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自然公園の管理対策に関する環境経済学的研究

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Academic year: 2021

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     博 士 ( 農 学 ) 庄 子 学 位 論 文 題 名

自然公園の管理対策に関する環境経済学的研究 学位論文内容の要旨

  戦後の日本において ,自然公園管理は自然を保 護するという位置付けにとどまらず,観光資源とし て国民の利用を促進し ,経済復興に資するという 側面を持っていた。そのため高度経済成長期以降,

自 然 公 園 で は 過 剰 利 用 に よ っ て 様 々 な 問 題 が 引 き 起 こ さ れ る こ と と な っ た 。   本研究で問題とする 過剰利用は,混雑や交通渋 滞によルレクリエーション体験を阻害するだけでな く,高山植物の破壊や 湖沼の水質汚濁など自然破 壊も引き起こしている。これらの問題は,1989年の 自然 環境 保 全審 議会 利用 のあ り 方検 討小 委員 会 報告においてすでに指摘され ているが,問題解決 のために具体的な管理 対策はほとんど講じられて こなかった。その理由のーっ として挙げられるの が,混雑や自然の破壊 に伴う効用の低下が,市場 価格で評価することができな く,人々の効用を直 接低下させる外部不経済として生じていることである。このことは同時に,過剰利用が引き起こす様々 な問題を解決するために,管理対策を講じることが果たして必要なのか,あるいはもし必要ならばどの 程度必要なのかを具体 的に提示できないことを示 している。

  このような背景の下 ,本研究では環境経済学の 分野で用いられている環境評 価手法のーっである 選択 型実 験 を用 いて ,自 然公 園 の適 正利 用の た めにニつの研究課題を設定し た。なお選択型実験 とは,もともとマーケ ティングや交通工学で培わ れてきた手法であるが,非市場財の評価にも有効で あることが明らかとな り,1990年代に入り環境評 価の分野で急速に研究が進ん でいるものである。

  第 一の 課 題は 選択 型実 験を 適 用し ,複 数の 管 理対策について同じ評価基準 の下で評価を試み,

自然公園の過剰利用に ともなぃ発生する様々な問 題に対して,どのような管理 対策がどの程度必要 とされるのかを定量的に明らかにすることである。第二の課題は,管理対策をどのような利用者グルー プ に ど の よ う な ゾ ー ン に お い て 実 施 す る の か を 明 ら か に す る 必 要 が あ る こ と を踏 ま え,ROS (Recreation Opportunity Spectrum)と 選 択 型 実 験 を 統 合 し た 評 価 を 試 み る こ と で あ る 。   第 一の 課 題に 対し ては ,北 海 道の 暑寒 別天 売 焼尻国定公園にある雨竜沼湿 原を事例地とし,湿 原景観の破壊,湿原植 生の破壊,木道上での混雑 に対し,それぞれの問題を解 決することが果たし て必要とされているのか,またそうであればどの程度必要とされるのかを定量的に明らかにしようとし た。 分析 に 用い たア ンケ ート は2000年の7月 中旬 〜8月初 旬に 行い , 総配布 枚数500枚,回収枚数 252(回答率は50.4% )である。

  評価結果によれば, 管理対策を実施することに 対し,利用者が支払意志額を 有しており,管理対 策の実施を望んでいる ことが明らかになった。具 体的には湿原景観と湿原植生 の回復に対して,そ れぞ れをx% 回復 す るこ とに対する支払意思額が27.26x円,51.56x円と評価さ れた。これは,例え ば50%の回復に対して 一人あたりそれぞれ1,363円と2,578円の支払意思額があることを意味し,雨 竜沼湿原の年間利用者 を13,000人とすると,それ ぞれの管理対策を実施することには,年間1772.9 万円と3351.4万円の価 値があることを示している 。混雑の緩和に対する支払意 思額は,一日の最大 利用者を800人から457.6人に減少させる場合最大 となり,それより多くても少なくても支払意思額が

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低 下する ような ,二次 関数で近似される関係にあることが示された。一日の最大利用者数を457.6人 に 設定す ること に対す る支払 意思額は1396.0円であった。それぞれの管理対策が望ましい水準で実 施 される 場合の 支払意 思額は ,湿原景 観の回 復,湿 原植生 の回復 ,一日 の最大 利用者 数の設定の 順に,2,726円,5,156円,1,396円であるから,雨竜沼湿原においては湿原植生の回復が最も必要と される管理対策であることが明らかとなった。

