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2次元セルオートマトンにおける集団運動の ダイナミックスとその応用
渡邊 誠
[摘要]本研究では2次元セルオートマトンモデ ルにより集団運動のダイナミックスをシミュレ ートし、自己組織化過程に基づく相転移挙動を 調べている。具体的な応用として、2次元車両 流の動的性質、特に自由流相一渋滞相間の状態
遷移過程を解析している。基本図の高密度領域
において観察される流量ゆらぎは、自発的に現 れる小規模なクラスターの生成と消滅挙動に原 因している。自己組織化されたクラスターの構 造は密度に敏感であり、互いに相似構造を持っ ている。セルオートマトンの動的ルールを一般化するため2状態をもつ信号処理を付加した新
しいモデルを提案している。多段階状に進行す る相転移過程が存在する。臨界密度ならびに渋滞クラスターの構造は、信号状態の空間連携構 造に依存する。同構造を大域的に最適化するこ
とは2次元集団運動を制御するための鍵である。ある特定の車両密度において自由流相一渋滞相
の間で状態変化を起こすⅢ2)。また、インターネ ット上を通過する情報パケット流もそれと同様 に自己組織化と渋滞現象を有している(3)。本論文では、2次元上における多要素群系の 集団運動現象を空間的・時間的に離散化した数 理モデルによりシミュレートし、流動相一非流 動相の間の相転移挙動を調べた結果を報告する ものである。具体的な対象としては、例えば、2 次元道路ネットワーク上における交通流のダイ
ナミックスを想定している。ここでは、次の2 つの点について調べている。(1)渋滞クラスターの自発的な生成と成長過程における構造変化の 詳細を明らかにすること、(2)信号状態の空間的 連携性が相転移のメカニズムに対して与えてい
る影響を明らかにすること、である。
これまで交通流の理論研究において、主とし
て次に示すモデルが提案されてきているIL2)。す
なわち、
①流体力学モデル(交通流をマクロな連続流体
としてとらえる)
②追従モデル(先行車両との速度差により加減 速させるような力学系の運動方程式を数値的
に解く)③最適速度モデル(先行車両との車間距離によ って決定される最適速度に近づけるような力 学系の運動方程式を数値的に解く)
④セルオートマトンモデル(車両の存在位置と
時間を離散化し、格子点の上を特定のルール に基づいて連続的に移動させる)これらのモデルのうち、①は巨視的な挙動を再 現することが主たる目的であり、現象論的な意 味合いが強い。また②と③は高速道路を単純化
した1次元1車線のような理想系においては比1.はじめに
多数の要素群から構成される系における集団
運動は、1/7ゆらぎやパターン形成など複雑系
特有の振る舞いを示す典型的な例となることが多くあり、現代の非線形理論ならびにその関連
領域における研究対象として特に関心を持たれ ているテーマの一つとなっている。何らかの規 則により支配されている各要素の運動をミクロな観点から再現し、系全体としてのマクロな性
質をプレディクトすることは、基礎的な観点だ けではなく、その実用性を鑑みても重要である。特に、流動一非流動の状態遷移を伴う現象を解
析することは、自然科学分野のみならず、社会
科学的問題を考察する上でも必須である。例え ば、この現象を伴う問題として次の事が知られ ている。交通流を構成する車両の集団運動は、48
較的有効であるが、追越しを許す多車線道路や ランプなどをもつ複雑な道路構造、ならびに信 号制御を受ける都市交通などに応用するにはや や複雑となる。これに対し④では、そのアルゴ リズムが簡単であるがゆえに広い応用性を持っ ているモデルであるということができる。本研 究では、このセルオートマトンによる数理モデ ルを採用している。
りの組み合わせのそれぞれについて決定される xiの値を示すことにより時間発展のルールを表
すことができる。例えば、
●
時刻’111110101100011010001000 J+101011010
である。上段の時刻rにおける3つの連続した 数はxi-I(r1xi(r),xi+,(!)をそれぞれ表して おり、下段の時刻'+1における数はxi(!+1)
を示している。この例の場合、xi-lh)=1,xi
