• 検索結果がありません。

2 国内投資家中心の保有により 財政悪化による金利への影響は限定的但し 国債市場の特殊性は今後変化する可能性 このように国内投資家の比率が高いことが 財政が悪化しても我が国の長期金利が上昇しにくい要因のひとつになっていると考えられる OECD の見通しによると 我が国の政府債務残高の名目 GDP 比

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "2 国内投資家中心の保有により 財政悪化による金利への影響は限定的但し 国債市場の特殊性は今後変化する可能性 このように国内投資家の比率が高いことが 財政が悪化しても我が国の長期金利が上昇しにくい要因のひとつになっていると考えられる OECD の見通しによると 我が国の政府債務残高の名目 GDP 比"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

○ 海外投資家による日本国債の買い越しが拡大しつつある状況

○ 海外投資家比率を高めることにより、国債保有が国内投資家中心であることによる金利上昇 リスクを圧縮する効果や、財政悪化への早期の警鐘も期待できる可能性

海外投資家による日本国債 の買い越し基調の拡大

海外投資家による日本国債の買い越しが続いている。日本証券業協会の統計で日 本国債(中長期債)の買い越し動向を見ると、都市銀行は 4 月に大幅に売り越した ものの、生損保、信託銀行、地方銀行といった投資家では買い越し基調が続いてい る。これに加え、年初以降は、海外投資家の買い越しが拡大している(図表 1)。特 に 5 月の買い越し額は 2 兆 7,000 億円と、統計で確認できる 2004 年度以降では、

2007 年 8 月の 3 兆 7,000 億円に次ぐ水準となっている。国内長期金利は足元 1%台 前半での推移が続いているが、こうした需給環境が低金利を下支えしているものと 思われる。本レポートでは、海外投資家による日本国債投資の動向とその影響につ いて考えることとしたい。

海外投資家の日本国債保有 比率は限定的

まず、海外投資家による我が国の国債の保有比率を見ると、約 5%(2010 年 12 月時点)と低い状況にある(図表 2)。最も保有比率が高いのは銀行等(都市銀行、

信託銀行、地方銀行等)で約 4 割、次いで生損保が約 2 割、公的年金が約 1 割と 続いている。このように銀行等の比率が高いのは、国内での貸出需要が低迷し、

長期資金の運用手段として国債以外に有力な投資先がなく、国債への投資が 拡大したためである。その背景には 1,400 兆円を超える家計金融資産が存在 しており、金融機関への預金を通じて国債市場に流入している。

みずほマーケットインサイト

Market 2011/6/28

みずほ総合研究所 市場調査部 野口 雄裕

(03-3591-1249) takehiro.noguchi@mizuho-ri.co.jp

海外投資家に期待される役割

~求められる日本国債投資家層の多様化~

図表1 主要投資家の国債買い越し動向 図表 2 我が国の国債保有比率

銀行等 38.9%

生損保等 20.2%

公的年金 10.3%

日本銀行 8.0%

海外 4.8%

年金基金 3.9%

家計 4.5%

その他 9.4%

▲ 60,000

▲ 40,000

▲ 20,000 0 20,000 40,000 60,000 80,000

4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5

外国人 生保・損保 信託銀行 地方銀行 都市銀行

(億円)

2010 2011 (月)

(2)

国内投資家中心の保有によ り、財政悪化による金利への 影響は限定的

このように国内投資家の比率が高いことが、財政が悪化しても我が国の長期 金利が上昇しにくい要因のひとつになっていると考えられる。OECD の見通しによ ると、我が国の政府債務残高の名目 GDP 比率は、2011 年に 200%超となる見込み で、主要国の中で最も高い水準となっている。年初以降、海外格付機関による格 下げの動きも顕現化し、我が国の格付は欧米主要国よりも低い水準にある。こう した状況においても、金融機関を中心とする国内投資家が、国内での国債投資を 選好(ホーム・バイアス)する限り、また、その原資としての家計金融資産等が 潤沢にあり、貸出が伸びない限り、財政が悪化しても、国債を保有し続ける可能 性が高い。今後国債の発行増や格下げがあったとしても、金利は短期的には不安 定化するかもしれないが、持続的上昇にはつながりにくいものと思われる。

