Ⅰ チャトゲコナジラミの発生生態と防除
1.はじめに
チャトゲコナジラミは、京都府で平成 16 年に国内で初めて発生が確認され、福岡県で は平成 21 年7月に八女市星野村で発生が確認された新害虫である。平成 24 年には県内主 要産地で発生が認められている。 本害虫は当初、ミカントゲコナジラミ Aleurocanthus spiniferus(チャ系統)として紹介さ れていたが、ミカントゲコナジラミとは形態的に異なることが明らかになり、和名および 学名が変更された(チャトゲコナジラミ、Aleurocanthus camelliae に変更)。本害虫の被害 は幼虫による葉の吸汁加害、分泌物によるすす病の発生、成虫の大量飛翔による管理作業 の妨げが問題となっている。発生地域では本種は密度が爆発的に増加すること、生息域が 急激に拡大することから早急な防除対策が必要である。また、未発生園では侵入予防対策 が必要である。2.発生生態
県内における成虫の年間発生回数は3~4回である。成虫以外の生育ステージ(主に老 齢幼虫)で越冬し、成虫発生盛期は越冬世代が4月下~5月上旬、第1世代が7月中~下 旬、第2世代が9月上~中旬、第3世代が 10 月頃である。同じ地域でもわずかな立地条件 等により発生時期に差が生じる。 産卵は葉裏にのみ行い、ふ化した1齢幼虫は葉裏を少し移動した後、定着する。定着後 は足が退化するため4齢幼虫(蛹ともいう)まで移動せず、その後羽化する。卵は淡黄色 の曲玉状で長径 0.2mm、1齢幼虫は黒色で細長く体長 0.3mm といずれも非常に小さく肉眼 での観察は難しいが、2齢幼虫以降は光沢のある黒色の小判状となり、さらに周囲を白色 のロウ物質で縁取られるため肉眼でも発見しやすい(写真1)。体長は4齢幼虫で 0.8~ 1.2mm となる。幼虫は葉を吸汁加害するとともに、甘露を分泌する。甘露が付着した下位 葉にはすす病が発生するため、本害虫多発ほ場ではすそ部が黒くなる(写真2)。 成虫は体長 0.9~1.3mm で、体色は橙黄色であるが紫褐色に白紋の翅を持ち、肉眼では灰 色に見える(写真3)。ミカントゲコナジラミとは前翅にある白紋の数が異なる。 成虫は新芽によく群がる(写真4)。飛翔することで生息域を広げると考えられるが、 飛翔範囲は隣接ほ場程度であり、遠方への生息域拡大は主に人為的分散によると考えられ ている。そのため、未発生園への拡散防止のために以下の対策をとる。
3.防除対策
(1)未発生地への拡散防止策 ①車や機械による拡散の防止 成虫は人や機械が近づくと舞い上がり作業者の衣服や機械等に付着し(写真5)、その まま人や機械とともに移動し近隣の未発生地域へ分散する危険性がある。そのため、発生 ほ場に立ち入った後は必ず成虫の付着が無いことを確認するとともに、付着していた場合 は確実に払い落とす。 ②苗による拡散の防止 卵や幼虫が寄生した苗の移動に伴って、相当な長距離であっても本害虫の分散が起こる 可能性がある。そのため、発生地域では未発生地域へ苗を出荷しないようにする。また、 平成 28 年 9 月現在、沖縄県を除く主な茶の生産県で発生が確認されている。なお、本種は チャの他にツバキやサザンカ、ヒサカキ、シキミ等にも寄生する。 写真1:4 齢幼虫 写真2:すす病発生ほ場 写真3:成虫 写真4:新芽に群がる成虫 写真5:衣服に付着した成虫(2)既発生地での防除対策 1)薬剤による防除 ①アプロードエースフロアブル、ダニゲッターフロアブル、ハチハチ乳剤、コルト顆粒 水和剤、ディアナ SC 等 薬剤による防除は1~2齢の若齢幼虫期で効果が高い。しかし、実際は卵~若齢幼虫が 混在しているため、殺卵効果も高い薬剤を使用することが望ましい。防除適期の目安は成 虫の発生が終息した頃である(図1)。アプロードエースフロアブル、ダニゲッターフロ アブル、ハチハチ乳剤は殺卵・殺幼虫効果がともに高い。本害虫は主にすそ部の葉裏に寄 生するため、散布前にすそ刈りすることで薬液がかかりやすくする。 ②高度精製マシン油乳剤 本害虫は成虫以外の生育ステージで越冬するため、葉裏に様々な齢の幼虫が混在してい る。このため冬期は、幼虫の気門を封鎖し物理的に防除するマシン油の防除効果が高い。 登録があるのはトモノールS、ラビサンスプレー、アタックオイルで、冬期に2回以上散 布することで夏秋期の化学合成農薬と同等の防除効果が得られる。また、幼虫の排泄物に より発生するすすを脱落しやすくする効果もある。ただし、冬期(11 月~3月上旬)のマ シン油散布は赤焼病の発生を助長することから、10 月中(秋整枝の粗切り後すぐ)に散布 するよう努める。また、夏期(5~9月)の散布でも効果が高い。 2)耕種的防除 本害虫は主にすそや茶株内の古葉の裏に産卵し、ふ化後も大きく移動せず定着する。し たがって、中切りや深刈り、すそ刈りにより葉とともに多くの卵や幼虫を除去することが できる。また、葉が少なくなることで薬剤防除の際に薬液が葉裏にかかりやすくなるため 防除効果が高まる。 なお、除去した寄生葉からも成虫が羽化するため、寄生葉は土とよく混和するなどの処 分を行う。 3)天敵による防除 古くから国内に生息しているミカントゲコナジラミは、カンキツの重要害虫であった。 大正 14 年に中国より天敵シルベストリコバチ(写真6)が導入され、全国的に大きな被害 をもたらしていたミカントゲコナジラミを低密度に抑えることに成功した。近縁種のチャ トゲコナジラミにもシルベストリコバチが寄生する(写真7)ため、有効活用が期待され た。そこで、福岡県農林業総合試験場八女分場では効果的な防除法を開発するため、年間の 発生回数、時期などの生態を調査し、有力な天敵であるシルベストリコバチに影響の小さい