h)=0,xi+,(r)=Oのときxi(!+1)=F(1,0, 0)=lであり、xi-,(!)=0,xim=1,xi+,(z)=
0のときxi(r+l)=F(0,1,0)=Oである。この とき、時刻!+1において得られる値の列、例え ば上の例の場合、01011010という8桁の2進 数表示がその時間発展のルールを示している。
そこでこの2進数を10進数に変換した値90を用 いてこのルールの記述とするのである。すなわ ち、上の例の場合には「ルール90」となる。
1次元セルオートマトンの様々なルールに対 して得られるパターンを分類すると、次の4つ のクラスに分類することができる(5)。すなわち、
(1)時間が経過すると全てのセルが「1」また は「O」の状態に落ち着く
(2)時間が経過すると局所的に「1」または「O」
が出現する
(3)カオス的な非周期的パターンが出現する (4)上の3つのクラスには属さない複雑なパタ
ーンが出現する
ここでクラス(4)は隣接セル以外のセルの影響を 考慮することをルール化した場合に現れるケー スである。さて、図1(a)と(b)には上の(3)に該当 する例を示してある。これらの図は「ルール126」
に基づく時間発展を求めたものである。図1(a)
は初期条件として1次元セルの中央に存在する セルの値を「l」とし、他の全てのセルの値を
「0」とした場合の時間発展である。横軸が1次 元セルの配列であり、ここでは200個のセルを定 義している。縦軸は時間であり、上から下に向 かって時間発展している。図の中の小さな点が 値「l」を意味しており、値「0」は空白として いる。図l(a)はフラクタル構造の典型的な例で あるシェルピンスキーのガスケット(フラクタ 2.セルオートマトンとは
セルオートマトン(CeUularAutomaton)は、
セル「細胞状の」という語とオートマトン「自 動機械」という語が連なってできた語であり、
簡単な規則に従って決定論的に時間発展する細 胞状の要素の集まりのことを意味している。セ ルオートマトンは、通常、次の性質を満たして いる(4)。すなわち、
○離散的格子点(セルの集合)により構成され る
○各セルのとりうる値は有限個であり、決定論 的な規則に従って離散的に時間発展する
○各セルの値の時間発展は、そのセルの近傍の 値のみによって決まる
セルオートマトンの時間発展を記述する規則は 極めて単純なものであっても、カオスやフラク
タルというような複雑系特有のパターンを生む 例があることが知られている(イ'51。
Wolframは1次元セル集合に対する時間発展 のルールを記述する方法を提案した⑥。いま、1 次元(直線)の上に等間隔に置かれた格子点を セルの代表点とみなし、これらは簡単のためそ れぞれ2つの状態「0」か「1」のどちらか一方 をとるものとする。ここでi番目のセルxiの値が 次の離散時刻において、そのセル自身と近傍の セルxi-l,xi,xi+,の3つの値によって決定される システムを考えてみよう。すなわち、
xi(t+1)=F(j[i-,(!),xi(t),xi+,(j))
である。ここで、rは時間を意味しており、r+1 は1離散時刻だけ進んでいることを示している。
このように、あるセルの値がl時刻前の3つの セルの値により決定される場合、次に示す8通
49
鎧蕊ilii薑蕊
(b)蕊霊1雲Mi1i篝:i;
霞迩劉轌;醤
図1「ルール126」による1次元セル集合の時 間発展。横にセル配列、縦に時間をとって いる。■は状態1を表し、状態0は空白と
している。
ル次元D=/083"92=1.585)(イ.71が現れている
ことが理解できよう。この構造は幾何学的な自 己相似`性を有している。これに対し、図1(b)は 初期状態としてランダムに「1」と「o」を同数 ずつ配置した例である。この場合の時間発展規 則は図1(a)と同一である。この図では様々な大 きさの三角形構造が空間的にランダムに配置さ れており、複雑な構造が見られる。である。これは、車両の存在するセルを「1」、
存在しないセルを「0」とし、車両は左から右 に向かって離散的に移動するものとしたとき、
例えばxi-1に存在する車両はxiに他の車両が存
在しなければ移動できるが、存在しているとき には移動できずもといたセルに留まるというル ールに従っているものである。BMLモデルはこ の「ルール184」の2次元版である。BMLモデルでは、まず初めに、L×Lの大きさ