但し、国債市場の特殊性は今 後変化する可能性

但し、こうした状況は将来的には変わり得る。今後震災の復興需要により貸出需 要が増加すれば、国債への投資余力は減少していく可能性がある。また、我が国の 人口が減少に転じる中、家計金融資産の伸びは低下することが予想され、現状のま ま国債残高が増加した場合、いずれ家計純金融資産を上回る可能性が考えられる。

仮に貯蓄率を 3%とし、金利が現状よりも 2%上昇する場合、2023 年度に国債残高 が家計純金融資産を上回るとの試算になる(図表 3)。国内の資金で国債を賄えなく なると、海外投資家への依存度が急激に高まる可能性がある。

図表 3 国債発行残高と家計純金融資産の試算値

0 200 400 600 800 1000 1200 1400

90 95 00 05 10 15 20 25 (兆円)

(年度) 試算

家計純金融資産

国債残高

金利1.0%

Pt上昇 金利2.0%

Pt上昇 貯蓄率3%ケース

貯蓄率低下 ケース

金利横ばい

(注)家計金融資産残高の貯蓄率3%ケースは2016年度以降の貯蓄率を3.0%

   で固定、貯蓄率低下ケースは予測期間中に貯蓄率がゼロまで漸減すると    仮定。国債残高は金利横ばいケースが2010年度の国債流通利回り    で固定、金利上昇ケースは2010年度以降の10年債金利について    それぞれ横ばいケース+1%、+2%で固定(その他の年限の金利は冒頭    のシナリオを基に設定)。

(資料)日本銀行「資金循環勘定」、財務省資料などよりみずほ総合研究所作成

(3)

日本の国債市場での海外投 資家の位置付けは必ずしも 低くない

それでは、海外投資家への依存度が高まることは問題があるのであろうか。海外 投資家は国内投資家以上に環境変化に即応した投資行動をとり、財政悪化に対し国 内投資家より敏感に反応し日本国債を売却するため、国債消化の安定性が損なわれ るとの考え方がある。ギリシャでは、海外投資家比率が高いことが、金利急上昇の 要因として説明される。また、海外投資家比率が約 5 割となっている米国では、大 口保有先である中国や日本の動向が度々話題になる。1997 年 6 月、橋本首相が「米 国債を売りたい誘惑にかられた事がある」と発言した際、米国株は下落している。

しかしながら、我が国の国債市場を先物市場まで含めて見ると、海外投資家比率 は低くない。我が国の国債先物市場での取引における海外投資家の比率は、証券会 社に次いで 32.92%と高く(図表 4)、海外投資家が先物市場で大幅に売り越した場 合、現物市場に影響し金利が大幅に上昇する事態は十分考えられる。

2000 年以降の先物金利と現物金利のスプレッドの推移を見ると、2006 年以降拡 大する動きが見られる(図表 5)。2006 年 9 月に小泉首相が退陣し、その後政局が 不安定になり、2007 年以降は財政悪化に伴い国債発行額が増額に転じた時期と重な る。現物市場では低金利が続いているが、海外投資家の比率が高い先物市場では、

政局の不安定化、財政悪化を静かに織り込みつつある。先物市場も含めると、日本 国債は既に海外投資家の評価に晒されているのである。ちなみに、先物と現物のス プレッドは 2002 年にも拡大しているが、この時期は、「金融再生プログラム」によ り、金融機関の不良債権処理を加速化させる方針が出され、そうした対応への国内 と海外での評価の差がスプレッド拡大の要因のひとつと考えられる。

図表 5 先物金利と現物金利のスプレッド推移 図表 4 国債先物市場の取引高構成比

0.3 0.35 0.4 0.45 0.5 0.55 0.6 0.65 0.7 0.75 0.8

00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11

(%)

(年)

(※)国債先物利回りと7年債利回りの差 区分 取引高 (単位) 構成比 (%)

証券会社 387,952 47.13

銀行 156,228 18.98

生保・損保 838 0.10

その他金融機関 6,226 0.76

投資信託 533 0.06

事業法人 405 0.05

その他法人等 0 0.00

個人 7 0.00

海外投資家 270,959 32.92

合計 823,148 100.00

(※)2011年5月(5月2日~5月27日)

(資料)東京証券取引所

(4)

