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Academic year: 2021

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8 グロビン遺伝子群の下流領域における多型部位の分析

教科・領域教育専攻 自然系(理科)コース 山 中 智 博

1 .はじめに

近年,分子生物学の進展に伴って新しい技術 が開発され,ヒトの遺伝子の解析が飛躍的に進 んだ。その過程で塩基配列上の個人差も発見さ れ,遺伝的多型(2種類以上存在する対立遺伝 子のうち, 1つの頻度が1 %以上存在すること) がD N Aレベルでヒト集団内に普遍的に存在す

ることが明らかとなった。

遺伝的多型の分析方法のーっとして,制限酵 素 に よ っ て 生 じ る D N A断 片 長 の 多 型 (restriction  fragment  length  polymorphisms,  RFLPs)を調べる方法があげられる。また分析 に必要な部分のD N A断片は, PCR法によっ て多量に得ることができるようになった。この 方法は, D N Aポリメラーゼと目的のD N A領 域の両端の塩基配列に相補的なプライマーを用 いる。その反応過程は,①熱変性によるD N A の一本鎖化 ②プライマーのアニーリング ③  D N Aポリメラーゼによる相補鎖D N Aの伸長

の3ステップからなる。この3ステップを1 サイクルとして 30回ほど繰り返すと,目的と するD N A断片を 10.  100万倍に増幅させる ことができる。この両者をあわせてPCR‑RFLPs 法と呼んでいる。

ヘモグロビンは,タンパク質のグロビンとへ ムから構成される色素タンパク質である。ヘモ グロピン異常による貧血症である f鎌状赤血球

指導教官 清 水 宏 次

jなどの遺伝病の分子的基礎研究が進み,1980 年代にはヒトのグロビン遺伝子群の遺伝子地図 が完成した。 Kan と Dozy(t978)が鎌状赤血球 症の原因となる sS遺伝子とその下流にある制 限 酵 素 母a 1の多型部位において,酵素によ り切断されないことが強く連鎖していることを 発見したことから,ヒトの遺伝子のD N A多型 が出生前診断に利用できることが分かつた。そ の後の研究により 8グロピン遺伝子群内には,

17個所以上の制限酵素多型部位が報告されて いる(Orkin

Kazazian  1984)  各部位の切 断の有無を組み合わせた型を fハプロタイプj

と呼び,現在ではこのハプロタイプを用いて,

遺伝子診断とヒト集団間の遺伝的関係に関する 研究が数多く行われている。また,ハプロタイ プ分析過程で特定の多型部位を含むD N A領 域 間に連鎖不平衡 (linkage disequilibrium  2つ の遺伝子座について,染色体頻度が遺伝子頻度 による理論値と一致しないこと)が見つかり,

S

グロピン遺伝子群内の組換え頻度の高い領域 である fホットスポットJ(他の領域に比べ330 倍 の 組 換 え 頻 度 が あ る ) が 報 告 さ れ た

(Antonarakis  et  al.  1982

, 

Chakravarti  et  al.  1984)。

本研究では, Orkinら(1982)の論文に従い,

ヒトの

8

グロピン遺伝子群の7個所の多型部位

の分析を行うとともに ,

s

グロピン遺伝子群の

‑374‑

(2)

下流領域の多型部位を分析を試みた。また,各 多 型 部 位 聞 の 連 鎖 不 平 衡 の 強 度 を 調 べ , Chakravartiら(1984)の報告と比較した。

2.材料と実験方法

D N Aサンプルは ,sグロビン遺伝群下流域 の 5個 所 に は 日 本 人 数 個 体 を 7個 所 お よ び PCR条件の確立したHinfsite  1 3'to 

s

には北 京人集団 120個体と西安人集団 128個体を用い た。 PCR法により各多型部位を含むD N A領 域を増幅した。 PCR産物を制限酵素で消化し た後,電気泳動でD N A断片を分画し,銀染色 をして RFLPsの判定を行ったo 5個所は, PCR  条件を検討するためいくつかの反応条件と反応 液組成の組み合わせを試行した。連鎖不平衡の 分析には,相関 (R)を用いた。

3.結果と考察

Hinf 1 site 5'  to 

s

は, PCRに成功し,消化 後も切断されたバンドの確認ができた。しかし,

PCR産物(増幅したD N A断片)に関して計算 上 607bpが生産される予定だったが,実験で は640bp前後のものが生じた。 Rsa1 site 5'  to 

8

は, PCR産物に数本の非特異的バンド(計算 上予想されるD N A断片のバンド以外のもの) が存在した。上記の2つのsiteは,著者が設定

したプライマーに問題があったと考えられるo

Hpa 1 site  3'  to sでは,目的のD N A断片 は得たが,非特異的バンドも出現した。また,

消化後のバンドで,酵素により切断されない場 合(一)の 629bpのバンドのが不明瞭であった。

この siteは,酵素により切断される頻度がほと んど1.0なので消化後(一)の位置にバンド存在 しないと考えられる。この原因は, PCR条 件 の設定と筆者の操作技術によると考えられる。

Hind 

site  3'  to sは,多くの非特異的バン ドが出現した。この原因の一つに,その領域に

広く存在する Kpn1 familyと呼ばれる長い繰 り返し配列の存在が考えられるoKpn 1 family  とは,いくつかに区分された1.5.  6kbの繰り 返し配列で,ヒトゲノム内には104ほど存在す

る。 Wideregion 3'  to sでは,多くの非特異的 バンドが出現した。これは,使用したD N Aポ リ メ ラ ー ゼ の 種 類 に 問 題 が あ っ た と 考 え ら れ る。 Hinf1 site  3'  to 

s

はPCR・消化ともに成 功し, 7個所と同様にRFLPsの判定を行った。

そのデータからR値を算出した。 8と

8

遺伝 子関を境界に上流域のブロック内で絶対値 50 以 上 のR値 が 占 め る 割 合 は , 北 京 入 集 団 で 900/0,西安人集団で 800/0であった。また,下 流域のプロック内では,北京人集団で 100%, 西安人集団で 67%であった。北京・西安人集 団全体で見ると,上流域は85%,下流域は,83%.

であった。この結果は,上流域と下流域のそれ ぞれの領域内での強い連鎖不平衡を示すもので あった。

8と

8

遺伝子問を境界とする上流域と下流域 間比較で絶対値20未満のR値の占める割合は,

北京人集団で 930/0,西安人集団で 730/0,北京

・西安人集団全体では83010であった。この 83%

という値は, Chakravartiら(1984)が調べたイ タリア人集団の79%,ギリシア人集団の730/0, アメリカ黒人集団の 78%と近い値を示した。

コーカソイドとニグロイドの結果に,本研究の モンゴロイドの結果が追加されたことで,ほと んどの人種集団に fホットスポットjが存在す ると考えられる。

また,Hinf 1 site 3'  to sとBamH1 site 3'  to 

8

聞で比較したR値は,北京人集団で 90,西 安人集団で 93という値が示された。この高い R値は, Semenzaら(1989)が指摘したとおり 両者間の強い連鎖不平衡を示すものであった。

FhJU inu

参照

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