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How to reinforce password authentications

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パスワード認証の強化策

How to reinforce password authentications

多田 充

Mitsuru Tada

千葉大学 統合情報センター

Institute of Media and Information Technologies, Chiba University

263-8522

千葉市稲毛区弥生町

1-33

Yayoicho 1-33, Inage, Chiba 263-8522, Japan

概要 近年多くの大学では,さまざまな事務処理をWebインターフェース(ブラウザ)で行うようになってきている。構成 員は,学内に設置された事務処理(サービス)システムがにログイン(認証)した上でそのサービスシステムを利用する が,多くの大学ではその認証方法として「ユーザID&固定パスワード」による方式を採用している。固定パスワードに よる認証は導入が容易であり,すでにネットワーク上の大半のサービスシステムで採用されているためか馴染み深い反 面,パスワードクラッキングなどセキュリティ上の問題を多く抱えている。本論文では,既存の固定パスワード認証シ ステムを利用しつつ,学外からのアクセスに対しては「認証シャッター」を経た2要素認証にする方法を述べる。認証 シャッターの考え方は2014年に[11]で提案されたもので,シャッターが閉じている間はたとえ正しいユーザIDとパス ワードを送信しても,認証サーバへの照会を行わないというものである。これにより,四六時中なりすましログインの 窓口を開けている固定パスワード認証システムの安全性を格段に高めることができる。本論文で提案するシステム構成 は,ユーザおよびサービスシステムの他にシャッター制御センターを合わせた3者間認証になっており,シャッターを 開けるためには,ユーザはシャッター制御センターに対して記憶および所有物の2要素認証をパスする必要がある。そ のため,シャッターを開けてログインしたユーザ本人の確からしさ(認証レベル)を上げることができ,より安全にサー ビスシステムを運用できるようになる。 キーワード: 認証シャッター,3者間認証,2要素認証 E-mail: [email protected] 学術情報処理研究 No.19 2015 pp.40-49

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はじめに

近年多くの大学では,さまざまな事務処理を行う際, 紙媒体の書類を作成し事務に提出する代わりに,各構 成員がWebインターフェース(ブラウザ)で処理を行 うようになってきている。学内にその事務処理のための (サービス)サーバが設置され,構成員はそのサービスシ ステムにブラウザでアクセスして,各々の作業を行うの である*1。構成員がサービスシステムを利用するために は,そのシステムにログイン(認証)する必要があるが, インターネット上のサービスシステムと同様,多くの大 学では,その認証方法として「ユーザID&固定パスワー ド」による方式を採用している。 固定パスワードによる認証は導入が容易であり,すで にネットワーク上の大半のサービスシステムで採用され ているためか馴染み深い反面,セキュリティ上の問題を 多く抱えている。というのは,固定パスワード認証のな りすまし耐性は,構成員(ユーザ)自身が定めたパスワー ドのみに依存するからである。123456やpasswordな どは,よく使われるパスワードの代表格であり「弱い パスワード」と呼ばれることがある。実際,簡単なパ スワードを設定していたために,辞書攻撃やブルート フォース(総当たり)攻撃が成功してしまった事例は枚 挙に暇がない。 さらに近年は,いわゆるリバースブルートフォース攻 撃や,リスト型アカウントハッキングの脅威も指摘さ れている。ブルートフォース攻撃は,ユーザIDを固定 してパスワードを可能な限り試すというものであるが, リバースブルートフォース攻撃は,パスワードを固定 し,ユーザIDを可能な限り変えて試すというものであ る。大学内のシステムで職員番号や学籍番号(から簡単 に割り出せる文字列)をユーザIDにしている場合,ユー ザIDのリストを作成するのはそれほど困難なことでは ないので,リバースブルートフォース攻撃は容易とな り得る。パスワードを(例えば123456とかに)固定し て,ユーザIDリストを順番に試しことにより,そのパ スワードを設定している構成員が1人でもいれば不正 ログインが成功してしまう。もちろん,十分複雑なパス ワードを設定している構成員は被害に遭わないが,シス テム運用側としては大きな問題となる。構成員自らが定 めた(弱いかもしれない)パスワードで世界中からログ インできてしまうこと,窓口をインターネット全体に広 げることがセキュリティ上の問題点になりうるため,大 *1千葉大学においても,人事給与,購入・旅費請求,学生の履修 登録その他のサービスシステムが設置されている。 学内サービスシステムの多くは,大学内ネットワークか らのみアクセス(ログイン)を可能にしている*2 しかし,学外ネットワークからも学内サービスシステ ムにアクセスできるのが望ましいと考える構成員も多い であろう。とはいえ,固定パスワード認証のサービスシ ステムをそのまま世界中からアクセス可能にするのは危 険なので,その解決策として学外ネットワークからアク セスした場合のみ,認証の強度を上げるということが考 えられる。 このような策は既にいくつかの大学でも実施されてい て,具体的には 学外からのアクセス(ログイン)の際,ワンタイムパ スワード(OTP)認証を行う というものである。例えば,佐賀大学[9]では,ログイン のためのOTPを既に登録されている電子メールアドレ スに送付するようにしており,関西大学[3]ではパスロ ジ株式会社によるPassLogicを導入し,利便性とセキュ リティの向上を図っている[8]。また,神戸学院大学[5] や南山大学[7]では,事前に配付してある暗号表(乱数 テーブル)を用いてOTPを算出させており,慶応大学 [4]では,サイオステクノロジー株式会社によるOTP認 証を採用しており[10],これは,構成員自らが所有する スマートデバイス(iPad, iPhone, Android phone)で動 作するソフトトークンを用いたものである。 本論文では,固定パスワード認証はそのまま継続し, そのセキュリティを補強する「認証シャッター」の実現 方法を提案する。認証シャッターの考え方は[11]で提案 されたものであり,シャッターが開いているときのみ, ID&パスワード等によるログインを可能とし(図1),閉 じている場合はログインそのものを拒否する(図2)とい うものである。 ユーザは自らがサービスシステムを利 用しようとするとき,まず認証シャッターを開けてから ログイン手続きを実行する。[11]では登録電子メールア ドレスに認証シャッター操作のためのURLを送るもの になっているが,本論文では[2]の3者間認証のアイデ アを用いてシステムを構成する。実際には,認証シャッ ターを制御するサーバ(シャッター制御センター)を設 置し,ユーザが外部ネットワーク(大学組織であれば学 外ネットワークなど)からサービスシステムを利用する ときは,自身が所有するスマートフォンやタブレットな *2メールシステムだけは,「大学内からのみアクセス可能」にし てしまうと構成員から不満が続出する可能性が高いので,イン ターネット全体,即ち,世界中からアクセス可能にしている大 学がほとんどであろう。つまり,VPN など特殊なネットワー ク対策をとらない限り,これらの攻撃を防ぐのは不可能であり, 特にリバースブルートフォース攻撃は脅威となりうる。

