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外国人労働者の日本語能力が技能習得に与える影響 ―建設産業を事例として―
政策研究大学院大学 まちづくりプログラム
MJU18713 見﨑 要
はじめに
1-1.建設技能者の減少・高齢化
近年、人口減少や少子高齢化に伴い、国内産業全体で将来的な生産 年齢人口の減少が大きな問題となっている。特に建設産業においては この
20
年間で建設業就業者は685
万人から498
万人に、うち技能労 働者は455
万人から326
万人に減少し、深刻な労働者不足に直面し ている。また建設業就業者の年齢別内訳は55
歳以上が3
割以上に対 し29
歳以下は約1
割程度であり、高齢化も急速に進行している。そ のため、建設産業における担い手の確保・育成は非常に大きな課題と なっている。1-2.外国人労働者受入拡大への動向
必要な人材を国内で確保していくことに最大限務めることを基本 としながらも、産業競争力会議「成長戦略の進化のための今後の検討 方針」では、中長期的な外国人材活用の在り方について総合的かつ具 体的な検討を進めるとしている。「経済財政運営と改革の基本方針(骨 太の方針)
2018」では、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国
人材を受け入れるとし、新たな在留資格「特定技能」創設についても 議論をされている。新在留資格創設にあたっては技能と日本語能力に おいて水準や試験等を設けるとされているが明確な基準はなく、技能 実習2
号を修了した者は上記試験等を免除とされている。本研究においては、外国人材活用のために建設技能および日本語能 力の習得が重要であることに注目し、どのような対策を講ずればより 円滑な技能習得を達成することができるかについて検討をする。建設 産業に雇用されている外国人労働者の技能および日本語能力につい て独自にアンケート調査を行い、日本語能力が技能習得に影響を与え る要因を実証分析した上で、外国人労働者の技能習得向上策を考察し、
提言を行う。
2.技能実習制度の概要と現状 2-1.外国人技能実習制度の概要
外国人技能実習制度とは、我が国が先進国としての役割を果たしつ つ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術または知 識の開発途上国等への移転を図り、開発発展途上国等の経済発展を担 う「人づくり」に協力することを目的とした制度である。
2-2.技能実習制度の現状
技能実習生数の推移では、出入国管理及び難民認定法改正のあった 平成
22
年の約15
万人に対し、平成29
年は27万を超え、6
年間で大 幅に増加をしており、建設関係職種も同様の傾向にあり直近3
年で急 速に増加している。外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法 律では、技能実習は労働力の需給調整の手段として行われてはならな いとされている。しかしながら外国人労働者は不足する労働力を補う ために受け入れられており、制度の「建前」と「実状」が乖離してい
る。実質的には需給調整を目的として受け入れられた外国人労働者は、
短期間の研修期間終了後には帰国することを理由に十分な技能を教 育されず単純労働に従事する傾向が強い。新在留資格「特定技能」は 技能実習
2
号修了者に対して最長5
年の在留期間延長を与える方針 であり、就労する上でより技能が求められると考えられる。しかしな がら、技能実習生の受け入れは団体管理型が95%を超えており、就労
以前の日本語教育にばらつきがあることから技能を習得するための 日本語能力が十分ではないと考えられている。3.労働市場における言語能力について
海外の先行研究において、
Chiswick
ほか(1990)では、移民におけ る言語能力の必要性を取り上げ、受け入れ国の言語を流ちょうに話す ことは、他の個人的な特性や出身国とは無関係に、賃金に大きな正の 影響を与えることを明らかにした。Dustmann
ほか(2003)では、移 民の経済的融合へのプロセスを支援することは受け入れ国の利益に つながることから、移民の賃金を決定する要因を理解することが重要 であるとし、言語能力は雇用の可能性に正の影響を与え、言語能力の 欠如は賃金の損失につながることを証明している。日本の先行研究おいては、有路(
2014)では、経済連携協定に基づ
いて入国したインドネシア人の看護師国家試験合格率が極めて低か ったことを取り上げ、合格が困難である主たる理由について、日本と インドネシアで看護師国家試験が求める知識が異なっていることと、インドネシア人の知識が日本語を介するために試験結果に反映され ないと分析している。しかしながら、日本においては外国人労働者受 け入れの実績が少なく、日本独自の言語である日本語能力が労働市場 に与える影響について、定量的に実証した研究は見当たらない。
