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死の意味に関する基礎的研究 −尺度作成と関連要因の検討− [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)死の意味に関する基礎的研究−尺度作成と関連要因の検討− キーワード:死の意味,尺度作成,自我同一性,死に関する経験 所 属 氏 名 問題と目的. 人間共生システム専攻 石坂 昌子. を検討する.なお,死と生を生涯にわたるテーマとして. 死に関する研究は,学際的に死生学として展開し(平. 扱う立場より,自我の心理社会的発達段階の達成感覚を. 山,1991) ,心理学領域では,ターミナル・ケアや自殺. 測定することを通して自我同一性の状態を調べ,自己の. など臨床的側面に関する研究と一般的な人々を対象とし. 死の不可避性を自覚しつつ自我同一性の再体制化を行う. た死に対する心理を扱う研究の二つに大別されている. 中年期(岡本,1997)と,自己の死とは距離が遠く同一. (丹下,1999) .前者では,臨床現場より,否定的感情. 性達成を発達課題として取り組む青年期との比較を通し,. のみならず,希死念慮などの死の肯定とは異なる,生き. 発達段階での死の意味と自我同一性の関連を検討する.. てゆくうえでの死への肯定的意味づけが示唆されてきた.. “死”という生命にかかわる可能性もあるテーマを扱. 後者では,死への怖れに関心が集中し全体的で複雑な死. うことに留意しながら,充分な臨床的配慮を心がけて研. の態度構造を把握できないという問題を引き起こしてき. . 究を進めてゆく(Table1). たが,近年この問題点に対して新たな動向がある.例え Tabl e1. ば,青年期を対象として死は人生に肯定的な作用をもつ. 調査実施における臨床的配慮(石坂,2001;坂口,2001;Parkes,1995). という態度を見出し,同一性の高さ(丹下,1999)や自. 1.調査内容が対象者に対して侵襲的でないか,調査が実施可能かどうかについて心理臨床家による検討をおこなう.. 己成長を求める人生観(石坂,2002)との関連が検討さ れている.また,死別体験を通して人生にとっての有益. 2.教示(質問紙表紙および口頭)で質問が死に関する内容であり,回答拒否ができるという旨を明示する. 3.質問項目内容に,死に関する否定的表現のみならず肯定的表現も使用する. 4.質問項目の後に,感想や意見を自由に書く項目を設け,それによって対象者が調査によってどのような影響を   受けたのか,サポートが必要かどうかを判断する. 5.質問紙に研究者の氏名,連絡先を記し,もし質問や意見があれば,連絡をとるように求める.. 性を見出そうとする試みは精神的健康などの死別後の適 応を促すことが示唆されている(坂口,2002) .このよ うに,一般的な人々を対象とし死への怖れだけではなく 臨床現場での肯定的意味づけなど他の側面をも視野に入 れた実証的研究が試みられている.しかし,この動向に は,死に対する態度の定義が不充分という理論的問題や 対象者が限定されているという方法論的問題がある. そこで,本研究では,一般的な人々を対象とした否定 的のみならず肯定的側面をも含む死に対する心理を扱う 立場をとり, “一人称(自己の死) ・二人称(死別体験) ・ 三人称(客観的でものとしての死)の死を意識・経験す ることを通して,個人の人生において死を評価しようと すること”を“死の意味”と定義し,検討していく.. 第一研究 目的 予備調査および先行研究を参考にして“死の意味 尺度”を作成し,信頼性と妥当性について検討する. 予備調査 成人 75 名(M=36.0,SD=15.6,range20−67)を 対象に SCT や自由記述から死の意味を探索的に調べた. 結果と考察 KJ 法を参考にして回答を分類した結果 ,先行研究で対象となってきた“ネガティブ” (Table2) や死の肯定的側面である “ポジティブ” がみられた一方, 死に対して肯定的, 否定的の両方の相反する感情を抱き, それを意識している“アンビバレンス”という他の実証 的研究にはない新たなカテゴリーも見出された. Table2 予備調査における死の意味についての分類表 カテゴリー. 本研究の第一の目的は,死の意味という概念を測定す る広い発達段階の対象者に適用可能な信頼性と妥当性の 充分な尺度がほとんどないので,その作成を試みる. 第二の目的は,死の意味の関連要因の検討を行う.ま ず,先行研究において検討されてきた個人属性が死の意 味に及ぼす影響を調べる.