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図1 認証シャッターが開いているとき 図2 認証シャッターが閉じているとき どの携帯機器で動作する専用アプリを用いて,自身が設 定した認証シャッターを操作するためのパスワード(認 証シャッター制御パスワード*3)による記憶認証*4,お よび,登録時に携帯機器に保存されている証明書(認証 シャッター制御アプリケーションパス*5)による所有物 認証を経て認証シャッターを開け,その後,従来の固定 パスワード認証によりログインする。つまり,学外から のアクセスに対しては(記憶および所有物の)2要素認証 となっている。 本論文は以下のように構成される。第2章では,学外 からのアクセスに対して認証強度を上げるという同一の 目的をもつ技術の1つであるワンタイムパスワード認証 について紹介する。第3章において,提案システムの構 成を述べ,第4章において,プロトコルの詳細を述べる。 第5章において,提案システムの安全性および利便性に 関する考察,従来方式との比較,既存システムへの導入 方法,および,複数サービスシステムの場合のシステム 構成について述べる。第6章は本論文のまとめである。 *3簡単のため,以降「シャッターパスワード」と表現する。 *4認証シャッターを開けた後,サービスシステムに対して従来の 固定パスワードによる記憶認証をすることになるので,シャッ ターパスワードは必須ではなく,設定しない場合でも結果的に は 2 要素認証にはなる。ただし,携帯機器の紛失/盗難時の安全 性は下がる。 *5以降「制御アプリパス」と表記する。

