木造軸組住宅における機械加工された接合部の
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(3) 木造軸組住宅における機械加工された接合部の 強度特性に関する研究. Strength Properties of Machined Joints Used in Japanese Wooden Houses. 2015 年 10 月. 早稲田大学大学院 建築学専攻. 創造理工学研究科 建築構法研究. 塚崎 英世 Hideyo TSUKAZAKI.
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(6) 木造軸組住宅における機械加工された接合部の強度特性に関する研究 目次 第1章 序論 1.1 木造軸組住宅の接合部における問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.2 研究背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.2.1 木造軸組住宅における接合部仕様の変遷と現状・・・・・・・・・・・・・・ 1.2.2 木造軸組住宅の生産に機械加工が導入された経緯と現状・・・・・・・・・・・・・ 1.3 本論文の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.4 本論文の適用範囲・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.5 接合部に関する既往研究と本研究の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.5.1 継手に関する研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.5.2 仕口に関する研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1.5.3 切欠きを有する木材梁の強度ならびに割裂に関する研究・・・・・・・・・・ 1.6 本論文の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 2 7 7 10 12 13 14 14 16 19 20. 第2章 商用の機械加工された腰掛蟻仕口の強度特性 2.1 試験の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.2 供試材と試験体形状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.3 試験方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.4 評価方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.5 試験結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.5.1 せん断試験の結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.5.2 設計荷重に対する小梁間隔および小梁スパンの適用範囲・・・・・・・・・・ 2.5.3 引張試験の結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.5.4 許容応力度設計法による短期許容引張耐力・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.6 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 30 30 32 33 33 33 40 50 54 56. 第3章 機械加工された腰掛蟻仕口の新しい形状に関する検討 3.1 試験の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.2 供試材と試験体形状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.2.1 供試材・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.2.2 試験体形状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.3 試験方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.3.1 せん断試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.3.2 引張試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.4 評価方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.5 改良仕口についての検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.5.1 1/2縮尺モデルにおけるせん断試験結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・ 3.5.2 1/2 縮尺モデルにおける引張試験結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.6 新形状蟻仕口についての検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.6.1 1/2 縮尺モデルにおけるせん断試験結果と考察・・・・・・・・・・・・・・ 3.6.2 1/2 縮尺モデルにおける引張試験結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.7 1/2 縮尺モデルにおける改良仕口と新形状蟻仕口の比較・・・・・・・・・・・・ 3.8 現行の設計式による計算値と 1/2 縮尺モデル実験による実験値の関係・・・・・・・ 3.8.1 せん断試験結果と計算値の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.8.2 引張試験結果と計算値の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 60 62 62 64 68 68 69 69 70 70 75 80 80 86 90 95 96 100. i.
(7) 3.9 実大モデル実験結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.9.1 せん断試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.9.2 引張試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.10 1/2 縮尺モデル実験と実大モデル実験の比較・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.11 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 104 104 107 109 111. 第4章 腰掛蟻仕口の破壊性状に基づくせん断耐力の推定式 4.1 試験の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.2 試験と推定式構築の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.3 供試材と試験体形状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.3.1 仕口せん断試験における供試材と試験体形状・・・・・・・・・・・・・・・ 4.3.2 男木せん断試験における供試材と試験体形状・・・・・・・・・・・・・・・ 4.3.3 女木せん断試験における供試材と試験体形状・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.3.4 女木割裂試験における供試材と試験体形状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.4 試験方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.4.1 仕口せん断試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.4.2 男木せん断試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.4.3 女木せん断試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.4.4 女木割裂試験・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.5 試験結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.5.1 仕口せん断試験の結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.5.2 男木せん断試験の結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.5.3 女木せん断試験の結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.5.4 女木割裂試験の結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.6 腰掛蟻仕口の破壊性状に基づくせん断耐力推定式の適用・・・・・・・・・・・・ 4.7 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 116 116 117 117 120 121 122 123 123 123 125 126 127 127 132 136 138 143 154. 第5章 機械加工された腰掛蟻仕口の最適形状 5.1 商用仕口(A 社仕様)の最適形状の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5.2 改良仕口と新形状蟻仕口の最適形状の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5.3 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 158 163 167. 第6章 結論と展望 6.1 各章の総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6.2 今後の展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 172 174. 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 既発表論文・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・. 178 183 184 188. ii.
(8) iii.
(9) 第 1 章 序論. 第1章 序論. 1.
(10) 第 1 章 序論. 1. 序論 1.1 木造軸組住宅の接合部における問題点 従来、木造軸組住宅における構造部材の接合部(継手・仕口)の加工は、専ら大工技能者 による加工によってなされてきたが、熟練大工技能者の不足と高齢化ならびに後継者不足 などを背景に今日では部材がプレカット工場で機械加工されることが一般的になってきた。 近年の統計によれば、部材がプレカット機械加工される割合は、90%に近い割合まで達し ており、首都圏ではほぼ100%に達していると推計されている1)。現在の木造軸組住宅の生 産において、プレカット工場が担っている役割、果たすべき役割は非常に大きく、今後も 拡大していくことが予想される。 特に、これまで熟練大工技能者や設計者が担ってきた伏図の作成についてはプレカット 工場が担っている役割、果たすべき役割が大きいと言える。現在でも、建築基準法第六条 第一項第四号による小規模な木造軸組住宅(以下、四号建築物と称す)伏図の作成について は、プレカット工場で行なわれているのが一般的であることからも明らかである2)~6)。 主にプレカット工場で伏図作成がされている四号建築物の構造安全性は、建築基準法施 行令3章の規定を満足することが求められている。四号建築物の構造安全性に関する建築基 準法施行令3章の規定における計算は、地震力および風圧力に対する壁量の確認(通称、壁 量計算)、建築物の側端部分に軸組を釣り合い良く配置されているかの確認(通称、四分割 法)、筋かい端部および柱頭柱脚接合部の接合金物の確認(通称、N値計算)がある。 仕様規定には、部材の品質および耐久(建築基準法施行令第37条、41条、49条)、基礎の 仕様(建築基準法施行令第38条)、屋根ふき材等の緊結(建築基準法施行令第39条)、土台と 基礎の緊結(建築基準法施行令第42条)、柱の小径(建築基準法施行令第43条)、横架材の欠 込み(建築基準法施行令第44条)、筋かいの寸法および欠込み(建築基準法施行令第45条)、 火打ち材の設置(建築基準法施行令第46条)がある。 また、以上の簡易な計算と仕様規定に加えて、建築基準法では横架材のスパンと梁成の 関係など架構に関する規定が設けられていないために、一般的には(公財)日本住宅・木材 技術センターによる横架材のスパンと設計荷重の関係が示されているスパン表 7)(以下、現 スパン表と称す)が用いられている。 平成23年5月に公刊された現行のスパン表では、平成20年に改訂された文献である(財)日 本住宅・木造技術センター発行の木造軸組工法住宅の許容応力度設計(2008年版)に準拠し て、せん断応力度の検定において仕口のせん断面積が考慮されるようになり、曲げ応力度 の検定も仕口加工による断面欠損量に応じて、部材の断面積、断面係数、断面二次モーメ ントの低減率が設定されている。 しかし、これまで長期間に渡って広く用いられてきたスパン表で、平成11年12月から平 成15年3月まで住宅性能表示の支援事業の促進を行なうために平成12年7月にテキストとし て発行されたものの再版である平成18年1月に公刊されたスパン表8)(以下、旧スパン表と称 す)では、せん断応力度の検定に際して仕口形状は考慮されていなかった。また、曲げ応力 度の検定については、仕口加工による断面欠損を考慮しているものの、部材の断面積、断. 2.