をもつ2次元正方格子を設定し、そのセルの上
に「右」と「上」へ進む車両をそれぞれランダムに初期配置し、そこから「ルール184」に従っ
てダイナミックスを計算している。ここでLは定義された系の1辺のセル数であり、系の大き さ(システムサイズ)を表す量である。BMLモ
デルでは次の時間発展法がある(8)。(1)奇数時刻においては右向車両のみを、偶数
時刻においては上向車両のみを対象として車両の運動を実現する。これは各セル(交 差点)における信号が系の全領域にわたり
協調的に各時刻毎に切り替わっていることを意味している。(modell)
(2)右向と上向車両の両方を同時に動かす。た だし移動先のセルに同時に2つの車両が入 ろうとする場合には、どちらか一方のみが ランダムに選ばれるものとする。(modelm このBMLモデルは、車両の移動がそれぞれ1方
向だけ許されているものであり、都市交通を最
も単純化したモデルであるということができる。3.2次元BML交通流モデル
前節ではセルオートマトンについて入門的な 解説を試みた。本節では、この数理モデルを交通 流シミュレーションへ応用するための具体的な モデルについて紹介しよう。Biham、Midmeton、
Levine(BML)は交差点を持つ都市交通状態を 再現する単純なモデルとして、次のセルオート マトンモデルを提案した(8)。すなわち、2次元 正方格子上の格子点をセルとみなし、そのセル の上を東西(hoIizontaD方向と南北(Vertical)
方向に移動する車両を定義する。各車両は時間 の経過と共に隣接セルへ移動するというダイナ ミックスに従うものとするが、その排他性によ り同一のセルを2つ以上の車両で占有すること はできないものとしている。このような排他性 を考慮した1次元のダイナミックスは「ルール 184」として知られている。すなわち、
時刻rr+1  ̄------- 111110101100011010001000 10111000
50
その点においてやや現実性に欠ける点もある.
しかしながら、このモデルは自由流一渋滞間の 相転移を明確に示すことが特徴であり(8)、交通 流の相転移現象を理解することにおいて単純で
あるがゆえに有用なモデルであるといえる。
をそれぞれ2000時刻ずつ計算した。運動方程式 は、奇数時刻における右向車両に対して
/曇'(/+1)=/鴎'(')r型+L,(!)+g襲十山,(/)|
+11-プ鍋y(r)’'1-8悪.'(')|ノェー1.,(1)
4.自己組織化過程と相転移現象本節では、BMLモデルをもとにした相転移挙 動について調べている。交通工学の分野におい て特に重要とされている基本図(Fundamental Diagram)を求め、実験的に測定されている交 通流の特徴と比較検討する。基本図とは、横軸に
車両密度pをとり縦軸に流量9すなわち単位時間
当りの交通量をとった図である。これまで、こ れを用いて自由流一渋滞の状態変化が実験的に 評価されてきた。シミュレーションの場合には車両密度pとは系の全セル数に対する車両数の 割合であり、流量9はその密度pと車両の平均速
度vとの積である。ここで、'.,(')は0かまたはlの値 をもつ2進数ビット′・’(r)='1,0}であり、
x,yはセルの座標である。またg魔・ソ(/)は上向車 両に対する2進数ビットg鰯,(r)='1,0}である。
偶数時刻における上向車両に対する運動方程式
は、
8塾,(j+1)=81,(r)い,+'(/)+g…(r)}
+'1イ懇y(/)lI1-gxmy([)}9重・'-1(r)
である(ID・実際の計算においては周期境界条件 を採用した。
図2はこのシミュレーションから得られた基 本図を示している。なおこの図はシステムサイ ズをL=200,L=500、L=1000の3種類に変え
て計算を実行した結果である。pが0.3までの低 密度領域では、pの増加と共に9は直線的に増加
している。この領域ではほぼ完全に1つの直線 の上にのっており、それぞれの密度における流量のゆらぎは観察されない。一方、pが0.3を超 えたところからpの増加と共に流量が減少し、p
が0.6に近いところでは流量がほぼOになってい る。このようなA型の形状は実際に観察されて いる基本図と同様な振る舞いを示している。モ》9=p×v
