが︑﹁右の相当性の判断は︑当該

︵ コ

メ ン

ト ︶

書類の保管者の裁量に委ねられているものと解される﹂とした︒

一 条 ︶

い ﹂

と し

た ︒

二 ︱

︵ 三

六 九

(5)

8 8

事 実

︶ 0 東京高決昭六 ・ニ・一四判時︱︱四八号︱ニニ頁 がないか︱つの問題提起となるものと思われる﹂とする︒ 第四九巻第ニ・三合併号

︵ 三

0 )

本件は引用文書︵引用文書についての判例として︑︹ 1

︺ ︹

2 2 ︺がある︶に関する判例であり︑とりわけ︑共同訴訟人の一人

が︑他の共同訴訟人の所持する文書を引用した事例として珍しい例に属する︒判夕の本件コメントも︑﹁本件において争点と

なった共同訴訟人が引用した文書を所持する他の共同訴訟人﹂が︑民訴三︱二条一号﹁にいう当事者にあたるかについては従

来議論されたことがないところであるが︑共同訴訟人の共同関係の性格︑当該文書の作成経緯から別異の見解をとり得る余地

この点については︑事実︑あまり論じられていないが︑ Y が自己に有利に本件供述調書を引用した結果は︑証拠共通の原則

に よ

り ︑

Y にも有利に働くはずである︒そうすると︑引用文書に提出義務を負わせる根拠は文書所持者である Y

に も

妥 当

し ︑

や は

Y に本件供述調書を提出させないと︑公正でないといえよう︒刑訴手続をもにらんだ本件 Y と Y

と の

関 係

を 考

え て

も ︑

両者は一体であるといってよい︒その意味で︑共同訴訟一般にそういえるかはともかく︑本件では︑ Y に引用文書として文書

提出義務を負わせるべきである︒

本決定は︑文書提出義務に︑民訴二七二条︑二八一条が類推適用されるとの通説︵判例として︑︹17︺︹

2 6 ︺がある︶を前提

に︑刑訴四七条を基礎に公務員の守秘義務ありとして︑文書提出義務を否定した︒しかし︑民事訴訟法の文書提出義務が公益

に基づくものであることを考えれば︑文書提出義務を肯定することも不可能でなく︑特に︑刑訴四七条但書の相当性の判断は

保管者に委ねられているとすることは︑憲法八一条︑八二条に照らして疑問である︒少なくとも本件が不起訴事件であること

を考慮すれば︑刑訴四七条の公開禁止の根拠などとの関係で︑より慎重な判断が必要だったように思われる︒

文書提出命令関係裁判例集一九五頁

関 法

二 ︱

(6)

文書提出義務に関する判例について回

︵ 要

旨 ︶

Y から即時抗告が申し立てられた︒

二 ︱

Y ︵ 静 岡 県 ︶ 警 察 の 警 察 署 長 A は︑昭和五五年五月二七日︑精神衛生法二四条に基づき︑保健所を通じて B(Y 県知事︶に

対 し

X には精神障害のため他人に害を及ぼすおそれがあると認められる旨の通報をした︒ X

は ︑

A の本件通報は精神衛生法

ニ四条の要件を欠く違法なものであることを理由に︑ Y に 対 し 損 害 賠 償 請 求 訴 訟 を 提 起 し ︑ A が X

と 面

談 す

る こ

と も

X

の 当

時の状態等を調査することも︑配布された告発ビラの内容の真偽等についての確認を一切することもなく︑本件通報をおこ

なったことを立証するため︑警察官

C(A

が署長をつとめる警察署所属の警察官︶が昭和五五年五月二六日付で作成した捜査

報告書の提出を︑民訴三︱二条︵新ニニ 0 条︶三号により求めた︵なお︑ A

の 本

件 通

報 は

文 書

で さ

れ た

が ︑

Y から任意提出済

で あ

る ︶

原審では、本件文書は民訴―—二ニ条三号前段の利益文書にあたるとして、文書提出命令が発されたようである。これに対し、

取消・申立却下

﹁文書提出命令の制度は︑元来文書所持者が原則的に有すぺき処分の自由を特に制限し︑民事訴訟法三一六条︵新ニニ四

条︶以下の不利益ないし制裁の威嚇のもとに文書を訴訟の場に提出させるものである﹂との前提から︑利益文書の意義を﹁拡

張的に解釈し︑例えば結果的にその内容が挙証者の利益となるような文書をすべてこれに当たるとするのは︑制度の目的にそ

ぐわない﹂とし︑民訴︱︱︱︱二条三号前段の利益文書とは︑﹁挙証者のした給付に対する領収書︑挙証者に対する代理委任状あ

るいは挙証者に関する身分証明書等のように︑挙証者の権利︑権限あるいは法的地位等を直接証明することを目的として作成

されたものをいうと解するのが相当である﹂とした︒そして︑本件文害は C によって︑﹁その職務を遂行する目的で作成され

たものに過ぎず︑挙証者の権利等を直接証明することを目的として作成されたものでないことが認められるから︑同法三︱二

条三号前段の文書に該当しないことは明らかである﹂とした︒

次いで︑民訴三︱二条三号後段の法律関係文書とは︑﹁契約書︑地代家賃通帳等のように挙証者と所持者との間の法律関係

︵ 三

七 一

(7)

