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新幹線と航空機の時空間ネットワークを用いた空港評価
A Method to Evaluate Airports Based on Their Connectivity in Time-Space Network Composed of Shinkansen and Airline
情報工学専攻 大野 悟史
OONO Satoshi
1 序論
日本には
100
近い空港があり, 多くの空港経営が問 題視されている. 旅客需要が分散され搭乗率が低い路 線は運休になり, 航空会社にも影響を与える. 地方空 港の多くが国や地方自治体がコストを負担している.また, 空港利用者の需要予測が甘いため, 必要以上に 数が増えていった可能性もある. 空港利用者の需要予 測は, 計画段階から行われるが, 空港建設後の実際の 利用人数が下回ることも多く問題になっている. さら に, 新幹線の利便性が向上するにつれて航空機は新幹 線に旅客を奪われる傾向がみられる. 今後, 国内の鉄 道輸送はより便利になっていくと考えられ, さらなる 競争の激化が予想される
.
本稿では, まず新幹線と航空機の時空間ネットワー クを構築する
.
さらに,
全国幹線旅客純流動調査トリ ップデータを用いて旅客流動を再現する. 次に, 対象 とする空港の有無による旅客流動の変化を分析して 空港を評価するために, 対象とする空港を使えない状 態にして旅客流動を再現する. その空港を利用してい た旅客の旅行経路がどのように変化するかを分析する ことで3
つの空港評価の指標を求める.2 時空間ネットワーク
2.1
新幹線と航空機の時空間ネットワークの構築 駅や空港をノードで表し,
ノード間を結ぶ各リンク が新幹線や航空機による移動を表すようにネットワー クを構築する. 2次元で表される空間ネットワークに, 時間軸を設けることによってネットワークを3
次元に 拡張し, 時空間ネットワークを構築する[3]. 具体的 には,
各駅・空港における新幹線や航空機の発着を「発 ノード」,
「着ノード」を表し,
新幹線・航空機が到着 から出発まで待つ行動を「着発間リンク」として表現 する.
また, 新幹線に乗って次の駅への移動する行動 を「走行リンク」,
航空機に乗って次の空港への移動する行動を「飛行リンク」
,
駅・空港で次の新幹線・航空 機を待つ行動を「待ちリンク」,
駅・空港で他路線へ乗 り換える行動を「乗り換え・乗り継ぎリンク」として 表現する[1][2].2.2 構築した時空間ネットワーク
197
駅における新幹線1292本の運行と, 58空港にお ける航空機1708
便の運航を表現するために, 図1の2
つの時空間ネットワークを構築する. 新幹線の時空間 ネットワークは総ノード数15,655,
総リンク数39,775,
航空機の時空間ネットワークは総ノード数3,416,
総リンク数
4,828
である.(a)
新幹線(b)
航空機図
1 時空間ネットワーク
3 旅客流動を表す時空間ネットワークの構築 3.1 アクセスリンク
全国幹線旅客純流動調査[4]で定められている
207
生活圏ゾーンを出発地と目的地の代表点とし,
新幹線 や航空機を利用し代表点から代表点へ移動する旅客流 動を再現する.
このとき,
代表点と駅・空港の接続を時 空間ネットワーク上で表すリンクをアクセスリンクと する.
接続する代表点のノードと駅のノード・空港のノ ードの間に, 5時から23
時まで1
時間ごとの出発を表 すようにアクセスリンクを張る.
このとき,
アクセス リンクにはコストとして移動時間と手続き時間の和を 与える. 手続き時間とは, 新幹線や航空機の乗降の際 に手続きにかかる時間である.
駅での手続き時間を152
分, 空港での手続き時間を30
分と定める. また, 各ノ ードは時間軸方向に待ちリンクを張る. 図2
は代表点 から駅・空港に接続する場合のアクセスリンクを表し ている.図
2 アクセスリンクの例
3.2 駅・空港間リンク
旅客が移動途中に
,
利用する交通機関を変更するた めに, 空港と駅の間を移動する可能性がある. この行 動を時空間ネットワーク上で表すリンクを駅・空港間 リンクとする. 時間軸方向に表現するために, 駅と空 港の間を運行している交通機関の時刻表を用いる. 時 刻表からわかる始発時刻と最終時刻の時間差と運行本 数から運行間隔を求める. この運行間隔ごとに, 空港 のノードと駅のノードの間に駅・空港間リンクを張る.この時
,
駅・空港間リンクにはコストとして,
時刻表か らわかる移動時間と乗換時間の和が与えられる. 乗換 時間とは, 新幹線と航空機を乗り換える際に手続きに かかる時間である. 本研究では, 空港から駅への乗り 換える場合の乗換時間を15分,
駅から空港へ乗り換え る場合の乗換時間を30
分と定める. また, 各ノードは 時間軸方向に待ちリンクを張る. 図3
は空港から駅へ の乗り換えを表す駅・空港間リンクの例を表している.図
3 駅・空港間リンクの例
3.3 構築した時空間ネットワーク
アクセスリンクと駅・空港間リンクを用いて, 各生活 圏と新幹線の時空間ネットワークと航空機の時空間ネ ットワーク接続すると図
4
のようになる.
