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学生の情報技術能力向上のための試み

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Academic year: 2021

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学生の情報技術能力向上のための試み

本田 康子*,政清 史晃*,三崎 雅裕**

Trials for students’ skill acquisition of information technology

Yasuko HONDA*, Fumiaki MASAKIYO*, Masahiro MISAKI**

Abstract

It seems more and more important for all students to acquire skills of information technology in the highly information-oriented society. Based on this background, we have encouraged students taking various examinations for skill acquisition. Among these, we will introduce two main trials. One is the license examinations of Zenkoukyo and the other is the finish test of the Fundamental Information Technology Engineer Examination (FE). We report the support system of the Information Processing Education Center and effects of the step-by-step learning for these tests on students in recent years.

Keyword License Examinations, Information Technology, Skill Acquisition, Engineering Education

1.はじめに

本校の制御情報コースでは、学生に就職や進学を視野に 入れた、低学年からの積極的な情報系の資格取得を推奨し ている。以前から授業でも多くの教員が各種資格の紹介や 過去問題の演習を行ってきた。しかし、国家資格である基 本情報技術者試験やITパスポート試験は、本校の平均的 な学生にとっては学力面・価格面の双方から敷居の高いも のとなっており、受験率は低迷していた。

これら国家資格の受験率・合格率の向上のため、情報処 理教育センターはコースと協力して様々な試みを行って きた。具体的には、(1) 4年次の情報工学履修に伴う午前免 除試験の学内実施、(2) 全国工業高等学校長協会(全工協)

の検定試験を利用した段階的学習の推奨である。(2)は直接、

情報系の資格に関連する「情報技術検定」のみならず、「計 算技術検定」、「初級CAD検定」も学内で実施している。

本稿ではその実施状況や効果について紹介する。

2.午前免除試験の学内実施 2.1 午前免除試験の概要

基本情報技術者試験(FE: Fundamental Information Technology Engineer Examination)は、情報技術を活用 した戦略立案やシステムの設計・開発・運用に携わること のできる人材育成を目的とした資格試験で、春季と秋季の 年2回実施され、IT技術者の登竜門といえる。FEには午 前試験と午後試験があり、資格の取得には両方の合格が必 要である。午前試験は多肢選択式の80問150分で、技術・

経営・戦略の基礎的な専門知識を問う。午後試験も多肢選 択式で、13問中7問を選択解答の150分で、プログラミ ング言語の知識を含む、より応用的な内容を問う。

情報処理推進機構(IPA: Information-technology Promotion

Agency)は、FEの合格率向上のために午前試験の免除制

度を設けている1)。これはIPAに認定された講座を受講し、

修了試験(午前免除試験)に合格することによって、FE の午前試験が修了認定日から 1 年間免除される制度であ る。修了試験はIPAの提供問題またはIPAの審査問題によ って受験者の所属機関で行われ、受験料は2,000円である。

これに合格すれば受検者は次の2回、午前試験免除でFE を受験することができるので、午後試験の勉強に集中する ことができ、合格率が高くなると言われている。

*近畿大学工業高等専門学校 総合システム工学科 制御情報コース

**近畿大学工業高等専門学校 総合システム工学科 電気電子コース

(2)

2.2 午前免除試験の学内実施状況

本校では平成21年に制御情報コース4年次の「情報工 学」をIPAの認定講座として登録しており、これを履修し た4年生が修了試験を受検することができる。図1に平成 22年度から平成28年度にかけての午前免除試験の受検者 数をヒストグラムで合格率を折れ線で示す。年度ごとに多 少の増減はあるが、全体として合格率は増加傾向にあると 言ってよいだろう。今後も高い合格率で安定するよう、継 続的な努力が必要になると思われる。

図1:午前免除試験の受検者数・合格率の推移

3.全工協の各種検定試験 3.1 検定試験の実施状況

全工協は全国の工業教育を実践している高校の校長を 会員とする組織で、工業教育の支援の一環として、様々な 実務系の検定試験を主催している2)。本校では平成26年 度より学内の担当教員が全工協に登録して、受検予定の検 定試験の案内や振込用紙を年度初めに協会から郵送して もらっている。試験実施に伴う一連の事務、即ち学生への 試験の案内、受検申込の受付、受検料や問題集代金の入金、