写真6:シルベストリコバチ 成虫(体長約 0.7mm) 写真7:シルベストリコバチの 脱 出 孔 農薬(表1-1,1-2)を組み合わせた「シルベストリコバチ温存型」の IPM 体系を構築 した。本防除体系の実施により、天敵であるシルベストリコバチを利用してチャトゲコナジ ラミを低密度に抑えることができる。県内ではこの「シルベストリコバチ温存型」の IPM 体 系に基づいた防除基準を作成、推奨した結果、本種の発生は減少しつつある。なお、本種の 天敵はシルベストリコバチの他にクサカゲロウなどの捕食性天敵が知られており、県内茶 園でも発生が確認されている。 図1 成虫発生と防除適期(模式図)
注 . I O B C( 国 際 生 物 防 除 機 構 ) の 評 価 基 準 を 参 考 に 、 4 8 時 間 後 の 死 虫 率 3 0 % 未 満 を 影 響 な し 、 30 % 以 上 80 % 未 満 を 影 響 小 、 80 % 以 上 9 9 % 未 満 を 影 響 有 り 、 9 9% 以 上 を 影 響 大 と し た 。 24時間後 48時間後 有機リン系 スプラサイド乳剤40 1,000 100.0 100.0 アクテリック乳剤 1,000 100.0 100.0 オルトラン水和剤 1,000 80.0 100.0 カーバメート系 ランネート45DF 1,000 90.0 97.4 ピレスロイド系 テルスターフロアブル 1,000 60.0 94.7 ネオニコチノイド系 スタークル顆粒水溶剤 2,000 56.1 69.2 ダントツ水溶剤 2,000 19.0 36.5 バリアード顆粒水和剤 2,000 10.0 58.3 ネオニコチノイド系+マクロライド゙系 ワークワイド顆粒水和剤 2,000 52.5 81.6 ネライストキシン系 パダンSG水溶剤 1,500 90.0 95.8 昆虫成長制御剤(IGR剤) カスケード乳剤 4,000 4.5 4.3 アプロード水和剤 1,000 0.0 0.0 ファルコンフロアブル 4,000 2.4 2.3 アタブロン乳剤 2,000 6.7 8.3 マッチ乳剤 2,000 16.7 25.0 プルートMC 1,000 0.0 0.0 IGR剤+殺ダニ剤 アプロードエースフロアブル 1,000 0.0 0.0 フェニルピロール系 コテツフロアブル 2,000 52.5 81.6 マクロライド系 アファーム乳剤 1,000 5.0 7.9 表1-1 シルベストリコバチに対する薬剤の殺虫活性(福岡八女) 供試薬剤(商品名) 希釈倍率 (倍) 殺虫活性(補正死亡率%) 表 1-1 シルベストリコバチに対する薬剤の殺虫活性(福岡八女,2010~2014)
24時間後 48時間後 その他殺虫剤 トモノールS 50 9.8 17.8 ハチハチ乳剤 1,000 32.5 56.4 ウララDF 1,000 2.4 2.3 ガンバ水和剤 1,000 16.7 41.7 キラップフロアブル 2,000 16.7 25.0 フェニックス顆粒水和剤 2,000 0.0 0.0 ディアナSC 2,500 15.4 48.7 コルト顆粒水和剤 2,000 0.0 2.6 サムコルフロアブル10 2,000 0.0 0.0 殺ダニ剤 ダニゲッターフロアブル 2,000 0.0 10.5 ミルベノック乳剤 1,000 2.5 2.6 ダニサラバフロアブル 1,000 2.5 7.7 バロックフロアブル 2,000 0.0 11.5 オマイト乳剤 1,500 3.6 23.1 マイトコーネフロアブル 1,000 0.0 7.7 バリュースターフロアブル 1,500 21.4 57.7 スターマイトフロアブル 2,000 0.0 2.6 テデオン乳剤 500 0.0 0.0 殺菌剤 ダコニール1000 700 2.6 2.7 オンリーワンフロアブル 2,000 0.0 10.3 インダーフロアブル 5,000 0.0 8.3 カスミンボルドー 1,000 10.0 12.5 コサイド3000 1,000 0.0 0.0 ベフドー水和剤 500 0.0 0.0 アミスター20フロアブル 2,000 0.0 7.7 表1-2 シルベストリコバチに対する薬剤の殺虫活性(福岡八女) 殺虫活性(補正死亡率%) 商品名 希釈倍率 (倍) 表 1-2 シルベストリコバチに対する薬剤の殺虫活性(福岡八女,2010~2014)
Ⅱ ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ の 発 生 生 態 と 防 除
1 . は じ め に
近 年 、福 岡 県 を は じ め 全 国 の 茶 産 地 で ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ Pseudaulacaspis pentagona (Targioni)が 多 発 し 、問 題 と な っ て い る 。平 成 19 年 に は 、干 ば つ に よ る 被 害 に 加 え て ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ に よ る 被 害 を 受 け 、 枯 死 株 が 散 見 さ れ る 茶 園 も み ら れ た 。 多 発 の 原 因 は 明 ら か で は な い が 、 合 成 ピ レ ス ロ イ ド 剤 に よ る 天 敵 数 の 減 少 や 、幼 虫 ふ 化 時 期 の 少 雨 に よ り 定 着 率 が 高 ま っ た こ と な ど が 考 え ら れ る 。 加 え て 、 従 来 の 薬 剤 で は 防 除 適 期 が ふ 化 最 盛 期 後 の 3 日 程 度 と 短 い た め 適 期 防 除 が 難 し い こ と や 、 散 布 ム ラ を 生 じ て い る こ と な ど が 多 発 を 長 期 化 さ せ て い る 原 因 と な っ て い る 。2 . 発 生 生 態