総ノード数は
62,592,
総リンク数は148,736
であり青色が飛行リンク(航空機)
,
緑色が走行リンク(新幹線),
橙色が アクセスリンク, 水色が駅・空港間リンク, 赤色が待ち リンクを表している.
図
4 新幹線と航空機の時空間ネットワーク
4 トリップデータと旅客流動の再現方法 4.1 トリップ出発時刻の設定
時空間ネットワークによる旅客流動を再現するため の
OD
(Origin Destination)交通需要として全国幹線 旅客純流動調査のトリップデータを利用する. トリッ プデータは, 出発時間や移動時間といった情報は記載 されていないため, 各トリップに出発時刻を定める.新幹線と航空機の時空間ネットワークにおける生活圏 間の最短時間経路を
, dijkstra
法を用いて求め, 最遅出 発時刻を求める. トリップの出発時刻は, 5時から最遅 出発時刻までの間で一様に定める.4.2
シンクと旅客流動の再現方法トリップデータを出発地と目的地との間の
OD
交通 需要として, 構築した新幹線と航空機の時空間ネット ワーク上で旅客流動を再現する. ただし, 旅客は出発 地の生活圏から目的地の生活圏まで最短時間経路で移 動すると仮定する. 最短時間経路はdijkstra
法を用い て求める. この時, トリップデータを最短時間経路問 題の入力とするために, ネットワークから流出する旅 客に対応するシンクをネットワークに付加する. 各生 活圏に対して一つのシンクノードを作り, その生活圏 の代表点を表すノードからシンクリンクを張って旅客3
をネットワークから流出させる.5 旅客流動の再現
構築した新幹線と航空機の時空間ネットワークと全 国幹線旅客純流動調査トリップデータを用いて, 旅客 流 動 を 再 現 し た 結 果
,
ト リ ッ プ デ ー タ の 旅 客1,155,227
人のうち1,079,152人(93%)が目的地に到達することができた
.
図
5
は新幹線の時空間ネットワークにおける走行リ ンクの搭乗率を示す. 停車駅の尐ない新幹線を表すリ ンクの混雑率が特に高いことがわかる. なかでも「のぞ み」の搭乗率が高く, 深夜の数便以外はほとんどの新幹 線が満席状態になっている. また,
東京から名古屋・京 都・大阪までの路線は高い搭乗率であるが, 岡山・広島 と西に向かうにつれて搭乗率が減尐していることから, 関東と関西をむすぶ東海道新幹線は, 新幹線輸送の中 心になっていることがわかる.
図6
に航空機の時空間 ネットワークにおける飛行リンクの搭乗率を示す.
羽 田空港を中心とするリンクの搭乗率が高いことがわか る. 羽田・那覇空港間や羽田・新千歳空港間は深夜の便 以外のほとんどが満席状態になっている. この理由は, 沖縄や北海道は新幹線との競合がないためであると考 えられる. また, 富山空港や小松空港と羽田空港を結 ぶ路線も搭乗率が高いことがわかる. これは, 富山県 や石川県が新幹線を利用することが困難な地域である ためだと考えられる.
図
5
新幹線の搭乗率図
6
航空機の搭乗率6 空港評価 6.1 空港評価の準備
対象とする空港の有無による旅客流動の変化を分析 することで空港を評価する. 空港を使えない状態にし て旅客流動のシミュレーションを行うと, その空港を 出発地, 目的地, 経由地として利用していた旅客は他 の旅行経路を用いることになる. これらの旅客の旅行 経路の変更は, 変更した先の経路において, 混雑のた め乗れなくなる旅客が発生する可能性があるため, 利 用していた旅客以外にも影響を及ぼす
.
