東京都区部におけるエネルギー自立の可能性に関する調査研究
-台東区の調査事例-
The research on possibility of energy independence in Tokyo’s 23 wards -Research example of Taito ward-
1W100366-7 中村 龍生 指導教員 藪野 健 NAKAMURA Ryuki Prof.YABUNO Ken
概要: 本研究では、東日本大震災で起きた電力不足による問題、日本の枯渇性資源高依存度問題、
電力需要量の増加、に関する3つの問題から、都市のエネルギー、特に本論文では電力自給率につい て調査することとした。将来消失する可能性のある海外製の資源を、日本のエネルギー消費の核に据 え続けておくのは危険である。エネルギー資源の供給が減ると二次エネルギー生産量が減り、生活水 準を保てなくなる可能性がある。それを避ける対策として一つ、エネルギー供給を他国に頼らず日本 で生産するという手段がある。また、半永久的に使用可能な再生可能エネルギーで自給していく必要 があるのではないかと考えた。対象地域としては、日本のエネルギー消費量の1割近くを占める東京 都、さらにその中の都区部がよいと考えた。この論文の命題は、東京都区部のエネルギー自給率が今 後どれだけ上がりうるのか、ということである。ただ、今回においては、電力の自給率だけを求める こととした。
キーワード:エネルギー自立、太陽光発電、台東区、屋根面積
Keywords:energy independence,PV system,Taito ward,rooftop area
1.序論
2011年に起こった東日本大震災によって、
関東は大規模な計画停電に見舞われた。また、
被災地においては電力の供給が止まってしまっ た。その避難所での生活が電灯も暖房もない過 酷なものとなった事は想像に難くないだろう。
大規模供給が断絶してしまい、人々はまともに 生活ができなくなった。日本のエネルギー供給 システムの、災害時における脆弱さが今回の震 災で顕になった。
また、日本のエネルギー問題として、一次エ ネルギーの海外依存(80%以上)と枯渇性資 源依存(97.8%)がある。やがて枯渇する 資源を、海外から大量に輸入して使っている。
現在は大丈夫かもしれないが、やがてくる供給 量のピークまでに、再生可能エネルギーの利用 によりエネルギー自給率を上げることが、今後 の日本、特にエネルギー大消費地東京にとって、
必要なことである。
以上から、非常用電源の意味も備えた、再生 可能エネルギー利用による二次エネルギーの獲 得が、エネルギーという観点から見た東京の課 題である。
2.東京都区部におけるエネルギー自立に関し て
現在、東京は日本全体の1割近くもエネル ギーを消費しているが、エネルギー自給率に関 しては、1%にも満たない。
本論文は東京都区部のエネルギー自給率を向 上させるための基礎的研究とする。自給率をあ げるためには、現在の生活水準を落とさずエネ ルギー消費量を減らすか、エネルギー供給量を 増やすか、の2択である。今回は、実現可能性 を考えて、供給量増加について考えることとし た。また、電力需要量・電力化率の増加、そし て東京都区部という土地柄を考え、扱うエネル ギーは太陽光発電か風力発電が適切であると判 断した。ここで、風力に関しては事前調査が膨 大な規模となるため、本論文では太陽光発電を 取り扱う事とした。本論文で扱うエネルギー自 給率とは、電力自給率のこととする。
3.南面受光ソーラーパネル敷設屋根面積の算 定
台東区における、ソーラーパネル敷設屋根面 積を求めるために、以下の6手順を踏む。
①屋根の3分類
②類別屋根数と比率
③各類別屋根の1棟当たりの平均面積
④類別屋根面積と割合
⑤各類別屋根の全面積
⑥南面受光ソーラーパネル敷設屋根面積
屋根には種類が様々あるが、計算しやすくする
ために大きく3つに分類した。3分類した屋根
の棟数がそれぞれどれ程の割合で台東区に存在