越 冬 は 雌 成 虫 ( 写 真 1 ) で 行 う 。 年 間 発 生 回 数 は 福 岡 県 で は 標 高 の 高 い 一 部 地 域 を 除 き 3 回 で 、 幼 虫 発 生 盛 期 は 第 1 世 代 が 5 月 中 ~ 下 旬 、 第 2 世 代 は 7 月 中 ~ 下 旬 、 第 3 世 代 は 9 月 中 ~ 下 旬 で あ る 。 生 育 は 気 温 の 影 響 を 受 け る た め 、 平 坦 部 に 比 べ 標 高 の 高 い 山 間 部 で は 10 日 程 度 発 生 時 期 が 遅 れ る 。ま た 同 じ 地 域 で も 、立 地 条 件 や 整 せ ん 枝 、 被 覆 等 の 栽 培 状 況 に よ っ て 発 生 時 期 に 差 が 生 じ る 。 雌 成 虫 の 介 殻 内 で ふ 化 し た 幼 虫 ( 写 真 2 ) は 歩 行 や 風 に 乗 っ て 移 動 し た 後 、 樹 皮 に 定 着 す る 。 定 着 後 、 雄 は ま ゆ ( 写 真 3 ) を つ く っ て 蛹 に な り 、 羽 の あ る 成 虫 と な る 。 一 方 、 雌 は 介 殻 を 作 り 、 そ の 中 で 一 生 を 過 ご す 。 産 卵 数 ( 写 真 4 ) は チ ャ の 品 種 に よ り 異 な る が 、 概 ね 50~ 150 粒 と 増 殖 率 が 極 め て 高 い た め 、 防 除 を 怠 る と 1 世 代 で 多 発 を 招 く 。 は な は だ 広 食 性 で 、 チ ャ 以 外 に も 多 く の 樹 木 に 寄 生 す る 。 被 害 は 、 幼 虫 や 雌 成 虫 が 樹 液 を 吸 汁 し て 加 害 す る た め 、 新 芽 が 伸 び ず 、 葉 が 黄 化( 写 真 5 )、落 葉 し 、さ ら に は 枝 幹 が 枯 死 し て 著 し く 茶 園 が 荒 廃 す る( 写 真 6 )。 こ の よ う な 茶 園 で の 収 量 は ほ と ん ど 皆 無 と な る 。 写 真 1 : 雄 成 虫 と 雌 成 虫 写 真 2 : ふ 化 幼 虫 写 真 3 : 雄 繭 寄 生 枝
3 . 防 除 対 策
( 1 ) 薬 剤 に よ る 防 除 ① プ ル ー ト MC 本 剤 を ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ 雌 成 虫 の 越 冬 休 眠 期 ( 1 月 か ら 3 月 ) に 散 布 す る と 、5 月 の 第 1 世 代 で 98% 、7 月 の 第 2 世 代 で 78% の 幼 虫 に 対 し 殺 虫 作 用 を 示 し た 。 散 布 時 期 を 検 討 し た 試 験 で は 、 1 月 下 旬 と 3 月 下 旬 に 散 布 し た 場 合 で は 防 除 効 果 に 差 は み ら れ な か っ た 。 ま た 、 本 剤 散 布 と 散 布 翌 年 の 中 切 り を 組 み 合 わ せ た 場 合 、 散 布 後 3 年 間 、 発 生 は 低 密 度 で 推 移 し た 。 本 剤 散 布 後 の 雄 繭 発 生 程 度 は 、 散 布 翌 年 ま で 、 散 布 を 2 回 実 施 し た 慣 行 防 除 と 同 等 か そ れ 以 下 で あ り 、本 種 に 対 す る 本 剤 以 外 の 防 除 は 2 年 間 必 要 な か っ た( 図 1 )。 こ れ ら の こ と か ら 、本 剤 は 農 閑 期 の 冬 季 散 布 に よ り 労 力 分 散 が 図 ら れ る こ と 、 長 期 密 度 抑 制 に よ り 薬 剤 散 布 回 数 の 削 減 が 可 能 な 薬 剤 で あ る 。 な お 、 空 き 容 器 や 使 い 残 し た 剤 は メ ー カ ー が 回 収 す る 必 要 が あ る の で 、 農 薬 販 売 店 に 持 ち 込 む 等 、 適 切 に 処 理 す る 。 本 剤 は 蚕 に 対 し て 強 い 毒 性 を 有 し て い る た め 、 付 近 に 桑 園 や 養 蚕 施 設 が あ る 場 所 で は 使 用 し な い 。 散 布 が 制 限 さ れ る 区 域 が あ る た め 、 注 意 が 必 要 で あ る 。 ② ア プ ロ ー ド エ ー ス フ ロ ア ブ ル 、 ス プ ラ サ イ ド 乳 剤 40、 ダ ー ズ バ ン 乳 剤 40、 シ ョ ッ ト ガ ン 、 カ ル ホ ス 乳 剤 防 除 時 期 は 、 ふ 化 直 後 の 1 齢 幼 虫 期 が 最 も 効 果 が 高 い 。 齢 が 進 む と 虫 体 が 白 い ロ ウ 物 質 で 被 わ れ 、 薬 剤 が 虫 体 に か か り に く く な る た め 、 著 し く 効 果 が 落 ち る 。 こ の 防 除 適 期 の 幅 は IGR 剤 の ア プ ロ ー ド 水 和 剤 で 10 日 程 度 、 有 機 リ ン 剤 の ス プ ラ サ イ ド 乳 剤 40 で は 5 日 程 度 で あ る ( 表 1 ) 。 防 除 は 茶 株 内 の 枝 幹 に 十 分 か か る よ う に 行 う こ と が 必 要 で 、 ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ 防 除 用 の 専 用 噴 口 を 用 い て 1,000L / 10a 程 度 散 布 す る 。 