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関連技術:ワンタイムパスワード認証

ワンタイムパスワード(OTP)認証は[6]で提唱され た概念であり,ユーザ認証を行う度に異なるパスワー ドを用いる認証方法である。パスワードは使い捨てであ り,一度使用すれば無効になるため,たとえ使用時に漏 洩したとしても被害は最小限で済む。OTP認証は,本 論文で扱う認証シャッターと同様,固定パスワード認証 の弱点を補うものであり,さらに,すでに一部の大学に おいては認証基盤の1つとして導入・運用されている [3, 4, 5, 7, 9]。 OTPはパスワードとして「使い捨て」ではあるが,パ スワードであることには変わりないので,ユーザはその パスワードの値,サービスシステムはパスワードの値ま たはそのハッシュ値等,そのパスワードの正しさを検証 できる情報を,遅くともユーザ認証時には知っている必 要がある。現在まで数々の方法が提案され,商品化もさ れている。その中から比較的普及していると思われるも のを以下に挙げる。 2.1 マトリクス認証方式 マトリクス認証は,ユーザ認証時にサービスシステム が碁盤目状の数字の列を提示し,ユーザが予め登録して ある盤面の位置に従ってパスワードを作成・送信すると いうものである(図3参照)。提示される盤面は毎回変 わるので,ユーザによる入力や,通信路を流れる情報も また毎回変わる。そのため,通信路の盗聴やショルダー ハッキングに対してある程度の効果があると言える。し かし,固定パスワード方式と同様,記憶のみの認証に なっているので,同じ弱点を持っているとも言える。と はいえ,以下で述べる「乱数表方式」「トークン方式」と 比較して,「配付物が必要ない」「クライアントソフトが 必要ない」などの利点をもつ。 図3 マトリクス認証方式 2.2 乱数表方式 乱数表方式は,登録時に個別配付した乱数表を使った もので,ユーザログイン時にサービスシステム側が行と 列を指定し,ユーザはその表に記載されている数値(図 4参照)を入力するというものである。所有物認証の1

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つと考えることができるが,その所有物である乱数表の 複製や共有は容易であり,また,ログイン時にユーザが (紙媒体の)表を見ながら数値を探して入力しなければな らないという欠点もあるが,導入コストは一般的に低く 抑えることができる。 図4 乱数表方式 2.3 ハード/ソフト トークン方式 ユーザ登録時に,OTPの生成を行うプログラムを個 別に配付し,ログイン時にそのプログラムを実行し,生 成されたOTPを入力するというものである。プログラ ムは専用デバイスに実装された状態で配付されたり,ス マートデバイス上で動作するアプリとして配付されたり する。前者の場合,そのデバイスをハードトークンとい い,後者の場合,そのアプリをソフトトークンという。 ハードトークンの場合,ユーザはサービスを利用すると き,ログインのためだけに使用する専用デバイスを常に 持ち歩く必要がある。また,トークンの配付や回収など の運用コストは無視できない。その問題を解決するのが ソフトトークンであるが,どちらにしろ,OTP認証に とって最重要機密情報の1つであるOTP生成アルゴリ ズムを全てのユーザの手元におくという危うさを秘めて いる。

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提案システムの構成

本章では,認証シャッターを実現するための基本原理 である3者間認証について述べる。まず,第3.1節でシ ステムの機器構成を述べ,第3.2節において各機器が保 有する情報(データベース)について述べる。 3.1 機器構成 登場するエンティティはユーザ(U),サービスシステ ム,シャッター制御センター(C)の3つであるが,ユー ザはサービスを利用する(PCなどの)デバイス(UP)と 認証シャッターを操作する(スマートフォンやタブレッ トなどの)スマートデバイス*6(UM)を持ち,サービスシ *6今後「携帯機器」と表現することにする。本論文では,携帯機 器として主にスマートフォンを想定しているが,「携帯機器その ものが通信可能」で,かつ「専用アプリを動作させることがで きる」ものであればよい。また,ユーザがサービスシステムを ステムは,ユーザにWebインターフェースを提供する Webサーバ(S),(固定パスワードで)ユーザを認証する 認証サーバ(A),および認証シャッターの状態を管理す るシャッター管理サーバ(M)からなる。図5に,シス テム全体の構成を示す。CMの間はVPN等の安全 図5 システム構成 な通信回線とし,MCおよびS以外とは通信しない ものとする。 サービスシステムが複数ある場合でも,1つのシャッ ター制御センターに複数のサービスシステムを接続さ せ,すべてのサービスシステムのアカウントをシャッ ター制御センターで統合的に管理することができるので シャッター制御センターは1つ設置するだけでよい。本 論文では表記を簡潔にするため,サービスシステムは1 つとする*7 ユーザがサービスシステムSにログインするときの手 続きの概要は以下の通りである。 (1) ユーザは登録時にシャッター制御センターC から 携帯機器UMのデバイス認証に必要なファイルを受 け取っているので,それをUM(で動作する専用アプ リ)を用いてCに送り,利用したいサービスシステ ムSの当該アカウントに対する認証シャッターを開 けてもらう。 (2) シャッターを開けてもらった後,ユーザはUPで通 常のログイン手続きを行う。 プロトコルの詳細については第4章で述べる。 3.2 各機器が保有する情報 一般的なサービスシステムがそうであるように,本論 文においても,認証サーバAには,ユーザが使用するロ 利用するためのUPがUM自身であってもよい。 *7複数のサービスシステムがある場合の統合的な管理方法は [1] で述べられている。[1] は,1 つのセンターから複数のサービス システムに一時的な共通パスワードを一括設定するシステムを 提案しているが,同様の構成が認証シャッターのシステムでも 可能である。この構成図については第 5.4 節で述べる。