(11) 第 1 章 序論. 面係数、断面2次モーメントを一律10%低減しているのみで、実際の断面欠損量が必ずしも 反映された低減率が設定されていなかった。 これらの背景から、村上、藤田らは2011年以前にプレカット工場で部材が加工されて、 建設されている四号建築物100物件に対して許容応力度計算9)を適用して、架構の構造安全 性を調査している2)~6)。この調査では、①鉛直構面、②水平構面、③部材、④接合部の構造 安全性が調査対象とされている。①鉛直構面の検定は、短期荷重に対するものであり、構 面の負担地震力および負担風圧力が鉛直構面の短期許容せん断耐力を超えないことを確認 している。②水平構面の検定も短期荷重に対してであり、地震時せん断力および風圧時せ ん断力が水平構面の短期許容せん断耐力以下であることを確認している。③梁・桁、母屋 などの部材は、設計用荷重による部材の曲げ応力度、せん断応力度がそれぞれの長期荷重 および短期荷重の許容応力度以下であることと、たわみがたわみ制限値以下であることを 確認している。④接合部のうち梁の仕口および桁の継手が長期荷重、短期荷重をそれぞれ 受けた場合に対して許容応力度計算を行なっている。梁の仕口はせん断力に対して、桁の 継手については引張力に対して設計応力が許容応力度を超えないことを検定している。ま た、柱頭・柱脚金物については、短期荷重時に柱頭・柱脚に生じる引張力が接合金物の許 容引張応力度を超えないことを確認している。 部材がプレカット加工された四号建築物に許容応力度計算を適用したこの調査によって、 プレカット工場で部材が加工された木造軸組住宅に、構法(架構)、構造強度に関する問題 が潜在していることが指摘されている。①の鉛直構面に関して指摘された問題は、地震力 および風圧力に対して、耐力壁不足と耐力壁の配置が不適切であることが原因となり、鉛 直構面の短期許容せん断耐力を超えることが示されている。②の水平構面に関しては、火 打ち梁の不足と屋根の勾配が5寸勾配を超えることに起因して、地震時せん断力および風圧 時せん断力が水平構面の短期許容せん断耐力を超えると示されている。③の部材について の指摘事項のうち、長期荷重に対する調査では、梁を十の字に架け渡すための仕口加工に よって断面欠損量が大きくなることに起因して、長期許容曲げ応力度を超えることが示さ れている。短期荷重に対しては、許容応力度設計では考慮する梁上耐力壁を伏図作成時に 考慮しないことに起因して、部材の許容曲げ応力度、許容せん断応力度を超えることが示 されている。さらに、④の接合部の長期荷重に対する調査結果では、接合部がせん断許容 応力度を超えることの要因として、柱間崩れと仕口断面不足などが指摘されている。ここ で「仕口断面不足」とは、仕口が鉛直荷重を受けた場合のせん断に対する有効断面積が不 足していることを示している。また、短期荷重に対する調査については、伏図作成の際に 梁上耐力壁を考慮していないこと、柱間崩れ、仕口断面不足が接合部のせん断短期許容応 力度を超える原因として指摘されている。 接合部には部材を長さ方向に継ぐ「継手」と、部材を十字やT字、L字に接合する「仕口」 があるが、④の接合部に関する調査結果には、継手に関する問題は報告されていない。許 容応力度設計法において、継手は引張力に対する検定を行なえば良いが、建築基準法施行 令第47条1項および告示平12建告第1460号の規定に則して、短冊金物などの接合金物で適切. 3.
(12) 第 1 章 序論. に補強されていることによって問題が生じていないと考えられる。接合部における問題点 は、専ら仕口に関する指摘である。 プレカット工場で部材が加工された四号建築物 100 物件に対して許容応力度計算を適用 して、架構の構造安全性を調査結果. 2)~6). で指摘されている不適切な耐力壁の配置、火打ち. 梁の不足、屋根勾配が 5 寸勾配を超えること、柱間崩れや、仕口加工による大きな断面欠 損量、仕口断面不足という問題を構法的に解決するには間取りを変更、横架材接合部の位 置に柱を配置することで解決することが考えられる。 しかし、プレカット工場に伏図の作成依頼がされている段階では、既に確認申請が行な われているために、耐力壁の配置、屋根勾配の変更、柱間崩れを修正するための間取りの 変更、柱位置の変更は困難である。このことから、設計者は確認申請を行なう前に、伏図 作成を依頼するプレカット工場と架構に関する詳細な打合せをすることが必要であると考 えられる。 一方、③部材、④接合部に関する断面欠損、仕口断面不足の問題は、商用されているプ レカット機械加工された仕口形状が寸法・形状と強度特性の関係を実験的に検討されて決 定されていないために、部材断面寸法に応じた仕口の寸法・形状となっていないことが原 因であると考えられる。このため、部材断面寸法を変更しても仕口断面不足が解決される 保証がないので単純に架構を見直して「仕口断面不足」の解決を図ることは困難である。 そこで「仕口断面不足」を解決するには、仕口形状を考慮して鉛直荷重に対するせん断 耐力の検定を行なう必要がある。プレカット機械加工された仕口の形状を考慮してせん断 耐力を検定する式は、現スパン表 7)や許容応力度設計法 9)に(1)式のように示されている。 (1)式中の有効断面積は文献 9 によると(2)式で定義されている。この(1)式は、文献 10 の 木質構造設計規準に規定されている引張側に切欠きを有する木材のせん断耐力の検定式. 10). が援用されている。図 1-1(ⅰ)、(ⅱ)に文献 9 と文献 10 のそれぞれにおける有効断面積 Ae と正味の断面積 A0 の関係を示す。 この(1)式で仕口の断面不足を解消するためには、計算上、男木のせん断面積を大きくす れば良いことになるが、男木のせん断面積増加につれて女木側の断面欠損量は必然的に増 大することとなる。しかし、(1)式は既に述べたように引張側に切欠きを有する木材のせん 断耐力の検定式を援用しているので、男木側の寸法・形状は考慮されているが、女木側の 寸法と形状は考慮されていない。女木側の寸法・形状が考慮されていないことは、仕口の 下部に柱がない架構条件で、(1)式で男木側のみのせん断耐力を検定して、男木のせん断面 積を過度に大きくした場合に女木が抜け落ちるような破壊が生じる危険性がある。 現状では、女木側が破壊される場合における検定式は示されていないため、(1)式のみで 行われている仕口のせん断力に対する検定は未だ十分確立されていないと言える。 また、図 1-1(ⅱ)に示したとおり、(1)式は受圧部形状が矩形の場合を想定したせん断耐 力の検定式であるが、図 1-1(ⅰ)に示したプレカット機械加工された仕口の様に受圧部形状 が半円形の場合の適用性についても未精査な状況で用いられている。 さらに、村上、藤田の既往の調査2)~6)で男木側の形状のみを考慮して計算しただけでも、. 4.
(13) 第 1 章 序論. 許容せん断応力度を超えた仕口部が多数存在し、部材がプレカット機械加工される四号建 築物の接合部に構造的な問題があることが明らかになったことからも、仕口の寸法・形状 と強度特性ならびに破壊性状の関係を明らかにした上で、仕口の構造安定性の検定を詳細 に行なう必要がある。 具体的には、仕口は鉛直方向に力を受けた場合、せん断破壊のほか、割裂破壊、めり込 みによる圧縮破壊が観察される。このことから、木質構造設計規準10)に示されているような 木材が繊維直交方向に力を受けた場合の割裂破壊荷重の算定式や、めり込み荷重式によっ て、割裂およびめり込み対する検定についても行なう必要があると言えよう。 1.5 𝐿𝑄 1 ・ < 1.0 𝐴𝑒 𝐿𝑓S. [N]・・・(1). Q:設計用せん断力[N]. L. f. L S:許容せん断応力度[N/㎟]. α:断面形状による係数で、長方形断面は3/2、円形断面は4/3. Ae :有効断面積[㎟]. 𝐴𝑒 = 𝐴0 ×. 𝑑′ 𝑑. [㎟]・・・(2). Ae :有効断面積[㎟] A0 :荷重を受ける正味の断面積[㎟] d :材成寸法[㎜]. d. d'. d’ :荷重を受ける部分の寸法[㎜]. 正味の断面積A0. 正味の断面積A0. 部材断面積A A02 有効断面積Ae= A. d' 有効断面積Ae=A0 d (ⅰ)文献9における関係. (ⅱ)文献10における関係. 図1-1 文献9と文献10における有効断面積と正味の断面積の関係 これまで、プレカット機械加工された接合部、特に仕口部の強度に関する問題点を指摘 してきた。ここでプレカット工場における生産性に目を向けると、概ね40坪程度の木造軸 組住宅の加工箇所数と加工時間を調べた結果 11)によると、横架材の加工箇所数は柱材の約 2.5倍で、横架材の仕口加工に要する時間は全加工時間(2029分)の約20%(390分)を占める. 5.