写 真 4 : 卵 写 真 5 : 雌 寄 生 状 況 写 真 6 : ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ の 被 害 で 荒 廃 し た 茶 園発 生 世 代 別 で は 、 第 1 世 代 発 生 時 期 が 最 も 防 除 効 果 が 高 い 。 第 2 世 代 、 第 3 世 代 と な る に つ れ て 幼 虫 ふ 化 期 の ば ら つ き が 大 き く な る た め 、 1 回 の 薬 剤 散 布 で は 十 分 な 防 除 効 果 を あ げ に く く 、 2 回 以 上 の 薬 剤 散 布 が 必 要 と な る 。 な お 、 2 回 の 薬 剤 散 布 を 行 う 場 合 、 薬 剤 の 特 性 を 考 慮 し て IGR 剤 、 有 機 リ ン 剤 の 順 で 行 い 、 散 布 間 隔 を 7 ~ 14 日 あ け る と 効 果 が 高 い 。 ③ ス タ ー ク ル 粒 剤 / ア ル バ リ ン 粒 剤 最 適 な 散 布 時 期 は 、 は っ き り し て い な い が 幼 虫 ふ 化 最 盛 期 の 20~ 40 日 前 の 散 布 で 効 果 が 高 い 事 例 が み ら れ る 。 う ね 間 に 散 布 し て 土 壌 と 混 和 さ れ た 後 、 水 に 溶 け 出 し た 薬 剤 が 根 か ら 吸 収 さ れ る こ と に よ り 効 果 を 発 揮 す る た め 、 地 上 部 の 生 育 が 旺 盛 な 時 期 に 散 布 す る の が 効 果 的 で あ る 。 散 布 後 に 干 ば つ が 続 く と 効 果 が 発 揮 さ れ な い た め 、 適 宜 、 灌 水 す る 。 ( 2 ) 水 散 布 に よ る 防 除 ( 宮 崎 茶 支 : 2007) 茶 園 に 散 水 し 、 ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ 雌 成 虫 の 介 殻 内 部 を 高 湿 度 や 湛 水 状 態 に す る こ と で 卵 を 腐 ら せ る 。 茶 株 内 に 設 置 し た ス プ リ ン ク ラ ー や 散 水 チ ュ ー ブ( 地 上 30cm 程 度 ) を 利 用 し て 、 日 中 は 10 分 散 水 、 20 分 無 か ん 水 を 繰 り 返 す 。 ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ の ふ 化 が 始 ま る 頃 か ら 15~ 16 日 間 散 水 す る こ と で 薬 剤 処 理 と ほ ぼ 同 等 の 防 除 効 果 が あ る 。 た だ し 、 本 処 理 の 実 施 に は 十 分 な 水 量 の 確 保 ( 10a あ た り 一 日 12~ 15t ) が 必 要 で あ る 。 ま た 、 散 水 に よ る 湿 害 が 懸 念 さ れ る 茶 園 で は 排 水 対 策 を 実 施 す る 。
4 . ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ 幼 虫 の ふ 化 盛 期 予 測
幼 虫 ふ 化 盛 期 の 把 握 法 と し て は 、 寄 生 枝 の 雌 介 殻 内 の ふ 化 状 況 を 調 査 す る か 、 茶 株 内 に 粘 着 ト ラ ッ プ を 設 置 し 、 幼 虫 捕 獲 数 の ピ ー ク を 調 査 す る 方 法 が あ る が 、 い ず れ も 実 体 顕 微 鏡 に よ る 観 察 が 必 要 で あ り 熟 練 を 要 す る 。 近 年 、 有 効 積 算 温 度 と 発 育 零 点 が 明 ら か に さ れ 、 第 1 世 代 幼 虫 の ふ 化 最 盛 日 を 1 月 1 日 以 降 の 有 効 積 算 温 度 に 基 づ い て 推 定 す る 方 法 が 確 立 さ れ た ( 表 2 ) 。 第 2 世 代 、 第 3 世 代 に つ い て も 、 前 世 代 の ふ 化 最 盛 日 を 起 算 日 と し て 推 定 す る 方 法 が 確 立 さ れ て い る 。5 . ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ の 天 敵
ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ に は 土 着 の 天 敵 が 多 く 、 チ ビ ト ビ コ バ チ ( 写 真 7 ) や サ ル メ ン ツ ヤ コ バ チ 、 ナ ナ セ ツ ト ビ コ バ チ ( 写 真 8 ) な ど の 寄 生 蜂 、 タ マ バ エ や ヒメ ア カ ホ シ テ ン ト ウ な ど の 捕 食 性 昆 虫 、し ょ う 紅 菌 な ど 計 37 種 類 が 知 ら れ て い る 。 本 県 の 茶 園 で は 、 チ ビ ト ビ コ バ チ が 第 一 優 占 種 と な っ て い る 場 合 が 多 い よ う で あ る が 、 サ ル メ ン ツ ヤ コ バ チ が 優 占 種 と な っ て い る 茶 園 も み ら れ る 。 天 敵 類 も ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ 同 様 、 薬 剤 の か か り に く い 株 内 に 生 息 し て い る こ と か ら 、 慣 行 防 除 園 で も 天 敵 寄 生 率 が 高 い 事 例 が み ら れ る 。 