ペルフルオロ(オクタン-1-スルホン酸)及びその塩のリスク評価
目 次 1. 概要 ... 3 2. 試算条件等 ... 3 2.1 対象物質 ... 3 2.2 リスク評価の対象と有害性情報 ... 4 2.3 暴露評価に用いた物理化学的性状等 ... 5 2.4 環境分配モデル ... 6 2.5 人と高次捕食動物の暴露シナリオ ... 7 2.6 推計排出量 ... 7 2.7 環境中濃度の計算条件 ... 9 3. 試算結果 ... 9 3.1 環境中濃度推計結果 ... 9 3.2 モデル推計濃度に基づくリスク評価結果 ... 11 4. モデル推計濃度と環境モニタリング濃度との比較 ... 12 5. 資料 ... 14 5.1 参考資料 ... 14 5.2 添付資料 ... 15独立行政法人 製品評価技術基盤機構
化学物質管理センター
2009 年 7 月概要
ペルフルオロ(オクタン-1-スルホン酸)(別名 PFOS)及びその塩の例外的使用に係るリスク の試算を実施した。 PFOS 及びその塩を対象物質として、排出量を推計し、それを元に環境中濃度を推計し、人、 高次捕食動物、水生生物それぞれの暴露量を数理モデルで推計した。排出量の推計は経済産業省 指定の条件で行った(1.6参照)。数理モデルの適用等については、以下の資料を主に参考にし た(以下、「UK 評価書」と表記。)。UK Environmental Agency, 2004, Environmental Risk Evaluation Report: perfluorooctane sulphonate (PFOS). http://www.pops.int/documents/meetings/poprc/submissions/Comments_2006/sia/pfos.uk.risk.eval. report.2004.pdf モデル推計による環境中濃度の経年変化の予測では、当該物質は排出量が低減すると比較的速 やかに環境中濃度も低減すると推計された。 モデル予測濃度を用いたリスク評価の結果では、高次捕食動物については、平成20 年度までの 排出量におけるリスク評価(魚類中濃度)では「リスク懸念」とされたものの、平成22 年度以降 においては「懸念なし」と推計された。また、人の健康、水生生物のリスク評価では、いずれの 条件においても「懸念なし」と推計された。 モデル予測濃度と環境モニタリングデータの比較では、海水中濃度と底質濃度では、比較的良 く一致している一方で、魚類中濃度では乖離が見られており、この結果、モニタリング濃度に基 づくリスク評価では、高次捕食動物についても、「リスク懸念なし」との結果が得られている。こ れは、モデル推計に適用したBCF及びBMFについては安全側に推計された値を用いたことに よると考えられる。 以上を総合し、PFOSの例外的使用に関する本リスク試算では、人の健康、高次捕食動物、 水生生物に対してリスク懸念はないと予測された。
1.
試算条件等
1.1 対象物質
PFOS に関連する第二種監視化学物質は4物質(スルホン酸、Li、Na、K の塩)が指定されて いる。これらに経済産業省調査対象である物質群(アンモニウム塩を含むオニウム塩)を追加し、 以下の物質群を「PFOS 及びその塩」として評価対象物質とした。 対象物質一覧 通し番号 CAS 番号 名称 681 1763-23-1 ペルフルオロオクタンスルホン酸 683 29457-72-5 リチウム=ペルフルオロオクタンスルホナート 684 4021-47-0 ナトリウム=ペルフルオロオクタンスルホナート 685 2795-39-3 カリウム=ペルフルオロオクタンスルホナート ― 29081-56-9 ペルフルオロオクタンスルホン酸アンモニウム ― ― ペルフルオロオクタンスルホン酸のオニウム塩(アンモニウム塩を除く)1.2 リスク評価の対象と有害性情報