(14) 第 1 章 序論. ことが示されており、横架材加工機が繁忙であることが言える。このことから、仕口の形 状を改良・工夫して機械加工能率を向上させることで、プレカット加工機械のライン全体 の生産性が向上すると考えられる。しかし、仕口形状は手加工の形状を踏襲した経緯を持 ち、開発時から大きな変更を受けることなく現在に至っていることから、機械加工能率面 においても課題が残されている。. 6.
(15) 第 1 章 序論. 1.2 研究背景 1.2.1 木造軸組住宅における接合部仕様の変遷と現状 木造軸組住宅における接合部仕様、特に仕口に関する仕様の変遷と現状を、古くから標 準仕様書的な役割を果たしてきた住宅金融公庫(現、独立行政法人 住宅金融支援機構)が 監修していた木造住宅工事共通仕様書 (現在は木造住宅工事仕様書であるが、本研究では 古くからの通称「金融公庫仕様書」と称す)の記述を中心に述べる。調査の対象は、昭和 26 年~平成 24 年までに発行された仕様書とし、平成 20 年より前に発行されたものについて は、住宅支援機構のホームページ(http://www.flat35.com/tetsuduki/shiyou02.html)上で 確認できる範囲(平成 26 年 6 月 16 日現在) 12)とし、平成 24 年版については公刊されている 文献 13)を調査対象とした。 表 1-1 に、金融公庫仕様書における仕口に関する記述の変遷を示す。同表から、小屋梁 における軒桁との取り合いに関しては、最も古い昭和 26 年から昭和 44 年までは仕口は兜 蟻掛けで、それ以降平成 14 年までは、兜蟻掛けに渡り顎が追加されている。平成 15 年以 降にプレカット機械加工を前提に軒桁と梁の上端を揃える場合については、大入れ蟻掛け とする仕様が追加された。. 表 1-1 金融公庫仕様書における仕口に関する記述の変遷 金融公庫仕様 小屋梁 年 昭和26年. 2階床 梁 胴差との取合. 軒,,桁との取合. T字取り合い. 十字取り合い. 備考. 兜蟻掛け+羽子板ボルト締め. 渡り顎ボルト締め. 記載なし. 兜蟻掛け+羽子板ボルト締め. すべり顎ボルト締め. 記載なし. T字取合の記述変更. 兜蟻掛けor渡り顎 +羽子板ボルト締め. 記載がない. 受け材との取り合いは,渡り顎(継手). 小屋梁の仕口に渡り顎,T字取合 の仕様が削除,十字取合に渡り顎 の仕様が追加. 兜蟻掛けor渡り顎 +羽子板ボルト締め. 大入れ蟻掛け羽子板ボルト締め. 受け材との取り合いは,渡り顎(継手). T字取合に大入れ蟻掛け羽子板ボ ルト締めの仕様が追加. 兜蟻掛けor渡り顎 +羽子板ボルト(SB・ ForSB/E)締め. 大入れ蟻掛け羽子板ボルト(SB)締め. 受け材が横架材の場合は,渡り顎(継手の項 羽子板ボルト型番の記載がされる に記述). 兜蟻掛けor渡り顎 +羽子板ボルト締め. 大入れ蟻掛け羽子板ボルト締め. 受け材が横架材の場合は,渡り顎(仕口の項 羽子板ボルト型番の記載がなくな に記述) る. 兜蟻掛けor渡り顎 +羽子板ボルト締め. 大入れ蟻掛け羽子板ボルト締め. 受け材が横架材の場合は,渡り顎(仕口の項 解説にプレカット仕口の図が掲載さ に記述) れる. 兜蟻掛けor渡り顎 +羽子板ボルト締め 上端揃えとする場合は,大入れ蟻掛け+羽 子板ボルト締め. 大入れ蟻掛け羽子板ボルト締め. 小屋梁にプレカット加工を想定し 受け材が横架材の場合は,渡り顎(仕口の項 て,上端揃えの場合の仕様が記載 に記述) された. 兜蟻掛けor渡り顎 +羽子板ボルト締め 上端揃えとする場合は,大入れ蟻掛け+羽 子板ボルト締め. 大入れ蟻掛け羽子板ボルト締め. 受け材が横架材の場合は,渡り顎(仕口の項 に記述). ~ 昭和37年 ~ 昭和45年 ~ 昭和50年 ~ 昭和57年 ~ 平成9年1版 ~ 平成12年2版 ~ 平成15年1版 ~ 平成24年?版 (フラット35). また、 平成 12 年の第 2 版で初めてプレカット機械加工された大入れ蟻掛の図が掲載され、 平成 15 年の小屋梁と軒桁の取り合いに、上端揃えとする場合は大入れ蟻掛けとする仕様が 追加されている。このことから、プレカット機械加工が一般化してきたと見なされた時期. 7.
(16) 第 1 章 序論. は平成 12 年~15 年であると考えられる。このことから、平成 15 年以前の小屋梁と軒桁の 取り合いや、2 階床の床梁と胴差の T 字取り合いは、専ら大工による手加工で行なわれてい たと考えられる。この場合の兜蟻掛けおよび大入れ蟻掛けは、図 1-2 に示す様に女木に大 入れ加工を施して、男木の部材成を全て掛ける納まりとしており、男木の全断面と男木女 木の受圧部で主に鉛直荷重を負担している。この場合には、女木の材成の 1/2~1/3 を木余 りとすることが一般的である。 一方、プレカット機械加工で大入れ蟻掛けを加工する場合は、手加工の形状を概ね踏襲 しているが、図 1-3 に示す様に男木、女木に腰掛部を設ける納まりとしており、荷重を男 木女木双方の受圧部で負担している点が手加工形状と異なる。前項でも述べたが、仕口の 下部に柱が存在しない場合、大入れ蟻掛けの大入れ寸法をどの程度まで深くして良いかが 明らかにされていないために、プレカット加工機械メーカによって木余り寸法は異なる。 この木余り寸法は、寸法・形状と強度特性の間の関係を検討しないで決定されている。 あるメーカでは、 男木と女木の材成が 120 ㎜で同寸の場合の木余り寸法は女木材成の 1/8(15 ㎜程度)としている。この木余り寸法は、手加工の場合の木余り寸法に比べてかなり小さい 寸法であり、仕口下部に柱が存在しない場合、女木の耐力が不足している恐れがあると考 えられる。 プレカット加工機械メーカ A 社の寸法・形状を表 1-2 に示し、同表中に a、b で示される 蟻掛部、腰掛部の材上端からそれぞれの半円の中心までの距離の関係を図 1-4 に示す。 表 1-2 から、部材断面寸法が大きくなっても仕口の形状はあまり変化させていないこと が分かる。例えば、男木女木同寸で 120×120 ㎜と 105×180 ㎜の場合の大入れ寸法は、両 者ともに表 1-2 中の b 寸法に受圧部の半円の半径寸法を加えると 105 ㎜程度となる(詳細は、 後掲する 2 章の図 2-1 を参照)。このことからも、寸法・形状と強度特性間の関係が未精査 のまま仕口形状が決定されており、部材断面寸法を単純に大きくしても「仕口断面不足」 が解決されないことが言えよう。 なお、これ以降本論文では図 1-3 に示すプレカット機械加工による大入れ蟻掛けは、図 1-2 に示す手加工による大入れ蟻掛けと異なり、男木の全断面が掛けられていないので、真 の意味での大入れ蟻掛けではないとの立場から、これを腰掛蟻仕口と呼ぶこととする。 また、ここで本研究で対象とした腰掛蟻仕口の各部位の名称を定義して図1-5に示す。こ の各部位の名称には、学術的に定義された名称以外に慣用的な名称も便宜的に用いた。. 図 1-2 手加工による大入れ蟻掛けの納まり. 図 1-3 機械加工による腰掛蟻仕口の納まり. 8.
