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核融合炉における非等方中性子放出とその応用に関 する研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

核融合炉における非等方中性子放出とその応用に関 する研究

浦川, 知己

http://hdl.handle.net/2324/4475112

出版情報:九州大学, 2020, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

博 士 論 文

題 目

核融合炉における非等方中性子放出と その応用に関する研究

令和 2 年 11 月 九州大学大学院

工学府エネルギー量子工学専攻

浦川 知己

(3)

i 目次

第一章 序論………...1

1-1 核融合炉の現状………....1

1-1-1 ITER...2

1-1-2 JT-60SA...4

1-1-3核融合原型炉 (DEMO) ...5

1-2 核融合ブランケットとTest Blanket Module...6

1-2-1原型炉ブランケット...7

1-2-2 Test Blanket Module (TBM計画) ...10

1-3 中性子計測...11

1-3-1中性子放出スペクトル…...11

1-3-2 放出スペクトルの非等方性...13

1-3-3高速中性子の検出原理...14

1-3-4 ITERにおける中性子計測機器の概要... 16

1-3-5中性子計測を用いた燃料イオン比診断... 18

1-3-6中性子計測を用いた高速イオン診断………...19

1-4 中性子非等方放出の観測………..20

1-5本研究の目的...20

1-6本論文の構成...21

第二章 解析手法...22

2-1 燃料イオンの速度分布関数...22

2-2 中性子放出スペクトル...23

2-2-1 反応断面積の取り扱い...23

2-2-2 核融合反応率...25

2-2-3 反応生成粒子の放出スペクトル...28

2-2-4 Gauss分布重ね合わせモデル...30

2-3 NBI加熱プラズマにおける中性子放出スペクトル...31

第三章 核融合ブランケットにおけるトリチウム生産性能に対する影響...38

3-1 核融合ブランケットにおけるトリチウム生産の重要性及び評価方法...38

3-2 中性子放出スペクトルの歪みのトリチウム生産性能への影響...40

3-3 種々のビームパラメータにおけるトリチウム生産性能への影響...47

3-4 種々のブランケットにおけるトリチウム生産性能への影響...51

3-5 DD中性子を利用したトリチウム生産におけるトリチウム生産性能向上の影響...55

3-6 本章のまとめ...57

(4)

ii

第四章 非等方中性子放出スぺクトルの燃料イオン比診断への応用...58

4-1 核融合プラズマにおける燃料イオン比診断の重要性及び解析モデル...58

4-2 高エネルギー側への歪みを利用した燃料イオン比診断手法………...63

4-3 高エネルギー側への歪みを利用した燃料イオン比診断手法の測定性能………...…...64

4-4 NBI加熱プラズマにおけるエネルギー中央領域に対する歪みの影響...70

4-5 エネルギー中央領域の非等方性を利用した燃料イオン比診断手法………..74

4-6エネルギー中央領域の非等方性を利用した燃料イオン比診断の測定性能……...78

4-7 放出スペクトルの歪み成分計測によるGauss成分ピーク値の推定(検討)……….82

4-7 本章のまとめ...83

第五章 中性子束空間分布計測を用いた非等方放出スペクトル診断法...85

5-1 中性子の非等方放出観測の高速イオン診断への応用及び評価方法……...85

5-2 中性子の二重微分放出スペクトルの解析...87

5-3 中性子束空間分布計測を利用した非等方放出スペクトル診断法...90

5-4 本章のまとめ...92

第六章 まとめ...94

6-1 総括...94

6-2 今後の展望...95

参考文献...97

謝辞...100

(5)

1 第一章 序論 1-1 核融合炉の現状

現代社会の維持・発展にはエネルギーが必要不可欠であり、火力・水力・原子力等その発 電方法は多様である。しかし、電力の大半を担う火力及び原子力は、その資源が有限かつ環 境親和性、安全性に問題があり、エネルギー問題は依然として世界規模の課題となっている。

そのため、環境に適応し資源豊富な安全性の高いエネルギー供給源が現在も求められてい る。核融合エネルギーは資源量・安定性・環境親和性の観点で優れた可能性を秘めており、

次世代のエネルギー供給源として期待されている[1]。実際、核融合発電実現のため、世界 各地で様々な実験装置が設置され多くの実験が繰り返されてきた。

核融合炉は、燃料イオンを磁場で閉じ込める磁場閉じ込め方式とレーザー入射による爆 縮を利用する慣性閉じ込め方式がある。現在主流の磁場閉じ込め核融合炉としてはトカマ ク型が挙げられる。トカマク型は1950年代に旧ソ連で考案され、1960年代後半のT-3ト カマク[2]の成果を契機に世界的注目をあびた。その後 1980 年代には三大トカマク装置と 呼ばれる、JAERI Tokamak-60 (JT-60, 日本) [3]、Joint European Torus (JET, 欧州) [4]、

Tokamak Fusion Test Reactor (TFTR, 米国) [5]が建設され、実験が進められた。JETでは 1991年に世界で初めての予備トリチウム燃焼実験が実施され、1997年にDT実験が実施さ れた。同実験では、16 MW (エネルギー増倍率 Q = 0.67)の核融合出力を得た。TFTRでは 1993年よりDT実験が実施され、核融合出力の向上・トリチウム輸送の研究等が取り組ま れた。核融合出力向上に関わる実験ではDD 実験で最適化されたショットを基にDT実験 を実行し、核融合出力10 MW以上を達成した。本実験では、蓄積エネルギー、閉じ込め時 間、中心電子温度等のプラズマパラメータについてTFTRの最高値(蓄積エネルギー W=6.9 MJ, エネルギー閉じ込め時間 τE = 0.21 s, 中心電子温度 Te = 13.5 keV, 核融合出力密度 2.8 MW/m3)を記録した。JT-60はプラズマ温度5-10 keV, 5-10 sのロングパルス運転を可能とし、

プラズマ閉じ込め(スケーリング則)の確認、不純物コントロール、プラズマ加熱の研究に寄 与した。上記のトカマク装置の実験により、閉じ込め性能向上、電流駆動、炉心プラズマ物 理の研究に加え、核融合炉の運転に必要なプラズマ制御方法確立や工学技術開発の面でも 大きな進展を見せた。

現在日本では、磁場閉じ込め方式の一種であるヘリカル型の核融合実験装置Large Helical Device (LHD) [6]が稼働中のほか、JT-60 Super Advanced (SA) [7]の改修作業が進められ て い る 。JT-60 SA は 国 際 協 力 の 下 、 建 設 中 の 国 際 熱 核 融 合 実 験 炉 International Thermonuclear Experiment Reactor (ITER) [8]の技術目標達成のための支援研究および核 融合原型炉(DEMO) [9]に向けたITERの補間研究、人材育成に利用される。ITER及びJT-

60SAの概要を1-1-1及び1-1-2節に記載する。また核融合原型炉の概要を1-1-3節に記載

する。

(6)

2 1-1-1 ITER

国際熱核融合炉ITERは、核融合炉物理及び炉工学の研究を目的とし、熱核融合実験炉と して計画されたトカマク型装置である(Fig. 1-1)。ITERは日本、欧州、米国、ロシア、中国、

韓国、インドの国際協力の元建設されており、2025年に運転開始、2035年にDTプラズマ 核融合運転開始を目標としている。ITER は従来のトカマク装置と比べ大型化されており、

長時間燃焼(400 秒)と高出力(500 MW)、高いエネルギー増倍率(=核融合出力パワー/外部 加熱入力パワー)を目標としその設計がなされている[11]。主要パラメータをTable. 1-2に 示す。また比較のため Table. 1-1 にはその他の代表的なトカマク装置における主要パラメ ータも併せて記載する。DTプラズマの長時間運転実現に加え、様々なプラズマパラメータ での運転を可能としており、高速イオン・プラズマ物理研究も実施される。そのため核燃焼 プラズマの維持およびその物理研究のための様々な診断機器が設置される(装置性能の評価 も兼ねる)。Table. 1-2 にITERで診断予定のプラズマパラメータに関してグループ毎にま とめる[12]。診断グループは、プラズマの基本的なコントロールと構成機器の保守に必要な パラメータ(Group1a)、特別なシナリオ想定時に追加で診断するパラメータ(Group1b)、プ ラズマ物理学の研究のために測定されるパラメータ(Group2)の 3つに区分される。加えて ITERでは各国のTest Blanket Module (TBM)が設置される[13]。TBMではITER環境下 での熱エネルギー取り出し及びトリチウム増殖の実証試験が行われる。TBMの概要は1-2- 2に記載する。