リスク評価の対象とそれに用いた有害性情報は以下の通り。 高次捕食毒物の評価には、鳥類の繁殖試験による LOAEC 10ppm(PNEC 換算 0.033 mg/kg 餌)とラット二世代生殖発生毒性試験による NOAEL 0.1 mg/kg/day(PNEC 換算 0.067 mg/kg 餌)の二種類で試算をした。 リスク評価対象とリスク評価に用いる有害性情報 リスク 評価 対象 有害性データ 不確実係数積 (Ufs) PNEC 等 (NOEC/ Ufs) 備考 人健 康 NOAEL 0.5 ppm (K 塩の 104 週混餌投与による発 がん性試験で、雄ラットにみられ た肝細胞肥大、NOAEL 0.5ppm よ り。Thomford, 2002) 100 種差10×個体 差10 0.0003 mg/kg/da y ・ 環境省の初期評価のキース タディも同様(UK 評価書は 人の評価はしていない) ・ 摂取量への換算は、環境省環 境 リ ス ク 評 価 書 と 同 じ NOAEL0.03mg/kg/day とし ている。 高次 捕食 動物 LOAEC 10 ppm (ウズラへの 21 週混餌投与(0, 10, 50, 150ppm) による長期繁殖試 験で、ふ化 14 日雛の生存率の低 下 の LOAEC 10ppm よ り 。 Newsted et al., 2007) 300 鳥類の長期毒性 試験結果の NOEC に対す るAssessment Factors 30(種 差と実験室から 野外への外挿) とLOEC から NOEC の外挿 10 より(30× 10) 0.033 mg/kg 餌 ・ Assessment Factors 30 は EU のリスク評価技術ガイ ダンスに基づく ・ LOAEC から NOAEC への 外挿はU.S.EPA より ・ UK 評価書も 3M のデータと して掲載しているが UF は 30 としておりリスク評価に は用いていない NOAEL 0.1mg/kg/day (SD ラットへの強制経口投与(0, 0.1, 0.4, 1.6, 3.2 mg/kg/day) によ る二世代生殖発生毒性試験で以下 の影響の NOAEL 0.1mg/kg/day より ・ F0: 全体的影響 ・ F1: 開眼遅延(用量依存) ・ F2: 体重増加抑制) (OECD, 2002) 30 哺乳類の長期毒 性試験結果の NOEC に対す るAssessment Factors 30(種 差と実験室から 野外への外挿) より 0.067 mg/kg 餌 ・ UK 評価書は人健康に用い た 肝 細 胞 肥 大 の NOAEL (NOAEC 換算 0.017mg/kg 餌)を採用しているが生態の 評価には over-conservative との認識も示し、本NOAEC をAlternative proposed と している ・ Assessment Factors 30 は EU のリスク評価技術ガイ ダンスに基づく ・ 餌中濃度に換算 水生 生物 NOEC 0.232 mg/L (以下3種の最小値、いずれもK 塩による) ・ 藻類慢性NOEC: 5.3 mg/L (緑藻類、4 日間、生長阻害(細胞 数)、Boudreau et al., 2003) ・ 甲殻類慢性NOEC:0.232 mg/L (アミ科、35 日間、繁殖阻害、 OECD, 2002) ・ 魚類慢性NOEC: 0.278 mg/L (ファットヘッドミノー(胚)、47 日間、死亡、OECD, 2002) 10 (3 種の慢性毒 性値が得られて いるため。野外 への外挿) 0.023 mg/L ・ 環境省の初期評価のキース タディも同様 ・ 淡水と海水の区別はしてい ない なお、底生生物に対するリスク評価については、「EU のリスク評価技術ガイダンスにある平衡分配法はPFOS の性状からみて適用できない」との OECD のハザード評価書の考察に基づき、こ こでは行わなかった。
1.3 暴露評価に用いた物理化学的性状等
物理化学的性状は K 塩で得られており、「PFOS 及びその塩」をこの性状で代表させた(UK 評価書と同様の扱い)。 いずれも出典は UK 評価書だが、底質-水分配係数と浮遊物質-水分配係数については、ここ で使用したモデル(SAFECAS)の設定に合わせ、換算しなおした。 モデル推計に使用した物理化学的性状等一覧 項目 記号 値 単位 備考 分子量 MW 538 - 蒸気圧 VP 3.31×10-4 Pa 実測値だが不純物の影響が示唆 されており、UK 評価書では limitation 付で採用されている 水溶解度 WS 519 mg/L 20℃ ヘンリー則定数 H 3.19×10-4 Pa・m3/mol 蒸気圧と水溶解度による計算値 底質-水分配係数 Ksed-water 9.2 - 実測値より換算 浮遊物質-水分配係数 Ksusp-water 2.64 - 実測値より換算 魚への生物濃縮係数 BCFfish 2796 L/kg 実測からの推計値 生物蓄積係数 BMF 2 - EU の技術ガイダンスのデフォルト設定より 環境中分解速度 ゼロ 実測の底質固相と間隙水の分配係数Kpsed(平衡状態の底質固相中濃度と間隙水中濃度の比 [L/kg])を底質(もしくは浮遊物質)バルクの平衡分配係数にするため、EU-TGD の以下の式で 換算した。