文書には該当しないとした︒

第 四

九 巻

第 ニ

・ ︱

︱ ︳

合 併

︵ 三

七 二

について作成されたもの︑及び印鑑証明書等のように両者間の法律関係と密接に関連する事項について作成されたものをい

う﹂が︑﹁内容上挙証者と所持者との法律関係に関係ある文書であっても︑それらが専ら所持者の自己使用のために作成され︑

その内容が公表されることを全く予定していないような内部的文書にとどまるものであるときは︑右規定にいう文書には該当

しないと解するのが相当である︒けだし︑右のような文書は︑その性質上︑作成等の職業上の秘密に関する事項︑関係者の個

人的秘密に関する事項︑あるいは作成者等の個人的意見に関する事項等が記載されることが多く︑これが後になって作成者等

の意思に反して公表されることになった場合には︑作成者が不利益を被り︑その自由な活動が不当に阻害される結果を招来す

るおそれがあることは見易い道理であり︑このようなことは到底法の予定するところではないと解されるからである﹂とした︒

そして︑本件捜査報告書は︑﹁手続の適正担保等の見地から法令上特に作成義務が課されているような性質のものではなく︑

c

︺が外部に公表することを予定しないで︑その職務遂行上の便宜から作成した文書であると認められる﹂から︑法律関係

︵ コ

メ ン

ト ︶

本件に関する判時のコメントは︑利益文書性を否定した部分につき︑利益文書の意義につき﹁一般に説かれているところか

らすれば︑本決定の説示するところは正当と思われ﹂るとする︒しかし︑むしろ利益文書に関する厳格な立場に立つものとみ

るべきで︑この決定の立場が一般的に認められている立場であるとは決していえない︒

ま た

A が本件通報をすることにより︑ X と y との間には︑本件通報の違法性をめぐり︑ X の法的地位の侵害の有無・損害

賠償請求関係という法律関係が成立したとみることができるので︵︹

8 7 ︺の要旨参照︶︑本件捜査報告書はこれに密接な関連を

有する文書として︑法律関係文書にあたることになる︒本決定は︑法律関係文書における法律関係を契約関係に限定するよう

な口ぶりであるが︑今日ではこのような解釈は少数説である︒また︑内部的文書であるとする判示も極めて抽象的であり︑具

体的事実の主張疎明なしに︑職業上の秘密︑個人的秘密︵本件では︑ X が文書提出命令を求めている以上︑ X 個人の秘密の保 関法 二︱八

(8)

8 9

文書提出義務に関する判例について回 起訴処分︵起訴猶予︶を受けている︒ 護は問題にならない︶の公表による不利益を被るおそれ︑自由な活動が阻害されるおそれを云々するだけで︑内部的文書であ るとした点も不当である︒仮に︑ C が警察官として個人的意見を記載していたとしても︑それが基礎となって本件通報がなさ

れているのであり︑純然たる個人的意見とはいえないであろうし︑それが公表されることによって︑自由な︵職業︶活動が阻

害されるおそれがあるという点については︑公表されることに耐えられない意見に基づいて︑精神衛生法二四条に基づく通報

がなされているとしたら︑むしろその適正さに重大な疑念が生ずるのであり︑このような抽象的・一般的な指摘だけで︑内部

的文書として文書提出義務を否定するのは不当であるといわなければならない︒

文書提出命令関係裁判例集四二八頁

ニ ー

X は

︑ 昭

和 五

五 年

0 月

0 日︑訴外 A の居室付近で発生したとされる住居侵入被疑事件につき︑翌一 0 月ニ一日午後三時

二 0

分 頃

Y ︵千葉県︶の地方公務員である警察官に令状なしで逮捕されたこと︑右逮捕に引き続いて︑右警察官らにより自

白の強要などの違法な取調べを受けたこと

( 1

0 0 0 月ニ︱日午後四時三 分頃ー六時三

分 頃

︶ ︑

そ の

後 10 月ニ︱日午後六

時 三

0 分頃︑罪を犯したことを疑うにたりる充分な理由も︑急速を要する事情もないにもかかわらず違法な緊急逮捕をされた

こと︑これら違法な捜査に基づき勾留されたこと

( 1

0 月二三日︶︑家宅捜査に際し︑令状記載の差し押さえるべき物以外の

物を持ち去ったことなどを理由に︑国家賠償法一条により︑ Y に対する損害賠償請求訴訟を提起した︒なお︑ X は︑その後不

こ の

訴 訟

に お

い て

X は︑民訴三一九条︵新二ニ六条︶による送付嘱託により︑記録保管者である

z

︵ 千

葉 地

方 検

察 庁

︶ か

︵ 事

実 ︶

判夕五六 0 号一三九頁 東京高決昭六 0 ・ニ・ニ一判時︱︱四九号一︱九頁

︵ 三

七 三

(9)

民訴三︱二条三号前段の利益文書とは︑﹁挙証者の利益になるように︑その地位︑権限︑権利を証明し︑又は基礎づける目

的で作成された文書及びそれに準ずる文書であると解するのが相当である﹂が︑捜査書類という本件文書の性格に照らし︑

﹁ X の利益のために作成されたものと推認するに足りない﹂とした︒

民訴三︱二条三号後段の法律関係文書とは︑﹁挙証者と所持者との法律関係それ自体ないしはそれに関連ある事項を記載し

た文書︑又は当該法律関係を構成する要件事実が記載された文書を指すものと解すべきところ︑挙証者たる X と本件関係捜査

機関︵文書の所持者たる

z

を含む︶との間には︑本件被疑事件による捜査法律関係︑それにともない X の身体の自由等の権利

が右捜査機関により制約されたという法律関係があるものということができるから︑本件捜査書類は文書の性質・作成目的等

に照らし︑三号後段文書に当たると解する余地がある﹂とした︒

しかし︑本件文書は︑ N が不起訴記録の一部として保管しており︑刑訴四七条本文にいう﹁訴訟に関する書類﹂に該当する

︵ 要

旨 ︶

ら任意提出のあった本件被疑事件の不起訴記録のうち︑実況見分調書︵二通︶︑捜索差押許可状︵二通︶︑捜索差押調書︵ニ

通︶︑逮捕状請求書︑逮捕状︑勾留状請求書以外の捜査書類である︑① A ら五名の検察官︑警察官に対する供述調書︑② X に

ついて実施されたポリグラフ検査結果に関する報告書︑③

x

方において行われた捜索差押手続において作成された書類︵捜索

差押許可状︑捜索差押調書を除く︶︑④ X についての逮捕状請求書および勾留状請求書に添付された被疑事実を証する書面

︵逮捕状請求書︑勾留状請求書を除く︶︑⑤ A 方で採取された指紋照会結果および足跡鑑定等調査結果に関する書類︑⑥警察官

作成の警察署長への捜査報告書︑その他︑本件被疑事件の捜査手続に関して作成された書類の提出を︑民訴三︱二条︵新ニニ

0 条︶三号前段および後段に基づいて求めた︒

原審では︑本件文書は民訴三︱二条三号前段および後段の文書には該当しないとして︑申立てを却下したようである︒ X 即

時 抗

告 ︒ 関法 第四九巻第ニ・三合併号

抗告棄却

ニ ニ

︵ 三

七 四

(10)