により求めることができる。ここで平均速度vは 全車両数に対する可動車両数の割合として求め られる量である。以下において基本図の形状と 自由流相および渋滞相におけるダイナミックス の特徴を調べている。
4-1基本図の特徴
高速道路において実験的に観察されてきた基
本図の特徴は、(1)流量9は低車両密度領域にお いてはpと共に1次的に増加し、(2)高密度領域 ではpの増加と共に減少することにある。(L2,.10)
(,)における9の増加傾向は、車両が自由流状態
にあることを意味しており、密度の増加が流量 の増加へと直接反映された結果によるものであ る。逆に(2)における9の減少傾向は、pの増加に 伴って起こる非流動状態、すなわち渋滞の出現 によるもので、pが著しく増加すると9は0に近 づいていくことを示している。
さて、BMLモデルにおいてシミュレートされ た結果を示そう。前節(1)の方法により、10種類 の異なる初期条件から出発したダイナミックス
43210
● 00000 つ
 ̄ ̄ ̄⑤■■Cゆ● ̄●●●C●●●Ccp旬■ ̄ ̄■ ̄■■▽ ̄I■c●●●●●●□●●□●●●
Jj云簿iiiliiillMj
000.10,20.30.40.50.6 p
図2シミュレーションにより得られた基本図。
それぞれのマークとシステムサイズの関係 は、+:L=200、○:L=500,*:L=1000 である。
51
ちろんその基本図における傾きが正の領域は自 由流(非渋滞)相を、反対に、傾きが負の領域 は非自由流(渋滞)相を意味している。
高密度領域における流量変化をさらに詳しく
見てみよう。p>0.3においては大きな流量ゆら
ぎが存在する傾向が現れている。Kemerらは多 車線高速道路の交通流の特徴を調べ、同調流 (SyTlchronizedflow)という新しい相の存在を示 唆した。(9.12)この相は高密度領域において大きな 流量ゆらぎを持つことが特徴となっている。す なわち、車両密度の増加が流量の増加を促すこ ともあるが、逆に、流量の減少を引き起こすこ ともあるというやや複雑な挙動を示す相である。した。図3(a)はP=0.3において観察されたその
断面上に存在する車両(小さな点)の時間発展 である。この図では上から下に向かって時間が 経過している。この図には斜線状の縞模様が現 れており、このことはその断面上に存在する車 両が右方向へ障害なしに移動する傾向があるこ とを示している。その様子は図4(a)からも確認できる。図4(a)はP=0.3における断面y=100の
上に存在する全車両の平均速度の時間変化であ る。全時間領域に渡りほぼv=1となっている。これに対し、図3(b)はp=0.4における同じ断 面の時間発展を示したものである。この密度p
は、図2にも示されていた通り、大きな流量ゆらぎを持っていた密度である。この図では(1)斜線 状の軌跡を持つ自由流的運動状態と、(2)部分的 にクラスター化した非流動状態が混在している。
この図を注意深く見てみると、非流動クラスタ ーの一部が崩壊し、斜下方向に自由流的に運動
し、その後別の非流動クラスターにトラップさ れている様子がうかがえる。実際の高速道路で 4-2流量ゆらぎと自己組織化過程
ここでは上のBMLモデルにおいて観察された 流量ゆらぎの原因を明らかにする。まず系内に おける運動状態を直感的に把握するため、L=
200の系の中央に位置する水平断面y=100(x=
1~200)の上で運動する車両の状態をグラフ化
(a) (b) (c)
a
b
図3L=200の系における水平断面y=100(x=l~200)の上に存在する車両の時間発展。横にその 断面をとり、上から下に向かって時間発展している。(a)P=0.3,(b)p=0.4の系。(cルー0.4である
が(b)とは初期状態が異なった系。
52
(b)
1’0 0.8 q6
-
0.4 02 00
(a)
1.0 08
06
> 04 02 0,
CPC ̄■ ̄■ ̄■ ̄■ ̄ ̄P ̄■ ̄●■■● ̄●●■●戸■c■PC■ ̄■、 ̄ ̄~■ ̄ ̄■●
lIillIijililliiiijll11MI
…:-…:….「…:--帯--F…:-~Y1--弓・…:
::::::Ib1I:I
046680002001CO、zpqc t
04008001m。1000ZOOO t
08642, 1000u0 lj c アイ!