試験問題の受け取りと管理、試験結果の集計や学生への告 知、合格証の印刷等は全て情報センター所属の事務職員が 行う。試験教室の手配やスケジューリング、試験の採点は 担当教員が行う。また、当日の試験の実施、即ち試験問題 の配布と回収、試験監督は情報センターの教職員が協力し て行う。さらに、実施前の受検者数や入金日、実施後の合 格者数の全工協への報告は全て担当教員が Web 上で指定 期間内に行い、何らかの問題があれば、全工協の各試験の 担当者と直接連絡をとって解決に当たる。

全工協の各種検定試験は以下のような特色を備えてお り、国家資格と比べると学生にとって受検しやすいものと なっている。

(1) 試験の種類やレベルが基礎的な段階から細かく設定さ れており、受検者が自分に合うレベルの試験を選択して受 検することができる。

(2) 試験の案内・申込受付・実施・採点・結果の連絡・合 格証の授与に到るまで、全て学内で完結できる。

(3) 受検料が比較的廉価であり、異なる級の同時受検もし やすい。

(4) 過去問題や解答がHPで公開されており、専用の対策 用問題集も用意されている。

この特色に着目し、情報センターでは平成26年度から 本校での学習内容に特に関連の深い前述の 3 つの検定試 験を学内で実施している。以下、各々について詳述する。

3.2 情報技術検定の実施状況

情報技術検定の試験内容は情報系技術者にとって必須 のコンピュータのハードウェアやソフトウェア、アルゴリ ズムやプログラミングの基礎知識を問うもので、1~3 級 に分かれており、夏と冬の年2回実施される。試験の形態 は筆記試験であり、プログラミング言語は2・3級ではJIS

Full BASICとC言語に、1級ではC言語に対応している。

平成28年度の試験の概要を表1に示す。

表1:情報技術検定の概要(平成28年度)

級 試験内容 方式 価格

3 級

1. コンピュータと社会 2. 数の表現と論理 3. コンピュータの構成と 利用

4. アルゴリズム 5. プログラム作成能力

制 限 時 間 50分 配点 100点 合 格 基 準 70点以上

検 定 料

600 円

(税込)

問題集代 1,330円

2 級

1. 数の表現と演算 2. 論理回路

3. ハードウェアの知識 4. ソフトウェアの基礎 5. コンピュータの利用 6. アルゴリズム 7. プログラム作成能力

制 限 時 間 50分 配点 100点 合 格 基 準 70点以上

検 定 料

600 円

(税込)

問題集代 1,540円

1 級

Ⅰ. ハードウェアの知識 1. 数の表現と処理 2. コンピュータの基本回 路

3. コンピュータの基本構 成と各部の働き

4. 通信

5. ソフトウェアの基礎 6. その他の情報関連知識

制 限 時 間 50分 配点 100点 合 格 基 準 70点以上

検 定 料

800 円

(税込)

問題集代 1,750円

Ⅱ. プログラミングの基 礎知識

7. アルゴリズム 8. プログラム作成能力

制 限 時 間 50分 配点 100点 合 格 基 準 70点以上

(3)

図2に平成26年度から平成28年度にかけての情報技術 検定の受検者数および合格率の推移を示す。年に2回(前 期と後期)に試験が行われるので、平成29年1月現在で、

6回の試験が実施されている。実施回ごとに変動はあるが、

毎回30人以上が安定して受検していることがわかる。一 方で合格率が安定していないのは、年度初めに低級で合格 した学生が次回や次々回により上級の試験を受けること が多いためと考えられる。

図2:情報技術検定の受検者数・合格率の推移

図3:情報技術検定の受検者数の推移(学年別)

図4:情報技術検定の受検者数の推移(級別)

図3に学年別、図4に級別の受検者数の推移を示す。実 施回ごとに状況は異なっているが、学年別では3・4年生 以上が殆どを占めており、1・2 年生の受検が少ないこと が判る。本校の場合、専門コースへの配属が3年次という

こともあり、1・2 年生では資格取得への意識がそれほど 高くないのかもしれない。また、毎年後期(図中53, 55, 57 回)の受検者が少なくなっているのは、4年生の多くが午 前免除試験に流れるためと思われる。低学年の受検者を増 やすことが今後の課題といえるであろう。級別では初回は 3級、現在は2級の受検者が最も多くなっており、また、

回を重ねるごとに 1 級の受検者の割合が増えてきている ことが判る。平成28年度より1級に種目合格が認められ ることになったので、今後も増加が見込まれる。

3.3 計算技術検定の実施状況

計算技術検定は実務的な計算能力を養成するための試 験で年2回実施され、電卓またはポケコンが使用可能とな っている。表2に平成28年度の試験概要を示す。

表2:計算技術検定の概要(平成28年度)