文書提出義務に関する判例について固

A '/  

ので︵刑訴四七条本文は﹁訴訟に関する書類は︑公判の開廷前には︑これを公にしてはならない︒﹂旨規定する︶︑ N は︑刑訴 四七条但書に該当する場合を除き︑守秘義務を負うとした︒そして︑﹁民事訴訟法=二ニ条所定の文書提出義務は︑裁判所の 審理に協力すべき公法上の義務であって︑基本的には証人義務︑証言義務と同一の性格のものであり︑文書所持者にも同法二

七二条︵新一九一条︶︑二八一条︵新一九一条︶ 一項一号が類推適用されるものと解すぺきであるから文書所持者に法定の守

秘義務のあるときは︑該所持者はその限度で文書の提出義務を負わないものといわなければならない﹂とした︒なお︑刑訴四 七条但書は﹁公益上の必要その他の事由があって︑相当と認められる場合は︑この限りでない︒﹂と規定するが︑﹁右の公開す るか否かの相当性の判断は︑被疑者その他捜査協力者及び刑事訴訟関係人らの名誉︑プライバシーを保護し︑また︑刑事裁判 開始前に︑裁判に対して外部から不当な圧力の加えられることを防止し︑刑事司法手続の独立公正を維持しようとする同条の 立法趣旨に照らし︑書類の内容を把握している当の保管者︵本件においては起訴・不起訴の権限を独占し︑本件被疑事件を管

掌する

z )

に委ねられている﹂とした︵このようにして︑﹁刑訴法四七条所定の﹃訴訟に関する書類﹄を利用しようとする場 合には︑民事訴訟法三一九条︵新二ニ六条︶に定める文書送付の嘱託により︑右書類の保管者に対し任意に裁判所へ提出する

ことを求めるほかないものといわざるをえない﹂とする︶︒

︵ コ

メ ン

ト ︶

本件と同じく︑捜査書類の文書提出命令が問題になった事件として︑︹

7 9 ︺

︹ 8

7 ︺

が あ

り ︑

本 件

は ︹

8 7

︺ と

同 じ

理 由

で ︑

文 書

提出義務を否定するものである︒なお︑捜査記録が法律関係文書にあたることは︑︹87︺がより明確に判示する︒

被告事件終了後にあっては︑何人も訴訟記録の閲覧をすることができる︵刑訴五三条︶︒この場合との比較でいえば︑事件 が不起訴状態にあるときにも︑一定の場合には︑被疑者に閲覧請求権を与えるぺきであるように思われる︒不起訴処分によっ ても公訴権は消滅しないとの理由で︑公訴時効完成まで不安定な状態にしておくことは︑少なくとも立法論として問題であろ

︵ 三

七 五

(11)

9 0

民訴三︱二条一号が引用文書につき文書提出義務を課しているのは︑﹁当該文書を所持する当事者においてその存在を主張

し裁判所に自己の主張が真実であることの心証を一方的に形成される危険を避けるため︑当該文書を相手方の批判にさらすの

が公正であるという考量に基づくものであると解される﹂とし︑そうすると︑引用文書とは︑﹁当事者の一方が訴訟において

立証それ自体のためにする場合だけに限られず︑その主張を明確にするために︑文書の存在について︑具体的︑自発的に言及

し︑又はその存在・内容を積極的に引用した場合における当該文書を指すものと解するのが相当である﹂とした︒本件文書に ︵ 要 旨 ︶

申立却下 第四九巻第ニ・三合併号

文書提出命令関係裁判例集九九頁

~

X は ︑

Y ︵兵庫税務署長︶から︑昭和五一年から昭和五三年までの所得税の申告に対する更正決定を受けたので︑その取消

しを求める行政訴訟を提起した︒この訴訟において︑ X

は ︑

Y がした更正決定の根拠は︑調査により所得の実額を算出し︑そ

れ が

X の申告と差異があるということではなく︑全く推計によってなされたものであり︑その推計の根拠として︑﹁青色申告

書により確定申告をしている者﹂の中から類似同業者を選出し︑同業者の青色申告決算書に基づいて同業者率その他の計数を

算 出 し た と さ れ て い る の で ︑ Y 主張の同業者の選定が機械設備の程度︑原材料費の多寡︑従業員数などを無視するなど恣意的

で同業者率に根拠のないことを立証するため︑ N (国︒保管場所は西宮税務署︶に対し︑西宮税務署あてに提出された塗装業

者の昭和五一年から五三年までの青色申告書および同書添付の決算書一切︵但し︑提出はその写しで︑業者名︑住所を黒塗

り︶の提出を︑民訴三︱二条︵新ニニ 0 条︶一号に基づいて求めた︵なお︑ X は︑申告書提出当時︑西宮市に居住していたが︑

その後神戸市北区に転居したため︑更正決定は Y ︵兵庫税務署長︶から受けることになった︒転居がなければ︑西宮税務署長

を被告および文書提出命令の相手方としていたであろうと考えられる︶︒ ︵ 事 実 ︶

神戸地決昭六

0•四・――判夕五五六号ニニ七頁

関法

︵ 三

七 六

(12)