  第 二 の課 題 に 対 して は,北 海道の 大雪山 国立公園 を事例 地とし ,ROSの概 念を用 いて利 用者グ ループの分類とゾーニングを行うとともに,分類された利用者グループあるいはゾーンごとに,道路・

登 山道の 整備, 利用者 数の制 限,高山 植物の 保護,ヒグマの保護の問題を解決することが果たして 必要とされているのか,また必要であればどの程度必要とされるのかを定量的に明らかにしようとし た 。分析 に用い たアン ケート は2000年8月 に配布 し,最 終的に 配布し た枚数は1,872通,回収枚数 814通(回答率は43.5%)である。

  ま ずROSの 概念を踏 まえて作成したアンケートへの回答をもとに,クラスター分析と判別分析を用 い て,大 雪山国 立公園 の利用 者を観光 旅行派 ,快適 登山派 ,登山 派の三 つの利 用者グ ループに分 類 した。 さらに それぞ れの利 用者グル ープに 提供するゾーンの設定を行った。次にそれぞれの利用 者 グルー プに対 し選択 型実験 を適用し ,道路 ・登山道の整備,利用者数の制限,高山植物の保護,

ヒグマの保護という4つの管理対策への支払意思額を評価した。

  評 価結果 によれ ば,そ れぞれ の管理 対策を 実施することに対し,対策の実施水準により評価額は 異なるものの,利用者が支払意志額を有しており,これらの管理対策の実施を望んでいることが明ら か になっ た。さ らに支 払意思 額の比較 を行っ たところ,支払意思額は管理対策の種類と実施水準だ けでなく,利用者グループ間にも違いがあることが明らかとなった。また各利用者グループ間には支 払 意思額 につい て特徴 があり ,ROSのク ラスがPrimitiveになるほど支払意思額の絶対値が大きくな ること,観光旅行派と快適登山派は道路・登山道の整備に関して支払意思額をほとんど有していない こと,高山植物の保護を行うことは利用者グループに関わらず必要とされている一方,積極的に人々 を呼び入れる努カをすることは実施すべきでないと言忍識されていることが示された。また各ゾーンに着 目して,それぞれのゾーンでどのような管理対策が必要とされるのかをみると,観光旅行派と快適登 山 派に提 供され るゾー ンでは ,利用者 数を一 定に保ちっつ,高山植物の保護やヒグマの保護を行う こ とを望 み,登 山派に 提供されるゾーンで求められる管理対策は,利用者数を2割減少させるととも に,高山植物の保護やヒグマの保護を行い,必要に応じて道路・登山道の休止や廃止を行うことであ ることが明らかになった。

  以 上の評 価結果 を踏ま えると ,日本 の自然 公園管理 対策に ついて ニつの 提言を 行うこ とができ る 。一っ はROSの概 念を踏まえて自然公園のゾーニングを行うことである。本研究によって各ゾーン によって選好が異なることが明らかになったが,これはゾーニング区分が利用者のレクリエーション体 験 を改善 するこ とを示 唆して いる。も うーっ は,自然公園における利用料金の徴収や利用者数の制 限 などの 直接的 な利用 規制の 導入であ る。本 研究に よる評 価結果 は,利 用料金 の徴収 や利用者数 の制限を実施することが望ましいことを示しているので,便益が対策費用を上回る限りにおいて,この ような管理対策は積極的に行われるべきであると考えられる。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

自然公園の管理対策に関する環境経済学的研究

  本 論 文 は6章 か ら 構 成 さ れ て お り , 図24, 表32, 引 用 文 献127を 含 む 総 頁 数139の和 文 論文であり,別に参考論文5編が添えられている。

  本研 究 で 問 題と す る 自 然公 園 の 過剰利 用は, 混雑や 交通渋 滞によ ルレクリ エーシ ョン体 験 の 質 を低 下 さ せ るだ け で な く, 高 山植 物の破 壊や湖 沼の水質 汚濁な ど自然 破壊を 引き起 こし て い る。 こ う し た問 題 は ,1989年の 自 然 環 境保 全 審 議 会利 用 の あ り方 検 討 小 委員 会 報告に お い てす で に 指 摘さ れ て い るが , 具体 的な管 理対策 はほとん ど講じ られて いない のが実 情で ある。

