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気候変動が同一地域の鳥類、昆虫、植物の 生物季節に与える影響

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(1)

  1  

.はじめに

 地球の平均地上気温は、

1861

年から

2000

年まで

140

年間に

0

.

61

℃上昇した1。日本の平均気温 は

20

世紀の

100

年間に

1

.

0

℃上昇した2。地球温暖 化によって、森林や動植物種の分布、鳥の渡り時 期などにいろいろな変化が出始めている例えば37。 地球温暖化は生物の生態を変化させ、生存をおび やかす可能性がある。そのため、生態の変化を詳 しく調べ、保全戦略を根本的に考え直す必要があ る。しかし、影響は短期では認識しにくく、長期 にわたる研究が必要である。

 ヨーロッパや北アメリカでは、渡り鳥の繁殖時 期についての情報が長期間にわたって収集され ており、気候変動との関連で解析されている。 イギリスでは、

65

種のうち

20

種(

31

%)で、産卵 開始日が

1971

1995

年の

25

年間に平均して

9

間早くなっていた8, 9。イギリスではシジュウ カラ(Parus major)の産卵開始日が

1971

1997

27

年間に約

11

日間早くなった10。ドイツで は、マダラヒタキ(Ficedula hypoleuca)の産卵開始

日が

1970

1995

年の

26

年間に約

4

日間早まり、 一腹卵数(一巣に産みこむ卵数)も有意に増加し ている11。北アメリカでは、メキシコカケス

(Aphelocoma ultramarina)の産卵開始日が

1971

1998

年の

28

年間で約

10

日間早まり12、ミドリツ バメ(Tachycineta bicolor)の産卵開始日が

1990

2000

年の

11

年間に約

6

日間早くなっていた13。 これらの研究では、産卵開始日が早くなることは 産卵前の気温の上昇が原因であると考えられてい る。

 筆者らは、本州中部の新潟県で

1978

1998

年の

21

年間に渡り鳥のコムクドリ(Sturnia philippensis)

の産 卵 開 始 日が約

2

週 間 早ま り、一 腹 卵 数が

1

.

2

個増加するという傾向を明らかにした14。 コムクドリはボルネオなど東南アジアで越冬し、 春に日本の本州中部からサハリンにかけて渡来し て繁殖する(図

1

1518。南西諸島を

3

4

月に通 過し14, 15, 19、本調査地の新潟市には

4

月上旬以 降に到着する。一雄一雌で樹洞に営巣し、青色の 卵を

3

9

個産卵する。巣箱を好んで利用し、繁 殖失敗がなければ年

1

回しか営巣しないので、産

生物季節に与える影響

小池 重人1・樋口 広芳2

1新潟市立白南中学校

2東京大学大学院 農学生命科学研究科生物多様性科学研究室

摘  要

 近年、地球温暖化が生物種に与える影響が危惧されている。筆者らは気温上昇が具 体的に生物の生活にどのような影響を与えているのかについて、日本に渡来する夏鳥

(tropical migratory bird)のコムクドリを中心に、昆虫のモンシロチョウと植物の桜(ソ メイヨシノ)を対象に解析を行なった。調査地は本州中部の新潟市である。コムクド リの産卵開始日は年々有意に早まる傾向があり、

28

年間で

15

.

3

日早くなった。産卵 開始日は繁殖地である新潟市の早春の気温だけでなく、渡ってくる途中の沖縄県那覇 市の気温とも有意な相関があった。両地域とも気温が有意に上昇していることから、 産卵開始日が早まったのは気温が上昇していることが原因であると思われる。産卵開 始日が早まったことによって繁殖成功率も変化していることが予想されたが、大きな 変化はみられなかった。桜の開花日も年々早まる傾向があり、早春の気温と強い負の 相関を示した。モンシロチョウの初見日は年々早まる傾向はなかったが、早春の気温 と有意な負の相関を示した。桜の開花日が早春の気温との間により強い相関を示すの は、桜がコムクドリとは違って一年中同じ地域に生育しており、調査地(新潟市)の気 温の影響をより強く受けるためだと考えられる。また、雪におおわれる地表付近でさ なぎが越冬するモンシロチョウとは違って、芽が地上の気温の影響をより直接に受け るためだと考えられる。