また,死を意識する際に関係 のあると思われる“自己の在り方およびどのように自己. 下位カテゴリー. 内容 死を意識することを通して,人生を振り返ったり,生命の大切さを 思ったり,目的をもって生きていこうとしたりする. ポジティブ 周囲への新たな視点 死を意識することで,周囲の人の思いやりやありがたさに改めて 気付いたり,よりよい関係を築いていこうとしたりする. 死を意識することで,苦しみや悲しみの理解や精神的な強さなど 自己成長 の自身の成長につながると考える. 死について,不安や悲しみや恐怖の意味づけをする. おそれ ネガティブ 人生の苦難から逃れる方法として死を位置付ける. 逃避の手段 死について,考えたり話したりすることを避けている. 回避 死に対して,肯定的,否定的という両方の相反する感情を アンビバレンス − もち,それを意識している. 死を意識することを通して,あきらめや人生のはかなさを感じる. 諦観・無常観 生きていくうえで死はいつか誰にでも訪れるものと受けとめる. 自然性 その他 死について,実感のわかなさや想像のつかなさを抱く. 距離感 死に特別な意味を見出さない. 無意味 人生の意義. 本調査 調査対象 成人 504 名(男 260 名,女 244 名;M=33.5,SD 51 名(男 22 名,. を社会のなかに位置づけるかという生涯にわたる問いか. .そのうち大学生 =15.6,range20−79). けに対しての態度”を“自我同一性” (Erikson,1956). 女 29 名;M=20.2,SD=.46,range20−22)には再検査法に. という心理学的変数として取り上げ,死の意味との関連. よる信頼性の検討をするため死の意味尺度と個人属性の.

(2) 質問を2週間後に再度実施した1.. に相当しこれらの死の肯定的側面は坂口(2002)も指摘. 調査内容・調査方法 以下の2つよりなる質問紙を郵. している.以上のように,本尺度は死の否定的側面のみ. 送調査もしくは集団回答により実施した.. ならず肯定的側面や死への評価に関与しないという多面. 1.死の意味尺度 予備調査や先行研究を参考に作成し. 的な死に対する態度が測定可能であるが,予備調査での. た各質問項目について,5名の臨床心理学専攻の大学院. アンビバレンスを捉えることは難しかった.. 生によって,専門家評定による理論的内容的妥当性から. 信頼性の検討(Table4). 各下位尺度の信頼性係数. 検討を行った結果,死の意味の定義に適うものであり妥. が .730 以上であり項目間相関が | r | <.60 であったので,. 当性が充分であることが確認された.死の意味について. 項目間相関の強さにより内的整合性がみかけ上高くなる. の質問全 50 項目について, 「1−全くそう思わない」か. 可能性は低く真に内的整合性の高い尺度であるといえる.. ら「5−非常にそう思う」の5段階評定で回答を求め,. 各下位尺度の再検査信頼性係数ρが F2の .639 以. 評定値として得点化した値を用いた.. 外,.730 以上であり尺度の安定性はほぼ満たされている. 2.併用尺度 妥当性検討のため以下の尺度を実施した.. といえる.この F2の値の要因については,再検査の対. (1)DAS(Death Anxiety Scale) (Templer,1970). 象者の大学生が青年期後期で死をあまり考えることが多. 死への不安についての 15 項目に2段階評定で回答を. くはないと思われ,死を避けたり嫌がったりする態度に. 求め総得点で評価した.高得点ほど死への不安が高い.. 本調査自体が変化を引き起こした可能性が考えられる.. (2)GHQ(General Health Questionnaire)日本版. つまり,尺度自体の安定性のなさというよりも,対象者. 30 項目短縮版(以下,GHQ−30) (中川・大坊,1985). の不安定な死に対する微妙な心理を適確に捉えると同時. 精神的健康度を測定する6つの下位尺度について4段. に, 調査実施の際の臨床的配慮の必要性をさらに高めた.. 階評定で回答を求め,0−3点の評定値を与える Likert 採点法に従って得点化を行った. 高得点ほど症状が重い. 結果と考察 因子分析 分布の極端な偏りがみられなかった全 50 項目について主因子法による因子分析を行い,固有値の 大きさと推移,説明率より五因子構造を採用した.その 後,バリマックス回転を行い,因子負荷量と共通性の値 で項目を決定した結果,累積寄与率 47.879%の五因子 . 