Ksed-water = F water + Fsolid×Kpsed×RHOsolid/1000 Ksed-water :底質バルクの平衡分配係数 [-]
Kpsed :底質固相と間隙水の分配係数=8.7 [L/kg] (UK 評価書より)
F water :底質中の水の体積比=0.5 (SAFECAS の設定より) Fsolid :底質中の固体の体積比=0.5 (SAFECAS の設定より) RHOsolid :固体の密度=2000 [kg/m3] (SAFECAS の設定より) Ksusp-water = F water + Fsolid×Kpsed×RHOsolid/1000
Ksusp-water :浮遊粒子バルクの平衡分配係数 [-]
Kpsed :底質固相と間隙水の分配係数=8.7 [L/kg] (UK 評価書より)
F water :浮遊物質の水の体積比=0.9 (SAFECAS の設定より) Fsolid :浮遊物質の固体の体積比=0.1 (SAFECAS の設定より) RHOsolid :固体の密度=2000 [kg/m3] (SAFECAS の設定より)
1.4 環境分配モデル
東京湾を想定した水域と底質の 2 コンパートメントモデル SAFECAS(Simplified Approach for Fate Evaluation of Chemicals in Aquatic Systems)を使用した。ただし、非定常計算が できるように改良した。 (化学物質審議会安全対策部会第3回安全対策小委員会 参考資料2より) SAFECAS は、化学物質審議会安全対策部会安全対策小委員会における監視化学物質の環境 中濃度の推計や、平成15 年の化審法改正における尐量新規の数量設定のためのシミュレーシ ョン等において、適用実績がある(東京湾及び瀬戸内海を想定した設定で使用された)。 SAFECAS の東京湾のパラメータは、国土技術政策総合研究所の東京湾内湾のデータ (http://www.meic.go.jp/kowan/main.html) に更新した。 東京湾のパラメータ 項目 外湾 内湾(本計算で使用) 評価面積 [m2] 1.38×109 9.22×108 水域面積 [m2] 1.38×109 9.22×108 水深 [m] 45 16 水域体積 [m3] 6.21×1010 1.48×1010 滞留時間 [day] 45.6 45 SAFECAS のようなボックスモデルでは、上図のような物質収支に基づくボックス毎の物質 残存量を計算し、ボックス体積で割ることで濃度を算出するため、ボックス体積(環境の大 きさ)を例えば2 倍にすれば、(他の条件がすべて同じの場合)予測濃度は2 分の1になると いう関係がある(MNSEM2 も EUSES といった他のボックスモデルも同様)。
PFOS 及びその塩は logKow が測定できないため、環境分配モデルの適用においては、logKow や logKoc の替わりに、底質-水分配係数等で数式を置き換え、モデルを適用した(UK 評価 書と同様のアプローチ)。
1.5 人と高次捕食動物の暴露シナリオ
下図のような暴露シナリオを想定し、2.4 のモデルによる推計水中濃度を用いて人と高次捕食動 物の暴露量を推計した。魚類中濃度
餌生物中濃度
水中濃度
東京湾の海水
エラ呼吸
東京湾の魚に濃縮
エラ呼吸
東京湾の魚の餌生物
(エビ、小魚など)に濃縮
摂取
摂取
高次捕食動物
人
※PFOSの摂取に関しては 東京湾の魚のみ考慮 化学物質一定速度で排出
東京湾の底質
平衡分配
魚類中濃度 =BCF×水中濃度+ BMF ’ ×餌中濃度
=BCF×水中濃度+ BMF ’ ×
BCF×水中濃度
=BCF×水中濃度×(1 + BMF ’ )
=BCF×水中濃度×BMF
←
EU-TGDの式
(この式で魚中濃度を出している。すなわち水からと餌からの両方の濃縮を想定) 餌生物のBCFが 魚のBCFと同じ と仮定 BCF BMF摂取