国債保有が国内投資家中心 であることのリスク

一方、国債の大半を国内投資家が保有していることは問題がないと言えるであろ うか。これまでの長期金利の推移を見ると必ずしもそうは言い切れない。図表 6 は 1985 年以降のわが国の長期金利と政策金利の推移を示しているが、短期間に金利が 大きく上昇した局面が何度か存在する。タテホ・ショック(1987 年)、資金運用部 ショック(1998 年)やVARショック(2003 年)と呼ばれる局面において、最大 1.9%程度の短期間での金利上昇が起きている。

タテホ・ショックは、1987 年 9 月、タテホ化学工業が国債先物取引に失敗し、286 億円に上る巨額損失を被っていることが発覚し、財テク自粛ムードの拡大により企 業の投資資金が国債市場から引き揚げるとの不安心理の高まりから生じたもので ある。また、資金運用部ショックは、1998 年 12 月、財投改革に伴い、大蔵省の資 金運用部が国債買い入れの停止を発表し、要人発言をきっかけに金利が急上昇した。

VaR ショックは、米金利の上昇、国債入札の不調等を請けた先物相場の下落を契機 とした金利上昇が、銀行のリスク管理基準(VaR=Value at Risk)に抵触したこと から、金融機関の保有債券売却の動きが加速し、長期金利が急上昇したものである。

いずれも、国債保有が金融機関中心であり、相場の動きに対して一斉に同じ反応 をする傾向があることが金利変動を大きくしたと考えられ、仮に海外投資家の比率 が小さくても、今後も同様の事態が生じ得る。

図表 6 長期金利の推移

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11

公定歩合(基準割引率および基準貸付利率)

無担保コールレート(オーバーナイト物)誘導目標 10年国債利回り

(%)

日銀による金融 タテホ・ 引き締め

ショック

(※)無担保コールレート誘導目標は2010年10月より0~0.1%程度に変更

(資料)日本相互証券

(年)

景気回復期待、

米金利上昇

資金運用部

ショック VaRショック

(5)

海外投資家の国債買い越し 動向

それでは、海外投資家の日本国債の保有残高はどのように推移しているであろう か。海外投資家の国債保有額の推移を見ると、緩やかな上昇傾向にあるものの、2008 年 9 月をピークに減少し、足元での国債残高に占める比率は 5%程度に留まってい る(図表 7)。海外投資家の投資判断では、日米金利差や為替等が影響しているもの と考えられるが、足元では、米国の量的緩和策を受けたドル安が、年初以降の海外 投資家の日本国債購入を後押しした可能性が考えられる。また、財務省では、2005 年 1 月以降、海外IRを実施しており、こうした財政当局の取り組みも寄与してい るであろう。

一方、海外投資家の売買動向を見ると(図表 8)、都市銀行が売り越している局面 で買い越している時期があり、国内投資家と投資行動に相違が見られる。日本国債 に投資する海外投資家は、日本の長期金利のみならず、既述のように為替や日米金 利差等を勘案しながら投資していることがこのような投資行動の違いにつながっ ていると思われるが、こうした事実は、海外投資家の比率を高めることが、国内投 資家が中心であることによる金利上昇リスクを軽減する効果をもたらす可能性を 意味する。例えば、2011 年 4 月は都市銀行が大幅に売り越しとなった一方、海外投 資家は買い越しとなっている。都市銀行が売り越した要因としては、震災後の貸出 増加を睨み国債投資を減少させたとの見方があるが、海外投資家は、米金利の低下 に伴う日米金利差の縮小やドル安の動きに反応しているものと思われる。

図表 8 都市銀行と外国人の国債売買動向 図表 7 海外投資家の国債投資動向

5.0 37

0 10 20 30 40 50 60

03/12 04/06 04/12 05/06 05/12 06/06 06/12 07/06 07/12 08/06 08/12 09/06 09/12 10/06

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9

(資料)財務省

(兆円) (%)

保有額(左軸)

保有比率(右軸)

▲ 50,000

▲ 40,000

▲ 30,000

▲ 20,000

▲ 10,000 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000

04 05 06 07 08 09 10 11

外国人

都市銀行

(億円)

(※)中期債以上

(資料)日本証券業協会

(6)

