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振動子周波数特性と復調可聴音の周波数特性

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Academic year: 2021

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(1)

振動子特性に着目したパラメトリックスピーカの駆動

Drive of Parametric Loudspeaker Focusing on the Characteristics of Transducer

1W130535-2 南 翔汰 指導教員 及川 靖広 教授

MINAMI Shota Prof. OIKAWA Yasuhiro

概要:パラメトリックスピーカは鋭い指向性を持ったスピーカであり,音のスポットライトの形成を可能にするため,

幅広い用途での利用が期待されるが,実際の駆動においては高調波歪みの発生によって音質に課題を残す.これを解 決する変調方式として提案されたModified Double-Sideband (MDSB)変調も,振動子の周波数特性によって理論と 異なり高調波歪みが生じる.そこで振動子の周波数特性を測定し,測定データのうちアドミタンス特性に着目し,そ の特性を補正するフィルタを設計し,評価を行った.変調度が大きい場合での高調波歪みの低減が認められた.さら に,振動子の個体差がアレイ配置した際に及ぼす影響も考察を行った.個体ごとの共振周波数の偏差が大きいほど復 調可聴音の周波数特性がより平坦になりやすいことを確認した.

キーワード:非線形音響,高調波歪み,MDSB変調,相互放射インピーダンス

Keywords: Nonlinear acoustics, Harmonics distotion, MDSB modulation, Mutual radioation impedance

1.

ま え が き

パラメトリックスピーカは超音波を用いたスピーカで あり,鋭い指向性を持つことから,目的の場所のみに音 を届けることが可能となる.しかし,パラメトリックス ピーカは目的音に対して高調波歪みが生じる.理論的に 高調波歪みのないModified Double-Sideband (MDSB) 変調[1]などが提案されてきたが,超音波振動子の周波 数特性によって実際は高調波歪みを生じる.本研究では,

高調波歪みの低減を目的とし,振動子の周波数応答特性 に応じて補正し,評価を行った.さらに,振動子の周波 数特性の個体差がアレイ配置へ及ぼす影響も実験・考察 を行った. 

2.

パラメトリックスピーカ

2. 1 原 理

媒質の非線形性を無視できないほどに振幅が大きい音 波を有限振幅音波と呼ぶ.周波数が接近した2つの有限 振幅音波を放射すると,媒質の非線形性によって2波の 和音,差音やそれぞれの高調波が2次的に発生する.こ の2次波は1次波である有限振幅音波の伝搬に伴い振幅 を増し,伝搬方向では同位相になり振幅が加算されるが,

伝搬方向から逸れると位相が揃わず加算されない.これ により2次波は鋭い指向性を持つ[2].この性質により,

超音波を可聴音で変調したものを1次波として放射する と,空気中の非線形性により,変調に用いた可聴音が2 次波として生成され,復調されるような挙動を示す.こ こで,2次波音圧p(t)は,1次波音圧E(t)に対して十分 遠い距離zにおいて,

p(t) = β p02

S 16π ρ0c04αz

2

∂t2E2(t) 2

∂t2E2(t) (1)

で表されることが知られている[3].ここで,αは吸収係 数,βは非線形パラメタ,Sはスピーカ面積,p0ρ0c0

はそれぞれ1次波音圧,空気密度,音速である.すなわ ち可聴音圧は,E(t)の2乗の2階微分に比例し,これが 高調波歪みの要因となっている.

2. 2 MDSB変調

理論的に高調波歪みを生じない変調方式としてMDSB 変調が挙げられる.変調度m,搬送波周波数fcとする と変調信号を

EMDSB(t) =√

1 +m s(t) sin(ωct) (2)

とする方式である(ωc= 2πfc).1次波をE(t)とすれば 式(1)より,信号音の2乗の2階微分に比例するため,

先に平方根をとることで2次波に高調波が含まれないも のになっている.

2. 3 超音波振動子の周波数特性

実際は,振動子の周波数特性により,振動子への入 力とその出力が異なってしまうため,理論とは異なり,

MDSB変調波を入力しても実際は高調波歪みを生じる.

図–1に,代表的な超音波振動子の周波数特性を示す.

なお,アドミタンスはインピーダンスの逆数であり,そ の実部がコンダクタンス,虚部がサセプタンスである.

ここで,用いた素子はSPL(Hong Kong) Limited製の UT1007-Z325Rである.共振周波数が40 kHzと60 kHz 周辺に存在している.前者は音波の伝搬方向の振動モー ドであり,その共振周波数を搬送波に使用する.

また,図–1に示したような超音波振動子を複数個用意 し,その中で40 kHz近辺に持つ共振周波数の値の偏差 が小さいもの(以下アレイNと記す)と大きいもの(以下 アレイFと記す)を20個ずつ収集しアレイ状に配置し 並列に接続したものの放射音圧の測定も行った.その結 果を図–2に示す.アレイNは共振周波数での音圧を得 られた一方で,平坦な特性を持たず,アレイFは音圧を 得にくい分,共振周波数近辺で比較的広い帯域で平坦な 周波数特性を実現している.

(2)

0 5 10 15

Admittance [S]

10-4 Conductance Susceptance

0 10 20 30 40 50 60 70 80

Frequency [kHz]

0 50 100

SPL [dB]

図–1 一般的な超音波振動子のアドミタンス特性(上)と放射音 圧特性(下)

0 10 20 30 40 50 60 70 80

Frequency [kHz]

20 40 60 80 100 120

SPL [dB]

Array N Array F

図–2 各アレイの放射音圧の周波数特性

3.