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グインID*8,ユーザが設定した固定パスワード(または それを不可逆変換したもの),および氏名やメールアドレ ス,所属などの属性情報が保存されているものとする。 以下,認証シャッターを操作するための携帯機器(で動 作する専用アプリ)UM,シャッター管理サーバ(M)お よびシャッター制御センター(C)について述べる。 携帯機器専用アプリ(UM) UMが保有必須となるのは, • sysID:利用するサービスシステムのID情報 • Pass:登録時にシャッター制御センターから送られ てきた制御アプリパス であるが,利便性のため,サービスシステムの名称等が あってもよい。また,第4.1節で述べる通り,Passに は,シャッター制御センターがアカウントを識別するた めの管理ID(mID)が含まれている。 シャッター管理サーバ(M) Mが保有必須となるのは, • uID:ユーザがサービスシステムSにログインする ためのユーザID • mID:当該ユーザが認証シャッターを操作するとき に用いる管理ID • sst:認証シャッターの状態 • period:認証シャッターの閉門時刻/門限 で あ る 。sst は open ま た は closed の 2 値 で あ る 。 periodは開いているシャッターが閉まる時刻であり, sst = openのときに限り意味を持つ。 シャッター制御センター(C) Cが保有必須となるのは, • sn:シリアル番号 • mID:ユーザの管理ID • sysID:利用するサービスシステムのシステムID • ust:ユーザの状態 • hcpw:シャッターパスワード (を不可逆変換した もの) • key:制御アプリパス(Pass)をユーザに送るときに 使用した暗号化/復号鍵 である。ustはユーザが登録の途中か,登録が完了して いるかを示す項目で,登録途中(halfway),登録済(active) などの値*9を持つ。keyは制御アプリパスをサービスシ ステムに送るとき,および,ユーザがシャッター制御セ *8ここではログイン ID を,「ユーザ ID」と呼ぶことにする。 *9halfway, active 以外にもアカウントロックなどの状態があって もよい。 ンターに対して登録手続きをする際に必要となり,それ 以降は不要となるので,破棄してもよい。またそれとは 別に,Cは制御アプリパスを生成・検証するので,その ために必要な電子署名生成鍵および検証鍵を持つ*10

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各種手続き

ユーザU はすでにサービスシステムS(が従来の固定 パスワード認証に利用する認証サーバA)に登録されて いるものとする。組織内ネットワークからSにアクセス した場合は,図6のように,通常のパスワード認証が実 行される。本章では,認証シャッターを導入したサービ 図6 組織内ネットワークからのログイン スシステムへの登録(第4.1節および第4.2節),シャッ ター操作(第4.3節),および外部ネットワークからのロ グイン(第4.4節)の各手続きについて述べる。 4.1 登録手続き(その1) ユーザU が組織内ネットワークからSにログインし ているものとする。ユーザは外部ネットワークからもS を利用できるようにしたい場合,まず,以下の手続きを 実行する。 (R1) Uは,リクエストをSに送る。 (R2) Sは,そのシステムID(sysID)とともに,ユーザ追 加リクエストをCに送る。 (R3) Cは一意的なmIDを生成し,対応するサービスシ ステムのシステムID(sysID)および当該アカウン トに関する情報*11に対する電子署名σを生成し認 証シャッター制御アプリケーションパス(Pass = (mID, sysID, σ))を生成する。さらに,鍵keyを生

成しそれを用いてPassを暗号化する。暗号化した

ものをE(Pass)とする*12また,当該アカウントに

対してust← halfwayとする。

*10制 御 ア プ リ パ ス に 含 ま れ る 電 子 署 名 は 作 成 者 と 検 証 者 が 同 一 な の で ,署 名 そ の も の は 汎 用 一 方 向 性 関 数 を 用 い た MAC(Message Authentication Code) でもよく,公開鍵暗 号に基づくものである必要はない。