級 種目 制限時間 価格

4 級

四則計算 10分 600 円 集計計算 10分 (税込)

実務計算 10分 3

四則計算 10分 600 円 関数計算 10分 (税込)

実務計算 10分 2

関数計算 15分 700 円

(税込)

方程式と不等式 20分

応用計算 30分

1 級

方程式とその応用 30分 1,000 円

(税込)

ベクトルと体積・面積 30分

統計処理 30分

問題集は3・4級用、2級用、1級用が全て1,030円で用 意されている。合格基準は全ての級で3種目とも100点満 点中70点以上をとることが必要で、1種目でも70点未満 であれば不合格となる。但し、1級と2級は種目合格が認 められており、在学中有効である。3・4 級が専ら、関数 電卓の使用法や有効数字の取り扱いの習熟に重きを置く のに対し、1・2 級は計算方法の工夫や式変形、ベクトル や微分積分・確率統計の基礎知識等、より数学的素養が必 要とされるものになっている。

図 5 に計算技術検定の受検者数および合格率の推移を 示す。2年目(図中72, 73回)に受検者数・合格率が急増 したのは、著者の一人が担当していた情報数学の授業での 奨励と授業後の勉強会も一因と考えられる。しかし、2年 目を除いては全体的に受検者数が少なく、10 人未満の場 合が殆どであり、未だ定着しているとは言えない。この検 定においては、まず受検者数を安定的に増やすことが最優 先課題である。

(4)

図5:計算技術検定の受検者数・合格率の推移

受検者数の推移を学年別(図6)、級別(図7)に調べて みた。図6より初年度を除けば、学年は圧倒的に3年生が 多く、1・2 年の受検者は極めて少ない状態である。本校 では 3 年次から専門コースに分かれたときの実験実習の レポートの準備として、2年次の情報処理の授業で関数電 卓の取り扱いを学習する回がある。このときに授業担当者 から検定試験の紹介や受検の奨励をしてもらうことによ って、学生のモチベーションを高めていきたい。級別では 3級の受検者が多く、次いで2級であり、1級の受検者数 はまだまだ少ない。現在、1・2 級級で種目合格となって いる受検者に再挑戦を促すなどして、上級の受検者を増や していきたいと考えている。

図6:計算技術検定受検者数の推移(学年別)

図7:計算技術検定受検者数の推移(級別)

3.4 初級CAD検定の実施状況

初級CAD検定は、CADシステムを使用して設計製図を 行う上での基礎知識を問う筆記試験と、実際にCADソフ トを用いて課題の図面を製図する実技試験から成り、いず れも 7割以上を満たすことが合格の条件である。平成28 年度の初級CAD検定の試験概要を表3に示す。検定料は 機械系・建築系いずれも1,200円で、他の検定と比べてま だ実施回数が少なく、問題集などは発行されていない。ま た、検定は年1回の実施(前期のみ)となっている。実技 試験のため、会場はシステムを一新した本校の3号館3階 CAD 室を利用している3)。JWCAD, AutoCAD, DraftSight 等のCADソフトが利用できるように設定されている。

表3:初級CAD検定の概要(平成28年度)

種目 方式

筆 記 試 験

【共通問題】

1. CADコマンド機能

2. CAD用語

3. CADシステムの構成

4. 製図規則

【専門科目】

(機械系)

1. 座標の読み取り 2. 図の構成

(建築系)

1. 部材の表記法

2. 建築製図の規則(JIS等)

制限時間30分 配点100点 合格基準70点 以上

実 技 試 験

(機械系)

機械部品の作図

(建築系)

木造平屋建て住宅の作図

制限時間60分 配点100点 合格基準70点 以上

図8:初級CAD検定の受検者数・合格率の推移

図8に、平成26年度から平成28年度にかけての初級 CAD 検定の受検者数と合格率の推移を示す。受検者数・

合格率は昨年度まで低迷していたが、今年度になって急増

(5)

した。これは学内のCADの授業担当者(主として非常勤 講師)に学生への奨励と試験対策をお願いした効果が大き いと考えられる。ただ、図には示していないが、受験者・

合格者の殆どが機械系であり、建築系の受検者・合格者が 少ない。この理由としては、対応してくれた非常勤講師が 機械系の教員であったこと、建築系の筆記試験の問題に専 門用語が多く、専門外の教員では教えづらいこと等が挙げ られる。今後は学内の都市環境コースの教員とも連携を取 り、建築系の受検者を増やしていきたい。