図4水平断面上に存在する車両の平均速度の 時間変化。(a)、(b)、(c)は図3(a)、(b)、(c)の 運動状態に対する速度変化にそれぞれ対応
している。
040。BOO1,016●。釦po t
に伸びた太い縞状構造が現れており、この図の 最終状態では静的な構造となっていることがわ かる。すなわち系内の全車両が自己組織化され、
完全に動きが失われた状態となっている。
は「Stop-and-Go現象」が観察されているが(,)、
離散系の場合としてそれに近い現象であるとい える。図4(b)はその断面上の平均速度の時間変 化を示したものである。v=0.1-0.9の広い範囲 で大きなゆらぎを持っていることがわかる。図 3(b)の中の四角形aは、ノー740近傍の時間領域を 示している。この領域では、小さなクラスター がわずかに存在する程度であり、大きな渋滞構 造はない。図4(b)における矢印aはこの時刻『=
740を示している。この時の平均速度はv=0.8~
0.9と比較的速い。一方、図3(b)の四角形bは、
t=1540近傍を示している。この時間領域では比 較的大きな渋滞構造が現れている。図4(b)にお ける矢印bはその時刻'=1540を示している。こ の時の断面平均速度はv=0.2程度と小さい。こ の様に高密度領域において観察される大きな流 量ゆらぎは系内に現れる渋滞クラスターの形成
に関連しているのである。
図3(c)は、p=0.4の系において初期条件を変
えてシミュレートした例であり、’=500からj=
1500までの運動を示したものである。この例に 対する平均速度の時間変化を図4に)に示す。こ の図から、約!=1500のところにおいて平均速度 がOになっていることがわかる。図3(c)では縦
4-3クラスター生成と消滅過程
上述の様に、このセルオートマトンモデルに おいて観察される大きな流量ゆらぎは渋滞クラ スターの形成に基づいていることが理解できた。
ここでその様子をさらに詳しく調べてみよう。
クラスター構造の時間変化を見るため、全車両
の配置を調べた。図5はp=0.4における車両の
配置(スナップショット)であり、図3(b)、図4 (b)と同一のサンプルにおける例である。図5は それぞれ(a)'=740,(b)j=1540,(c)t=2000に対 応している。はじめ図5(a)において系の左上方 にあった渋滞クラスターは、図5(b)では消滅し ている。また図5(b)の右辺中央やや上に新しい クラスターが形成されている。図5(b)の左下方 から系の中央に伸びていたクラスターは、図5 に)では消滅している。これらの図から、高密度 領域において現れる大きな流量ゆらぎは、局所 的渋滞クラスターの生成と消滅過程に原因して いることがわかる。WWW
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53 (b)
(a) に)
図5P=0.4の系のスナップショット。(a)1-740、(b)「=1540、(c)'=2000のそれぞれの時刻における
状態を示している。
4-4クラスター構造の密度依存性
このように、高密度領域におけるダイナミッ クスの特徴は、自発的に起こる小規模クラスタ ーの生成・消滅過程を持つことにあった。さら にこの状態を続けて連続的にシミュレートする と、最終的に系は自己組織化され、全車両が完 全に動きのない大きな(系を貫く)クラスター 構造を持つようになる。ここでは、最終的に得 られた自己組織化構造と密度の関係を調べてみ よう。図6は密度をそれぞれ変えて行った計算 により得られた渋滞クラスターの構造である。
それぞれ(aルー0.52,(b)P=0.56,(cルー0.60に 対する図である。どのクラスターも基幹構造に スパイク状の枝を持つ複雑な構造を持っている。
また、クラスターの太さは密度に敏感であり、
密度の増加に伴い細くなる傾向を持っている。
これらの図は、それぞれ幾何学的に相似な関係 となっていることも理解できる。すなわち、(c)