4.外部性
外国人労働者受け入れ及び日本語能力が不足していることによる 負の外部性についてについて整理をし、なぜ技能および日本語能力に ついて政府の介入が必要かを述べていく。
4-1.金銭的外部性と技術的外部性
外部性とは、市場の力では効率的な資源配分を実現できない市場の 失敗を引き起こす原因の一つであり、ある活動に従事する人が周囲の 人の厚生に影響を与えるが、その影響に対する補償を支払うことも受 け取ることもできないときに生じる。簡潔に言えば、人々の行動が市 場取引を通じないかたちで他者に与える影響のことを指し、正確には 技術的外部性と呼ばれる。この時人々が行う取引が社会的に望ましい 水準より過大や過少になってしまい、交換の利益が最大限には実現さ れない。よって、政府は外部性を内部化、問題を軽減・解消するため に市場への介入を行う必要がある。また外部性がある状況であっても、
人々の行動が市場取引を通じて他者に与える影響のことを金銭的外 部性と呼ばれ、交換の利益が損なわれるわけではないため政府の介入 は必要ではない。
2
4-2.外国人労働者受入による外部性外国人労働者受入によって総労働者数は増加するため供給曲線は 右にシフトする。この供給曲線は低賃金であることや言語能力が欠如 していることの負の外部性が考慮されていないため私的限界費用で あり、生産者と消費者の間で自由な取引が行われると、社会的にみて 望ましい生産量よりも過大な供給が行われている状態にあると言え、
技術的外部性の問題として政府の介入が必要である。供給曲線が右に シフトすることにより既存の日本人労働者の賃金および雇用は低下 し、日本人労働者の余剰は減少する。これは金銭的外部性であり、社 会的余剰を最大化できるという観点からは介入しないほうが望まし い。
図表-1 技術的外部性の需要供給曲線 図表-2 金銭的外部性の需要供給曲線
4-2-1.社会保障等における負の外部性
低スキル、低賃金の外国人は納税額が少なく、低雇用であれば生活 保護や失業手当などの財政負担は増加する。また、医療費や家族帯同 による教育費などの負担に関しても、自国民によって負担しなければ ならない。失踪や不法在留が増加していることも大きな問題の一つで あり、取り締まりによる負担は税金から捻出されることになる。
4-2-2.日常生活における負の外部性
日本語能力が十分でない外国人労働者を受け入れることにより、近隣 住民とコミュニケーションをとることや地域のルールを守ることな どの一般的な生活だけでなく、公共交通機関の利用、病院の利用など 労働市場の当事者以外に悪影響をもたらす場面が多く考えられる。こ れは生産者(外国人労働者)と消費者(受入企業)の間で自由な取引 が行われると、社会的に見て望ましい水準で生産が行われていないと 言える。
5.外国人労働者の技能習得度と日本語能力に関する仮説
建設業において外国人労働者受入が活発化していることと、技能が 低い、または日本語能力が十分ではない外国人労働者受入による負の 外部性が内部化されていないことを踏まえ以下の仮説を導き出し、実 証分析をすることとする。
仮説①「外国人労働者の日本語習得は、技能習得に正の影響を与える」
日本で建設産業に従事する外国人労働者は日本語を活用する能力 水準が低いため、雇用主は建設技能を習得させることができず単純労 働に従事していると思われる。日本語を活用する能力を向上させるこ とにより、効率的な技能習得ができる。
仮説②「日本語習得度は、受けた日本語教育と雇用主の日本語指導に 対するインセンティブによる影響が大きい」
外国人労働者における日本語教育は、団体管理型の技能実習制度に よる教育に依存しており十分な教育を受けていると言うことはでき
ない。雇用主は日本語能力の必要性を認識しながらも在留期間の制限 などから、外国人労働者に日本語教育を受けさせるインセンティブが 損なわれていると考えられる。
6.外国人労働者の技能習得度と日本語能力に関する実証分析 6-1.使用するデータの収集方法
本研究では、外国人労働者受入における負の外部性対策を目的とす るため、現在日本の建設産業で就業している外国人労働者の技能習得 度、日本語習得度、企業属性、個人属性をアンケート調査にて把握し、
実証分析を行う。回答者に関しては外国人労働者本人であることが最 良であるが、正確なアンケート調査を行うことが難しいため外国人労 働者を雇用する雇用主を回答者とした。アンケートは首都圏、関西圏 の企業
87
社に対し外国人労働者445
人分を依頼し、53
社、264
人分 を回収、回収率は約 60%となった。87社に対し郵送にてアンケート 調査票を送付し、回答も個別に投函する方式とすることで、ゼネコン および上位下請業者を経由せず、正確な情報が反映されやすいアンケ ート調査とした。通常アンケート調査はランダムサンプリングになる ように配慮して行われるものであるが、外国人労働者およびその雇用 者にアクセスすることが難しいためこの手法を用いた。6-2.アンケート調査項目