(17) 第 1 章 序論. 表 1-2 プレカット加工機械メーカ A 社の断面寸法別の寸法と形状(単位:mm). 部位 90. 男木材成寸法. 105 120 150 180 300. 女木材成寸法 90. 105. 120. 150. 180. 300. a. 30. 30. 30. 30. 30. 30. b. 30. 30. 30. 30. 30. 30. a. ×. 34. 34. 34. 34. 34. 34. 34. 34. 34. 34. 52.5. 38. 38. 38. 38. 46(38). 46(38). 46(38). 46. 60. 46. 46. 46. 67(46). 67(46). 67. 75. 53. 53. 88(53). 88. 90. 84. b a. ×. b a. ×. 52.5. b a. ×. 52.5. 60. b a. ×. 52.5. 60. 75. b. 173. ( )内の寸法は、男木と女木がともに 105mm 幅の場合を示す。 ×印は加工不可の条件を示す。網掛けは男木材成が女木材成よりも大きいために、柱 もたせ加工とし、蟻掛部のみの加工となる。. b. a. 材幅 腰幅 蟻幅 仕口長さ. 蟻掛長さ. 蟻角. 蟻成 腰成 材成. 腰掛長さ. 蟻角. a、bは蟻掛部、腰掛部における材上 端からそれぞれの半円の中心までの 距離を示す. 図 1-5 腰掛蟻仕口の各部位の名称. 図 1-4 表 1-2 における a および b の部位. 9.
(18) 第 1 章 序論. 一方、表 1-1 の金融公庫仕様書における接合部仕様の変遷から、従来から木造軸組住宅 の接合部は固定荷重、積載荷重などの鉛直方向の長期荷重には木組みで、地震力や風圧力 などの短期荷重には羽子板ボルトによる補強金物で抵抗するという考え方で設計がおこな われてきたことがわかる。 これに対して、近年では梁受け金物とドリフトピンで構成される木組みを有さない金物 のみで、長期荷重および短期荷重に抵抗する工法が採用される例も多くなってきた。この 工法は、従来の木組みと補強金物による接合法と比較して、断面欠損量をかなり小さくで きる、建て方・組立て精度が良いというメリットがあるが、組立て精度が良いというメリ ットは反対に基礎の水平度、ドリフトピン孔の真直度・真円度、部材の厚みの一定度など に大きく依存することとなり、これらの精度の確保に技術的課題が残されているとされて いる. 14). 。具体的には、接合部において 0.5mm の加工精度、基礎天端は木組みによる場合は. 6.0 ㎜以内の製作精度であるが、金物工法では 2.5mm 以内の精度が要求されて求められる精 度は極めて高い 15)。また、文献 16 によると金物は結露が生じやすく、錆が誘発しやすいと されていることから、結露が生じないようにヒートブリッジをつくらない対策を施すとと もに、適切な防錆処置をおこなうことが不可欠である。金物工法における長期耐久性やク リープをはじめとした経時変化については体系的な整理はされておらず、住宅の長寿命化 が進む現代において 17)~18)、長期使用に対する課題が残されていると考えられる。このこと から、従来からの「長期荷重は木組み」で「短期荷重は接合金物」で抵抗するという接合 部設計の考え方は、今後も木質構造の構造設計体系の中で重要な考え方として位置づけら れると考えられる。 1.2.2 木造軸組住宅の生産に機械加工が導入された経緯と現状 部材がプレカット機械加工されることが、社会的に認知され、一般的な工法として認め られたと客観的に言える時期は、金融公庫仕様書に掲載された平成 12 年~15 年頃であると 推察される。しかし、文献 1 と文献 19 から作成した木造軸組住宅の着工件数とプレカット 工場ならびに部材がプレカット加工される割合(プレカット率)の関係を示した図 1-6 をみ ると、平成 8 年ごろには既にプレカット工法は普及していたと考えられる。この理由は、 平成 8 年におけるプレカット率は 37%で、平成 12~15 年のプレカット率を平均した 57%に 比べてやや小さい値を示しているが、部材がプレカット加工された木造軸組住宅の着工数 は平成 8 年では約 28 万戸、平成 12~15 年の平均着工数は約 30 万戸と絶対値は同程度であ ることによる。 部材がプレカット加工されることが一般的になったと見なせる平成 8 年は、昭和 50 年に プレカット加工機械が考案されてから約 20 年が経過している 19)。この間、木造軸組住宅の 部材のプレカット加工化を進展させた社会的な背景は、熟練大工の不足や高齢化であり、 木造住宅の生産側からの要求は、労働作業の軽減、現場工程の効率化、工期の短縮化、納 期の計画化である 1)。これらを背景に、部材をプレカット機械加工することは普及し、急速 に進展してきた。特に、昭和 60 年代から平成初期にかけてのバブル経済期において、建築. 10.
(19) 第 1 章 序論. 大工の不足が社会問題として取り上げられるようになり、その賃金が高騰するとともに熟 練大工の確保が著しく困難となった。これを契機に木造住宅生産業界の全体に部材加工の プレカット化に対する需要が高まったと考えられる。. 図 1-6 木造住宅の着工件数とプレカット工場数ならびに部材がプレカット機械加 工される割合(文献 1 および文献 19 から作成) 木造軸組住宅の部材のプレカット化が進展してきたもう一つの理由には、プレカット加 工機械とプレカット加工機械システム、加工情報を入力するプレカット CAD システムの発 展があげられる。 この発展は二段階に分けて捉えられている 20)。第一段階は、開発(昭和 50 年)から昭和 60 年頃までで、大工の手加工によってなされていた刻み作業を回転刃による機械加工に置き 換えたことである。この段階は、大工らによる墨付け作業が必要で、その墨付けに基づい て機械加工を行なう半自動方式がとられていた。この半自動方式では、墨付けの手間が省 略できないことによる生産性の低下や、墨付けの誤り、機械の誤操作に起因する加工ミス が頻発するなど人為的なミスを避けることが困難であった。 次に開発されたのが、昭和 60 年頃に実用化された CAD-CAM 型による全自動方式のプレカ ット加工機械である。この全自動方式では、伏図を CAD 入力するとすべての構造部材の加 工情報が生成される。この加工情報のデータをプレカット加工機械に送信することで、加 工機械を制御することが可能となる。プレカット工場では、柱材を加工する全自動機、横 架材を加工する全自動機、羽柄材を加工する全自動機がラインを構成して配置される。こ の全自動方式の開発が、プレカット加工機械の発展における第二段階として位置づけられ ており、半自動方式での人為的な加工ミスは抑えられ、墨付け工程は省略されることによ. 11.