27 項目をもって“死の意味尺度”とした(Table3) Table3 “死の意味尺度”の因子分析結果(主因子法・バリマックス回転後) F1. F2. F3. F4. .722 .711 .703 .696 .695 .678 .669 .608 .604 .597 .580 .578 .539 .510. -.016 .126 .027 .028 -.004 .124 .101 -.159 .055 .031 -.113 .026 -.106 -.048. -.016 -.016 .072 .046 -.013 -.066 .050 .054 -.108 -.026 .008 .091 .044 .112. -.092 .058 -.123 .091 -.139 .074 -.122 .080 -.148 .044 -.043 .029 -.209 .070 -.015 .096 -.048 .096 -.042 .205 -.084 -.038 -.196 .103 -.020 .011 -.089 .067. F5. h2. 【第一因子(F1)「死の有意義性」(14項目)】 15.死別体験を通して、自分の人生観を考えなおすことができるものだ。 19.死別体験を通して、周囲の人の思いやりを改めて感じるものだ。 40.親しい人の死を通して、苦しみや悲しみを理解できるようになるものだ。 20.親しい人の死は、自分が今生きていることの大切さを教えてくれる。 25.死を意識することで、当たり前になっている周囲の人の存在のありがたさに気付くことができる。 3 .死別体験を通して、周囲の人との絆の大切さに改めて気付くものだ。 29.故人の死を無駄にしたくないという思いは、人を精神的に強くさせる。 42.人生には限りがあるから、今を大事にすることができる。 1 .死別体験を通して、限りある生命を大切に生きていきたいと思うようになるものだ。 8 .故人との関係を振り返り、新たな発見や感謝の思いを抱くことができる。 24.死は必ず訪れるので、目的をもって生きていきたい。 43.新聞やテレビで死の場面をみて、それについて考えることは人を成長させる。 32.死は必ず誰にでも訪れるので、生きている間の人間関係をよりよいものにしたい。 6 .自分が死に直面する経験を通して、精神的に成長することができるものだ。. .534 .545 .524 .508 .507 .482 .509 .407 .390 .401 .358 .392 .305 .288. 【第二因子(F2)「死の忌避」(4項目)】 48.死についてなるべく考えないようにしている。 27.死について考えることは避けたい。 49.普段、死についての話題を避けている。 18.新聞やテレビで死の場面をみると、嫌な気持ちになる。. -.049 -.082 .007 .229. .772 .067 .111 .708 .015 .170 .699 .045 .040 .422 -.129 -.117. -.028 -.080 -.026 -.109. .615 .543 .492 .273. .015 .079 .006. .010 .829 .054 .007 .690 -.012 .024 .663 .074. .053 .214 .174. .692 .529 .476. -.197 -.013 -.198 .260 -.251 .057. .010 .845 .048 .048 .612 -.035 .083 .559 .096. .755 .484 .395. .136 -.067 .104 -.036 .229 -.141. .142 -.074 .734 .163 .151 .663 .174 .032 .574. .587 .501 .433. 【第三因子(F3)「苦難からの解放としての死」(3項目)】 47.死ぬことで、すべての苦悩から解放されるように感じる。 14.人が苦しんで死ぬのをみて、「死ぬことで痛みや苦しみから楽になれる」と思うようになる 2 .死ぬと、苦しみから自由になれるので安らぐだろうと思う。. 【第四因子(F4)「死の無拘泥」(3項目)】 36.死は生きている流れのなかで当然起こりえるものだから、特別な意味はない 35.自分の死を考えても仕方のないことだ。 26.死は単なる現象の一つにすぎないものなので、意味を考える必要はない。. 【第五因子(F5)「死後の永続性による受容」(3項目)】 13.死後も魂として存在すると考えると、死は通過点である。 37.死はあの世への誕生と考えると、恐怖はあまり感じない。 7 .死後も故人が家族を見守ってくれると思うと、死はこわいものではない。. 