キーワード:コムクドリ、産卵開始日、ソメイヨシノ、地球温暖化、モンシロチョウ

(2)

卵開始日のデータを容易に、また確実に得ること ができる20。本稿では、Koike and Higuchi14の結 果にその後の調査結果を加え、

2005

年までの

28

年間の状況を明らかにする。

 日本では気象庁によって、モンシロチョウ

(Pieris rapae)の初見日やソメイヨシノ(Prunus

yedoensis)の開花日について長年にわたって情報

が集積されてきている。日本の各地に普通にいる モンシロチョウは、さなぎで越冬し、早春に羽化 して成虫になる。この種の初見日はさなぎが初め て羽化したことを示している。本種はコムクドリ の主食ではないが、昆虫食であるコムクドリが食 べる昆虫の代表と見ることが可能である。ソメイ ヨシノはオオシマザクラ(Prunus lannesiana)とエ ドヒガン(Prunis pendula)の交雑種である。ソメイ ヨシノの開花日については、Aono21や増田ほか22 による研究があり、日本の各地で開花が早まって いることが指摘されている。ソメイヨシノを含む サクラ類は、コムクドリの繁殖環境の構成樹種の

1

つであり、その開花や開葉の時期はコムクドリ が食べる昆虫の発生時期とかかわりをもつことが 予想される。

 本稿では、コムクドリの産卵開始日や一腹卵数 の長期変化に焦点を当てながら、夏鳥であるコム

クドリが繁殖地や越冬地、渡り途中の中継地の気 温にどう影響されているのかを示したい。具体的 には、産卵開始日が年々どのように変化してきた かを示し、原因として考えられる繁殖地、渡り途 中の地域、越冬地の気温との関係を解析する。ま た、産卵開始日が変化するに伴い、一腹卵数や繁 殖成功率にどのような影響が生じているのかを示 す。一方、同地域に生息、生育するモンシロチョ ウとソメイヨシノのそれぞれの初見日や開花日に ついて近年の年変化の傾向を明らかにし、コムク ドリで見られる傾向との関係を探る。

 このような、同一地域の複数の生物群の生物季 節を扱った研究事例は限られている例えば2325。と くに本研究のように、

20

年以上にわたる長期変 化を同時に扱い、相似点や相違点を明らかにする と同時に相互の関係を論じる試みはほとんど行な われていない。

  2  

.調査地と調査方法

 コムクドリの調査は本州中部地域の新潟市

37

°

55

N,

139

°

03

E)の海岸にある飛砂防備林で行 なった。この林は主にクロマツ(Pinus thunbergii)

とハリエンジュ(Robinia pseudo-acacia)あるいは

図 1  コムクドリの越冬地(赤)と繁殖地(緑)および春期の渡りルート(矢印).

(Brazil15), Feare and Craig17)などにもとづいて描く)

(3)

エノキ(Celtis sinensis)、オオシマザクラ(Prunus

lannesiana)などの樹種からなっている。またヒョ

ウタンボク(Lonicera morrowii)やノイバラ(Rosa

multiflora)の低木が下層に生えている。

 野外調査は

1978

年から

2005

年まで実施した が、

1980

1984

年および

1995

年には調査しな かった。毎年

30

100

個の巣箱を、

10

20

mの 間隔で、地上約

2

3

mの幹に設置した。巣箱の 大きさは

30

cm(縦)×

14

cm(横)×

16

cm(奥行き) で、巣穴の直径は

4

cmである。各つがいの繁殖 期の基準として、つがいが最初の卵を産む日付を 使用し、それぞれの年の繁殖つがいの平均を産卵 開始日と表現した。平均を算出するにあたっては