Fig. 1-1 ITER 鳥瞰図 [10]

(7)

3

Table. 1-2 ITERにおける診断項目

Table. 1-1 ITERの主要パラメータ及びその他トカマク装置との比較

(8)

4 1-1-2 JT-60SA

Fig. 1-2にJT-60SA の鳥瞰図を示す。JT-60SAプロジェクトはITERの技術目標達成のた

めの支援研究および核融合原型炉に向けたITERの補完研究、人材育成に利用のため、2007 年にBroad Approach (BA) Agreement及びJapanese National Fusion Programmeの枠組みの下で 開始された (主要パラメータはTable. 1-1に記載)[4]。

ITERの技術目標支援として、ダイバータの目標熱負荷を現在の材料の許容範囲まで引き 上げ、ITER及びDEMOにおける核融合炉起動シナリオを最適化、高圧力プラズマの長時間

(100s程度)維持、不純物輸送、コントロール等があげられる。そのためJT-60SAでは、いく

つかのITER およびDEMO のプラズマパラメータ領域におけるオペレーションシナリオを 調査し最適化する役割があることから、幅広いプラズマパラメータにおける運転を可能と している。

Fig. 1-2 JT-60SA 鳥瞰図 [14]

(9)

5 1-1-3 核融合原型炉 (DEMO)

核融合原型炉(DEMO)は、ITER と商用炉の間の単一のステップとして位置づけられてい る。原型炉は各国でその設計がなされており、目標及びその計画もそれぞれ異なるが、主に 核融合を用いた発電の実証、トリチウムサイクルシステムの確立が目的となる。Table. 1-3 に各国原型炉の主要パラメータを示す。また各国のDEMO計画に関して以下に示す。

(a)日本 [15]

DEMOデザインをより強固なものとするため、量子科学研究機構(QST)、核融合科学研究所 (NIFS)、大学及び製造会社により’Joint Special Design Team for DEMO Fusion’と名付けられた チームが2015年に発足された。2025年までに有望な DEMOコンセプトを開発し、工学設 計で予想される本格的な研究開発活動のための研究開発項目及びその技術仕様を決めるよ うに計画されている。GW級の核融合出力に加え、トリチウム自己供給及び定常運転の実証 を目標に設計。また商用炉で使用が予想される、リモートメンテナンスシステムの実証にも 取り組む。2011年には小型な核融合炉SlimCS(主半径5.5 m 副半径2.0m)の概念設計がなさ れた[16]。

(b)欧州 [17]

EUROFusion 支援の下、原型炉の概念設計がなされている。数百 MW の発電の実証及びト

リチウム燃料サイクルの実証が目標とされている。リスクを最小限としITERで確立された 産業基盤を活用するため、ITERで得られた知見及び技術基盤からの適度な外挿により開発 を進め、堅牢な設計を目指す。このことからEU原型炉とITER間には高度なスケジュール 依存性が存在する。

(c)ロシア [18]

DEMOプロジェクトはロシア国際プログラムの一部として1990年代から開始された。磁場 閉じ込め核融合の実証及び安全性、環境親和性、廃棄物処理の評価を目的としている。パル ス運転、定常運転双方の概念設計がなされているが、ITERプログラム及びトカマク技術の 発展に伴い、定常運転を推奨するとしている。

(d)中国 [19,20]

FDS シリーズと呼ばれる様々な核融合プラントの設計がなされている。FDS シリーズでは 安全性、環境親和性、経済性の実証を目標に炉心・炉工の設計がなされている。またFDSシ リーズでは核融合発電の実証を目的とした設計のみでなく、長寿命核種の変換及び核分裂 性核燃料の製造及び水素製造のための体積中性子線源としての利用を目的とした核融合炉 の設計もなされている。また、DEMO 炉としてCFETRの設計がなされている。CFETRで は二つのステップで運転が計画されており、第一ステップでは定常運転及びトリチウムの 自己供給の実証、第二ステップでは1.0 GW以上の出力の実証が目標とされている。

(10)

6 (e)韓国 [21]

韓国の原型炉(K-DEMO)は二段階発展で計画されている。第一ステップでは、発電およびト リチウム自己供給の実証、構成機器の機能試験を兼ねた設計がなされる。第二ステップでは、

300MWe級の発電実証のため真空容器等の構成機器の性能向上が計画されている。

1-2 核融合ブランケットとTest Blanket Module 核融合プラズマでは主に以下の核反応が生じている

D + T → α (3.6 MeV) + n (14.1 MeV) (1 − 1) D + D → He3 (0.82 MeV) + n (2.5 MeV) (1 − 2) D + D → p (3.0 MeV) + T (1.01 MeV) (1 − 3) D + He3 → α (3.6 MeV) + p (14.7 MeV) (1 − 4) ここでpは陽子、Dは重陽子、Tはトリトン、3Heはヘリウム3イオン、αはアルファ粒子、

nは中性子を示す。ITER及び原型炉では反応断面積(Fig. 1-3) [22]の高いDT反応を利用し、

核融合出力を得る。反応生成粒子であるアルファ粒子は磁場に閉じ込められ、プラズマを加 熱する。一方、中性子は磁場に拘束されることなく、炉壁に入射される。核融合中性子工学 (核融合ブランケット工学)の役割はこの14.1 MeV中性子の構成機器・環境・人間に及ぼす 影響を評価する(併せてその影響を最小にする)こと、中性子を利用した燃料生産・熱交換(エ ネルギー変換)等に関する検討である[23]。また中性子工学では中性子の輸送に加え、中性子 に起因したその他の現象の評価も守備範囲となる。本節では核融合ブランケットに関して 概要を記載する。

Fig. 1-3 核融合反応断面積

Table. 1-3 各国の核融合原型炉(DEMO炉)の主要パラメータ

(11)

7

1-2-1原型炉ブランケット

原型炉における核融合ブランケットは主に熱変換・燃料生産・遮蔽の3つの役割を担う。

第一壁に入射された14.1 MeV中性子は、ブランケット内の構成材料との散乱により減速さ れる。中性子の散乱及び核反応(発熱反応)により熱エネルギーが生じ、冷却材との熱交換が なされる。冷却材との熱交換は、ブランケット構成材料の保全の面でも重要となる。ブラン ケットにおける冷却材は数種類候補があり、代表的な材料としては液体金属・亜臨界圧水・

3Heガスがあげられる[24-25]。

熱交換に加え入射された中性子は燃料生産に利用される。核融合炉では核燃焼により消 費されたトリチウムと同等(またはそれ以上の)量を自身のシステム内で生産し供給する必 要がある。漏れたトリチウムの回収等も行われるが、トリチウム量の絶対量を増やすシステ ムはブランケットのみである。したがって、核融合ブランケットにおけるトリチウム生産は 燃料自己供給・燃料サイクルシステム [26](Fig. 1-4)の実現のため大変重要な要素となる。

トリチウム生産に関わる主な反応を以下に示す。

6Li

+ n → T + He4 (1 − 5)

7Li

+ n → T + He4 + 𝑛 (1 − 6)

9Be

+ n → 2n + 2 He4 (1 − 7)

𝐴Pb

+ n → 2n +𝐴−1Pb (1 − 8)

Aは鉛の質量数でA = 204, 205, 206, 207, 208である。式(1-5)(1-6)は中性子を燃料(トリ チウム)に変換するためのトリチウム増殖反応、式(1-7)(1-8)は炉内への中性子供給量を増 加させるための中性子増倍反応をそれぞれ示している。ただし、7Liとのトリチウム増殖反