9 1

文書提出義務に関する判例について固

神戸地決昭六

0•

四・一八判夕五五六号ニニ七頁

こ ︒

い て

は ︑

Y は︑準備書面において︑伯﹁青色申告書により確定申告をしている者﹂︑閲﹁同業者の各年分の青色申告決算書

に基づき同業者率を算出すると︑⁝⁝﹂︑および︑団﹁右同業者率︑算定の基礎とした各計数は︑同業者の青色決算書に基づ くものであり︑⁝⁝﹂の三ヶ所において︑本件文書に言及しているが︑いの言及は﹁青色申告書という言葉を用いて一般的概 括的に主張したものと解されるが︑それ以上に本件申立てにかかる青色申告書の存在について具体的︑自発的に言及し︑又は︑

その存在・内容を積極的に引用したものとはとうてい解されない﹂とし︑⑯団の言及は︑﹁その主張の趣旨内容から同業者選 定基準に基づき選定された同業者︵昭和五一年分は四名︑同五二年分は八名︑同五三年分は九名︶の青色申告決算書に限定し て用いていることは明らかであり︑申立人が提出を求めるようなすべての塗装業者の昭和五一年から同五一二年までの青色申告 決算書の存在について具体的︑自発的に言及し︑又はその存在・内容を積極的に引用したものとはとうてい解されない﹂とし なお︑裁判所は︑文書の所持者である西宮税務署長が民訴法=二ニ条一号の当事者に該当するかどうかについては問題のあ

るところであるがと︑問題の指摘はしたが︑判断を示さなかった︒

︵ コ

メ ン

ト ︶

Y

の準備書面における本件文書への言及のうち︑国の部分が一般的・概括的であるのは要旨の指摘する通りである︒しかし︑

閲団の言及は︑少なくとも︑同業者︵昭和五一年分は四名︑同五二年分は八名︑同五三年分は九名︶の青色申告決算書に関す る限り︑これに基づいて所得金額を集計したことが主張されているのであるから︵本件に関する判夕のコメント参照︶︑これ ら文書が引用文書にあたることは︑むしろ明らかであり︑この限度で︑文書提出命令が認められるべきである︒なお︑本却下

決 定 に 対 し て は ︑ X から即時抗告があったが︑棄却された︵︹

︺ 9 3

参 照

︶ ︒

~ ︵

三 七

七 ︶

(13)

の文書に該当しないものというべきである﹂とした︒ 存在するものについてされた︒ ︵

要 旨

申立却下 号に基づいて求めた︒ 第四九巻第ニ・三合併号

文書提出命令関係裁判例集一 0

二 頁

ニ ニ 四

︵ 三

七 八

本件本案は︑道路騒音および排気ガス等によって被害を被っている X ら一五 0

名 が

Y ︵阪神高速道路公団︶に対し︑本件

道路を自動車走行の用に供することの差止と損害賠償を求めた︑いわゆる国道四三号線・阪神高速道路騒音排気ガス規制等請

求訴訟である︒ところで︑ Y は︑昭和五一年七月ニー日付の建設省都市局長および道路局長の﹁高速自動車国道等の周辺にお

ける自動車交通騒音に係る障害防止について﹂と題する通知に基づく防音工事助成の対象となるか否かを判定するため︑ X ら

の居宅において︑昭和五一年七月=︱‑日以降︑深夜または早朝の一時間以内において五回の騒音測定を実施していた︒そこで︑

x

ら は

X らの居住建物の開口部における夜間の騒音レベルの実測値が六五ホン︵中央値︶に達していることを立証するため︑

Y がした上記騒音測定の測定位置︑測定時間およびその結果を記載した書面の提出を︑民訴︱︳二二条︵新ニニ 0

条 ︶

一 号

︑ 三

x

らすべての原告について Y は本件騒音測定を行ったわけではなかったので︑以下の判示は︑騒音測定が行われ本件文書が

本件文書が民訴三︱二条一号の引用文書にあたるかにつき︑﹁当事者が当該訴訟の口頭弁論や準備書面等においてその存在

や内容等に言及し︑自己の主張の根拠や補助として用いた文書をいうものと解すべきところ︑ X ら主張の Y の準備書面等にお

い て

は ︑

Y が大多数の X らを含む沿道住民について一定の実施手順で防音工事助成を行っている事実が主張されているに止ま

り︑本件文書につき何ら言及するところはないから︑これが引用されたものでないことが明らかであり︑本件文書は同号所定

同様に本件文書が民訴三︱二条三号前段の利益文書にあたるかにつき︑利益文書とは︑﹁挙証者の地位︑権利又は権限を直 ︵

事 実

︶ 関法

(14)

文書提出義務に関する判例について田 との認定をしなかったのはそのためであろう︶︒ 接証明し又は基礎づけることを目的として作成された文書をいうものと解すべき﹂であるとし︑本件文書がこれに該当しない