外国人労働者の日本語習得度を調査するにあたって、2 種類の調査 を行った。1 つ目は「読む」「書く」「話す」「聞く」の 4 つの能力につ いて、7 段階での評価にて回答されている。2 つ目は日本交流基金に おける日本語教育スタンダード Can-do を使用した調査であり、日本 語を使ってなにをすることができるのかを評価している。Can-do と は、移民受け入れの実績が豊富であるヨーロッパ全体で外国語の学習 者の習得状況を示す際に用いられる CEFR(ヨーロッパ言語共通参照 枠)の尺度を参照としており、本研究の調査では、基礎レベルの A1、
A2 および自立レベル B1 からの設問に対し、「1.できない」「2.少しで きる」「3.だいたいできる」「4.できる」の 4 段階で評価した。
技能習得度については、建設産業人材確保・育成推進協議会 企 画分科会・広報分科会(建設産業戦略的広報推進協議会)におけ る建設技能者職業能力基準(案)を使用し、回答者による主観的な評 価にならないよう考慮し、同じ経験年数の日本人労働者と比較して評 価をした。
6-3.アンケート調査結果
企業属性に関して、職種においては国際研修協力機構における業務 統計・調査報告の職種別技能実習
2
号移行申請者の推移と同様の傾向 であることが確認された。雇用する従業員のうち外国人の建設技能職数と日本人若年者(
24
歳 以下)の建設技能職数では、外国人の建設技能者数に比べて日本人若 年者の建設技能者数が低い傾向にあることが確認され、外国人雇用理 由は、「日本人労働者が不足しているため」と81%の企業が回答して いる。これらの結果より若年者の不足を外国人労働者で補っていると 考えられる。企業における言語指導においては、「指導をしていない」が
37%と
なっており、指導をしない理由として在留期間の短さを挙げているこ とから、在留期間に制限があることにより日本語指導のインセンティ ブが損なわれていることが確認された。今後の外国人労働者の雇用方賃金
雇用量 供給曲線
※外国人労働者受入前
供給曲線(私的限界費用)
※外国人労働者受入後
需要曲線 供給曲線(社会的限界費用)
負の外部性
賃金
雇用量 供給曲線
※外国人労働者受入前
供給曲線
※外国人労働者受入後
需要曲線 日本人雇用量
(受入前)
日本人雇用量
(受入後)
賃金(受入前)
賃金(受入後)
3
針においては、「雇用を維持したい」「増やしたい」が96%と非常に高 く、消費者である雇用者は、外国人労働者の日本語能力が欠如してい ることの負の外部性を認識せずに外国人労働力を消費していると考 えられる。図表-3 雇用する企業における日本語指導状況 図表-4 今後の外国人雇用方針
個人属性に関して、国籍においては「ベトナム」が75%と高い割合 を示しており、本研究のアンケートにおいては建設産業の急速な「ベ トナム」への移行が確認できた。
日本語習得度においては、「聞く」「話す」ことに比べて、「読む」「書 く」ことの習得が困難であることが確認された。Can-doによる集計 した日本語習得度においては、
75%の外国人労働者が平均で「 3.だい
たいできる」に達していない。設問はCan-do
レベルA1~ B1
より作 成しており、多くの外国人労働者が自立した生活を送るために必要最 低限の日本語を習得できていないことから、4-2-2.日常生活における 負の外部性の問題を解消できていないと考えられる。図表-5 日本語習得度(Can-do)
技能習得度においては、建設技能者職業能力基準(案)の全般、知 識・技術、段取り、施工図、現場管理、安全衛生、社会性に関して「同 じ経験年数の日本人労働者と比較してどの程度できるか」という
26
問の設問の回答の平均値をとった結果、65%が6
割以下であった。技 能実習生に限ると73%が 6
割以下という結果となり、外国人労働者 は日本人労働者に比べて相対的に技能が劣ると雇用主に認識されて いる。図表-6 外国人労働者の技能習得度 図表-7 技能実習生の技能習得度
6-4.分析方法と推計モデル 6-4-1.変数
技能取得度に影響を与える要因としては、日本語習得度の他に在留 年数、職種、母国での就業経験を加えた。職種においては、就業する 職種の難易度が高いほど技能習得が困難であると予想される。日本語 習得度に影響を与える要因としては、入国前の日本語教育、入国後の
日本語教育、在留資格が技能実習であること、在留期間、国籍、学歴 を加えた。
6-4-2.推計モデル1 外国人労働者の技能習得度に与える影響 外国人労働者における技能習得度に与える要因についてトービッ トモデルを用いて分析する。i は個人、εは誤差項を意味する。
6-4-3.推計モデル2 外国人労働者の日本語習得度に与える影 響