応は3.0 MeV付近に閾値を持ち、断面積も小さい。したがってブランケットにおけるトリ

チウム生産は主に 70-90%まで濃縮された 6Li(化合物)が主に利用される[27]。各反応の反 応断面積をFig. 1-5((a)6Liのトリチウム増殖反応, (b)Beの中性子増倍反応 (c)Pbの中性子 増倍反応)に記載する[28]。一般にブランケットのトリチウム生産性能を示す指標として Tritium Breeding Ratio (TBR = ブランケットにおけるトリチウム生産量/プラズマにおけ るトリトン消費量)が利用されており、TBR > 1.0が燃料の自己供給を達成する上で必須と なる。しかし、核融合ブランケットの構造上、核融合ブランケットのトリチウム増殖領域に 入射されない中性子も存在する。また、その他のブランケット構成材料に吸収される中性子 も存在する。したがって、中性子増倍反応(式(1-7)(1-8))を用いD(t,n)α反応で生じた中性 子数以上の中性子をブランケット増殖層に供給する必要がある。

核融合ブランケットは熱変換および燃料生産などの中性子利用の他に、遮蔽としての役 割を持つ[29, 30]。核融合炉における中性子遮蔽設計の目的は大きく2つに分けられる。第 一に放射線業務従事者及び住民に対する放射線防護である。炉運転中に機器周辺の従業員 及び敷地付近の住民の被曝線量当量を抑える必要がある。また運転停止中の炉の点検修理 時に従業員が立ち入る際の被曝量も考慮の上設計を考える必要がある。第二に構成機器の

(12)

8

放射線損傷及び核発熱を材料ごとの許容値以下に抑えることである。特に放射線損傷によ る超電導マグネット構成材料の機能劣化の防止及び冷却機器の核発熱を低く抑えることが 重要となる。

核融合ブランケットは、使用される材料から数種類に分けられる。Table. 1-4に代表的な 原型炉ブランケットの構成材料(トリチウム増殖材、中性子増倍材、冷却材)に関してまとめ る。固体増殖水冷却ブランケットは増殖・増倍材の基礎データが豊富であること、水による 冷却で高い徐熱性能が得られるなどの利点が挙げられ、日本の原型炉ブランケットの第一 候補となっている [31]。一方、増倍材として用いられる Be は高温高圧水との接触で水素 を生成する発熱反応が生じることから、増殖層への水の漏洩が安全性の観点から懸念され ている。固体増殖ヘリウム冷却ブランケットの場合、水冷却方式と比較し徐熱性能が低く、

経済性が劣る。しかし、水素生成反応の管理が容易という利点がある。増殖(及び中性子増

倍)にLiPbまたはFLiBeを利用するブランケットを液体ブランケットと呼ぶ [32-33]。固

体増殖方式では生産されたトリチウムをHe等のトリウム回収材を利用し回収・運搬する必 要があるが、液体ブランケットの場合、増殖材そのものが流動しており、トリチウムの運搬 を増殖材そのもので行うことができる。また液体ブランケットのその他の利点として、材料 の中性子損傷が少ない点があげられる。リチウム鉛を利用したブランケットの設計は主に EUで行われている。リチウム鉛の場合、化学的活性が抑制され安定である。またリチウム 鉛がトリチウム増殖及び中性子増倍双方の機能を兼ね備えており、高いトリチウム生産性 能を持つ。しかし、電気伝導率が高いことから強磁場内で流動させた場合、MHD圧力損失 (電磁ブレーキ効果)が大きくなり、循環ポンプへの負荷、配管内圧の増大を招く恐れがある。

またリチウム鉛はそれ自身も冷却機能を有すが、EUではリチウム鉛ブランケットに冷却材 として水またはHeを採用した、Heガス冷却リチウム鉛ブランケット、水冷却リチウム鉛 ブランケット、さらにはHeガスとリチウム鉛の両方を同時に循環させる二重冷却リチウム 鉛ブランケットなど様々な方式の設計がなされている [34]。 FLiBe(溶融塩)を利用したブ ランケットの設計は主に日本のヘリカル型磁場閉じ込め核融合発電炉 FFHRシリーズで行 われている [35]。FLiBeの場合、トリチウム増殖、冷却等の機能を自身で担い、特に安全 性の観点から採用が考えられている。また最近では、FLiBeと同等のトリチウム生産性能を 確保しながら融点を下げることのできるFLiNaBeを利用した増殖層の開発も進められてい る。[36]

Table. 1-4 ブランケットの種類及び採用国一覧

(13)

9

Fig. 1-5 ブランケットにおけるトリチウム生産に関係する反応の反応断面積

(a)6Liのトリチウム増殖反応 (b)9Beの中性子増倍反応 (c)Pbの中性子増倍反応

Fig. 1-4 燃料(トリチウム)サイクルの概念図

(14)

10 1-2-2 Test Blanket Module (TBM計画)

ITERに取り付けられているブランケットは、水冷却されたステンレス製ブロックで構成 されている[37]。ITERブランケットは中性子の遮蔽のみを目的としており、熱変換および 燃料生産機能を持たない。しかし、TBM を用いた ITER 環境下におけるトリチウム生産、

エネルギー変換等の炉工学試験が実施される予定である。またITERでの照射試験後のモジ ュールデータ取得や放射性廃棄物処理に関する検討もなされる。TBMは3本の水平ポート を利用し、1ポートあたり二つのTBMを設置する予定である[38]。またTBM計画では、

ITER計画に参加する各国がそれぞれ独自にTBMをITERの水平ポートに搭載し機能試験 を行う。Table. 1-6に各ポートに搭載予定のTBMをまとめる[39-44]。日本の場合、EUと の共同研究により数種類の増殖ブランケット開発を進めている。設計されているTBMの鳥

観図をFig. 1-5に示す[45]。日本では、特に原型炉ブランケットの第一候補である固体増殖

水冷却方式のTBMの研究開発を進めている。一方EUでは安全性のより高いヘリウム冷却 方式TBMとLiPb増殖方式のTBMの性能試験を計画している。(なお加熱機器の追加によ りTBMを4つ削減することが現在検討されている)

Fig. 1-6 TBM [45]

Table. 1-5 搭載ポートとTBM一覧

(15)

11 1-3 中性子計測

中性子の計測は、核融合炉出力の管理に加え、構成機器、環境保全のため重要となる。ま たプラズマから生じる中性子はエネルギースペクトルを持ち、それは燃料イオンの速度分 布関数を反映したものとなる。したがって、中性子計測からプラズマの情報を得ることがで き、それは核融合プラズマ運転のためのプラズマ診断、プラズマ物理研究のための高速イオ ン診断等に応用される。1-3-1節ではまず核融合プラズマにおける中性子発生と燃料イオン の速度分布関数の関係性を説明する。1-3-2節では高速中性子の検出方法に関してその原理 を説明する。1-3-3節ではITERにおける中性子計測装置の概要を説明する。1-3-4、1-3-5 節では、中性子計測を用いたプラズマ診断の例として、燃料イオン比診断および高速イオン 診断に関して、その概要を説明する。

1-3-1中性子放出スペクトル

1-2 節の式(1-1)(1-2)(1-3)(1-4)で各反応生成粒子とそのエネルギーを併せて記載した が、これは静止したイオン間の反応を考えた際に、各反応のQ 値を運動量保存則を満た すように分配した時に生じる放出エネルギーを示している。しかし、実際の核融合プラズ マでは、燃料イオンも運動エネルギーを持つことから、反応生成粒子もそれを加味した放 出エネルギーとなる。一般に運動エネルギーを持つイオンの反応を考える場合、重心系に おける反応生成粒子の放出エネルギーは反応の Q値と燃料イオン間の相対速度エネルギ ーの和の分配で決まる。実験室系の場合、重心系速度の影響も受け、放出角度に応じて放 出エネルギーが決まる[46]。したがって、核融合プラズマ中の中性子の放出エネルギーに は分布が現れる。