米国債に劣らない日本国債 のリスク調整後の収益性

海外投資家比率はなぜ 5%程度に留まっているのであろうか。その要因として、

海外金利に比べ日本国債の金利が低い点が指摘される。確かに金利水準だけを比較 すると、日本の長期金利は米国債の 3%前後と比較すると低い水準にある。しかし、

国債への投資による収益性を、価格変動リスクも含めた観点から比較すると、米国 債への投資が有利であるとは必ずしも言えない。価格変動性も加味したリスク調整 後の収益性の差(シャープ・レシオ・ギャップ)を比較すると、米国債に対し日本 国債が上回る時期が見られる(図表 9)。また、発行残高は米国債を上回る規模であ り、流動性は米国債同様極めて高い。こうした魅力を積極的に海外投資家に訴えて 行くことで、海外投資家比率を更に高める余地があるのではないだろうか。

世界的な外貨準備資産の拡 大も追い風

また、世界的な外貨準備資産の拡大も、海外投資家比率を拡大するうえでの追い 風となる。世界的な金融緩和による流動性の高まりに対し、アジア諸国では通貨高 を回避するためのドル買い介入を行うことで、外貨準備資産が拡大している。こう した資産による運用の多様化の一環で、日本国債への投資が増加する可能性がある。

具体的な動きとして、中国の動向を見たい。中国の外貨準備は 2011 年 3 月には 3 兆ドルを突破し、世界第一位の外貨準備保有国となっている。こうした中、中国は 外貨準備の運用先を従来の米国債中心での運用から多様化する動きが見られる。中 国の日本国債の投資動向を見ると、足元、短期債を減少させ、中長期債が増加する 動きが見られる(図表 10)。短期債と中長期債の合計ではマイナスではあるものの、

今後日本国債の保有比率が拡大していく可能性もあり、今後の動向を注視していく 必要があろう。

図表 10 中国の国債売買動向 図表 9 シャープ・レシオ・ギャップ(米国債-日本国債)

▲ 0.80

▲ 0.60

▲ 0.40

▲ 0.20 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80

01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11

(※)月次収益率について12ヶ月標準偏差でシャープ・レシオを算出    リスクフリーレートを控除しないr/σの比較

(資料)Bloomberg

▲ 25,000

▲ 20,000

▲ 15,000

▲ 10,000

▲ 5,000 0 5,000 10,000 15,000

09/1 09/5 09/9 10/1 10/5 10/9 11/1

(資料)財務省

短期債 中長期債

合計

(億円)

(7)

海外投資家比率が高い欧米 諸国

それでは、欧米諸国の海外投資家比率はどのような状況になっているであろうか。

諸外国の国債所有者別内訳(図表 11)を見ると、日本に比べ総じて海外投資家の比 率が高い。海外投資家比率が高い要因として、経常赤字を海外からの資金で埋め合 わせなければならないという事情が考えられるが、ドイツのように経常黒字国であ りながら欧州域内を中心とした海外投資家の比率が高い国も存在する。米国債の海 外投資家比率は、1989 年に約 2 割だったものが、足元 5 割近くまで高まっている。

海外投資家比率が高まるこ とにより期待される財政当 局への早期警鐘機能

海外投資家比率が高まることにより、金利変動リスクを軽減する効果が働く可能 性があると説明したが、もっとも大きな効果として期待されるのは、我が国の財政 規律を維持するための警鐘効果である。我が国の国債が大きく格下げされる事態に なれば、海外投資家も国内投資家も国債を売却せざるを得ない局面が出てくるであ ろう。しかしながら海外投資家はそうした事態に至る前に国債売却に動く可能性が 高い。海外投資家比率が高まれば、政府は海外投資家による国債売却リスクを絶え ず意識して財政運営を行っていかざるを得なくなる。国内投資家は、国債以外の投 資先がなければ、ぎりぎりまで国債の保有を継続することが考えられ、財政悪化の 警鐘機能としては期待しにくい。海外投資家による早期の財政チェック機能は、国 債の大半を保有している国内投資家にとってもメリットあるものであろう。

留意しなければならないのは、海外投資家比率を高めることにより、逆に投機に 晒されるリスクを高めることにつながりかねない点である。海外投資家と言っても、

投資ファンド等ではなく、年金資金等、中長期的に分散投資の観点から日本国債を ポートフォリオに組み入れる海外投資家を拡充していく必要があるのではないか。

図表 11 諸外国の国債所有者別内訳

政府 中央銀行 金融機関等 海外 個人 その他

日本 12.1 7.4 67.5 5.2 5.1 2.7

アメリカ 10.6 10.0 19.8 47.7 10.2 1.6

イギリス 0.0 29.4 41.1 28.5 0.7 0.3

ドイツ 0.0 0.3 26.6 53.6

フランス 3.2 2.3 56.8 34.7 2.0 0.9

(※1)各国の国債等の内訳は以下の通り

日本:普通国債、財投債 アメリカ:政府勘定向け(年金等)に発行する非市場性国債を除く連邦債 イギリス:国債(ギルト・短期国債) ドイツ:国内債券(地方債等含む。) フランス:ユーロ建譲渡性長