暴露シナリオと魚類中濃度の推計式1.6 推計排出量
平成18~20 年度の3年間と、例外的使用適用後の平成22年度以降に分けて設定した。 なお、PFOS の推計排出量は「PFOS 及びその塩」として、各物質(スルホン酸、Li、Na、K の塩等)の数量をそのまま用い、合算して求めた。すなわち、分子量を用いてPFOS 分に換算す ることはしていない(UK 評価書と同様の扱い)。 (1) 泡消火薬剤について 泡消火薬剤(消火器用消火薬剤を含む。)はガソリンや軽油等から生じる火災を消し止めるため に使用されることから、駐車場や空港、消防所又はコンビナートに配備されており、PFOS 量と して日本全体に148.8t の消火薬剤が備置されている。その内、東京湾へ排出される可能性がある 泡消火薬剤の割合は、東京湾流域(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県を想定)の人口割合であ る27%を用いることとした。 一方、泡消火薬剤の納品先及び使用実績から、現在の環境への排出係数は1.8%、今後、点検時 の放出を行わない等の対策を講じた場合の環境への排出係数は0.16%である。 以上のことより、泡消火薬剤による東京湾への推計排出量は以下の通りとした。東京湾への泡消火薬剤の推計排出量 (経済産業省調査に基づく試算) 年度 全国の在庫量 [トン] A 東京湾へ排出さ れる可能性があ る消火薬剤の割 合 B 排出係数 C 東京湾への 推計排出量[kg] A×B×C 平成20年度以前 148.8 27% 1.8% 723 平成22年度以降(予定) 148.8 27% 0.16% 64 (2) 泡消火薬剤以外の用途について PFOS の泡消火薬剤以外の用途として、半導体用レジスト・反射防止剤、金属めっき処理剤、 写真フィルム又は印画紙等の用途がある。各用途別の平成18~20 年における東京湾への推計排 出量は、経済産業省の調査に基づく試算により以下の通りとした。 東京湾への泡消火薬剤以外の推計排出量 (平成20年度以前) (経済産業省調査に基づく試算) 年度 用途別推計排出量 [kg] 合計推計 排出量 [kg] 半導体用レジ スト・反射防止 剤 金属めっき処 理剤 写真フィルム 又は印画紙 その他 平成18年度 93 222 1 334 650 平成19年度 129 196 3 451 779 平成20年度 105 50 1 133 289 ※全国排出量のうち東京湾へ排出される割合については、金属メッキ処理剤については工業統計の当該用途に関 連する産業分類の出荷額の割合に基づき24%とし、金属メッキ処理剤以外については100%とした。 一方、平成22年度以降は、例外的使用のみを認めた場合の環境への排出量となり、以下の通 りである。 東京湾への泡消火薬剤以外の推計排出量 (平成22年度以降) (経済産業省調査に基づく試算) 年度 用途別推計排出量 [kg] 合計推計 排出量 [kg] ①半導体用レジスト ②圧電フィルタ用又 は高周波に用いる化 合物半導体用のエッ チング剤 ③業務用写真フィル ム 平成22年度 以降(予想) 8.4 0.7 0.1 9.2
(3) 推計排出量の合計 (1)及び(2)より東京湾への PFOS の推計排出量は以下の通りとなる。 東京湾への推計排出量 (経済産業省調査に基づく試算) 年度 環境放出量[kg] 泡消火薬剤の 用途からの排出量[kg] 泡消火薬剤以外の 合計推計排出量[kg] 平成18年度 723 650 1,373 平成19年度 723 779 1,502 平成20年度 723 289 1012 平成22年度以降 (予想) 64 10 74
1.7 環境中濃度の計算条件
上記 2.5 で設定した排出速度(1,373kg/year(平成18年度)、1,502kg/year(平成19年度)、 1,012kg/year(平成20年度)、74kg/year(平成22年度以降))で水域に排出し続けるという 条件で、SAFECAS を用いて定常状態に達した濃度を計算。 魚類中濃度は、水中の定常濃度に BCF(2796)と BMF(2)を乗じて計算(2.5 参照)。 参考までに、5 年間、一定の排出速度(上記の通り)で水域に排出し、その後排出をゼロと して10 年後までの濃度変化も計算。2.