燃料イオンの速度分布関数が Maxwell 分布の場合、核融合反応で生成される中性子の 放出スペクトルは Gauss 分布に近似されることが知られている。Gauss 分布の半値幅は 燃料イオンの温度で決まり、DT反応の場合、以下の式で与えられる [46]。

𝐹𝑊𝐻𝑀 = 4√𝑚𝑛𝑇𝑖(ln2)〈𝐸𝑛

𝑚𝑛+ 𝑚𝛼 (1 − 9)

ここで、𝑚𝑛(𝛼)は DT 反応で生じる中性子(α粒子)の質量、𝑇𝑖はイオン温度を示す。燃料 イオンの速度分布関数を Maxwell 分布と仮定した場合、中性子の放出スペクトルをプラ ズマ温度に対応した半値幅を持つ Gauss 分布として取り扱うことができるが、実際の核 融合プラズマでは、核反応や外部加熱など種々の要因で高速イオンが生成されている[47- 53]。これらの高速イオンは燃料イオン(バルクプラズマ粒子)と衝突を繰り返し、周囲の 粒子にエネルギーを付与する。高速イオンはバルクプラズマ粒子のエネルギーと比べ十 分に大きいことから、その減速過程で同種イオンの速度分布関数上に non-Maxwell 成分 を形成する。Fig. 1-7 にnon-Maxwell 成分形成時の速度分布関数の概念図を示す。燃料

(16)

12

イオンの速度分布関数上に non-Maxwell 成分が形成されている場合、中性子の放出スペ クトルにもその影響が現れる。non-Maxwellian 成分が形成に伴い、高い運動エネルギー を持ったイオンとの反応の割合が増加する。また高速イオンとの反応で生じる反応生成 粒子の放出エネルギーは反応生成粒子の放出角度に応じ Gauss 分布よりも広いエネルギ ー範囲を持つ。Fig. 1-8に静止したターゲットに種々の単色エネルギー (100 – 2000 keV) を持つ粒子を反応させた際に得られる実験室系における中性子放出エネルギーの角度依 存性を示す [54]。((a)D(d,n)3He 反応, (b)D(t,n)α 反応) 実際の核融合プラズマでは燃 料イオンも運動エネルギーを持つことから、Fig. 1-8のように一意にエネルギーは決定し ないが、高速イオンの持つエネルギーは燃料イオンに比べ十分に大きいことから、燃料イ オンの運動エネルギーの影響は小さく、放出角度と放出エネルギーの関係性は同様の傾 向を示す。したがって、非 Maxwell 成分形成に伴う高速イオンとの反応の割合増加は、

中性子の放出スペクトルに Gauss 分布からの高(低)エネルギー側への歪みをもたらす

[55-57]。Fig. 1-9にGauss分布から歪んだ放出スペクトルの概念図を示す。

Fig. 1-8単色ビームと静止したターゲットによる反応で生じる中性子の実

験室系における放出エネルギーと放出角度の関係 (a)D(d,n)3He反応 (b) D(t,n)α反応 Fig. 1-7 非Maxwell成分形成時の燃料イオンの

速度分布関数のイメージ

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1-3-2 放出スペクトルの非等方性

外部加熱等により高速イオンが特定の方向に偏在する場合、速度分布関数上には非等

方な non-Maxwellian成分が形成される。例えばNBI加熱プラズマの場合、NBI 入射方

向では高速イオンの割合が高い。また高速イオンはバックグラウンド粒子との衝突によ り拡散されることから、減速するにつれビーム粒子の異方性は緩和される。燃料イオンの 速度分布関数上に非等方な non-Maxwell 成分が形成された場合、反応生成粒子の放出ス ペクトルに生じる歪みにも非等方性が生じる[58-60]。接線NBI加熱プラズマを想定した 場合、NBI 入射方向では高エネルギー側への歪みの割合が大きくなり、反対方向では低 エネルギー側への歪みの割合が増加する。これはビームイオンとバルクイオン間の重心 速度はほぼビームイオン速度により決まり、反応生成粒子の放出エネルギーは重心速度 と為す角度に応じることから、NBI 入射方向(すなわち重心速度の方向)では高エネルギ ー粒子の発生割合が上昇するためである。この NBI加熱プラズマにおける中性子の非等 方放出の特徴はH. Matsuuraらにより二重微分放出スペクトル(単位体積、単位エネルギ ー、単位立体角あたりの中性子発生率)を用い総括的に解析がなされた [58]。また中性子 の非等方放出は、微分断面積の異方性からも生じることが知られている[54]。特に

D(d,n)3He反応の場合、ビームエネルギーの増加に応じ、前方方向(NBI入射方向)への発

生割合が増加する。NBI 入射方向では高エネルギー中性子の発生割合が増加することか ら、微分断面積の異方性も考慮した場合、中性子放出スペクトルは Gauss 分布から高エ ネルギー側へより大きな歪みを生じる。NBI 加熱由来の非等方 Maxwellian がもたらす、

中性子の非等方放出は近年のLHD重水素実験で実際に観測された[61, 62]。同実験にて、

接線入射 NBI加熱時、赤道面で観測される中性子の計測量が、非等方放出の影響により 核融合装置上部に設置された計測器での測定量よりも多くなることが報告された。(詳細 は1-4節に記載する)

Fig. 1-9 反応生成粒子の放出スペクトル

Gauss分布から歪んだ放出スペクトルのイメージ

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14

1-3-3高速中性子の検出原理

中性子は電荷をもたず、直接電離作用を利用できないことから、核反応を介して、電離 作用のある放射線に変換し計測を行う。中性子計測は、その測定するエネルギー帯により 高速中性子、熱外中性子、熱中性子の3つに区分される。ここで熱外中性子とは、高速中 性子(一般的に 10keV 以上)と熱中性子(0.025 eV)の間のエネルギーを有する中性子を意 味する。熱中性子・熱外中性子の計測と高速中性子の計測法はその方法が異なる。ここで は中性子計測を利用したプラズマ診断において測定対象として主に取り扱われる高速中 性子の計測手法の概要を説明する。

高速中性子の検出には核反応を介した手法と、放射箔を利用した手法の二つに分かれ る[63]。核反応を介した手法では、主に水素原子核との弾性散乱が利用される。水素原子 核と衝突する場合、中性子と質量がほぼ同等であることから、中性子のエネルギーを水素 原子核に付与することが可能である。また弾性散乱の断面積 [28](Fig. 1-10)が適度に大 きく反跳された陽子の計測も比較的容易である。Fig. 1-11 に水素原子核と中性子の弾性 散乱の模式図を示す。θは陽子の反跳角、Ψは中性子の散乱角を示す、反跳陽子のエネル ギーは以下の式で与えられる。

𝐸𝑝= 𝐸𝑛𝑐𝑜𝑠2𝜃 (1 − 10)

一方、散乱後の中性子のエネルギー𝐸𝑛は以下のから評価される

𝐸𝑛 = 𝐸𝑛𝑐𝑜𝑠2Ψ (1 − 11)

コリメータを用い中性子の入射方向を限定すると、検出器の幾何学的配置からθ,Ψが一 意に決定するため、反跳陽子のエネルギーまたは散乱中性子の計測から入射した中性子 のエネルギーを評価することができる。Magnetic Proton Recoil(MPR) [64]では上記の方 法を利用し核融合中性子のエネルギースペクトルを評価している。

中性子放射箔を利用した計測手法では、中性子の入射により放射化された箔の放射能 測定から中性子束を計測する。中性子束φ[cm-2s-1]をt秒間入射した場合の放射能A[Bq]

は次式で表される。

𝐴 =φσn (1 − exp (−λt)) (1 − 12)

ここで、nは箔の原子の個数、λは生成された放射性核種の崩壊定数、σは核反応断面積 を示す。高速中性子の放射箔利用による計測では、反応断面積に閾値を有する反応が利用

される。Table. 1-5に核融合中性子の放射化計測に利用される代表的な各反応の例を示す。

併せて、半減期、閾値等も記載した。生成核種の半減期及び閾値も併せて記載する。放射 箔を利用する場合でも、閾値の異なる複数の箔を組み合わせ計測し、アンフォールディン グを行うことで高速中性子のスペクトルを得ることが可能となる [65]。