*11アカウント作成日時等,当該アカウントに関する不変の情報で

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Cはsnに関連づけてmID, key, ustを保存する。 (R4) Csn, mIDおよびE(Pass)Sに送る。 (R5) SMのテーブルにデータを追加し,uID, mIDを登 録するとともに,sst← closedならびにperiod とする。 その後,Ssn, E(Pass)U に送る。 以上の手続きを図7に示す。 図7 登録手続き(その1) 4.2 登録手続き(その2) sn, E(Pass)を受け取ったU(UP)は,その情報を自 身の携帯機器UM に入力する必要があるが,S がそれ らをQRコード等,携帯機器で容易に読み取れる形式 にしておくことで入力の煩わしさを解消できる。Usn, E(Pass)UM(で動作する専用アプリ)に入力し, 以下の手続きを行う。 (R6) Uは認証シャッター制御パスワード(cpw)を任意に 選びUMに入力する。 (R7) UMはsn, cpw, E(Pass)Cに送る。 (R8) Cはsnからアカウントを特定し,そのアカウント情 報として登録されているustがhalfwayの場合に限 り,当該アカウントのkeyを用いてE(Pass)を復号 しPassを得る。その後,Passの正当性を検証し,正 しい場合は不可逆変換hを用いてhcpw← h(cpw), さらにust← activeとして登録する*13 (R9) CはPassをUMに返す。 (R10) UMは受け取ったPassを,機器固有の情報*14を鍵 として暗号化した上で保存する。 以上の手続きを図8に示す。 *12C が Pass を暗号化するのは,このときの一度きりで,しかも第 4.2 節で述べる通り,復号するのはC 自身であり,かつ,Pass 自体はそれほど大きなサイズにはならないので,key を使い捨 ての鍵として Vernam 暗号を採用することも可能である。

*13すでに ust = active となっている場合や,Pass が正しくない

場合は,登録失敗としてその時点で手続きを停止する。

*14機器固有の情報としては,MAC アドレスや UUID, IMEI, 携

帯電話機器であれば電話番号などが考えられる。 図8 登録手続き(その2) 4.3 認証シャッター操作手続き 認証シャッターを開ける/閉じるとき,ユーザはUM を用いて以下の操作を行う。 (C1) UMは機器固有の情報を用いて,Pass等,暗号化さ れているものを復号する。 (C2) U は認証シャッターを操作するサービスシステムの システムID(sysID),操作内容op∈ {open, close} cpwをUMに入力してPassとともにCに送る。 (C3) CはPassに含まれているmIDからアカウントを特 定し,Passおよびcpwの正しさを検証する。 (C4) 正しい場合はMにmIDおよびopを送る。 (C5) Mは,op = openであれば,シャッターを閉める 時刻tを定めperiod = tとし*15,そうでなけれ ばperiod = とする。その後sst, periodを更 新し,periodをCに返す。 (C6) CはperiodをUMに送る。 以上の手続きを図9に示す。 図9 認証シャッターの操作 4.4 サービスシステムへのログイン手続き 組織内ネットワークからログインする場合は本章冒 頭に示す図6のような通常の(固定)パスワード認証で あるが,外部ネットワークからの場合は,以下のような 認証シャッターの状態も考慮されたパスワード認証と なる。 *15認証シャッターを開けるのは,ユーザがこれからサービスシス テムを利用しようとしているときなので,数分程度で十分であ ると思われる。

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(A1) UUPを用いて,SでのユーザID(uID)およびパ

スワード(pw)をSに送る。

(A2) S はuIDをMに送り,当該ユーザに対する認証

シャッターの状態を照会する。

(A3) MはuIDをキーとしてsstおよびperiodを導出

し,時刻がperiodを過ぎていない場合は sst(= openまたはclosed)を,そうでなければclosedをS に返す。また,uIDが存在しない*16ときや,存在し

てもperiod =となっている場合はclosedをS に返す。

(A4) SMからopenが返ってきた場合のみ,(uID, pw)

Aに照会する。そうでない場合はログイン認証 失敗として,手続きを終了する。

(A5) A(uID, pw)に応じてyesまたはnoをSに返す。

(A6) Sはyesが返ってきた場合のみ,UP にサービスを 提供する。 多くのWebアプリケーションが,認証が成功した際, ユーザのブラウザにCookieを渡すように,認証シャッ ターも含めた場合でも,認証が成功した際 Cookieを ユーザに渡せば,ユーザがサイト内を移動する度に認証 手続きを実行する必要はない。そのため(A6)で認証が 成功した場合,SMに認証シャッターを閉じるリク エスト(closeShutter)を送ることにより,ユーザがログ インした後は他者によるなりすましログインを完全に防 ぐこともできる。 以上の手続きを図10に示す。 図10 外部ネットワークからのログイン