寄与率(%) 累積寄与率(%). 22.212 7.259 6.537 6.217 5.655 22.212 29.471 36.007 42.224 47.879. Table4 “死の意味尺度”における各下位尺度間と尺度全体との相関関係,α係数,再検査信頼性係数(ρ) F1 F2 F3 F4 F5 尺度全体 α ρ F1「死の有意義性」 1.000 .028 .070 -.359* * * .268* * * .849* * * .909 .832 F2「死の忌避」 1.000 -.004 .151* * -.145* * .298* * * .736 .639 F3「苦難からの解放としての死」 1.000 .084+ .321* * * .387* * * .786 .817 F4「死の無拘泥」 1.000 .007 -.011 .748 .751 F5「死後の永続性による受容」 1.000 .491* * * .730 .729 尺度全体 1.000 .805 .757 (N=504,ただし,ρとの相関関係のみn=51.+p< .10,* p< .05,* * p< .01,* * * p< .001.). 妥当性の検討(Table5) 基準関連妥当性に関しては, DAS と各下位尺度間に強い相関関係がみられず,本尺度 が死への怖れとは異なる側面を測定でき怖れ以外の死に 対する態度にも注目してゆく必要性を高めたといえる. GHQ−30 の下位尺度“希死念慮とうつ傾向”と F3と の間に弱い相関関係(r=. Table5 “死の意味尺度” における各下位尺度とDAS,GHQ−30との相関関係 ①一般的  疾患傾向. DAS F1 F2 F3 F4 F5. .205* * * .086+ .307* * * -.011 -.050 .082+ -.265* * * -.105* -.197* * * .104*. 尺度へのアプローチ法(Fig.1) 各下位尺度の内容 や予備調査の分類との対応,相関関係より本尺度を作成 時の前提であった“評価”の軸に,死へ接近しているか, 回避しているかという死に対する“距離”という軸も加 えてアプローチすることを提案し,第二研究以降の分析 を考察する際に用いる. 【接近】 F3「苦難からの解放      としての死」. 囲への新たな視点” , “自己成長”よりなる“ポジティブ”. F1「死の有意義性」 F5「死後の永続性     による受容」. の無拘泥” ,第五因子は“死後の永続性による受容”とそ れぞれ命名した.F1は,予備調査の“人生の意義” , “周. ④社会的 ⑤不安と ⑥希死念慮と GHQ−30 ③睡眠障害 活動障害 気分変調 うつ傾向 尺度全体 .160* * -.045 .076 -.036 .088+ .012 .066 .042 -.039 .011 .169* * * .043 .099* .245* * * .171* * * -.110* -.043 -.141* * -.093* * -.145* * .109* -.086+ -.009 .068 .071 (+p< .10,* p< .05,* * p< .01,* * * p< .001.). ②身体的 症状. .083+ -.013 .075 -.106* .074. 第一因子は“死の有意義性” ,第二因子は“死の忌避” , 第三因子は “苦難からの解放としての死” , 第四因子は “死. .245,p<.001)がみられた.. 【ネガティブ】. F4「死の無拘泥」. F2「死の忌避」. 【回避】 Fig.1 “評価”と“距離”からみた“死の意味尺度”. 1. 第1回目と2回目の調査間に死別体験をした2名は分析より除いた.. 【 ポジティブ】.

(3) 第二研究 目的. 分析2. 第一研究で作成した死の意味尺度と死への怖れ. 自我同一性と死の意味および死への怖れとの. 関連を調べ,また中年期と青年期との比較を行う. 調査対象 成人 300 名(男性 149 名,女性 151 名;M=35.8,. の関連要因を検討する. 分析1 個人属性として,基本的属性,宗教の信仰,死 に関する経験を取り上げ,それらが死の意味および死へ. . SD=16.0,range20−77) 調査内容・調査方法 以下の4つよりなる質問紙を郵 送調査もしくは集団回答により実施した.. の怖れに及ぼす影響について調べる. 調査対象 第一研究の第一回目調査の対象者と同じ.. 1.死の意味尺度 分析1と同様.. 調査内容・調査方法 以下の3つよりなる質問紙を郵. 2.DAS(Death Anxiety Scale) 分析1と同様.. 