3

1

日を基準値の

1

とした。繁殖失敗後の再繁 殖例は除外した。また一腹卵数、ふ化数、巣立ち 数を記録し、同様に年ごとの平均を算出した。繁 殖成功率は(巣立ち雛数/一腹卵数)×

100

として 表した。

 モンシロチョウの成虫の初見日、ソメイヨシ ノの開花日、気温については、気象庁によるCD-

ROM Dataやホームページから情報を得た。また

必要に応じて、新潟地方気象台から直接データを 入手した。対象とした期間は、コムクドリの調査 を実施した

1978

年から

2005

年までである。  気温に関しては、気象庁の情報から日平均気温 を利用した。コムクドリの産卵、モンシロチョ ウの出現、桜の開花に関係すると思われる

2

月か

4

月までの

3

ヵ月間の平均気温を「早春の気温」 とし、対象種の生物季節との関係を示した。気温 の年変化についても、上記

3

ヶ月間の平均気温に

もとづいて調べた。相関や傾向を調べる上では、

1978

年を

0

として解析した。コムクドリについて は新潟市だけでなく、越冬地のボルネオのコタキ ナバル市(

5

°

93

N,

116

°

04

E)や渡りの中継地とな る南西諸島沖縄島の那覇市(

26

°

12

N,

127

°

41

E)の 気温との関係も調べ、産卵開始日の年変化や早春 の気温との関係を解析した。

 コムクドリの一腹卵数の年変化の仕組を調べる にあたっては、産卵時期による一腹卵数の違いに 注目した。産卵時期が早まったことによって一腹 卵数が増加したのではないかと予測したのであ る。この予測を検証するために、全期間の一腹 卵数の全データを用い、初卵日を

10

日ごとに分 け、同一時期に一腹卵数に年変化があるかを検定 した。コムクドリの産卵開始日や一腹卵数、モン シロチョウの初見日、桜の開花日の年変化、およ びそれらと気温との相関を調べるにあたっては、 ピアソンの積率相関を用いて解析を行なった。産 卵開始日および一腹卵数の年変化については、 個々のつがいのデータを用いて一元配置分散解析 も行なった。同一資料を用いて複数の関係を比較 した検定の際の有意水準については、Bonferroni 補正を行なった。統計解析にはSTATISTICA(ver.

5

.

5

)およびJMP(ver.

6

)を利用した。

  3  

.結果

 

3

.

1

 コムクドリの産卵開始日の年変化

 コムクドリの産卵開始日は年々早くなる傾向が 認められた(図

2

;F=

48

.

12

, df=

21

,

836

, P<

0

.

0001

; 一

図 2  コムクドリの産卵開始日の年変化(3 月 1 日=1).

各年の値は平均値±標準誤差、図の上の数字は繁殖例数を示す.

(一元配置分散分析の結果:F=48.12, df=21,836, P<0.0001)

(4)

元配置分散解析)。この期間で最も遅い年は

1978

年の

86

.

4

日(

5

25

.

4

日)、最も早い年は

2002

年の

64

.

5

5

3

.

5

)であった。各年の産卵開始日

(y)と年(x)との間には、y=

83

.

94

0

.

57

x(

1978

=

0

) の有意な負の関係があり(r=−

0

.

876

, P<

0

.

0001

, N=

22

)、産卵開始日が

1

年あたり

0

.

57

28

年間

15

.

3

日早くなったことを示している。また、そ れぞれの年の産卵開始日の標準偏差に有意な減少 傾向が認められたことから(r=−

0

.

616

, P<

0

.

0005

, N=

22

)、繁殖期間は年々短くなっているといえ る。

 

3

.

2

 コムクドリの産卵開始日と早春の気温  コムクドリの産卵開始日と新潟市の早春の気温 との間には有意な負の相関が認められた(図

3

r=−

0

.

617

, P<

0

.

01

, Bonferroni補正済み, N=

22

)。

また産卵開始日は南西諸島の沖縄県那覇市の 早春の気温とも有意な負の相関があった(図

4

; r=−

0

.

651

, P<

0

.

005

, Bonferroni補正済み, N=

22

)。

越冬地であるボルネオのコタキナバルの早春の 気温との間には有意な相関は認められなかった

(r=−

0

.

114

, P >

0

.

05

, Bonferroni補正済み, N=

20

,

1982

2005

)。

 新潟市の早春の気温(図

5

;r=

0

.

464

, P<

0

.

05

, N=

28

)、および那覇市の早春の気温(図

6

;r=

0

.