4.結果の分析と今後の課題 4.1 国家資格の取得率への影響

これらの様々な学内検定試験の実施によって、情報系の 国家資格を取得する学生数がどのように変わってきたか について考察する。結論から言えば、残念ながら、国家資 格取得の絶対数はまだまだ少ない状況である。しかし、午 前免除試験を利用して在学中にFEに合格する学生も出始 めている。また、情報技術検定を利用して段階的に学習し てきた者の中には、午前免除試験を受検する前にFEを取 得してしまう者や、さらに上位の応用情報技術者試験(AP:

Applied Information Technology Engineer Examination)に合 格する者も出てきている。正式な追跡調査を行ったわけで はないので十分に把握できていないが、平成23年度から 平成28年度にかけて、少なくともFEに11名、APに3 名、エンベデッドシステムスペシャリスト試験(AP より さらに上位の専門試験で、組み込みシステムを構築するエ ンジニアを養成する)に1名が合格している。

4.2 今後の課題

午前免除試験は受検者・合格率ともに年々向上している が、在学中のFE取得者増加という目標は未だ十分に達成 されていない。中には午前免除試験に合格しながらも、午 後試験の申し込みを忘れたり、今一歩のところで午後試験 に合格できなかったりするケースもある。このような場合、

午前試験には十分に合格する実力があるので、引き続き頑 張って受けるように励ましたり、また午前試験とほぼ同内 容のITパスポート試験を受けるように促したりしている。

ITパスポート試験はIPAによって随時実施される100問 120分の多肢選択式の資格試験で、職業人として情報機器 およびシステムの把握や担当業務の遂行およびシステム 化を推進するための基礎的な知識を問う。取得しておけば、

就職後も様々な実務で有用と考えられる。

また、学内で実施している全工協の各種検定試験は学生 の段階的な学習を促し、資格取得の意欲を向上させたり、

自信を持たせたりするのに役立っているが、まだまだ受験 率・合格率が低いのが難点である。これまでの担任・授業 担当者からの紹介や、情報処理教育センターからのバック

アップだけではなく、今後は保護者への周知をより徹底さ せることにより、さらに認知度を高めていきたいと考えて いる。

高専制度は 5 年間という長期にわたり専門教育を行う ことで、学生の技術者としての素養を育成する極めて優れ た教育システムと言える。その反面、学生にとっては教育 を受ける期間が長すぎて、自分の立ち位置や本来の目標を 見失ってしまう危険も孕んでいる。情報技術教育に関わる 我々教員がこのような各種の検定や資格試験の受験の機 会を提供し、そのための学習を奨励することを通して、学 生に現時点の自分の到達度を自覚させ、自信と誇りを持た せることができるよう、今後も継続して行っていきたい。

参考文献

1) 情 報 処 理 推 進 機 構 (IPA: Information-technology Promotion Agency)のHP:http://www.jitec.ipa.go.jp/

2) 公益社団法人・全国工業高等学校長協会(全工協)の HP:http://zenkoukyo.or.jp/

3) 中谷英司、政清史晃、仲森昌也、本田康子、近畿大学 工業高等専門学校紀要、第8巻、pp.85~88(2015)

図 2 に平成 26 年度から平成 28 年度にかけての情報技術 検定の受検者数および合格率の推移を示す。年に 2 回(前 期と後期)に試験が行われるので、平成 29 年 1 月現在で、 6 回の試験が実施されている。 実施回ごとに変動はあるが、 毎回 30 人以上が安定して受検していることがわかる。一 方で合格率が安定していないのは、年度初めに低級で合格 した学生が次回や次々回により上級の試験を受けること が多いためと考えられる。 図 2 :情報技術検定の受検者数・合格率の推移 図 3:情報技術検定の受検
図 5 :計算技術検定の受検者数・合格率の推移 受検者数の推移を学年別(図 6)、級別(図 7)に調べて みた。図 6 より初年度を除けば、学年は圧倒的に 3 年生が 多く、 1 ・ 2 年の受検者は極めて少ない状態である。本校 では 3 年次から専門コースに分かれたときの実験実習の レポートの準備として、2 年次の情報処理の授業で関数電 卓の取り扱いを学習する回がある。このときに授業担当者 から検定試験の紹介や受検の奨励をしてもらうことによ って、学生のモチベーションを高めていきたい。級別では 3 級の受

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