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系外ジェット伝搬の2 温度磁気流体シミュレーショ ン

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

系外ジェット伝搬の2 温度磁気流体シミュレーショ ン

大村, 匠

http://hdl.handle.net/2324/4474933

出版情報:Kyushu University, 2020, 博士(理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式3)

氏 名 :大村 匠

論 文 名 : Two-temperature Magnetohydrodynamic Simulations of Extra-Galactic Jets

(系外ジェット伝搬の 2 温度磁気流体シミュレーション) 区 分 : 甲

論 文 内 容 の 要 旨

ジェットは、銀河中心に位置する巨大ブラックホールの重力エネルギー源を駆動源に噴出する 細く絞られたプラズマの噴流であり、銀河中心部から銀河間領域に渡って伝播している。ブラック ホール近傍の高エネルギー粒子や強磁場を広大な銀河間空間へと輸送するジェットは、周辺環境に 多大な影響を与える。そのため、ジェットは宇宙論的磁場進化や宇宙の構造形成史を考える上で欠 かせない存在である。加えて、ジェットは地上実験では実現困難な相対論的なプラズマであること が予想されプラズマ物理の観点からも重要な研究対象である。しかしながら、ジェット進化の過程 やその物理状態には未解明な点が多い。

銀河間空間に広がるジェットは、電波からガンマ線まで多波長に渡る放射が観測される。特に、

電波放射は、べき乗分布を持つ非熱的な相対論的電子からのシンクロトロン放射によって説明がで き、X線放射の情報と組み合わせることで電子のエネルギーと磁場のエネルギーを測定することが できる。一方で、観測により得られた非熱的電子のエネルギーが熱的X線放射より見積もられた周 辺ガスの内部エネルギーよりも低い低圧状態にあるジェットの存在が複数天体で報告されている (Belsole et al. 2007)。これは、多数の熱的な電子や放射を出さない陽子のエネルギーが含まれて いないため、ジェットの内部エネルギーを過小評価しているためである。

ジェット伝播問題は、これまで磁気流体(MHD)シミュレーションを用いた研究が数多く行われ てきた(e.g., Norman et al. 1982)。特に、Mendygral et al. (2012)では観測との直接的比較を行う ために、放射を担う非熱的電子のエネルギー進化とMHD方程式を並列して解くことで、ジェット の非熱的電子のエネルギースペクトルを自己矛盾なく求める研究がなされた。しかし、これまでの 先行研究では、相対論的プラズマにおいて重要となり得るプラズマの2温度性が無視されている。

相対論的プラズマは、電子と陽子のクーロン衝突によるエネルギーの交換率が低いため、電子- 陽子熱緩和時間がジェットの活動年齢を容易に超えると予想される。加えて、電子-電子及び陽子- 陽子の熱緩和時間は、電子-陽子の熱緩和時間と比べ遥かに短いことから、電子と陽子が互いに異な る温度を持つ2温度状態となる。熱的な電子は加速電子の熱浴となるため、非熱的な電子成分にも 影響を与えることが期待される。従って、輻射を担う電子の正確なエネルギー分布を得るためにも プラズマの2温度性を考慮したジェット伝播シミュレーションが必要不可欠である。

Ohmura et al. (2019)は、MHD方程式に加え電子と陽子それぞれのエネルギー方程式を解く2

温度MHDシミュレーションを世界に先駆けてジェット伝播問題に適用した。その結果、直接導出 した電子温度は、1温度近似からの単純な比例関係では求められないことを示した。しかしながら、

Ohmura et al. (2019)では、観測及び理論的に示されている衝撃波や乱流に起因する電子の非可逆 的加熱現象を取り扱っていなかった。また、軸対称を仮定したため、非軸対称な不安定モードの発

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展を扱うことができていなかった。

観測的研究では、放射電子のエネルギーしか評価できず、ジェットのエネルギーを過小評価し ている。そこで、本研究ではより現実に即した2温度MHDシミュレーションによって、電子と陽 子それぞれの熱エネルギーを正確に求めることで、放射エネルギーと力学的エネルギーとを関係づ けることを目的とする。課題遂行のために、(1)加熱率依存性を調査するために軸対称MHDシミュ レーション、(2)理論及び観測から示唆される電子の非可逆的加熱現象を取り入れた3次元シミュレ ーションを実施する。

まず、軸対称の仮定の下、電子と陽子の加熱比をパラメータとして与えた。計算の結果、電子 の非可逆的加熱現象を考慮した場合においても、2 温度状態をジェットの活動年齢より遥かに長い 時間維持できることが分かった。また、終端衝撃波での加熱量が大きいため、初期に仮定した電子 と陽子の温度比はジェットの電子と陽子の温度比には依存せず、加熱比にのみ強く依存することを 明らかにした。

次に、ジャイロ運動論から示唆される乱流中での電子の非可逆的加熱モデル(Kawazura et al.

2018)を導入した3次元シミュレーションを試みた。その結果、3次元に拡張したことによってジェ

ット内部は乱流で満たされ、電子と陽子の温度比は乱流散逸による平衡状態に達していることがわ かった。特に、乱流による電子と陽子の加熱比は磁気エネルギーに相関していることから、電子と 陽子及び磁場のエネルギーはそれぞれ乱流加熱モデルを介して結びついていることを示した。本研 究結果によって、陽子は放射電子の十倍以上の熱エネルギーを持つが示され、観測される低圧状態 を説明することができた。

参照

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