送調査もしくは集団回答により実施した.. 3.自我同一性SCT測定尺度(Sentence Completion. 1.死の意味尺度 第一研究で作成した尺度を用いた.. Test−Ego Identity;以下,SCT−EI). 死の意味尺度に. 項目作成 自我同一性 SCT(岡本・山本,1985) ,EPSI. は含まれず先行研究の対象となってきた死への怖れを測. (中西・佐方,2001)などを参考にして,広い発達段階. 定するため,第一研究と同じ尺度を使用した.. にも適用可能な SCT 項目案および得点化のための操作. 3.個人属性. 的基準を作成し,6名の臨床心理学専攻の大学院生によ. 1)基本的属性 年齢と性別について尋ねた.. って専門家評定がなされ充分な理論的内容的妥当性が確. 2)宗教の信仰 信仰の有無を2段階評定で尋ねた.. 認された.Erikson(1950)の8段階の各心理社会的発. 3)死に関する経験 大病・大事故の経験,死に対する. 達課題の達成感覚について,各段階2項目によって構成. 準備,死別体験の有無について2段階評定で尋ねた.. . される SCT16 項目をもって SCT−EI とした (Table7). 2.DAS(Death Anxiety Scale). 結果と考察(Table6) 死の意味尺度の各下位尺度と DAS を目的変数とし,個人属性を予測変数とする重回帰. Table7 SCT−EIにおける各発達段階の質問項目および操作的基準 段階. 発達課題. 質問項目. Ⅰ. 基本的信頼感 vs不信. 「私は,家族や友人を∼.」 「私は,これからの人生を∼.」. 分析(5%有意水準,ステップ・ワイズ法)を行った.予測変 Ⅱ 自律性vs恥・疑惑. 数については多重共線性に問題のないことを確認した. Table6 “死の意味尺度”とDASについての重回帰分析の結果 予測変数の標準偏回帰係数(β) 重相関係数 年齢 性別 宗教の信仰 大病・大事故 死の準備 死別体験 F1「死の有意義性」 .093* .153* * .140* * .066 F2「死の忌避」 -.120* * -.288* * * .103 F3「苦難からの解放としての死」 .157* * .108* .109* .063 F4「死の無拘泥」 -.123* * -.090* * .027 F5「死後の永続性による受容」 .235* * * .098* .162* * * .128* * .179 DAS -.260* * * .119* .117* .066 (*p< .05,* * p< .01,* * * p< .001.). Ⅲ. 自主性vs罪悪感. 「人前で意見を述べることは∼.」 「私の考え方や物事のやり方に 対して,周りの人々は∼. それについて私は∼.」. 「自分の生活や仕事の計画 をたてる時,私は∼.」 「自分から率先して物事を おこなうことは,私にとって∼.」. 操作的基準(H=Highest Point,L=Lowest Point) H. 家族や友人などに好意をもち,信頼している. 将来に対して肯定的であり,希望をもっている.. L. 家族や友人などに不信感をもっている. 人とのかかわりはトラブルのもとだとして,1人でいることを好む. 不安や辛さなどの否定的な将来展望をもっている.. H L H L. 物事をなしとげることをあまり重要視しておらず,自分の努力や試みは くつがえされたり失敗したりするだろうと感じている. 主体性が乏しく他人に物事を始めさせる.. H. 物を作ったり,完成するまでやり通すことが好きである. 自分の活動,仕事,趣味に対する能力(腕前)があると感じており, 自分がしてきたこと,作ったものに対して,自信や誇りをもっている.. L. 何かを生産したり,仕事にたずさわったりする能力に欠けていると感じ たり苦痛を抱いていたりする.課題や物事になかなか着手することが できなかったり失敗するだろうと感じたりして,受動的である.. H. はっきりと自分の社会的役割を定義し,それに精通し,喜んでそれらの 役割行動をとっている. 集団への所属感,自分の生活や活動について安心感がある. 自分を他者とは異なる唯一の存在と明確に理解し,確信している.. L. 自分がとらねばならない役割に対してぎこちなさがあり,確信をもって 要求された役割行動の中へ入っていない. 自分が何者であるか分からず不安を抱いていたりする.. 目的変数. Ⅳ. Ⅴ. 勤勉性vs劣等感. 同一性vs 同一性拡散. 「一つの課題や物事を やり通すことは,私にとって∼.」 「私の趣味は∼. それについて私は∼.」