し か し な が ら 、 天 敵 に 対 し て 極 め て 高 い 殺 虫 作 用 を 示 す 薬 剤 が あ る ( 表 3 ) た め 、 天 敵 の 羽 化 ・ 産 卵 時 期 ( 図 2 ) で あ る ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ 幼 虫 ふ 化 最 盛 期 の 一 週 間 前 後 は 、 天 敵 類 へ の 影 響 が 小 さ い 薬 剤 の 選 択 や 、 影 響 の 小 さ い 散 布 法 に よ り 天 敵 の 保 護 に 努 め る こ と が 大 切 で あ る 。 写 真 7 : チ ビ ト ビ コ バ チ 写 真 8 : ナ ナ セ ツ ト ビ コ バ チ 図 1 クワシロカイガラムシに対 する薬 剤 散 布 年 と翌 年 の防 除 効 果 (平 成 18~19 年 ) 注 ) 1 .プ ル ー ト M C は 平 成 1 8 年 2 月 2 7 日 に の み 散 布 。ア プ ロ ー ド エ ー ス フ ロ ア ブ ル は 平 成 1 8 年 5 月 2 9 日 、 平 成 1 9 年 5 月 2 1 日 に 散 布 。 2 . 雄 ま ゆ 発 生 指 数 は 、 平 成 1 8 年 は 6 月 1 9 日 、 8 月 2 3 日 、 1 0 月 1 3 日 に 、 平 成 1 9 年 は 6 月 2 0 日 、 8 月 14 日 、 1 0 月 1 1 日 に 発 生 程 度 を 4 ~ 0 ( 4 : 甚 、 3: 多 、 2 : 中 、 1 : 少 、 0 : 無 ) の 5 段 階 で 達 観 調 査 し た 平 均 値 。 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 第1世代 第2世代 第3世代 第1世代 第2世代 第3世代 平成18年 平成19年 雄 ま ゆ 発 生 指 数 調 査 世 代 プルートMC アプロードエースF 無散布
平均 SD 5月23日 2.8 1.0 65 5月26日 0.3 0.1 25 アプロード水和剤 1000倍 5月30日 2.4 1.0 65 6月1日 1.0 0.1 45 6月5日 14.4 5.3 100 5月23日 10.6 1.0 95 5月26日 6.7 0.6 80 スプラサイド乳剤40 1000倍 5月30日 6.8 0.1 90 6月1日 23.0 1.3 100 6月5日 30.3 1.7 100 注1. 防除最適日:5月26日 注2. SD:標準偏差 表1 薬剤散布日の違いによる防除効果(静岡茶試.1995を一部改変) 薬剤名及び散布濃度 散布日 雄繭コロニー数 雄繭発生 株率(%) 発育零点 起算日 有効積算温度 発育零点 起算日 有効積算温度 注)30℃を超えた時間帯の全温度を除く 表2 第1世代幼虫のふ化最盛期の予測日(野茶研.2001、静岡茶試.2001) 第1世代 第2世代 10.5℃ 1月1日 287日度 10.8度 前世代 最盛日 688日度注)
チビトビコバチ ナナセツトビコバチ (%) (%) テルスター水和剤 1,000 69.4 100.0 ランネート45DF 1,000 - 72.1 スプラサイド乳剤 1,000 61.2 100.0 オルトラン水和剤 1,000 19.1 47.8 ダントツ水溶剤 2,000 53.1 33.9 バリアード顆粒水和剤 2,000 19.8 30.4 モスピラン水溶剤 2,000 0.0 6.4 ファルコンフロアブル 4,000 0.0 16.4 マッチ乳剤 2,000 0.0 - アプロードエースフロアブル 1,000 14.9 0.0 ミルベノック乳剤 1,000 4.1 9.5 マイトコーネフロアブル 1,000 0.0 - カネマイトフロアブル 1,000 - 13.0 コテツフロアブル 2,000 34.7 64.1 アファーム乳剤 2,000 0.0 0.0 スピノエースフロアブル 4,000 18.4 58.2 注)殺虫活性は処理枝接触法により24時間後に調査した。 表3 チビトビコバチ成虫とナナセツトビコバチ雌成虫 に対する農薬の殺虫活性(福岡八女.2004年) 殺虫活性(補正死亡率) 商 品 名 希釈倍率 (倍) 注 . I O B C ( 国 際 生 物 防 除 機 構 ) の 評 価 基 準 を 参 考 に 、 4 8 時 間 後 の 死 虫 率 3 0 % 未 満 を 影 響 な し 、 3 0 % 以 上 8 0 % 未 満 を 影 響 小 、 8 0 % 以 上 9 9 % 未 満 を 影 響 有 り 、 9 9 % 以 上 を 影 響 大 と し た 。 図 2 チ ビ ト ビ コ バ チ と サ ル メ ン ツ ヤ コ バ チ の 発 生 消 長 ( 八 女 市 、 2005 年 ) (頭/トラップ) 0 20 40 60 80 4/1 4/20 5/10 6/2 6/21 7/12 8/1 8/22 9/12 10/3 10/24 トラップ設置日 天 敵 類 チビトビコバチ サルメンツヤコバチ 第 1 世 代 ↓ 第 2 世 代 ↓ 第 3 世 代 ↓
注 ) 2005 年 の ク ワ シ ロ カ イ ガ ラ ム シ 幼 虫 ふ 化 盛 期 ( 図 中 の 下 矢 印 ) は 、 第 1世 代 が 5月 20日 、 第 2世 代 が 7月 27日 、 第 3世 代 が 9月 21日 で あ る 。
Ⅲ チ ャ ノ ナ ガ サ ビ ダ ニ ・ チ ャ ノ ホ コ リ ダ ニ の
発 生 生 態 と 防 除
1 . は じ め に