のクラスターの一部を拡大すると(b)に近い形状 となり、同様に、(b)を拡大すると(a)と同形なク ラスターが現れることが理解できよう。この様 に車両密度は、渋滞クラスターの構造に影響を 与えているのである。
5.信号制御を持つモデルの提案
BMLモデルは、WOliiPamが提案した「ルール 184」の2次元系への拡張であり、比較的単純な セルオートマトン法の1つであった。また、こ のモデルは実際の観測から得られている交通流 の基本図を再現するモデルでもあった。これら (b)
(a) (c)
図6自己組織化された渋滞クラスターの構造。(a)P=0.52,(bルー0.56,(c)P=0.60。
54
のことは、BMLモデルは交通流現象を模擬する ための1つの妥当なモデルであり、これを通し て相転移現象を理解することが可能となる。こ のBMLモデルを現実の交通流現象解析のための モデルとしてさらに発展させるため、この節で は信号処理のルールを新しく導入する。信号制 御を高頻度で受ける都市交通においては、信号 色連携の方法は自由流一渋滞の相転移に大きな 影響を与えていると思われる。ここではBMLモ デルに信号処理を加えたセルオートマトンモデ ルを定式化している。
いン(/)=1-(rmod2)
となる。これにより時刻毎に信号の切り替えが 実現される。
さて、この酢’([)を導入することにより、運 動方程式は次のように表現される。まず、右向 車両に対して
’'(I+1)=''(1)''十'・'(/)+8好1.'(I)|
+'1-s、+1.1(『)''1プ+',,(「)''1-8厘札,(1)|'・'(1)
+S恥,(『)I1-fy(j)''1-8'.,(1)''-1.,(1)
5-1信号処理を伴う運動方程式
L×Lの2次元正方格子を考え、この格子点 (セル)を都市内道路における交差点とみなす。
そこでそれぞれの交差点に2状態を持つ信号を 定義し、信号制御のための規則として「1」ま たは「O」の値を定義する。信号が「l」の交差 点では東西(horizontal)方向の運動、すなわち 右向車両の進入を許すが、南北(veItical)方向 の運動、すなわち上向車両の進入は許さないと いう規則を導入する。同様に信号「0」の交差 点では、上向車両の進入を許すが、右向車両の 進入は許さないという規則である。これは、通 常の交差点における交通規則と同様である。も ちろん信号が「1」であっても、そのセルに他 の車両が存在している時には右向車両は排他性 のルールにより進入できないものとする。この ことは上向車両についても同様である。
まず、初期状態r=Oにおいて各交差点(全て のセル)に信号「l」かまたは「0」のどちらか 片方の値を割り当てる。その後、時間の経過と 共に信号「1」と「O」を各時刻毎に交互に入れ 替える。これにより、東西方向と南北方向の運 動が等確率を持って起こるようになる。時刻'に おける各セルの信号をS潟・ソ(「)='1,0}と表すと、
い,(0)=0を持つセルに対して
であり、上向車両に対して
82.,(!+1)=8恥,(1)|'け!(1)+『汁'(1)|
+砂+'(【)'1プ・汁'(!)''1-8風・汁](1)I8z・'(1)
+'1-s馬・'(『)''1ヂバt)''1-8`.,(1)'8厩・'-1(1) となる。もちろんみ,,(「)='1,01,8熟,([)='1,0}
である。これは文献[8]におけるmodemを信 号制御によって決定論化したモデルであると考
えることができる。
5-2信号配置の空間的構造と相転移 上述の信号制御を導入してダイナミックスの 特徴、特に自由流相一渋滞相の間の相転移挙動 を調べてみよう。図7(a)から(。)は、ここでシミュ レートされた系の信号初期値Sm・’(0)の空間配 置を示している。■はいy(o)=0,□はい,
(O)=lを示している。図7(a)は初期状態r=0 において全てのセルがい,(O)=0となってい る。次の時刻『=1においては、全てのセルが s髭.y(o)-1と変わることになる。この配置は、文 献[8]における「modelI」と完全に同一なダイ ナミックスを与えているものである。図7(b)は SZJ'(0)=0とい,(0)=lが同数ずつランダム に分布されているものである。また図7に)はそ れぞれが1つずつ交互に、図7(。)は1列ずつ交 互に初期配置されている。これらの全ての系で は、時間平均をとれば信号「1」と「0」が同じ 割合で空間上に現れることになる。