外国人労働者における日本語習得度に与える要因についてトービ ットモデルを用いて分析する。
6-5.推計結果と考察
6-5-1.推計モデル1 外国人労働者の技能習得度に与える影響 に関する考察
図表-8 技能取得度 パターン①推計結果
***,**,*はそれぞれ有意水準1%,5%,10%を示す
図表-9 技能取得度 パターン②推計結果
***,**,*はそれぞれ有意水準1%,5%,10%を示す
技能習得度 係数 標準偏差 有意性
日本語習得度(読む・書く) 0.3334579 0.0696906 ***
日本語習得度(聞く・話す) 0.2396928 0.0802727 ***
在留期間 0.3566576 0.0535722 ***
鳶工ダミー -0.7045051 0.1945436 ***
鉄筋工ダミー -0.2791072 0.1832460
型枠大工ダミー -1.2453530 0.2835791 ***
型枠解体工ダミー 0.3079757 0.2335222
コンクリート圧送工ダミー -1.4337100 0.2632309 ***
内装仕上工ダミー 0.3074539 0.1856572 ***
母国で同職種の就業経験あり 0.4086782 0.1647696 **
技能習得度 係数 標準偏差 有意性
日本語習得度(Can-do) 1.0942370 0.0904933 ***
在留期間 0.1628857 0.0499246 ***
鳶工ダミー -0.4616674 0.1725778 ***
鉄筋工ダミー 0.0441212 0.1645807
型枠大工ダミー -0.6415531 0.2565491 **
型枠解体工ダミー 0.1983335 0.2071361
コンクリート圧送工ダミー -0.8624863 0.2391794 ***
内装仕上工ダミー 0.1052623 0.1649167 *
母国で同職種の就業経験あり 0.2936166 0.1443253 **
1 48
58 65
50 42
0 10 20 30 40 50 60 70
1
48 47 48
32 20
0 10 20 30 40 50 60
5 20
51 65
59
22 42
0 10 20 30 40 50 60 70
1 ~1.5 ~2 ~2.5 ~3 ~3.5 ~4
20 19
8
3 3
0 5 10 15 20 25
2
21
30
0 5 10 15 20 25 30 35
言語の熟練度を「~できる」という形式で 示した23問の設問に4段階で回答した平均値
1.できない 2.少しできる 3.だいたいできる 4.できる
4
パターン①の推計結果より、日本語習得度が技能習得にプラスの影 響を与えていることが確認できた。「聞く」「話す」ことに比べて「読 む」「書く」ことのほうが技能習得度に与える影響が大きいことにこ とは、建設産業の特徴として図面や指示書を使用して作業を進めるた め、より「読む」「書く」能力が必要であるためと考えられる。また、職種によって影響の大きさは異なり、職種ごとに技能習得度が異なる ことが確認できた。これは、職種の難易度や母国の工法との違いが影 響していると考えられる。
パターン②の推計結果より、Can-doにて測った日本語習得度も技 能習得にプラスの影響を与えていることが確認できた。また、パター ン①での日本語習得度(読む・書く)および日本語習得度(聞く・話 す)に比べて日本語習得度(Can-do)の与える影響は大きく、
Can-do
は技能習得のための日本語能力を測る指標として有効であることが 確認できた。6-5-2.推計モデル2 外国人労働者の日本語習得度に与える影 響に関する考察
図表-10 日本語習得度 推計結果
***,**,*はそれぞれ有意水準1%,5%,10%を示す
推計結果より、日本入国前にうけた言語教育が
10%有意水準でも
有意ではなく、日本入国後に受けた言語教育が1%有意水準でプラス
に有意という結果であった。入国前における言語教育の影響が有意に ならなかったことは、母国での日本語教育の質や時間等が影響してい ると考えられる。また雇用者が日本語指導をしていないことは、雇用 者の日本語指導意欲が外国人労働者の日本語習得に大きく影響する こと確認された。国籍において、中国であることは日本語習得度が高 いことが示された。これは中国語に漢字が用いられているため、日本 語の習得をしやすいと考えられる。7.まとめ
7-1.分析結果のまとめ
本研究では、外国人労働者の技能習得を向上させるためには日本語 能力を伸ばすことが効率的であることを明らかにした。また、外国人 労働者の日本語能力に影響を与える要因についての実証分析におい ては、日本語教育の質や時間を含めた教育方法と、雇用主の日本語指 導意欲の重要性を明らかにした。
7-2.提言
日本に入国する前の日本語教育については、日常生活における負の