近 年 は 中 山 間 地 の 一 部 の 茶 園 で 発 生 し て い た チ ャ ノ ナ ガ サ ビ ダ ニ ・ チ ャ ノ ホ コ リ ダ ニ が 、 県 内 全 域 の 茶 園 で 多 発 し 問 題 と な っ て い る 。 多 発 の 原 因 は 明 ら か で は な い が 、 薬 剤 防 除 体 系 の 変 化 が 原 因 と 考 え ら れ て い る 。2 . 発 生 生 態
チ ャ ノ ナ ガ サ ビ ダ ニ Acaphylla theavagrans 成 虫 で 越 冬 し 、 成 虫 の 体 長 は 0.15~ 0.20 ㎜ で 、橙 ~ 橙 黄 色 で 細 長 く 体 の 前 端 部 は 幅 広 い 。 新 葉 ・ 古 葉 の 両 方 に 寄 生 す る が 、 や や 成 熟 し た 新 葉 を 好 む 。 加 害 部 は 茶 褐 色 と な り 葉 が 萎 縮 し 裏 面 に わ ん 曲 す る 。 発 生 は 4 ~ 6 月 と 9 ~ 11 月 ( 図 1 ~ 図 3 ) に 多 い 。 チ ャ ノ ホ コ リ ダ ニ Polyphagotarsonemus latus 成 虫 で 越 冬 し 、雌 成 虫 の 体 長 は 0.2~ 0.3 ㎜ で 、 雄 は や や 小 さ い 。 別 名 チ ャ ノ キ イ ロ ダ ニ と も 呼 ば れ る 。 卵 は 表 面 に 白 色 の 小 顆 粒 が あ り 、 形 は ラ グ ビ ー ボ ー ル に 似 て い る 。 新 葉 の 裏 面 に 群 生 し 、 未 熟 な 葉 を 好 む 。 ナ ス な ど 野 菜 類 に も 寄 生 す る 。 加 害 さ れ た 葉 は 、 裏 面 が 褐 変 し 縮 れ る 。 発 生 は 、 秋 芽 生 育 期 の 8 月 中 旬 頃 か ら 多 く な る ( 図 4 ~ 図 6 ) 。3 . 防 除 対 策
チ ャ ノ ナ ガ サ ビ ダ ニ は 、 春 期 に 防 除 す る と 一 番 茶 期 か ら 二 番 茶 期 の 発 生 が 少 な く な る た め 、 常 発 園 で は 防 除 効 果 の 高 い 薬 剤 ( オ マ イ ト 乳 剤 、 高 度 精 製 マ シ ン 油 乳 剤 ( ト モ ノ ー ル S) 、 ミ ル ベ ノ ッ ク 乳 剤 、 ダ ニ ゲ ッ タ ー フ ロ ア ブ ル 等 ) を 一 番 チャノナガサビダニ チャノナガサビダニ被害葉 チャノホコリダニ被害葉茶 摘 採 前 に 散 布 す る 。 ま た 、 一 番 茶 摘 採 後 に 発 生 が み ら れ た と き は 速 や か に 防 除 す る 。 チ ャ ノ ホ コ リ ダ ニ は 秋 芽 生 育 期 に 薬 剤 を 散 布 す る 。 防 除 薬 剤 と し て は 、 サ ン マ イ ト フ ロ ア ブ ル 、 コ テ ツ フ ロ ア ブ ル 、 ミ ル ベ ノ ッ ク 乳 剤 、 ハ チ ハ チ 乳 剤 等 の 効 果 が 高 い 。 散 布 に 当 た っ て は 、 薬 液 が 葉 裏 に 十 分 か か る よ う 留 意 す る と と も に 、 10a 当 た り 400 ㍑ ( 成 木 園 ) の 散 布 量 を 厳 守 す る 。 図 1 弧 状 仕 立 て ・ 煎 茶 園 に お け る チ ャ ノ ナ カ ゙ サ ビ タ ゙ ニ の 発 生 消 長 ( 八 女 市 黒 木 町 , 1 9 98 年 ) 図 2 弧 状 仕 立 て ・ 玉 露 園 に お け る チ ャ ノ ナ カ ゙ サ ビ タ ゙ ニ の 発 生 消 長 ( 八 女 市 黒 木 町 , 1 9 98 年 ) 100 葉 当 た り 寄 生 虫 数 ( 頭 ) 寄 生 葉 率 ( % ) 寄 生 葉 率 ( % ) 100 葉 当 た り 寄 生 虫 数 ( 頭 )
図 3 自 然 仕 立 て ・ 玉 露 園 に お け る チ ャ ノ ナ カ ゙ サ ビ タ ゙ ニ の 発 生 消 長 ( 八 女 市 黒 木 町 , 1 9 98 年 ) 図 4 弧 状 仕 立 て ・ 煎 茶 園 に お け る チ ャ ノ ホ コ リ タ ゙ニ の 発 生 消 長 ( 八 女 市 黒 木 町 , 1 9 99 年 ) 寄 生 葉 率 ( % ) 100 葉 当 た り 寄 生 虫 数 ( 頭 ) 100 葉 当 た り 寄 生 虫 数 ( 頭 ) 寄 生 葉 率 ( % )
図 5 弧 状 仕 立 て ・ 玉 露 園 に お け る チャノホコリダニの 発 生 消 長 ( 八 女 市 黒 木 町 , 1 9 99 年 ) 図 6 自 然 仕 立 て ・ 玉 露 園 に お け る チャノホコリダニの 発 生 消 長 ( 八 女 市 黒 木 町 , 1 9 9 9年 ) 寄 生 葉 率 ( % ) 100 葉 当 た り 寄 生 虫 数 ( 頭 ) 寄 生 葉 率 ( % ) 100 葉 当 た り 寄 生 虫 数 ( 頭 )
Ⅳ ナ ガ チ ャ コ ガ ネ の 発 生 生 態 と 防 除
1 . は じ め に