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考察

第3章および第4章で述べた提案システムの安全性お よび利便性,従来手法との比較結果,および,既存の固 定パスワード認証システムへの認証シャッターの導入方 *16uID がM に存在しないケースは 2 通りある。1 つは元々 A に 登録されていない場合であり,もう 1 つはA に存在していて も,そのユーザが第 4.1 節の登録手続きを実行していない場合 である。 法について述べる。 5.1 安全性および利便性 通常の固定パスワード認証システムは,ユーザのID およびパスワード,つまりユーザの記憶のみによる認証 であり,これが他者に知られると不正アクセスを許すこ とになる。第 2章で紹介した方法はいずれも固定パス ワード認証よりも安全性を高めることを目的としている が,マトリクス認証(第2.1節)は通信路の盗聴やショル ダーハッキングの対策としては有効であるが,記憶のみ の認証でありブルートフォース攻撃が可能である。乱数 表方式(第2.2節)は一見所有物認証にも思えるが,実 際には記憶認証と同等である。ハードトークンによる OTP認証(第2.3節)においては,そのトークンを持た ない限り正しいパスワード(OTP)を生成できないので, この認証方式は所有物認証となる。ソフトトークンの場 合は,そのトークンアプリをどのように登録するかによ る。電子メールにOTPを送信する方法については,そ の電子メールシステムの認証方式による。ユーザ本人の 携帯電話機器でないとアクセスできないのであれば所有 物認証になるが,PC等からID&パスワードで利用でき るようであれば記憶認証になる。 提案システムは,登録時にシャッター制御センターか らUMに制御アプリパスPassが渡され,それが専用ア プリにより機器の固有情報で暗号化保存される。した がって,機器に保存された情報が漏洩したとしても,そ れは他の機器では正しく復号されず使用できない。つま り,シャッター制御センターが正しいPassを受信すれ ば,それは正しい,つまり登録時と同一の機器から送ら れたことになり,これにより所有物認証になる。以上に より,他者による不正ログインが可能となるのは,ユー ザ所有の携帯機器UMが不正使用され,シャッターパ スワードおよびログインパスワードを知られたときと なる。 一方,提案システムの利便性は,携帯機器で動作する 専用アプリのユーザインターフェースによると思われ る。UMで行う処理は「登録」および「シャッターの操作 (open/close)」である。処理の流れを図11に示す。携帯 図11 UMの動作

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番号 比較項目(略記) マトリクス 乱数表 ハードトークン ソフトトークン 提案手法 (i) 認証要素 記憶 所有物※a 所有物 記憶※b 記憶 &所有物 (ii) 認証形態※c 2者間1要素 2者間2要素※a 2者間1要素 3者間2要素 (iii) 認証に必要な物体 なし 乱数表 ハードトークン スマートデバイス (iv) (iii)の物体の複製 — 容易 困難 やや困難 困難 (v) (iii)の物体の盗難に※d — 気づきにくい 気づきやすい