試算結果
2.1 環境中濃度推計結果
2.3 に示した物理化学的性状等と 2.5 の推計排出量を 2.4 の環境分配モデルに入力し、水域に排 出し続けた場合の環境中の定常状態濃度を推計した。このうち水中濃度と魚類中濃度をリスク評 価に使用した。 環境中の予測定常濃度一覧 年度 水中濃度[mg/L] 魚類中濃度[mg/kg] 底質中濃度[mg/kg] 平成18 年度 1.6×10-5 8.9×10-2 2.7×10-3 平成19 年度 1.7×10-5 9.7×10-2 3.0×10-3 平成20 年度 1.2×10-5 6.6×10-2 2.0×10-3 平成22 年度以降 8.6×10-7 4.8×10-3 1.5×10-4 ■濃度の時系列変化(参考) 各年度の排出水準を前提とした水中濃度、底質中濃度の経年変化(一定水準の排出が5年継続 し、その後排出を停止した場合)を以下に示す。これによれば、排出が始まると水中濃度、底質中濃度とも比較的早く定常濃度に達し、排出がなくなると速やかに、この区画中からは消失する と予測された。 PFOS は他の POPs物質と比較すると、水と底質の分配において比較的、水にも分配している こと、このモデル計算では水域の水の滞留時間は45 日としていること等から、環境中のこの二つ の区画の中の消長としてはこのようになったと考えられる。 0.0E+00 2.0E-06 4.0E-06 6.0E-06 8.0E-06 1.0E-05 1.2E-05 1.4E-05 1.6E-05 1.8E-05 2.0E-05 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 経年変化[年] 水中濃度[ m g/ L] 平成20年度 平成18年度 平成19年度 平成22年度以降 計算条件: 1~5年 一定量で排出 6~10年 排出ゼロ 水中濃度の時系列予測結果 0.0E+00 5.0E-04 1.0E-03 1.5E-03 2.0E-03 2.5E-03 3.0E-03 3.5E-03 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 経年変化[年] 底質中濃度[ m g/ kg] 平成20年度 平成18年度 平成19年度 平成22年度以降 計算条件: 1~5年 一定量で排出 6~10年 排出ゼロ 底質中濃度の時系列予測結果
2.2 モデル推計濃度に基づくリスク評価結果
環境中の予測定常濃度を用いてリスク評価を行った。 人の健康のリスク評価では、いずれの条件においても「懸念なし」と推計された。 高次捕食動物のリスク評価では、平成20 年度までの推計排出量におけるリスク評価(魚体内濃 度)では「リスク懸念」、平成22 年度以降においては「懸念なし」と推計された(PNEC=0.033 mg/kg 餌を用いた場合)。 水生生物のリスク評価では、いずれの条件においても「懸念なし」と推計された。 人の健康に対するリスク評価結果 対象 有害性 年度 推計摂取量 [mg/kg/day] ハザード比 (HQ=推計摂取量/TDI) 人健康 0.0003 TDI= mg/kg/day 平成18年度 0.00017 0.57 (懸念なし) 平成19 年度 0.00019 0.62 (懸念なし) 平成20年度 0.00013 0.42 (懸念なし) 平成22年度以降 0.0000092 0.031 (懸念なし) ※推計摂取量=魚類中濃度×魚摂取量/体重 魚類中濃度=水中濃度×BCF×BMF 魚摂取量:95.6g/人/day注)、体重:50kg 注) 平成12 年国民栄養調査による 15 歳以上における平均魚介類摂取量(出典:産業技術総合研究所 化学物質 リスク管理研究センター、暴露係数ハンドブック、http://unit.aist.go.jp/riss/crm/exposurefactors/) なお、魚摂取量を高暴露集団の魚介類多食者を想定した場合は 268g/day となり、これを用いると平成 18~ 20 年度ではハザード比は 1 を超え(1.2~1.7)リスク懸念と推計されるものの、4.に記載のとおり、魚体 中濃度が高めに推定されていることが影響しているものと考えられる。(高暴露集団の魚摂取量268g/day の 出典:第9回中央環境審議会環境保健部会資料4 その 6「第一種特定化学物質を1トン環境中に放出した場合 の環境中濃度の予測」、平成15 年、http://www.env.go.jp/council/05hoken/y053-05/mat04-6.pdf) 高次捕食動物に対するリスク評価結果 対象 有害性 年度 餌(魚)中濃度 [mg/kg 餌] HQ 高次捕食 動物(魚食 性哺乳類、 魚食性鳥 類) PNEC= 0.033 mg/kg 餌 平成18年度 0.089 2.7 (懸念) 平成19 年度 0.097 2.9 (懸念) 平成20年度 0.066 2.0 (懸念) 平成22年度以降 0.0048 0.15 (懸念なし) PNEC= 0.067 mg/kg 餌 平成18年度 0.089 1.3 (懸念) 平成19 年度 0.097 1.5 (懸念) 平成20年度 0.066 0.98 (懸念なし) 平成22年度以降 0.0048 0.072 (懸念なし) ※餌(魚)中濃度=水中濃度×BCF×BMF (BMF の設定は UK 評価書と EU のリスク評価ガイダンスに基づいた。) 水生生物のリスク評価結果 対象 有害性 年度 水中濃度 [mg/L] HQ 水生生物 0.023 mg/L PNEC= 平成18年度 0.000016 0.00069 (懸念なし) 平成19 年度 0.000017 0.00076 (懸念なし) 平成20年度 0.000012 0.00051 (懸念なし) 平成22年度以降 0.00000086 0.000037 (懸念なし) ※淡水と海水の区別はしていない。3.