. 「私の役割は∼. それについて私は∼.」 「私という人間は∼.」. その結果,性別という変数の影響が最も強く,男性の. H. 方が F2,F4が高いという回避傾向を,女性の方が F 1,F3,F5が高いという接近傾向をとるという,性に. Ⅵ. 親密性vs孤独. 「私は友人と∼.」 「親密な関係は,私にとって∼.」. 世代性vs停滞. 「親である(になる)ことは, 私にとって∼.」 「私は,後輩や部下に対して∼.」. L. Ⅶ. よって死への距離のとり方が異なることが示唆された. このことは,男性が死に嫌悪をもち女性が憧れを抱くと いう死のイメージ水準の結果(李,1990)を支持するも. Ⅷ. 統合性vs絶望. 評定方法. 「死に対して私は∼.」 「私はこれまでの自分の人生を 振り返ってみて∼.」. 自分自身の意見をもち,自分の考えを実行することに,価値を認めた り喜びを感じていたりする. 自分の考え方や物事のやり方は,自分自身の意志によるものであり, 必ずしも他者の期待のもとの習慣や先例に従ったものではないとす 自分の意見を述べること,考え方や物事のやり方に対して,非常に自 分を意識したり内気になったり恥ずかしいと思ったりする. 自己主張をさけ,どれだけ他人と同じようにもしくは他者が望むままに 自分が行動し感じているかを強調している. 自分の生活や仕事に主体性をもっており,それに充実感や喜びを抱い ている.自分の内的動機にもとづき,自発的かつ意欲的に活動をすす んでおこない,楽しんでいる.自分の行動に責任を持とうとする心構え があり,それに楽しみを見出したり自信があったりする.. H L H L. 自分を見失うことなく,友人などと近しい親密な関係をもっている (思想,考えをわけあう.時をともにすごす.暖かい感情を表現する etc).相互に強い情緒的な結びつきがあったり親密な関係を重要視し ていたりする. 親である(になる)ことや後輩の指導に,あまり関心をもたなかったり避 けたり不安や嫌悪感を抱いたりする. 次世代への援助よりもむしろ自分本位で自分自身のことばかり(自己 中心的に)考えている. 次の世代の成長や教育に対して,積極的な興味・関心を示しそのこと へエネルギーを注いだり,親である(になる)ことに自信をもっていたり する. 世話役割を担うことに喜びを見出している. 親である(になる)ことや後輩の指導に,あまり関心をもたなかったり避 けたり不安や嫌悪感を抱いたりする. 次世代への援助よりもむしろ自分本位で自分自身のことばかり(自己 中心的に)考えている. 自分の生活,仕事,なしとげてきたことに満足し,幸福感を抱いてい る. 自分の人生に対する責任を受け入れている. 自分の死にあまり恐怖を感じず,希死念慮もみられず,受け入れる姿 自分の人生は失敗だったと感じ悲観的に捉え,もう一度チャンスがあ るなら,人生を変えたいと思っている. 老いや死に対して恐怖感をもっていたり希死念慮がある.. 各回答について操作的基準にそい5段階. のであるが,性差に関しては先行研究で統一した見解が. に評定して得点化を行い各下位尺度得点および総得点で. 出されておらずさらなる検討が求められる.年齢につい. 評価した.高得点ほど発達課題の達成度が高い.全回答. ては,加齢にともない F3,F5が高く DAS が低いとい. 中,30 名 480 項目は筆者に加え臨床心理学専攻大学院. う死を苦しみからの解放と捉え死への怖れが少ない否定. 生1名によって評定され,一致率は 87.5%であった.. 的接近の傾向がみられ,中高年層の自殺の多さとの関連. 結果と考察. を示唆した.また,死に対する準備や死別の体験という. 1.SCT−EIの特徴 内的整合性については全 16. 一人称および二人称の死に関する経験は,死の意味を肯. 項目の信頼性係数が .646 と充分な信頼性を示し,発達. 定的に見出すのを促すことが認められた.一方,死に対. 段階後半に部分的に加齢との正の相関関係がみられた.. する準備によって死を嫌がらずに苦しみからの解放とし. 2.自我同一性と死の意味および死への怖れとの関連. てネガティブに死に近付く傾向や,死別体験を通して死. SCT−EI の各下位尺度および尺度全体の得点につい. への怖れを高め否定的感情も抱くことを示し,死に関す. て平均値分割によって High 群と Low 群に分類したもの. る経験についてどのような体験をしたかという内容と死. を独立変数,死の意味の各下位尺度と DAS を従属変数. の意味との関連の検討が挙げられた.. . とし t 検定をおこなった(Table8).

