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形容詞の語形成についての歴史的研究

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

形容詞の語形成についての歴史的研究

村山, 実和子

http://hdl.handle.net/2324/4474908

出版情報:Kyushu University, 2020, 博士(文学), 課程博士 バージョン:

権利関係:Public access to the fulltext file is restricted for unavoidable reason (3)

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(様式6-2)

氏 名 村山 実和子

論 文 名 形容詞の語形成についての歴史的研究

論文調査委員

主 査 九州大学 准教授 青木 博史 副 査 九州大学 教授 高山 倫明 副 査 九州大学 准教授 川平 敏文 副 査 九州大学 教授 久保 智之

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

本論文は,日本語の形容詞の語形成について,歴史的観点から考察を行なったものである。特に,

「子どもらしい」「大人っぽい」「言い訳がましい」「似つかわしい」のようなものに代表される,接 辞による派生形容詞に注目して立論している。

第1章ではこれまでの先行研究が整理され,その課題を指摘することで本論文の立ち位置が示さ れた。第2章では,接尾辞「クロシイ」という形式について,その成立と展開が詳細に記述された。

近世の文献資料において,「重くろしい」「暑くろしい」のような耳慣れない形式が見られるが,現 代共通語で「重苦しい」「暑苦しい」と表現される「~クルシイ」は,この「~クロシイ」であった ことが明らかにされた。意味・形態の歴史的変化について,用例に基づいて丁寧に説明がなされ,

説得力に富むものであった。

第 3 章では,接尾辞「ハシ(ワシイ)」について,その歴史的展開が詳細に記述された。成立当 初は,動詞をもとに形容詞を派生する接尾辞であったものの(似つく→似つかわしい),中世を境に,

既存の形容詞から二次的に形容詞を派生する形式に変容し(恥づかしい→恥づかわしい),近世にか けて多くの造語が行われたことが示された。中世以降に成立した「~ハシ」という語彙の多くは近 代までに衰退するが,その要因について語構成の観点から説明が行われた。衰退の方向へ向かう中 で唯一の例外である「いかがわしい」という語が固定化して残存する経緯については,第4章で詳 しく述べられた。観察・記述ともに,大変優れた論であった。

「形容詞を素材として新たな形容詞を造る」ことは,接尾辞による派生に限らず,接頭辞による 派生や,形容詞同士の複合もこれに含まれる。第 5章でその全体を概観した後,第 6 章では,「わ る甘い」「わる長い」のような,接頭辞「ワル」による派生が取り上げられ,近世~近代にかけて見 られる「ワル+形容詞」について,特にその表す意味を中心に記述がなされた。現代共通語であれ ば「いやに甘い」「長すぎる」のように別の文法形式で表しそうなところであるが,当該時期におい てはそれを表現する手段として「派生」が有効であったことを示唆する事例として興味深いもので あった。付論では,「めかす」という語が取り上げられ,接辞から語へという,通常の文法化とは異 なる歴史的変化が示され,きわめて重要な指摘であった。

以上のように,本論文は,従来の研究では現象の指摘にとどまっていた形式をあらためて掬い上 げ,緻密な文献資料の調査に基づき,現代方言の状況をも参勘して説得力の高い歴史記述を行なっ たもので,学術的重要性が大いに認められる。コーパスの構築・利用にも積極的に関わってきてお り,今後のさらなる発展も期待される。よって本調査委員会は,本論文の提出者が博士(文学)の 学位を授与されるに十分な能力を持つ者と認めるものである。

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