(19)

15

Fig. 1-10 水素の弾性散乱断面積

Table 1-5 高速中性子の測定に利用される代表的な放射箔

(20)

16

1-3-4 ITERにおける中性子計測機器の概要

Table1-6にITERにおける中性子計測機器と診断プラズマパラメータをまとめる [66]。

なお表中の’P’ (Primary)は測定器がその診断に適したものであることを意味する。また’B’

(Back up)は測定器が’P’と同様にその診断に優れたものであるが、いくつかの制限がある ことを意味する。’S’ (Supplementary)はその測定器のみでは診断は行えず、測定値の補正 や検証のために利用されることを意味する。ITERでは中性子計測により中性子束、放出 率、中性子フルエンスを評価するのに加え、燃料イオン比、逃走電子、高周波不安定性 (MHD, NTMs, AEs, turbulence) 、イオン温度プロファイル、コアプラズマのHe密度、

α粒子及び高速イオンの閉じ込め性能等の診断を行う。ITER設置予定の中性子計測器に 関してその概要を示す。

(a) Neutron camera [67-68]

Neutron cameraはコリメートされた中性子計測によって、中性子源の総強度と空間分布

(核融合総出力と放射率プロファイル)を計測する。得られる中性子スペクトル(及びプロ ファイル)は測定器の視線平均となる。そこでITERではトカマク赤道面と下部にNeutron

camera を設置することで、二次元の中性子プロファイルを得る。また中性子スペクトル

の測定からイオン温度プロファイル、燃料イオン比、高周波不安定性、逃走電子診断を行 う。ITERでは燃料イオン比、イオン温度プロファイルの測定では時間分解能1 ms、空間

分解能a/10 (aはプラズマの副半径)、精度10 %での計測を求められている。

Fig. 1-11 中性子と水素原子核の弾性散乱の模式図

(21)

17 (b)Micro fission chambers (MCF) [69]

核分裂性物質235Uを含んだペンシルサイズのガス(Ar95%, N25%)計測器で、高出力DT オペレーションの際、中性子の総強度を計測する。低出力(100 kw <)の場合でも利用可能 である。ITER ではブランケットモジュールと真空容器の内部シェルの間(狭い隙間)に4 つ配置される。。

(c) Neutron flux monitor (NFM) [70]

ITER オペレーションの全フェイズで中性子の総強度を計測する。ITERでは赤道ポート (4つ)とダイバータに設置される。中性子強度の高い環境から低い環境まで幅広く対応す るため、3つの異なるモードを持ち合わせている。核融合プラズマから生じる高強度の中 性子以外の放射線による測定の妨害が懸念されており、γ線と中性子を区別する方法が 検討されている。

(d)Neutron activation system (NAS) [71]

時間積分された第一壁の中性子フルエンス及び総核融合出力を計測する。放射箔は第一 壁付近、ブランケットモジュールの間、真空容器内部壁、上部ポート及び赤道ポートに配 置される。放射箔は空気圧カプセルシステムを利用して、各場所に配置される。閾値の異 なる複数の箔を組み合わせ計測し、アンフォールディングを行うことで高速中性子から 熱領域まで広範囲のスペクトルを得ることが可能となる。またITERブランケットの冷却 水の放射化反応(水放射化反応)を用いた、時間分解能を持つ出力測定法も以前より提案さ れている [72]。

(e) High resolution neutron spectrometer [73-75]

コアプラズマの燃料イオン比、イオン温度、α粒子及び高速イオンの閉じ込め性能の診断 に利用される。赤道ポートに設置されるNeutron camera内部にコリメータを追加して設 置される。陽子の反跳を用いたMPR,及びThin foil proton recoil (TPR)、飛行時間法を

利用した Time-of-Fright (TOF)など様々な計測手法が提案されている。高いエネルギー

分解能を持ち中性子のエネルギースペクトルを測定することができるが、検出効率が低 いため、100 msの時間分解能が要求される燃料イオン比診断等のプラズマ診断では測定 性能の面で問題が生じる。

(22)

18

1-3-5 中性子計測を用いた燃料イオン比診断

核融合炉の運転を安定的に維持するにあたり、プラズマ内の燃料イオン比を適切な値 に維持することが重要となる。DT核融合炉では燃料イオンである重陽子及びトリトンの 密度比を1.0とすることで効率よく核融合反応を起こすことができる。現在、燃料イオン の密度比管理のためガンマ線計測、荷電交換再結合分光分析、集団トムソン散乱、中性子 計測等を利用した様々な燃料イオン比診断手法が提案されている。ガンマ線計測による 燃料イオン比診断では、T(p,γ)4HeおよびD(t,γ)5He反応で生じたγ線を計測し、その反応 率の比から燃料イオン比を評価する。荷電交換再結合分光分析による燃料イオン比診断 では、バルマーαDT スペクトルの観察により燃料イオン比を決定する。この手法は、燃 料イオン比診断に必要な時間分解能と空間分解能を十分に満たすが、コアプラズマ中の 密度比を評価する際、測定精度が課題となる。協同トムソン散乱では、燃料イオン比をイ

オンBernstein波の測定から決定する。この手法はITERにおける測定要件を満たすこと

ができるが、アンテナやミラーなどの機器の実装に関して問題がある。

中性子計測を用いた燃料イオン比診断[76-82]では、熱核融合プラズマにおいて、DT反

応及びD(d,n)3He反応から生じる中性子の反応率

𝑅𝐷𝑇𝑡ℎ𝑒𝑟𝑚𝑎𝑙= 𝑛𝑡𝑛𝑑𝑏𝑢𝑙𝑘< 𝜎𝑣 >𝐷𝑇𝑡ℎ𝑒𝑟𝑚𝑎𝑙 (1 − 13) 𝑅𝐷𝐷𝑡ℎ𝑒𝑟𝑚𝑎𝑙= (1

2)𝑛𝑑𝑏𝑢𝑙𝑘𝑛𝑑𝑏𝑢𝑙𝑘< 𝜎𝑣 >𝐷𝐷𝑡ℎ𝑒𝑟𝑚𝑎𝑙 (1 − 14) ここで𝑛𝑡はトリトン密度、𝑛𝑑𝑏𝑢𝑙𝑘はバルク重陽子密度、𝑅𝐷𝑇(𝐷𝐷)𝑡ℎ𝑒𝑟𝑚𝑎𝑙はD(t,n)α,(D(d,n)3He)反応 の熱核融合反応率、< 𝜎𝑣 >𝐷𝑇(𝐷𝐷)𝑡ℎ𝑒𝑟𝑚𝑎𝑙はD(t,n)α, (D(d,n)3He)反応の反応率係数を示す。各反応 の反応率の比をとることで、以下の式を得る。

𝑛𝑡

𝑛𝑑𝑏𝑢𝑙𝑘= 0.5 𝑅𝐷𝑇𝑡ℎ𝑒𝑟𝑚𝑎𝑙< 𝜎𝑣 >𝐷𝐷𝑡ℎ𝑒𝑟𝑚𝑎𝑙

𝑅𝐷𝐷𝑡ℎ𝑒𝑟𝑚𝑎𝑙< 𝜎𝑣 >𝐷𝑇𝑡ℎ𝑒𝑟𝑚𝑎𝑙 (1 − 15) 本測定手法の問題点として、D(t,n)α 反応から生じた14.1 MeV 中性子(DT 中性子)の減

Table. 1-6 ITERにおける設置予定の中性子計測器及び診断パラメータのまとめ

(23)

19

速成分がD(d,n)3He反応から生じる2.45 MeV中性子(DD中性子)の計測を妨げることがあ

げられる。特に密度比が 1.0 に近づくにつれ、DD 中性子の強度は DT 中性子のそれの

1/100以下となり、測定はより困難となる。Ref[76]では、ITER級プラズマを想定し、中性

子計測を用いた燃料イオン比診断の測定性能評価が行われ、DD中性子とDT中性子の減 速成分の比(Signal/Noise, SN値)が0.4以上の時、測定が可能であることを示した。また、