(4) Table8 SCT−EIの各下位尺度の高低による“ 死の意味尺度”とDASの得点差. F1「死の有意義性」 F2「死の忌避」 F3「苦難からの解放としての死」 F4「死の無拘泥」 F5「死後の永続性による受容」 DAS. F1「死の有意義性」 F2「死の忌避」 F3「苦難からの解放としての死」 F4「死の無拘泥」 F5「死後の永続性による受容」 DAS. Ⅰ「基本的信頼感vs不信」 Ⅱ「自律性vs恥・疑惑」 Ⅲ「自主性vs罪悪感」 Ⅳ「勤勉性vs劣等感」 H群 L群 H群 L群 H群 L群 H群 L群 n=176 n=124 n=141 n=159 n=114 n=186 n=170 n=130 M(SD) M(SD) t値 M(SD) M(SD) t値 M(SD) M(SD) t値 t値 M(SD) M(SD) 51.13 47.96 -2.990* * 50.02 49.64 -.357 51.52 48.78 -2.530* 51.53 47.58 -3.769* * * (8.73) (9.51) H>L (8.58) (9.70) (9.12) (9.09) H>L (9.01) (8.95) H>L 10.28 9.69 -1.64 9.37 10.63 3.567* * * 9.63 10.28 1.770+ 10.13 9.92 -.589 (3.00) (3.25) (2.93) (3.16) H<L (3.07) (3.12) H<L (3.10) (3.14) 7.03 7.04 .020 7.00 7.07 .230 6.86 7.15 .926 6.81 7.34 1.770+ (2.62) (2.55) (2.48) (2.69) (2.81) (2.45) (2.63) (2.52) H<L 7.03 7.16 .463 7.24 6.94 -1.053 6.86 7.22 1.242 6.85 7.38 1.833+ (2.37) (2.55) (2.43) (2.46) (2.31) (2.52) (2.25) (2.66) H<L 6.77 6.60 -.579 6.89 6.53 -1.220 7.03 6.50 -1.713+ 6.81 6.56 -.809 (2.67) (2.48) (2.69) (2.50) (2.74) (2.48) H>L (2.43) (2.79) 5.97 5.83 -.406 5.54 6.29 2.350* 5.96 5.78 .527 6.13 5.70 -1.348 (2.84) (2.65) (2.60) (2.81) H<L (2.77) (2.67) (2.99) (2.50) Ⅴ「同一性vs同一性拡散」 H群 L群 n=158 n=142 M(SD) M(SD) t値 50.89 48.63 -2.114* (8.33) (9.94) H>L 9.58 10.54 2.694* * (2.94) (3.24) H<L 6.99 7.08 .303 (2.63) (2.55) 6.90 7.29 1.382 (2.28) (2.61) 7.28 6.05 -4.285* * * (2.74) (2.25) H>L 5.49 6.25 2.390* (2.50) (2.89) H<L. Ⅵ「親密性vs孤独」 H群 L群 n=175 n=125 M(SD) M(SD) t値 51.41 47.60 -3.611* * * (8.60) (9.54) H>L 10.14 9.89 -.698 (3.11) (3.12) 6.73 7.46 2.433* (2.65) (2.45) H<L 7.09 7.07 -.068 (2.36) (2.56) 6.63 6.79 .519 (2.66) (2.49) 6.10 5.74 -1.110 (2.86) (2.63). Ⅶ「世代性vs停滞」 Ⅷ「統合性vs絶望」 H群 L群 H群 L群 n=120 n=180 n=121 n=179 M(SD) M(SD) t値 M(SD) M(SD) t値 51.38 48.78 -2.415* 50.86 49.12 -1.617 (8.65) (9.40) H>L (8.59) (9.52) 10.19 9.94 -.666 9.07 10.69 4.543* * * (3.05) (3.16) (2.79) (3.16) H<L 7.02 7.05 .112 6.97 7.08 .383 (2.38) (2.73) (2.73) (2.50) 6.94 7.18 .819 7.12 7.06 -.236 (2.34) (2.51) (2.40) (2.48) 6.99 6.51 -1.596 7.31 6.28 -3.436* * (2.62) (2.56) (2.69) (2.45) H>L 5.77 6.07 .919 5.57 6.38 2.485* (2.66) (2.83) (2.55) (2.93) H<L (N=300.