(※2)各国で所有者の分類が異なっているため、各所有者に含まれる内訳は必ずしも一致しない

(※3)アメリカは額面ベース、その他は時価ベース

(※4)イギリスの「中央銀行」には一部金融機関も含む

19.5

 (シェア、%)

(8)

余力のあるうちに国債保有 者層を拡大することが、財政 改革を進めるうえで有効

ここまで、海外投資家比率を高めることにより、金利上昇リスクを軽減できる可 能性があること、海外投資家による財政当局への早期警鐘機能が期待できることを 述べて来たが、海外投資家への依存度が高まり過ぎることは好ましいとは言えない。

具体的には、国内資産の余力を確保しつつ、海外投資家比率を緩やかに引き上げ る対応が望ましいと思われる。国内資産の余力がなくなり、海外投資家のみに依存 せざるを得ない状況になると、金利が高騰するリスクが高まるであろう。国内資産 の余力があるうちであれば、海外投資家のみの意向によって金利が引き上げられる リスクは低く、持続的な金利上昇は起こりにくいものと思われる。海外投資家比率 を引き上げ、国内資産による国債消化が可能な期間を引き延ばし、その間に市場が 納得できる財政改革のロードマップを作成し、実現性を市場に示すことで、その後 は国債消化の安定性を確保することができるのではないか。図表 12 は、以上の考 え方をイメージ図にしたものである。段階的に海外投資家比率を高めることで、国 内資産が充当される国債残高(A)を(B)にシフトさせ、これにより、国債残高 が国内金融資産を上回るタイミングを後ろ倒ししている。この時間に財政改革を進 めるという考え方である。

現在、復興や社会保障の財源として増税の議論がなされているが、景気に悪影響 を与えないためには、一度に大幅な増税は困難で、長期間を要するであろう。政府 の社会保障改革案では、2010 年度で 30.8 兆円(対GDP比率 6.8%)に上る国・

地方の基礎的財政収支赤字を 2015 年度までに半減、2020 年度に黒字化するとの財 政健全化目標を掲げているが、これは消費税率を 2015 年度までに 10%に引き上げ ることが前提となっている。20 年度の目標には更に 16%程度までの税率引き上げ が必要であるが、現状は具体的に示されていない状況である。継続的に増税するこ とは政治的にも困難で、実現には紆余曲折が予想される。

海外投資家比率の拡大は好ましくないとの考え方が多いが、日本の財政改革が難 しさを増す中、国内投資家のみに依存しない保有者層の多様化を進めることは有効 であると思われる。受身ではなく、むしろ積極的に海外投資家の資金を取り込むチ ャンスではないだろうか。

以上

図表 12 海外投資家比率拡大の効果(イメージ)

国内金融資産 国債残高(A)

海外投資家依存 の高まり

国内投資家中

国債残高(B)

金額

参照

関連したドキュメント

 トルコ石がいつの頃から人々の装飾品とし て利用され始めたのかはよく分かっていない が、考古資料をみると、古代中国では

解約することができるものとします。 6

 我が国における肝硬変の原因としては,C型 やB型といった肝炎ウイルスによるものが最も 多い(図

このように、このWの姿を捉えることを通して、「子どもが生き、自ら願いを形成し実現しよう

この大会は、我が国の大切な文化財である民俗芸能の保存振興と後継者育成の一助となることを目的として開催してまい

主に米国市場においてインフレのピークアウトへの期待の高まりを背景に利上げペースが鈍化するとの思惑

本マニュアルに対する著作権と知的所有権は RSUPPORT CO., Ltd.が所有し、この権利は国内の著作 権法と国際著作権条約によって保護されています。したがって RSUPPORT

従って、こ こでは「嬉 しい」と「 楽しい」の 間にも差が あると考え られる。こ のような差 は語を区別 するために 決しておざ