(20) 第 1 章 序論. って、生産性は大きく向上した。現在では、加工機のコンパクト化、高速化、複合化が図 られ、2 シフト制で月産 68000 坪もの加工能力を有するラインも稼働している 21)。 以上のように、プレカット加工機械メーカは、加工機械の性能向上や、生産ラインの効 率化といったことには高い関心を示すが、接合部の強度特性を向上させることや、より機 械加工向けの形状に改良することには必ずしも熱心ではない。プレカット加工機械が開発 された当時から継手・仕口の形状は、大きな変更を受けずに現在に至っていることからも 明らかである。 プレカット機械加工される継手・仕口の形状は、回転工具によって切削加工が可能とな るように男木と女木が接触する面を半円形にしているほかは、ユーザーである建築大工に 受け入れられるように概ね手加工の寸法・形状を踏襲した経緯を持っている. 22). 。このこと. から、プレカット加工される継手・仕口のプロポーションは、構造性能を考慮して決定さ れたのではなく、機械化や市場性を重視したものであったことが言える。即ち、機械加工 の上でやむを得ず変更しなければならない部分の形状のみを変更して、他の部分の形状は 大工による手加工と同様の形状にしておけば、構造性能上の問題も生じずに、市場にも受 け入れられるという考えがあった。 プレカット機械加工される継手・仕口が、寸法・形状とせん断強度や引張強度との関係 が十分に検討されないで決定されていることに、プレカット工場のユーザーはほとんど関 心を示さず、加工する機械のメーカが異なれば作製される形状が異なることも把握してい ない状況である。これらのことが、部材がプレカット機械加工される木造軸組住宅の接合 部、特に仕口部に問題が生じた要因であると考えられる。 1.3 本論文の目的 本研究では、部材がプレカット機械加工された木造軸組住宅の横架材接合部に多用され ている腰掛蟻仕口を対象としている。その理由は、寸法・形状とせん断強度や引張強度と の関係が十分に検討されないままに、大工による手加工の形状を踏襲した形状が用いられ ているので強度特性および機械加工能率が未精査であるためである。そこで本論では、機 械加工能率の向上を志向した形状(以下、本論文では改良仕口と称す)と腰掛蟻仕口の強度性 能の向上を志向した形状(以下、本論文では新形状蟻仕口と称す)を提案するとともに、腰掛 蟻仕口のせん断耐力の推定式を提案した。さらに、提案したせん断耐力の推定式を用いて 商用されている形状の妥当性の検討と最適形状の提案を行なうとともに、改良仕口と新形 状蟻仕口の最適形状を提案した。以上のことによって、プレカット工場における生産性向 上と木造軸組住宅の構造安定性向上の一助となることを目的とした。 具体的な内容を以下に示す。 ①商用のプレカット機械加工された腰掛蟻仕口の強度特性を把握し、問題点を指摘する。 ②機械加工能率の向上を志向した腰掛蟻仕口(改良仕口)の提案を行なって、この形状のプロ ポーションとせん断強度特性および引張強度特性の関係を明らかにする。 ③強度特性の向上を志向した腰掛蟻仕口(改良仕口)の提案を行なって、この形状のプロポー. 12.
(21) 第 1 章 序論. ションとせん断強度特性および引張強度特性の関係を明らかにする。 ④腰掛蟻仕口のせん断試験における破壊性状を明らかにするとともに、せん断耐力の推定 式の提案を行なう。 ⑤提案した腰掛蟻仕口のせん断耐力の推定式を用いて、現在、商用されている腰掛蟻仕口 形状の妥当性の検討と最適形状の提案を行なう。 ⑥改良仕口と新形状蟻仕口における最適形状の提案を行なう。 1.4 本論文の適用範囲 本研究では、「長期荷重は木組み」で「短期荷重は接合金物」で抵抗するという接合部 設計の考え方の中で、プレカット機械加工された仕口の寸法・形状の変化と強度特性の関 係を明らかにするために、せん断試験および引張試験を行なっている。両試験ともに、接 合金物の効果を除いた仕口の寸法・形状と強度特性の関係を明らかにするために、接合金 物を用いずに木組みのみの試験体構成で試験を行なっている。この理由を以下に述べる。 せん断試験では鉛直荷重を受けて梁が大変形した場合、短期引張荷重に抵抗するための 接合金物がロープ効果によって、せん断耐力の向上にも寄与をする。この鉛直荷重に対す る接合金物の効果を接合部設計に考慮することも考えられる。しかし、接合金物がロープ 効果を発揮するほどの大変形時には、木組みの鉛直荷重に抵抗する部位である腰掛部は外 れかかっている状態で、すでに許容引張耐力を超えた状況であることが考えられる。 このことから、本研究では、鉛直荷重に対する接合金物の効果は無いもののとして扱う こととし、せん断試験結果については、接合金物による補強の前提なしに、接合部設計に 適用できることとした。 また、木造軸組住宅の床組みの工法には、根太を省略して厚さ24㎜以上の床下地合板を 直接横架材に留め付けることで荷重を伝える工法(通称、剛床工法または根太レス工法)と、 床下地合板を根太に留め付けて、根太を介して横架材に荷重を伝える従来からの工法が存 在する。前者の場合における設計用荷重は、床梁に直接面材を留め付けることから、設計 荷重は等分布荷重である。後者の床梁の仕口せん断耐力の算定における設計用荷重は、根 太の位置に集中荷重がかかるとしても良いが、複数個(根太箇所数個)の集中荷重を等分布 荷重に置き換えて計算することが一般的である。このことから、両者の床梁の仕口せん断 耐力の算定における設計用荷重は、等分布荷重として取り扱うことで同様に取り扱うこと が可能である。本研究では、床組工法の違いが仕口部への荷重の流れに影響を及ぼすこと は無いものとする。 せん断力に抵抗することとに加えて、仕口部には引張力に抵抗することも要求される。 このうち引張力に抵抗する力のうち、短期荷重は接合金物による補強が必要であるが、施 工時(建方時)については、木組みのみでも構造安定性、建方精度が確保できるような引張 強度を有する仕口でなくてはならない。このために、引張試験についても、木組みのみに よる試験体構成によって実験を行なうこととした。本研究の木組みのみによる引張試験結 果を基に接合部設計を行なう場合、短期荷重に対しては接合金物の補強を前提とする。. 13.
(22) 第 1 章 序論. 1.5 接合部に関する既往研究と本研究の意義 これまで木造軸組住宅に用いられている接合部に関する研究は多く行われており、その うち機械加工された接合部に関する研究の多くは手加工と機械加工による強度特性の違い を明らかにすることを目的としたものである。本研究のように機械加工による腰掛蟻仕口 の強度性能向上、機械加工能率の向上を目指した形状を体系的に検討している研究や、腰 掛蟻仕口における材成方向の寸法が変化した場合のせん断耐力を推定できる設計式を検討 している研究例は見当たらない。以下に、継手および仕口、切欠きを有する木材梁の強度 に関する既往研究のうち重要な文献を概観する。 1.5.1 継手に関する研究 (1) 継手に関する研究 曲げ試験 継手の曲げ試験は、金輪継ぎ、追掛継ぎ、追掛大栓継ぎ、腰掛鎌継ぎなどを対象とし、 多く行われている。河合ら 23)は、社寺建築などで用いられている略鎌(金輪継ぎ、追掛継ぎ など)、鎌(中世鎌継ぎ、腰掛鎌継ぎなど)、蟻(腰掛蟻継ぎ)など 12 種類の手加工による継 手と、機械加工による 2 種類の腰掛鎌継ぎに対して、曲げ試験を行なって、継手種類ごと に最大荷重、剛性、破壊パターンを整理している。最大荷重は、略鎌が最も大きく、次い で鎌、蟻の順で、剛性は略鎌と鎌が同等で、蟻のみが著しく小さいと報告されている。腰 掛鎌継ぎにおける手加工と機械加工を比較すると、最大荷重および剛性ともに手加工試験 体の方が大きい値を示している。 井ら. 24). は、腰掛鎌継ぎ、追掛大栓継ぎを対象として、手加工と機械加工の違いと、継手. 種類の違いが最大荷重と剛性に及ぼす影響を把握するとともに、腰掛鎌継ぎについては、 材成方向の寸法を変化させて最大荷重および剛性を比較・検討している。手加工と機械加 工の差異は、腰掛鎌継では最大荷重、剛性ともに手加工の方が機械加工に比べて 30%程度 上回るが、追掛大栓継ぎでは腰掛鎌継とは逆に機械加工の方が最大荷重および剛性が大き くなると示されている。また、継手種類の違いは、最大荷重、剛性ともに追掛大栓継ぎは 腰掛鎌継ぎの約 3 倍を示すとされている。腰掛鎌継ぎの材成方向の寸法が大きくなるにつ れて、最大荷重と剛性は向上した。 野村ら. 25). は、腰掛鎌継ぎを対象に手加工と機械加工の比較を行なっている。最大荷重、. 剛性ともに機械加工の方が手加工よりも大きい値を示している。また、破壊性状について は、機械加工は脆性的で、手加工は靱性が高いと示されている。この破壊性状の差異は加 工精度の違いによるとされている。即ち、機械加工は加工精度が高いために男木女木の接 触面が均一なため、一部分が破壊されると破壊された部分以外に力が伝達されずに脆性的 な破壊が生じ、手加工では接触面が不均一なために、継手以外の部分に力が分散すること で粘りを発揮するとされている。 軽部ら26)は、集成材で作製した追掛大栓継手、金輪継手の部材断面寸法を4段階変化(材 幅×材成で、75×100㎜、112.5×150mm、150×200㎜、225×300㎜)させるとともに、材成 寸法を基準に継手の各部位寸法を変化させて曲げ試験を行なっている。そこでは、継手種. 14.