495

, P<

0

.

01

, N=

28

)は、近年、有意に上昇し ている。新潟市の早春の気温(y)は、年(x)と の関係でy=

5

.

90

+

0

.

06

x(

1978

=

0

)で示され、平 均して年

0

.

06

28

年間で

1

.

5

上昇してい る。那覇市の早春の気温(y)は、年(x)との関 係でy=

18

.

48

+

0

.

04

x(

1978

=

0

で示され、平均し て年

0

.

04

℃上昇し、

28

年間で

1

.

1

℃上昇してい る。また新潟市の年平均気温(r=

0

.

537

, P<

0

.

01

, y=

13

.

22

+

0

.

04

x(

1978

=

0

), N=

28

)および那覇市の年 平均気温(r=

0

.

722

, P<

0

.

0001

, y=

22

.

32

+

0

.

04

x(

1978

=

0

, N=

28

も有意に上昇している。一方、コタキ ナバルの

2

4

月の気温および年平均気温は有意 な上昇はしていない(r=−

0

.

032

, P >

0

.

05

, N=

24

r=

0

.

187

, P >

0

.

05

, N=

24

,

1982

2005

)。これらの ことから、コムクドリの産卵開始日が早まってき たのには、繁殖地や渡り途中の中継地において気 温が年々上昇してきたことが関係しているといえ る。

図 4  沖縄県那覇市の早春(2 〜 4 月)の平均気温とコ ムクドリの産卵開始日の関係.

図 3  新潟市の早春(2 〜 4 月)の平均気温とコムクド リの産卵開始日の関係.

図 6  那覇市の早春(2 〜 4 月)の平均気温の年変化

(1978 〜 2005 年).

図 5  新潟市の早春(2 〜 4 月)の平均気温の年変化

(1978 〜 2005 年).

(5)

 

3

.

3

 コムクドリの一腹卵数および繁殖成功率の 年変化

 一腹卵数は年々有意に増加する傾向があった

(図

7

;F=

4

.

52

, df=

21

,

782

, P<

0

.

0001

;一元配置分散 分析)。各年の平均一腹卵数(y)と年(x)から得ら れる回帰式 y=

5

.

03

+

0

.

04

x(

1978

=

0

)に基づくと、 一腹卵数は

1

年あたり

0

.

04

個、

28

年間で

1

.

03

個増 加した(r=

0

.

781

, P<

0

.

0001

)。一腹卵数は

1

年の時期 によっても変化する傾向があり、どの年も早けれ ば早いほど多い傾向がある。例えば、

1991

年には 回帰式 y=

13

.

46

0

.

17

xで示され(y:一腹卵数,x:

初卵日、r=−

0

.

621

, P<

0

.

001

, N=

39

)、

1

日あたり

0

.

17

卵減少する。また、産卵開始日(x)が早い年には 平均一腹卵数(y)が多いという有意な関係が認め られた(図

8

;y=

10

.

05

0

.

06

x, r=−

0

.

782

, P<

0

.

001

, N=

22

4

月下旬(r=−

0

.

419

, P >

0

.

05

, N=

15

5

月上 旬(r=−

0

.

018

, P>

0

.

05

, n=

292

)、

5

月中旬(r=−

0

.

091

, P >

0

.

05

, N=

409

)、

5

月下旬(r=−

0

.

008

, P >

0

.

05

, N=

80

)に分けて解析した結果では、年による有意

な増減は認められなかった。

6

月上旬(r=−

0

.

794

, P<

0

.

05

, N=

8

)は有意な減少傾向があったが、一元 配置分散分析による全期間を通じての検定では 有意な違いは認められなかった(F=

3

.

25

, df=

3

,

8

, P >

0

.

05

)。

 繁殖成功率に有意な年変化は見られなかった

(r=

0

.

338

, P >

0

.

05

, N=

14

しかし、y=

0

.

6513

+

0

.

0146

x

0

.

0004

x2(r2=

0

.

300

, P >

0

.

05

,

1978

=

0

)の二次曲線で 示すと、

1990

年代前半までは上昇し、その後やや 下降しているように見える。

 

3

.