本研究では,
関西三空港(伊丹, 関空,
神戸)を対象として,
各空港 を削除した場合のトリップの変化を分析する.
6.2
空港評価関西三空港について詳細な分析を行った結果, 「到達 可能」か「到達不能」になる旅客に分けられること, 多 くの「到達可能」なトリップは利用交通機関を変更し ていること, さらに, トリップの利用交通機関が変化 する割合に着目し, 以下の評価項目を考える
.
(I)
空港を削除しても目的地に到達できるが,
移動時間が変化する旅客から見た評価
(II)
空港を削除すると目的地に到達することができなくなる旅客から見た評価
(III)
空港が航空機と新幹線の競合に与えている影響の評価
6.3
到達可能な旅客から見た評価(I)本研究では, 旅客一人あたりの移動時間変化が長い
4
ほど, 到達可能な旅客にとって重要な空港であると評 価する. 表1
は各空港の評価の値と順位を表している.
伊丹を利用していた旅客は, 伊丹を使わない経路で移 動した結果, 一人あたり60
分移動時間が長くなる. 伊 丹は利用人数も多く, 一人あたりの移動時間も長くな る傾向があり, 伊丹空ないと多くの旅客の旅行が困難 になる. このことから,
伊丹の存在は,
「到達可能」な 旅客とって重要であることがわかる.
逆に,
関空は利 用人数が尐なく一人あたりの移動時間も10
分程度し か長くならない. 関空がなくても旅客の旅行はあまり 困難にならないため,
関空は伊丹に比べ「到達可能」な 旅客にとってあまり重要ではない.表
1 到達可能な旅客から見た評価
順位 空港 一人あたりの移動時間変化
1
伊丹60.8
分2
神戸22.6
分3
関空12.3
分6.4
到達不能になる旅客から見た評価(II)本研究では, 旅客一人あたりの失われた移動時間が 長いほど, 到達不能になる旅客にとって重要な空港で あると評価する
.
失われた移動時間とは,
空港を削除 したことにより, 目的地に到達できなくなった旅客の もともとの移動時間である. 表2
のように,
神戸や伊 丹に比べ, 関空を利用する旅客一人あたりの失われた 移動時間が長く,
一人あたりへの影響が大きく重要で あることがわかる.表
2 到達不能になる旅客から見た評価
順位 空港 旅客一人あたりの 失われた移動時間
1
関空498.4
分2
神戸388.6
分3
伊丹374.6
分6.5
新幹線と航空機の競合を考慮した評価(III)空港を削除した時に, その空港を利用している旅客 のうち
,
多くの人が航空機ではなく新幹線を使うよう になるということは, その空港と新幹線の競合関係が 強いことを示している. つまり, その空港は 新幹線と の競争力が強く, 航空会社や空港経営主体にとって重要な空港であると言える. そのため, 本研究では空港 を削除すると新幹線を利用するようになる旅客の割合 を, 新幹線と航空機の競合を考慮した評価指標とする.
結果は表
3
のようになる表
3 新幹線と航空機の競合を考慮した評価
順位 空港 割合
1
伊丹57%
2
神戸44%
3
関空20%
7 結論
本稿では, 新幹線と航空機の競合を考慮したうえで 空港を評価する指標を求めるために, 新幹線と航空機 の時空間ネットワークを構築した. 次に, 構築したネ ットワークと全国幹線旅客純流動調査トリップデータ を用いることで旅客流動を再現した. さらに, 対象と する空港を使えない状態にして旅客流動のシミュレー ションを行った. 結果から関西三空港の関係を分析す ることで
, 3
つの評価指標を提案した.謝辞
本稿を進めるにあたり,多大なるご指導,ご助言を 頂いた中央大学理工学部田口東教授に深く感謝いたし ます.また,さまざまな場面で貴重なご助言を頂いた 中央大学理工学部鳥海重喜助教, 高松瑞代助教に心か ら感謝いたします.
参考文献
[1] 小澤勇紀, 鉄道輸送障害時の旅客流動を考慮した 運転整理案
,
中央大学大学院理工学研究科情報工 学専攻修士論文, 2010.[2] 高橋莉里香, 航空における時空間ネットワークの 構築
,
中央大学理工学部情報工学科卒業研究論文,2010.
[3] 田口東,首都圏列車ネットワークに対する時間依 存通勤交通配分モデル,日本オペレーションズ・
リサーチ学会和文論文誌,
48
巻,pp.85-108, 2005.
[4] 国土交通省