(23) 第 1 章 序論. 類の違いによっては最大モーメントに大きな差異は見られなかったと示されている。部材 断面寸法が大きくなるにつれて、曲げ応力度は小さくなる傾向が示されている。また、集 成材の利用にあたっては、栓の位置が接着層に位置すると強度的に不利になる場合が考え られるので注意が必要であると述べられている。 早藤ら 27)は、機械加工された腰掛鎌継ぎの各部位寸法・形状を変化させてそれらの変化 が曲げ強度に及ぼす影響を検討している。その結果、商用されている継手のプロポーショ ンの最大荷重が最も大きいことを示している。また、腰掛鎌継ぎと部材の 4 面、3 面、2 面 に鎌継ぎの形が現れる四方鎌継手、三方鎌継手、二方鎌継ぎの最大荷重、剛性を比較して おり、最大荷重、剛性ともに四方鎌継手が優れていることを示している。 松窪ら. 28). は、金輪継手の加工を施した試験体と無継手の試験体の比較を単調加力、繰り. 返し加力の場合で行なっている。単調加力の場合、金輪継手を施した試験体は無継手の試 験体の最大荷重の約 20%、剛性の約 30%を示している。繰り返し加力では、金輪継手を施 した試験体は無継手の試験体の最大荷重の約 20%で、剛性は 40~60%を示すとされている。 瀧野ら. 29). は、追掛大栓継手の手加工による試験体と機械加工による試験体、ならびに無. 継手の試験体の比較を行なっている。その結果、手加工と機械加工ともに最大モーメント は無継手の試験体の約 20%を示している。剛性は手加工が無継手試験体の約 40%で、機械 加工が無継手の試験体の約 30%と示しており、機械加工の方が剛性が小さいと述べている。 小林ら. 30). は、追掛け継ぎの各部位寸法が曲げ剛性に及ぼす影響を実験的に吟味し、曲げ. 剛性の推定式を提案している。 (2) 継手に関する研究 引張試験 継手の引張試験は、追掛大栓継ぎ、腰掛蟻継ぎ、腰掛鎌継ぎ、金輪継ぎなどを対象に実 験が行われており、手加工によるものと機械加工によるものを比較検討している研究が多 い。また、腰掛鎌継ぎ、追掛大栓継ぎについては引張力を受けた場合の歪分布が明らかに されている。 後藤 31)は、追掛大栓継手の各部位寸法を変数に形状を変化させて、引張試験を行なった。 その結果、圧縮面を傾斜させることは、最大荷重を低下させることなく変形能が向上する ことを示している。また、圧縮面の幅を大きくしても、最大荷重は向上しないばかりか、 変形能が低下したことを示している。さらに、圧縮面の幅とせん断面積を大きくすると、 最大荷重は向上することを示している。後藤. 32). は腰掛鎌継ぎの引張試験についても行なっ. ている。試験体の部材幅に応じて腰掛鎌継ぎの各部位寸法を大きくさせて、寸法変化が最 大荷重に及ぼす影響を検討するとともに、手加工と機械加工を比較している。その結果、 部材幅、即ち各部位寸法が大きくなるにつれて最大荷重が大きくなることを示している。 また、手加工と機械加工については、手加工に比べて機械加工の方が、約 1.5~2.0 倍の最 大荷重を示すとされている。 西森は. 33). 腰掛鎌継ぎ、腰掛蟻継ぎを対象に引張試験を行なっている。手加工と機械加工. の強度特性の比較をするとともに、手加工と機械加工それぞれによる継手の部位寸法を変. 15.
(24) 第 1 章 序論. 化させた試験体に対しても検討を行なっている。その結果、機械加工は手加工に比べて、 剛性および最大荷重が大きいとされている。 河合は文献 34 において、引張力を受ける腰掛鎌継ぎの有限要素法解析を行なって、剛性 を求めている。求めた引張の剛性から、回転剛性を算出し、腰掛鎌継ぎの曲げ試験結果と 比較している。その結果、計算値は実験値の約 1.4 倍と大きいものの、ひずみ分布の実験 値と計算値は良い一致を示している。 井ら. 35). は、腰掛鎌継ぎおよび追掛大栓継ぎを対象に引張試験を行なって、継手種類の違. い、手加工と機械加工の比較をしている。さらに、追掛大栓継ぎについては、込み栓を用 いた場合とボルトを用いた場合の比較についても行っている。腰掛鎌継ぎおよび追掛大栓 継ぎともに、手加工と機械加工によらず最大荷重に大きな差異は見られないことを示して いる。剛性については、腰掛鎌継ぎの場合に機械加工の方が手加工に比べて大きいことが 示されている。継手種類の比較については、追掛大栓継ぎのせん断面積が腰掛鎌継ぎの約 2 倍であることから、最大荷重が約 2 倍となったことが示されている。追掛大栓継ぎにおけ る込み栓とボルトの比較については、最大荷重は同等であるが、剛性はボルトの場合の方 が大きい場合があったと示されている。 軽部ら 36)は、集成材で作製した追掛大栓継手、金輪継手の部材断面寸法を 4 段階変化(材 幅×材成で、75×100 ㎜、112.5×150mm、150×200 ㎜、225×300 ㎜)させるとともに、材成 寸法を基準に継手の各部位寸法を変化させて引張試験を行なっている。部材断面寸法が大 きくなるにつれて、最大荷重をせん断面積で除した値は減少していることを示している。 佐藤ら. 37). は、材種、材幅、材成および部位寸法を変化させた腰掛鎌継ぎの引張強度特性. を検討している。鎌成寸法が大きくなるにつれて最大荷重は増加し、鎌成寸法が 2 倍にな るとベイマツで約 1.6 倍、スギで約 2.1 倍の最大荷重となることが示されている。 藤野ら. 38). は、材種、材幅、材成および部位寸法を変化させた追掛大栓継ぎの引張強度特. 性を検討している。ベイマツの最大荷重はスギに対して 1.3~1.5 倍程度大きな値を示し、 最大荷重とせん断面積の関係は概ね比例関係であることが示されている。 宇京らは、腰掛鎌継ぎ. 39). および追掛大栓継ぎ. 40). の部位寸法を変化させて引張試験を行な. って、歪分布解析をしている。腰掛鎌継ぎでは、圧縮力を受ける部位寸法に対するせん断 力を負担する部位寸法の比が増加するとせん断歪の集中度が高くなることが示されている。 また、追掛大栓継ぎでは、せん断面積の増加につれて最大荷重は増大するが、圧縮を受け る面積の増加は最大荷重に影響を及ぼさなかったとされている。また、歪分布については、 圧縮面の角から繊維に沿って大きなせん断歪が生じているとされている。 1.5.2 仕口に関する研究 (1) 仕口に関する研究 せん断試験 仕口のせん断試験は、兜蟻仕口、腰掛蟻仕口、大入れ蟻仕口を対象に実験が行われてお り、手加工と機械加工の比較や、木組みによる仕口と金物接合の比較が行われている。 河合ら. 41). は、兜蟻仕口の部材断面寸法、蟻の寸法、兜の長さを変化させた 4 種類の形状. 16.