さて、この4つの信号配置を持つそれぞれの 系において[=20000にわたってシミュレートし い,(')=rmod2
となる。ここで『=1,2,3,……である。また記号 modは剰余演算(modulus)の意味である。いy
(0)=1を持つセルに対しては
55
■
X 兀
「11」
■
兀兀
図7系内に設定した2状態信号の初期配置。■はS灘.,(0)=0,□はS孫.,(0)=1を表している。
る。すなわち、都市交通において信号状態に連 携のない無秩序な信号配列は、車両密度が低い 状態でも渋滞を引き起こしてしまうことを示唆
している。
図7(c)に対する速度yは、p=0.15の近傍で転
移している。臨界車両密度は前述のランダム配 た結果を示そう。システムサイズはL=240とした。図8は系の車両密度pの関数として描いた
系平均の速度Vである。このvの値はシミュレー トされた20000時刻のうち、最後の100時刻間の 速度を時間平均することにより得られたもので ある。各記号と信号配置図(図7)との関係は、■:図7(a)、▲:図7(b)、●:図7(c)、□:図 7(。)である。
図7(a)に対する速度は、図8に示されている
通り、p<0.3の領域ではv=0.5と一定である。
速度がv=0.5を示すのは、各時刻毎に運動可能 な車両は全車両の1/2であることによる。この
系はp=0.3~0.4の領域において急激な速度低下
を起こしている。この領域はBihamらによる modellにおいて観察されている臨界車両密度
とほぼ同じ値である。
一方、図7(b)のランダム配列の場合には、速
度vは、p<0.1の領域において急激な低下を起
こしている。この場合の臨界車両密度は図7(a)の場合の1/3以下であり、極めて小さな値であ
086420 の● ■ ● ● ● 100000 ン
●?●■’■●~■●CCCP ̄ ̄、■。 ̄p ̄ ̄ ̄● ̄の●。●0
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 ̄rテロ●’■ ̄U□ ̄ ̄■■●●●●●「CCC ̄、●●■、‐● ̄ ̄
 ̄~~、~~ ̄
0.00.1020.30.4 p
図8車両密度pと系平均速度vとの関係。それぞ
れのマークは、■:図7(a)、▲:図7(b)、●:図7(c)、□:図7(。)の系に対応している。
56
列より高密度側にシフトしているが、図7(a)の 臨界値に比べればその1/2程度であり小さい。
図7(。)に対する平均速度はやや複雑な変化を
示している。まずp<0.15の領域ではし=0.75程 度で一定である。p=0.15近傍で速度が低下し、
0.2<P<0.3の中間の領域では再び一定速度(v=
0.5程度)となる。密度が増加しp=0.3に達する
と速度v=0の状態へと再び減少している。この 様な多段階状の速度変化は次の様に解釈できるであろう。まず、p=0.15近傍における最初の速
度低下は、図7(c)の・に対する速度減少と同一 の密度で起きていることから、1つおきに信号「1」と「o」が交互にかつ規則的に並べられた配 列効果に関連しているものであろう。図7(。)の 上向車両はその前方に「,」と「0」が交互に並ん だ信号配列状態となっていることは容易に理解
できる。また、p=0.3近傍の高密度領域における
速度減少は、図7(a)の■に対する速度減少と同 一の密度で起きていることから、図7(a)と同様な信号配列に関連しているであろう。図7(。)に おける右向車両の前方の信号配列状態は図7(a)
と同様である。この多段階にわたる転移挙動は、
相転移論的に興味ある現象であり、その成因に ついて今後さらに詳しく研究していく予定であ
る。
5-3渋滞クラスターの構造