4

 モンシロチョウの初見日

 新潟市におけるモンシロチョウの

28

年間の初見 日は平均

38

.

5

4

7

)で、最も遅い年は

1984

年の

52

日(

4

23

日)、最も早い年は

2002

年の

13

日(

3

13

)であった。

1978

年以降の新潟市のモ ンシロチョウの初見日は、直線回帰(r=−

0

.

151

, P >

0

.

05

, N=

28

)でも二次回帰(図

9

;r2=

0

.

048

, P >

0

.

05

, N=

28

)でも年々有意には早まっていな かった。ただし、近年、初見日は著しく早い年が

図 8  コムクドリの産卵開始日(3 月 1 日=1)と一腹卵 数の関係.

図 7  コムクドリの一腹卵数の年変化(1978 〜 2005 年).

各年の値は平均値±標準誤差、図の上の数字は繁殖例 数を示す.

(一元配置分散分析の結果:F =4.52,  df=21,782,  P<0.0001)

図 9  新潟市のモンシロチョウの初見日(3 月 1 日=1)

の年変化(1978 〜 2005 年).

図 10  新潟市の早春(2 〜 4 月)の平均気温とモンシ ロチョウの初見日の関係.

(6)

目につくようになった。一方、初見日は新潟市の 早春の気温との間に有意な相関があり、気温の 高い年は昆虫が早く羽化することが予想される

(図

10

;r=−

0

.

554

, P<

0

.

005

, N=

28

)。

 

3

.

5

 桜の開花日

 新潟市におけるソメイヨシノの

28

年間の開 花日は平均

40

.

8

日(

4

10

日)で、最も遅い年は

1984

年の

57

4

28

)、最も早い年は

2002

30

日(

3

30

日)であった。開花日は年々有意 に早まる傾向があり、

28

年間で約

8

.

46

1

あたり

0

.

31

日早まっていた(図

11

;開花日y;年 x;y=

45

.

05

0

.

31

x(

1978

=

0

), r=−

0

.

437

, P<

0

.

05

, N=

28

)。開花日は早春の気温と有意に相関してい た(図

12

;r=−

0

.

952

, P<

0

.

0001

, N=

28

)。開花日と 早春の気温の相関の程度は、コムクドリの産卵開始 日と早春の気温との相関、あるいはモンシロチョウ の初見日と早春の気温との相関より強かった。

  4  

.考察

 巣箱を利用した研究は産卵開始日の詳細なデー タが入手可能である。そこで巣箱を利用した研究 にもとづいて、地域や種ごとに一年あたりの産 卵開始日の早まりの程度を比較すると次のように なる。イギリスではシジュウカラが

0

.

44

10、ド イツではシジュウカラが

0

.

26

、アオガラが

0

.

26

日、マダラヒタキが

0

.

17

11早くなっている。北 アメリカのカナダでは、ミドリツバメが

0

.

55

日早 くなっている13。Both et al.26は、ヨーロッパ

25

所でマダラヒタキの産卵開始日の早まりの程度 を調べ、最も変化が大きい地域はドイツのLingen

52

°

27

N,

07

°

15

E)で、一年あたり

0

.

49

日早まっ ていることを示した。新潟市(

37

°

55

N,

139

°

03

E)

の本調査地のコムクドリでは、一年あたり

0

.

57

日 早くなっており、上記の他地域より変化の程度が 大きい。

 産卵開始日の変化の程度には、それぞれの地域 の気温変化の違いが影響しているのかもしれな い。Both et al.26によれば、マダラヒタキの産卵開 始日の早まりが最も著しいドイツのLingenでは、 気温の上昇率も顕著で、一年あたり

0

.

12

上昇し ている。しかし、新潟市のコムクドリでは、気温 は一年に

0

.

06

℃しか上昇していないのに、産卵開 始日の早まりはLingenのマダラヒタキの場合より もより顕著である。

 コムクドリで変化の程度が著しいのは、繁殖地 の気温だけでなく、春に通過してくる地域の気温 の影響が大きいことが関係している可能性があ る。結果で示したように、早春に通過してくる沖 縄島・那覇市の早春の気温は、

1978

2005

年の

28

年間に

1

.