しているかを地図上からのランダム抽出にて母
比率推定をする。次に、各類別屋根の1棟当た りの平均面積も同様にランダム抽出による母平 均推定で求める。②と③の数値を各類別屋根毎 にかけると、各類別屋根が台東区においてどれ 程の面積割合で存在しているかの比が出てくる。
各類別屋根の面積からみた存在比に、台東区の 建築面積を掛けると、3分類した屋根がそれぞ れ何平方メートル台東区にあるのかが、推定さ れる。そこからさらに、傾斜型と複雑型の屋根 の半分は、日陰になって発電効率が下がるもの とし、ソーラーパネルを敷かない。つまり、傾 斜型と複雑型の屋根面積をそれぞれ半分にした ものが、2つの敷設屋根面積である。
Flat型 は傾斜型・複雑型のように影ができないので、
半分にはしない。以上の手順から求められた敷 設屋根面積が、表1である。
4.発電量の算定
ソーラーパネルの予測発電量の算定には、以 下の計算式を使う。
H
:
該当月の月平均斜面日射量(kWh/ m2 ・day)p:PC変換効率
S
:面積(
m2)
K:損失係数
D:該当月の日数(day)
各類別屋根毎に、月別の発電量を求めていく。
損失係数とは、ソーラーパネルや気温等によっ て左右されるもので、発電効率を下げるもので ある。結果については、次章に載せる。
5.エネルギー自給率の計算
台東区の電力エネルギー自給率を求めるために、
まず台東区の電力消費量を求める。東京都が統 計をとっていないので、自分で推計した。その 数値と、4章で求めた発電量をまとめ、自給率 まで表したものが表2になっている。
今回、23~35%と比較的高い数値を示した が、これは近隣の高い建物によって出来る影を 考慮していないからである。本論文での条件か ら想定された都市は、「全て陸屋根」で「屋根 の高さが統一」された建物の町である。しかし、
計算時においてはなるべく真の値に近づけるた め、屋根面積を半分にしたり、損失係数につい ても考慮した。
現在、東京都の電力を管轄している東京電力 は実際の発電量における電源比において、石炭 が11%、石油が19%となっている。今回、
雲の影響を考えず建物の影の影響だけを考える。
台東区において半分の建物(面積)が高層建築 物の影に入り発電しなくなったとしても、最低 消費量の11%は発電する。東京電力が管轄し ている関東全体の発電量を考えた時、23区程 エネルギー消費がないので、もしかしたら東電 管内でも、消費量の11%以上の発電量が算出 されるかもしれない。今回は計算していないが、
関東全体ともなれば、地面に太陽光発電を置く スペースも見つかるだろう。そうなれば、東電 管内においてではあるが、もしかしたら石油や 石炭に代わって再生可能エネルギーが賄えるよ うになるかもしれない。
6.結論
(1)今回の論文において有用であったことの 一つは、東京の電力需要量の増加、電力化率の 上昇が数値からわかったこと。また、東京は日 本の中でも需要量の増加率が多くなる可能性が 高いということがわかった。日本、東京の
GDPが高成長の兆しを見せ始めたら、電力需要量の 増加率もさらに上がるだろう。
(2)類別屋根面積推定法のワークフローを確 立したが、本論文においては、誤差がでやすい 数値において推定してしまったため、真の値か らずれている可能性がある。
(3)発電量が消費量の10%程度は賄える可 能性があると結論が出、さらに石炭なら補える 可能性がでてきた。ここからさらに、太陽熱や 風力発電等、また隅田川等を利用した未利用エ ネルギーを追加してくと、台東区において想定 されるエネルギー自給率は、無視出来ない程度 に高いものとなっていく可能性が高い。
(4)今後、都市の再生可能エネルギー賦存量 について考察する論文が増えれば、膨大な作業 量もやがては終わりを見せ、実際の運用につい て考えるようになる。その時に初めて、東京の エネルギー自立が現実味を帯びてくるだろうと 考える。
Ep=∑
i=1 12
Hi× p × S × Ki× Di