モデル推計濃度と環境モニタリング濃度との比較
3.1 に示した推計濃度(水中濃度、底質中濃度、魚類中濃度)と、環境モニタリングによる測定 値とを比較した。環境モニタリング情報は、環境省の「化学物質の環境リスク評価 第6巻, ペ ルフルオロオクタンスルホン酸及びその塩」で整理されていた情報から、以下のように抜粋・整 理し、推計値との比較を図示した。魚類中濃度のみ、UK 評価書から米国の濃度も比較対象とし て示した。 公共用水域・淡水 複数の調査それぞれの幾何平均値、最大値の調査間のmin と max (検出率は複数調査でのべ286/321) 公共用水域・海水 同上(検出率は複数調査でのべ37/37) 底質(公共用水域・淡水) 同上(検出率は複数調査でのべ 10/16) 底質(公共用水域・海水) 同上(検出率は複数調査でのべ 7/14) 魚類(公共用水域・淡水) 同上(検出率は複数調査でのべ 6/6) 魚類(公共用水域・海水) 同上(検出率は複数調査でのべ 21/22) 魚類(米国の3M 工場の上・下流) 各図の左端のプロットが推計値であり、他は測定値である。 水中濃度と底質中濃度の推計値は、国内で測定された濃度の範囲内であった。 現況の排出量レベルを想定した魚類中濃度のモデル推計値(平成 18~20 年度)は、国内で測 定された範囲よりも高めに推計された。これには、以下のような理由が考えられる。魚類中濃度 の推計に用いたBCF の値(2796)は、56 日間の試験期間でも定常に達していないとして取り込 み速度と排泄速度の比から推定されたkinetic BCF である(OECD 有害性評価書のロバストサマ リには単純に濃度比をとったWhole fish の BCF は 859 等とある)。PFOS が生体に蓄積される機 構は脂溶性の物質と異なるとされている。ここでのkinetic BCF の値には、脂溶性物質などと比 較して排泄されにくいPFOS の性質が排泄速度を通じて反映されていると考えられる。そのため、 このkinetic BCF については安全側に推計された数値と考えられる。また、この kinetic BCF か ら逆算して求めた logKow に基づいて設定された BMF についても、安全側に設定されていると 考えられる。 環境モニタリングによる魚類中濃度を使用して高次捕食動物のリスク評価を行うと、魚類中濃 度の図に示すとおり、東京湾から採取した魚(海水魚における最大値0.0068 mg/kg)も含め最も 高濃度の淡水魚(0.012 mg/kg)でもリスク懸念なしと推計される。 さらに、人の健康に関して環境モニタリングによる魚類中濃度を使用してリスク評価を行うと、 東京湾から採取した魚(海水魚における最大値0.0068 mg/kg)で HQ は 0.04、最も高濃度の淡 水魚(0.012 mg/kg)で HQ は 0.08 となり、いずれでもリスク懸念なしと推計される。■水中濃度 0.013 11 0.006 0.001 0.0015 0.67 0.0089 0.028 0.012~ 0.017 0.00086 1.0E-04 1.0E-03 1.0E-02 1.0E-01 1.0E+00 1.0E+01 1.0E+02 推 計 濃 度 淡 水 ( 最 大 値 ) 淡 水 ( 幾 何 平 均 値 ) 海 水 ( 最 大 値 ) 海 水 ( 幾 何 平 均 値 ) 水中濃度[ μ g/ L] 最小値 最大値 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成22年度以降 水生生物に対する PNEC=23 ■底質中濃度 0.0008 0.00021 0.0043 0.00014 0.000048 0.0004 0.00035 0.00021 0.0020~ 0.0030 0.00015 1.0E-05 1.0E-04 1.0E-03 1.0E-02 1.0E-01 1.0E+00 推 計 濃 度 淡 水 ( 最 大 値 ) 淡 水 ( 幾 何 平 均 値 ) 海 水 ( 最 大 値 ) 海 水 ( 幾 何 平 均 値 ) 底質中濃度[ m g/ kg] 最小値 最大値 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成22年度以降
■魚類中濃度 0.0023 0.0591 0.012 0.0055 0.133 0.0011 0.00052 0.002 0.0068 0.0011 0.066~0.097 0.0048 1.0E-04 1.0E-03 1.0E-02 1.0E-01 1.0E+00 推 計 濃 度 淡 水 ( 最 大 値 ) 淡 水 ( 幾 何 平 均 値 ) 海 水 ( 最 大 値 ) 海 水 ( 幾 何 平 均 値 ) U S の 3 M 工 場 の 上 流 U S の 3 M 工 場 の 下 流 魚類中濃度[ m g/ kg] 最小値 最大値 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成22年度以降 高次捕食動物に対する PNEC=0.033 (鳥類繁殖試験による)
4.