DD中性子がDT中性子の減速成分と同時に計測されることから、その測定精度にも問題 が生じる。ITERでは100msの時間分解能で20 %の精度が要求されている。In Ref[75]で は計測精度の面から、密度比診断可能領域を評価しており、熱プラズマではnt/nd < 0.6ま で計測可能であることが示された。また計測可能領域が不十分であることから NBI 加熱 による反応率増加や時間分解能の緩和の必要性が指摘された。

1-3-6 中性子計測を用いた高速イオン診断

核融合炉で核反応を維持するためには、プラズマを高温高密度状態とし、エネルギーバ ランスを保つことが重要となる。一般的に核融合炉のエネルギーバランス式から核融合 プラズマの閉じ込め条件を評価することができる(Fig. 1-11)。図中の Qはエネルギー増 倍率を示す。Fig. 1-12 では外部加熱による高速イオンのエネルギーバランスに対する寄 与が考慮されていない。Ref. [83] ではビーム等で高速イオンが存在する場合、核融合成立 のための閉じ込め条件が緩和される事が指摘されている。したがって、プラズマ中の高速 イオンの理解は、核融合プラズマを成立させるうえで大変重要となる。

中性子計測を利用した高速イオン診断では、燃料イオンの速度分布関数上に生じた非

Maxwell成分により形成される(中性子放出スペクトルの)Gauss分布からの歪み成分を計

測対象とする [84]。JET では D(t,n)α 反応で生じるアルファ粒子と中性子がエネルギ ーを分配することを利用し、中性子のスペクトル情報からアルファ粒子のスペクトル情 報を解析する実験がなされた [85]。

Fig. 1-12 DTプラズマにおけるエネルギー増倍離Q= 1, 5 ,10, 30

となるための温度、密度、エネルギー閉じ込め時間の条件

(24)

20 1-4 中性子非等方放出の観測

1-3-2節で示したように、NBI加熱プラズマでは、反応生成粒子(中性子)の放出スペク

トルには非等方性が現れる。中性子の非等方放出は、近年のLHD重水素実験で、実際に 観測された。Ref. [61]では、複数のNFMで得られた測定結果を元に中性子の非等方放出 を確認した。接線 NBI 入射時、 赤道面周辺に取り付けられた NFM の測定値は、LHD 中心の上部に設置されたNFMの計測値と比較し約10 %高いこと、NAS(115In(n,n’)115mIn) を利用したショット積分中性子収量においても、中性子非等方放出の影響が現れること が、確認された。O-port(赤道面周辺)に設置された放射箔のショット積分中性子量をLHD 中心の上部に設置されたNFMの測定値の関数として示した場合、垂直NBI入射時には 各検出器で計測された中性子量は一致するが、接線NBI入射時はNASの計測値(すなわ ち赤道面周辺の中性子量)の方が約25 %高くなることが報告された。この計測結果は、非 等方線源利用時、LHDのO-port及びL-port(LHD下部周辺)に設置された放射箔では、

等方線源の場合と比較して約25 %中性子収量に差が生じるというシミュレーション結果 と一致したものとなった。

Ref. [62]では、Ref. [59]で提案された中性子輸送計算モデルを用い、LHD重水素プラ

ズマ実験における中性子の非等方放出に関して解析し、実験結果と比較することで、解析 モデルの実証、非等方中性子放出の理解がなされた。この中性子輸送計算モデルは、燃料 イオンの速度分布関数、非等方断面積、LHD真空容器形状の情報をもとに、真空容器の 任意の位置における中性子束、エネルギースペクトル、角度分布等が解析可能である。上 記の研究では、複数のプラズマパラメータ(様々なビームパターン)における中性子の非等 方放出が想定され、NAS(O-port及びL-port)に入射される中性子束に関して評価された。

また実験結果と数値解析結果に関する考察、従来の輸送計算モデルとの比較検討がなさ れた。

1-5本研究の目的

核融合ブランケットの核設計では、プラズマから放出される中性子の放出エネルギーは 単色(DT中性子の場合14.06 MeV, DD中性子の場合2.46 MeV)、またはGauss分布と仮 定されブランケットの核特性が評価されてきた。中性子放出スペクトルの歪みの考慮によ り、核融合ブランケットの核特性に影響を及ぼす可能性があり、その評価は重要である。

燃料イオン速度分布関数上の非 Maxwell 成分形成に伴う反応生成粒子(中性子)の放出ス ペクトルの歪みは、これまで中性子計測を利用した高速イオン診断における測定対象とし て取り扱われてきた。一方、放出スペクトルの歪みを利用する事で従来の測定法の測定性能 を改善させた研究例は少数しか報告されていない。放出スペクトルの歪み及び非等方性を 利用し、従来の測定手法の測定性能を向上させることは、診断法の成立性向上につながりう る。

(25)

21

中性子の非等方放出は近年のLHD重水素実験で初めて観測された。中性子非等方放出は イオンの速度分布関数(非等方 non-Maxwell 成分)の特徴を反映したものであるため、非等 方放出の測定を応用することで、燃料イオンの速度分布解析等の高速イオン診断の提案に つながる可能性がある。

本研究では、NBI 加熱時に生じる中性子放出スペクトルの歪み及び非等方性を考慮した 中性子ソースを利用する事で

(1)核融合ブランケットにおけるトリチウム生産性能に与える影響の評価 (2)非等方放出スペクトルの燃料イオン比診断法への応用

(3)中性子放出の非等方性を利用した非等方放出スペクトル推定法の提案 に関して検討する。

1-6本論文の構成

本論文は、放出スペクトルの歪みの考慮によるトリチウム生産性能の向上、NBI 加熱時 の放出スペクトルの非等方性を利用した燃料イオン比診断の測定性能の改善、中性子束空 間分布計測による中性子の非等方放出スペクトル診断に関する筆者らの研究論文をまとめ たもので、全6章から構成される。

本章では、核融合炉の現状及び核融合プラズマにおける中性子の発生とその(炉工学的、

計測学的)利用に関する概要を説明し、本研究の背景と目的を述べた。

第二章では、(NBI 加熱プラズマにおける)燃料イオンの速度分布関数及び中性子放出ス ペクトルの解析手法に関して説明した。またこれらの解析手法を用いて、代表的なプラズマ パラメータにおける中性子の発生に関して数値解析を行い、その特徴を説明する。

第三章では、中性子放出スペクトルの歪みが核融合ブランケットにおけるトリチウム生 産に対して及ぼす影響を議論する。Gauss分布利用時のトリチウム生産性能と比較すること で、放出ペクトルの歪み考慮の有効性を議論する。

第四章では、NBI加熱プラズマから生じる中性子放出スペクトルの非等方性を利用した、

燃料イオン比診断手法に関して議論する。まず放出スペクトルの非等方性考慮による高エ ネルギー側への歪み成分の強度上昇を利用した、燃料イオン比診断手法に関して議論する。

次に従来の研究では着目されることのなかった、中性子放出スペクトルのエネルギー中央 領域(DD中性子の場合2.4-2.5 MeV)に対する(NBI加熱により生じる)歪みの影響に関して 評価を行い、エネルギー中央領域の非等方性を利用した測定手法に関して議論する。

第 5 章では、真空容器外の中性子束空間分布計測による中性子の非等方放出スペクトル 診推定法に関して議論する。スペクトル形状と中性子束空間分布の相関性を評価すること で、中性子束空間分布計測から非等方放出スペクトルの特性を把握する手法を提案する。

第六章では、本研究で示した結果を総括する。

(26)

22

第二章 解析手法

本章では、本研究で用いた燃料イオンの速度分布関数及び中性子放出スペクトルの計算手 法に関して示す。また2-3節では、2-1節及び2-2節で記載した評価手法を用い、NBI加熱 プラズマにおける中性子放出スペクトルに関して議論する。なお連続エネルギー中性子輸 送計算モンテカルロコード MVP における粒子輸送計算手法に関しては Ref[86]を参照と する。中性子輸送計算における計算体系に関しては各章に記載する。