(vi) (iii)の物体の不正使用※e

— 容易 困難 (vii) (iii)の配付コスト※f — 高 低 表1 従来手法との比較 機器の場合,テキストの入力は比較的煩わしい作業とな るが,cpwは長くても8∼12文字程度であり,E(Pass) はQRコードを読み取るようにすればよく,しかも登録 時のみなので,全体的にユーザにとってストレスとなる ような作業は少ないと思われる。ハードトークンのよう な専用デバイスや紙媒体の表は紛失に気づきにくく,ま たそれを持ち歩く必要があるが,提案システムの場合は 専用デバイスではない,ユーザが一般に携帯している, または携帯しやすいスマートデバイスを利用するので, そのような問題は起こりにくいと考えられる。 5.2 従来手法との比較 ここでは,(固定)パスワード認証の安全性を強化する ために普及しているワンタイムパスワード(OTP)によ る従来の手法と,提案手法との比較を行う。ただし,従 来手法においては • OTPを認証に用いる場合であっても,それまでの (固定)パスワードは継続して使用する (つまり認証の際,ユーザID,(固定)パスワード, ワンタイムパスワードの3つを用いる) ものとする。これにより,強化のために追加された要素 のみを比較すればよいことになる。比較対象は,マトリ クス方式(第2.1節),乱数表方式(第2.2節),ハード・ ソフトトークン方式(第2.3節)とする。比較項目は (i) 認証要素 (ii) 認証形態 (iii) 認証に必要となる(物理的な)もの (iv) (iii)で必要なものの複製 (v) (iii)で必要なものが盗難された場合に気づくかど うか (vi) (iii)で必要なものが盗難された場合,不正使用され うるかどうか*17*18 *17ここでの「不正使用」とは「(iii) の物体に備わっている,認証 に必要な機能を利用すること」としている。つまり,乱数表で (vii) (iii)で必要なものの配付コスト とし,比較結果を表1に示す。 表1の内容については 以下にご留意されたい。 ※a. 乱数表方式は,一般に「所有物認証」とされること が多いが,記載内容が不変(かつ有限)であることか ら,記憶認証と同様の弱点も持っていると考えられ る。実際,乱数表(の内容)は複製が容易であり,覗 き見された場合,人間が記憶することは困難である が,写真等で保存するのは容易である。 ※b. ソフトトークンは,専用アプリのユーザ登録(有効 化)のためにユーザIDおよび(固定)パスワードを 送るものがほとんどであり,OTPの発行の際,デ バイス(所有物)認証をしているわけではないので, 記憶認証として分類している。そのため(iv)につい ては,記憶情報のみで複製できることから,ハード トークンや提案手法ほどの困難性を持たないと考え られるので「やや困難」としている。 ※c. 従来手法は「ユーザ⇔サービスシステム」の2者間 認証であるが,提案手法はシャッター制御センター も含めた3者間認証になっている。さらに提案手 法は,シャッター制御センターがユーザの携帯機器 UMのデバイス(所有物)認証も行う。そのため,提 案手法は従来手法に比べ,システム構成や認証プロ トコルが複雑にならざるを得ない。 ※d. 乱数表やハードトークンはOTPを得るための専用 物体であるため,盗難に気づくことは可能であるが, ユーザが所有しているスマートデバイスに比べ,盗 難に気づきにくいと思われる。 あればその内容を参照すること,ハード・ソフトトークンであ れば,そのアプリケーションを起動し OTP を表示させること であり,さらに,提案手法であれば,認証シャッターを操作す るリクエストを送信することである。 *18ここでは,(iii) の物体そのものにロックはかかっていない,ま たは,ロック解除が容易であるとする。

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※e. 乱数表やハードトークンは,(iii)の物体を持ってい るだけでその機能を利用でき,ソフトトークンにつ いても,脚注18により,(iii)の物体を持っているだ けで,その機能を利用できると考えられる。一方, 提案手法については,認証シャッターの操作に認 証シャッター制御パスワード(cpw)が必要なため, (iii)の物体を持っているだけでは,その機能を利用 できない。以上の理由により,提案手法については 「困難」とし,それ以外については「容易」とした。 ※f. ソフトトークンおよび提案手法は,それを使用でき る状態にする(初期設定を行う)のはユーザ自身で あり,システム管理側にとって配付そのもののコス トは低いと思われる。それに対して,乱数表および ハードトークンについては,使用できる状態のもの をサービスシステム管理者側が用意してユーザに安 全に配付する必要があるため,配布コストが高くな ると判断した。 5.3 既存システムへの導入方法 既に運用されている,固定パスワード認証を採用して いるサービスシステムSおよびその認証サーバAがあ るとき,そのサービスシステムに認証シャッターを導入 するためには,シャッター制御センター,シャッター管 理サーバを新規で設置する必要があるが,既存のシステ ムへの変更は,図6と図10の違いのみである。つまり, WebサーバSのスクリプトに, 組織外ネットワークからのログインリクエストにつ いては認証シャッターを適用すること; ログイン画面を通じて送られてきたuIDをMに送 り,シャッターの状態sstを照会すること; • Aからの結果authも併せて,ログイン認証の結果

を(auth = yes)∧ (sst = open)とすること; ログインが成功した場合はシャッターを閉じるリク エストをMに送ること; を加筆・修正することである。認証サーバAに変更を加 える必要は全くない。 5.4 複数のサービスシステムの場合 一般に大学組織内には複数のサービスシステムが設 置されており,しかも,それらの認証機能は同一の認証 サーバに担わせていることが多い。組織内のサービス システムのうち,複数のサービスシステムに認証シャッ ターを適用させる場合でも,シャッター制御センターお よびシャッター管理サーバは1つ設置すればよく,具 体的には図12のように構成することが可能であり,認 証サーバは共通であってもシャッター管理サーバはサー ビスシステム毎に独立させることも可能である。このと き,シャッター制御センターおよびシャッター管理サー バ内のアカウント構造(作り方/属性の種類)を工夫すれ ば,ユーザはサービスシステムを指定してそのシステム に対してのみシャッターを操作するなど,柔軟な認証コ ントロールが可能となる。 図12 複数のサービスシステムの場合の構成例