この節では、BMLセルオートマトン法に信号 制御を導入し、その信号配列状態と自由流一渋 滞の間の相転移挙動との関連を調べてきた。最 後に、信号配列状態と渋滞クラスターの構造と の関係について調べてみよう。図9(a)から(。)は 図7に示されているそれぞれの信号配列を持つ 系において観察された渋滞クラスターの構造を 示している。図9(a)から(。)の構造は、図7(a)か ら(。)に示されている系にそれぞれ対応している。
図9に示されている4つの構造は、それぞれ車
両密度がp=0.45において自己組織化されたク
(b)
(a)
(。)
(c)
図9信号制御を受ける系においる自己組織化された渋滞クラスターの構造。(a)、(b)、(c)、(。)は図7
(a)、(b)、(c)、(。)の系にそれぞれ対応している。密度は全ての図においてP=0.45である。
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ラスターを示している。図9(a)は太いクラスタ ー構造を持っており、その形状は図6(a)と同様 である。図9(b)と(c)は系内に均一に分布した繊 細なクラスター構造を持っている。これらのク ラスターはシミュレートされた体系の対角線方 向に伸びていることが特徴である。
これに対し図9(。)に現れているクラスターは 南北方向に伸びた形状を持っており、東西方向 のみにスパイクが現れている。この形状は、図8 において示された多段階にわたる相転移のプロ セスを反映しているものである。
文献
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本研究では、2次元セルオートマトン法の1つ であるBMLモデルにより交通流のダイナミック スをシミュレートし、自己組織化過程により現 れる自由流相一渋滞相における相転移挙動を調 べたものである。これにより、基本図上の高車 両密度領域において観察される流量ゆらぎは、
系内に自発的に現れ始める局所的な渋滞クラス ターの生成と消滅挙動に原因していることが明 らかとなった。また、自己組織化された渋滞ク ラスターの構造は、車両密度に敏感な性質を示 し、互いに相似櫛造を持っていることが示され た。また本研究では、信号制御を受ける交通流 の特徴を調べるため、BMLモデルに2状態を持 つ信号制御を付加した新しいセルオートマトン モデルを提案した。これにより相転移に対する 臨界車両密度は系内に設置された信号状態の連 携構造に強く依存することが見い出された。こ のことは実際の2次元流においては同構造を大 域的に最適化することが重要であることを意味 している。またこのモデルにより相転移が多段 階にわたって進行する系が存在することが見い 出された。さらに、自己組織化過程を経て得ら れた渋滞クラスターは、系の信号配列状態によ ってそれぞれ固有の構造を持っていることが明 らかになった。
(2002年7月31日受理)
〔校正時加箪〕
その後の研究により、図8に示されている多段階 相転移現象の原因が明らかにされている。信号配列 の連携榊造が方向により異なる系では、ダイナミッ クスそのものに方向依存性が生じるためやや複雑な 相転移挙動を示すことになるのである。(M・S.
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Watanabe,“Dynamicalbehaviorofatwo-dimension‐
alcellularautomatonwithsignalprocessing',
PhysacaA、2003年、voL324、pP707-716)また、
臨界密度に関する信号周期の影響も研究されている。
周期の増大に伴って同密度が減少する系のみならず 増加する系もあり、応用上、信号連挽性と周期設定 を同時に最適化することが重要である。(M・S,
Watanabe,‘`Dynamicalbehaviorofatwo-dimension‐
alcellularautomatonwithsignalprocessingu Eflbctofsignalperiod”PhysicaA、印刷中)