(25) 第 1 章 序論. に対してせん断試験を行なって、兜蟻仕口の破壊性状を明らかにしている。 川元ら. 22). は、腰掛蟻仕口の腰掛部を省略した形状を提案するとともに、腰掛蟻仕口の各. 部位寸法を変化させた形状についてもせん断試験を行なっている。その結果、受圧面積と 最大荷重には比例関係があることが示されている。腰掛部を省略した形状と腰掛蟻仕口の 受圧面積が同程度であれば、最大荷重は同等であることが示されている。 野村ら. 25). は、腰掛蟻仕口を対象にせん断試験を行なって手加工と機械加工による違いを. 検討している。最大荷重は機械加工の方が手加工に比べて 20%小さく、剛性は機械加工の 方が大きくなると示している。 斉藤ら. 42). は、せん断試験において腰掛蟻仕口の腰掛部を省略し、蟻掛部を大きくした形. 状(大蟻仕口と称している)を提案し、従来の腰掛蟻仕口形状と比較をしている。提案した 大蟻仕口は、局所に破壊が集中したことによって、従来の腰掛蟻仕口に比べてかなり最大 荷重は小さくなることが示されている。 吉田ら. 43). は、大蟻仕口のせん断耐力の推定式を提案しているが、めり込みを生じる受圧. 面積のみを考慮した推定式であるために、仕口の材成方向の寸法が変化した場合には適応 が困難である。 大野ら 44)は、LVL で作製された手加工による大入れ蟻仕口と、梁受け金物とドリフトピン による金物接合のせん断強度特性を比較するとともに、めり込みによる変形をバネに置き 換えてモデル化をして荷重変形関係を求めている。モデル化による荷重変形関係を実験値 と比較すると、初期剛性は良く捉えているが、降伏耐力は計算値が実験値を大きく上回っ たと示されている。 加藤ら. 45). は、腰掛蟻仕口、大入れ蟻仕口を対象にせん断試験を行なっている。腰掛蟻仕. 口は最大荷重到達後も徐々に荷重が下がり粘りを示す。大入れ蟻仕口は、小さい梁成の場 合は男木のせん断破壊、大きい梁成の場合は女木のせん断破壊が生じると示されている。 (2) 仕口に関する研究 引張試験 仕口の引張試験は、蟻掛や割楔締め仕口、込み栓打ち、長枘込み栓打ちなどを対象に実 験が行われている。枘仕口では長期許容応力度を算出する設計式も提案されている。 飯塚ら. 46). は、蟻掛、割楔締め仕口、込み栓打ちなどを対象に引張試験を行なっており、. 蟻掛は最も小さい最大荷重および剛性を示し、込み栓打ちは最も大きな最大荷重を示すと されている。また、込み栓打ちに関しては、込み栓の大きさを変化させており、一般的に 用いられている 15 ㎜または 18mm は細すぎるのではないかと指摘している。 また、飯塚ら. 47). は割楔締め仕口についても検討しており、樹種、楔の樹種、枘穴の削り. 幅、楔の厚さを変化させて引張試験を行なっている。樹種がベイツガとヒノキでは、ベイ ツガがヒノキに比べて明らかに最大荷重および剛性ともに小さいことを示している。楔の 樹種を硬くすれば最大荷重および剛性が増加するとしている。また、枘穴の削り幅につい ては、極端に大きくなければ最大荷重に大きな差異は見られず、楔の厚さについては厚い 方が 2 割程度、最大荷重が大きいことが示されている。. 17.
(26) 第 1 章 序論. 西森. 33). は、引張試験を行なって腰掛蟻仕口の手加工と機械加工を比較している。機械加. 工は手加工に比べて剛性が高く、最大荷重で約 1.2 倍を示すとされている。 48). 三芳ら. は、込み栓位置、込み栓の大きさを変化させた長枘込み栓打ちに対して引張試. 験を行なっている。その結果、込み栓の位置を土台上端から 30mm とした場合が最も粘り強 いとされている。込み栓の大きさについては、18mm とした場合の方が 15 ㎜の場合よりも約 1.2 倍最大荷重が大きいことを示している。 渋谷ら. 49). は、長枘込み栓打ち仕口の込み栓の 2 面せん断試験、土台と柱で構成された接. 合部試験および材料試験を行なって、長期許容応力度を算出する設計式を提案している。 槌本. 50). は、長枘込み栓打ちを対象に込み栓の形状、乾燥方法の違い、背割りの有無をパ. ラメータとして引張試験を行なっている。その結果、丸栓、角栓に比べてひし形の栓の最 大荷重が大きいことを示している。乾燥方法の違いは、人工乾燥材の最大荷重は天然乾燥 に比べてわずかに小さいことを示している。また、背割りの影響については、丸栓の場合 には背割りがあることによってわずかに最大荷重が低下するが、角栓およびひし形の栓で は背割りの有無による最大荷重に大きな差異は見られなかったとされている。 (3) 仕口に関する研究 回転試験 柱と土台、柱と横架材や柱と貫など部材が T 字型、十字型に構成された仕口に対して面 内方向の回転力を与えるように加力をした試験を本研究では回転試験と呼ぶこととした。 仕口の回転試験は、柱と土台における枘仕口に関する研究、柱と貫における貫仕口に関 する研究、柱と横架材における雇い鎌継ぎなどに関する研究があり、各種の設計式が提案 されている。 柱と土台の枘仕口に関する研究は、長枘差しを対象として平坂. 51). によって実験が行われ. ている。そこでは、長枘のみ、長枘と込み栓、長枘と割楔、長枘と山形プレートと枘の仕 様を変化させて仕口部に曲げモーメントを作用させている。その結果、各仕口の破壊性状 を整理し、終局耐力の推定式を提案している。 また、入江ら. 52). は、長枘込栓打ちの枘厚と枘幅を変化させて曲げモーメントを作用させ. た場合の回転剛性と降伏モーメントを稲山のめり込み理論. 53). に基づいて算出し、枘の各寸. 法と曲げ強度特性の関係を把握している。その結果、枘厚を大きくすることによって降伏 モーメント、最大曲げモーメントを向上させることができることを示している。枘幅が小 さくなると回転剛性および降伏曲げモーメントは向上するが、エネルギー吸収量が減少す ることを示している。 西村ら. 54). は、一定鉛直荷重下において長枘込栓打ちに曲げモーメントを作用させた場合. の復元力特性、枘の歪分布、枘の残留変形を示している。その結果、長枘込栓打ちを力学 的にモデル化する場合に要求される項目を示している。 坂田ら. 55). は、長枘込栓打ちに曲げモーメントを作用させた場合の弾塑性領域に渡るモー. メント回転角関係および破壊性状を把握し、力学モデルを示している。提案された力学モ デルによって接合部に始めに生じる破壊点までの包絡線が精度良く予測されている。. 18.