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まとめと今後の課題

本論文では,認証シャッターを適用した3者間-2要素 認証システムの仕組みおよび実現方法を述べた。提案シ ステムは,現在最も普及している固定パスワード認証の 安全性を,既存システムの変更を極力減らした上で高め ることを可能としており,昨今,大学組織等で望まれて いる「組織外ネットワークからの安全な利用」を実現す るための仕組みの1つとなるであろう。 昨今猛威を振るっている「リスト型攻撃」は,パスワー ドが漏洩した時点で,多くの不正ログインを成功させ, 民間サイトでは10万件を超える不正アクセスを許した 案件もあるが,大学組織で認証シャッターを構築すれば, たとえパスワードが漏洩したとしても,構成員がシャッ ターを開けた数分間以外,外部からの不正ログインを完 全に防ぐことが可能なので,このような外部からの不正 ログインの大多数を防ぐことが期待できる。 実際に運用する際,問題となるのは, ユーザが認証シャッター制御パスワード(cpw)を失 念した/他者に知られた; • UMを機種変更/紛失した; 場合の救済措置であるが,大学組織の場合は,大抵,組 織内ネットワークからは通常の固定パスワード認証が採 用されるので,内部からログインしてM, Cに再登録す ることで解決できる。しかしこの方法は自明なものであ

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り,ユーザが多くのサービスシステムに登録している場 合,1つひとつのサービスシステムに対する手間は多く なくとも,全体としてその手間は決して少なくない。そ こで,上記等の場合の救済措置プロトコルをユーザの利 便性を重要視した上で構築する必要があるが,これにつ いては今後の課題としたい。 謝辞 本研究の一部はJSPS科研費15K00181の助成を受け たものです。また,本論文を執筆するにあたり助言をい ただいた,株式会社セフティーアングルの糸井正幸氏, および,ウィルフォート国際特許事務所の大槻昇氏に, この場を借りて心より感謝申し上げます。

参考文献

[1] 糸 井 ,多 田:「 共 通 1-day パ ス ワ ー ド 認 証 シ ス テ ム」,2015年暗号と情報セキュリティシンポジウ ム(SCIS2015), 2C1-1, 2015. [2] 垣野内,木下,多田,糸井,山岸:「プライバシー を考慮したワンタイムパスワード認証システムの実 装」,2012年暗号と情報セキュリティシンポジウム (SCIS2012), 1E2-5, 2012. [3] 関西大学ITセンター:「利用者IDとパスワード」, http://www.itc.kansai-u.ac.jp/start /idpw.html [4] 慶應義塾ITC:「keio.jp におけるワンタイムパス ワードについて」, http://www.itc.keio.ac.jp/ja /keiojp otp.html [5] 神 戸 学 院 大 学 情 報 支 援 セ ン タ ー:「 学 内 シ ス テ ム 一覧,学内情報サービス(在学生・教職員対象)」, http://www.kobegakuin.ac.jp/facility /ipc/system-lst.html

[6] L. Lamport: Password authentication with in-secure communication, Communications of the

ACM, vol.24, no.11, pp.770-772, 1981.

[7] 南 山 大 学:「 学 外 か ら の 使 い か た (Can@home)」, http://office.nanzan-u.ac.jp/CAN /can usage.html [8] パスロジ株式会社:「【導入事例】学校法人 関西大学 様」, http://www.passlogy.com/introduction /02-2 [9] 佐賀大学総合情報基盤センター:「シングルサインオ ン、セキュリティ強化のための多要素認証導入」, http://www.cc.saga-u.ac.jp/plan /webnews.php?num=365 [10] サイオステクノロジー株式会社:「サイオスが開発 したワンタイムパスワード認証システム,慶應義塾 の認証基盤に採用 ∼ Shibboleth(シボレス)認証用 ワンタイムパスワードモジュールとワンタイムパス ワード用秘密鍵発行システムを提供 ∼」, http://i.sios.com/news/press /20141022-otp.html [11] 高田:「Authentication shutter: 個人認証に対する 攻撃を遮断可能する対策の提案」,コンピュータセ キュリティシンポジウム(CSS)2014, 3C1-3, 2014.

参照

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