1

℃、毎年

0

.

04

℃上昇している。沖縄

も新潟もLingenの気温と比較すれば上昇の程度は

小さいが、世界の同時期の年間平均上昇率

0

.

01

(r=

0

.

764

, P<

0

.

0001

)と比べるとより顕著である。 もし、沖縄や新潟など複数の地域の気温上昇が関 係すれば、効果は加速するのかもしれない。現時 点では世界各地の各種鳥類が経験する気温との比 較はできないが、コムクドリのような渡り鳥の場 合には、繁殖地だけでなく渡り中継地などの気温 も考慮して繁殖開始時期の早まりを検討する必要 があるだろう。

 同一地域に生息、生育するコムクドリ、モンシ ロチョウ、ソメイヨシノは、同じ気候変動に対し て異なる反応を示した。コムクドリの産卵開始日 とソメイヨシノの開花日は年々早まる傾向を示し ているが、モンシロチョウの初見日ははっきりし た傾向を示さない。ただし、最近の

10

年ほどの

図 11  新潟市の桜の開花日(3 月 1 日=1)の年変化

(1978 〜 2005 年).

図 12  新潟市の早春(2 〜 4 月)の平均気温と桜開花 日の関係.

(7)

間に、モンシロチョウの初見日が顕著に早い年が いくつかあり、今後どのように推移していくのか 注目される。

 コムクドリの産卵開始日と桜の開花日について も、同じ速度や程度で変化しているわけではない。 両者の期間の差を調べてみると、年々短くなる傾 向がある(y=

40

.

86

0

.

35

x(

1978

=

0

, r=−

0

.

571

, P<

0

.

01

, N=

22

)。つまり、コムクドリの産卵開始 日の変化の方が桜開花日の変化よりも速いという ことである。上記の回帰式によれば、両者の差は

1978

年には

40

.

9

日だったが

2005

年には

31

.

5

になり、差が

9

.

3

日間減少した

 コムクドリの親鳥は、ヒナに昆虫だけでなく桜 やヒョウタンボクの実も与える20。開花に応じて 実のなる時期も変化しているので、今後、コムク ドリの繁殖時期と植物の開花時期の差がより短く なれば、コムクドリは桜やヒョウタンボクの果実 がなる前に巣内での育雛を終えてしまうことにな るかもしれない。実際、

1970

年代には巣内にコ ムクドリのヒナが吐き出したヒョウタンボクやサ クラの種子が多く見られたが、

2000

年代に入っ てサクラの種子はまだあるものの、ヒョウタンボ クの種子はほとんど見られなくなっている。  一腹卵数が増加し、また産卵開始日と繁殖地の 昆虫や植物の成長状況とにずれが生じていること から、コムクドリの繁殖成功率に変化が生じてい ることが予想されたが、現在のところその兆候は 現れていなかった。しかし、今後さらに気温が上 昇していけば、生物間の生物季節のずれが増大 し、コムクドリの繁殖成功率は減少していく可能 性がある。

 ソメイヨシノの開花日と早春の気温の相関の程 度は、コムクドリの産卵開始日と早春の気温との 相関より強かった。これは桜が植物で移動できな いため、生育する地域、新潟市の気温の影響を直 接受けるからだと考えられる。一方、夏鳥である コムクドリは、早春の渡り途中に南西諸島のよう な他地域の気温の影響を受けるので、繁殖地の気 温との相関が弱くなっている可能性がある。モン シロチョウは一年を通じてほとんど同じ場所に生 息し、初見日は早春の気温と有意な相関を示すも のの、相関の程度はソメイヨシノに比べて小さ い。モンシロチョウのさなぎの越冬場所は地表付 近であり、そこは

3

月まで積雪におおわれること が多い。積雪の下では、地上の気温の影響をソメ イヨシノほどには受けないのではないかと考えら れる。

謝辞

 本研究をまとめるにあたっては、東京大学

21

世紀COEプログラム「生物多様性・生態系再生研 究拠点」経費の一部を利用した。

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(受付

2006

3

13

日、受理

2006

4

3

日)

参照

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