ナ ガ チ ャ コ ガ ネ Heptophylla pi cea は 南 西 諸 島 を 除 く ほ ぼ 日 本 全 土 に 分 布 し 、 茶 の ほ か 林 木 の 苗 木 の 根 を 加 害 す る 。茶 で は 1974 年 頃 静 岡 県 榛 原 郡 中 川 根 町 の 一 部 で 被 害 が 確 認 さ れ た の を き っ か け に 、 静 岡 県 中 西 部 、 埼 玉 県 、 京 都 府 、 佐 賀 県 な ど で 被 害 が 確 認 さ れ て い る 。 本 県 で は 2003 年 頃 か ら 被 害 が 散 見 さ れ 始 め た 。 本 害 虫 の 雄 成 虫 は 飛 翔 筋 を 持 つ た め 、 全 て の 個 体 が 飛 翔 で き る 。 一 方 、 雌 成 虫 に は 飛 翔 筋 を 持 つ 個 体 と 持 た な い 個 体 が 存 在 す る こ と が 知 ら れ て い る 。 八 女 分 場 内 で 採 取 し た 雌 成 虫 は 、飛 翔 筋 を 持 た な い( 飛 べ な い )個 体 が 97.9% を 占 め る が 、 飛 翔 筋 を 持 つ 個 体 も わ ず か な が ら 存 在 す る こ と か ら 、 今 後 、 発 生 面 積 の 拡 大 が 懸 念 さ れ る た め 、 注 意 を 要 す る 害 虫 で あ る 。2 . 被 害
幼 虫 が 茶 の 根 を 食 害 す る た め 、 養 分 や 水 分 の 吸 収 が で き ず 、 一 番 茶 芽 が 生 育 で き な く な る 。 被 害 が 大 き い と 一 番 茶 期 に 古 葉 が 枯 死 、 落 葉 す る 。 こ の 被 害 は 晩 霜 害 の 被 害 と よ く 似 て い る た め 、 間 違 わ れ る 場 合 も 多 い ( 写 真 1 ) 。 た だ し 、 一 番 茶 収 穫 期 頃 に は 幼 虫 が 蛹 に な る た め 食 害 が 無 く な り 、 新 根 が 発 生 す る た め 、 二 番 茶 期 に は 被 害 は 目 立 た な く な る 。 な お 、 被 害 は 茶 園 の 一 部 で 局 所 的 に 発 生 す る 場 合 が ほ と ん ど で あ る 。 写 真 1 : ナ ガ チ ャ コ ガ ネ に よ る 一 番 茶 被 害図 1 : ナ ガ チ ャ コ ガ ネ 成 虫 の 発 生 消 長 ( 福 岡 県 農 業 総 合 試 験 場 八 女 分 場 ) 0 10 20 30 40 50 60 5 月1 半旬 5 月3 半旬 5 月5 半旬 6 月1 半旬 6 月3 半旬 6 月5 半旬 誘 殺 数 ( 頭 ) 2008年 2009年 平年値
3 . 発 生 生 態
成 虫 ( 写 真 2 ) は 光 沢 の あ る 茶 褐 色 の コ ガ ネ ム シ ( 体 長 11~ 14mm) で 、 5 月 末 か ら 6 月 に か け て 年 1 回 、発 生 す る( 図 1 ) 。 成 虫 は 日 没 前 後 の 2 時 間 程 度 に 限 り 活 発 に 活 動 す る 。 交 尾 し た 雌 は 地 中 に 潜 っ て 産 卵 す る 。 卵 か ら ふ 化 し た 1 齢 幼 虫 は 根 を 加 害 す る 。10 月 中 旬 以 降 、3 齢 ( 写 真 3 ) と な っ た 幼 虫 ( 体 長 20 ~ 23 mm) は 秋 に 伸 び て く る 新 根 を 求 め て 、 株 元 や 雨 落 ち 部 に 移 動 す る 。 幼 虫 で 越 冬 し 、 翌 春 、 蛹 に な る ま で 根 を 食 害 す る 。 写 真 2 : ナ ガ チ ャ コ ガ ネ 成 虫 写 真 3 : ナ ガ チ ャ コ ガ ネ 幼 虫4 . 防 除 対 策
(1)成 虫 を 対 象 と し た 防 除 5 月 下 旬 ~ 6 月 中 旬 に フ ォ ー ス 粒 剤 を 9 k g/ 10a 、 う ね 間 に 散 布 し 土 壌 と 混 和 す る 。 (2)幼 虫 を 対 象 と し た 防 除 幼 虫 の 生 息 を 確 認 し 、 幼 虫 が 地 表 面 に あ が っ て く る 10 月 下 旬 ~ 11 月 中 旬 に ス ミ チ オ ン 乳 剤 70( 2,000~ 4,000 倍 ) を 5 ℓ /㎡ 、 土 壌 に か ん 注 す る 。 (3)そ の 他 成 虫 は メ ヒ シ バ 等 の イ ネ 科 雑 草 を 食 べ る と 、 産 卵 数 が 増 加 す る た め 、 成 虫 発 生 時 期 の 5 月 下 旬 ~ 6 月 下 旬 に は 茶 園 及 び そ の 周 辺 の 雑 草 防 除 を 徹 底 す る 。Ⅴ 茶の主要病害虫の発生消長と防除時期
発生時期 基本防除 補助防除 月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 防除時期 茶芽の生育 一番茶 二番茶 整枝 秋芽 秋整枝 萌 芽 萌 芽 萌芽 摘採 摘採 炭 疽 病 感染期 輪斑病 (新梢枯死症) 整剪枝直後 赤焼病 病斑形成期 もち病 感染初期 チャノホコリダニ 幼虫・成虫発生期 チャノナガサビダニ 幼虫・成虫発生期 カンザワハダニ 幼虫・成虫発生期 チャノコカクモン ハマキ 幼虫発生期 チャノホソガ 幼虫発生期 チャノミドリ ヒメヨコバイ 幼虫・成虫発生期 チャノキイロ アザミウマ 幼虫・成虫発生期 ヨモギエダシャク 幼虫発生期 クワシロ カイガラムシ 幼虫ふ化期 チャトゲ コナジラミ 卵・若齢幼虫期 プルート MC の散布時期
Ⅵ 茶樹病害虫の萌芽前防除マニュアル
1 はじめに
本県では、摘採芽の開葉期後にも防除が行われている。しかし、消費者は「クリーンな茶」 を強く望んでいる。そこで、萌芽期までに農薬散布を終了することで、消費者に対して「福岡 の八女茶」のイメージアップを図る。2 萌芽前防除を成功させるポイント
前年の秋期に病害虫防除を徹底し、害虫の越冬密度や病害の越冬病斑を極力少なくしておく ことがポイント。萌芽前防除の時期については、薬剤の残効が短いものは萌芽期に散布する方 が効果的である。《現状》 《萌芽前防除》
一 番 茶