最後に本件文書が民訴︱︱二二条︱‑︳号後段の法律関係文書にあたるかにつき︑法律関係文書とは︑﹁これによって当該訴訟に

おいて争われている法律関係の発生︑変更若しくは消滅の事実又は右法律関係の内容若しくは効力を直接証明することができ

る文書か︑あるいは右法律関係の形成を目的として作成された文書をいうものであり︑当該訴訟において争われている法律関

係とは別個の法律関係について作成された文書は︑これに該当しないものというぺきである﹂とし︑本件文書は︑﹁ X らの住

宅について防音工事の助成契約を締結する前提として︑ Y がその内部基準として助成実施についての要件該当性を審査するた

め行った騒音測定の結果を記載したものであるから︑本件訴訟において争われている法律関係︵損害賠償請求権及び差止請求

権等︶自体の発生︑内容等を記載したものではなく︑また Y の内部審査の資料として作成されたものであって︑右法律関係の

形成を目的として作成されたものでもないことは明らかである﹂と判示した︒

︵ コ

メ ン

ト ︶

本件文書は︑確かに︑本件訴訟において争われている法律関係︵損害賠償請求権及び差止請求権等︶自体の発生︑内容等を

記載した文書ではないが︑騒音がどの程度であるかは X らの損害賠償請求権や差止請求権の成否にかかわるのであるから︑法

律関係の発生を基礎づける事実を証明する文書とみることも可能である︒本決定は︑ある法律関係に関する︵法律関係︶文書

は︑他の法律関係に関して︑法律関係文書とはなり得ないとするが︑法律関係文書概念に独自の制限を課するものとして︑疑

問であるように思われる︵抗告審決定では︑この制限は削除された︒︹

9 2 ︺

参 照

︶ ︒

また︑判示最後の部分は︑本件文書が内部的文書であるとするような口ぶりであるが︑ X らの協力のもとにされた測定結果

を記載した文書を内部的文書として提出を拒否しなければならない実質的根拠は見出しがたい︵はっきりと内部的文書である

J

とは明らかであるとした︒

二 二

︵ 三

七 九

(15)

9 3

9 2

大阪高決昭六

O ・

七・一判夕五六七号一七六頁

本 件

は ︑

9 1 X らは︑引用文書︑利益文書︑法律関係文 ︺の抗告審決定である︒本件文書提出命令の申立却下決定に対し︑

書に該当することを主張して︑即時抗告を申し立てた︒特に︑本件文書が法律関係文書に該当する点については︑同種の測定

︵ 要

旨 ︶

抗告棄却

原決定をそのまま引用し︑即時抗告を棄却した︒但し︑法律関係文書の意義に関する原決定理由のうち︑﹁当該訴訟におい て争われている法律関係とは別個の法律関係について作成された文書は︑これに該当しないものというべきである﹂との部分

︵ コ

メ ン

ト ︶

本決定は︑原決定理由の一部を削除しているが︑原決定は︑この理由によって︑本件文書を法律関係文書に該当しないとし

たともいえるから︵︹

9 1 ︺のコメント参照︶︑この削除によって︑本件文書が法律関係文書には該当しないとはいえなくなって

しまったとみることも可能である︒ を

削 除

し た

文書提出命令関係裁判例集一 0 五頁 記録の文書提出命令が認められた︹

2 7 ︺を引用している︒

事 実

文書提出命令関係裁判例集一 0 四頁

大阪高決昭六

0•

五•

1 0

判夕五五六号ニニ七頁 なお︑本決定に対し

x

らから即時抗告が申し立てられたが︑棄却された︵︹

9 2 ︺ ︶ ︒

関 法 第四九巻第ニ・三合併号

二二六

︵ 三

0 )

(16)

9 4

文書提出義務に関する判例について田 金融法務事情︱一五九号三二頁 文書提出命令関係裁判例集四︱二頁 判夕六一六号一八六頁

東京高決昭六―•五・八判時――九九号七五頁

要 旨

抗告裁判所は︑原決定理由中︑引用文書の意義に関する部分︵﹁当事者の一方が訴訟において立証それ自体のためにする場 ︶

合だけに限られず︑その主張を明確にするために︑文書の存在について︑具体的︑自発的に言及し︑丸困その存在・内容を積

極的に引用した場合における当該文書を指すものと解するのが相当である︒﹂︶につき︑傍線部分の﹁又は﹂を﹁かつ﹂と訂正

のうえ引用して︑即時抗告を棄却した︒

︵ コ

メ ン

ト ︶

︹ 9 0

︺のコメントで指摘した疑問は︑この抗告審決定によっても払拭されない︒

︵ 事

実 ︶

Y ︵大東京信用組合︶は︑昭和五二年四月一三日以降︑訴外 A 株式会社に対し︑継続して金員を貸し付けたが︑Xは︑ A の

Y に対する右債務を担保するため︑ Y

の 代

理 人

︵ 従

業 員

B と

の 間

に お

い て

︑ 昭

和 五

三 年

八 月

︱ 一

日 ︑

限 度

額 を

︳ ︱

‑ 五

00

万 円

とする連帯保証契約を締結し︑さらに︑昭和五四年六月二 0 日︑右限度額を八四

00

万円に増額する契約を締結し︑また︑昭

和 五 三 年 八 月 ︱ 一 日 ︑ X 所有の建物に限度額三五

00

万円の根抵当権を設定し︑八月一四日付受付で根抵当権設定登記を経由 抗告棄却

本 件

は ︑

9 0 ︺ の 抗 告 審 決 定 で あ る ︒

︵ 事

実 ︶

ニ ニ

︵ 三

八 一

(17)