振動子周波数特性と復調可聴音の周波数特性

図–1に示されるアドミタンス特性を持った振動子に MDSB変調信号を入力し,レーザドプラ振動計(LDV) とマイクロホンを用いて振動子の振動と可聴音を測定 した.ここで測定に用いたオーディオ信号は0〜16 kHz チャープ信号で,搬送波周波数は39.6 kHz,駆動電圧は 10 Vrmsとした.

3. 1 振 動 測 定

(a)MDSB変調波(m = 0.1,補正前) (b)MDSB変調波(m = 0.5,補正前)

(c)MDSB変調波(m = 0.1,補正後) (d)MDSB変調波(m = 0.5,補正後) 0 200 400 600 800 1000

0 20 40 60 80

Frequency [kHz]

0 200 400 600 800 1000 Time [ms]

0 20 40 60 80

Frequency [kHz]

0 200 400 600 800 1000 0

20 40 60 80

-100 -90 -80 -70 -60

Power / Freq. [dB/Hz]

0 200 400 600 800 1000Time [ms]

0 20 40 60 80

-100 -90 -80 -70 -60

Power / Freq. [dB/Hz]

図–3 測定した振動速度のスペクトログラム 測定結果を図–3に示す.LDVを用いて測定した補正 前の振動速度のスペクトログラムを図–3(a),(b)に示す.

変調度が低い場合,搬送波周波数に対して側波帯のエネ ルギーが小さい.しかし,変調度が大きくなると,搬送 波周波数を中心に必要側波帯が増えることが分かる.次 に,補正を行った後の振動子の振動を図–3(c)(d)に示 す.mが0.1の場合,元々搬送波に対して信号波のエネ ルギーが非常に小さいため,補正前後,すなわち図–3(a) と(c)の間で明確な差はみられていない.mが0.5の場

合,すなわち図–3(b),(d)を比べると,搬送波の下側の 2本目の側波帯がより大きく出るようになったが,側波 帯を等レベルに保てていない.アドミタンス特性のみの 補正では十分でないことが分かる.

3. 2 可聴音測定

(a)MDSB変調(m = 0.1,補正前)(b)MDSB変調(m = 0.5,補正前)

(c)MDSB変調(m = 0.1,補正後)(d)MDSB変調(m = 0.5,補正後) 0 200 400 600 800 1000

0 5 10 15 20

0 200 400 600 800 1000 0

5 10 15 20

Frequency [kHz]

0 200 400 600 800 1000

Time [ms]

0 5 10 15 20

Frequency [kHz]

0 200 400 600 800 1000 Time [ms]

0 5 10 15 20

-110 -100 -90 -80 -70

Power / Freq. [dB/Hz]

-110 -100 -90 -80 -70

Power / Freq. [dB/Hz]

図–4 測定した可聴音のスペクトログラム

振動子から直進方向0.15 mの地点で可聴音の測定を 行った.補正前の信号を図–4(a),(b)に,補正後のもの を図–4(c),(d)に示す.変調度が0.5の場合,図–4(b)と (d)を比較すると,可聴帯の中でも10〜20 kHzの部分に おいては補正による高調波の低減が確認できた.しかし,

変調度が大きいことにより,搬送波周波数の下側の側波 帯を広く要するため,両図の右側部分から分かるように,

変調信号自体が可聴帯にまで入り込んでしまっている.

高調波は低減されるが,変調度の大きい場合では高周波 数の再生には向かないことが分かる.また,図–4(a),(c) より,変調度が低い場合は,補正後にわずかな高調波が 発生してしまっている.

4.

む す び

本研究ではパラメトリックスピーカの駆動において,

高調波歪みを取り除くべく,振動子の周波数特性を補正 するフィルタを適用し,評価を行った.振動子が搬送波 周波数に対し対称な特性を持つ場合の高調波の低減を確 認したが,アドミタンスのみの補正では高調波歪みの低 減は難しいことが結論付けられた.また,振動子の個体 差がアレイ配置の際にその周波数特性に及ぼす影響に関 しても考察を行い,共振周波数の偏差が大きい振動子で アレイを作ることにより周波数特性が共振周波数近辺で より平坦に設計でき,高調波歪みの少ない駆動ができる 可能性を示した.今後は,補正後の特性に関して位相や 1次波音圧の考察を進めていくと共に,アレイ配置の際 の相互放射インピーダンスの影響を考慮していく.

参 考 文 献

[ 1 ] 鎌倉友男,米山正秀,池谷和夫,“パラメトリック・スピーカの変

調方式の検討,”昭和58年電気学会関西支部連合大会, 第3回研究 懇談会,1983.

[ 2 ] P. J. Westervelt,“Parametric acoustic array,” J. Acoust.

Soc. Am., Vol.35, No.4, pp.535–537, 1963.

[ 3 ] M. Yoneyama, J. Fujimoto, Y. Kawamo and S. Sasabe,

“The audio spotlight: an application of nonlinear Interac- tion of sound waves to a new type of loudspeaker design,”

J. Acoust. Soc. Am.,Vol.73,No.5,pp.1532–1536,1983.

参照

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