2-1 燃料イオンの速度分布関数

本節ではまず、中性子放出スペクトルの計算に必要な燃料イオンの速度分布関数の評価 手法に関して説明する。本研究では、NBI 加熱核融合プラズマまたは熱核融合プラズマを 想定し、燃料イオン(重陽子・トリトン)の速度分布関数を評価する。

NBI 加熱による高速イオンの二次元速度分布関数の解析には Fokker-Planck 方程式から 導かれる解析解[87]を利用する。以下にその式を示す。

𝑓𝑏(𝑣, 𝜇) = 𝑆0𝜏𝑠

𝑣3+ 𝑣𝑐3∑(2𝑙 + 1)

2 𝑃𝑙(𝜇𝑏)𝑃𝑙(𝜇) [(𝑣3

𝑣𝑏3) (𝑣𝑏3+ 𝑣𝑐3 𝑣3+ 𝑣𝑐3)]

1 6𝑙(𝑙+1)𝑍2

𝑈(𝑣𝑏− 𝑣),

𝑙=0

(2 − 1)

なお式中の𝜏𝑠及び𝑣𝑐は以下の式で与えられる

𝜏𝑠 = 𝑀𝑏2𝑣𝑐3

4𝜋𝑒2𝑒𝑏3𝑍1𝑛𝑒𝑙𝑛𝛬=3(2𝜋)3/2𝜖02𝑀𝑏𝑇𝑒3/2

𝑛𝑒√𝑚𝑒𝑍𝑏2𝑒4𝑙𝑛𝛬 (2 − 2)

𝑣𝑐= (3√𝜋𝑚𝑒𝑍1 4𝑀𝑏 )

1 3

𝑣𝑡ℎ𝑒 (2 − 3)

ここで𝑆0は単位体積当たりのビーム粒子数、𝜏𝑠はSpitzerの減速時間、𝑃𝑙はルジャンドル多 項式、𝜇𝑏は入射ビームのピッチ角、𝑣𝑏は入射ビームの速度、𝑣𝑐は臨界速度、𝑍2は背景イオン の有効電荷、𝑈は単位ステップ関数を示す。ここで臨界速度とは、背景イオンと電子へのエ ネルギー輸送が等しくなるビーム速度を示す。

本研究では、重陽子の速度分布関数を熱平衡のバルク粒子が形成するMaxwell成分とNBI 入射による高エネルギー粒子の形成する減速分布の足し合わせとした。また、トリトンの速 度分布関数はMaxwell分布と仮定する。

(27)

23 2-2 中性子放出スペクトル

2-2-1 反応断面積の取り扱い

本節では中性子放出スペクトル評価時に利用する核融合反応断面積に関して説明する。

まず相対エネルギーEr に対する反応断面積を評価するフィッティング式に関して以下に示 す[21]。

𝜎(𝐸𝑟) = 𝑆(𝐸𝑟) 𝐸𝑟exp (𝐵𝐺

√𝐸𝑟

)

(2 − 4)

𝑆(𝐸𝑟) = 𝐴1 + 𝐸𝑟(𝐴2 + 𝐸𝑟(𝐴3 + 𝐸𝑟(𝐴4 + 𝐴5)))

1 + 𝐸𝑟(𝐵1 + 𝐸𝑟(𝐵2 + 𝐸𝑟(𝐵3 + 𝐸𝑟𝐵4))) (2 − 5)

フィッティング式中の係数に反応ごとに与えられた適切な値を代入することで、反応断面 積を得ることができる。なお本フィッティング式から評価された各反応の断面積はFig. 1-4 に示している。また各反応の係数をTable. 2-1にまとめる。

中性子放出反応の重心系における微分断面積は以下のフィッティング式で与えられる [54]。

(𝑑𝜎 𝑑𝛺)

𝐶.𝑀.

= (𝑑𝜎 𝑑𝛺)

0

∑ 𝐴𝑖𝑃𝑖(𝑐𝑜𝑠𝜃𝐶.𝑀.)

𝑖

(2 − 6) ここで、(𝑑𝜎/𝑑𝛺)0は重心系における放出角θCM = 0°の微分断面積、𝐴𝑖は展開係数、𝑃𝑖

Legendre多項式を示す。また実験室系における微分断面積は以下の式から得られる。

(𝑑𝜎 𝑑𝛺)

𝑙𝑎𝑏

= (1 + 𝛾2+ 2𝛾𝑐𝑜𝑠𝜃𝐶.𝑀.) 1 + 𝛾𝑐𝑜𝑠𝜃𝐶.𝑀. (𝑑𝜎

𝑑𝛺)

𝐶.𝑀.

(2 − 7)

ここで𝛾 = 𝑉𝑐/𝑣𝑛𝐶𝑀である。𝑉𝑐は重心速度、𝑣𝑛𝐶𝑀は重心系における中性子の速度を示す。いく つかの入射エネルギーにおけるD(d,n)3Heの実験室系における微分断面積をFig. 2-1に示 す。また、任意のエネルギーにおける各係数をTable. 2-2にまとめる。D(d,n)3Heの場合、

入射エネルギーが大きくなるにつれ微分断面積が強い異方性を示すことが確認できる。本 研究では、D(d,n)3He反応から生じる中性子の放出スペクトルを評価する際、微分断面積の 異方性考慮の有無に関して逐一言及する。また D(t,n)α反応の場合、微分断面積に異方性 は小さいため、常に微分断面積を等方と仮定して中性子放出スペクトルの評価を行う。

(28)

24

Table. 2-1 反応断面積のフィッティング式の係数

Fig. 2-1 実験室系におけるD(d,n)3He 反応の微分断面積

Table. 2-2 D(d,n)3He反応の微分反応断面積のフィッティング式の係数

(29)

25 2-2-2 核融合反応率

一般に核融合反応率は以下の式から計算される

𝑅 = 1

1 + 𝛿𝑎𝑏𝑛𝑎𝑛𝑏〈𝜎𝑣〉𝑎𝑏 (2 − 8)

ここで𝑛𝑎(𝑏)はイオン密度、𝛿𝑎𝑏はKroneckerのデルタ、〈𝜎𝑣〉𝑎𝑏は核融合反応率係数を示す。

核融合反応率係数は速度分布関数を用いて以下の式で計算される。

〈𝜎𝑣〉𝑎𝑏= 1

𝑛𝑎𝑛𝑏∬ 𝑑𝑣⃗𝑎𝑑𝑣⃗𝑏𝑓𝑎(𝑣⃗𝑎)𝑓𝑏(𝑣⃗𝑏)𝜎𝑎𝑏(𝑣𝑟)𝑣𝑟 (2 − 9) 燃料イオンの速度分布関数が Maxwell 分布(熱プラズマ)と仮定される場合、反応率係数は イオン温度Tの関数として以下のフィッティング式から評価することができる[21]。

〈𝜎𝑣〉 = 𝐶1𝜃√𝜉/(𝑚𝑟𝑐2𝑇3)𝑒−3𝜉 (2 − 10)

𝜃 = 𝑇

[1 − 𝑇(𝐶2 + 𝑇(𝐶4 + 𝑇𝐶6)) 1 + 𝑇(𝐶3 + 𝑇(𝐶5 + 𝑇𝐶7))]

(2 − 11)

𝜉 = (𝐵𝐺2/(4𝜃))13 (2 − 12)

上記の評価式で評価された各反応の反応率係数を Fig. 2-2 に示す。また各反応における係 数をTable2-3にまとめる。

また、単一の速さva成分のみ持つ等方速度分布関数faと温度TiのMaxwell分布fbの反応率 係数は以下の式で与えられる。

〈𝜎𝑣〉𝑏𝑒𝑎𝑚= 𝛽

𝑣𝑎√𝜋∫ 𝑑𝑣𝑟𝑣𝑟2𝜎𝑎𝑏(𝑟){exp[−𝛽2(𝑣𝑎− 𝑣𝑏)2] − exp[−𝛽2(𝑣𝑎+ 𝑣𝑏)2]}𝑑𝑣

0

(2 − 13)