外部性対策として生活をする上で必要最低限の日本語・文化・生活ス タイルに対する教育を行うべきである。入国前の日本語教育が日本語 習得度に与える影響については優位な結果を得ることはできなかっ たことは、現地での日本語教育の質や時間などに原因があると考えら れるため、母国で教育の質を確保できる環境が必要である。
日本に入国した後の日本語教育については、日本で就業し自立する ために必要な日本語教育を行うべきである。就業する職種によって必 要な日本語能力が異なり、職種ごとの専門用語を含めた日本語教育が 必要であると考える。
必要な日本語能力の水準においては明確に基準を設ける必要があ り、生活および就業において必要な日本語能力を測るべきである。ま た入国後の日本語能力に合わせて在留期間の延長・更新を可能とする ことで、雇用者の指導するインセンティブおよび外国人労働者の学ぶ インセンティブができる。水準を把握し維持するためには専門的知見 を持つ第三者機関を設け、一次責任を与えることにより水準の適正化 のインセンティブを与えることが効率的である。
費用負担において、一般的な日本語は他産業でも活用できることか ら、雇用企業が負担をしても労働移動をしてしまう可能性があるため 負担するインセンティブは小さい。そのため外国人労働者が負担する ことが合理的であり、公的機関からの一時的な貸与の後日本での就業 期間で返済をしていくなどのルールが必要である。また労働市場以外 に影響を与える外部性がある場合においては、外部性についてのみ補 助金を検討するべきである。一方専門的な日本語については長期雇用 を前提にすることで企業に負担するインセンティブが生まれる。離職 した外国人労働者については教育後の在職期間に応じて一定の割合 で逓減させた金額を償還させる制度を設ける必要がある。
国籍においては中国であることが日本語能力に与える影響が大き い結果となったが、中国人の就業はさらに減少していくことが考えら れる。母国語で漢字を使用しない国におけるカリキュラムやテキスト などの改善をすることで効率的な日本語教育を実施することができ る。
7-3.おわりに
本研究では、現状でできる最大限のアンケート調査を行っているが 個人属性において観察できない能力があると考えられること、外国人 労働者本人ではなく雇用主へのアンケート調査であることが今後の 研究課題である。また、首都圏・関西圏を対象とした調査であるため、
他地域においても同様の結果が得られるとは限らない。各地域におい てこのような研究を積み重ね、外国人労働者における技能と日本語能 力について様々な検証が必要である。さらに、本研究は外国人労働者 という注目されたテーマでありながら体系的なデータが存在しない ため調査対象が大手ゼネコン
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社の協力業者であったが、よりランダ ムサンプリングに近いアンケート調査が行われる必要がある。主な参考文献
Barry R Chiswick and Paul W Miller (1990)「Language in the Labor Market:
The Immigrant Experience in Canada and United Stated」
Christian Dustmann and Francesca Fabbri(2003)「Language Proficiency and Labor Market : Performance of Immigrants in the UK」『The Economic Journal,133』pp695-717 有路智恵(2014)「インドネシア人看護師候補者の国家試験における困難に関する研究」
日本語習得度 係数 標準偏差 有意性
入国前言語教育あり -0.0909483 0.1068050
入国前言語教育不明 0.2496537 0.1250361 **
入国後言語教育あり 0.3145242 0.1014478 ***
日本語指導をしていないダミー -0.3947920 0.1077106 ***
技能実習ダミー -0.2829358 0.1136129 **
在留期間 0.2629096 0.0356754 ***
中国ダミー 0.6483173 0.1782949 ***
フィリピン・インドネシアダミー -0.0762999 0.1574815
高校卒(工業系)ダミー 0.3595189 0.1361955 ***
高校卒(工業系以外)ダミー 0.4058526 0.1187399 ***
専門高専卒(工業系)ダミー 0.1080703 0.1987658
専門高専卒(工業系以外)ダミー 0.4643306 0.1842716 **
大学卒ダミー 0.5559728 0.1446324 ***
職業訓練学校卒ダミー -0.1759520 0.3728808