参 照

し た

︶ ︒ 第四九巻第ニ・三合併号

し︑昭和五四年六月二九日︑右限度額を八四

00

万円に増額する付記登記を経由した︒

ニ ニ

︵ 三

八 二

X は ︑

Y の A

に 対

す る

金 員

貸 付

は ︑

B が Y から金員を騒取するため︑実体のない A 名 義 で Y

か ら

金 員

を 借

り 受

け ︑

X に

対 し

てその事実を秘匿し X を欺岡して人的および物的担保を取得したものであることを理由に︑昭和五五年二月一日到達の内容証

明郵便による書面で︑前記連帯保証契約を取り消した︒そして︑ X は ︑ 右 取 消 し を 理 由 と し て ︑ y に対し︑本件連帯保証契約

に基づく三五

00

万円︵昭和五三年八月︱一日分︶︑および四五

0

0 万円︵昭和五四年六月二 0 日分︶の連帯保証債務の不存

在確認請求と︑根抵当権設定登記の抹消登記請求とを主位的請求とし︑ Y の従業員である B が︑その職務を行うに際して故意

に X

を 欺

岡 し

X に

対 し

X の Y に対する保証債務額六八

00

万円︵および遅延損害金︶の損害を与えたことを理由とする︑民

法 七

0 九条︑七一五条による損害賠償請求を予備的請求として︑本件訴えを提起した︒これが本件本案訴訟である︒

Y は ︑

Y の A に対する貸付や X の連帯保証が B の 欺 岡 行 為 に 基 づ く こ と や ︑ X による連帯保証契約の解除の有効性を争い︑

X の請求全部の棄却を求めている︒そこで︑ X

は ︑

Y の A に対する貸付に B が関与し︑その貸付が B の欺岡行為によりされた

事 実

︑ お

よ び

B が X を欺岡して A の Y に対する債務の連帯保証をさせた事実を立証するため︑次の①ないし④の各文書の提

出 を

︑ 民

訴 三

︱ ︱

一 条

︵ 新

ニ ニ

0 条︶三号前段および後段により求める申立てをした︒

① Y が A に貸付をした際の貸出稟議書およびその付属書類︵ A

の 決

算 報

告 書

等 ︶

② A が Y に手形割引を依頼した際作成された手形割引依頼書︑および︑割引された A の 手 形 の 写 し

③ A 名義の普通預金払戻請求書︑ A の普通預金口座元帳

④ A が Y の組合員になったことを示す文書

原審では︑︵抗告審決定理由とほぼ同じ理由で︶ X の 申 立 て が 却 下 さ れ た の で ︑ X から即時抗告が申し立てられた︵以上の

事実関係については︑判時のコメント︑および︑本件判例評釈である︑住吉博・判評三三七号︵判時︱ニ︱八号︶ 関法

一 九

七 頁

(18)

文書提出義務に関する判例について回 抗告棄却

本件①の文書については︑ X は︑民訴三︱二条三号後段の法律関係文書に該当すると主張しているが︑法律関係文書には︑

﹁挙証者と文書の所持者との間の法律関係それ自体を記載した文書だけではなく︑その法律関係に関係のある事項を記載した

文書も含まれるが︑文書の所持者がもっぱら自己使用の目的で作成した内部的文書はこれに含まれないと解すべきところ﹂︑

本件①の文書は︑﹁ Y が主債務者 A の借入申込に対し貸付をする際に Y 内部においてその適格性の存否を審査するために作成

ないし徴収する文書であると認められるから︑右各文書は同号後段の文書には該当しないものというべきである﹂とした︒な

お︑本件①の付属書類に X 作成の担保提供承諾書がはいっていれば︑それは法律関係文書に該当するが︑﹁本件本案訴訟にお

いてその提出を命ずる必要性は認められない﹂とされた︒

X は︑本件②ー④の文書については︑民訴三︱︱一条三号前段および後段の文書に該当すると主張しているが︑民訴三︱二条

三号前段の利益文書とは︑﹁その内容からいって挙証者の利益のため又は挙証者及び第三者の利益のために作成されたものと

認めるべき文書をいうものと解すべきところ﹂︑②の文書は Y が A の依頼により手形割引を行う際に﹁その適否を審査するた

め交付を受けるもの﹂であり︑③の文書のうち︑ A 名義の普通預金払戻請求書は︑﹁ Y が A に対し普通預金を払い戻す際に届

出済印の押印等を確認するために交付を受けるものであり﹂︑ A の 普 通 預 金 口 座 元 帳 は ︑ ﹁ Y が A の預金の額等を把握するため

の資料として参照するものである﹂と認められるから︑﹁これらの文書は︑その内容からいって X の利益のため又は X 及び第

三者の利益のため作成されたものと認めることはできず︑同号前段の文書にあたらないものというべきである﹂とし︑また︑

こ れ ら の 文 書 は ︑ ﹁ X と Y との間の法律関係それ自体を記載した文書でも︑その法律関係に関係のある事項を記載した文書で

もないから︑同号後段の文書にも該当しないものというべきである﹂と判示した︒もっとも︑﹁ Y が A の依頼により現実に割

引 い た 手 形 の 写 は ︑ X の保証債務との関連において X と Y との間の法律関係に関する文書に該当するものと解する余地がある

が ︑

Y が右のような手形の写を現に所持していることを認めるに足りる証拠がないのみならず︑本件本案訴訟においてその提

︵ 要

旨 ︶

ニ ニ

︵ 三

八 三

(19)

︵ コ

メ ン

ト ︶

判時の本件コメントは︑譲渡人との関係で法律関係文書となるものは︑譲受人との関係でも法律関係文書になるとした ︹82 ︺と対比すると︑主債務者との関係で法律関係文書または利益文書となっても︑保証人との関係では当然にはそのような

本 件 評 釈 で あ る ︑ 住 吉 博 ・ 判 評 一 二 三 七 号 ︵ 判 時 ︱ ニ ︱ 八 号 ︶

ろ が あ る と 評 さ ざ る を 得 な い と し ( ‑ 九 九 頁 ︶ ︑ 本 決 定 が ︑ ﹁ な お ︑ X は︑右各文書が主債務者である A にとってYとの間で民

事訴訟法三︱二条三号前段及び後段の文書になるから︑連帯保証人である X にとっても同号前段及び後段の文書になる旨主張

するが︑主債務者に対する関係で同号前段又は後段の文書に該当するからといって︑直ちにその連帯保証人︵挙証者︶に対す

る関係で同号前段又は後段の文書となるものと解するのは相当でない﹂と判示した部分︑および︑﹁ X は︑右文書は主債務者 文書になるものではないとした本件要旨は注目されるとする︒ と が で き な い ﹂ と し た ︒ は 相 当 で な い ﹂ と 判 示 し た ︒ 第四九巻第ニ・三合併号