なお𝛽2= 𝑚𝑏/𝑇𝑖となる。式(2-13)で評価された、複数のイオン温度における、反応率係数の

エネルギー依存性をFig. 2-3に示す((a)D(t,n)α反応 (b)D(d,n)3He反応)。低エネルギーの場 合、イオン温度の相対速度への影響が大きいことから、温度が大きくなるにつれ反応率係数 が上昇する。また、エネルギーが十分に高い場合、相対速度はほとんど単一の速さ vaで決 まることから、イオン温度の反応率係数依存性は小さい。D(t,n)α反応と D(d,n)3He 反応の 反応率係数に関して比較すると、高エネルギー粒子が入射された際の反応率係数への影響 はDD反応の方が顕著であることが確認できる。DT は反応断面積が70 keV周辺で低下す ることから、高エネルギー側では反応率係数が低下することが確認できる

(30)

26

Table. 2-3 熱核融合プラズマにおける反応率係数のフィッティング式の係数

Fig. 2-2 熱核融合プラズマにおける各反応の反応率係数

(31)

27

Fig. 2-3 単一の速さva成分のみ持つ等方速度分布関数faと 温度TiのMaxwell分布fbの反応率係数

((a)D(t,n)α反応 (b)D(d,n)3He反応)

(32)

28

2-2-3 反応生成粒子の放出スペクトル

DT 反応または D(d,n)3He で生じる中性子の放出スペクトルは以下の式を用いて評価 することができる [55]。

𝑑𝑁𝑛

𝑑𝐸 (𝐸) = 1 1 + 𝛿𝐷𝐷(𝑇)

∭ 𝑓𝐷(|𝑣⃗𝐷|)𝑓𝐷(𝑇)(|𝑣⃗𝐷(𝑇)|)𝑑𝜎

𝑑𝛺𝛿(𝐸 − 𝐸𝑛)𝑣𝑟𝑑 𝑣⃗𝐷𝑑𝑣⃗𝐷(𝑇)𝑑𝛺 (2 − 14)

𝐸𝑛は実験室系における中性子の放出エネルギー[46]を示し

𝐸𝑛= 1

2𝑚𝑛𝑉𝑐2+ 𝑚3𝐻𝑒(𝛼)

𝑚𝑛+ 𝑚3𝐻𝑒(𝛼)(𝑄𝐷𝐷(𝐷𝑇)+ 𝐸𝑟)

+𝑉𝑐cos 𝜃𝑐√ 2𝑚3𝐻𝑒(𝛼)

𝑚𝑛+ 𝑚3𝐻𝑒(𝛼)(𝑄𝐷𝐷(𝐷𝑇)+ 𝐸𝑟) (2 − 15)

で評価される。また𝐸𝑟は相対エネルギーを示し

𝐸𝑟= 1 2

𝑚𝐷𝑚𝐷(𝑇)

𝑚𝐷+𝑚𝐷(𝑇)|𝑣⃗𝐷−𝑣⃗𝐷(𝑇)| (2 − 16) となる。𝑑𝜎 𝑑𝛺⁄ は各反応の微分断面積、𝑣𝑟は相対速度、𝑚𝑛(3𝐻𝑒,𝛼)は中性子、3ヘリウム、ア ルファ粒子の質量、𝑄𝐷𝐷(𝐷𝑇)はDD,DT反応のQ値、𝜃𝑐は重心系における重心系速度と中性 子速度の為す角度を示す。

式(2-12)で評価された量は単位エネルギー・単位体積・単位時間あたりの発生率となる。

次に中性子発生率をエネルギー方向に加え、放出方向(放出角度)について微分した量の評価 方法に関して記載する。二重微分放出スペクトルは以下の式を用いて評価する[58]。

𝑑2𝑁𝑛

𝑑𝐸𝑑𝛺𝑙𝑎𝑏(𝐸, 𝜃𝑙𝑎𝑏) = 1

1 + 𝛿𝐷𝐷(𝑇)∭ 𝑓𝐷(|𝑣⃗𝐷|)𝑓𝐷(𝑇)(|𝑣⃗𝐷(𝑇)|)𝑑𝜎 𝑑𝛺

× 𝛿(𝐸 − 𝐸𝑛)𝛿(𝛺𝑙𝑎𝑏− 𝛺𝑛)𝑣𝑟𝑑𝑣⃗𝐷𝑑𝑣⃗𝐷(𝑇)𝑑𝛺. (2 − 17) 𝜃𝑙𝑎𝑏は実験室系における放出中性子と基準線の為す角度、𝛺𝑛は、実験室系における中性子放 出方向の単位ベクトルを示す。ここで𝜃𝑙𝑎𝑏に関して、実験室系における反応生成粒子の放出 エネルギーは重心速度となす角度により決まる。核融合プラズマ内では燃料イオンが様々 な方向に運動することから、二粒子間の重心速度も様々な方向を取る。したがって中性子輸 送のソースとして利用するために、中性子の放出角度をある基準となる方向(軸)から見た角 度に変換する必要がある。本研究では NBI 入射方向(接線入射)を基準とし、放出中性子と の為す角度を評価した。Fig. 2-4に中性子放出方向及びNBI入射方向の関係性を示す。

(33)

29

Fig. 2-4 反応生成粒子の放出方向とNBI入射方向の幾何学的関係

(34)

30 2-2-4 Gauss分布重ね合わせモデル

Gauss分布重ね合わせモデルでは中性子放出スペクトルをGauss成分、非Gauss成分に

分けて考え、異なる平均エネルギー・温度を持つ Gauss 分布を重ねることで二重微分放出 スペクトルを模擬する。Gauss分布重ね合わせモデルは以下の式で書ける[88]。

d2𝑁𝑛 𝑑𝐸𝑑Ω𝑙𝑎𝑏

(𝐸, 𝜃𝑛) = 𝑆 𝜋12

[1 − 𝛼 Δ𝑁𝐺

exp (− (𝐸 − 𝐸𝑁𝐺0 Δ𝑁𝐺

)

2

) + 𝛼 Δ𝐺

exp (− (𝐸 − 𝐸𝐺0 Δ𝐺

)

2

)] (2 − 18)

NG、Gはそれぞれ非Gauss成分、Gauss成分の半値幅を示し

Δ𝑁𝐺 = √4𝑚𝑛𝐸𝑁𝐺0 𝑇𝑁𝐺

𝑚3𝐻𝑒+ 𝑚𝑛 , Δ𝐺 = √4𝑚𝑛𝐸𝐺0𝑇𝐺

𝑚3𝐻𝑒+ 𝑚𝑛 (2 − 19)

となる。また𝐸𝑁𝐺0 は非Gauss成分の(放出方向依存性を持つ)平均エネルギーを示し、

𝐸𝑁𝐺0 (𝜃𝑛) =−0.25 tanh(𝜅(2𝜃𝑛− 𝜋))

tanh(−𝜅𝜋) + 2.52 (2 − 20)

と定義する。中性子の放出エネルギーは放出方向により決まり、Fig. 1-7に示したような方 向依存性を持つことから、tanhを採用した。ここで、nをトロイダル軸に対する中性子の放 出角度とする。Sは中性子放出率、は非Gauss成分とGauss成分の総和に占めるGauss成 分の比率、EG0はGauss成分の平均エネルギーを示し2.45 MeVに固定した。また𝑇𝑁𝐺は非ガ ウス成分の温度、𝑇𝐺はGauss成分の温度を示す。は非Gauss成分の平均エネルギーの方向 依存性に関係する係数で、方向依存性係数と定義する。Fig.2-5 に非Gauss成分の平均エネ ルギーの方向依存性とκの関係を示す。κの値が大きいほど、tanhの特徴が現れることが確 認できる。Gauss分布重ね合わせモデルで模擬される二重微分放出スペクトルに関するパラ メータ依存性等の特性は第5章で議論する。

Fig. 2-5 非Gauss成分の平均エネルギーの方向依存性とκの関係

参照

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