農林水産政策研究所 セミナー
EUの有機食品市場の動向と有機農業振興のための戦略
2019年 7月 26日
立教大学 経済学部
大山利男
欧州諸国における
有機食品市場の動向とEU有機規則
1. 本研究のねらい
全国各地で有機農業の新しい取り組む事例の情報に接することは少なくない。ま た,大手小売業者による有機食品の取扱い拡充や新しいコンセプトの店舗展開が 見られるなど,有機農業・有機食品市場の急展開が予感させられる。とりわけ小 売業界をはじめとする関係者の間では,有機食品に対する消費者の関心はこれま でになく急速に高まっているという見方が多い。 ところで,農林水産省の公表資料「有機農業をめぐる事情」(2019年4月)に よれば,2009年の有機市場規模は1,300億円から,2017年に1,850億円に拡大し たと推計されているが(消費者アンケート調査),民間団体(オーガニックヴィ レッジジャパン)によれば,同じ2017年の「市場規模感」として4,117億円と推 計されている。このような推計結果の乖離は,その前提や手続きの違いによるが, 言いかえれば,日本国内で有機農業・有機食品市場の実態や構造を把握し,その 特徴や傾向を検討できる確かなデータが十分な状況にないことを示している。 本研究では、日本の有機農業・有機食品市場の動向と規模を定性的,定量的に 把握するために,欧米先進諸国における(とくに)有機食品市場の動向把握と調 査分析手法について調査し,国際的に比較可能なデータ構築の可能性について検 討する。世界の有機食品市場規模(小売販売額)
上位10ヵ国 ・ 国別シェア
Willer H. 2019 BioFach, Febrary 13, 2019 Source: FiBL-AMI survey 2019
単位:100万ユーロ
欧州諸国の有機市場(小売販売額)の成長
2000-2017
Willer H. 2019 BioFach, Febrary 13, 2019 Source: FiBL-AMI survey 2019
国内小売市場における有機シェアの高い国
2016-2017
Willer H. 2019 BioFach, Febrary 13, 2019 Source: FiBL-AMI survey 2019
1人当たり有機食品消費額(2017)
Willer H. 2019 BioFach, Febrary 13, 2019 Source: FiBL-AMI survey 2019
有機製品のマーケティングチャンネル
Willer H. 2019 BioFach, Febrary 13, 2019 Source: FiBL-AMI survey 2019
農場数 有機面積(ha) 2018.1.1 2019.1.1 増減数 (%)変化率 2018.1.1 2019.1.1 増減面積 (ha) 変化率(%) Biokreis 1,222 1,285 63 5.2 56,588 64,098 7,510 13.3 Bioland 7,305 7,744 439 6.0 387,980 418,381 30,401 7.8 Biopark 525 509 -16 -3.0 105,103 107,050 1,947 1.9 Demeter 1,529 1,599 70 4.6 81,841 84,995 3,154 3.9 Ecoland 42 51 9 21.4 2,338 2,474 136 5.8 Ecovin 233 241 8 3.4 2,356 2,467 111 4.7 Gäa 392 385 -7 -1.8 34,632 34,120 -512 -1.5 Naturland 3,448 3,721 273 7.9 181,428 206,981 25,553 14.1 Verbund Ökohöfe 134 134 0 0.0 17,804 18,114 310 1.7 合計 14,830 15,669 839 5.7 870,070 938,680 68,610 7.9
ドイツのおもな有機農業団体の会員農場数・面積
Bund Ökologische Lebensmittelwirtschaft (BÖLW) 2019
Zahlen • Daten • Fakten: Die Bio-Branche 2019
Demeter
Reformhaus
(伝統的な有機自然食品店) ・生活改革運動によりドイツ,スイスで展開 ・市街中心地で小規模店舗が多い ・カフェ・ベーカリー併設タイプもAlnatura
(有機自然食品専門スーパー) in Bonnドイツの有機農業団体所属および所属しない生産者数・有機面積の推移
Bund Ökologische Lebensmittelwirtschaft (BÖLW) 2019
Zahlen • Daten • Fakten: Die Bio-Branche 2019
緑:EU有機の生産者
青:有機農業団体の生産者 棒グラフ:生産者数
ヨーロッパ地域の有機面積および小売市場の成長率推移
2000-2017
5. EU有機規則の論点
1991年6.24 EU有機農業規則(No. 2092/91) 1999年 コーデックス有機ガイドライン(CODEX 1999) 1999年 EU有機規則に家畜生産に関する規則が追加される(EU 1999) 2007年 EU有機規則の改正(Regulation (EC) No 834/2007 ) 2008年 EU有機施行規則,EU有機製品輸入規則(Regulations (EC) No 889/2008 and No 1235/2008)
2012年 欧州委員会は,EU有機規則の問題点をまとめた報告書を欧州議会,欧州 理事会に提出(European Commission 2012),改正作業を開始 2014年 有機規則の改正原案を公表(European Commission 2014) ・有機農業の原則から逸脱した多数の例外規定が有機製品に対する消費者の信頼を 低めている →例外規定をできるだけ廃止して,信頼を高める →EU域内の有機農業の生産拡大,消費拡大を図る ・しかし,有機規則を厳しくし過ぎると,有機農業をやめる農業者や新規参入者を 減らすこと等が懸念される →新加盟国の東欧諸国の有機農業が危機に陥ると懸念され,強い反対が起きる
EU有機規則の政策プロセスと論点
2012年 欧州委員会は,EU有機農業規則の問題点をまとめた報告書を欧州議会, 欧州理事会に提出(European Commission 2012),改正作業を開始 2014年3月 欧州理事会は,現行の有機規則枠組に換わる新しい有機農業規則改 正案を公表(European Commission 2014),いわゆる「共同決定」プ ロセスを開始 〜 欧州委員会,欧州理事会,欧州議会の「三者協議」を経て 新有機規則が 2018年4月 欧州議会において, 2018年5月 欧州理事会において採択され,公布(regulation (EU) 2018/848) また,2021年1月1日より適用されることを決定 ただし,採択された法文は「基本法」であり,施行されるまでの2 年間にテキストの多くの詳細について決定しなければならない ↓ 2021年1月1日 新EU有機規則の施行EU有機規則(EU 2018/848)の変更点および論点
・ 適用対象製品の拡大 植物(作物),家畜,海藻,養殖魚介類,加工食品,加工飼料,酵母にくわえ て,新たにワインを追加 つぎの品目についても規定:特定のイースト酵母,マテ,ブドウの葉,ヤシ の芽,ホップシュート,カイコの繭,樹脂,エッセンシャルオイル,コルク 栓,生の綿,生のウール,生の皮,植物ベースの伝統的なハーブ調合 ・大規模ケータリング業務(レストラン,食堂等)は有機規則の範囲外。ただし 各国および民間基準を適用できる ・目的と原則 新しく「短い配送チャンネル」「地域的な生産」の推奨が加わる 土壌に関連した生産概念を強化(生きた土壌で生産されなければならない) ・家畜飼料の地元生産原則の強化 現行規定では,反芻家畜は60%,豚・家禽は20%を自農場で生産するか,不可 能な場合は地域内の他の有機農場等と協力して生産する 2023年からは,それぞれ少なくとも 70%,30%に引き上げられる ・遺伝的多様性,不均一性の高い植物繁殖体(種子,苗等)の使用 ・グループ認証の導入6. グローバル化のなかの有機食品流通
スイスの例
1999年 EUとの有機同等性協定の公表・施行(cf.2012年 日本)
ビオスイスの輸入ポリシー
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