  本研 究 では ,自然 公園の 適正利 用をめ ざす管 理対策 を立案 するため に2つの 研究課 題を設 定 した 。第‐ の課題 は環境経 済学研 究で近 年,注 目され ている 環境評 価手法 のーっである選択型 実験を適用し,自然公園の過剰利用にともなって生じる諸問題に対して,どのような管理対策がど の程度必要とされるのかを定量的に明らかにすることである。第二の課題は,どのような管理対策 を選 好の異 なる利 用者グル ープに 対しどのようなゾーンにおいて実施するのかを明らかにするた めに,ROS (Recreation Opportunity  Spectrum)と選択型実験を組み合わせて評価をおこなうことで ある。

  第一 の課題 に対し ては, 暑寒別 天売焼尻 国定公 園にあ る雨竜 沼湿原 を事例 地として評価を行 っ た 。分 析 に用い たアン ケート は2000年の7月中旬 〜8月初 旬に行 い,配 布枚数500枚,回 収枚 数252( 回答率は50.4%)である。第二の課題に対しては,大雪山国立公園を事例地として評価を 行っ た。分 析に用 いたアン ケート は2001年8月に配布し,配布枚数1,872通,回収枚数814通(回 答率は43.5%)である。

  第一の 課題に 対する 評価結果は管理対策を実施することに対し,公園利用者はフ゜ラスの支払 意 志額 を 有 し てお り , 管 理対策の 実施を 望んで いるこ とを示 してい る。具 体的に は湿原景 観 と 湿原 植 生 の 回復 に 対 し て, そ れ ぞ れをx% 回 復 する ことに 対する 支払意 思額が27.26x円,

51.56x円 と 評 価 さ れた 。 混 雑 の緩 和 に 対 する 支 払 意 思額 は , 一 日の 最 大 利 用者 を800人 か

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寛 士

郎 昭

   

   

   

   

太 昭

井 村

川 澤

石 中

淺 柿

授 授

授 授

   

   

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

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ら457.6人 に 減 少 さ せ る 場合 が 最 適 であ り , そ れよ り 多 く ても 少 な く ても 支 払 意 思額 が 低 下 す る よ う な 関 係 に あ る こと が 示 さ れた 。 一 日 の最 大 利 用 者数 を457.6人 に 設 定 する こ と に対 す る 支 払意 思 額 は1396.0円 で あ っ た。 ま た 雨 竜沼 湿 原 で は湿 原 植 生 の回 復 が最も 必要 とされる管理対策である。

  第二の課題に対してはアンケート結果をもとに,クラスター分析と判別分析を行って,公園利用 者を観 光旅行 派,快 適登山派 ,登山派の三っのグループに分類するとともに,それぞれの利用者 グループに提供するゾーンを区分した。さらに利用者グループに対し選択型実験を適用し,道路・

登山道 の整備 ,利用 者数の制 限,高 山植物 の保護 ,ヒグマの保護という4っの管理対策への支払 意思額を評価した。

  評価結 果は管 理対策 を実施することに対し,利用者が支払意志額を有していること,その額は 管理対策の種類と実施水準だけでなく,利用者グループ間に違いがあることを示している。特に注 目されるのはROSのクラスがPrimitiveになるほど支払意思額の絶対値が大きくなること,観光旅行 派と快 適登山 派は道 路・登山 道の整備に関して支払意思額をほとんど有していないことなどであ る。ま た旅行 派と快 適登山派 に提供されるゾーンでは,利用者数を一定に保ちつつ,高山植物や ヒグマの保護が嗜好され,登山派に提供されるゾーンでは,利用者数を2割減少させるとともに,高 山植物やヒグマの保護を行い,必要に応じて道路・登山道の休止や廃止を行うことであることなど が明らかになった。

  以上の 研究結 果から ,自然 公園管 理対策に ついて2つのことが提言できるとする。一っはゾー ニングを行うことである。本研究によって各ゾーンによって利用者の選好が異なることが明らかにな ったが,これはゾーニングが公園利用者のレクリエーション体験の質を改善することを示唆してい る。も うーっ は,自 然公園に おける 利用料 金の徴 収や利 用者数 の制限 などの直接的な利用規制 の導入 である 。本研 究による 評価結果は,利用料金の徴収や利用者数の制限を実施することが望 ましいことを示しているので,便益が対策費用を上回る限りにおいて,利用規制対策は積極的に行 われるべきである。

  以上, 本研究 は選択 型実験 とRecreation Opportunity Spectrumを自然公園管理問題に組み合 わせて 適用し 分析し た我が国 最初の研究であり,公園利用者の多様な嗜好・選好を評価した上で 自然公 園管理 対策を 立案する 具体的手法と管理対策のあり方を明らかにしており,その研究成果 は高く 評価さ れる。 よって審 査員一同は庄子康が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格が あると認めた。

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