二 三

︵ 三

八 四

﹁ な

お ︑

X は︑右各文書が主債務者である A に と っ て Y との間で民事訴訟法=二ニ条三号前段及び後段の文書になるから︑

連帯保証人である X にとっても同号前段及び後段の文書になる旨主張するが︑主債務者に対する関係で同号前段又は後段の文

書に該当するからといって︑直ちにその連帯保証人︵挙証者︶に対する関係で同号前段又は後段の文書となるものと解するの

本件④の文書については︑ X にとっては︑利益文書にも法律関係文書にも該当せず︑さらに︑﹁ X は︑右文書は主債務者で

あ る

A が Y に対し同号︹民事訴訟法三︱二条三号︺前段及び後段により提出を求めうるものであるから︑その連帯保証人であ

る X も A の右権利を援用して︑その提出を求めうる旨主張するが︑連帯保証人が主債務者の民事訴訟法三︱二条︱︱一号に基づく

権利を当然に援用しうる旨の規定はなく︑同号の解釈はその文書にそって行うのが相当であるから︑ X の右主張は採用するこ 出を命ずる必要性は認められない﹂とした︒

関 法

一九七頁は︑本件決定にはその理由説示において不足するとこ

(20)

文書提出義務に関する判例について回

で あ

A が Y に対し同号︹民事訴訟法三︱二条三号︺前段及び後段により提出を求めうるものであるから︑その連帯保証人で

あ る

X も A の右権利を援用して︑その提出を求めうる旨主張するが︑連帯保証人が主債務者の民事訴訟法三︱二条三号に基づ

く権利を当然に援用しうる旨の規定はなく︑同号の解釈はその文書にそって行うのが相当であるから︑ X の右主張は採用する

ことができない﹂と判示した部分は特にそうで︑このような立場も﹁一個の帰結でありえようが︑そのような帰結が裁判理由

としてはたらくためには︑あわせてその論拠をなすところの解釈論理の提示をともなっていることが必要である﹂とする︵一

九九頁︶︒すなわち︑﹁この結論を得るについての論証過程を何ら開示することなしに︑裁判理由に掲げるのは適切な処置では

ない︑とみられるのである﹂とする︵二 0 一頁︶︒そして︑この関係で︹

8 2 ︺を引用し︑この解釈論理を本件に適用すれば︑

﹁主債務者が挙証当事者となるときに文書提出命令が認容されてよい債権者所持の文書は︑物上保証人が挙証当事者となると

きにも︑同一の根拠で文書提出命令を認容してよいことになる︒その理由は︑物上保証人が負担する債務は直接の先決要件を

なす一個特定の法律関係だからである﹂とされる︵二 0

一 頁 ︶ ︒

なお︑住吉教授は︑このような解釈は︑民訴=二ニ条が﹁書証の客体となりうる文書一般につき提出義務を限定する意図に

出た規定である﹂と解し︑文書提出義務に関する規定の沿革から︑一定の実体法的関係が所持者に提出義務を課すことになる

との解釈をとるものであるとする︵二

0

0 頁 ー ニ 0 一頁︶︒そして︑裁判外での当事者間の交渉に関する行為規範を訴訟にお

いて確保することが文書提出命令制度の目的であるとする佐藤説︵佐藤彰一﹁文書提出命令﹂講座民事訴訟⑥二八二頁の説︶

もこれに属するとし︑﹁新しい展望として沿革と断絶した地点であらためて唱導されようとしている﹂見解であるが︑司法制

度のあり方としては沿革上の逆戻りであるとする︵二 0

一 頁 ︶ ︒

住吉教授自身は︑文書提出義務は当事者と文書︵の所持者︶との関係ではなく︑司法︵裁判権︶と文書所持者との関係の問

題であり︑民訴三︱二条は︑特定の文書︵例えば三号については処分証書︶に文書提出義務を限定し︑その他の文書︵例えば

記録文書︶についてはその提出義務につき規定をしていないと見︑規定されていない文書については︑証人義務と同様︑一般

︵ 三

八 五

(21)

9 5

合 議

体 に

よ っ

て 裁

判 さ

れ た

︶ ︒

①事件の本案訴訟は︑プレス加工業を営む X の Y ︵東大阪税務署長︶に対する昭和五五年分ないし昭和五七年分所得税の更

正 処 分 取 消 訴 訟 で あ る ︒ Y

は ︑

X の昭和五五年分ないし昭和五七年分所得税の更正処分を行うに際し︑ X の所得金額を実額で

把 握

し 得

な い

の で

X が事業所を有する Y 税務署管内およびこれに隣接する︵八尾市及び生野区︶税務署管内において青色申 本件には①事件︵大阪地裁昭六

︵ 行

ク ︶

一号︶と︑②事件︵大阪地裁昭六

︵ 事

実 ︶

判夕六 0

一 号

八 五

大阪地決昭六一・五・ニ八判時︱二 0 九号一六頁 第四九巻第ニ・三合併号

︵ 行

ク ︶

三 号

︶ と

が あ

る ︵

e ⑦章件とも︑同

~

的文書提出義務を肯定し︑所持者の利益保護は︑秘匿特権を是認することによって果たそうとされる︵二

00

頁 ︶ ︒

その他︑住吉教授は︑文書提出命令は文書提出義務を確認して文書の提出を命ずるもので︑この命令によってはじめて文書

提出義務が生ずるものではないこと︵二

00

頁︶︑当該文書に証拠としての必要性が認められるかは︑文書提出義務に関係し

ないが︵文書提出義務が問題になる文書は証拠としての必要のある文書でなければならないから︑証拠としての必要の認めら

れない文書は文書提出義務の有無を問わず︑直ちに文書提出命令の申立を却下してよい︶︑証拠としての必要性があることを

前提としたうえで︑その必要性の程度は﹁所持者が拒絶の理由ありと反論するときに︑拒絶を許してよいか否かを決するため

の判断要因の一っとなる︒﹂とされる︵二 0

二 頁

︶ ︒

なお︑主債務の存否は保証債務の存否の要件であるから︑従来の法律関係文書の解釈を前提にしても︑本件②ー④の文書は

法律関係文書に該当するように思われる︒

関 法

文書提出命令関係裁判例集七五頁

︵ 三

八 六

(22)