資料
4.1 参考資料
・ 環境省環境保健部環境リスク評価室, 2008, 化学物質の環境リスク評価 第6巻, ペルフルオ ロオクタンスルホン酸及びその塩 http://www.env.go.jp/chemi/report/h19-03/pdf/chpt1/1-2-2-19.pdf ・ UK のPFOSのリスク評価書UK Environmental Agency, 2004, Environmental Risk Evaluation Report: perfluorooctane sulphonate (PFOS).
http://www.pops.int/documents/meetings/poprc/submissions/Comments_2006/sia/pfos.uk.r isk.eval.report.2004.pdf
・ OECD の PFOS とその塩の有害性評価書
OECD, 2002, Hazard Assessment of perfluorooctane sulphonate (PFOS) and Its Sals. ENV/JM/RD(2002)17/FINAL
http://www.oecd.org/dataoecd/23/18/2382880.pdf ・ 鳥類の繁殖試験に関わる資料
Newsted, J.L. et al., 2007. Effects of perfluorooctane sulphonate on malloard and northern bobwhite quail exposed chronically via the diet. Environmental Toxicology and Pharmaclogy, Vol.23, 1-9.
Giesy, J. 2004. Toxicological perspectives on perfluorinated compounds in avian species. Organohalogen Compounds, Vol.66, 4086-4089.
・ 数理モデルSAFECAS 関連資料
化学物質審議会安全対策部会第3回安全対策小委員会資料
Yoshida, K., Shigeoka, T. and Yamauchi, F. 1987. Evaluation of Aquatic Environmental Fate of 2,4,6-torichlorophenol with Mathematical Model. Chemosphere, Vol. 16, 2351-2544.
4.2 添付資料
対象種 試験種類 試験期 間 用量 エ ン ド ポ イ ン ト 毒性種類 毒性の 数値 単位 U fs 高次捕食 動物リ ス ク 評価に 推奨 理由 備考 出典 鳥類 ウ ズ ラ N o th e rn b o bt ai l qu ai l 急性 5日 死亡 LC 5 0 220 m g/ kg fo o d 3000 0 .0 7 3 m g /k g f o o d ・ U K 評価書 p .5 8 親: 死亡、 体重、 肝重量、 繁殖 子: 生存、 体重、 肝重量 N O A E C 雌 10 m g/ kg fo o d 30 0 .3 3 3 m g /k g f o o d 睾 丸 サ イ ズ 小 、 精 子 形 成の減尐 L O A E C 雄 10 m g / k g f o o d 300 0 .0 3 3 m g / k g f o o d ○ ・ 精子形成の減尐は「 ふ化率の 低下又はそれに 準じ て 毒性学 的に 重要な 影響」 と 判断 ・ LO A E C な ので U F が大 ・ LO A E C から N O A E C の外挿1 0 はE PA よ り ・ U K 評価書で は何故か考慮し て い な い 死亡、 体重、 餌摂取量、 肝重量、 病理( 雌) N O A E C 10 m g/ kg fo o d 30 0 .3 3 3 m g /k g f o o d 親 : to a c c e le ra te t h e p o s t-re p ro d u c ti v e p h a s e r e g re s s io n 子 : 生 存 率 低 下 L O A E C 10 m g / k g f o o d 300 0 .0 3 3 m g / k g f o o d ○ ・ 子の生存率低下は「 ふ化率の 低下又はそれに 準じ て 毒性学 的に 重要な 影響」 と 判断 ・ LO A E C な ので U F が大 ・ LO A E C から N O A E C の外挿1 0 はE PA よ り ・ U K 評価書で は何故か考慮し て い な い ほ乳類 S p ra g u e -D a w le yラ ッ ト 中・ 長期 毒性 90日 胸腺リ ン パ濾胞細胞減尐 LO A E C 30 m g/ kg fo o d 900 0 .0 3 3 m g /k g f o o d ・ 環境省 環境リ ス ク 評 価書 p. 1 0 S p ra g u e -D a w le yラ ッ ト ( 下記の 実験の一部) 中期毒性 14週 雄: 肝細胞肥大 N O A E C 2 m g/ kg fo o d 90 0 .0 2 2 m g /k g f o o d ・ 環境省 環境リ ス ク 評 価書 p. 1 0 雄: 肝細胞肥大 N O A E C 0 .5 ppm 30 0 .0 1 7 m g /k g f o o d ( 前回試算 で採用) ・ 最小のPN E C ・ U K 評価書で も キ ー ス タ デ ィ ・ 種の存続と の関連が不明瞭 ・ U K 評価書で も " it m ay b e a n o ve r-c o n se rv at iv e c h o ic e o f e n dp o in t f o r t h e asse ssm e n t o f se c o n da ry p o iso n in g. " と の認 識 雄: 肝細胞肥大 L O A E C 2 ppm 30 0 .0 6 7 m g /k g f o o d ・ U K 評価書で A lt e rn at iv e p ro po se d ・ LO A E C から N O A E C への外挿に 公比を 用い た ら 上に 同じ 雄: 肝細胞空胞化 雌: 肝細胞肥大、 好酸性 顆粒、 色素沈着マ ク ロ フ ァ ー ジ の浸潤 N O A E C 2 ppm 30 0 .0 6 7 m g /k g f o o d ・ 上記N O A E C の一つ 上の用量のエ ン ド ポ イ ン ト N O A E L 0 .1 m g/ kg/ da y N O A E C ( 雌 ) 2 m g / k g f o o d 30 0 .0 6 7 m g / k g f o o d N O A E L 0 .4 m g/ kg/ da y N O A E C 6 m g / k g f o o d 30 0 .2 0 0 m g / k g f o o d 混餌 0 、 1 0 、 5 0 、 1 5 0 pp m 混餌 0 、 1 0 、 5 0 、 1 5 0 pp m ・ U K 評価書 p .5 8 ・ U K 評価書 p .5 8 S p ra g u e -D a w le yラ ッ ト 発がん 、 長期毒性 104週 混餌 0 .5 、 2 、 5 、 2 0 p p m ・ 環境省 環境リ ス ク 評 価書 p. 1 1 ・ U K 評価書p .5 7 ・ 環境省 環境リ ス ク 評 価書 p. 1 5 ・ U K 評価書p .5 7 強制経口 0、 0 .1 、 0 .4 、 1 .6 、 3 .2 m g/ kg/ da y ( ○) ・ 死亡、 生殖能又は後世代の発 生に 及ぼす 影響その他こ れら に 準じ て 毒性学的に 重要な 影 響? ・U K 評価書で A lt e rn at iv e pr o po se d F 1 : 繁 殖 成 績 ↓強制経口投与試験に よ る N O A E Lを N O A E C に 換算 ↓強制経口投与試験に よ る N O A E Lを N O A E C に 換算 ・ 強制経口投与の毒性値( m g/ kg/ da y) を E U -T G D の換算方式で 餌中濃度に 換算 F 0 : 全 体 的 影 響 F 1 : 開 眼 遅 延 (用 量 依 存) F2 : 体 重 増 加 抑 制 S p ra g u e -D a w le yラ ッ ト 生殖・ 発 生 二世代 PN E C ( 餌中濃度) マ ガモ M al la rd D u c k 繁殖 21週 ウ ズ ラ N o th e rn bo bw h it e q u ai l 繁殖 21週 「 高次捕食動物の生息 又は生 育に 支 障を 及ぼす お そ れがあ る も ので あ る こ と 」 の 中身( 有害 性情報 の報告 に 関す る 省 令よ り ) イ ほ乳類の生殖能及び 後世代に 及ぼ す 影響に 関 す る 試験 に お い て 、 死亡 、生殖 能又は 後世代 の発生 に 及ぼ す 影響そ の他こ れら に 準 じ て 毒 性学的 に 重要な 影響 がみら れた も の ロ 鳥類 の繁 殖に 及ぼ す 影響 に 関す る試験に お い て 、 死亡 、 産卵 数 の低 下 、ふ化 率 の低 下 そ の 他これ ら に 準じ て 毒性 学的 に 重 要な 影響 がみ ら れ た も の 補足説明:個体群の存続は、集団を 構成す る 齢(ラ イ フ ス テ ー ジ )別の繁殖率と 生存率に 左右さ れま す 。繁殖率の表し 方の一例で は、以下のよ う に 雌1 個体あ た り の巣立ち ヒ ナ の数で 表し ま す 。 こ の右辺のい ず れかを 低下さ せる 影響は繁殖率への影響と 言え 、こ の場合、子の生存率低下 は三つ め の項の低下と 捉え ら れま す 。 巣立ち ヒ ナ 数=産卵数 × ふ化率 × ふ化から 巣立ち ま で の生存率 補足説明: 個体群の存続は、集団を 構成す る 齢(ラ イ フ ス テ ー ジ )別の繁殖率と 生存率に 左右さ れま す 。こ の場合、 F0 や F2 への 影 響がそ の齢の生存率又は繁殖率を 低下さ せる こ と に つ な がる と 判断さ れれば、「死亡、 生殖能又は後世代の発生に 及 ぼす 影響そ の他こ れら に 準じ て 毒性学的に 重要な 影響」に 該当す る と い う こ と に な る のだ と 思い ま す 。