(27) 第 1 章 序論. 柱と貫における貫仕口に関する研究は、森迫ら. 56). によって、楔締めを施した貫仕口を対. 象に行われており、力学モデルが提案されている。 また、棚橋ら. 57). は、通し貫における回転めり込みの弾塑性復元力特性の定式化を弾塑性. パステルナークモデルによって示し、実験結果と比較してパステルナークモデルの妥当性 を示している。 58). 柱と横架材における十字型の仕口部に関する研究は、佐藤ら. によって柱と差鴨居を対. 象に行われており、込栓による差鴨居と鼻栓による差鴨居の曲げモーメント回転角関係、 破壊性状を把握している。その結果、込栓の方が鼻栓よりも初期剛性は 1~2 割大きく、最 大モーメントは 2~3 倍大きいことを示している。 藤田ら. 59). は、長枘込栓打ち仕口、雇い鎌仕口、雇い車知仕口などを対象に実験を行なっ. ており、仕口別のモーメント抵抗性能を確認している。また、稲山のめり込み理論を適用 して弾性域における降伏耐力、剛性が精度よく推定できることを示している。 1.5.3 切欠きを有する木材梁の強度ならびに割裂に関する研究 切欠きを有する木材梁のせん断強度や曲げ強度に関する研究は、切欠きが梁の端または スパン中央部に設けられているかによって大別される。 60). 切欠きが梁の端部に設けた場合の研究には、杉山によるせん断強度に関するもの. があ. る。1.1 項の(1)式で示した現在の木質構造設計規準に採用されている材端のせん断応力度 の計算式の適否について検討がされ、同式中の有効断面積の取り方を改めた方が良いとい う結論が示されている。しかし、現在この結論は木質構造設計規準に採用されていない。 切欠きを梁スパン中央に設けた場合の研究には、増田の研究. 61). 、杉山らの研究. 62). や、平. 井らの 63)の曲げ強度に関する研究がある。 増田の研究では、スパン中央の引張側に切欠きがある梁の曲げ試験を行なった場合にお いて、切欠き部に割裂が生じる荷重を予測するための解析的手法が示されている。杉山ら の研究では、梁スパン中央の圧縮側と引張側に切欠きを設けて曲げ試験を行なっている。 そこでは、切欠きの材成方向の寸法が材成の 1/4~1/2 で、梁の引張側にある場合、断面係 数の低減係数は 0.45 程度が良いことが示されている。平井らの研究では、スパン中央に切 欠きを有する梁のたわみを推定する式が提案されている。 割裂については、梁の中央に切欠きを設けた場合の割裂についての研究は、桑村. 64). によ. って行われており、初等力学の理論のみを用いて、切欠き部に割裂を引き起こす割裂面に 垂直な引張応力度と、割裂面に平行なせん断応力度の算定式が導かれている。 また、P.J.Gustafsson65)によって、梁の端部に切欠きを設けた場合の割裂に関する研究が 行われており、微小な亀裂が生じた場合の破壊面積を分離させるポテンシャルエネルギー の損失を表す式と、荷重点での変位からポテンシャルエネルギーの損失を求める式を連立 させて、割裂破壊荷重の推定式が導かれている。 また、Van der Put T.A.C.M.ら 66)や、安村 67)によって、木材の繊維直交方向に応力を受 ける場合の割裂破壊荷重の推定式が提案されている。. 19.
(28) 第 1 章 序論. 1.6 本論文の構成 本研究では、寸法・形状とせん断強度や引張強度との関係が十分に検討されないままに、 大工による手加工の形状を踏襲した形状が用いられているので、強度特性および機械加工 能率が未精査である横架材接合部に多用されている腰掛蟻仕口を対象としている(第 1 章)。 本論では、先ず商用の腰掛蟻仕口の強度特性を実験的に把握した(第 2 章)。次に腰掛蟻 仕口の機械加工能率の向上を志向した改良仕口、強度性能の向上を志向した新形状蟻仕口 を提案し、寸法・形状と強度特性の関係を吟味・検討した(第 3 章)。 さらに、せん断試験の破壊性状に基づく腰掛蟻仕口のせん断耐力の推定式を提案した(第 4 章)。この腰掛蟻仕口のせん断耐力の推定式を用いて、商用されている腰掛蟻仕口形状の 妥当性および最適形状を検討するとともに、改良仕口と新形状蟻仕口の最適形状を提案し た(第 5 章)。最後に各章の総括と今後の展望を述べた(第 6 章)。 本論文の構成を図 1-7 に示す。 第1章 序論 本章で、木造軸組住宅の接合部における問題点を既往研究に基づいて述べ、研究背景、 本論文の目的および適用範囲や既往研究、研究全体の構成を述べた。 第 2 章 商用の機械加工された腰掛蟻仕口の強度特性 本章では商用されている腰掛蟻仕口に対して、せん断試験と引張試験を行なって強度特 性を把握した。具体的には、3 つの樹種(ベイマツ無垢材、オウシュウアカマツ集成材、ス ギ-ベイマツ集成材)に対して、それぞれ 4 つの断面寸法(105×105 ㎜、120×120 ㎜、105× 180 ㎜、105×300 ㎜)の試験体によって、樹種および断面寸法の変化が商用されている腰掛 蟻仕口の強度特性に及ぼす影響を吟味した。 第 3 章 機械加工された腰掛蟻仕口の新しい形状に関する検討 本章では機械加工能率の向上を志向した形状(改良仕口)と強度性能の向上を志向した形 状(新形状蟻仕口)を提案し、これらの寸法・形状の変化が強度特性に及ぼす影響をせん断 試験および引張試験を行なって把握した。また、せん断試験における実験値と現行の腰掛 蟻仕口のせん断力耐力の算定式による計算値、ならびに引張試験における実験値とボルト を介して繊維直交方向に加力を受けた場合の接合部強度算定式による計算値を比較・検討 した。 第 4 章 腰掛蟻仕口の破壊性状に基づくせん断耐力の推定式 本章では部材断面寸法に応じた腰掛蟻仕口形状の設計に資するために、2 章と 3 章ならび に本章でのせん断試験の破壊性状に基づいて、腰掛蟻仕口のせん断耐力の推定式を提案し た。また、実験値と提案した推定式による計算値を比較・検討し、推定式の適用性を示し た。. 20.
(29) 第 1 章 序論. 第 5 章 機械加工された腰掛蟻仕口の最適形状 本章では、4 章で提案した腰掛蟻仕口のせん断耐力の推定式によって、2 章で検討した商 用の腰掛蟻仕口形状の妥当性と最適形状を検討した。また、3 章における研究成果と 4 章で の腰掛蟻仕口のせん断耐力の推定式によって、改良仕口と新形状蟻仕口の最適形状を示し た。 第 6 章 結論と展望 本章では各章の総括をするとともに、研究の方向性についての展望を述べた。. 21.
(30) 第 1 章 序論. 第1章 序論 1.1 木造軸組住宅の接合部における問題点 1.2 研究背景 1.3 本論文の目的 1.4 本論文の適用範囲 1.5 接合部に関する既往研究と本研究の意義 1.6 本論文の構成. 第2章 商用の機械加工された 腰掛蟻仕口の強度特性 2.1 試験の目的 2.2 供試材と試験体形状 2.3 試験方法 2.4 評価方法 2.5 試験結果と考察 2.6 まとめ. 第3章 機械加工された腰掛蟻仕口の新しい形状に 関する検討 3.1 試験の目的 3.2 供試材と試験体形状 3.3 試験方法 3.4 評価方法 3.5 改良仕口についての検討 3.6 新形状蟻仕口についての検討 3.7 1/2縮尺モデルにおける改良仕口と新形状蟻 仕口の比較 3.8 現行の設計式による計算値と1/2縮尺モデルj実験 による実験値の関係 3.9 実大モデル実験結果と考察 3.10 1/2縮尺モデル実験と実大モデル実験の比較 3.11 まとめ. 第4章 腰掛蟻仕口の破壊性状に基づくせん断耐力 の推定式 4.1 試験の目的 4.2 試験と推定式構築の概要 4.3 供試材と試験体形状 4.4 試験方法 4.5 試験結果と考察 4.6 腰掛蟻仕口の破壊性状に基づくせん断耐力 推定式の適用 4.7 まとめ. 第5章 機械加工された腰掛蟻仕口の最適形状 5.1 商用仕口(A社仕様)の最適形状の検討 5.2 改良仕口と新形状蟻仕口の最適形状の検討 5.3 まとめ. 第6章 結論と展望 6.1 各章の総括 6.2 今後の展望. 図 1-7 本論文の構成. 22.
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