文書提出義務に関する判例について国

︵ 要

旨 ︶ 二二条一号に基づいて求めたものである︒ 告をしている同業者を六名抽出し

( Y

税務署管内の

A.B

︑隣接税務署管内の

C ! F )

︑その当該年分の売上︵差益︶金額と

所得金額とから所得率を計算し︑その平均所得率に基づいて X の 所 得 金 額 を 算 出 し た ︒ そ し て ︑ AiF の前記売上金等は︑こ

れらの者が﹁青色申告した際の金額﹂によって算定したものであるから︑その算定の基礎となる資料はすべて正確なものであ

る と

主 張

し た

そ こ

で ︑

X は ︑

AiF

が X と類似する業者でないことを証明するため︑

A!F

の ﹁ 青 色 申 告 書 添 付 の 決 算 書 一 切 ﹂ の 提 出 を ︑

民訴三︱二条︵新ニニ 0 条︶一号に基づいて求めた︒これに対し︑ Y は︑提出すべき文書の内容の大綱が記載されていないか

ら民訴︱︱二三条︵新ニニ一条︶二号の﹁文書ノ趣旨﹂の記載がなく︑また︑ X が記載した証すべき事実は具体的な事実ではな

く︑法的評価にすぎないから︑民訴三一三条三号の﹁証スヘキ事実﹂を明らかにしたものでもないので︑文書提出命令の申立

が 不 適 法 で あ る こ と ︑ Y 自身は青色申告決算書について直接言及していないから︑本件文書は引用文書にあたらないこと︑ C

!

F 分については本件文書を所持しないこと︑ Y は︑本件文書の内容について守秘義務を負っていることなどを理由に︑申立

て の

却 下

を 求

め た

②事件も︑①事件と類似の事件である︒ Y ︵大阪北税務署長︶が︑スナック兼喫茶店を営む X の昭和五三年ないし昭和五五

年分の所得税につき、①事件の場合と同様、

Y

税務署管内の

X

の同業者

G•H

を抽出し、その原価率(売上原価の売上金額に

対する割合︶および所得率並びに売上原価に対する酒類仕入金額の割合の各平均値から X の所得金額を算出し︑同業者である

G.H の原価率︑所得率の算定の基礎とした資料は︑ G.H が Y に提出した﹁青色申告決算書に記載している金額﹂であり︑

すべて正確なものである旨 Y

が 主

張 し

た の

で ︑

X が G

お よ

H の昭和五三年ないし五五年分の青色申告決算書の提出を︑民訴

一部提出命令︑一部却下

① 事 件 に つ い て は ︑ ClF

に つ

き ︑

Y に

所 持

が な

い と

し て

X

の 申

立 が

却 下

さ れ

た ︒

A.B

に つ

い て

は ︑

A.B

の プ

ラ イ

>

︵ 三

八 七

(23)

︵ ①

の 要

旨 ︶

﹁文書ノ趣旨﹂および﹁証スヘキ事実﹂の記載が不適法であるとの点については︑﹁民事訴訟法三一三条二号が文書提出の 申立に際して﹃文書ノ趣旨﹄を明らかにすることを要求するのは︑同条一号の﹃文書の表示﹄を補って提出すべき文書を特定 し︑文書提出義務の存否の判断を可能にさせるとともに︑同条四号の﹃証スヘキ事実﹄との関連性を明らかにして︑証拠とし

ての必要性の判断ができるようにさせることにあり︑同条四号が﹃証スヘキ事実

j

を明らかにすることを要するとするのは︑

﹁文書ノ趣旨﹄と相まって当該文書の証拠としての必要性の判断を可能にさせるとともに︑文書の所持者である相手方が文書 提出命令に従わないときに︑同法三一六条︵新ニニ四条一項︶を適用して︑文書に関する申立人の主張を認定︑判断する資料 として役立たせることにあると解される﹂とし︑﹁文書ノ趣旨﹂については︑

X の記載で︑﹁提出すべき文書の特定と証拠の必

要性判断のための資料として要求される﹃文書ノ趣旨﹄の表示に欠けるところはない﹂とした︒また︑

X の

﹁ 証

ス ヘ

キ 事

実 ﹂

の記載は︑﹁結局︑前記各同業者と X とは︑その専従者及び従業員の数︑人件費︑償却資産︑賃料等の営業規模︑業態等が異

なるという具体的事実を立証の趣旨とするものと解され﹂﹁当該文書の証拠としての必要性を判断するのに充分な立証趣旨の

表示であるといい得る﹂し︑民訴三一六条の適用との関係でも︑﹁同条によって真実と認めうる原告の主張とは︑その文書に 名 詞 を 削 除 し た も の ︶ を 提 出 せ よ ︒ ﹂ の 固 有 Y の 守 秘 義 務 と の 関 係 で ︑ A.B シーを保護するべき

の特定に役立つ事項を削除した青色申告決算書の写しの提出を命じた︒

② 事 件 に つ い て も ︑ G.H

の特定に役立つ事項を削除した青色申告決算書の写しの提出を命じた︒

ちなみに︑①事件の文書提出命令の主文は次の通りである︒

﹁ 相

手 方

︵ 被

告 ︶

Y ︺は︑本件訴訟における推計課税のため抽出した同業者中︑昭和六 0 年九月一七日付相手方︵被告︶

︹ Y ︺準備書面別表三に表示する Y 税務署管内の A

及 び

B についての各昭和五五年分ないし昭和五七年分の青色申告決算書

︵青色申告書添付の決算書一切︶の写し︵申告者︑税理士の住所・氏名・電話番号︑事業所の名称・所在地︑従業員の氏名等

関法第四九巻第ニ・三合併号

二 ︳ ︱ ‑

︵ 三

八 八

参照

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