+p< .10,* p< .05,* * p< .01,* * * p< .001.). その結果,発達課題の達成度が高いほど,F1と F5 が高く, F2と F3 と DAS が低いという結果がえられた. つまり,自己の在り方および自己を社会のなかに位置付 けるという生涯にわたる問いかけに対しての態度がある ほど,単に死を苦難からの解放と捉えたり怖がったりせ ず,死後も存在し続けると信じつつ,死という問題に向 き合いながら死の肯定的意義を考えることが推察された. したがって,この自我同一性の達成度の高さと死をポジ ティブに意味づけ接近するという態度とは関連があるこ とが示唆された.死をどう意味づけ向き合うかというこ とは,自己の在り方および周囲にどのように自己を位置 づけるかという問いかけとかかわってくると考えられる. 3.中年期と青年期との比較 まず,中年期は身体面や 退職など自己の内外の変化がより大きい中年期後期(62 名,range50−64)を,青年期は成人期の移行の遅延化の 現状(下山,1998)より社会参加をしている勤労青年(38 名,. range20−29)を対象とした.また,中年期と青年期. の各発達課題である第五段階と第七段階に焦点を当てた. 独立変数を発達段階(中年期群/青年期群) ,SCT−EI 得 点(第七段階 H 群/L 群もしくは第五段階 H 群/L 群)とし,従 属変数を死の意味尺度の各下位尺度,DAS として,2× 2の二元配置分散分析を行った.その結果,第七段階で はF2において発達段階と世代性の主効果が有意傾向に ,中年期群が青年 あり(F(1,96)=2.885,p<.10;F(1,96)=3.270,p<.10) 期群よりも,世代性 H 群は L 群よりも有意に低い平均 値を示した.第五段階では,F5において同一性の主効 ,同一性 H 群は L 群よ 果が有意であり(F(1,96)=4.763,p<.05) りも有意に高かった.これらの主効果については年齢や 発達課題の高低という先述の結果を支持した. また,第五段階では,F2において交互作用が有意で あった(F(1,96)=6.705,p<.05) .下位検定の結果,単純主効果 については,中年期群において同一性 H 群が L 群より も,また同一性 H 群において中年期群が青年期群よりも 有意に低い平均値を示した(F(1,96)=6.151,p<.05;F(1,96)=5.877, ) .中年期では同一性の達成度が高いほど死を忌み嫌. p<.05. わずに向き合うという,同一性という発達課題の達成度. の重要性が示唆された.また,中年期にとっての同一性 の達成度は,青年期よりも死を否定的に捉えて回避する かどうかという死への向き合い方との関連を示した.つ まり,青年期での同一性確立という課題は死とはあまり 関係をもたずになされていく一方,中年期での自我同一 性の再体制化には,自己の内外の変化をきっかけに自己 の在り方を問い直し今後の人生の再方向付けのプロセス で自他の死を身近に感じる時期ゆえ,死にどのように向 き合うかということが関与してくると考えられる. 以上,今回の中年期と青年期の比較を通して,同じ発 達課題であっても発達段階によってその達成度と死の意 味との関連が異なることが示されたが,他の発達段階間 でも比較検討をおこなう有用性を高めたといえる.その 際,発達段階の特徴をふまえたうえで,各発達段階の単 独の分析単位のみならず個人の発達の全体像も含めてみ ることで,死の意味と発達課題との関連についてのさら なる知見がえられるだろう.方法論として,SCT 尺度の 検討や内容分析による独自の視点による考察も望まれる. 今後の展望 臨床的示唆. 臨床現場への貢献の第一段階として死に. 対する心理について把握し,それをふまえたうえでの援 助が重要である. 今回作成した死の意味尺度については, 臨床家として,回答者がどのような死に対する意味づけ をしているのかという状態を,恐怖という一側面のみで はなく評価と距離という他の側面からも,精神的健康や 自我同一性と関連付けて把握することに有効と思われる. また,臨床現場では,クライエントの死への否定的態度 も受けとめつつ肯定的意味づけにも目を向けていきなが ら,この質問紙では捉えきれなかった,肯定的,否定的 という狭間で揺れ動くこころに寄り添いながらのかかわ りが重要ではないだろうか. 本研究の課題. 課題として(a)死の意味尺度や自我同. 一性との検討におけるライフ・サイクルの視点の展開, (b)死の研究を行ううえでの臨床的配慮のさらなる検 討, (c)一般の人々の死に対する心理を扱う研究と臨床 的側面に関する研究との橋渡しとしての試み, (d)けが れ意識,諦観,無常観などの他の死に対する態度との関 連について文化的要素も含めた検討が挙げられる. 文献 坂口幸弘. 2002. 死別後の心理的プロセスにおける意. 味 の役割−有益性発見に関する検討− 心理学研究,73, 275-280. 丹下智香子 度. 1999. 青年期における死に対する態度尺.

(5) の構成および妥当性・信頼性の検討 心理学研究,70, 327-332..

(6)

参照

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