3月中旬もしくは4月上旬チャトゲコナジラミ
カンザワハダニ
チャノナガサビダニ
4月上旬(萌芽後)ツマグロアオカスミカメ
有機リン剤チャノホソガ
一 番 茶 摘 採 後
5月20日前後 本種に卓効のある殺虫剤クワシロカイガラムシ
① プルートMCの散布制限地域では卓 効の殺虫剤を散布 ※ プルートMCが散布可能な地域では1 月~3月(摘採前30日)に本剤を散布二 番 茶
5月末(萌芽後~1葉期)チャノキイロアザミウマ
5月中旬(摘採後~萌芽期) 選択性の広い殺虫剤チャノミドリヒメヨコバイ
残効性がある殺虫剤 5月末(萌芽後~1葉期) 本種に卓効のある殺虫剤チャノホソガ
ネオニコチノイド系で、本種に卓効を 示す剤を萌芽期に散布 発生が予想される場合 5月末(萌芽後~1葉期) 予防効果のある殺菌剤炭疽病
秋期防除を徹底し、越冬病斑を少なくするもち病
発生が予想される場合 5月末(萌芽後~1葉期) 予防効果のある殺菌剤 3月末~4月初旬(萌芽期) ネオニコチノイド系で両害虫に卓効 の殺虫剤 萌芽前防除では防除効果が低いた め、常発地帯では抵抗性品種の導 入を検討 殺卵・殺幼虫効果のある殺ダニ剤 散布 2月下旬~3月上旬にトモノールS 3月下旬に殺卵・殺幼虫効果のある 殺ダニ剤散布Ⅶ 病害虫防除暦
(平坦地用)
散布時期 基 本 防 除 補 助 防 除 H28年度福岡の八女茶栽培暦 1~2月 クワシロカイガラムシ プルートMC 3月中旬 カンザワハダニ、チャノナガサビ ダニ ダニゲッターフロアブル 5月中旬 クワシロカイガラムシ、チャトゲコナ ジラミ アプロードエースフロアブル 5月下旬 (二茶萌芽 ~一葉期 チャノミドリヒメヨコバイ、チャノキイ ロアザミウマ、チャトゲコナジラミ ダニ類、ハマキ類 コルト顆粒水和剤 ダニサラバフロアブル カスケード乳剤 7月上旬 (三茶萌芽 ~一葉期) チャノミドリヒメヨコバイ、チャノキイ ロアザミウマ、ヨモギエダシャク、 ハマキ類、炭そ病、もち 病、網もち病、褐色円 星病 ウララDF アファーム乳剤 インダーフロアブル 三茶摘採又 は刈り落と し当日か翌 日 輪斑病、炭そ病、新梢 枯死症 カスミンボルドー水和剤 8月中旬 (秋芽萌芽 期) チャノミドリヒメヨコバイ、チャノキイ ロアザミウマ、ヨモギエダシャク、 ハマキ類、チャトゲコナジラミ、 炭そ病、新梢枯死症 ガンバ水和剤 フェニックスフロアブル フロンサイドSC 8月下旬 (秋芽開葉 期) ダニ類、チャノキイロアザミウマ、 ヨモギエダシャク、ハマキ類、新 梢枯死症、炭そ病 スターマイトフロアブル ディアナSC オンリーワンフロアブル 9月上旬 チャノミドリヒメヨコバイ、チャノキイ ロアザミウマ、チャトゲコナジラ ミ、ハマキ類、ヨモギエダシャク ハチハチフロアブル サムコルフロアブル10 10月 カンザワハダニ、チャトゲコナジラ ミ トモノールS 11月以降 赤焼病 コサイド3000散布時期 基 本 防 除 補 助 防 除 H28年度福岡の八女茶栽培暦(煎茶) 1~2月 クワシロカイガラムシ プルートMC 3月下旬 カンザワハダニ、チャノナガサビダニ ダニゲッターフロアブル 4月上旬 チャノホソガ、コミカンアブラムシ バリアード顆粒水和剤 5月下旬 クワシロカイガラムシ、チャトゲコナジラミ アプロードエースフロアブル 6月上旬 (二茶一葉 期) 炭疽病、もち病、カンザワハ ダニ、チャノミドリヒメヨコバイ、 チャノキイロアザミウマ、ハマキ類 コテツフロアブル マッチ乳剤 インダーフロアブル 7月下旬~8 月上旬 (三茶一葉 期) 輪斑病、炭そ病、新梢枯 死症、チャノミドリヒメヨコバイ、 チャノキイロアザミウマ、チャトゲコナ ジラミ、ヨモギエダシャク、ハマキ 類 コルト顆粒水和剤 サムコルフロアブル10 フロンサイドSC 8月中旬 (三茶三~四 葉期) 炭疽病、新梢枯死症、も ち病、ヨモギエダシャク、ハマキ 類、ダニ類 スターマイトフロアブル カスケード乳剤 オンリーワンフロアブル 9月上中旬 チャノミドリヒメヨコバイ、チャノキイロ アザミウマ、チャノホコリダニ、チャノ ナガサビダニ、チャトゲコナジラ ミ、エダシャク、ハマキ類 ハチハチフロアブル ファルコンフロアブル 10月 カンザワハダニ、チャトゲコナジラミ トモノールS 11月以降 赤焼病 カスミンボルドー水和剤 散布時期 基 本 防 除 補 助 防 除 H28年度福岡の八女茶栽培暦(玉露) 3月下旬 カンザワハダニ、チャノナガサビダニ ダニゲッターフロアブル 4月上旬 チャノホソガ、コミカンアブラムシ バリアード顆粒水和剤 5月下旬 クワシロカイガラムシ、チャトゲコナジラミ アプロードエースフロアブル 7月上旬 (二茶伸育初 期) カンザワハダニ、チャノミドリヒメヨコ バイ、チャノキイロアザミウマ、ハマキ 類、炭そ病、もち病 コテツフロアブル マッチ乳剤 インダーフロアブル 7月下旬~8 月上旬 (三茶伸育初 期) 輪斑病、炭そ病、新梢枯 死症、チャノミドリヒメヨコバイ、 チャノキイロアザミウマ、チャトゲコナ ジラミ、ヨモギエダシャク、ハマキ 類 コルト顆粒水和剤 サムコルフロアブル10 フロンサイドSC 8月中旬 (三茶伸育中 期) 炭疽病、新梢枯死症、も ち病、ヨモギエダシャク、ハマキ 類、ダニ類 スターマイトフロアブル カスケード乳剤 オンリーワンフロアブル 9月上中旬 (秋芽伸育初 期) チャノミドリヒメヨコバイ、チャノキイロ アザミウマ、チャノホコリダニ、チャノ ナガサビダニ、チャトゲコナジラ ミ、エダシャク、ハマキ類 ハチハチフロアブル ファルコンフロアブル 9月下旬 チャノキイロアザミウマ、ヨモギエダシャク、ハマキ類 ディアナSC 10月 カンザワハダニ、チャトゲコナジラミ トモノールS